Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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あけましておめでとうございます。
2019年最初の本編更新です。
今年もFate/Zexal Orderをよろしくお願いします。

フェイトナンバーズの設定集を予告と注意書きの後に投稿したのでまだ見てない方は是非どうぞ。


ナンバーズ99 終わりのない夢を追う者

ルーラーことジャンヌを仲間……と言うかある意味捕虜のような形で連れて行く。

 

ルーラーが暴れ出さないようにとアストラルの指示でジークがルーラーの手をいわゆる互いの指を絡ませてより強く手を握る『恋人繋ぎ』でルーラーの手をもう二度と離さないと言わんばかりにより強く握る。

 

恋人繋ぎは独占欲の表れでもあるので今のジークにはピッタリでルーラーは何も出来ずに顔を真っ赤にしている。

 

その姿にアヴェンジャーは愉悦を覚えて大笑いをし、ルーラーは羞恥心からギロリと睨みつけるがアヴェンジャーは特に怖くも何も無く進む。

 

するとメルセデスは監獄塔を見渡しながら呟いた。

 

「私も何かの罪の具現として選ばれたのでしょうか……」

 

「メルセデス?どうしたんだ?」

 

「ユウマ様、私は思うのです。罪なきヒトなど在るのだろうか、と。怒りも、妬みも、程度の差はあれ、どれも正常な精神活動の一つに過ぎません。それらが罪であるとして、けれど、主ならざる誰が裁けるのでしょう……」

 

罪と罰……人間にとって永遠の謎とも言えるその問いに遊馬は頭を手で掻きながら静かに答える。

 

「罪がないヒトなんて多分存在しないと思う。俺は全部を知ってるわけじゃないから分かんないけど、ヒトは多かれ少なかれ何かの罪を背負って生きていると思う。もちろん俺もな……」

 

遊馬は世界を救った英雄ではあるが、それに至るまで幼いが故、守りたいが故に数え切れない『罪』を犯してきた。

 

その罪は他人から見れば『罰』を受けるほどのものでは無いとしても、その罪は遊馬の心を締め付けている。

 

「そして、罪の元……『欲望』。俺とアストラルは『カオス』って呼んでいるけど、生きとし生けるものは全てカオスが無いと生きていけないんだ。強大過ぎるカオスは破滅を生むけど、カオスは悪いもんじゃない。だから、自分の中にあるカオスとどう向き合って生きていくのかが、一番大切だと思う」

 

欲望……カオスへの答えについては既に遊馬は答えを見つけていた。

 

「それと、罰だけど……人が人を裁くってすげぇ難しい事だと思う。人だから当然間違いもあるし、罰と偽って悪事に使う奴もいるからな。人を裁く神って奴がいるかどうかは分からないけど、これだけは知っている。人と人が分かり合えない限り、その罪がいずれ罰として自分に返ってくる……」

 

人が欲望を持つ限り、人と人とが分かり合えない限り、終わることのない永遠の罪と罰が繰り返される。

 

しかし、それでも遊馬とアストラルは信じている。

 

人と人とが……誰もが分かり合える未来を。

 

そう信じて戦い続けるのだ。

 

「ふん……」

 

アヴェンジャーは遊馬の話を聞き、何を思ったのか自分の手を見つめて強く握りしめた。

 

 

それからしばらくして遊馬達は第五の裁きの間へと到着した。

 

そこにいたのは遊馬とアストラルがよく知っているサーヴァントだった。

 

「オオオオオオオオオオォ!余は……殺す……殺す……!ああ、あああ、女神よ……余の、振る舞いを許せ!余の、振る舞い、は、運命、で、ある!余は、全てを……貪り!食らうのみ!!」

 

それは月によって狂わされたローマ皇帝、カリギュラだった。

 

「カリギュラのおっさんか……」

 

「ネロがいれば良いのだが……」

 

「まあ流石にこの世界じゃ難しいからな……」

 

カリギュラは姪であるネロを深く愛しており、ネロがいればなんとかなる可能性もあるが、流石に監獄塔までは不可能である。

 

「おっさん!いい加減にしないとネロが悲しむぜ!」

 

「何……?貴様、何故ネロを知っている!?貴様はネロの何なのだ!?」

 

愛するネロの名前を聞きカリギュラは殺気を放ちながら聞く。

 

「何って……ネロは俺の──」

 

遊馬が「俺のサーヴァント」と言う前に空は意地悪そうな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「この子はネロのお婿さん候補よ?」

 

「何ぃいいいいっ!??」

 

空の爆弾発言にカリギュラは驚愕した。

 

「ちょっと空!?お前何を言ってるんだ!?」

 

「貴様!我が愛しのネロに手を出したのか!??」

 

「いえいえ、寧ろネロが遊馬君に手を出していますよ。キスとかしましたよ」

 

「ウガァアアアアアアッ!!?」

 

カリギュラは絶望の絶叫を上げ、更に殺気を放って遊馬を睨みつける。

 

「よくも……よくも愛しのネロを!貴様を殺し、ネロを我が手に取り戻す!!月よ、我に力を!!」

 

「ああもう!なんかややこしいことになっちゃったじゃねえか!空のバカ!!」

 

「だって、いずれこうなるから今のうちに済ませた方がいいと思ってね。娘を持つ父親……いいえ、この場合は叔父ね。親バカならぬ叔父バカは面倒だからね」

 

確かにカルデアではネロを愛するが故に、ネロを取られたくないカリギュラは遊馬の命を狙っている。

 

もっともそれはローマ帝国の神祖であるロムルスによって阻止はされている。

 

「ああもう!仕方ねえ、一気に決めるぜ!カリギュラはローマ皇帝でボクシングスタイルなら、こいつだ!」

 

遊馬は右手を真紅に輝かせてデッキトップに指を添える。

 

「力を借りるぜ、アリト!バリアンズ・カオス・ドロー!!!俺はドローしたこのカード、『RUM - 七皇の剣』を発動!このカードは通常ドローをした時に発動する事が出来る!エクストラデッキ、または墓地から『オーバーハンドレッド・ナンバーズ』を特殊召喚して、そのモンスターをカオス化させる!」

 

遊馬がカオスの力でドローした七皇の剣を発動し、カリギュラの相手に一番適したモンスターを呼び出す。

 

遊馬の隣にかつて伝説の拳闘士として子供達の希望として戦い、転生後もカウンター戦法を使い続けたバリアン七皇の一人……アリトが立ち並ぶ。

 

「夜空に輝く星よ、熱き拳に宿れ!同胞を守る流星の光となれ!」

 

流星のような美しい光と共に『105』の刻印が空中に浮かび、無限大の記号の形を模した物体が現れて人型へと変形する。

 

「現れろ!『No.105 BK 流星のセスタス』!!」

 

現れたのは藍色のボディに両手に硬い革紐を巻きつけた拳闘士の姿をしたモンスターでそれは燃えるような炎の熱き拳を宿すボクシングを主体としたモンスター達のチャンピオンでもある。

 

「そして、流星のセスタスでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

流星のセスタスが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発を生み、カオスによってその力と姿を大きく変える。

 

「闇を飲み込む混沌を!光を以て貫くがよい!」

 

赤黒い『105』の刻印と共に流星のセスタスが強靭で破壊に特化した力へと変貌する。

 

「現れろ!『CNo.105 BK 彗星のカエストス』!!」

 

現れたのは群青色のボディに紅蓮に輝く四つの腕を持つ拳闘士。

 

4体目のオーバーハンドレッド・カオス・ナンバーズ……カエストスを選んだ理由は、世界が異なるがかつてアリトがカリギュラが生きたローマの時代と同じ時代に生き、同じボクシングスタイルで拳を振るっていたからだ。

 

しかし、カリギュラは確実に遊馬を倒すために宝具を使う。

 

「女神が……女神が見える!『我が心を喰らえ、月の光』!!」

 

裁きの間の天井に月が現れ、月の光を照らして狂気を撒き散らす。

 

「させるか!カエストスの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手フィールドのモンスターを破壊する!!」

 

カエストスは背中の四つの腕から光線を放ち、カリギュラに直撃した。

 

しかし、カリギュラは何とか耐え抜いてカエストスの効果で倒す事が出来ず、裁きの間全体に狂気が振りまかれる。

 

「そうはさせません!主の御業をここに!我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!『我が神はここにありて』!!」

 

ジークと恋人繋ぎで手を繋ぎながらもルーラーは旗を振り、味方を守る強力な結界宝具で第二特異点の時と同じようにカリギュラの狂気を打ち消した。

 

「今のうちです!遊馬さん!」

 

「サンキュー、ルーラー!その状態だと格好がつかないけどな!」

 

「よ、余計なお世話です!」

 

片手で旗を振りながらジークと恋人繋ぎをするというルーラー本人は真剣だがあまりにも格好がつかないので遊馬は思わず笑ってしまった。

 

「行くぜ!魔法カード『アームズ・ホール』!デッキの上からカードを1枚墓地に送り、デッキ・墓地から装備魔法を手札に加える!俺はデッキから『最強の盾』を手札に加えて発動!戦士族のカエストスの攻撃力は守備力の分パワーアップ!」

 

歪な形をした盾が現れ、そのままカエストスの体内に取り込み、その攻撃力を高める。

 

「カエストスの攻撃力は2800、守備力は2000。よって、攻撃力は4800にまで上昇する!決めろ、遊馬!」

 

「おう!カエストスでカリギュラのおっさんに攻撃!!」

 

カエストスの真紅の瞳が輝き、ファイティングポーズを決めてカリギュラに殴りかかる。

 

「ウォオオオオオオォ!!!」

 

「コメット・エクスプロージョン!!!」

 

カリギュラとカエストスの拳が同時に放たれて腕が交差する。

 

そして、クロスカウンターで先に相手の顔面に拳を叩きつけたのは……。

 

『ハァッ!!!』

 

「グォオオオオオオオッ!?」

 

カリギュラはカエストスの拳によって殴り飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられながら消滅した。

 

「はぁ……カルデアに帰ったらネロのことでおっさんと話さないとな……」

 

遊馬は特に気にしていなかったが、カリギュラがネロを大切に想っているのならばいつか遊馬がネロを異世界に連れて行くときに色々揉めそうなので先に許可を得ないといけないと感じた。

 

無事に第五の裁きの間の扉が開き、いよいよ監獄塔の裁きの間も六番目へ差し掛かった。

 

「これで嫉妬、色欲、怠惰、憤怒、暴食の具現を倒したのか……」

 

「後は……七つの大罪になぞらえるならば、強欲と傲慢だな」

 

「七つの大罪って、確かキリスト教の七つの罪の源だっけ?」

 

「ああ。人間を罪に導くとされる欲望や感情とされるものだ」

 

アストラルから七つの大罪について簡単に説明を受け、アヴェンジャーに次の罪の支配者について聞いた。

 

「ふーん。アヴェンジャー、第六の裁きの支配者の罪は何だ?」

 

「第六の裁き、第六の支配者は強欲。驚嘆に値するほど、彼以上に強欲な生き物をオレは見たことがない……と思っていたが、それは間違いだった」

 

「どういう事だ?」

 

「お前だよ、マスター。第六の支配者と並ぶ強欲……お前の中で一番強い罪は強欲だ」

 

アヴェンジャーの答えに遊馬は頭に疑問符を浮かべるほどに大きな疑問となった。

 

「マスター、お前は一見は清く正しく、子供のように無邪気に生きていそうに見えて実はとても強欲だ」

 

かつて冬木市で同じアヴェンジャーであるアンリマユにも遊馬は強欲だと称した。

 

「大切な人や仲間を守りたい、ずっと側にいたいという独占欲に執着心。それに加えて別の世界であるも関わらず、この世界を救いたいという欲望がとても強い。それは恐らく、マスターが二度と失いたくないという気持ちの表れであろう」

 

遊馬の持つ最大の罪……強欲。

 

仲間を大勢失い、世界が滅びかけた……そんな経験から遊馬の心には強欲と言う名の罪が宿っていた。

 

それは十三歳の少年が持つにはあまりにも大きすぎる罪である。

 

「アヴェンジャー……」

 

「だからこそ、オレは楽しみなのだ。お前と第六の支配者と会わせることを。何故なら、彼は世界を救おうとしたのだから!」

 

「世界を……?」

 

「難敵だ。気を抜けば、たちまち死ぬぞ」

 

「……分かった」

 

遊馬はアヴェンジャーの言葉に気を引き締めて第六の裁きの間に向かう。

 

部屋の中央にいる一人の男……その男は遊馬の後ろにいるジークとルーラーを見て軽く笑みを浮かべながら近づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……まさか、こんなところで再会するとは思いませんでしたよ。我が宿敵……ジャンヌ。そして、ジーク」

 

「あ、あなたは……!?」

 

「天草……四郎!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは褐色の肌に白髪、その身には修道服と赤いマントを着用し、その手には日本刀を持つなんともアンバランスな姿の少年がいた。

 

そして、ジークが口にしたその青年の真名に遊馬とアストラルは驚愕した。

 

「天草四郎って、江戸時代に島原の乱を起こした……」

 

「日本で一番有名なキリシタンで神の子として禁教を信じる農民たちから崇められ、叛乱軍の総大将となった男……」

 

天草四郎。

 

江戸時代初期最大の一揆である島原の乱で指導者を務めた少年。

 

そして、ジークとルーラーにとっては因縁の相手でもある。

 

「ユウマ!気をつけろ、あいつは聖杯大戦の黒幕だ!」

 

「私たちはあの男の野望を止めるために戦ったのです!」

 

天草はある理想のために聖杯大戦を影から操り、聖杯を手にしてその理想を叶えようとした。

 

しかし、それをジークとルーラーとの死闘の末に敗れてしまい、理想を実現出来なかった。

 

「マジかよ!?あの天草四郎さんが!?」

 

「おや?君は私をご存知ですか?」

 

「当たり前だ!こう見えても俺はあんたと同じ日本人だからな!あんたのことは小学校の時に歴史の教科書で習ったぜ!」

 

「そうですか……私如きの存在を知ってもらえるとは光栄です。ところで、ジャンヌ」

 

天草はニコニコと笑みを浮かべながらルーラーに話しかける。

 

「……何でしょうか?」

 

話しかけられたルーラーは何を言われるのかと警戒する。

 

「もしや、ジークと結婚したのですか?それほどまでに熱々に手を握るとは、敵とはいえ微笑ましいですね」

 

「……ハッ!?な、何を言うんですかあなたは!?」

 

天草の発言にルーラーは慌てふためく。

 

聖杯大戦の宿敵が対峙していきなりそんなことを言われたら流石の真面目なルーラーも精神が乱れる。

 

「違います、これはジーク君が離してくれないからです!」

 

ルーラーの慌てふためく姿に天草はキラキラしたような笑みを浮かべて二人を祝福する。

 

「ハッハッハ!恥ずかしがることはありません。なるほど、あなたはもう聖女を卒業したのですね。それはとても喜ばしい事だ。そうだ、もしも結婚式を挙げて無いのであれば、私が神父として立ち会いましょう。ご心配なく、こう見えても神父として生きていたことがあるので」

 

「余計なお世話です!!何なんですか!?あなたは私をおちょくりたいのですか!?」

 

「いえ、ジャンヌはジーク関連だと精神が脆くなるのはシェイクスピアの宝具で既に明らかなので、今のうちにダメージを与えておこうと……」

 

「くっ!許しませんよ、天草四郎時貞!!ジーク君、離してください!!」

 

「……嫌だ。また君があの炎を使うなんてことはさせない。もう君を離したく無い」

 

ジークは何かのトラウマが蘇ったのかルーラーと繋ぐ手を更に強めて抱き寄せる。

 

「ジ、ジーク君……それどころじゃ……」

 

「では、結婚式のご祝儀はいくら用意しましょうか?」

 

「もういい加減に黙りなさい!!天草四郎!!!」

 

いい笑顔を浮かべる天草に顔を真っ赤にしたルーラーの怒号が裁きの間に響き渡るのだった。

 

「……そう言えば、天草四郎さんの声ってカイトにそっくりだな」

 

「確かにな……声の高さや色が見事に一致しているな」

 

口調は当然違うが、声音が異世界にいる遊馬の仲間のカイトにそっくりなので、天草のその声を聞いて遊馬とアストラルは懐かしさが蘇るのだった。

 

 

 




天草四郎さんはかなり好きなキャラなので出せて嬉しいです。
ルーラーがジーク君関連で弱いと知っているのでまずは心理フェイズでダメージを与えています(笑)
あとは嫁のセミラミス様を出さなければ……。

次回はジーク&ルーラーVS天草を予定しています。

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