「ドラゴン……俺が気に食わないか」
猛スピードでシャルバを追いかける中、俺は宿るドラゴンに声をかけると、
装着している籠手に埋め込まれている宝玉が淡く、輝きだした。
『ああ、気に食わない。俺は三種族を恨んでいる。俺をこんな惨めな姿にしたことを。
だから俺は宿ってきた主どもを使ってそれを晴らしてきた……だが、貴様は何だ!
三種族の和平のために戦い、挙句の果てには悪魔の女を愛した! 何故だ!
何故貴様は悪魔を! 堕天使を! 天使を受け入れる!』
タンニーンの言うとおりだな……ドラゴンはその巨体、強大な力ゆえに、
下の存在を見下す傾向があると……こいつは巨体サイズの傲慢さを持っていたんだな。
ならばその感情を俺の答えで完璧に消そう。
「ならば俺も問おう。何故、貴様は俺に力を貸す。何故、
俺が絶望した時にセイグリッドギアの力を使わせた。
お前なら使わせなかったことも可能だったはずだ」
その質問にドラゴンは答えなかった。
「好きなだけ俺にあたればいいさ。それでお前の鬱憤が晴れるのならそれで良い。
それと俺は悪魔の女を愛したんじゃない……リアス・グレモリーという一人の女を、
心の底から愛しただけだ。そこらの人間が女を愛するのと同じだ」
ドラゴンへの話はそこまでにし、
体を大きく回転させて追いついたシャルバを翼でたたき落とし、
その際に離れたオーフィスを屋上の屋上へと転移させた。
「貴様!」
「俺は覚えていないんだがお前をボコボコにしたらしいな」
それを言うとシャルバは全身から魔力を迸らせ、表情を更に憤怒の色に染めた。
どうやらそのことはこいつからすれば屈辱的なことらしい。
「旧魔王派の奴らと戦って分かったことがある……どいつもこいつも、
自分が魔王になれる器だと思っている」
「そうだ! 我らこそがこの世界を統べる存在! 偽物の王が存在してはいかんのだ!」
「一つ言っておいてやる。確かに今の魔王様がたはお前たちからすれば偽物で、
気に食わないかもしれないがな……あのお方がただからこそ和平が成り立った。
たとえ、お前達が旧魔王の血を継いでいるとしても戦争を続けようとしたお前たちに、
魔王になる資格があるどころか悪魔と名乗っていい資格などない!」
「人間がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャルバは激昂し、目の前に魔法陣を展開しようとするがそれよりも早く、
奴に近づき、両腕のクローで体を十字に切り裂いた。
「今の一撃で分かった……お前はやはり魔王の器ではない」
「ふざけるなぁぁぁぁぁ! 俺こそが魔王!
俺こそがこの世界を統べる真の魔王なのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャルバが両手から放ってくるいくつもの魔力弾を俺は避けずにあえて受けていく。
調子に乗ったシャルバはそのまま次々と魔力を消費して、
魔力弾を俺に向かって放っていく。
「ハハハハハハハ! 何がウィザードだ! 何が最後の希望だ!
所詮、貴様は汚物同然の汚らわしき転生悪魔! 純血の悪魔こそ絶対!
この世界に転生悪魔など存在っっっ!」
死んだと思っていた相手が煙の中から無傷で現れたことに調子良く叫んでいた
シャルバは叫びをやめ、口を大きく開けてかたまった。
魔力の質も……量も……器も……全てが屑以下だ。
改めて今の四代魔王様が世論から素晴らしいと言われるのを理解できた。
……シャルバを生かすことはできない。
「ごっばぁ!」
高速で近づき、奴の腹に蹴りを加え、蹲ったところに上から一回転して、
ドラゴンの尻尾を叩きつけ、さらにもう一発蹴りを加えて地面にたたきつけた。
「どうした? 自称真の魔王さん」
「うごあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
獣のような叫びをあげながらシャルバはその手に持った矢を俺に突き刺してきた。
「ごぶっ!」
突如、体全身に形容しがたい激痛が走っていく!
オールドラゴンも安定していたのが嘘のように不安定になり、
いまにも崩壊しそうなレベルにまで落ちぶれてしまった。
グアァ……まさか…………サマエルの毒か!
「ハァ……ハハハハハハハ! どうだ! 辛いだろう!
さっきの矢の先端にはサマエルの毒が塗り込んである! ハーデスから借りたものだ!」
至近距離から魔力弾をぶち当てられ、ドラゴンの鎧が砕け散っていきながら俺は、
地面にたたきつけられ、シャルバに頭を何度も踏まれる。
「どうしたどうした!? ウィザードと呼ばれる男が情けないものだなぁ!」
ク……ソ…………意識が…………遠のいて……
――――――――――必ず帰って来て。
『Welsh Dragon Balance Breaker!』
「うおあぁぁ!」
いまにも意識が切れそうになった時、愛する女の声が聞こえ、
最後の最後に使うはずだった力を今、発動し、
赤龍帝の赤い鎧を身に纏い、立ち上がる。
俺は何度でも立ち上がる! 俺が最後の希望だ!
「おぁおぁおぁおぁおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「バ、バカな! ウェ、ウェルシュドラゴンと言えば二天龍が一つの赤龍帝!
き、貴様その力を隠して!」
「うおおあぁぁぁ!」
「ごあぁ!」
背中から魔力を噴射し、奴に猛スピードで接近し、奴の顔面に深く拳を突き刺し、
殴り飛ばした相手に向かってもう一度、猛スピードで近づき、空中へ蹴りあげ、
何度も倍加して得た魔力を籠手の先から巨大な球状にして、
奴に思いっきり叩きつける!
「おあぁぁぁあぁぁぁぁぁ!」
空間の崩壊を手伝っているのではないかと考えるくらいの爆音と爆発が何度も発生し、
シャルバは全身血みどろに塗れながらも立ち上がった。
だが、すでに奴の魔力はかなり少なくなっている。
「げぼぉ! うぅぅぅ! おおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
背中からドラゴンの翼が生え、奴に向かって二つの翼が伸びていき、
その体に二つの穴を開けたと同時に腹を殴り、建物の屋上まで殴り飛ばした。
「オ、オーフィス! へ、蛇を! そうすれば再び、
前魔王クラスにまで力が上がり、奴を倒せる!」
だが、オーフィスは首を左右に振る。
「我、もう汝たちに蛇作らない。それに我の力、
曹操によって削がれた。今、蛇作ることができない」
オーフィスの告白にシャルバは表情を絶望に染める。
今、目の前に絶望した奴がいるか…………どんなに、
金を積まれてもこいつの最後の希望になるのはごめんだ。
俺は奴の頭を鷲掴みにし、空中へと放り投げると鎧を解除し、
フレイムの赤い鎧を身に纏い、ビッグの魔法を三回連続で使い、
そこへドラゴンの頭部を突っ込むと数倍にまで巨大化したドラゴンの頭部が現れ、
その口から大量の炎がちらりと見えた。
もてよ…………俺の身体。
「消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! シャルバぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その叫びとともに膨大な量の炎が火炎放射の方にまっすぐ伸びていき、
シャルバを包み込む!
「ぎゅおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! わ、我こそ真の魔王!
シャルバ・ベルゼブブぅぅぅぅぅぅぅ!ぎょぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
炎が大爆発を起こし、奴は完全に塵となってこの世から消え去った。
体が限界を迎えたのかドラゴンの頭部が砕け散り、鎧も呆気なく砕け散った。
俺はすでに感覚がなくなりかけている体を動かしながら、
オーフィスへと手を伸ばす。
「……何故、我助けた」
「さあ……な……げぼっ! ただ……お前が……悪の親……玉には見えなかった」
「我、静寂を得たい。だからグレートレッドを退かす。曹操達そう約束した」
そうか……ただ単にこいつは静寂を得るために、
曹操の口車に乗せられ勝手にテロリストの親玉にされただけの存在。
俺は彼女の手を握り、歩き出そうとしたときについに足の感覚がなくなり、
ホテルの屋上からオーフィスとともに落ちた。
「げほぅ!」
背中に強い衝撃が走り、口から大量の血反吐が吐きだされる。
「ハァ………………終わ……りか」
霞む視界――――――――先ほどまで聞こえていた爆発音も聞こえない――――――。
…………悪い…………そっちに…………帰………れな………い。
「…………ドライグ……話を聞きたい」
『なんだ』
「この者の話が聞きたい」
『ふん。随分と変容したようだな…………良いだろう。教えてやる。
この男が生まれ、ウィザードと呼ばれるまでに至った軌跡を話してやる』
僕―――――木場祐斗の目の前でイッセー君を強制召喚するための用意がたった今、完了した。
元龍王のタンニーン様、サマエルの毒で傷ついているヴァーリにも協力してもらった。
シャルバが暴走させ、生み出した怪物たちは冥界を蹂躙し、
町や村などを次々と破壊しだしていると聞いた。
無論、魔王様も動くと思われたけど敵サイドには神をも屠る槍がある。
それがネックとなって魔王様がたは動けないでいる。
だから力のある若い悪魔たちに指令が下されている。
イッセー君…………冥界の危機に君の力が必要なんだ!
僕たちだけの最後の希望じゃなく、この冥界の最後の希望になってほしいんだ!
「開くぞ!」
先生の声の直後、眩い光が僕の視界を塗りつぶしていく。
数秒くらい経つと眩い光が消え、視界が元に戻った。
そこにはイッセー君がいる―――――――――はずだった。
目の前にあるのはただ単にイーヴィルピースが八つ。
…………嘘だ。
「バカ野郎っ!」
「…………兵藤一誠」
周りのみんなも今の状況が分かったのか、各々の反応を示していく。
今日この日、僕たちの最後の希望は……消えた。
今日ゴッドフェスだね。