ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第七十六話

『オールドラゴン・プリーズ』

「「「「はぁ!」」」」

四人の背後にそれぞれのエレメントにあった色の魔法陣が出現し、

それに貼り付けられたような格好で宙に浮かびあがると、分裂体がドラゴンの幻影となって、

俺の周囲を旋回し、それぞれが赤の鎧を纏っている俺を中心として、

クロー、テイル、ウイングと変化し、俺に装備された。

その姿はまさしく人の形をしたドラゴン。

「なに!?」

「すべての魔力を一つに。これが最後の希望だ! はっ!」

サイラオーグも背中から悪魔の翼を生やして羽ばたかせ、宙へと舞い、

俺のクローと拳をぶつけながら、広い空を飛びまわっていく。

金属音を鳴らしながら何度もぶつかっていき、時には奴の身体から血が飛び散り、

時には俺の口から大量の血反吐が吐かれる。

「はっ!」

「ぬぅぅ! どうらぁぁぁ!」

ドラゴンの頭部からの火炎を奴は拳で無理やりかき消し、

連続で拳を振るって先ほどの衝撃波を俺に向かって放ってくる。

空気が震えるほどの衝撃波を俺はドラゴンの翼を羽ばたかせて、

右に左に体を傾けることで避けていく。

「はぁぁ!」

クローに魔力を注ぎ込んで、黄色い色をした魔力の斬撃を奴に向けて放つが拳により、

それは空中で拡散していく……が、それと同時に奴の拳に傷がつき、

血の霧が空中に撒かれる。

「でぃぃぃや!」

「かっ!」

横に一回転してドラゴンの尻尾で奴を切り裂くと、

装甲に薄い線が入るとともに血が噴き出した。

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

サイラオーグは叫びをあげながら俺に向かって突進してくる。

俺もそれに応えて、魔力を注いでクローの先端を輝かせて奴に斬りかかる。

「はぁ!」

「だぁぁぁ!」

奴の拳と俺のクローが同時に互いの身体に突き刺さり、

俺の鎧にはいくつものヒビが走り、

奴の黄金の鎧には斜めに大きなヒビが走るとともにそこから血が滲みでてくる。

互いに回転しながら地上へと叩きつけ合い、

そして同時に再び己の武器を相手の身体に突き刺す。

既に鎧にもクローにもヒビが入っている……だが、それは奴も同じ!

「だぁぁぁ!」

「がはっ!」

俺の蹴りがうまい具合に奴の鳩尾に入り、そのまま結界にぶつかるまで蹴り飛ばし、

その間にありったけの魔力をクローに注ぎ込み、倍、四倍とクローの長さを伸ばしていく。

「うえあぁぁぁぁぁ!」

四倍以上に伸びたクローを右に左に動かすと、

奴の黄金の鎧に十字の形にヒビが入り、血が噴き出す!

「げぼっ!」

腹の底から何かが吐き気を伴って上がってきて、

それを口から吐き出すと床に大量の血がこぼれて地面が赤く汚れた。

もう……限界か……。

既に奴の脚はがたがたと震え、いまにも地面に倒れそうな状態だった。

互いの身体も限界、纏っている鎧も限界に近い。

「まだだっ! 俺は! 誰よりも強くなると誓った! 

こんなところで! 負けるわけにはいかんのだっ!」

「そうか……なら、この一撃でお終いにしよう」

翼を羽ばたかせ、ゆっくりと宙に浮かび、俺の背後に四色の魔法陣を展開した。

それに対し、サイラオーグは右腕に全ての闘気を注ぎ込んでいるのか、

右腕の周りの空気がゴゴゴゴゴと震えているように見えた。

サイラオーグ・バアル……お前は俺が倒すべき相手だ。

「フィナーレだ」

『チョーイイネ! ファイナルストライク! サイコー!』

そんな音声が流れた瞬間! 背後の四色の魔法陣が一つに合わさり、

そこから虹色に輝くものが放出されて俺の背中を押した!

「だぁぁぁぁぁぁ!」

「おぉぉぉぉぉぉぉ!」

俺の蹴りとサイラオーグの全力の拳がぶつかり合った瞬間、

凄まじい衝撃波が辺りにブチまかれ、地面を大きく抉っていく!

その時、サイラオーグの背後に一瞬だけだが女性の姿が見えた。

その女性は小さな笑みを浮かべながらサイラオーグの肩に手を置いており、

俺はその女性の顔に見覚えがあった。

……なるほどな! 親子での最後の攻撃という訳か!

羨ましいよお前は! 親と一緒に何かをできることが心の底から羨ましく思う!

だがな! 俺にも家族の代わりになる奴がたくさんある!

そいつらと一緒に俺は登っていく! 最強へと!

「っっっっっっ! だぁぁぁぁぁぁぁ!」

「っっ!」

サイラオーグの全力の拳を押し切り、奴の胸に蹴りを入れ、

このあたりを囲んでいる結界をぶち破る勢いで蹴り飛ばした!

地上に足をつけたと同時に俺が身に纏っていた鎧がはかなく散った。

「ハァ……ハァ……」

地面に伏したまま動かないサイラオーグ…………これで終わりか?

「ぐぅぅぅぅぅ……おぉ……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

血をボタボタと滴らせながらサイラオーグは立ち上がり、

天に向かって高々と叫びをあげた。

誰に向かって叫んでいるのかは知らない、何のために叫んでいるのかは知らない……だが、

一つ言えることは……奴はまだ終わってはいない!

立ちあがって拳を握る…………だが。

『……もう良い……ウィザード』

突然、サイラオーグの胸にある獅子の飾りが言葉を発した。

『……サイラオーグ様はもう……もう、意識はない』

意識がないにも拘らず、そこまで満足そうな笑みを浮かべて、

その腕を俺に向けるのか……サイラオーグ・バアル!

「訂正しよう……お前にフィナーレはない。全てが……ショータイムだ」

『最終試合終了! 勝者! 兵藤一誠!』

俺が背中を向けて陣地へと戻ろうとした瞬間に歓声が聞こえ、

それを聞いた直後に突然、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚め、一番最初に入ってきた景色は白い天井だった。

起き上がって体を見るといたるところに包帯が巻かれている状態、

さらに魔力を消費しすぎたせいかうまく足や腕も動かせない。

……俺の膨大な魔力を持ってしてもオールドラゴンはここまで魔力を消費するのか……そりゃ、

そうだな。四人に分かれた直後にあれだ。

簡単にいえドラゴンフォーメーションの状態で合体したようなものだからな。

ここまで消費するのも納得がいく。

「起きたか」

隣から声が聞こえたが振り向かずとも分かった。

「良い試合だった。負けた後にここまで満足しているのは初めてだ」

「そうか……」

沈黙が数秒流れた時にドアがノックされ、誰かが中に入ってきた。

「やあ、二人とも目が覚めたんだね」

「サーゼクス様」

体全体があまり言うことを聞かない状態なので視線だけを動かして、

中に入ってきた人物を見てみると俺の隣にいたのは紅髪の魔王――――サーゼクス様だった。

「二人の戦いには私だけでなく上役もご満悦の様子だった。

将来が楽しみだよ……それともう一つ。兵藤一誠君、

君に中級昇格の推薦が来ているんだ」

悪魔には三つのクラスがあり下級、中級、上級。さらにその上に最上級があるが、

それは特別なものなので除外するとして……まさか、この速度で来るとはな。

まだ悪魔に転生してから一年も経っていないぞ。

「大戦がなくなった昨今では異例のスピード昇格だ。受けてくれるかい?」

「兵藤一誠、受けろ。お前はいずれ、ウィザードを名乗る男だ。

その男が下級のままでは示しがつかんだろう」

「……喜んで、その御誘いをお受けいたします。サーゼクス様」

「それは良かった。早速、準備をしよう。色々と承認することがあるのでね。

あ、それとだ。妹のこと、よろしく頼んだよ、義弟君」

笑みを浮かべながらサーゼクス様は病室から出ていった。

義弟君……おいおい、それはまだ二歩三歩早いだろ。

「おい、何をニヤニヤしている」

「いいや別に…………お前が俺の家に来た時は慰めのコーヒーを出すとしよう」

俺は傍にあった枕をサイラオーグの顔面めがけて投げつけるが、

奴は余裕の笑みを浮かべながらそれを避けた。

人をおちょくるのも人におちょくられるのも大嫌いだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一列で願いしま――す!」

ウェイトレス姿のアーシアが人で溢れかえる廊下を少しでも整理しようと二列にしたり、

三列にしたりしながらいろいろと調整を行っていた。

「はーい。こちらは皆のマスコットの塔城小猫ちゃんと、

皆のおねえさまの姫島朱乃さんの占いアンドお祓いコーナーでーす」

同じくウェイトレス姿のイリナは、

占いコーナーの案内役兼お祓いコーナーの案内役も引き受けてくれ、催しは大盛況だ。

本来なら俺も隣の区画でやっているお化け屋敷に配属されるのだが

感情が顔に出ない俺がしても微妙なので入口であやしい奴がいないかのチェック係をしていた。

「悪いがカメラはこちらで用意しているものを使用するので、

自前のカメラは使わないでください。撮影した後にご本人様に直接お渡しいたしますので」

「は~い」

無いとは思うが改造カメラで撮った写真を、

ばら撒くなんてことも考えられる以上、こんな対策を取ったわけだ。

今の若い奴らが考えていることは分からんからな。

「新しいチケットですわ。さあ、どうぞ」

レイヴェルも人間界での生活に慣れたようで時折、

楽しそうに笑みを見せる時もある。

まあ、相変わらず猫VS鳥の戦いは終わってはいないが。

あのレーティングゲーム以来、

サイラオーグについていた大王家の奴らはすぐさま消えたらしい。

これによって上とのパイプを失ったわけだが本人いわく、

また組み立てていけば良いとのことらしく、

サイラオーグにつくやもしれぬと噂される家もチラホラと出てきているらしい。

古き慣習しか目に見えていない悪玉菌はサイラオーグから消え去り、

これからの未来を見ようとする善玉菌がついたわけか……これから、

大王家が変わればいいんだがな。

俺達がこれから進んでいく道は勝った者は上に進み、

敗北した者は全てを失ったうえで下に行く……それが悪魔業界。

「よー兵藤! スゲエ人だな!」

「匙か……良いのか、本校舎はどうした」

「ああ、向こうは会長たちの担当で俺は旧校舎の担当なんだ。

にしても相変わらずの木場は女子に人気だな~……ヴリトラの悪運で呪ってやろうか」

五大龍王の中であまり良い伝説を残していないヴリトラ……それを宿した匙が、

あまり良い伝説を残さないことを切実に願うよ……あの夢のようにならないことをな。

「今更、妬んだところで仕方がないだろ……そっちはどうだったんだ」

それを聞くや否や急に匙の周りのオーラがシュンと小さくなった。

「俺、龍王になって暴走しちまってさ……評価は最低かもしれないって」

京都での龍王化もあれは不安定な状態だったという訳か……。

「いずれ兵藤に勝たなきゃいけないし! 今は龍王の制御だ!

今に見てろよ! 龍王ヴリトラの名をとどろかせてやるからな!」

そう言って、匙は見回りの為に人だかりの中を歩いていった……が、

何故か床に落ちていたバナナの皮をふんづけて、転んだ。

……今度、怨念なんかを取り除く魔法で作るか……オハライ・プリーズとかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭終了後、俺は旧校舎の部室にいた。

今頃、校庭でキャンプファイヤーを焚いて踊っているだろうな……でも、

俺はやらなければならないことがあった。

「イッセー」

後ろから声がかかり、振り向くとそこには制服姿のリアスがいた。

以前の告白の返事だ……。

リアスは緊張したような面持ちで俺の隣に座った。

「この前の返事をしよう」

そう言うとリアスは体をビクつかせ、俺の方を向いた。

「……一回しか言わない…………好きだ」

直後、唇に柔らかい感触が伝わってきた。

俺はそれを受け入れ、彼女の背中に腕を回して強く抱きしめた。

母さん…………俺は幸せに生きています。

 

 

 

 

 

 

 

「おっす、打撃王」

俺――――――アザゼルはシトリー領にある大きな病院に来ていた。

中に入ってすぐのところにある売店でサイラオーグが見えたので、

話しかけてみるとその手には花束があった。

冥界にいくつか用事があったからついでに来たのと、

こいつにイッセーからの伝言を言わなきゃいけなかった。

「これからまた、土台作りだな」

「ええ。もう慣れっこです」

「これはあいつからの伝言なんだが」

「サイラオーグ様!」

俺がイッセーの伝言を言おうとしたときに息を途切れさせた執事が、

眼から涙を流しながらこちらに走ってきた。

「ミ、ミスラ様が!」

その言葉に慌てて病室へ向かったサイラオーグを追いかけ、俺も病室へ行くとそこには、

ありえないと言った表情で立っている医者たちが大勢いた。

中には神の奇跡とまで口づさんでいる奴もいた。

サイラオーグはその医者をかき分けて病室の中に入ると、

そこには外の景色を見ている女性。

あいつは言っていた……彼女の中は全てが止まっていたが唯一、動いていた物があったと。

それは唯一、息子の状態を知ることができるもので……それはテレビだった。

テレビだけが動き続け、サイラオーグの様子を映し出していたらしい。

恐らく、それを見ていた彼女は息子が最大限に活躍した様子を見たとき、

目を覚ます…………と。

「母上……分かりますか?」

「ええ……愛しのサイラオーグ……」

愛する息子の頬を撫でようと震える手をサイラオーグは大きな手でそれを掴んだ。

「ずっと、貴方を見ていました…………強くなったのですね」

その一言の後、サイラオーグは眼から一筋の涙を流した。

「帰りましょう……あの日、あの約束をしたあの家に」

俺はその時点で病室から立ち去った。

なあ、イッセー…………もしも、サイラオーグとのゲームが決まっていなかったら、

ミスラ様は目覚めなかった。

お前と戦ったからこそ起きた奇跡だ…………やっぱり、お前は最後の希望だよ。




こんにちわ~Kueです。
最近、黒歌の方を更新できていませんが……すみません。スランプです。
年内には必ず書きあげて行進するのですが……。
さて話は変わり、ガイム!
やっぱりなんか分からないけど新鮮さを感じるんですよね~。
あと何で今回は一話更新かというと区切りが良かったからです。
それでは!
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