ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第七十話

エンゲージを発動し、彼女の心の中へはいりこむと以前の九尾とは打って変わり、

心の中は自然が溢れる場所だった。

綺麗な花や大きな木などが辺り一面に生い茂っていた。

ここがサイラオーグが幼少期を過ごした場所か。

だが、俺はあることに気づく。

「自然が動いていない」

少し歩いていくがどこもかしこも全ての時間が停止した状態にあった。

雲も、川の水も、この世界に存在している全ての存在がその動きをまるで、

何かに止められているかのように止まっていた。

『眠っていれば時は止まる。だからこうなってんのさ』

俺以外の声が聞こえ、後ろを振り返るとそこにはフードを深くかぶった人物……いや、

俺自身がそこに立っていた。

『そう不思議そうな顔をするな。俺はお前の負の感情があれば何度でも復活する。

別に憎しみじゃなくていいんだよ。少しのイライラで良い。

ま、あの時みたいにお前の中で暴れるほどはないがな。

あの時は特別、お前が憎しみを持ったから暴れられただけだ』

「そうか……お前はどう見る」

『さあな』

俺はフードを被った奴と共に少し歩いていくと一つのボロイ家屋の前にたどり着き、

中に入るとそこには誰の姿もなく、蛇口から出ている水が空中で停止していた。

バアル家は魔王を除けば、

最上級の家系……その豪勢な暮らしぶりからの落下具合は想像以上のものだったろう。

人は生活の質は上げられるが質を下げることはできない。

出来たとしても不憫に感じるだけだ。

ふと、視線を動かすと全てが停止しているこの空間の中で唯一、

動いているものを見つけた。

それは本当にちっぽけなものだが息子の状態を知ることができるもの。

そして、その状態を知ることのできる物の前にミスラ様が横になって眠りについていた。

「…………どうやら俺達の入る領域はここまでのようだ。俺は戻る」

『そうかい。んじゃ、俺も消えますかね』

俺が魔法陣を抜けると同時にフードを被った奴も消滅した。

 

 

 

 

 

 

「イッセー」

外の世界へ出るとリアス、執事さんのほかにサイラオーグもいた。

俺が中に入っている間にサイラオーグも来たってわけか。

「ごめんなさい、サイラオーグ。ゲーム前だというのに」

「いや、構わん。来てくれただけで十分だ」

病室の中で話すのもあれなので病室から出てすぐのところにある、

大きなソファに座りながら話をしていた。

権力争いは上流階級の家ならばどこでも、

存在するものだと考えていたが……想像以上のものだった。

奴自身は軽いことのようにふるまってはいるがな。

「俺には体しかなかったんでな。ある意味、今回の戦いは最後の試練だと考えている。

魔力を持たない俺と膨大に魔力を持つ兵藤一誠」

正反対の位置に存在する者同士が戦うゲームか……最強を決めるだけではなく、

ある意味では奴にとって最後の試練か……あながち間違いではないな。

それにこの試練が終わればおそらくは……。

「リアス、帰るぞ」

「ええ、じゃあまた」

「ああ、手加減は無用だぞ」

そう、一言言いあって俺たちは病院から出て、

外で待機していたリムジンに乗り込んだ。

「イッセー。おばさまの様子は」

「俺達が手を出していい領域じゃない。まあ、見てろ」

俺はそれだけ言って後は何を聞かれても答えなかった。

あれは息子と母だけしか入ることが許されていない領域……ミスラ様の中で、

“あれ”だけが動いているのであれば、恐らく今回のゲームの状況も映し出されるはずだ。

そうなればきっと。

「……貴方はどんどん、遠くへ行くのね」

「何か言ったか」

「いえ……なんでもないわ」

ふと、ボソボソと聞こえ、尋ねるが彼女はそれだけ言って外の景色に視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウォータードラゴン!』

その日の夕方、俺はドラゴタイマーを利用して二人に別れると木場と、

ゼノヴィアとの同時戦闘を行っていた。

一人づつやる予定だったんだがそれでは効率が悪いと考えたので、

俺がこの方法を考案した。

「はぁ!」

『ディフェーンド・プリーズ』

ゼノヴィアが放ってきたエクス・デュランダルからの破壊力満点の衝撃波を、

膨大な水を集めて作った分厚い壁で防ぎ、斬りかかるが剣の刀身で防がれた。

木場の方は俺自身が担当し、

コピーで二つに分けたアスカロンを振るいながら木場の斬撃をいなしていく。

「これならどうだ!」

木場が地面に剣を突き刺したかと思えば、

そこから地面が凍っていき俺の両方の足が地面に縫い付けられた。

さらにそこから、電流を放っている聖魔剣を作り出し、

地面に突き刺して内部から俺を攻撃しようとしてくる。

「甘いな。はっ!」

俺は全身から炎を吹き出し、凍りついていた足を解凍して、

いまにも地面に剣を突き刺そうとしていた木場に斬りかかるが、

ナイトの特性の高速移動で距離を取られたことにより、剣は空を切り裂いた。

『ファイナルタイム!』

「さあ、締めに入るぞ」

『ドラゴンフォーメーション!』

レバーを弾くと、俺達の背後にそれぞれのエレメントの色をした魔法陣が出現し、

そこから炎を纏ったドラゴンの幻影と水を纏った幻影が現れ、

スペシャルの武装へと変化する。

「はっ!」

空中に浮き、そこからドラゴンの炎を放射するが木場が作り上げた水の聖魔剣により、

若干炎の威力が下げられたことにより決定的なダメージは与えられずじまいに終わった。

さらに、ウォーターのドラゴンの尻尾による攻撃はエクス・デュランダルの衝撃波と、

ぶつかりあうが、そのまま時間切れとなりウォーターが消滅。

そこで鍛錬が終了となった。

「し、死ぬかと思った」

珍しくゼノヴィアが額に汗をかきながらそう言った。

木場も似たような感情を抱いているらしく、

苦笑いを浮かべながらもゼノヴィアの言ったことに頷いていた。

「そこまでのことか?」

「まあね。イッセー君って鍛錬の時も全力で来るから」

「まあ、その分臨場感は味わえるしより一層、鍛錬には集中できる」

昔、母さんにたとえ本番だろうが練習だろうがいつ何時も、

自分が出せる力の全てを出しなさいって教育されたからだな……教育のたまものというか。

「むしろ、私はイッセーの魔力が尽きないところが不思議で仕方がない」

「これでも疲れてるんだよ。こいつはかなり魔力消費するからな」

まだ二人くらいに分かれるならばまだしも、四人に別れ、

なおかつドラゴンフォーメーションをした時の魔力消費は半端なものではなく、

こいつで四人出したときは絶対に仕留めるか、

その間に何らかの方法で魔力を回復させるかだな。

あまり、乱発はしない方が身のためという訳か。

「イッセー。セイグリッドギアは使わないのか?」

「…………俺の魔法だけじゃ倒せない相手に遭遇した時はこいつも併用することにしている」

恐らくその時はヴァーリとの決着をつける時くらいか……いや、

サイラオーグや曹操との戦いのときにも使うかもしれないな。

「よし、もう一本」

「といきたいけど今日はここまでよ」

ゼノヴィアが立ち上がろうとしたときに背後から声が聞こえ、

振りかえってみるとそこにはリアスが立っていた。

「今日は会見よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛錬を切り上げ、俺達はグレモリー領にある高級ホテルの待合室的なところで、

記者会見が行われるのを待っていた。

なんでも、注目度ナンバーワンのゲームの前の意気込みを聞く会見らしい。

女性陣は鏡の前で化粧、男性陣は制服に着替えて記者会見が始まるのを待っていた。

で、その女性陣の中で何故か小猫は俺の膝に座っていた。

「今日は荒ぶる精神を抑える羊羹は良いのか?」

「はい。今日は焼き鳥がいないので……ある意味、荒ぶってはいますが」

どうやら俺は羊羹代わりらしい。

と、ドアがノックされ、スタッフらしき男が入ってきた。

「お時間でございます」

スタッフの先導のもと、

会見場へと入った俺達に襲いかかってきたのはピリッとした空気と多くの視線だった。

既に用意された座席にはバアル卷族が座っており、その隣に設置された座席の中央にリアス、

その左に朱乃、右側に俺が座った。

進行役によって改めてゲームの開催日、およびその概要などが伝えられ、

記者達の質問がリアスやサイラオーグなどに向けられる。

二人とも次期当首としてか真剣な面持ちだった。

『では、ここでウィザード候補の兵藤一誠さんにも質問をしたいと思います。

やはり、今回のゲームでも未知の魔法を使われるのでしょうか』

「使わざるを得ないでしょうね。なんせナンバーワンを決める戦いで、

手を抜いて勝つことなど不可能ですから。相手は若手ナンバーワンと名高い相手。

俺もすべてを出し切って戦いに挑みます」

そう言うと、記者達は先ほどよりもペンを動かしてメモ帳に書き記していく。

そこまで俺の魔法に興味があるのか……。

そんな感じで記者会見は進んでいった。

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