深夜、僕、部長、朱乃さん、小猫ちゃん、レイヴェルさん、ア
ーシアさんの六人で地図に書かれている場所へと向かった。
そこは僕達が住んでいる人間界の場所から電車で、
八駅ほど離れた場所にあるアジュカ様の隠れ家の一つの廃ビルだった。
そこの一階に入るとそこで悪魔の女性がいた。
「お待ちしておりました、主は最上階にいます」
その言葉通り、エレベーターで最上階へ行くと、
イスに座ったアジュカ様がそこにいた……でも、僕たち以外のお客さんもいた。
暗闇の中、ハッキリとは見えないけど恐らく旧魔王派の構成員と思われる悪魔が数人、
そしてジークフリートが立っていた。
「リアス君。少し、待っていてくれないかな? ……すぐに片付ける」
その一言が発されたあと、ジークフリート以外の人物がいっせいに動き出し、
一人はその場から動かずに大質量の魔力の塊を、
もう一人は空中から同じように大質量の魔力弾を放つ。
近くでイッセー君の魔法を見てきたからかあまり派手には感じなかったが、
威力は十分にあるように見えた。
「ふむ……」
しかし、突然アジュカ様に当たろうとしていた魔力の塊が、
方向を変えて構成員へと向かっていく!
方向を転換した魔力弾は次々に構成員の身体を突き破っていく!
う、動かずに圧倒するのか……これがアジュカ様のカンカラーフォーミュラ。
「俺の能力を理解した上で来たと思っていたんだがね…………君たちが蔑んでいた、
ウィザード君なら立ち上がったんだけどな」
「あんな奴と一緒にするな!」
残った構成員が腕を突き出し、魔法陣を展開してそこからアジュカ様めがけて攻撃を放った瞬間、
構成員に向かって攻撃が放たれ、塵となって消滅した。
「ベクトルを逆にさせてもらったよ……さて、残りは君だ」
「なるほど。これが魔王の力というものか」
ジークフリート…………彼は僕が倒す。
「どうやら君の相手は後ろの剣士君のようだよ」
アジュカ様は椅子を動かし、邪魔にならないところへと移動し、
ジークフリートの相手を僕に譲ってくださった。
感謝します、アジュカ様。
僕は聖魔剣をひと振り作り出すと彼はバランスブレイクを発動し、
全身から龍の腕が四本現れて帯剣している伝説級の魔剣を全ての腕で抜き取る。
グラム、バルムンク、ノートゥング、ディルヴィング、
ダインスレイブ……彼が扱う魔剣は全て伝説級のもの。
そして僕たちは同時に走り出す――――――。
「「はぁぁぁ!」」
僕の聖魔剣による突きと彼の五本の魔剣と一本の光輝く剣による突きが衝突し、
辺りに凄まじい衝撃波がまき散らし、屋上の床を抉っていく。
僕の聖魔剣の突きでは勝てない!
僕は衝突した直後に聖魔剣を消失させ、高速でジークフリートの背後へと周り、
目の前に魔法陣を展開してそこから大量の聖魔剣を放出する!
「よっと!」
ジークフリートは射出された剣をいくつか魔剣で砕きながら、
その場から離れて距離を取ろうとするが僕はそれを許さず、
すぐさま二振り創造して高速で移動しながらジークフリートに斬りかかる!
「ふん!」
グラムとディルヴィングの最強の破壊力を持つ魔剣によって僕の二振りの魔剣は、
あっという間に砕け散る……でも僕はすぐさま創造し、再び斬りかかっていく。
「はぁぁぁぁぁ!」
何本砕かれようともすぐさま創造し、
隙を作らないように連続で剣をジークフリートに叩きこんでいく!
「バルムンク!」
彼が叫びながらつきだすと剣から渦を巻くように衝撃波が発せられ、
僕に向かってくる。
渦を消すには逆回転だ!
「はぁ!」
僕はそれぞれの手に四本の聖魔剣を作り出し、迫ってくる渦とは逆向きの回転になるように、
剣を振るい、渦を作り出してそれにぶつけて一瞬で相殺させ、再び彼に斬りかかる!
「やるねえ! ならこれはどうかな!?」
振るわれた剣から巨大な氷の柱が大量に生み出された。
ダインスレイブの能力か!
僕は手にある四本の刀に炎を生み出す能力を付加させると同時に、
ドラゴンスレイヤーの力も付加させて同時に振るうとドラゴンの形をした炎の塊が放たれ、
全ての氷が一瞬で溶かされ、そのまま炎はジークフリートへと向かっていく。
「この程度」
ジークフリートが六本の刀を振るおうとした瞬間! ドラゴンが次々に分裂していき、
小型のドラゴンになって彼の攻撃を意志があるかのように避けると、
背後で再び一つのドラゴンとなりぶつかる!
「ぐっ!」
「今だ!」
僕は八本の聖魔剣の能力を全てドラゴンスレイヤーに集中させ、
隙だらけのジークフリートの身体を一閃する!
「ぐっ!」
血をまき散らしながらジークフリートは距離を取り、
その場から跳躍して給水塔の上に立った。
「ハァ……なるほど。君たちの成長速度は凄まじいようだね。
あの空間での戦闘は全く本気じゃなかったという訳か……マズイね……悪いが、
奥の手を使わせてもらうとするよ」
ジークフリートは背に月の光を受けながらポケットからピストル型の注射器を取り出し、
首筋へ突き刺してその中身を注入していく。
途端に彼の魔力が跳ね上がり、四本の龍の腕がバクバクと鼓動をうちながら、
肥大化していき、四本の伝説級の魔剣と融合していく。
さらに彼の顔に血管が浮き彫りになり、筋肉が肥大していき英雄派の制服が破ける。
彼のシルエットが人間から……例えるなら蜘蛛の化け物のシルエットへと変化した。
な、なんだこれは…………さっきの物はドーピング剤のようなものか。
『君の考えていることであっているよ。さっきのはシャルバの血液だよ。
僕達の研究はある一つの結果を生み出した。旧魔王の血は、
セイグリッドギアを大幅に強化させるんだ。
これを僕たちはカオス・ドライブと呼んでいる』
カオス……混沌……いや、この場合は魔人と意訳した方が良いかもしれない。
『さあ、行くよ!』
彼の姿が消え去り、僕は聖魔剣を束に纏めて楯のように展開する――――が、
それはあっけなく五本の魔剣と一本の光輝く剣が僕の身体に突き刺さる!
「がっ!」
鮮血をまき散らしながら僕は飛んでいく。
「……き、木場さんまで死んでしまう」
アーシアさんの弱々しい声が聞こえた後、一瞬淡い光が見えた。
……セイグリッドギアは人の気持ちに応える……今の彼女の精神状態では、
本来の回復力は発動できないのか。
体が動かない……伝説級の魔剣の一撃を五本同時に、
受けたんだ……即死でもおかしくない。
『木場祐斗。これで終わりかい? 呆気ないね』
呆気ないか……そうだ。もう、僕の体は動かない。
僕が……僕が……みんなの最後の希望に……ならないといけないのにっ!
……イッセー君。
ポケットから落ちた彼から貰った魔法陣が書かれた紙を、僕が手に取った瞬間、
魔法陣が輝きだし、突然、周りが真っ暗になった。
「こ、ここは」
「エンゲージ・リバース。使用者の精神をある場所へと飛ばす」
今まで普段から聞いていた声が聞こえ、
振り返るとそこには赤色の鎧を来た人物が立っていた。
……イ、イッセー君?
「な、なんで」
「その魔法陣には俺の残留思念の含ませた魔力を入れてある」
僕は痛む体を動かし、彼の足もとで頭を下げる体勢を取った。
「イッセー君……ごめん! 僕は……僕はみんなの最後の希望になれなかった!」
両眼から涙があふれる……それは悔し涙だった。
彼が居なくなった今、僕が皆の最後の希望になってみんなを、
引っ張って行かなきゃならないのに皆の目の前で今にも死にそうになっている。
「はぁ……木場」
彼は一つため息をつくと僕の頭を鷲掴みにして顔を無理やり上げさせた。
「俺がいつお前にあいつらの最後の希望になれって言った?」
「え?」
「あいつらの最後の希望は俺だ。お前は最後の希望にはなれない……でも、
お前でもあいつらの心の支えとなり、あいつらの希望にはなれる」
「みんなの……希望」
「そうだ。俺はあくまで最後の壁だ……お前はちゃんと、
あいつらの希望になっている」
僕は彼の言い分に涙でぐしゃぐしゃになっているであろう顔を、
左右に振って否定した。
「違う……違うんだ」
「違うことはない。現にお前は皆が泣いている中、泣かなかった。
その姿に皆は影響を受けたはずだ。それがたとえどんな小さい影響であったとしても、
あいつらは絶望しなかった。お前も泣いていれば例え、
リアスの言葉を聞いてもあいつらは動かなかったはずだ」
そこまで言った時、彼の手が赤色の光へと徐々に変わり始めた。
「っ……時間らしい」
「イ、イッセー君!」
「木場……まだお前は立てる。振るう剣がなければあれを使え……………。
お前だけに…………許す」
その言葉を最後に彼は消滅した。
…………ありがとう、イッセー君。
『その魔法陣は……何をする気だ』
低いジークフリートの声が聞こえ、意識を取り戻したとき、
僕のポケットに入っていたもう一枚の紙が魔法陣となり、目の前に浮いていた。
立つんだ……絶望なんかしない……僕は最後の希望ではない……でも、
皆が絶望しないように護ることはできる……行こう。共に!
僕が魔法陣に手を入れた瞬間、赤色の輝きが発せられ、
深夜の屋上を赤く照らし出していく。
拳を握る……そこにはあれが握られている。
『まさか!』
徐々にその姿を見せるあれ。
僕だけに使用の許可を出してくれた世界で一番強い剣だ。
「ドラゴンスレイヤー・アスカロン。さあ、ショータイムだ!」