ぶっちゃけ私好みのキャラなので出せて最高です。
レイシフト先の平安時代の日本でゴールデンこと坂田金時と再会した遊馬たち。
するとそこに謎のモンスター達が襲いかかり、撃退するために戦闘を開始した。
平安時代に鬼を始めとした化け物退治をしてきた金時は雷神のマサカリである黄金喰いを振るい、荒々しい動きで倒していく。
一方、武蔵と小次郎は鮮やかで華麗な剣で次々とモンスターを斬り伏せていく。
すると、倒したモンスターの血に誘われたのか、次々と近くに潜んでいたモンスターが姿を現していた。
「キリがないぜ!」
「遊馬!サンダー・スパーク・ドラゴンだ!一気に蹴散らすぞ!」
「分かった!」
遊馬はモンスター全破壊の能力を持つサンダー・スパーク・ドラゴンをアストラルの指示ですぐにエクシーズ召喚を行う。
「現れよ、『No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン』!」
しかし、モンスター達は倒されたモンスターの血肉を喰らってその力を増して襲いかかってきた。
「まずいぞ……このままではサンダー・スパーク・ドラゴンの効果を使っても倒せない可能性が出てきた!」
「マジかよ!?」
「せめて、モンスター達の力が弱まってくれれば……」
カルデアで敵の弱体化の宝具を持つサーヴァントに救援を求めようと考えたその時だった。
「……ハッ!?遊馬、サーヴァントの気配だ!?」
「ちっ、敵か!?」
「あっ、見えました!あそこに……女の人?」
マシュが指差した方向を見つめると、そこには……。
「何だ?この時代に似合わない格好した……」
それは漆黒のゴシックドレスに身を包んだ美しい麗人で日傘を持って歩いていた。
麗人は遊馬達の視線に気付くとにこりと微笑んだ。
「力を、お貸ししますわ」
「えっ?」
麗人は日傘を閉じると筆を取り出し、その場に座ると目の前に平安時代に書籍や硯箱などを乗せ、読書や写経に用いた長方形の低い台……文台が現れ、その上に巻物が現れた。
すると、火が灯された燭台が現れるとその場の空気が闇に染まり、麗人が筆で巻物に文字を書くと同時に静かに言葉を連ねた。
「限りあれば、薄墨衣、浅けれど、涙ぞ袖を、淵となしける……」
それは日本で最も古くから行われている詩歌の和歌で、その和歌を聞いた瞬間アストラルは耳を疑った。
「その和歌は……まさか!?」
そして、和歌を詠みあげると、筆で五つの突起を持つ星を描いた。
「『源氏物語・葵・物の怪』!」
次の瞬間、この場にいた全てのモンスターに大ダメージを与え、その場に崩れ落ちた。
「今のは一体……!?」
「遊馬、まずはこの場を切り抜ける方が先決だ!」
「お、おう!サンダー・スパーク・ドラゴンの効果!オーバーレイ・ユニットを3つ使い、このカード以外のモンスターを全て破壊する!サンダー・スパーク・ボルト!!」
サンダー・スパーク・ドラゴンは3つのオーバーレイ・ユニットを喰らい、空に雷雲を浮かべると大量の落雷を落として全てのモンスターを黒炭になるほどに雷で焼き尽くした。
モンスターを無事に全て倒し、安心する暇もなく謎の麗人に警戒を向ける。
助けてくれたが金時は黄金喰いを麗人に向ける。
「てめえ……何者だ?今さっきの攻撃は退魔の術……あれは陰陽師の使っていた力だ!」
「えっ!?陰陽師って、あの!?」
先程麗人が使ったのは化け物を効果的に倒す陰陽師の退魔の術の一つだった。
特に平安時代は陰陽師が特に栄えていた時代だが、女性が陰陽師の退魔の術を使えることはあり得ないはずだった。
「私は陰陽師ではありません。安倍晴明様から手解きを受けただけです」
「あ、安倍晴明!?」
「伝説の大陰陽師……安倍晴明だと!?」
日本でその名を知らないものはいないとされる、平安時代に活躍した最強の陰陽師・安倍晴明。
その安倍晴明から手解きを受けたこの麗人は何者なのかと更に警戒を高めると、麗人は苦笑を浮かべた。
「ご心配はいりません。私はあなた方の味方ですよ。坂田金時様」
「なっ!?何故オレの名前を!?」
「覚えておりませんか?頼光さまと一緒にお会いになったことがありますが……」
「ら、頼光の大将と!?」
「ええ」
麗人は金時や源頼光や安倍晴明と面識はあるようで、平安時代の英霊だとすぐに分かった。
しかし、金時は麗人が誰なのか分からず、頭を抱えていた。
すると、アストラルは今までの情報から麗人の正体を突き止めることができた。
「……遊馬。突然だが、『源氏物語』を知っているか?」
「え?ああ、もちろんだぜ。まあ内容は全然知らないけど名前くらいは──えっ!?アストラル、もしかして!」
アストラルがこの状況で関係ない話をするはずがないと察した遊馬も麗人の正体に気付いた。
「な、なあ!あんた、もしかして……あの有名な源氏物語を書いた……『
「ええ。その通りです。初めまして、キャスターの紫式部と申します」
麗人──紫式部はにっこりと微笑んで頷いた。
紫式部。
日本最古にして世界最古の長編小説の源氏物語などを執筆した女流作家である。
「嘘ぉっ!?あの源氏物語の作者さん!?」
「まさかこれほどの麗しい美女とは……いやはや驚いた」
日本で一番有名な作家といっても過言ではないので紫式部の名に武蔵と小次郎も驚いた。
金時は黄金喰いを消すと申し訳なさそうに頭をかいて紫式部に謝る。
「いやその、申し訳ねえ。紫式部様……いや、香子様」
「香子?」
「紫式部はあくまで職場での通り名、簡単に言えばペンネームで彼女の本名は藤原香子だ」
「あ、そうなんだ」
紫式部の名前が有名過ぎてそれがペンネームだとは知らず、アストラルが説明する。
「その、衣装や髪型があまりにも違い過ぎたのでなかなか思い出せなくて……」
金時は紫式部のイメージが今と生前であまりにも違うので思い出せなかった。
「私も最初は金時様だと気付くのには時間がかかりましたわ。そのお顔を覆うサングラス……何故そのような……?」
「それはもちろん、クールでいけてるから!」
「は、はぁ……?」
金時の美的センスに付いていけない紫式部は再び苦笑いを浮かべた。
すると、遊馬達も紫式部に近づいて自己紹介をする。
「初めまして、紫式部さん!俺は九十九遊馬!ゴールデンやここにいるサーヴァントと契約しているマスターだ!」
「私の名はアストラル。遊馬の相棒で共に戦っている精霊だ」
「私はデミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトです」
「私はセイバーの宮本武蔵!あの紫式部さんに会えるなんて光栄だよ!」
「佐々木小次郎。貴女ほどの大した英霊ではないが、よろしく頼む」
「はい、みなさん。よろしくお願いします」
紫式部は頭を下げて挨拶をし、自己紹介を終えると桜の木の下で早速情報を整理するための話し合いが行われた。
この地は平安時代の日本における文化的・政治的中心地の京都の近く。
金時は気がついたらここにいたらしく、暇だったので熊と稽古して寝て朝になっており、そこに遊馬達と再会した。
そして、紫式部の口から驚くべきことが語られる。
「金時様……今、京の都は酒の霧に包まれており、人々は酔っておかしくなっています」
「酒だぁ……?」
「それから……一瞬で遠目でしか見ていませんが、鬼を目にしました……」
「鬼だと!?酒に鬼……ちっ、面倒な事になりそうだぜ!」
金時は鬼が現れたと聞いて苛立ち、力を込めた拳で地面を思いっきり叩きつけた。
「私一人では圧倒的に力不足……この時代で鬼を倒せるサーヴァントを探していました。そして、ようやく金時様を見つけることが出来ました」
紫式部は鬼を倒すことができる力を持つサーヴァントを探すために都から離れ、金時を探し出せた。
運良くマスターの遊馬も巡り会えたのでこれで京の都を救うことができる。
「お願いします。どうか都を救うためにお力をお貸しくださいませ」
「任せてくれ!俺たちはその為に来たんだからな!」
「鬼退治ならオレの仕事だ。化け物共に都を好き勝手させるわけにはいかねえ!」
金時は酒と鬼と聞いて何かを思い出したのか、やる気と同時に怒りが湧いていた。
これで目的は決まり、京の都で謎の酒の気を撒き散らしている元凶の鬼を倒す事となった。
紫式部も遊馬達と共に京の都を守る為に戦う為に遊馬と契約を交わす。
遊馬と紫式部は握手を交わすとフェイトナンバーズが現れ、これで契約が完了した。
遊馬達は早速山を下り、京の都へ向かう。
都へ向かう途中、遊馬は紫式部と話をする。
「なあ、紫式部さん」
「何でしょう?」
「気になったんだけど、何でドレス姿なんだ?着物じゃねえのか?」
紫式部は当然ながら平安時代の貴族の女性で、中宮・藤原彰子の教育係だったのでかなり身分の高い。
それが何故ゴシックなドレスを着ているのか疑問で仕方がなかった。
「確かに私は十二単を着ていましたが、その……」
「うんうん」
「あれだと流石に重くて動きづらいので……」
紫式部は少し恥ずかしそうに理由を答えると遊馬は納得するように頷いた。
「あー、なるほどね。前にテレビで見たけど平安時代の着物って重そうだよなぁ……」
「十二単は約20キロもしたそうだ。一口に十二単にも色々あるが、平安時代の女性貴族は大変な思いをしたことには変わりないな」
アストラルが十二単の事を遊馬に教えると紫式部は目を細めて疑惑の眼差しでアストラルを見つめる。
「……遊馬様、こちらのアストラルという方は本当に味方なのですか?」
「え?何だよ急に……何でそんな事を聞くんだよ?」
「……人ならざる存在が、人に協力的なのが信じられなくて……」
「アストラルは俺たちの味方だ!アストラルはこれまで沢山の苦難を一緒に乗り越えてきた大切な相棒だ!!」
遊馬はアストラルを信じられない紫式部に対して自分のことのように怒るが、アストラルはそんな遊馬を静かに制した。
「待つんだ遊馬、紫式部の言うことにも一理ある。平安時代は異形の存在が特に強く、人を食い荒らして大暴れをしていた。人ではない存在の私を疑うのも無理はない」
「でもよ、アストラル……」
「紫式部。確かに私は人とは異なる存在、アストラル世界と呼ばれる異世界から来た。しかし、私は人を喰らったり、滅ぼすつもりはない」
「……それなら、何故遊馬様と共に戦うのですか?」
「……私が戦うのは三つある。一つ目はこの世界を滅ぼそうとする存在が私たちの世界を脅かす可能性があり、それを阻止する為。二つ目はカルデアで大切な仲間達を守る為。そして、三つ目……」
アストラルは静かに目を閉じてからゆっくり開け、遊馬を見つめて最後の理由を答える。
「私は……私のこの命よりも大切な、大好きな遊馬の力になる為にここにいる!遊馬を守り抜き、無事にみんなと人間界に戻る為に戦い続ける!それが、私の戦う理由だ!!」
アストラルが戦う理由……それは自分自身ではなく、何よりも大切な遊馬の為だった。
紫式部はその答えに言葉を失った。
人ならざる存在がこれほどまでに熱く想いのこもった言葉を言うとは思いも寄らなかった。
そして、アストラルの金色の双眸に秘められた純粋で真っ直ぐ、それでいて情熱の込められた美しい瞳に平安時代の様々な欲望を持つ人を見てきた紫式部も認めざるを得なかった。
「先程は無礼な事を言ってしまい、申し訳ありませんでした。アストラル様」
「分かってもらえればそれでいい。これからよろしく頼む、紫式部」
「はい、よろしくお願いします」
互いを認め合ったアストラルと紫式部に一同は安心する。
そして、アストラルから間接的に告白された遊馬は少し照れながらアストラルと戯れ合う。
「ったくよ、どさくさに紛れて告白するんじゃねえよ」
「別に告白したつもりはない。あれは私の正直な気持ちだ。それに前に一度、君の笑顔が大好きだと言ったではないか」
「そうだけどさ、ちょっと恥ずかしいじゃねえか」
「フッ、何を今更。君だって私への想いを口にしたらしいじゃないか」
「あ、あれはお前がいない時だったから……」
「是非ともその時の君の想いを聞いてみたいな」
「い、言えるかよ、馬鹿!!」
遊馬とアストラルが痴話喧嘩のように話している光景に紫式部は呆然とする。
人と精霊……本来なら相容れぬ存在同士がここまで仲睦まじく一緒にいる光景を紫式部は驚きを隠せなかった。
二人はここに至るまでどのような戦いや苦難を乗り越えて物語を紡いできたのか……紫式部は興味を抱いた。
☆
一方、遊馬とアストラルの痴話喧嘩に過剰に反応する者達が……。
「ま、マズイです!非常にマズイです!まさか、私たちの最大のライバルがアストラルさんだったなんて!」
「な、なんて事なの……文字通り一心同体になるとは言え、兄弟みたいに見えたから微笑ましく思ってたけど、よくよく考えたらアストラルって明確な性別が無いからどっちも行ける可能性が……!!」
「これはいけません、今後はアストラルさんに負けないように努力しないと!!」
「私も遊馬の最高のお姉ちゃんポジションを何としてでも守らないと!」
マシュと武蔵はアストラルと言う予想外の最強最大のライバルの登場に燃えていた。
「フォウフォ……」
「全く、私はこいつの暴走を止める為に選ばれた訳じゃないだろうな……」
フォウと小次郎はテンションが上がっているマシュと武蔵にこれから起こるかもしれない暴走への憂鬱に溜息をついた。
最も、この変なテンションの上がりようは京の都から漂っている酒気が原因なのだが……今はその事を誰も知らない。
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と言うわけで登場しました、紫式部さん!
もう可愛すぎて嫁にしたい(笑)
黒髪ロングで着物の似合う大和撫子な女性はもうドストライクです。
平安時代の人間なので一応人外のアストラルを警戒していましたが、そこはアストラルの遊馬への想いで警戒は解けましたね。
そしてアストラルが最大のライバルだとマシュ達は気づきます。
次回はマシュと武蔵が暴走します(笑)
色々面白おかしく書きたいと思います。