遊馬先生、あのツンデレをはよ攻略を(笑)
今回からホープ以外の色々なナンバーズを呼び出す予定です。
竜の魔女が近づく気配を感じ、遊馬達はここで迎え撃つ事にした。
敵サーヴァントの数は五体でこちらはランクダウンしているジャンヌを含めて四体だが、遊馬とアストラルのナンバーズがあるので戦力差を埋めることが出来る。
「遊馬君!今のうちに私をフェイトナンバーズで召喚してください!」
マシュはシールダーでアルトリアとエミヤに比べるまでもなく戦闘力は低いがフェイトナンバーズになれば遊馬のサポートにもなれる。
「あ、ああ!わかった!マシュ、来い!」
「はい!」
マシュの体が光の粒子となってフェイトナンバーズのカードに入り込み、遊馬が五枚の手札を見て頷いた。
「この手札なら行ける!鉄男、行くぜ『ブリキンギョ』を召喚!」
遊馬がまず呼び出したのは金魚の形をしたブリキのおもちゃみたいなモンスター。
それは遊馬のカードではなく、小学校からの友人である武田鉄男のカードである。
「このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4のモンスターを特殊召喚できる。効果で『ガガガマジシャン』を特殊召喚!
ブリキンギョの効果でガガガマジシャンが特殊召喚される。
「レベル4のブリキンギョとガガガマジシャンでオーバーレイ!エクシーズ召喚!『FNo.0 人理の守り人 マシュ』!!」
未来皇ホープのプロテクターを装着したマシュがオーバーレイ・ユニットを纏いながら召喚され、いつでも遊馬を完璧に守れる状態となった。
「これがサーヴァントの新しい力……フェイトナンバーズ……」
フェイトナンバーズの召喚を間近に見たジャンヌはルーラーとして英霊の力とは異なる『異質』な力の波動を感じ、目を見開いて驚く。
迎え撃つ準備が完了すると大量のワイバーンが襲来。そのワイバーンの上には五体のサーヴァントが乗っていた。
五体のサーヴァントはワイバーンから降りて遊馬達と対峙する。
そして、何よりも目につくのがこの特異点の元凶と思われる存在……もう一人のジャンヌ・ダルクだった。
アルトリアが冬木の時の黒い姿のようにジャンヌが金髪が白髪になり、鎧が黒く染まったもう一人のジャンヌ・ダルク……ジャンヌ・オルタが四人のサーヴァントを引き連れてやって来た。
ジャンヌ・オルタはジャンヌを見て嘲笑うかのように一人で語り出した。
「あんな哀れな小娘にすがるしか無かった国とかネズミの国にも劣っていたのね」
「貴女は……貴女は、誰ですか!?」
「私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女ですよ、もう一人の私」
「おい!黒ジャンヌ!!」
耐えきれなくなった遊馬はジャンヌ・オルタを黒ジャンヌと呼んだ。
「黒、ジャンヌ……!?子供……口の聞き方に注意しなさい。楽に殺してあげませんよ?」
「うるせぇ、お前なんて怒った姉ちゃんに比べたら全然怖くねぇよ!そんな事より、どうしてこんな事をした!ジャンヌはフランスを救うために戦っていたのに!」
「そんなものは明白じゃないですか。この国に救う価値なんてない、だから全部壊すんですよ」
「それは……裏切られて処刑されたからか?」
「あんな愚者を救ったところで未来はありません。もう騙されない、裏切りを許さない……そもそも主の声も聞こえない。主の声が聞こえないということは、主はこの国に愛想をつかした、という事です」
「騙されることや裏切られる痛みや苦しみは俺にも分かる。でも、神様の声が聞こえないからといって、国を滅ぼす理由にはならない。神様関係無しに最後は自分の心で決めることだ」
「子供がわかったようなことを言わないでください」
「分かるさ。俺とここにいるアストラルや異世界にいる大勢の仲間達と一緒に人類と世界の未来を守るために戦った。だけど、守る為に、救う為に戦う決断をしたのは俺たち自身の心で選んだことだ!!」
「そんな嘘を……どちらにしても、人類種が存続する限りこの憎悪は収まらない。このフランスを沈黙する死者の国に作り変える。それが私、それが死を迎えて成長し、新しい私になったジャンヌ・ダルクの救国方法です」
「それで……?」
「何?」
「救国と言いながら、全部滅ぼしたらどうするんだ?周りには誰もいない、あんたがかつて守ろうとした人々の声も心も何もない、あるのは血と屍しか残らない光のない世界でお前は幸せになれるのか?」
「私の幸せだと?そんなものは必要ない!私はこのフランスに復讐さえできればーー」
「そんなことをしても失うだけだ。復讐は憎しみしか生まない。復讐の先に本当の未来はないんだ!」
遊馬の思いがこもった言葉の数々ににマシュたちは驚いた。
とても十三歳とは思えない少し大人びた表情と落ち着いた雰囲気……一体この少年はどれほどのものを見てきたのかと言葉を失う。
サーヴァントでもないただの十三歳の少年に諭され調子が狂うジャンヌ・オルタは、苛立ちを覚えながら声を荒げていく。
「うるさい……うるさいうるさい!何も知らないくせに、どれだけ私が苦しんだか知らないくせに勝手なことを言うな!!」
「ああそうさ、俺はジャンヌがどんな思いを過ごして戦い、最後を迎え、そして再び現れて今のあんたみたいな復讐者になったのかを知らない。だから、お前の本当の思いを聞きたいんだ。その上で、俺は俺自身の答えを出す」
「答え、だと?そんなものは必要ない!お前達はそこの聖女と共にここで消える運命だ!やりなさい、バーサーク・ランサー!バーサーク・アサシン!」
「その程度の運命は何度も乗り越えてきた!行くぜ、アストラル!」
「ああ!行くぞ、遊馬!」
「俺のターン、ドロー!『トイナイト』を召喚!効果で手札から『トイナイト』を特殊召喚!」
召喚されたのはオモチャの兵隊みたいなモンスターでそれが自身の効果で同名モンスターをであるトイナイトをもう一体呼び出す。
「俺はレベル4のトイナイト二体でオーバーレイ!二体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」
二体のトイナイトが光となって地面に吸い込まれて光の爆発が起きる。
「「現れよ、No.39!我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!光の使者、『希望皇ホープ』!!!」」
『ホォオオオオオープ!!!』
光の爆発と共に既に変形が完了した希望皇ホープが現れ、気合の雄叫びをあげる。
数多の闇を斬り裂いてきた光の使者の異名を持つ希望皇ホープにジャンヌ・オルタだけでなく、他の四人のサーヴァントも本能的に恐れた。
「な、何よこれ……!?希望皇ホープ……!?気に入らない……希望の光なんて打ち砕いてやる、サーヴァント!!」
「よろしい。では私は血を戴こう」
「私はそこの女騎士と盾の女、そして聖女の肉と血を戴きたいわ」
ジャンヌ・オルタの前に出てきたのは貴族風の姿をした男性、バーサーク・ランサーと多くの拷問器具を持った不気味な女性、バーサーク・アサシンだった。
「私たちも行きますよ、シロウ!」
「ああ、行こう」
アルトリアは約束された勝利の剣、エミヤは干将・莫耶を構えてバーサーク・ランサーとバーサーク・アサシンと対峙する。
「あのホープとかいう下らないものは私がやる……行きなさい、ワイバーン!」
ジャンヌ・オルタはワイバーンを操り、一斉に希望皇ホープに襲いかかる。
希望皇ホープは双剣を構えてワイバーンを斬り倒していくが、あまりにも大量のワイバーンに対処できなくなる。
遂には囲まれて纏わり付かれてその強靭な牙で喰らわれていく。
「ホープ!」
「ははははっ!光の使者かなんか知らないけど、数で押し切って喰らってやるわ!!」
希望皇ホープはワイバーンに包まれ、物理的に身動きが取れなくなっている。
このままでは希望皇ホープがワイバーンに喰い殺されるが、ナンバーズは希望皇ホープだけではない。
「ナンバーズはホープだけじゃない!俺のターン、ドロー!『ズババナイト』を召喚!更に『影無茶ナイト』を特殊召喚!レベル3のズババナイトと影無茶ナイトでオーバーレイ!エクシーズ召喚!」
二刀流の騎士の隣に同じ姿をした影の騎士が現れ、光となって地面に吸い込まれる。
光の爆発が起きると『17』の数字が空中に浮かぶと地面から霧を漂わせながら不気味な髑髏が姿を現した。
「現れよ、『No.17 リバイス・ドラゴン』!」
髑髏から変形すると、青と藍色の体を持ち、六つの翼を携え、六つある角の一つに『17』の刻印が刻まれた翼竜が現れた。
リバイス・ドラゴン、それは遊馬とアストラルのナンバーズをかけた戦いの幕開けを告げ、希望皇ホープが初めて戦ったナンバーズでもある。
「翼竜だと!?貴様も竜使いなのか!?」
ジャンヌ・オルタが操るワイバーンよりも比べ物にならないほどの力を持つリバイス・ドラゴン。
ワイバーン達は格上のリバイス・ドラゴンに恐れて本能的に下がっていた。
「リバイス・ドラゴンのモンスター効果!一ターンに一度、オーバーレイ・ユニットを一つ使い、リバイス・ドラゴンの攻撃力を500ポイントアップする!アクア・オービタル・ゲイン!」
リバイス・ドラゴンがオーバーレイ・ユニットを一つ喰らうと攻撃力が上昇し、希望皇ホープと同等となる。
「リバイス・ドラゴンの攻撃!バイス・ストリーム!!」
リバイス・ドラゴンの口から旋風が放たれ、希望皇ホープにまとわりついていたワイバーンを全て吹き飛ばした。
初めて見るドラゴンであるリバイス・ドラゴンの力を目の当たりにしたジャンヌ・オルタはまるでおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせると、ジャンヌの持つ白い旗と異なる黒い竜の刻印が描かれた旗を掲げた。
「素晴らしい……その力、竜の魔女である私に相応しい!蒼き水の竜、リバイス・ドラゴンよ、私に従いなさい!!」
『ギュオッ!?……ギュオオオオオオオーッ!!』
リバイス・ドラゴンの赤い瞳が紫色に不気味に輝くと遊馬のコントロールを離れてジャンヌ・オルタのコントロール下に入った。
「リバイス・ドラゴンが操られた!?」
「まさか……あのジャンヌは竜を……ドラゴンをコントロールする力があるのか!?」
強力な竜を召喚するだけでなく他の竜を操ることが出来るジャンヌ・オルタのスキルに戦慄する。
「ふははははっ!力が、力が溢れてくる!!」
不気味な笑みを浮かべるジャンヌ・オルタの右手の甲に『17』の刻印が刻まれ、その身から邪悪な闇のオーラを纏っていた。
ナンバーズは一枚でも遊馬とアストラルや特別な力を持つ人間以外が持つと心の闇が増幅して快楽に似た快感を得る。
特に復讐の心しかないジャンヌ・オルタにナンバーズの心の闇の増幅は彼女の復讐心を簡単に高めている。
「まずい……リバイス・ドラゴンが彼女に取り憑いたことで心の闇が増幅されている」
「やれ!リバイス・ドラゴン!攻撃だ!」
ジャンヌ・オルタは意気揚々と笑みを浮かべながらリバイス・ドラゴンに指示を出し、口から旋風を放つ。
「くっ、マシュ!」
「はい!フルムーンバリア!」
マシュがオーバーレイ・ユニットを使い、盾を展開して金色のバリアを張る。
満月のようなバリアがリバイス・ドラゴンの攻撃を防ぎ、バトルを強制終了させて遊馬のデッキトップに好きな魔法カードを置かせる。
「遊馬君!」
「助かったぜ、マシュ!俺のターン、ドロー!魔法カード、『所有者の刻印』を発動!全てのモンスターのコントロールを元に戻す!戻って来い、リバイス・ドラゴン!!」
マシュの力でデッキトップに置いた魔法カードは洗脳されたモンスターのコントロールを取り戻す効果がある。
遊馬は数々のデュエルで自分のモンスターやナンバーズのコントロールを相手に奪われることが多々あった。
そのためのコントロール奪取の魔法カードを入れてあるのだ。
リバイス・ドラゴンのコントロールが遊馬の元に戻り、ジャンヌ・オルタの手に刻まれた刻印が消えると脱力感からか軽く体がふらついた。
「ぐっ!おのれ……私のドラゴンを……」
「リバイスはお前のじゃない!魔法カード、『エクシーズ・ギフト』を発動!自分フィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在する場合、オーバーレイ・ユニットを2つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローする!」
希望皇ホープとリバイス・ドラゴンのオーバーレイ・ユニットを一つずつ墓地に送り、デッキから二枚カードをドローする。
「来たぜ、リバイス・ドラゴンをリリースし、アドバンス召喚!『ドドドウォリアー』!」
これ以上リバイス・ドラゴンを洗脳されないようにその魂を生贄に捧げ、高レベルのモンスターを召喚し、現れたのはヴァイキングの姿をした戦士。
「更に魔法カード、『死者蘇生』!蘇れ、ガガガマジシャン!ガガガマジシャンの効果!一ターンに一度、自身のレベルを1から8に変更できる!ガガガマジシャンのレベルを6にする!」
墓地から復活したガガガマジシャンの腰につけたバックルの星が4から6に輝き、レベルが4から6へと変化した。
「III……ミハエル!力を借りるぜ、レベル6のガガガマジシャンとドドドウォリアーでオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」
ガガガマジシャンとドドドウォリアーが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。
希望皇ホープ、リバイス・ドラゴンに続き次はどんなモンスターが現れるのかマシュとジャンヌは密かに期待する。
アルトリアとエミヤは何かやばいものが来ると直感し、戦闘を中断して遊馬の元へ戻った。
その直後に大地が揺れてまともに立てなくなるほどの巨大な地震が発生し、とんでもないモンスターが現れる。
「現れよ!『No.6
空中に『06』の数字が浮かび上がり、地震の後に遊馬の前に地割れが起きて中から現れたのは上半身には大地と火山、下半身にはマグマで構成されたまるで古の大陸が巨人の姿となったような巨大なモンスターだった。
それはかつて遊馬の敵だったが、家族の絆を取り戻した遊馬に深い感謝の気持ちを抱き、遊馬の為に命を懸けて戦う剣と盾になることを誓った少年、III……ミハエル・アークライトのエースモンスター。
「お、大きい……」
「まさかナンバーズにはこれほど巨大なものがいるとは……」
「もはやモンスターと言うより古代兵器だな……」
「すみません、私夢でも見ているのでしょうか……?」
希望皇ホープやリバイス・ドラゴンとはまた違う巨大なモンスターにマシュ達は驚愕で開いた口が閉じなかった。
「なっ、何よこれ……?」
「馬鹿な、これほどの力をあの少年が!?」
「ありえない……あんな未熟な子供が!?」
「これは……!?」
「どうやらただの少年ではないようですね……」
ジャンヌ・オルタ達はアトランタルのあまりの巨大さとその身に秘めた膨大な力とそれを自由自在に操る遊馬に驚いて目を疑った。
「アトランタルの効果!エクシーズ召喚に成功した時、墓地のナンバーズをアトランタルに装備してその攻撃力の半分を得る!墓地に眠るリバイス・ドラゴンをアトランタルに装備!」
墓地からリバイス・ドラゴンが現れ、ベルトみたいにアトランタルの腰に巻きついてその力を高める。
「アトランタル!ワイバーンに攻撃だ!ディヴァイン・パニッシュメント!」
「続け、希望皇ホープ!ホープ剣・スラッシュ!」
アトランタルの左肩の火山が噴火し、天に昇ると神の怒りが地上に落ちるかの如く、竜巻と雷が降り注いで大量のワイバーンを一気に粉砕する。
そして、希望皇ホープも続いて双剣でワイバーンを斬り裂いていく。
一気にワイバーンを倒され、ジャンヌは唇を噛み締めながら追加でワイバーンを召喚していく。
「遊馬、アトランタルの効果であのジャンヌを追い詰めるんだ」
「分かった、俺のターン、ドロー!アトランタルのもう一つの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、装備したナンバーズを墓地に送り、相手のライフを半分にする!オリハルコン・ゲート!!」
オーバーレイ・ユニットと装備したリバイス・ドラゴンを墓地に送り、アトランタルが灼熱の炎を宿した右腕を高く振り上げると金色の波動が降り注ぎ、その効果がジャンヌ・オルタにのみ与えられる。
「な、何!?私の、魔力が……!?」
ジャンヌ・オルタは膝をつき、謎の脱力感と苦痛に襲われて胸を強く抑える。
アトランタルの強力な効果、オリハルコン・ゲートは相手のライフポイントを半分にする……それがサーヴァントに適応されると力の源である魔力を半分にすることとなる。
魔力はそう簡単に回復できるものではない。ジャンヌ・オルタは旗を杖代わりにして無理やり立ち上がることしかできなかった。
「ジャンヌ……アトランタルの効果であんたのライフを半分にした。これで全力を出せない、諦めて降伏しろ!」
「ふざけるな……誰が降伏なんか……!くっ、竜召喚と竜操作が……」
度重なる魔力の消費とオリハルコン・ゲートの魔力半減によりまともに動けなくなり、ジャンヌ・オルタはこの場にいる誰よりも弱い存在になってしまった。
それに加え、魔力がかなり減った事で竜の魔女としての竜召喚と竜操作のスキルがまともに使えなくなっている。
「このままではいけない……撤退しましょう」
「あなたがそんな状態じゃ私達の勝ち目がなくなりますわ」
「チッ……仕方ない、戻ってジルに魔力を回復してもらわないと……ワイバーン!」
ジャンヌ・オルタはワイバーンを呼び、自身の魔力を回復させる為に急いでオルレアンに撤退することを決めた。
「子供……貴様、ユウマと言いましたね?覚えておきなさい、そこの聖女の前に必ず貴様を亡き者してやるわ」
「俺は絶対に死なない。いつでもかかって来い。全力で相手をしてやるぜ!」
「減らず口を……感じるぞ、リバイス・ドラゴン以外にまだ強力なドラゴンを隠し持っていることを!必ず貴様の全てのドラゴンを頂いて誰も倒すことのできない最強の竜の魔女として君臨するわ!!」
竜の魔女として遊馬のデッキとエクストラデッキに眠る数々のドラゴンの気配を感じ、全て奪うと宣言するが遊馬は鋭い眼差しで反論する。
「絶対に渡さない。このデッキに眠るドラゴン達は俺とアストラル、そして大切な仲間達との絆の結晶だからな!」
「ふん……良い気になるのも今のうちです」
そして、ジャンヌ・オルタ達はワイバーンに乗り、その場から離脱した。
深追いは禁物だとアルトリアとエミヤも下手に手を出さずに剣を納めた。
ジャンヌ・オルタの標的の最優先がジャンヌから遊馬へと変更され、ジャンヌは心配そうに遊馬を見つめる。それに気付いた遊馬は笑みを浮かべた。
「心配するなって!みんなはマスターである俺を守るために戦ってくれるんだろ?だったら俺はみんなを守るために全力で戦う!へへっ、単純明快で分かりやすいだろ?」
ポジティブと言うか単純と言うか、単なる馬鹿なのか分からないが遊馬らしい言葉にジャンヌは苦笑を浮かべる。
「全く君という子は……」
「それが遊馬という人間だ、ジャンヌ。ところで……そこに隠れている二人、出てきたらどうだ?」
アストラルが目を鋭くして破壊された街の物陰を睨み付けると二つの影が動いた。
「あらー、見つかっちゃったわね」
「まあ仕方ないさ。どのみち出て行くタイミングを逃したからちょうど良いさ」
物陰から現れたのは二人の男女だった。
一人はマシュやアルトリアやジャンヌとは違うタイプの天真爛漫なアイドルみたいな可愛さを持つ少女でもう一人は派手な装飾に身を包んだ青年だった。
気配を隠していたが、二人ともサーヴァントでジャンヌ・オルタが従えているサーヴァントでは無かった。
「お待ちになって!私たちはあなた達の味方よ!」
「え?」
遊馬達はひとまずその街から離れて近くの森へ向かった。
話を聞くと二人は騒ぎを聞きつけてこの街にやってきて遊馬達の援護をしようと思っていたが、アトランタルの凄まじさに驚いてタイミングを完全に逃してしまった。
「って事は、二人は俺たちに協力してくれるのか?」
「ええそうよ!初めまして、私はマリー・アントワネット。クラスはライダーよ!」
マリー・アントワネット。
フランス革命期に消えた王妃、ヴェルサイユの華と謳われた少女である。
「マリー・アントワネット……ってええっ!?」
アイドルのような美少女がマリー・アントワネットと知り、遊馬は目を見開いて驚愕した。
「あら?私をご存知で?」
「知ってるも何も前に小鳥と一緒に『マリー・アントワネット展』という展示会に付き合わされたことがあって……俺たちの世界であんたはけっこう女性に人気があるから……」
「あら?そうなの!?それは嬉しいわね!しかも私の展示会が行われるなんて素敵だわ!」
「流石はマリーだ。では次は僕だ。僕はアマデウス、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだ」
「……何ぃいいいっ!?マリーの次は天才音楽家のモーツァルト!!?」
世界的に有名な天才音楽家のモーツァルトこと、アマデウスに遊馬は学校で習ったことのある英霊と次々と会えて興奮が上がっていく。
「おやおや、そこまで興奮するとはどうしたんだい?僕は芸術家の一人に過ぎないのだが……」
するとエミヤが自分も知っているようにアマデウスに興奮している理由を話す。
「モーツァルト……いや、アマデウス。君の作曲した音楽は遠い未来の世界で世界中に普及していて人気は衰えていない」
「そうなのかい?それは名誉なことだね」
「すごーい!流石は天才音楽家のアマデウスね!ところで、あなたはここにいるサーヴァントのマスターかしら?」
「ああ!俺は九十九遊馬!マスターをやっている、よろしくな、マリー!アマデウス!」
「私はアストラル、遊馬の相棒の精霊だ」
「私はマシュ・キリエライトです」
「セイバーのサーヴァント、アルトリアです」
「アーチャーのサーヴァント、エミヤだ」
「私はルーラー……ジャンヌ・ダルクです」
互いに自己紹介が終わり、ジャンヌ・オルタ達を打倒するためにマリー・アントワネットとアマデウスは遊馬達と共に戦うことを約束し、行動を共にすることとなった。
そして、その矢先に竜に跨る『もう一人の聖女』が遊馬達に近づいていた。
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次回はあの鉄拳聖女様とバトルしたり、サーヴァント探しをします。
今回の黒ジャンヌちゃんと遊馬先生の対話はどうでしたでしょうか?
やっぱりカウンセラーの遊馬先生の言葉を再現するのは難しいですが、頑張って考えて行きます。