「がぁぁぁぁぁぁ! がっ!」
巨大になった炎の翼が俺を挟み込むようにして動き、
それをまともに受けた俺は全身を焼かれるような痛みを感じながら壁に激突した。
以前じゃ考えられないほどに強い! いったい何回死んだんだ!
「イッセー様!」
「死んだあとの強化も幅がでかくなってきている。
このまま死に続けたら俺がこの世界の全ての戦士を殺すかもな」
「はぁ!」
突然、横から木場が聖魔剣をフェニックスの突き刺そうとするがそれは避けられる……だが、
フェニックスが避けて、移動した場所に魔法陣が出現し、そこから天井に向かって雷が立ち上った。
木場とあの雷……来たか!
「ごめん、遅くなって! 小猫ちゃん!」
「部長は確保済みです」
小猫が傷ついたリアスを肩に担いだ状態で俺の隣にやってきた。
ここはいったん、退却するとしよう。
「一旦引こうか。イッセー君」
「あぁ、そのつもりだ」
「逃がすかよ! 魔法使い!」
フェニックスが火球をこちらに向けて放ってきた瞬間に、
リアスの家に転移先を設定したテレポートが発動し、
俺達はフェニックスの火球を受けずにリアスの自宅に転移出来た。
危なかったな……もう少し遅かったからあの火球を受けて魔法が中断された。
「アーシア、取り敢えずリアスを頼む」
「はい! すぐにイッセーさんも治療します!」
そう言い、アーシアはすぐさまセイグリッドギアを発動させて手から癒しの光を出して、
リアスの傷を癒していく。
成長した今のアーシアならそう時間もかからずにリアスを傷を完治させるだろ。
俺は火傷の痛みを我慢しながら、朱乃と小猫の肩を借りて壁にもたれかかった。
ふぅ……どこまで奴は強くなるんだ……魔法を中断させるほどの力を手に入れた以上、
俺が奴を倒すことができる可能性があるのは最後の手のオールドラゴンのみ。
だが、それで倒すことが出来たとしても奴は再び蘇る。下手をすれば、
今の俺を大きく上回る力を手に入れるかもしれない。そうなれば魔王様がたが動かなければならないが、
ただでさえ英雄派の後始末で忙しい身だ……どうすればいい。
「兵藤一誠」
その時、フェニックスの兄弟が俺に近づいてきた。
「どうした」
「やつに関しては俺たちに任せてほしい」
「……ふざけっっ!」
ライザーに掴みかかろうとしたときに火傷の部分が痛み、
倒れかけたところで朱乃に支えられてどうにかして立つことが出来た。
「兵藤君。君がそう言うのも分かる。だが、奴はフェニックスの者が倒さなければならないんだ……頼む。
今回は私たちに譲ってくれないか」
「確かにフェニックスの言い分は分かる……だが、
こっちは恋人を傷つけられたんだ。黙っていられるわけがねえだろ」
「……イッセー様。必ず裏切りのフェニックスは私達が倒します……もしも、
私達が倒せなかったときは……イッセーさんが倒してください」
そう言い、レイヴェルは俺に頭を下げた。
それを見た二人もレイヴェルと同じように頭を下げてきた。
フェニックスの言い分と俺の言い分……どちらが、重いと言われれば……即答でフェニックスだと答える。
奴らは一族総出で裏切りのフェニックスを倒そうとしている……だが、
俺は私怨で奴を倒そうとしている…………。
「…………分かった。レイヴェルの条件を飲む」
そう言うとレイヴェルは俺に笑みを浮かべて礼を言い、兄たちとともに別室へと向かった。
ふと、横を見てみると小さく笑みを浮かべている朱乃がいた。
「なんだ、その笑みは」
「いえ。貴方がフェニックスの方々に譲ったことが意外で」
「ふん…………」
その後、リアスの治療を終えたアーシアによって俺も傷が癒された。
「ほぅ。フェニックスが組織を抜けると」
「はい。一応、説得のために何名か送ったのですが全員、殺されて逆にこちらに送り返されてきました」
「……やはり、頭の中までも炎で出来た馬鹿でしたか。仕方がありません。
彼が抜ければ組織にとっては痛手です。彼を封印から時に行きましょう」
「やつ……ま、まさか奴をですか!?」
「ええ、彼が入ればフェニックスの不足分どころかお釣りが帰ってきます」
「し、しかし奴は旧魔王が四人がかりでやっと封印が出来た存在です。大人しくこちらに下るかは」
「別に下らなくてもいいのですよ」
「は?」
「彼が……ファントムが兵藤一誠の魔力を喰らってくれれば御の字です」
アーシアの治療を受け、俺はベッドで眠っているリアスの手を握りながらかれこれ三十分ほどそばにいた。
一応、医者にも見せたんだがアーシアの回復もあってか火傷の痕も綺麗に消えており、
命に別条はないので一時間もすれば目を覚ますという。
十分前にはフェニックスの三人が討伐へと出かけた……一応、
魔力を探知はしているからどこで戦っているかなどは大まかな位置は分かる。
不死身でなおかつ復活する度に力を増していく奴を倒すにはオールドラゴンしかない。
だが、それでいったとしてもまた奴は復活する……いったい、どうすれば。
ふと見ると、太陽の光がリアスにあたりそうだったのでカーテンを閉めようとしたときだった。
「…………あるじゃないか。奴専用の牢屋が」
「はぁ。今度は女連れかよ」
レイヴェル、兄者、そして俺は不死身のフェニックスと対峙していた。
ただ、あの時と違うのは場所は広い場所で草木は雑草しか見当たらず、
立っている木も建物の見当たらない。
こいつは兵藤一誠と戦うフィールドを選んだんだろうが……俺たちにとってすれば最高にいい場所だった。
ここから半径百キロ圏内に人が住んでいる場所はない……つまり、
奴にフェニックスの鎖を使った際に放出される炎の心配をしなくていいってことだ。
「レイヴェル。君はサポートを頼む、行くぞ! ライザー!」
「はい!」
俺と兄者は背中から同時に炎を噴き出して翼を作り出し、炎を噴き出して推進力を得て、
そのまま猛スピードで奴に突っ込んでいく。
「ま、良いか。魔法使いとの戦いの前のウォーミングアップだ」
そう言い、奴も背中から翼を出して、空中へと上がった。
俺たちも奴に付いていき、空中へ上がると上空から数メートル規模の大きな炎の鳥が、
大量に俺たちめがけて降り注いできた。
「避けるぞ、ライザー!」
俺は翼を羽ばたかせながら数メートル規模の炎の鳥を避けていき、
兄者は炎を目の前に円状にして放出し、数匹纏めて鳥を消し去っていく。
下にはレイヴェルがいるが、あいつもフェニックスだ。
俺はレイヴェルを信じ、そのまま奴のもとへと向かっていく。
「おぉぉぉぉ!」
炎を纏わせた拳を振るうが片腕で防がれた。
「弾けろ!」
その声とともに俺の手首から先が爆発を起こし、奴を炎が飲み込んだ。
飛び散った手首に炎が集まっていき、数秒足らずで手首が蘇った。
炎から奴が出てこない……この程度で殺せるような相手じゃ―――――。
「ごぁ!」
突然、炎から火柱が出てきたと思えばそれは姿をフェニックスへと変えて、
奴の痛烈なパンチが俺の腹に突き刺さり、そのまま地面へと叩きつけられた。
「兄さま!」
「大丈夫だ!」
くそ……あいつ、自分を自由に炎に変換できる術まで身につけやがった。
これからあまり、奴を炎で囲むような攻撃はやめた方が良いな……俺達が使った炎があいつになって、
今の攻撃をくらっちまう。
俺は翼を羽ばたかして、兄者のもとへと飛んでいく。
「ライザー。行くぞ」
兄者のその声で駆け出すと同時にフェニックスの鎖を取り出す。
俺達は奴を左右からはさみこむ形でそれぞれに分かれる。
「はっ! どっちが本物かは知らねえが壊せばいいんだよ! うらぁ!」
奴の全身からボボボボボ! と小さな火球が無数に生み出され、
それが一気に弾けるとマシンガンのように俺たちめがけて放たれ、
空を覆い尽くすほどの小さな火球が隕石のように降り注ぐ!
こ、ここまでの力を出せるのかよ!
「そうだ、奴は……いない!?」
すぐさま奴がいたところへと視線を向けるが奴の姿がなかった。
「ちっ! 一旦よけ」
「うらぁぁ!」
向かってきた一発の火球を避けようとしたとき、突然その火球がフェニックスへと姿を変え、
奴が放った巨大な火球の一撃を受けて鎖が木っ端微塵に砕け散った!
「っ! ちっ! 偽物か!」
「隙ありだ!」
兄者がフェニックスが偽物だと判断した一瞬の隙に鎖を投げ、奴に巻きつかせようとする。
鎖はどこかに触れればその時点から効力が発動する!
逆にいえば鎖に触れている間は俺たちも死ぬ体になっちまう!
だが、この鎖が作られたのは遥か昔だ! 親父曰く鎖の詳しい詳細はまだ、
こいつには話していないと言っていた!
「ふざけんな!」
フェニックスの翼から膨大な量の炎が鎖めがけて放たれ、鎖に直撃する!
バリィィン! という最悪の結果を告げる音が響いた。
「ハハハハハ! 残念だったな! 鎖は砕けた! もう俺を殺すことは」
「やぁぁぁ!」
突然、レイヴェルが空から降って来てフェニックスの腰回りに鎖を巻きつけた!
「なっ! く、鎖!?」
フェニックスの腰回りに鎖が巻かれた瞬間、奴からすさまじい量の炎が放出された!
俺達はすぐさま、その場から離れ、地上に降り立った。
「よくやったなレイヴェル!」
本物を持っていたのはレイヴェルだ。
兵藤一誠から受け取った魔法を一度だけ使える紙を受け取ったレイヴェルが隙をついて、
奴の頭上に転移して巻きつける……作戦成功だ!
「これで……終わったんですのよね」
「あぁ、私達の使命もこれで」
「終わりだったらよかったのにな」
「「「っっ!」」」
上から声が聞こえ、振り返るとそこには腰回りに鎖を巻きつかせたフェニックスがいた。
待てよ……なんで、あいつ鎖を巻かれた状態で動けているんだよ!
兄者だって持っただけでフラフラになったのになんで、
あいつは平然とした様子で俺達を見ているんだよ!
「確かにこいつは俺を死ぬ体にする……けどよ。よく考えろよ……こんなもん、
今の俺を永遠に括りつけられるほど強いわけがねえだろぉぉぉぉぉぉ!」
奴が叫びをあげた瞬間! 奴の背中からすさまじい量の炎が噴き出され、
無理やりフェニックスの鎖を破壊するとその炎は二対の赤い翼となった。
ま、まさかフェニックスの鎖が封印することができる魔力の量を大きく超えてたってのかよ!
「俺の名は! 不死身のフェニックス様だぁぁぁぁぁぁ!」
「……ん……イッ……セー」
「リアス……良かった」
彼女がこの家に運ばれてから三十分とちょっと、ようやく目を覚ました。
俺は安どのあまり、リアスの手をかなり強めに握っていた。
すると、突然リアスが両眼から大粒の涙を流しながら俺の手を握り締め、
謝罪の言葉を連呼し始めた。
「ごめんなさい…………ごめんなさい。イッセー……私が身勝手なことをしてみんなに迷惑を……。
フェニックスも話をしたら分かってくれるんじゃないかって……そう考えて」
リアス……お前はフェニックスと出会って奴に何を見たのかは知らないが、
冥界に戻せるかもしれないと考えたのか。俺は泣く彼女の頭を優しく撫でた。
「気にするな……と言いたいところだが今回は少し、怒るぞ」
そう言い、俺は強めに彼女のデコに凸ピンをかましてやった。
相手を説得しようとするのは止めはしない……だが、
もう少し説得する相手を考えて説得して欲しかったな。
「イッセー……私はもう大丈夫だから……フェニックスを倒してきて」
「あぁ……行ってくる」
俺はもう一度、彼女の頭を撫でてからアーシアを連れてフェニックスのもとへと転移した。
転移した先はかなり暑く、所々の地面に炎があった。
「兄様! 兄様!」
レイヴェルの声が聞こえ、そちらのほうを向くと着ている服の背中の部分が焼き焦げ、
皮膚にも火傷のあとが見えるルヴァル氏の姿があった。
今もフェニックスの能力で傷は治っていってはいるんだろうが……追いついていないな。
ルヴァル氏の治療をアーシアに任せ、上空で戦っているライザーを見た。
血を流しながら裏切りのフェニックスと戦うライザーの姿は、
初めて見た時と比べればかなり違っていた。
もう、前のようにチャラチャラしたようなライザーの姿はどこにも見当たらない。
「がっ!」
フェニックスの蹴りを喰らい、地面に叩きつけられたライザーは俺の姿を捉えると眼から涙を流し始めた。
「フェニックスじゃないお前に頼むのは間違っているってわかってる!
でも、今の俺たちじゃあいつを倒せねえ! ……あいつを倒してくれ! 兵藤一誠!」
「ああ、任せろ」