Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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お待たせしました。
これにて監獄塔編は最終回となります。



ナンバーズ103 監獄塔最終決戦!空の境界VS巌窟王!!

監獄塔の脱出を賭け、ZEXAL IIと遂に正体を現したアヴェンジャー……巌窟王、エドモン・ダンテスとの最後の戦いが始まる。

 

「さあ、まずはその七つの大罪の名を持つモンスターから始末させてもらおう!!」

 

エドモンがザ・セブン・シンズに狙いを定め、雰囲気が変わったとZEXAL IIは本能的に察知し、咄嗟に手札にあるモンスター効果を発動した。

 

「手札から『虹クリボー』の効果!相手の攻撃時に虹クリボーを装備する!」

 

虹クリボーが飛び出し、エドモンの攻撃を封じようとしたが、エドモンは凶悪な表情を浮かべて全身から漆黒の霧を放つ。

 

「無駄ダァッ!!」

 

向かって来た虹クリボーをエドモンは黒炎で焼き尽くし、装備される前に破壊してしまった。

 

『クリーッ!?』

 

「虹クリボー!?くっ!!」

 

虹クリボーが破壊された際に熱風が吹き荒れ、ZEXAL IIはその場で踏ん張って耐える。

 

そして、エドモンは黒炎を両手に纏いながら目にも留まらぬ速さで駆け抜け、幾人にも分身した。

 

「我が往くは恩讐の彼方……『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)』!!!」

 

「ザ・セブン・シンズの効果!オーバーレイ・サクリファイス!!」

 

ザ・セブン・シンズは自分の破壊を守る効果を発動するが、エドモンの黒炎がザ・セブン・シンズの体を蝕む呪いとなって侵食した。

 

そして、耐えきれなくなったザ・セブン・シンズは破壊されてしまった。

 

「ぐあっ!?くっ、ランク12のザ・セブン・シンズが……」

 

「これが、世界にその名を馳せる復讐者……巌窟王の力か……!!」

 

恐らくアヴェンジャーとしてはこれ以上ない程の適正クラスで、最高峰の力を持つ英霊であるエドモンの力は強大。

 

モンスターエクシーズ最高ランクのランク12のザ・セブン・シンズでも太刀打ちできなかった。

 

「さあ、どうした?それで終わりか?ここで終わるほどお前達の希望は呆気ないほど小さいのか!」

 

エドモンはZEXAL IIを煽るように叫ぶ。

 

しかし、ZEXAL IIはここまで来て諦めるわけにはいかない。

 

最後の最後まで諦めない為に右手を輝かせてシャイニング・ドローをしようとしたその時。

 

「遊馬君、アストラル。ここは私に任せてもらえないかしら?」

 

そこに今まで静観していた空が静かにZEXAL IIの隣に立っていた。

 

「空?」

 

「アヴェンジャー……エドモンは私が倒すわ。オガワハイムの決着をつけたいし。それから、ルーラーとジーク君はそこで見ていなさい。私の力に巻き込まれるかもしれないから……」

 

「巻き込まれる……?空さん、あなたは一体……」

 

「……ルーラー、俺たちはもしもの時に備えて待機していよう。ここは彼女に任せてみないか?」

 

「ジーク君……はい……」

 

ルーラーはジークの言う通りにしていつでも動けるようにして後ろに下がって待機する。

 

「ふっ……虚無の女よ、貴様がこのオレに勝てるとでも?我が恩讐を受け止めきれるのか!」

 

「そうね……確かに私は泡沫の、虚ろな夢のような存在よ。だけどね……」

 

空は不敵の笑みを浮かべながら懐から何かを取り出して指に挟む。

 

「その虚ろな器を埋めるほどの大いなる力があるならどうかしら?」

 

それは金色に輝く一枚のカード。

 

そのカードに反応してZEXAL IIのアストラルから同じ金色に輝くカードが現れた。

 

「まさか……空、君が持っているそのカードは君自身のフェイトナンバーズか!?」

 

「えっ!?空のフェイトナンバーズ!?」

 

「ええ。使えるかどうかわからなかったけど、持って来たのよ」

 

空はZEXAL IIに自身のフェイトナンバーズを投げ渡す。

 

空のフェイトナンバーズは空自身の力と、その数字に対応したナンバーズが強力な力を有していることから他のフェイトナンバーズをも群を抜いて強力な効果を有している。

 

その反面召喚条件はとても難しく、仮に式がいれば比較的簡単に召喚出来るが、この監獄塔にはいないのでそれは不可能である。

 

しかし、奇跡をその手に掴むZEXAL IIならそれが可能となる。

 

「やろうぜ、アストラル」

 

「ああ。一手のミスも許されない。分かっているな?」

 

「へへっ、当たり前だろ?行くぜ!」

 

ZEXAL IIの中にいる遊馬とアストラルは互いに笑みを浮かべながら心を一つにし、右手を輝かせる。

 

「「俺/私ターン、全ての光よ、力よ、我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!この瞬間、強欲なカケラに2つ目の強欲カウンターが乗る!」」

 

強欲なカケラに更に光が灯されるとカケラから元の姿とも言える『強欲な壺』へと修繕されたが、ZEXAL IIはそれを使う前に別の魔法カードを使う。

 

「「魔法カード『オノマト連携』!手札を1枚を墓地に送り、デッキから『ガガガカイザー』と『ゴゴゴジャイアント』を手札に加える!」」

 

オノマト連携のサーチによるデッキ圧縮を行い、ここで強欲なカケラの効果を使う。

 

「ここで強欲なカケラの効果!強欲カウンターが乗ったこのカードを墓地に送り、デッキから2枚ドローする!ダブル・シャイニング・ドロー!!」

 

強欲な壺と同じ2枚ドローの効果となった強欲なカケラを墓地に送り、ZEXAL IIはデッキから2枚ドローする。

 

「更に魔法カード『強欲で貪欲な壺』!デッキトップを10枚裏側除外して2枚ドローする!セカンド・ダブル・シャイニング・ドロー!!」

 

ここから更に強欲で貪欲な壺の効果で2枚を追加でドローし、手札に今あるカードで空を召喚出来るカードが全て揃った。

 

「力を借りるぜ、カイト!」

 

シャイニング・ドローをして加えたカードの内の1枚はカイトにとって銀河眼の光子竜と同じくらいに思い入れのある大切なカードだった。

 

ZEXAL IIはカイトに深く感謝をし、思いを込めながらそのカードを発動した。

 

「魔法カード発動!『未来への思い』!!」

 

ZEXAL IIが発動したのは瓶詰めの手紙が海に漂うイラストが描かれており、カイトが父・Dr.フェイカーから貰った大切なカード。

 

「このカードは墓地のレベルの異なるモンスターを3体選び、特殊召喚する!墓地から蘇れ、ガガガマジシャン!ガガガシスター!ガガガガール!」

 

墓地からザ・セブン・シンズを召喚するために最初に召喚したガガガマジシャンとガガガシスター、そして『アームズ・ホール』でデッキトップを墓地に送ったカードがガガガガールで、その計3体のガガガモンスターが一気に復活する。

 

「ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は0となり、効果は無効化される!」

 

レベル変更を得意とするガガガマジシャン達の効果は無効化された。

 

そして、未来への思いのデメリット効果でこのターンにエクシーズ召喚をしなければ遊馬に4000の大ダメージを受けてしまう。

 

このままではレベルがバラバラでエクシーズ召喚を行えないが、全てのガガガモンスターのレベルを統一する存在がいる。

 

「俺はガガガカイザーを通常召喚!更に魔法カード『二重召喚』!通常召喚権を増やし、『ガガガクラーク』を召喚!!」

 

ガガガ学園の生徒会長と書記が現れ、これでガガガモンスターが一気に5体立ち並ぶが、レベルはバラバラでこのままではエクシーズ召喚を行うことは出来ない。

 

しかし、ガガガカイザーがいればその問題を突破できる。

 

「ガガガカイザーの効果!自分の墓地のモンスター1体をゲームから除外して発動!自分フィールド上の全てのガガガモンスターのレベルは、この効果を発動するためにゲームから除外したモンスターと同じレベルになる!墓地から虹クリボーを除外し、ガガガモンスター達のレベルを1にする!!」

 

墓地からの蘇生効果を持つ虹クリボーの効果を犠牲にし、ガガガカイザーは杖を回転させて地面に突き刺す。

 

ガガガカイザーによって放たれた光に包まれた全てのガガガモンスターのレベルが1となる。

 

「行くぜ……空!レベル1となったガガガモンスター達5体でオーバーレイ!!」

 

『『『『『ガガガガァーッ!』』』』』

 

「5体のガガガモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

今まで遊馬やアストラルでもやったことの無い5体のモンスターによるエクシーズ召喚。

 

ガガガモンスター達が光となって地面に吸い込まれ、巨大な光の爆発を起こす。

 

「「夢幻の夢を渡りし虚無の者よ、世界を創り出した創造龍と共に、森羅万象その全てを切り裂く、無限の刃となれ!!」」

 

光の爆発の中から金色に輝く光の龍が現れる。

 

『ウォオオオオオオオオオッ!!!』

 

光の龍は咆哮を轟かせながら遊馬とアストラルの上に現れる。

 

その龍こそ、遊馬とアストラル達の世界を創り出した創造神……ヌメロン・ドラゴン。

 

そして、光の爆発から現れた小さな影にヌメロン・ドラゴンが向かって飛んで影と激突し、眩い金色の光が解き放たれる。

 

「現れよ!!『FNo.100 空の境界 両儀式』!!!」

 

そして、金色の光の中から現れたのはヌメロン・ドラゴンが描かれた白の着物を着た空こと……両儀式。

 

空の手には最上大業物の名刀……九字兼定があり、その美しい刀身にはヌメロン・ドラゴンの姿を象った龍の刻印が刻まれていた。

 

空とヌメロン・ドラゴン……虚無と創造……相反する二つの力が一つに合わさり、神にも等しい強大な力を有した。

 

「創造龍……遊馬さんはそう言ってましたが、まさかアストラルさんの持つナンバーズに創造神の力が宿っていたなんて……」

 

「その創造龍の力を宿しながらも己を見失っていない空……まさか、『あの子』と同じ……」

 

ジークの脳裏にはファヴニールになっていた時に出会った幼く無邪気な笑顔が印象的な謎の少女と重なった。

 

「これは……フハハハハッ!なんと神々しく美しい力だ!面白い!どこまでオレを楽しませてくれるんだ、お前達は!!」

 

エドモンは予想を次々と超えるモンスターを呼び出してきた遊馬とアストラルに内心興奮していたが、ヌメロン・ドラゴンの登場にその興奮も抑えきれずに大笑いしてしまった。

 

「行くぜ、空の効果!オーバーレイ・ユニットを2つ使い、墓地のモンスターエクシーズを1枚選んでオーバーレイ・ユニットにする!俺が選ぶのはランク12のザ・セブン・シンズ!!」

 

空はオーバーレイ・ユニットを一つ握りしめて指を鳴らすと墓地からザ・セブン・シンズのカードを呼び出し、指に挟むとそのまま自分の懐にしまった。

 

「空の攻撃力と守備力はオーバーレイ・ユニットになっているモンスターエクシーズのランクの合計×500ポイントアップする!12×500で攻撃力は6000!!」

 

空の元々の攻撃力は0だが、オーバーレイ・ユニットとなっているモンスターエクシーズのランクの合計によって攻撃力が上昇する。

 

ランク12のザ・セブン・シンズをオーバーレイ・ユニットにしたことで空の攻撃力も一気に0から6000となった。

 

「行くぜ!カードを一枚伏せて、空でエドモンに攻撃!」

 

「行くわよ……アヴェンジャー、いいえ……エドモンさん?」

 

「オレをその名で呼ぶな、女!!」

 

空とエドモンは同時に地を蹴り、九字兼定を拳を振るう。

 

共に人の越え、卓越した剣術と体術が交差する。

 

空は直死の魔眼を発動させ、エドモンの死の線を見極めて九字兼定を振るい、一撃必殺を狙う。

 

対するエドモンは超高速行動を用いた近接格闘や怨念が込められた黒炎を用いた魔力投射を行う。

 

互いが全力で放つ攻撃は互いに紙一重で回避していき、誰も介入できない嵐のような戦いとなる。

 

しかし、このままでは拉致があかない、エドモンは一気に勝負に出る。

 

「これで終わりだ、女!!『虎よ、煌々と燃え盛れ』!!!」

 

エドモンはザ・セブン・シンズを葬った宝具を発動させ、分身して一気に空を倒そうとするが、ZEXAL IIはセットカードを発動する。

 

「そうさせない!罠カード!『攻撃の無敵化』!!」

 

「攻撃の無敵化はバトルフェイズ中に発動出来る!空は戦闘及び効果で破壊されなくなる!」

 

空の周りにヌメロン・ドラゴンの幻影が現れ、エドモンの分身による連続攻撃を全て防いで弾き飛ばす。

 

「ちっ!小癪な真似を!」

 

「更にここで空の二つ目の効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、自分の墓地、もしくは除外されている魔法・罠カードを1枚選んで自分フィールドにセットする!俺は『強欲で貪欲な壺』をセット!」

 

空はオーバーレイ・ユニットを握りしめて指先を光らせて空中をなぞるとZEXAL IIの墓地から強欲で貪欲な壺が現れてそのままセットされる。

 

そして、ZEXAL IIのターンとなり、右手を再び輝かせる。

 

「「俺/私ターン、全ての光よ、力よ、我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!魔法カード『おろかな埋葬』!デッキからモンスターを1枚墓地に送る!デッキから『ゴゴゴゴーレム』を墓地に送る!そしてセットした強欲で貪欲な壺を発動!デッキトップを10枚裏側で除外して2枚ドロー!サード・ダブル・シャイニング・ドロー!!」」

 

強欲で貪欲な壺で20枚もデッキからカードを除外され、半分以下になって更にサーチとドローを繰り返したのでデッキの残り枚数もあと数枚と、かなり少なくなってしまった。

 

このターンで決めなければもう後がないが、ZEXAL IIは勝利への道筋を確信していた。

 

「これで勝利の方程式は揃った!!ゴゴゴジャイアントを召喚!その効果で墓地からゴゴゴゴーレムを蘇生し守備表示となる!レベル4のゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!!」

 

『ホォオオオープ!』

 

空の隣に人々の持つ願いや夢をその身に秘めた希望の化身、希望皇ホープが現れる。

 

「現れたか、希望の化身!希望皇ホープよ!」

 

「そして、空の効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、空はこのターン、相手フィールドのモンスター全てに1回ずつ攻撃出来る。更に、空が攻撃する時、相手はダメージステップ終了時までモンスター・魔法・罠の効果は無効化され、カード効果を発動できない!!」

 

空は九字兼定にオーバーレイ・ユニットを取り込ませ、刀身の龍の刻印が金色に光り輝く。

 

全ての準備が整い、空の直死の魔眼が美しい赤青く輝いた。

 

「「ファイナルアタック!空でエドモンに攻撃!!」」

 

「エドモン、夢の終わりが来たのよ……」

 

エドモンの体に金色の光がまとわりつき、復讐者として、巌窟王としての力が封じられる。

 

「だが、例えオレの力を僅かな時間封じても俺はそう簡単には死なんぞ!」

 

極限まで鍛え抜かれた強靭な肉体を持つエドモンは空の攻撃を耐えられる自信があった。

 

すると、ZEXAL IIは不敵の笑みを浮かべた。

 

「「それはどうかな?」」

 

「何!?」

 

「「希望皇ホープの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」」

 

希望皇ホープが空の前に瞬時に現れて翼を半月の形に展開して空の行く手を阻んで弾き返した。

 

その光景にエドモンは目を見開き、ハッと気付いて戦慄した。

 

それは一度だけ、遊馬とアストラル……ZEXAL IIが得意とする希望皇ホープの最強コンボを目の当たりにしたからだ。

 

「これは天草四郎の時の……まさか!?」

 

「そのまさかだ、エドモン!」

 

「これが、我々の全力!」

 

ZEXAL IIは最後の希望を託したカードを発動する。

 

「「手札から速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』!を発動!モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスターの攻撃力を二倍にして、もう一度攻撃が出来る!」」

 

本来なら希望皇ホープに使うことがほとんどだったダブル・アップ・チャンスだが、希望皇ホープの他に空がいたからこそ、今回はそちらの選択をした。

 

ダブル・アップ・チャンスの効果を受け、空の背後にヌメロン・ドラゴンが姿を現した。

 

空の攻撃力は6000、ダブル・アップ・チャンスで二倍となり、12000まで上昇した。

 

「これで終わりよ……エドモン」

 

空は九字兼定を右手で構えて床に突き刺した。

 

次の瞬間、石造りの監獄塔の裁きの間が色取り取りの花々が咲き誇る美しい花畑となり、薄暗い空間から温かい光に照らされた。

 

「馬鹿な……!この監獄塔の、裁きの間の空間をお前が支配したと言うのか!?」

 

エドモンは裁きの間を支配した空に更に戦慄する。

 

そして、空は舞うが如くの動きで花畑を駆け抜ける。

 

無数の花弁が舞い上がり、ZEXAL IIは空が放つ唯一無二の宝具の名を感じ取り、言い放つ。

 

「「『無垢識・空の境界』」」

 

「全ては夢──。これが名残の華よ」

 

それは直死の魔眼の理論を応用し、対象の『死の線』を切断する全体攻撃。

 

彼岸より放たれる幽世の一太刀は、あらゆる生命に安寧を与える。

 

空が振り下ろした九字兼定から金色の斬撃と共に九匹の金色の龍のオーラが放たれる。

 

「これが、お前達の希望の輝き……」

 

エドモンはZEXAL IIと空が放った全力の一撃に絶望を切り開く希望の輝きを感じ取り、目を閉じて受ける。

 

斬撃と龍の攻撃を受けたエドモンは宙に投げ飛ばされ、花畑に転がり落ちる。

 

「「エドモン!!!」」

 

もう既に勝負は決し、ZEXAL IIはエドモンに駆け寄って抱き起こした。

 

エドモンは既に立ち上がるほどの力はなく、虚ろな目でZEXAL IIを見つめる。

 

「…………クッ、ククッ。見事。成る程、オレの戦い方を把握したか……流石は仮初めのマスターだ」

 

エドモンはZEXAL IIを認め、笑みを浮かべて自分の本心を語り始める。

 

「はははは!気分は悪くない!そうとも、オレは一度でも味わってみたかった……!かつてのオレを導いたただ一人、敬虔なるファリア神父……あなたのように!オレも……絶望に負けぬ誰かを……おぞましい罠に落ちた、無辜者を──我が、せめてもの希望として──」

 

エドモンが父の様に慕ったファリア神父……彼の様になりたく、遊馬とアストラルを導こうとしていた。

 

「「エドモン……」」

 

「……その名で呼ぶのか、お前も。オレを……」

 

「当たり前だろ?お前は俺たちの仲間のエドモンなんだからさ」

 

「エドモンも巌窟王もモンテ・クリストも全て君の名だ。それは紛れも無い事実だ」

 

「認めよう!お前達はオレを『殺してくれた』!お前はオレに勝利を導いた!」

 

「えっ……?」

 

「あなたを勝利に……?」

 

ZEXAL IIと空が勝利したはずなのにエドモンが勝利を導いたと喜びを表しており、ZEXAL IIは唖然としていた。

 

「分からんか?……嗚呼、それは、そうだろうな。オレは勝利を知らずにいたのだ。復讐者として人理に刻まれながらも、オレは……最後に救われたエドモン(オレ)だったが故に……復讐を成し遂げられず、勝利の味を遂に知らぬままの巌窟王(オレ)を持て余し続けた」

 

エドモンは復讐者として戦っていたが、最後は愛を得たことで復讐を止めた。

 

しかし、世界一の復讐者であると認められながらも復讐を成し遂げられずに中途半端に終わってしまっていたのだ。

 

「だが……お前達だ、遊馬、アストラル……ZEXALよ。お前達はオレに導かれ、障害を砕き、塔を脱出する。それは何と……希望に満ちた結末であろうか。勝利なき復讐者(オレ)であるままのオレに、お前達は、導き手としての役割と勝利を与えたのだ」

 

エドモンがファリア神父のように導き手となり、罠に落ちた遊馬とアストラルに希望の勝利を捧げるために共に歩いてきたのだ。

 

「気前のいい奴だ──はは、遊馬、アストラルよ!『オレ達の勝ちだ』!魔術の王とて全能ではないという事だ!魔術の王は邪視でお前に毒という名の呪いをかけてこの監獄塔へ堕とした。だが──はは、ははは!結果はこの通りだ!残念だったな魔術の王よ!貴様のただ一度の気まぐれ、ただ一度の姑息な罠は、ここにご破算となった!オレなんぞを選ぶからだバカ者め!ざまあない!」

 

魔術の王……ソロモンはロンドンで遊馬とアストラルに呪いをかけて監獄塔へ堕とした。

 

ソロモンは復讐者であるエドモンを選んで遊馬とアストラルを葬ろうとしたが、エドモンは恩讐を持たないソロモンに最初から協力するつもりはなかった。

 

「歩むがいい!足掻き続けろ!魂の牢獄より解き放たれて──お前達は!いつの日か、世界を救うだろう!」

 

最後にエドモンは世界を救う為に戦い続けるZEXAL IIに別れのエールを送る。

 

これが最後の別れになると感じてしまったZEXAL II──遊馬は悲しそうな声をして尋ねたら。

 

「……エドモン、もうお前には会えないのか……?このまま、消えちまうのか……?」

 

「……再会を望むか、アヴェンジャーたるオレに?」

 

「当たり前じゃねえか。お前はとっくに俺達の掛け替えのない、大切な仲間なんだからさ!」

 

ZEXAL IIはニッと飛びっきりの笑顔を見せた。

 

笑顔を見せたZEXAL IIに対し、エドモンは生前に見つけた小さな希望の光を思い出し、残る力を全て振り絞ってZEXAL IIの頭を撫でる。

 

「はは、ははははははははは!ならばオレはこう言うしかあるまいな!」

 

そして……エドモンは笑みを浮かべてこう応えた。

 

「『──待て、しかして希望せよ』と!」

 

エドモンは希望の言葉をZEXAL IIに伝え、光となって消滅した。

 

「エドモン……」

 

ZEXAL IIはエドモンの光を抱きしめ、静かに立ち上がる。

 

エドモンが消滅し、監獄塔も徐々に消滅していく。

 

「……遊馬君、アストラル。先にカルデアに帰るわね」

 

「空……ああ、ありがとうな。助かったぜ」

 

「カルデアで会おう」

 

「ええ……」

 

空は目を閉じるとカルデアから来た時と同じように虚無の夢を渡るために消えた。

 

「ジーク、ルーラー。二人もありがとうな。後でカルデアで必ず召喚するからさ」

 

「ああ。必ず君たちの力になるように全力を尽くす」

 

「召喚するのをジーク君と待っています」

 

ジークとルーラーは手を繋ぎ、笑顔を見せて消えていった。

 

監獄塔には最後にZEXAL IIだけが残り、花畑の奥に溢れるような小さな光が出て来た。

 

「あの光か……?」

 

「遊馬、帰るぞ……カルデアに」

 

「ああ」

 

ZEXAL IIは光に向かってゆっくり歩いて行った。

 

監獄塔の長い戦いの日々を思い出しながらZEXAL IIは光に包まれた。

 

 

光に包まれた後に意識を失い、目を覚まそうと必死に意識を取り戻そうとする。

 

「……ここは、カルデア……?」

 

「帰って来たようだな……」

 

目を覚ますとそこはカルデアの遊馬の自室でゆっくり起き上がると寝起きのいつもと違う姿に一瞬困惑したが、すぐに理解した。

 

「あ、そっか……俺が眠ってる時にアストラルが合体したからZEXAL IIのままか」

 

遊馬は今、アストラルと合体した状態のZEXAL IIとなっていた。

 

「帰って来たんだな、俺達……」

 

「ああ。そうだな……」

 

体は深く眠っていたので監獄塔の戦いがまるで夢のように思えてしまった。

 

ZEXAL IIは胸に手を置き、監獄塔で出会った大切な仲間の事を思い出す。

 

「エドモン……天草さん……」

 

もう一度会いたい、会って本当の仲間になりたい……ZEXAL II──遊馬がそう強く願ったその時。

 

「……えっ?」

 

「これは……フェイトナンバーズ?」

 

ZEXAL IIの胸元が光り輝くと、2枚のフェイトナンバーズが現れた。

 

そのフェイトナンバーズにはエドモンと天草の姿が描かれていた。

 

遊馬の願いが奇跡を呼び、エドモンと天草のフェイトナンバーズが誕生したことにZEXAL IIは喜びを抑えきれなかった。

 

「やった……やったぜ、アストラル!」

 

「ああ!これで二人をカルデアに呼べる!」

 

ZEXAL IIが喜びの声を上げていると部屋の扉が開いた。

 

「遊馬……!?アストラル……!?」

 

「遊馬君……遊馬君とアストラルさんが目を覚ましました!」

 

「フォウ、フォーウ、キャーウ!!」

 

部屋に入って来たのは小鳥とマシュとフォウで目を覚ましたZEXAL IIに喜びと興奮を隠せずに直ぐに駆け寄った。

 

「遊馬、アストラル、大丈夫!?私が分かる?ちゃんと意識はハッキリしている?」

 

「大丈夫だ。ちゃんと起きたから大丈夫だぜ、小鳥」

 

「私もだ。小鳥、すまないがたくさんのデュエル飯を作ってくれないか?お腹が空いてしまった」

 

「うん!任せて!たくさん作ってあげるからね!」

 

小鳥はZEXAL II……遊馬とアストラルが目を覚ましたことに嬉しくなり、元気よく頷いて腕を上げた。

 

「遊馬君、アストラルさん。おはようございます。……無事に戻ってきてくれましたね。良かった……」

 

「心配かけたな、マシュ」

 

「我々はもう大丈夫だ」

 

マシュは遊馬とアストラルが目を覚ましてくれたことが嬉しく、目頭に涙を浮かべていた。

 

ZEXAL IIは立ち上がり、手を差し伸べた。

 

「「ただいま。小鳥、マシュ、フォウ」」

 

「うん。おかえり、遊馬!アストラル!」

 

「はい。おかえりなさい、遊馬君。アストラルさん」

 

「フォウ!キャウ、フォーウ!」

 

小鳥とマシュはZEXAL IIの手に自分の手を重ね、フォウはZEXAL IIの体をよじ登って肩に乗り、頬ずりをする。

 

ソロモンが仕掛けた罠……監獄塔の戦いは終わった。

 

遊馬とアストラルは人の罪と欲望への理解を深め、カルデアのマスターとして更に大きく成長した。

 

そして……遊馬とアストラルの世界を救う為の戦いは新たなステージへと進む。

 

 

 




これにて監獄塔編も終了です。
空とエドモンの対決、如何でしょうか?
出来るだけ頑張って書きました。

今回のフェイトナンバーズはかなり大きな力を持つ空です。

『FNo.100 空の境界 両儀式』
エクシーズ・効果モンスター
ランク1/光属性/戦士族/攻0/守0
レベル1×5
このカードは手札の「RDM」魔法カード1枚を捨て、自分フィールドの「FNo.103 直死の魔眼 両儀式」の上に重ねてX召喚する事もできる。
このカードは相手のカード効果を受けず、リリースすることは出来ない。
このモンスターの攻撃力・守備力はX素材となっているモンスターエクシーズのランクの合計×500ポイントアップする。
このカードの①②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用出来ない。
①X素材を2つ取り除いて発動出来る。自分のフィールド・墓地・除外のXモンスターを1枚選択し、このカードのX素材にする。
②X素材を1つ取り除いて発動出来る。自分の墓地、もしくは除外されている魔法・罠カードを1枚選んで自分フィールドにセットする。この効果でセットしたカードはこのターンに発動出来る。この効果は相手ターンでも使用出来る。
③X素材を1つ取り除いて発動出来る。このカードは相手フィールドのモンスター全てに1回ずつ攻撃出来る。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時までモンスター・魔法・罠の効果は無効化され、カード効果を発動できない。

かなり特殊な召喚方法ですが、かなり強く仕上げました。
空……「両儀式」とヌメロン・ドラゴンのネタを考えたらこれぐらい強くてもいいかなと思って。
RDMは現在一枚しか存在しないので出しにくさも出ています。

次回から羅生門編に入ります。
出来るだけ短めにして第5章のアメリカ編に入る予定です。

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