『未完』リリカルなのは~逆行転生で原作大崩壊~   作:echo21

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第五話 リリカルマジカル実験台!

 時は遡る。今思い出しても薄暗い『時の庭園』を案内してもらいながら話し合ったときだ。リリカルなのはの原作にあった、プレシア・テスタロッサの悲願は娘の蘇生であり、満たされつつある今もなお諦めきれない妄念は刺激し続けている。だからこそ、カプセルの中の彼女、『アリシア・テスタロッサ』の前で両手を広げて下卑た笑みを浮かべ、その本領を発揮した科学者に向ける視線は厳しいのだろう。

 

「死者の蘇生? レリックウェポン? すでに知識はあり、結果はみえているうえに材料もある。君の延命治療は奉仕活動の一環だがね。プレシア・テスタロッサ。君からの対価、報酬はいらないんだよ」

「ジェイル。ジェイル・スカリエッティ」

「そう! すでに既知となったあの未来。私はもてる限りの技術を披露したのだ。制御された鎖を千切り、私怨に狂う心を弄んだのた! その結果が今だよ。今なのだよ、プレシア・テスタロッサ」

「ジェイル。聞きなさい、ジェイル・スカリエッティ」

「だからこそだっ。何だね、あれは? 『認識するベクトルの操作』だとっ。いいじゃないか。堪らないじゃないか。よろしいじゃないか。やりますとも! やってみせますともっ!」

「だからね。アスカ君が実験に協力するそうよ?」

「ありがとう! 本当にありがとう!」

 

 やったね、スカさんの実験台になっちゃったよ! 狂喜のスカさんは気持ち悪いなあ。

 

「これでアリシアが……フェイト、レヴィ……私は。私達はアリシアと……」

 

 フェイトに似たレヴィはアリシアの現身ともいえ、精神的に幼いレヴィの世話をやくフェイトを見守る日常はプレシアの心を確実に傷つけていた。アリシアの『妹が欲しい!』という言葉を思い出したプレシアは、誰よりも深く悩んでいたのだ。そこにつけ込むスカリエッティは狂っている。母娘の救いだとはいえ、自身を差し出すのは悪魔の契約。『無敵』を目指して実験に参加した彼がよぎっていった。

 

「まあいいさ。スカさん。まずはプレシアさんの強化。そんでアリシアの蘇生。それらが完了したらモルモットをしてやるよ」

「本当にありがとう。でも、いいのかい? 私はちょっぴり愉快な科学者だけど、ほんの少しだけマッドの自覚があるんだ」

「別にいいさ。スカさんなら、世界で一体だけの貴重なモルモットを。それなりどころか、かなり丁重に扱ってくれるだろう?」

「いやいや。ここまで信頼されたのはゼスト・グランガイツ以来だね。……もちろんだよ。細胞のひと欠片でさえ愛でると誓おうじゃないか」

「スカさんが誓うの? 何に? ……なら、その狂気と欲望に誓ってくれよ? 俺の超能力は誰にも解明されてない、文字通りの神様のギフト。神への反逆だからって、ビビってケツまくるなら今だぜ?」

「いいとも、いいとも。無限の欲望に誓おうじゃないか。ケツまくるぐらいなら死んでもいいさ。私の専門は『生命操作技術』なんだよ? 神秘や倫理をレイプした私が逃げるわけないじゃないか。最高に愉快な出来事でイキリ立っているほどだからね」

 

 スカさんの薄ら笑いに返すように笑い声を漏らした。これだから科学者はやばい。本当に嫌になるぐらい人間らしいからなあ。そんな俺達に向けて微笑むプレシアさんは『私が言うのもなんだけど』と肩をすくめて見せる。

 

「まるでね。悪の結社の誕生だわ」

『それほどでもない』

 

 あれから一ヶ月弱。待ちにまった瞬間がやってきた。レリックウェポンの『生者素体』になったプレシアさんが固唾をのんで見守る中、『死者素体』が適用されたアリシア・テスタロッサの目が開かれる。ほんの一瞬の出来事に息を吐く。

 

「ああ、アリシア……アリシアっ」

「稼働を確認したよ。諸々の検査があるが、恐らくは大丈夫だろう。問題は記憶だが……なに、すぐに結果が出るさ」

「ジェイル。私にも検査をさせなさい」

「もちろんだとも。自分の目で確認したらいい。私には未知の実験台……治験者が待っているからね! いやあ、みなぎってくるなっ!」

「言い直しても変わらないわよ? ……アスカ君。本当に、あなたの協力に感謝するわ。本当に、本当にありがとう」

「プレシアさん。少し早いですからね。まずは検査、記憶を確認してから、改めてお願いしますね?」

「そうね。本当にそう。まだ油断はできないわね」

 

 高笑いするスカさんはウーノさんに、プレシアさんはリニスに任せて時の庭園から八神家の地下へ戻った。昼時を過ぎた八神家は静まり返っている。遊びに行ってる者、働いている者、休んでいる者……各々が満喫する自由にアリシアが加わるのも時間の問題か。

 

「ほいさ。『ベクトル・サーチ』……リビング?」

 

 向かった先のリビングでは、ひとりで茶をすする佑樹がいた。せっかくなので背後から近づいて肩を叩こう。

 

「うおっ。……明日香かよ。邪魔してるぜ」

「いらっしゃい。佑樹は何かしてたの?」

「うん? ああ。グレンダイザーモデルがさ。面白いぐらい売れてるみたいでよ。母ちゃんから明日香へお礼のクッキーを届けにきて、茶をな」

「マジでか。そんでブツは?」

「レヴィが消化して本人は睡眠中」

「お? 佑樹くぅん。餌付けか? 餌付けなのか?」

「待てまて。純粋に癒しだ。ここにいる幼女紛いじゃ感じられない癒しをだな……あ、そう! アリサ! すずかも来てるぞ? 庭だな、庭へ行こう!」

 

 佑樹に呆れながら庭へ出ると、見慣れたお嬢様コンビが優雅なティータイムを味わっていた。俺達が座るのを待っていたのか、すずかの笑い声が風に乗って聞こえてくる。

 

「明日香君。お邪魔してるね? 佑樹君はさっきぶり」

「ハイ。明日香。私のオリジナルでよければ紅茶はいかが? それと佑樹。プレシアさんから『まて』ってメールがきたけど?」

 

 向けた視線を逸らされたよ。

 

「マヌケは見つかったな」

「そうみたいね」

「まったく。ね、佑樹? 光源氏計画なんてしてないでしょうね? リニスから『罰則はファランクスシフトを』ってきたけど?」

 

 妙に上手い口笛を吹きやがって。

 

「アリサのオリジナルを頂こうかね」

「ええ。よく味わいなさい」

「ねぇ、明日香君。最近のアリサちゃん。お姉ちゃんみたいな、こう、人妻みたいな雰囲気を出すときがあるの。何か知らない、かな?」

 

 小首を傾げるすずかは妖艶なときがあるよ? 言わないけど。

 

「うぉいうぉいうぉい。まあ、聞けって。グレンダイザーのコピー品、グレンダイザーモデルが売れててよ。明日香へのアイデア料というか、お礼のクッキーを持参した俺に落ち度があると思うか?」

「それを食べたのはレヴィと?」

「レヴィちゃんと?」

「佑樹ね。他は? はい、紅茶」

「子鴉らもだな。ほら、御主人。件のクッキーだ」

 

 深いタメ息を吐きながら俺の隣に腰を落ち着け、クッキーをテーブルに広げた。

 

「ディアーチェだけか? ユーリは?」

「昼寝だ。レヴィらと寝ておる。ナンバーズらもな。シュテルは騒がしくてかなわん。美由希のクッキーを食べさせて寝かしつけたよ。アリサ嬢。我にも馳走を」

「いいわよ。お疲れ様ね? ディア」

「まったくだ。この一時がなければやってられん。それに御主人。レヴィとヴィヴィオばかりでなく、ナンバーズらやユーリとも遊んでやれ。皆が寂しがっておる。御主人は皆の御主人、兄様なのだろう?」

「そんなこと言っちゃって。ディアちゃんはアレだよね。みんなのお母さん」

「うるさいわ。我は王ぞ。皆が健やかに暮らす為に動いてるにすぎん。それと下郎。貴様にレヴィはやらん。子宮から出直してこい」

 

 佑樹を鼻で笑ったディアーチェはアリサから受け取った紅茶に口をつけ、ディアーチェが漏らした息にアリサが微笑みながら頷いていた。

 

「なんだか、のんびりするなあ」

「もしかして明日香。疲れてる? スカリエッティのおじ様の実験ね。それが負担になってるの?」

「んにゃ。問題事がひとつ、形になったからかね。アリシアの件さ。だから、ひと息。……アリサ。ありがとな」

「いい? 無理はしないこと。いくら最強でも疲労はするのよ。心も身体もね。……私はいやよ。明日香を看病するのは。頑張らないで楽にね。明日香らしくいきなさい。愉快なオブジェになりたくないでしょ?」

 

 アリサのウインク。そよぐ風に乗った紅茶の甘い匂いが鼻をくすぐる。

 

「ハッ。そりャそうだ、なりたくねェわ」

「あれ? アリサちゃん見せつけてる?」

「マジやばい。幼女じゃなくて女だろぉ」

「アリサ嬢。少しは周囲に気を配らんか」

 

 …………真っ赤。

 

「どうも王様。ポイズンクッキーの返礼シューター」

「喰らうかッ。下郎のプロクテクション!」

「うぼわあ」

「アリサアリサ。真っ赤だよ? 風邪? レヴィは強いから風邪ひかないもんねぇ。いいでしょいいでしょ!」

「ヒッく。ディアーチェ……あるじぃ……ヒッく」

「お兄様! 聞きましたわよ! クアットロもお兄様と一緒に実験台になりますわ!」

「お兄ちゃんっス! わたしとも遊ぶっス! 今度こそゲームで勝つっス!」

「はやてさんが帰ったでぇ!」

「あ、兄様。わ、わたしと訓練、ナイフ投げを、その、ご一緒しませんか?」

「ヴィヴィオの勝ちぃ。なのはママの負けぇ。『フラッシュムーブ』だそうとして転んで恥ずかしくないの? ねぇねぇ。恥ずかしくないの?」

「今のは無効なの! むかし墜落したときの後遺症が疼いたからなの! 決して膝を擦りむいて、思ったより痛かったわけじゃないの!」

「おうおうおう! ヴィータさまのお帰りだ! 家までダッシュはヴィヴィオの勝ちなあ」

「はあ。はあ。はあ。はあ」

「グレンダイザーのグレンが、はあはあしてますよ! シュテルんは、シュテルんは逃げません! 闇に滅せよっ!」

「アリサちゃん。助かったね?」

「すぅずぅかぁ」

「きゃーっ、アリサちゃんが怒ったぁ」

 

 今日も愉快な八神家である。

 

「オラオラァッ、黙れ幼女共ッ! 愉快なオブジェに変えてやンよッ、オルァッ!」

 

 





今回の逆行転生は~

『アリサ、デレる?』
『王様、初のセリフ』
『内密な? 光源氏』

 ~以上の三本でお送りします。

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