ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第七十一話

翌日の夕方、俺達はサイラオーグとのゲームについての話をしていた。

「サイラオーグはポーンを滅多なことで使わないらしい。

噂ではそいつはポーンの駒を六つか、七つは消費している」

アザゼルの発言に部員達は各々、驚きの意を示していた。

ロンギヌスを宿している俺が八つ消費したということは、それに追いつくほどの才能、

もしくは強さを持った奴が転生していることになる。

ロンギヌスを宿した奴なのか、またはそいつが生来持っている可能性があまりにでかいのか。

「当日は気をつけろよ。どんなどんでん返しが待っているか分からねえからな。

それにこのゲームはどの勢力も注目している。会談テロ、悪神ロキ、

京都での事件を解決してきたお前たちと同じくテロリストを追い払っているチームの戦いだ。

現トップランカーも将来の敵となりうるお前達を観察に来ているからな」

そこでミーティングは切り上げられ、アザゼルとロスヴァイセは。

まだ教師としてやるべきことが残っているらしく、職員室へと向かった。

残った俺達は文化祭の準備をする―――――ふと、視線を向けるとちょうどリアスと目が合うが、

彼女はすぐに目を反らして書類に目を落とした。

以前までなら微笑んでいたんだがな……何か思いつめているのか?

「リアス、何を思いつめているんだ」

俺は作業を中断させ、彼女のもとへと歩いていき、そう尋ねるが

彼女は何もないと言い張る。

「そんな顔で何もないってか」

「ええ、何もないわ……私なら大丈夫」

「大丈夫ならそんな顔は」

「私は大丈夫なの!」

突然、リアスは机をたたいて叫んだかと思えば、急に眼から涙を流し始めた。

突然の彼女の叫びに作業をしていた奴らは中断せざるを得なくなり、

全員が俺とリアスに視線を集中させていた。

「貴方はいつも全てを見透かすわ…………私が今考えていることも何もかも。

戦いが起きればいつもあなたが敵を倒していく…………イッセー。

……距離が…………遠すぎる」

そう言って、リアスは俺の傍を通り過ぎていく。

俺は振り返りながら彼女の手を掴もうとするが、もう少しのところで手が届かず、

そのままリアスは部室の外に走り去っていったしまった。

…………俺は…………。

 

 

 

 

 

 

 

その後、いったんすべての作業が中止され、俺以外の部員達がリアスを探しに出ていった。

一人残った部室でずっと考えていた。

距離が遠すぎる…………確かに最近、俺は彼女に何かあっても言わなくなっていた。

京都での事件も俺からは一切連絡は入れず、アザゼルからの連絡で向こうは現状を知った。

戦いが終わった時も俺からは彼女に何一つ話さず、ただ単に結果報告を書類に任せていた。

ミスラ様の時も俺だけがあの人の状態を知り、何も言わなかった。

「…………俺はバカだよ」

自嘲気味にそう言った言葉がよく、響いた。

俺は何も言わなくても付いてくると思っていたんだ……何もせずとも、

向こうの方から来ると……でも、そうじゃないんだ。

俺は……リアスを放置していたんだ。

何がウィザードだ……たった一人の女のことすら気づけていない俺がウィザードなんか、

呼ばれる資格はねえよ。

『クゥゥン』

「ハティ」

後ろからハティの声が聞こえ、振り返ると同時にハティが、

俺の服の裾を軽く噛んで引っ張り出した。

まるで、こっちへ来いと言わんばかりに。

俺はそれに従い、ハティに付いていくと部室を出て、

旧校舎から外へと出る玄関にリアスが立っていた。

彼女の足もとにはスコルが伏せた状態で俺達を待っていた。

『『ワン!』』

どうやら二匹はどうしても俺とリアスの二人で散歩に行かせてほしいらしい。

「……行きましょうか」

「……あぁ」

気まずい雰囲気の中、二匹の散歩が始まった。

普段の散歩ルートを歩いていく最中に一言もしゃべることはなく、

ただただ気まずい雰囲気を互いに出しながら歩いていく。

「……悪かったな、リアス」

「え?」

散歩ルートの折り返し地点に到達したところで俺はようやく、

その言葉を口から出すことが出来た。

「お前が遠いと言ったのは間違ってはいなかった……俺はお前を置いてけぼりにして、

自分だけ先に進んでいた……本来なら隣にリアスを置いた状態じゃないと、

いけなかったにもかかわらず」

「……ううん。あのときは感情のままに吐き出したけど……それは当然のことだったの。

貴方が強くなる速度と私が強くなる速度は違う……ただ単にさっきのは私の我儘だった。

本当なら主として喜ばないといけないところだったのに」

リアスは両目から涙をぽろぽろと流し、必死に流れてくるそれを手で拭いていくが、

それを追い越す形で涙は次々に流れ出てくる。

俺はリアスを胸に押し付けた。

「…………悪い」

「……イッセー…………大好き……愛してる」

突然の告白……俺はそれを聞いて特に驚かなかった。

どこか、彼女が俺に対して抱いている気持ちを気付いていたのかもしれない……それを、

敢えて気付かないふりをしていただけであって……俺は。

「闘いが終わった後に……」

「それでいい……楽しみは後に置いておくものだもの」

そう言い、彼女は満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

数日後、ゲーム開始日となり俺達は冥界の中をリムジンで走っていた。

ここへ来る途中にもジャーナリストやらファンやらなんやらによって、

若干の遅れは出たものの、試合に影響が出るほどのものではなかった。

リムジンが止まり、ボーイの先導のもと会場となる巨大なドームの隣にある、

高級ホテルの一室に案内された。

俺は飲み物を買おうと部屋から出て自販機へと向かっている最中に、

奥の方から骸骨の集団がこちらに向かって歩いて来ていた。

……骸骨集団の後ろに自販機があるんだがな。

互いに立ち止まったまま譲ろうとはしない。

「退けよ。俺は後ろの自販機に用があるんだ」

そう言うと、骸骨の集団からピリピリとした圧力が送られてきた。

《ファファファ……十数年しか生きておらんガキに言われるとはな》

骸骨といえば思いつくのは……冥府の神、ハーデスか。

骸骨の集団に囲まれている中央の奴がハーデス……なるほど、

凄まじい魔力、それに死線を感じる。

《ファファファファ。魔力の量だけは一品物じゃな。プルートは優に、

超えていると見る……もう百年も経てば私も追い越されるか》

つまり、まだ今の段階では奴の方が強いと……確かに、

奴を見ている限り、俺が勝てると思わないがな。

《ファファファファファ……力の差を自覚しているのならば結構。

今回はただの観客として来ておる。何もする気はさらさらない。

その証拠に死神の鎌はすべて、向こうに置いてきたのだからな》

暴れる意思はないと俺に示した後に骸骨の集団はそのままスタスタと歩いていった。

……斬られれば寿命が削られるという例の奴を冥府に全て置いてきたのか……本当に、

ただの観客としてここに来たみたいだな。

「まったく、貴様の言動と行動には冷や冷やさせられる」

「タンニーンか……サイズは小さいが」

後ろから声をかけられ、振り返ると普段よりも遥かにサイズを小さくしたミニタンニーンが、

パタパタと小さな翼を羽ばたかせて宙に浮いていた。

「兵藤一誠。奴とは対峙しない方が良い」

「ハーデスか」

「ああ、奴は恐ろしく強い。おそらくサーゼクス、

アザゼルが二人がかりで闘ってもそれを退けるかもしれぬ力を持っている」

魔王と堕天使総督を相手にして退けるほどの実力か……確かに今の俺じゃ勝てないわけだ。

「今回のゲーム。お前達が劣っているとも思っていない。どちらが最強なのか、

白黒はっきりつける良いチャンスだ。武運を祈る」

そう言い、タンニーンは小さな翼をパタパタと羽ばたかせてゆっくりと、

観客席にでも行くのか、向こうの方へと向かっていった。

先ほど、案内された部屋に戻るとリアスと誰かが話しこんでいた。

「よう、兵藤一誠」

「ライザーか」

リアスと話しこんでいたのはライザーだった。

以前、リアスの婚約を潰した際に戦ったフェニックス家の……レイヴェルの顔を、

見に来たのが半分、それ以外が半分と言ったところか。

それにしても、大分雰囲気が変わった。

以前は金持ちのボンボンと言った様子がにじみ出ていたんだが今はその感じも、

覗かせながらも野生を感じさせる雰囲気も纏っていた。

「レイヴェルの顔を見に来たのもあるし、今回のゲームのこともある。

今回のゲームはプロの好カードと何ら変わりないほどの注目度だ。

さっき見てきたが観客席は満席になる勢いだ。実践とは違う部分が多く、

戸惑うかもしれんが……お前達の実力を出せばそれでいい」

なるほどね……成熟している悪魔としてのいわば大人のアドバイスという奴を、

未熟な俺たちに教えに来たという訳か。

「ええ、もちろんそのつもりよ……今日の試合は私達が勝つわ」

「……応援してるぞ。それとレイヴェルはリアス並みに我儘だからな。

燃やされないように気をつけろよ、兵藤一誠」

そう言って、ライザーは部屋から出ていった。

その後、ボーイが部屋にやって来て時間であることを俺たちに告げた。

 

 

 

 

 

『さあ、世紀の一戦が間もなく開かれようとしています! まずは、

若手ナンバーワンと称されているサイラオーグ・バアル卷族の入場です!』

直後、観客席からの声援、歓声がこちらにまでビリビリと伝わってきた。

確かにライザーの言っていた通り、観客席はすでに満員に近い状態らしいな。

『お次は何度もテロリストから冥界を救った英雄! リアス・グレモリー卷族です!』

「皆行くわよ!」

リアスの声を合図に俺たちは歩き始めた。

さあ、ショータイムだ。




最近、黒歌かけてない(泣)
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