転生した時の特典がおあつらえ向きだったんだけど   作:けし

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久々に戦闘シーンを書いた。うまく書けたかどうかは不安だけどね。

夏休みなんてあってないようなものだと、今更ながらに気付いた今日この頃。

ではどうぞ。


VS 背教者ニコラス

 クリスマスクエスト。それは文字通りその日限定のクエストであり、スペシャルな報酬がもらえる特別なもの。また、カエデにとっては別の意味で特別なものであった。

 

「うおっと!このっ!」

 

 カエデにとっての意味とは、ほかでもない自らのユニークスキル『全反撃(フルカウンター)』の性能実験、経験値獲得である。その意味では、ある程度格上の相手と戦うことは必須と考えていた。もっとも、カエデ本人のレベルは攻略最前線でも通用する程度には鍛えているので格上と戦いたいのなら最前線に行けという話である。

 

 というわけで、このクエストのボスキャラ『背教者ニコラス』はカエデにとってたいして格上というわけではなく、苦戦しているわけではなかった。SAOにおいてはすべてのエネミーモンスター、とくにボスモンスターは基本的に初見攻略になる。やられてしまえばそれがすべての世界において永久退場(ゲームオーバー)になるこの世界では、その『初見攻略』は非常に厳しい。ゆえに『行動パターンの完璧な把握』というのは生きていくのに不可欠だ。

 

「があっ!くそ!」

 

 斧による下段からの振り上げになんとか対応したカエデだったが、斧特有の大きな動きで2連撃をおこなう事は予想できなかったらしく、2段目の攻撃に反応できず、もろにその攻撃を食らうカエデ。斧での攻撃は一発の攻撃がほかの武器よりも高く設定されている分、その隙も大きめに設定されており、斧を十全に扱うには、それなりのSTRが要求される。そのため、カエデは斧使いというのを第一層で出会って以来の付き合いであるエギル以外に知らない。そのエギルも普段は店の営業に専念している為、滅多に前線には出てこない。そういう事情があって、カエデは斧での攻撃に連撃というパターンを失念していたのだ。

 

 とてつもなく重い斧での一撃にカエデのHPは大幅に減り、3分の1ほど削られてしまった。カエデはあまりアーマーの類を装備しないため、よりダメージが重くなってしまったのだ。

 

 サチからのクリスマスプレゼントである『アクア・ネックレス』がもたらしたいわゆる努力値は、すべてAGIに振って、今のカエデは極端にスピードが速くなっている。それを利用してダメージを受けた状態で何とかニコラスの攻撃をかわしていき、わずかずつパターンの把握を進めていく。

 

 いくら情報解析能力が神がかっていても、それに生死がかかっていて、体の動きまで合わせなければならないとなると、特典をもってしても時間がかかってしまわざるを得ない。さらに、予想以上に雪が深いことやボスのニコラスの3メートルほどの巨躯からくりだされる圧倒的贅力の斧の一撃が、カエデのパターン把握にさらなる時間を必要とせざるを得なくしていた。神様製の人外の身体まで仮想世界では再現されなかったのが、分かっていたけど惜しいな。カエデは心の中でそう愚痴をこぼす。

 

 とはいえ、その程度の余裕はあるということでもある。

 

「おらっ!【相殺(バニッシュ)】!」

 

 たとえ相手が想像の及ばないほどのとてつもないパワーを持っていようとも、彼のユニークスキルの前では意味をなさない。

 

 ニコラスの武器は、なんの飾り気もないただの斧。なんの特殊な力も持たない代わりに、シンプルゆえの破壊力がニコラスの腕力をもってカエデに襲い掛かる。それに対してカエデはただ武器をもつ腕を左から右へ軽くふるう。

 

 カエデがこれまでのニコラスの攻撃を計算して、最適なタイミングをはかって振るった武器《ロストヴェイン》が紫に縁どられた真っ白なライトエフェクトを纏って、ニコラスの斧に重い音を響いてぶつかる。その結果、ニコラスの動きが一瞬止まる。しかし、カエデは何もなかったかのようにすぐさま攻勢へと転じ、片手剣の3連撃ソードスキル《シャープネイル》で攻撃し、その後()()のソードスキル《ラピッドバイト》による突きを放って一旦距離を置く。

 

 そのままニコラスの視界から外れ、木の陰に隠れる。そこで一旦息を吐く。いままではそこら辺の雑魚キャラしか相手にしていなかったので、ここまで緊張感がある、文字通り命をかけた戦いというものを久方ぶりにやって、長い間最前線から遠ざかっていたブランクが大きかったことを確認したカエデは、最初に行動パターンを把握することよりも戦闘のカンというものを取り戻すことを優先した。戦いの経験というのが存外馬鹿にできないことをここまでの戦いで悟っているカエデはとりあえず時間というものを一旦度外視して、いざというときに生命を救うことすらあるそれを取り戻すことで、行動パターンの把握をスムーズに行うことを考えた。昔から『二兎を追う者は一兎をも得ず』という(ことわざ)もあるように、二つのことを同時に行おうとすると碌なことにはならないのである。もっとも、カエデは本能的にそれを避けたわけだが。

 

 そして、カエデにとって朗報となる事実も判明した。それは、カエデがもつ武器《ロストヴェイン》の持つもう一つの性質。それは『片手短剣』というこのロストヴェインが分類される武器のジャンル。これは他のプレイヤーが聞いたら、仰天するような力である。その性質は、一つの武器で『片手剣』と『短剣』のソードスキルを扱うことができるというのだ。この性質ゆえに先ほどのようなソードスキルの使い方ができるのだ。短剣のスキルは威力よりスピード重視のものが多いので、これから先も重宝しそうだ、と少し笑みを浮かべた。

 

『グオオォォォォォォォァァァ!』

 

 その瞬間に耳に入るニコラスの叫び。その声に目の前のモンスターの意識を移す。カエデとしては、そろそろ自らの全力をぶつけたくてウズウズしていた。心の中で「決して戦いを楽しんでいる訳じゃないんだからね!」とプイッという効果音が聞こえてきそうなツンデレの台詞をつぶやいて木の陰から飛び出す。

 

「サンタの格好してんだから、もうちっとサンタっぽくしてやがれ!!」

 

 そう声を張って、《ロストヴェイン》を左下に構えてニコラスへと突進する。対するニコラスはライトエフェクトを纏う斧を上段に大きく振りかぶり、さらに飛び上がってその勢いのまま振り下ろす。

 

 振りかぶった《ロストヴェイン》が先ほどと同じ色の、それでいてより強く輝くライトエフェクトを纏う。

 

 その輝かしさにわずかに目を細めながらも、一番最初に見たニコラスの攻撃に、身体が覚えたタイミングで剣を振るう。

 

「『全反撃(フルカウンター)』!!」

 

『ガアァァァァァッ!!』

 

 お互いの今出せるであろう全身全霊の一撃が、激しくぶつかり合った。

 

 





いろいろオリ設定が追加されています。

『片手短剣』は『片手の短剣』ではなく、『片手剣』と『短剣』という単語をくっつけた結果こうなってしまいました。

もともとロストヴェインが『片手で扱う片刃の短剣』ということだったのですが、アニメの絵を比べたら、大きさはSAO世界での片手剣に近いかなと思ったのがきっかけです。

つまり、短剣として扱うには大きすぎて、片手剣としては小さい。その中途半端さが、こういう形で有利に働いたという事でもある。

分身がいまだ出てくる機会が・・・ない。もう少しなんだが・・。

あと『相殺』は発動後の硬直が存在しないと勘違いするくらいに硬直時間が短いです。

ニコラスの動きはメモリー・デフラグを参考にしています。斧を主武器にするサンタ……。
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