翌日の深夜、部長の使い魔である紅色のコウモリに呼び出され、
テレポートでアーシアとともに旧校舎の部室へと転移すると既にオカルト研究部員全員と、
グレイフィアさんが集合していた。
その雰囲気はどこか、いつもの部活の際に空気とは大きく違っていた。
「相も変わらず見たことのない魔法を……彼は魔術師の家系ですか?」
「いえ、普通の一般人よ」
どうやら俺が使う全ての魔法は悪魔からしたら見たことのない未知の魔法らしい。
「そんなことは良いわ。皆には言いたいことが」
直後、床に赤色に輝く魔法陣が出現し、そこから膨大な量の炎が噴き出し、
部室の温度が一気に上がった。
『ウォーター、プリーズ。スイー・スイースイー』
籠手を包み込むようにして水が生まれ、赤色だった籠手が青色に変わり手のひらから、
水を発生させて辺りの炎に水をかけ、消火した。
「ちっ! 俺の炎に水をかけた奴は誰だ」
不機嫌そうな声を上げながら魔法陣から赤いスーツを着崩し、
ネクタイもつけずに胸が見えるまでボタンを開けたチャライ系の男が出てきた。
「ま、良いか。会いに来たぜ、愛しのリアス」
軽々しい言葉を吐きながらチャライ男は部長の腰に手を回すが、
すぐにその手は部長に払われた。
「厳しいね~。おれたちは結婚を約束した中だろ?」
どうやら俺の予想以上に事態は複雑かつ、面倒くさいものらしい。
直後、チャラ男の後ろの床に魔法陣が出現するとそこから大勢の美女たちが現れた。
「ライザー様。いつも言っておりますが我らとともに転移してください」
「卷族と一緒に飛ぶかよ。さ、リアス。式場についてなんだが」
「……結婚はしないわ。とりあえず座ってちょうだい」
部長がそう言うとチャラ男はため息をつきながらもソファに座った。
それから約十分ほど、長い話が二人の間で行われた。
話しを要約すると今の悪魔は純血非常にが少なく、純血の数を増やすことは重要とされ、
純血同士の縁談が必要不可欠となった。
よって、相手側のお家であるフェニックス家と部長側のグレモリー家との間で、
純血同士での縁談を組んだらしいんだがその縁談は部長の意思とは反するものらしく、
断っているんだがなくならないらしい。
部長が「自分の婿は自分で決める!」と言っても、向こうさんは
「大学も卷族も君の自由にすればいい。ただし、婿に関してはもう、
わがままを言っていられる時代じゃないんだ」といってどっちつかずの混戦状態。
これは話には関係ないんだが向こう側の卷族はみんな女、女、女。
そんな中、俺は暇つぶしに手のひらに水を生み出してポチャポチャと、
水の玉をつついて遊んでいた。
「これも魔法で作り出したんですか?」
アーシアが興味津津の様子で俺の手のひらの浮いている水の玉をつついてくる。
「いい加減にしてちょうだい!」
部長の突然の怒声に驚いたアーシアの指がブスっと深く、
水の玉に突き刺さり水の玉が破裂した。
「貴方とは結婚しない!」
部長がそう言った瞬間、奴の周りに火の玉が次々に生み出されていき、
俺たち下僕にだけ殺気をぶつけてきた。
「リアス。流石の俺も怒るぞ。この婚約は」
俺は呆れながらも空中にいくつもの水の玉を瞬時に作り、
火球にぶつけて消火すると同時に全員を護るように水の壁を出現させた。
驚いた様子でこちらを振り返る部長に対して、チャライ男は俺の方を睨みつけてくる。
「お前か。さっき、俺の炎を消した奴は」
「この密室で炎を使わないでほしい。アーシアが火傷するだろ」
一応、水で出来た壁を立ててはいるが絶対ということはない。
俺はゆっくりとチャライ男に向かって歩いていき、鼻先が当たる距離まで近づき、
たがいにメンチを切る。
「御家のことは知らないが……俺たちに迷惑をかけるな。“邪魔だ”」
「あ? 下級悪魔が。調子に乗るなよ」
お互いに同時に魔力を上げていき、相手をけん制する。
魔力が上がっていくにつれてあたりの空気が重くなっていき、
ミシミシと旧校舎の壁が悲鳴を上げていく。
「そこまでにしてください」
俺達に割って入るようにグレイフィアさんが割り込み、
俺達を無理やり引き離した。
「この話が膠着状態になることは予想済み。
この話の決着はレーティングゲームでおつけになってはいかがでしょうか?」
レーティングゲーム――――――その一言にチャラい男もその卷族も、
また部長や俺とアーシアを除いた奴らも驚いていた。
「レーティングゲーム……はっ。最初から仕組まれていたのか、
それとも偶然かは分からないが……いいだろう。リアスが勝てばこの縁談は無しですよね?」
チャラい男がそう言うと、グレイフィアさんは静かに首を縦に振った。
目線で部長にも問うと部長も何も言わずに首を縦に振った。
「では、ゲーム開始日は十日後といたします」
その一言で今日は解散となり、副部長と部長は部室の奥に引きこもり、
俺達は帰宅、とのことだった。
翌日の朝、突然の訪問客に俺とアーシアは戸惑っていた。
訪問客―――――それは大きな荷物を持った木場、塔城、姫島、部長そして、
グレイフィアさんが家の玄関の前に立っていた。
「強化合宿に行くわよ」
どうやら俺たちに対する連絡が何らかのトラブルで行き違いになったらしかった。
母さんのことはどうするんだと聞けば、グレイフィアさんが母さんの世話を俺が、
出かけている間にしてくれるらしい。
「イッセー様。少しお話が」
準備をしていると背後からグレイフィアさんが話しかけてきた。
「なんですか」
「……貴方はいずれ、冥界を背負うことになるでしょう」
「……意味がわかりません」
「今はそうでしょう……ですが、いずれ貴方はこの意味を理解します」
そう言い残してグレイフィアさんは部屋から出ていった。
あとを追おうかとも思ったが外から部長の声が聞こえ、あとを追うのを止めて、
部長のもとへと向かった。
「全員揃ったわね。イッセー、ここから南の方角に私の魔力が感じられるはずよ」
なんとなく部長の言いたいことは理解した。
俺は目を瞑り、部長の言うとおり南の方角へと意識を向けると確かに部長の魔力を、
微弱ながらも感じられた。
『テレポート。プリーズ』
「この魔法陣に乗れ」
そう言い、全員が魔法陣に乗ったのを確認した俺は魔法を発動し、
部長の魔力が微弱に感じられる場所へと転移した。
光が収まると同時に目を開けるとそこは山の中にある小さな小屋だった。
「ここはグレモリー下にある小屋でね。露天風呂もあるわよ」
部長の紹介を聞きながら、小屋の中に入ると木の匂いが俺達を出迎えた。
これといって特別な仕掛けが施されている様子はなく、
普通にどこの山の中にでもある小屋だった。
「ここで鍛錬を行うわ。初日の今日は基礎鍛錬、および自分の弱点の部分を見つけて、
それ以降はそこを修正していきながら対人戦をこなしていく予定よ。
イッセーと祐斗は一階で着替えて頂戴ね」
そう言い、女性達はジャージが入った袋を片手に二階へと上がっていった。
俺たちもジャージに着替え、女子たちが降りてくるのを待つ。
「そう言えば、イッセー君は何かスポーツとかは?」
「何も。ずっとアルバイトだよ」
「バイトか……なにか事情でも?」
その問いに対して黙って答えを言わずにいたら、
木場は空気を読んでかそれ以上は俺に質問をしなくなった。
その数分後、女子たちが降りて来て外で鍛錬が行われることとなった。
おはようございます!