大歓声の中、俺達が見たのは広大な楕円形の会場の上空に浮かぶ、二つの浮島だった。
まさか、あんな狭い島の上で戦うのか……いや、
別に特別ルールか何かがあるんだろ。
『リアス卷族も陣地に上がってください』
そう言われ、目の前のらせん階段を上って浮島に立つと、
向こうのもう一つの島にサイラオーグ卷族が既に座って待っていた。
陣地には人数分の椅子と円卓テーブルが一つ、
そして移動用の魔法陣が常時展開されている状態であった。
『さてさて、今夜の司会を務めさせていただくのは、
元七十二柱のガウジン家のナウド・ガミジンがお送りいたしたいと思います!
さらに今夜のゲームの審判を務めるのはリュディガー・ローゼンクロイツ!』
宙に魔法陣が現れ、そこから銀髪に長髪、そして正装という出で立ちのイケメンが現れた。
すると、観客席から女性の叫びにも似た歓声が聞こえてくる。
確かあいつは転生悪魔で最上級悪魔にまで上り詰め、
ランキング七位の男だったはず……立志伝的人物という訳か。
『そして解説役として堕天使総督のアザゼルさんとレーティングゲームの王者!
エンペラーことディハウザー・ベリアル氏に来ていただいております!』
画面に映し出された総督と王者。
……あれが将来、俺達がぶつかる最強の存在という訳か。
『では、ルール説明の前にフェニックスの涙についての説明です。
今回、フェニックス家のご厚意と両家からの声援により、
両チームに一つづつ支給されます!』
よく、カオス・ブリゲードのテロが発生している中でフェニックスの涙を、
こんなゲームのために用意してくれたもんだ……いや、逆にこの試合だからこそ用意したのか。
『では、ルール説明に参りましょう。両チームのキングに専用の設置台へと登っていただき、
そこでダイスを振っていただきます。そのダイスで出た目の数を足し合わせた数字の分の価値を、
含んでいる駒を出すことができます。例を挙げると御二方が振った、
ダイスの目が合計で八の場合は駒価値五のルークを一人、
駒価値三のナイトを一名出すことができます。
他にもいきなりポーンを八名出すことも可能です!』
なるほど……つまり、ダイスの目の数の合計によってこちらが有利にもなれば、
向こうが有利にもなることがあるというわけか。
だが、俺がポーン全てを消費しているから俺を出す場合は少なくともダイスの目は八以上。
10や最大目の12ならば俺以外にもう一人くらいは出すことができるが、
8や9になってしまえば俺が単独で出るしかないということか。
まあ、多対一でも俺は構わんが。
『さらにキングの駒価値は委員会の皆様によって決められております!
それがこちらとなります!』
画面に表示されたのはサイラオーグが十二、リアスが八だった。
なるほど、委員会はサイラオーグを高めに評価したわけか……まあ、
逆にいえば向こうが出てくることはほとんどないということだ。
『では、両キング。設置台へ』
審判の言葉に従い、両キングが設置台へと足を運び、
そこでダイスを振った結果が画面に表示された。
二と一……つまり、駒価値三か。
『では、これより五分間の作戦タイムといたします。
その間は観客からも、相手選手からも見えないように設定をいたします』
話し合いの場所へ座ると同時にチラッと大きな画面を見てみるがそこにはただいま準備中、
という文字が表示されて何も映っていない。
「駒価値三となると……ここはゼノヴィアか祐斗に行ってもらうしかないわね」
「単独での出場だとカウンターを受けると速攻で負けてしまうからな……木場。
ここはお前に任せたい」
「もちろん。勝ってくるよ」
そう言い、木場は部長から受け取ったイヤホンマイクを受け取って魔法陣の上に立つと、
魔法陣が光輝きだし、木場をバトルフィールドへと送りこんだ。
俺達は宙に展開された一番大きな画面へと視線を移すと、
広い平原に木場と青白い炎を放っている馬に跨った甲冑騎士の姿があった。
『私は主君、サイラオーグ・バアル様に仕えるナイトが一人! ベルーガ・フルーカス!』
『第一試合! 始めてください!』
審判の声が空間に広がった瞬間、馬が甲高い声を上げてその場から消え去った。
木場は眼だけを周囲に動かし、その場から一歩も動かないまま魔剣を右手に作り出し、
後ろを振り向くと同時に剣を振り下ろすとその場にランスを持った馬とフルーカスが現れた。
『眼だけで我がアルトブラウの速度を見切るかッ!』
馬が消えると同時に木場も足を動かし、その場から消え去る。
直後、空間に金属同士がぶつかり合う金属音が鳴り響き、
平原に大きな穴が次々に生まれていく。
二人は鍔迫り合いをした状態でようやく停止した。
『そこまでの速度をどうやって!』
『僕の仲間のウィザードの攻撃を避けないと死んでしまうものばかりでしてね。
早く避けないとと考えているといつの間にかこのような速度になったんです!』
『ならば、これはどうだ!』
馬が距離を取ったかと思えば、
フルーカスと馬が幾重にも残像を作って木場に向かって突進してきた。
ちょうど良いじゃねえか……今までの成果、見せてやれよ。
木場はバランスブレイクを無言で発動し、
手に聖魔剣を握り締めてそっと目を瞑った。
―――――――――――刹那、木場の姿が消え、
それと同時にフルカースの幻影の一体が姿を消した。
――――――鎮まる会場。
直後、全ての幻影が消えて本物のフルーカスは傷口から煙を上げながら
転移の際に見る光に包まれていた。
『見事』
そう一言言い残して、フルーカスは消え去った。
『第一試合終了! 勝者木場祐斗!』
会場は歓声に包まれた。
『さあ、第一戦を制したグレモリー卷族! このまま勝ち続けるのか!
それともバアル卷族の逆襲が始まるのか!』
司会者が観客を煽っている最中に魔法陣から木場が帰ってきた。
「よく見破れたな。あの幻影」
「まあね……幻影どころか実体が二つにも三つにもなる状況を、
肌で感じていたらすぐに分かったよ」
ま、それもそうか。
京都からかえった日の翌日にドラゴ・タイマーで四体に分裂して徹底的に、
木場をいじめつくしたからな……もう、増えるのはこりごりってか。
リアスとサイラオーグが何も言わずに設置台へと向かい、
用意されている大きなダイスを振るうと目の合計は十。
これは大きいな……チームで行くものか。
「ここは小猫とロスヴァイセに行ってもらうわ」
なるほど……まだ、ロスヴァイセの攻撃は見たことはないがまあ、
ルークの駒によって大幅に強化された魔法の攻撃……一回の魔法で戦場が変わるかもな。
そして小猫は仙術がある。相手の魔力を散らしながら、
一発が大きいロスヴァイセで決める……そんなところだな。
二人が魔法陣でフィールドへと転移された先は崩れかかった古い神殿のような場所だった。
古い神殿……あまり、思い出したくはない場所だな。
その相手はというと軽鎧に帯剣という出で立ちの金髪男、
そして三メートルはあろう巨体を誇っている巨人。
『俺はナイトのリーバン・クロセル。
こっちはルークのガンドマ・バラム。このお二人で相手する』
『第二試合開始!』
審判の声が響くと同時に小猫は全身に闘気を巡らせ、猫耳、
そして二つに分かれた猫の尻尾を出した。
言うならば猫又モードレベル2。
暴走という危険性を排除した純粋なパワーアップを図ったのがあれ。
『全力です』
巨人の顔面に小猫の重い一撃が入り辺りに鈍い音が響き渡るが巨人は意に介さず、
小さな小猫を叩き落とそうと腕を振るうが横から加えられた魔法の連続攻撃によって態勢を崩し、
腕は小猫に当たらなかった。
『魔法砲台です。彼ほど単発の魔法は強くはありませんが、
束で彼の威力を再現してみましたが……まだまだのようです』
そう簡単に超えられては困る……そう思った直後に映像にノイズが走り、
ロスヴァイセがしゃがみ込んだ……いや、重力で膝をついたか。
ナイトの男を見ると両眼が怪しく輝いていた。
セイグリッドギアを人間に血の部分で手に入れたか。
『なるほど……ですが、彼の重力に比べれば!』
『お、おいおい! 五倍の重力下で立ち上がるのか!』
『なんとでも言いなさい! どうせ、オーディンのくそ爺も見てるんでしょうしね!
もう何でもやけっぱちです! 喰らいなさい! 三百六十度砲台フルバースト!』
ロスヴァイセの周囲にいくつもの魔法陣が展開され、
そこからすさまじい数の魔方が放たれていき、バアル卷族の相手に向かって飛んでいく。
だが、相手もそう簡単にくたばるわけもなくナイトは剣で、
巨人はその太い腕で魔法の攻撃を払っていく。
『悪いけど俺も魔法をたしなんでいてね!』
ナイトが剣を地面に刺すとそこが凍りつき、大きな氷の壁が出来上がる……が、
魔法の嵐の中、小猫がその怪力で氷の壁を砕いた!
『今です!』
『うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
ロスヴァイセの気合いの叫び声とともにもう一段階、
激しさを増した魔法の嵐が辺りに吹き荒れ、
隙だらけの二人に直撃し、大爆発を上げた!
…………オーディン様、あんたのおかげで有能なルークができましたよ。
『ぬぅぅぅぅぅ!』
『がっ!』
勝利したと思った直後、全身から血を流している巨人の腕が小猫に突き刺さった。
『小猫さん!』
転移の光に包まれていくバアルの二人と……小猫。
『……先に行ってます』
小猫は満足そうな笑みを浮かべて消え去った。
初回のガイムはなかなか良かったです。