ハイスクールD×D inウィザード   作:kue

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第九十六話

「バカな。何故、魔力が」

魔力は先ほどの比じゃないほどにまで膨れ上がり、さらに先ほどまで、

初老の男性だった姿がまるで時間が逆行したかのように、

俺たちとそう変わらない年齢を感じさせる好青年の容姿へと変化していた。

じ、時間を逆行させたとでも言うのか!

「ふぅ。この体に戻るのは久しぶりだな」

「何をしたんだ」

サイラオーグの言葉に男性はふっと乾いた笑みを浮かべた。

「俺が死んだときに……いや、正確にいえば俺の身体が死んだとき、

ある魔法を発動するようにしていたのさ。

その魔法は発動者のありとあらゆる時間を逆行させるものだ」

「そんなバカな! 時間を逆行させる魔法など聞いたことがない!」

「当たり前だろ。悪魔の魔術ではなく、これは人間が生み出したのだから」

人間が生み出した……だと。そんなバカな……いや、

ある意味奴の言っていることは正しいのかもしれない。

その昔、人は不老不死を実現しようと様々な実験を繰り返し行っていた時代もあったと聞く。

それに太古の昔は魔法も科学と並ぶ学問だったんだ。

そんな魔術が存在してもおかしくはない……だが、

ノーリスクで時間逆行を発動させるなどあり得ない……なんらかの代償があったはずだ。

「大変だったよ。この魔法を発動させた瞬間から俺は自身が保有している魔力の九割を、

維持費として払ってきたからな。ま、

俺の能力とは相性は差ほど悪くはなかったみたいだがな」

奴の能力……維持費として魔力を一生払って行けるほどの魔力なんぞ、

俺だっておそらく持たない。奴は何かしらの力で魔力を増やしたのか?

もしくは……他種族の魔力を持っていることから何らかの力で相手の魔力を奪ったか。

さまざまな種族の魔力を吸収していく過程で、

そいつが使っていた術などを己の物にしていてもおかしくはない。

「貴様の未知の魔法。頂くぞ」

『ドラゴタイム。セットアップ・スタート!』

俺は本能的にやばいものを感じ、ドラゴタイマーを作動させて三体の分裂体を作り出し、

レバーを二回同時に叩いた。

『オールドラゴン、プリーズ』

全ての分裂体が俺と一体化し、全てのエレメントの武装が全身に装着された。

「サイラオーグ! 全力で行くぞ!」

「あぁ!」

「来い。全て粉砕してやる」

三者ともにそれぞれの翼で空中に浮かびあがる。

「はぁ!」

ドラゴンの頭部から火炎放射のように炎を吐きだすが相手は槍を片手でクルクルと高速で回転させて、

炎を掻き消していく。

「こちらにもいるぞ!」

闘気を拳に集中させ、相手に殴りかかるサイラオーグ。

だが、ファントムはそれを先ほどと同じように硬化させた右腕で防いだ瞬間、

サイラオーグが大きく吹き飛んだ!

まさか、衝撃だけをサイラオーグに返したのか!

「よそ見をするなよウィザード!」

サイラオーグの方を見ていた時に上から声が聞こえ、

無意識でクローを交差させてあげた瞬間、バキィィン! 

という無残な音ともにクローが一瞬で砕かれ、縦にまっすぐ槍で切り裂かれた。

「ぐぁ!」

ギリギリ、頭を横に向けたおかげで頭から真っ二つに切られるということは避けれたが、

鎧が一撃でまっすぐに砕かれてしまった。

ありえない……いったい、何の能力を使って俺の鎧を砕いた!

「兵藤一誠!」

「貴様はいらん」

「ぐぅ! な、なんだ!?」

サイラオーグが俺のところへと突っ込もうとしたときにファントムが奴に、

手のひらを向けると突然、サイラオーグの動きが止まった。

な、何か見えない物で拘束しているというのか。

サイラオーグは必死に千切ろうと腕に力を加えるが全く、

千切れる気配は見えず、逆にさらに強くなっていた。

魔力で作った縄のようなものか! でも、何も感じない!

「くそ!」

『チョーイイネ! サンダー! サイコー!』

サイラオーグを護るように立ち、ドラゴンの形をした雷撃を魔法陣から放つが、

奴も同じように魔法陣を展開させてドラゴンの雷撃を受け止めた。

なんだ……次は何が来る。

「知ってるか? この世界には魔法を反射できる術があるんだぜ?」

「っっ!」

気づいた時はすでに遅く、何倍にも強化されたドラゴンの雷撃が俺たちに反射され、

俺達の方へと向かってくる!

「くっ!」

後ろには動けないサイラオーグが……くそ!

『ディフェンド、プリーズ』

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

普段よりも魔力を消費し、大きさを変えたディフェンドの魔法陣を目の前に展開して、

ドラゴンの雷撃を迎え撃つ……が、徐々に魔法陣にひびが入っていく。

「ぐ! ぐぅぅぅぅ!」

魔力をさらに消費し、魔法陣を強化しようとした瞬間、

壁が砕け散り、雷撃が俺達を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げはっ!」

「ほぅ……動けぬ仲間を庇って全ての威力を受け止めたか」

オールドラゴンの鎧は完全に砕け散り、

地面に叩きつけられた際に何かで頭を切ったのか血が流れおちてくる。

未だにサイラオーグは見えない何かで動きを拘束されている。

「やはり貴様の魔力は素晴らしいものだ。頂くぞ」

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!」

槍が斜めに振り下ろされ、切り裂かれたかと思いきや血飛沫や痛みが出てくるわけでもなく、

胸に斜めに走る時空のひずみらしきものが現れるとそこへファントムが入り、傷は消滅した。

「がぁ! うあっぁ!」

「バ、バカな! ファントムが兵藤一誠の中に!」

ようやく拘束が解けたのかサイラオーグが俺の傍にまで寄ってきた。

感じる……俺の魔力が徐々に減っている……まさかあいつ、

俺の中に入ったことで魔力を生産している場所へ行って直接魔力を!

『エンゲージ・プリーズ』

「サイラオーグ! 奴を……倒せ!」

「わ、分かった!」

サイラオーグは不審がりながらも俺が展開した魔法陣へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……ファントム!」

「また貴様か! 邪魔をするな!」

兵藤一誠の魔法により見知らぬ空間へと降り立った俺――――サイラオーグ・バアルは目の前で、

何かを吸収していたファントムにすぐさま殴りかかるが槍によって拳が防がれ、

そのまま横に走ると何もなかった場所から突然、

ビルが大量に立っている場所へと移り変わった。

「ふん!」

俺は蹴りを相手の顔めがけて振るうも金属レベルにまで硬度を上げた相手の腕によって、

蹴りが防がれる……が、すぐさま足を降ろし間髪入れずに両拳を連続で何発も叩きこんでいく。

「おおぉぉぉぉぉぉぉお!」

「無駄だと……言っているだろうがぁぁぁ!」

「ぐおぉぉ!」

直後、凄まじい衝撃が俺に襲いかかり、奴からかなり離れた場所まで吹き飛ばされた。

くっ! 俺だけではキツイな……この空間で奴を呼べるかは分からんがっ!

「来い! レグルス!」

目の前に普段、レグルスを呼びよせる魔法陣を展開させると偶然か、

そこから普段どおりにレグルスが姿を現した。

『主。ここはいったい』

「話は後だ! 奴を倒すぞ!」

『わかりました!』

俺はレグルスの頭の上に飛び乗り、レグルスに攻撃の指示を飛ばしていく。

レグルスの大きな両腕がファントムめがけて叩き落とされるが、

ファントムはその場から姿を消して、両腕を避けた。

消えた……姿を消したのか。

「はぁぁぁぁぁ!」

「しまっ!」

上からファントムの声が聞こえ、そのまま切り裂かれると思った瞬間!

突然、横から巨大な火球がファントムに直撃し、

そのまま大きく奴を吹き飛ばした。

『グゥゥゥ!』

レグルスの隣にいくつかの拘束具をつけている真っ赤なドラゴンが降り立った。

……こいつが兵藤に宿っていると言われている噂のドラゴンか。

「今は後だ! 行くぞ!」

『はい!』

俺の掛け声とともにドラゴンとレグルスが同時にファントムへと襲いかかる。

レグルスの拳をファントムが避けた瞬間にドラゴンがその長い尻尾を振りまわし、

レグルスに当てようとするが空高く跳躍され、尻尾は空を切った。

「はぁ!」

レグルスの頭上にファントムが降り立ち、槍を俺に振るってくるがそれを姿勢を低くして避け、

奴の腹部に両方の拳を全力でぶつけるが硬化した体にはダメージは与えられず、

衝撃だけが奴に伝わり、大きく吹き飛ばした。

「レグルス!」

『はい!』

俺の掛け声でレグルスが口から金色に輝く魔力のレーザーを放つと同時に、

ドラゴンの口から七色に輝く球体がファントムに吐き出された!

「ぬおぉぉぉぉぉ! はぁぁぁ!」

それでもファントムは槍を高速で回転させて二つの攻撃を掻き消すと、

空いている手から紫色に輝く不気味な球体を浮かび上がらせ、俺たちに投げつけてきた。

「くっ!」

ドラゴンは翼を羽ばたかせて上空へと上がって球体を避け、レグルスも横に飛んで、

それを避けるがレグルスが激しく動いた揺れでバランスを崩し、地面に降り立った。

「はあぁぁぁぁぁぁ!」

「しまっ!」

『ゴァァァァァァ!』

「ドラゴン!」

レグルスが俺たちに止めを刺そうと高く飛びあがり、槍を振り下ろそうとした瞬間、

ファントムに大量の冷気が直撃して奴を氷づかせるとドラゴンが横に一回転して、

その勢いを利用して尻尾を叩きつけようとした瞬間!

「の、伸びた!」

突然、氷漬けになった奴から黒い煙が放出されたかと思うとその黒い煙はドラゴンを一瞬で、

包囲すると全身に巻きつき、ドラゴンの背中に奴の半身が現れた。

「消えろ!」

『ゴアァァァァァァ!』

槍から真っ白な輝きが放たれるとともにドラゴンから苦痛に満ちた叫びが響いてきた。

あの輝き……まさか、ドラゴンスレイヤーの力か! やらせるか!

ドラゴンにいくつもの亀裂が走ったと同時に俺は駆け出すが、

その亀裂から白い輝きが漏れだした直後、ドラゴンが大爆発を起こした!

「うああぁぁぁぁぁぁ!」

爆風によって俺とレグルスはそのまま元の世界へと押し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

兵藤一誠の絶叫が聞こえ、痛む傷を我慢しながら顔をあげると奴の右腕に、

装着されていた赤い籠手が無残に砕け散った。

それと同時に奴の胸に紫色に輝く亀裂が現れ、

そこから満足そうな顔をしているファントムが現れた。

「素晴らしかったぞ。貴様の魔力」

そう言い、ファントムは魔法陣の中へと消えた。

「兵藤!」

「俺の……魔力…………が」

その言葉を残し、兵藤は気を失った。

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