Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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みなさんの沢山の感想に勇気をもらい、頑張って続きを書きました!

書いていてふと思った事……なーんか遊馬と女性サーヴァントは必然的におねショタ風になるなーと思いました。

まあ英霊のほとんどが遊馬より年上がほとんどなので仕方ないですが(笑)


ナンバーズ8 聖処女との出会い

レイシフトが完了し、遊馬が目を開くとそこには青空と野原が広がっていた。

 

皇の鍵からアストラルが現れ、デッキケースが開いて三枚のフェイトナンバーズが宙に浮くとマシュ、アルトリア、エミヤの三人が現れる。

 

「レイシフト、完了ですね。ここは1431年のフランスです」

 

「フランスか……」

 

「フィーウ!フォーウ、フォーウ!」

 

可愛らしい声が響くと遊馬の上着のポケットからフォウが出て来た。

 

「えっ!?フォウ!?何故ここに!?」

 

「どうやら遊馬くんと一緒にコフィンの中に入ってレイシフトしたみたいですね……遊馬君に固定されているのですから、私たちが帰れば自動的に帰還出来ます」

 

「全くお前は……まあ、付いて来ちまったもんは仕方ないな。戦いの時は大人しく隠れていろよ?」

 

「フォ、キュー!」

 

フォウは遊馬の言葉を理解したのか頷いてそのままフードの中に入った。

 

「さて……その年代だとフランスの百年戦争、当時の有名な英雄だとジャンヌ・ダルクがいた時代だな」

 

人間界の歴史の知識を持つアストラルの言葉に遊馬でも知っている英雄の名前にテンションが上がった。

 

「ジャンヌ・ダルク!?あのフランスの聖女か!小鳥が前に言っていたな、勇敢に戦った少女で憧れているって!会ってみたいな〜!」

 

特に遊馬の『大切な幼馴染』が話していた英雄がこの時代にいることに会ってみたいと年相応な反応を見せた。

 

「遊馬、君の興奮を打ち砕いて悪いが、その年代だとジャンヌ・ダルクは既に火刑で処刑されている可能性が高い」

 

「マジで!?あ、そうか……最後は異端の烙印を押されたんだっけ?ひでぇよな、フランスを救うために戦ったのによ……」

 

実際にその当時の世界に来る事でジャンヌにした仕打ちに心を痛める遊馬にアーチャーは優しく諭した。

 

「マスター、君はまだ幼いからあまり強くは言わんが覚えておくといい。戦争は必ず憎しみを生む。そして、最後まで戦い続けてきた英雄たちは、悲劇的な最期を迎える事が多い。それを踏まえた上でこれから出会うであろう英霊たちと向き合うことだ」

 

エミヤの言葉に遊馬はハッと気がつき、脳裏には最大の敵であった七人の前世を思い出した。

 

どれも元凶である邪悪な神によって運命を捻じ曲げられ、悲劇的な最期を迎えていた。

 

その事を思い出し、胸に強く刻んだ遊馬は強く頷いた。

 

「……そうだよな。ありがとう、エミヤ」

 

「うむ。頑張るのだぞ、我らの小さなマスターよ」

 

「みんな、話はその辺にしてください。何やら不穏な気配を感じます。戦の風とも違う、邪悪な気配を遠くで感じます。それに……上を見上げてください」

 

セイバーが周囲を警戒しながら険しい表情で上を見上げていた。

 

「上……って何じゃありゃあ!?」

 

「空が……ドクター!あれは!?」

 

マシュがD・ゲイザーの通信機能で早速カルデアのロマニと繋ぐ。

 

空には青空と雲が広がっているわけでなく、巨大な光の輪が浮かんでいた。

 

『これは……衛星軌道上に展開した何らかの魔術式か!?何にせよとんでもない大きさだ。下手すると北米大陸と同じサイズか!?』

 

『みんな、あれはこちらで調べるからあなた達は現地の調査をお願い。何か分かったら連絡をお願いね』

 

「わかりました、ドクター、所長。ではこれより特異点の調査に入ります」

 

一旦カルデアと通信を切り、まずはどこを調査するか相談しようとした時、エミヤが少し目を細めて話す。

 

「マスター、この先に小さな砦がある。しかもかなりのボロボロだ、何かあったと思われる」

 

「エミヤ、目がいいのか?」

 

「私には鷹の目と呼ばれる視覚能力のスキルがある。大したものではないがそこそこ遠くを見渡せる」

 

「すっげー!それじゃあ早速その砦に行って話を聞こうぜ。現地の人に聞いた方が早いからな」

 

遊馬の提案に賛同し、早速その砦に向かったがそこはかなり悲惨な状態となっていた。

 

砦はかなりボロボロで負傷兵が多く、本来ならこの年代は百年戦争の途中とはいえ今は休戦条約を結んでおり、戦は起きてないはずだった。

 

話を聞くためにエミヤが代表して近くにいた兵士に話しかけた。

 

兵士は最初は警戒したが旅のものだと言うとすぐに信じ、それほどまでに萎えきっている様子だった。

 

すると兵士の口からとんでもない事実を聞かされた。

 

「王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれた」

 

「魔女?誰のことだ?」

 

「『ジャンヌ・ダルク』だ。あの方は『竜の魔女』となって蘇ったんだ」

 

その言葉に遊馬達のみならず話をしていたエミヤも驚愕した。

 

「何だと……!?馬鹿な、ジャンヌ・ダルクは処刑されたはずでは!?」

 

「だから竜の魔女になって蘇ったんだ!!そして……ッ!来た!奴らが来たぞ!」

 

兵士達が騒ぎ出し、アルトリアはキリッと目を鋭くして約束された勝利の剣を構える。

 

「魔力反応です!マスター、戦闘準備を!」

 

「分かった!エミヤ!」

 

「うむ!」

 

「目視しました!あれはまさか!?」

 

空から近づいた魔力反応……その正体は数多の竜、ワイバーンだった。

 

竜の亜種体と呼ばれる幻獣で間違っても十五世紀のフランスに存在していい生物ではなかった。

 

「ワイバーンかよ!?」

 

「どうやらこれも異変によるものだな……」

 

遊馬は急いでデッキからカードを五枚ドローするとそこに一つの影が近づいて声をかけた。

 

「そこの方々、武器を取ってください!私と共に!続いて下さい!」

 

遊馬達が振り返り、そこにいたのは何と、アルトリアと顔立ちが似ており、長い金髪を三つ編みに纏め、その身には軽装の鎧を装着し、大きな旗を持った可憐な乙女だった。

 

「まさか……」

 

その少女に心当たりがあるアルトリアはそう呟いていた。

 

少女は兵士を引き連れてワイバーンに立ち向かおうとし、アストラルは急いで自分たちも行動に移そうと遊馬に指示を出す。

 

「遊馬!ただの人間にワイバーンを倒すのは困難だ!我々で対処するぞ!」

 

「ああ、みんな!行くぜ!!」

 

「アルトリアは前衛、エミヤは弓矢で後方支援、マシュは遊馬の護衛を頼む」

 

カルデアで戦術や戦略を学んでおいたアストラルが瞬時にアルトリアたちに指示を出す。

 

「お任せ下さい」

 

「承知した」

 

「はいっ!」

 

「遊馬、ホープだ!」

 

「おう!俺のターン、ドロー!『ガガガマジシャン』を召喚!更にレベル4のモンスターが召喚に成功した時、手札から『カゲトカゲ』を特殊召喚!レベル4のガガガマジシャンとカゲトカゲでオーバーレイ!」

 

ガガガマジシャンを召喚した後に影から生まれた黒いトカゲが続いて現れ、共に光となって地面に吸い込まれる。

 

「エクシーズ召喚!現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!」

 

光の爆発と共にオーバーレイ・ユニットを纏った白い塔が現れ、瞬時に変形して希望皇ホープとなる。

 

「アルトリア、ホープに乗れ!空を飛んでワイバーンを倒すんだ!」

 

「わかりました。ホープ、お願いします!」

 

アルトリアは希望皇ホープの肩に乗り、白い翼を広げて空を飛ぶ。

 

ワイバーンと同じ高さまで飛ぶとアルトリアはホープを足場にしてジャンプし、約束された勝利の剣でワイバーンを斬り倒し、斬り倒したワイバーンを足場にして次のワイバーンに向かってジャンプする。

 

アルトリアはまるで蝶のように空を舞い、蜂のようにワイバーンを仕留めていく。

 

希望皇ホープもアルトリアに続いて双剣でワイバーンを切り裂いていき、黒弓と矢を投影したエミヤがアーチャーのクラス名に相応しい弓の腕で正確にワイバーンを打ち落としていく。

 

「凄い……」

 

一度は敵として対峙していたアルトリアとエミヤと共に見事な連携でワイバーンを倒していき、頼れる英霊の仲間と共に戦える事をマシュは感動していた。

 

更に謎の少女の指揮で動かしていた兵士達の援護もあり、僅か数分で襲いかかってきたワイバーンを全て倒し遊馬とマシュは勝利を喜んだ。

 

するとアルトリアは倒したワイバーンの山を凝視してエミヤに尋ねた。

 

「シロウ……」

 

「何だね?」

 

「ワイバーンの肉は焼いて塩をかければ美味しいのでしょうか?」

 

「勘弁してくれ……」

 

じゅるりとヨダレを垂らすアルトリアにエミヤは頭痛を覚え、カルデアに帰ったら好きなものを作る事を条件にワイバーンの調理を諦めさせた。

 

遊馬は兵士を指揮していた謎の少女にお礼を言いに行った。

 

「おーい、誰だか知らないけどありがとな!」

 

「いいえ、とんでもありません。それよりあなたはーー」

 

「逃げろ!魔女が、魔女が出たぞ!!」

 

突然、兵士が少女を魔女呼ばわりして騒ぎ出した。

 

「えっ?」

 

「魔女だと……?」

 

魔女と呼ばれ悲しそうな表情を浮かべる少女。

 

兵士達が動揺と恐怖の表情を浮かべており、これ以上ここにいたら危険だと察した遊馬は少女の手を取る。

 

「こっちに来い!」

 

「えっ!?」

 

「みんな、ここから離れるぞ!!」

 

マシュ達も遊馬の考えを察して頷き、急いでその場から退散する。

 

まだ現状を把握できていないがあのままだと少女が兵士達に襲われる可能性もあったため、砦から遠く離れた森の中へ逃げ込んだ。

 

落ち着ける場所で座ると少女はまず自分の名前を名乗った。

 

「ルーラー。私のサーヴァントクラスはルーラーです。真名を『ジャンヌ・ダルク』と申します」

 

「ええっ!?ジャンヌ・ダルク!?」

 

遊馬は会いたいと思っていたジャンヌといきなり出会えて驚いていた。

 

「それで、あなた達は?見た所マスターとサーヴァントのようですが」

 

「俺は九十九遊馬!一応マスターをやってる!」

 

「私の名はアストラル。私はサーヴァントではない、言うなれば遊馬と共に戦う精霊と思ってくれ」

 

「私はマシュ・キリエライト、デミ・サーヴァントです」

 

「私はアルトリアと申します、サーヴァントクラスはセイバーです」

 

「私はエミヤ。クラスはアーチャーだ」

 

互いの自己紹介が終わると早速遊馬達とジャンヌの間で情報交換をする。

 

遊馬達はカルデアの事とこの世界の異変を調査と解決しに来たことを話した。

 

そしてジャンヌはルーラーとして召喚されたが本来与えられるべき聖杯戦争の知識がほとんどなく、ステータスもランクダウンしていた。

 

数時間前に現界したばかりで情報が少ないが、一つ確かなことがあった。

 

「どうやら、こちらの世界にはもう一人、ジャンヌ・ダルクがいるようです。あのフランス王シャルル七世を殺し、オルレアンにて大虐殺を行ったというジャンヌが……」

 

「同時代に同じサーヴァントが二体召喚された、ということでしょうか……?」

 

つまりここにいるジャンヌとは別の、残虐なジャンヌが暴れているということだ。

 

そして、竜の召喚は最上級の魔術であり、この時代の魔術でも困難なレベル。つまりこの異変を起こしているもう一人のジャンヌが、特異点である聖杯を持っている可能性があるということだ。

 

「私はオルレアンに向かい、都市を奪還する。そのための障害であるジャンヌ・ダルクを排除する」

 

フランスを救うため再臨したジャンヌの想いに感動した遊馬は、立ち上がってマスターとしての自分の思いを話す。

 

「ジャンヌ!俺も協力するぜ!俺たちの目的は聖杯だけど、目指すものは同じだ!!この世界と生きる人たちを守る。その為に力を合わせよう!」

 

「はい!こちらこそ、お願いします。どれほど感謝しても足りないほどです。ありがとう!」

 

こうして遊馬達はジャンヌと協力することになり、早速マスターである遊馬とサーヴァントのジャンヌで契約を結んだ。

 

握手を交わし、ジャンヌのフェイトナンバーズのカードが誕生する。しかし、ランクダウンの影響もあってか真名と効果は判明せず、廃墟を背後に風に靡く巨大な旗を構える凛々しいジャンヌの姿が描かれるのみにとどまった。

 

今日は森の中で野宿をすることになり、その夜はアルトリアとエミヤとジャンヌが周囲の警戒をし、人間である遊馬とマシュは明日に備えて休んでいた。

 

マシュはフォウと一緒にスヤスヤと眠っており、ジャンヌはアルトリアとエミヤの計らいで休むことになり、焚き火の元へ行くと遊馬がまだ起きていてD・パッドを操作していた。

 

「遊馬君……何をしているのですか……?」

 

「えっ!?あっ、その……」

 

ジャンヌが遊馬の隣に座り、D・パッドを覗いた。

 

遊馬がD・パッドで見ていた画像……それはこの時代のこと、百年戦争、そして……ジャンヌ・ダルクの文献だった。

 

「これは……もしかして、私のことですか?」

 

「そ、そうだ……悪いな、盗み見る感じで……」

 

「いいえ、大丈夫です。それにしても凄いですね、これが未来の道具ですか?」

 

遊馬はジャンヌにD・パッドを渡して一緒に操作する。

 

「未来というか、これは俺たちの世界のものだけどな」

 

「マシュさんから話は聞きました。遊馬君がこことは違う世界で全ての人類と世界の未来を守るために戦っていたと……」

 

「俺はジャンヌやアルトリア達とは違ってそんな大した存在じゃないよ。俺はただの中学生だし、勉強が特に苦手でこの時代のことをほとんど知らないからさ、百年戦争も、ジャンヌのことも……だからこれで調べていたんだ」

 

学校で習っても教科書程度のことしか分からないが、ダ・ヴィンチがダウンロードしたデータを見て今の時代のことを勉強している。

 

「なぁ、ジャンヌ。ジャンヌはフランスの為に戦って最後はあんなことになったけど、辛くはなかったのか?」

 

「そうですね、でも今まで自分に起きた事に憎しみを抱いていません」

 

「強いんだな……」

 

「いいえ、ただ神への信心が強いだけなので。それだけを信じて進んでいたので」

 

「そっか……」

 

「そういう遊馬君こそ、辛くはないんですか?僅か十三歳で国どころか、全人類と世界の未来の為に戦うなんて……」

 

ジャンヌが戦い始めたのは十七歳、対する遊馬は十三歳。

 

まだ幼さが残る少年が戦いの渦に飛び込むことをジャンヌは心配に思った。

 

遊馬は腕を組んで少し唸って考えながらその時のことを思い出した。

 

「うーん……俺はジャンヌみたいに辛くない、って言えないな。元の世界にいた時、俺を守る為に、俺に希望を託す為に、沢山の友達や仲間が戦って消えてしまったんだ。最後には全部取り戻すことが出来たけど、その時は数え切れないほどに悲しんで、嘆いて、涙を流したから……もうあんな思いはしたくないぜ」

 

「そうでしたか……」

 

暗く、不安そうな表情をする遊馬の頭をジャンヌは優しく撫で、まるで姉のようにその小さな体をそっと抱き寄せた。

 

「この小さな背中に世界の命運と沢山の人達の願いを背負っていたんですね」

 

「俺にはアストラルと幼馴染みが最後までいてくれたから戦えたんだ。もし俺一人だったら、心が壊れていたかもしれないな……」

 

「だったら、あなたの心が壊れないように私が……サーヴァントとして、共に戦うマスターを守ります」

 

「ありがとう。なら俺もジャンヌを守るよ、それにもう一人のジャンヌを必ず止める。約束だ」

 

遊馬は拳を作ってジャンヌに見せるとジャンヌは微笑みながら自分も拳を作った。

 

「はい、約束です」

 

「ああ!」

 

二人は拳を軽くぶつけながら約束を交わすと年上として遊馬に寝るよう促した。

 

「ふふっ。さて、もう遅いですから遊馬君は寝てください。マスターであるとはいえ、まだまだ子供なんだから」

 

「わかった、じゃあそろそろ寝るか。ふわぁ〜……」

 

「あ、良かったら膝を貸しましょうか?そのまま寝るよりはいいですよ」

 

ジャンヌは自分の膝をポンポンと手を置いて膝を貸すこと……膝枕を提案した。

 

「えっ?いいの?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「えっと、それじゃあ失礼します……」

 

遊馬はジャンヌの膝を借りて膝枕をしてもらい、そのまま瞼を閉じると疲れたのかすぐに眠ってしまった。

 

「お休みなさい、良い夢を」

 

ジャンヌは遊馬の顔を撫でながら自分も静かに目を閉じた。

 

まるで仲睦まじい姉弟みたいなその微笑ましい光景を高いところからフランスを眺めていたアストラルは微笑んで見守っていた。

 

翌朝、カルデアから送られて来た食料物資を元にエミヤが料理を作り、遊馬達は一時の英気を養って森を出てオルレアンへ向かうこととなった。

 

まずはオルレアン周辺の街や砦で情報収集をして次の目的を決めるためだ。

 

早朝に遊馬を起こそうと目を覚ましたマシュが、ジャンヌに膝枕されている遊馬を目の当たりにしてから少し不機嫌になっていた。

 

「ジャンヌさん……」

 

「はい?」

 

「あなたは味方ですが……ズルいです」

 

「何がですか!?」

 

頬を膨らませた不機嫌なマシュのよく分からない発言に混乱するジャンヌだった。

 

「マシュ、何で機嫌が悪いんだ?」

 

その理由が不明な遊馬は首を傾げるとアルトリアは軽く苦笑いを浮かべた。

 

「マスター……一応言っておきますが、シロウのようにならないでください。女性関係で大変な事になります」

 

「待ちたまえ、アルトリア。君は何のことを言っているんだ?」

 

するとアルトリアはジロリとエミヤを睨みつけ、いつもの甘えるような態度から一転して鋭い言葉を放った。

 

「無自覚なところがまた酷い。この女誑しのハーレム系主人公め」

 

「だから何の話だ!?」

 

まるで夫婦の痴話喧嘩が始まり、遊馬はその場から少し離れて歩き隣にいるアストラルに話しかける。

 

「アストラル、何か感じるのか?」

 

「人々の負の感情が広がってる……これはワイバーンに襲われる恐怖から来ているのは間違いないだろう」

 

「そうだよな。早くなんとかしないとな」

 

「もう一人のジャンヌ……竜の魔女はワイバーンを大量に召喚出来る。下手をしたらそれよりもランクの高い竜を召喚出来るはずだ」

 

「竜の魔女が操るランクの高い竜か……でも俺たちには仲間達から預かったカードがある。それに、このデッキには『最強のドラゴン』がいるだろ?」

 

遊馬が得意げにデュエルディスクをアストラルに見せると一瞬だけ青白く輝くドラゴンの幻影が現れた。

 

アストラルはフッと笑みを浮かべると遊馬に即発されて得意げになる。

 

「そうだな……我々には共に戦う仲間の想いがある。敢えて言うなら負ける要素が1パーセントも無いな」

 

「ああ!俺たちは負けないぜ!」

 

遊馬とアストラルは改めて竜の魔女と戦う決意を固めてハイタッチをする。

 

未だに痴話喧嘩をしていたアルトリアとエミヤだが、何かに気付いた様にふとエミヤが遠くを見渡すと、目を見開いて声を荒げた。

 

「あれは……火事、街が燃えているぞ!」

 

今度はD・ゲイザーから通信が入るとサーヴァントの探知をしていたロマニからだった。

 

『みんな!そこの近くにサーヴァントが探知された!だけどそこからどんどん離れていって……あ、ロストした!』

 

どうやらサーヴァントが街を襲撃し、また何処かへ行ってしまったようだった。

 

「急ぎましょう!」

 

ジャンヌは焦るように走り出し、遊馬達もその後をついていった。

 

情報収集の為の目的地であるラ・シャリテは既に破壊され、そこに住んでいた全ての人間がワイバーンに食い殺されていた。

 

遊馬は無残な光景に顔が真っ青になり怯え、アルトリアとエミヤはそんな遊馬をアストラルとマシュとジャンヌに任せて二人でワイバーンの駆除を始めた。

 

「やはり……マスターとはいえ、まだ幼いですね……」

 

「これを十三歳の少年に慣れろと言うのが酷だ。汚れ仕事は私達の役目だ」

 

「そうですね……」

 

幼いマスターを守る為にアルトリアとエミヤは見事な連携でワイバーンを全て倒した。

 

遊馬達の所に戻ると、アストラル達のお陰か遊馬は何とか立ち上がり、皇の鍵を握り締めながら必死に耐えていた。

 

「何でこんなことを……」

 

「恐らく、これをやったのはもう一人の私なのでしょうね……」

 

ジャンヌは遊馬以上に心を痛めて暗い表情を浮かべていたが、それと同時にわからないことがあった。

 

「どれほど人を憎めば、このような所業を行えるのでしょう……」

 

同じジャンヌであるが全く別の存在……竜の魔女は一体何者なのか?

 

その疑問に対する答えが見つからないまま事態が悪化する事となる。

 

遂に竜の魔女と対峙する時がやってきたのだ。

 

 

 

.




次回遂に黒ジャンヌちゃん登場です。
遊馬とのファーストコンタクトがどうなるか見ものです。

そして早くもジャンヌと急接近の遊馬君!
聖処女の膝枕とか羨ましすぎるぜ……。

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