Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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Fate/Zexal Orderも遂に二周年となりました。
これも皆様の日頃からの応援のお陰です、ありがとうございます!
これからも頑張って執筆していきます!

さて今回は、モードレッドが遂にエミヤ達と出会うことになります。
とても楽しく書けました。


ナンバーズ109 モードレッドの新しい母上!?

羅生門の戦いからカルデアに帰還した翌日、遊馬達は召喚ルームに来ていた。

 

「おかあさん、早く早く!」

 

「おう、ちょっと待っててな」

 

召喚ルームにはこの召喚を楽しみにしていたジャックが側にいた。

 

第四特異点のロンドンと監獄塔と羅生門で出会ったサーヴァント達を召喚するため、遊馬はフェイトナンバーズと二つの触媒を召喚サークルに並べる。

 

慣れた手つきでマシュから受け取った聖晶石を砕き、その欠片を振りまく。

 

砕いた聖晶石が振りまかれると四度目のサーヴァントが始まり、いつものように爆発的な魔力が収束する。

 

英霊召喚システムとカルデアの電力が轟いて眩い光を放つ。

 

光の中から絆を結んだサーヴァント達が召喚されていく。

 

「セイバー、モードレッド推参だ!父上はいるか?」

 

最初に召喚されたのはモードレッド。

 

モードレッドのフェイトナンバーズは赤雷が轟く背景をバッグに燦然と輝く王剣を構えた姿が描かれており、真名は『FNo.98 叛逆の赤雷騎士 モードレッド』。

 

「遊馬、待っていたぞ」

 

「これからよろしくお願いしますね」

 

モードレッドの次はジークとルーラーで、二人のフェイトナンバーズは既に監獄塔で判明しており、真名は『FNo.95 邪竜と聖女 ジーク&ルーラー』。

 

「ジキルだ……よろしく頼むよ、マスター」

 

ジークとルーラーの次はジキルで、フェイトナンバーズはナイフを構えたジキルの背後に血塗られた指を舐める凶悪な表情を浮かべたハイドが描かれており、真名は『FNo.104 二重存在者 ジキル&ハイド』。

 

「……ウゥゥゥゥゥ」

 

ジキルの次はフランで、フェイトナンバーズは美しい白い花畑の中で可愛らしく座っている姿が描かれており、真名は『FNo.22 無垢なる花嫁 フランケンシュタイン』。

 

「キャスター、シェイクスピア!ここに参上しました!」

 

フランの次はシェイクスピアで、フェイトナンバーズは無数の本のページが舞い散る中、本と羽ペンを持って舞台俳優のように手を広げてポーズを決める姿が描かれており、真名は『FNo.78 偉大なる文豪 シェイクスピア』。

 

「こんにちは。一緒に素敵な夢を見ましょう」

 

シェイクスピアの次はナーサリーで、フェイトナンバーズは『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の有名な登場キャラクターが描かれている背景の中心に可愛らしく座りながら絵本を読んでいる姿が描かれており、真名は『FNo.78 誰かの為の物語 ナーサリー・ライム』。

 

「三流サーヴァント、アンデルセン。さて、お前達の物語を後で聞かせてもらおうか」

 

ナーサリーの次はアンデルセンで、フェイトナンバーズは『人魚姫』や『マッチ売りの少女』など世界的に有名な童話の本が浮かぶ背景にアンデルセンが羽ペンで新しい物語を書いている姿が描かれており、真名は『FNo.78 童話創作者 アンデルセン』。

 

「ご用とあらば即参上!あなたの頼れる巫女狐、キャスター降臨っ!です!」

 

アンデルセンの次は玉藻で、フェイトナンバーズは満月が煌めく夜空の下で湖で水天日光天照八野鎮石を持ち、湖の上を優雅に歩く姿が描かれており、真名は『FNo.16 絶世の巫女狐 玉藻の前』。

 

「悪魔メフィストフェレス、まかり越しでございます!」

 

玉藻の次はメフィストで、フェイトナンバーズは巨大な時計をバックに巨大なハサミを持って刃を舌で不気味に舐めている姿が描かれており、真名は『FNo.85 堕落の悪魔 メフィストフェレス』。

 

「召喚により参上いたしました。どうか、このパラケルススと友達になりましょう」

 

メフィストの次はパラケルススで、フェイトナンバーズはビーカーと試験管を持ち、その周囲に魔術の五つの元素の光が浮かぶ姿が描かれており、真名は『FNo.33 元素の魔術師 パラケルスス』。

 

「我が名は蒸気王。ひとたび死して、空想世界と共に在る者!」

 

パラケルススの次はバベッジで、フェイトナンバーズは大量のヘルタースケルターを引き連れ、蒸気機関の鎧から蒸気を放出しながらステッキを構える姿が描かれており、真名は『FNo.81 蒸気王 チャールズ・バベッジ』。

 

「俺を呼んだな!復讐の化身を!希望の化身よ、共に戦おうぞ!」

 

バベッジの次はエドモンで、フェイトナンバーズは監獄塔を背後に漆黒の霧を纏い、両手に黒炎を宿した姿が描かれており、真名は『FNo.77 巌窟王 エドモン・ダンテス』。

 

「遊馬、アストラル。君達が本当に私を呼んでくれるとは光栄です。微弱ながら、あなた達に力を貸しましょう」

 

エドモンの次は天草で、フェイトナンバーズは右手には日本刀の『三池典太』、左手には黒鍵を構え、その背後には巨大な聖杯が描かれ、そこから溢れた光を浴びた天草の姿が描かれており、真名は『FNo.90 奇跡の聖者 天草四郎』。

 

「我が顔を見る者は恐怖を知ることになるだろう──お前も」

 

天草の次はファントムで、フェイトナンバーズはオペラ座の舞台で怪しい光のスポットライトを浴びながら演技をする姿が描かれており、真名は『FNo.15 舞台の怪人 ファントム・オブ・ジ・オペラ』。

 

「よう、大将!しばらく世話になるぜ!」

 

ファントムの次は金時で、フェイトナンバーズは黄金喰いを肩に担ぎ、全身から雷撃を放つ姿が描かれており、真名は『FNo.56 黄金武士(ゴールデンサムライ) 坂田金時』。

 

「遊馬様。想いを綴る女、紫式部。参りました」

 

金時の次は紫式部で、フェイトナンバーズは無数の巻物に囲まれながら筆で詩や物語を書く姿が描かれており、真名は『FNo.78 文と詞の想い人 紫式部』。

 

「アサシン、酒呑童子。ふふ、本当に小僧と一緒に召喚してくれたな。ありがとうな」

 

紫式部の次は酒呑童子で、フェイトナンバーズは桜の木の上で朱塗りの盃で優雅に酒を呑む姿が描かれており、真名は『FNo.41 鬼の頭領 酒呑童子』。

 

「吾は茨木童子……まさか鬼で在る吾を呼び出すとはな……」

 

酒呑童子の次は茨木童子で、フェイトナンバーズは右腕に業火の炎を灯し、左手で骨剣を構えた鬼らしく勇ましい姿が描かれており、真名は『FNo.58 業火の鬼 茨木童子』。

 

これで召喚が終わり、今回召喚に応じなかったのはニコラ・テスラだった。

 

遊馬は残念だなと思いながらフェイトナンバーズを回収すると、真っ先にエドモンと天草が近づいて来た。

 

「本当にオレを召喚したな、マスター……いや、遊馬!!」

 

「待て、しかして希望せよ!だろ、エドモン!こらからよろしく頼むぜ!!」

 

「ふん、良いだろう。復讐者の力をお前に貸してやろう!」

 

遊馬とエドモンはガシッと熱い握手を交わす。

 

「遊馬、アストラル。ここに呼んでくれてありがとう。共に世界を救いましょう」

 

「おう!頼りにしてるぜ、天草さん!」

 

「共に人類の未来を守ろう!」

 

次に遊馬は天草と拳をぶつけて互いの腕を交差させる。

 

一方、酒呑童子は金時と一緒に召喚されてとても嬉しく、早速大胆に近づいていく。

 

「さあ、小僧。旦那はんのご厚意に甘えて、頼光がいないうちに、うちとイチャイチャしよう?」

 

「いやいやいや!何言ってんだよ、お前!?まずは、その……落ち着いて話から……」

 

「うちはもう我慢出来んわ。食べても、ええやろ?」

 

「ちくしょう!!いきなりこれかよめんどくせぇええええええ!!!」

 

金時は酒呑童子の大胆さに耐えられなくなり、全力疾走で逃亡する。

 

「ああん!もう、意気地なし!それなら、リアル鬼ごっこといきましょうか?」

 

酒呑童子は妖艶の笑みを浮かべながら金時を追いかけ、カルデアでリアル鬼ごっこを始めるのだった。

 

「やれやれ……」

 

茨木童子は大きなため息をつき、二人を見送るのだった。

 

「ナーサリー!」

 

「ジャック!」

 

ジャックとナーサリーはロンドン以来の再会を喜んで手を取り合う。

 

「おかあさん!私、ナーサリーと遊ぶね!」

 

「おう。夜に宴会あるからそれまでには食堂に来いよー」

 

「はーい!ナーサリー、行こう!」

 

「うん!」

 

ジャックとナーサリーは手を繋いで召喚ルームから出る。

 

幼子達の微笑ましい雰囲気の中、モードレッドは早くアルトリアに会いたく、遊馬の肩を揺らして子供のようにせがんだ。

 

「なあなあ!早く父上に会わせてくれよ!」

 

「分かった分かった。落ち着けって」

 

遊馬は興奮しているモードレッドを落ち着かせてアルトリアのいる食堂に案内しようとしたが……。

 

「……遊馬!召喚システムがまだ動いているぞ!!」

 

「えっ!?」

 

召喚が終わったと思った英霊召喚システムがまだ稼働しており、カルデアの電力が更に消耗されて閃光が轟く。

 

眩い光の中……大きな漆黒の影が現れる。

 

「嘘だろ……?」

 

「彼女は……?」

 

「どうして……?」

 

その姿に遊馬達は驚愕し、モードレッドは目を見開くほどに驚いた。

 

「何で……!?ち、父上……!?」

 

それは……ロンドンに偶発的に現れた謎の存在。

 

聖剣・約束された勝利の剣ではなく、聖槍・最果てに輝ける槍を持ったアルトリア・ペンドラゴンのオルタナティブ……ランサー・アルトリア・オルタ。

 

ランサー・アルトリア・オルタはラムレイに跨り、静かに遊馬達を見下ろして口を開く。

 

「……ランサー、アルトリア。召喚に応じ参上した」

 

ランサー・アルトリア・オルタのフェイトナンバーズは黒馬のラムレイに跨り、その手には漆黒に染まり、嵐のような螺旋のエネルギーを纏う聖槍・最果てに輝ける槍を構える姿が描かれており、真名は『FNo.86 漆黒の聖槍 ランサー・アルトリア・オルタ』。

 

まさかランサー・アルトリア・オルタを召喚出来るとは思ってなかったので遊馬達は呆然としていると、少し気まずそうな表情を浮かべ、ラムレイを走らせて召喚ルームを出てしまった。

 

「お、おい!アルトリア!?」

 

「もしかして、彼女はロンドンで我々と敵対し、本来守るべき地であるロンドンを滅ぼそうとしてしまったことに罪悪感を感じているのではないか?」

 

アストラルはランサー・アルトリア・オルタの心情を察してそう推測した。

 

「でもあれは魔霧で暴走した訳で、アルトリアさんの責任では……」

 

「だとしても、彼女自身がそのことを許せないのだろう。こればかりは時間か……『彼』に任せるしかないな」

 

アストラルの言う『彼』に遊馬とマシュはすぐに誰だか分かり、納得したように頷く。

 

ランサー・アルトリア・オルタも同じアルトリアならば、アルトリアの事を誰よりも理解しているであろう『あの男』に任せるしかないと。

 

「さてと、モードレッド。アルトリアに……会いに行くか?」

 

「お、おう!頼むぜ!」

 

ランサー・アルトリア・オルタの事はひとまず置いておき、一旦その場で解散した。

 

モードレッドの要望を叶えるために遊馬達は食堂へと向かった。

 

しかし、そこでモードレッドが見たものは……。

 

「いらっしゃいませ。カルデア食堂です……おや、モードレッド。来たんですね」

 

それは食堂の入り口で出迎えたメイド服に身を包んだアルトリアだった。

 

偉大なる騎士王、アーサー王こと、アルトリア・ペンドラゴン……そのアルトリアのメイド姿にモードレッドは口をあんぐりと大きく開けた。

 

「なっ……なっ……」

 

そして……。

 

「何やってるんだ父上ぇええええええーっ!!??」

 

当たり前と言うか予想通り、モードレッドの絶叫がカルデアに木霊する。

 

「モードレッド、騒がしいですよ。騎士がそんな大声を出すものではありませんよ」

 

「いやいや!今のあなたに言われたくありませんよ!?どうして騎士王がメイド……給仕になりさがってるんですか!?王としてのプライドはどうしたんですか!?」

 

アルトリアのメイド姿にモードレッドは思わず口調がおかしくなっていく。

 

「モードレッド、あなたの言いたい事はわかります。しかし、私は学んだのです……労働は尊いものだと!!」

 

アルトリアは拳を握りしめて力説するがモードレッドに理解できるわけがなかった。

 

「いやいや、意味わかんねえよ!?オレが言うのも何だけど、他の円卓の奴らが泣くぞ!?それでも良いのかよ、父上!!」

 

「良いのですよ。その時はぶん殴ってでも分からせますから」

 

「父上ぇええええええーっ!??」

 

もはやモードレッドの想定を遥かに上回るアルトリアの変わりっぷりに驚愕して頭を抱えてしまう。

 

しかし、更にここでモードレッドを追い詰める事態が起きる。

 

「ほぅ……来たのか、モードレッド。聞いたぞ、ロンドンではかなりの活躍だったみたいだな」

 

「……えっ?ち、父上……?」

 

それは黒いメイド服に身を包んだもう一人のアルトリア……アルトリア・オルタだった。

 

「ち、父上がもう一人……えっ?えっ??」

 

アルトリアがもう一人いると言う謎の事態にモードレッドは驚愕が混乱になってしまった。

 

慌てて遊馬達がアルトリアとアルトリア・オルタの関係を話し、落ち着きを取り戻したがそれでも納得出来ないモードレッドだった。

 

「モードレッド、こちらに来なさい。貴方に会わせたい人がいます」

 

「お、おう……ロンドンで言ってたやつだな」

 

「ええ」

 

アルトリアはモードレッドを連れて食堂の奥のキッチンに案内する。

 

「シロウ、モードレッドが来ました。出て来てください」

 

「シロウ?」

 

モードレッドがキョトンとしていると、数秒後にキッチンから一人の男が出て来た。

 

「やれやれ……まさかこんな事になるとはな……」

 

それはカルデア食堂の料理長にして、カルデアのオカンとしてみんなから慕われているサーヴァント……エミヤだった。

 

「誰だよ……お前……」

 

モードレッドは反射的に燦然と輝く王剣を構えそうになったが、その前にアルトリアが静かに制した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼はシロウ……私の一番大切な人で、私の嫁です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリアの口から静かに語られた発言。

 

その発言にモードレッドは頭が真っ白になり、呆然とする。

 

「………は?よ、嫁??」

 

「ええ。シロウは私の嫁です」

 

「そ、それって……ギネヴィア王妃と……」

 

「ギネヴィアの時とは違います。私はシロウを心の底から愛しています。一人の女性として、彼を……」

 

アルトリアは頬を赤く染めて少し恥ずかしそうに言う。

 

モードレッドは目の前の光景を信じられなかった。

 

あの騎士王が……誰よりも憧れていた偉大なる王が、父が……一人の女になっていると言う事実に。

 

「嘘だ……」

 

「えっ?」

 

「嘘だぁあああああーーっ!!!」

 

モードレッドは目の前の現実から逃げるように、絶叫を上げながらその場から逃げ出した。

 

「モードレッド!?」

 

モードレッドはアルトリアの制止を振り切り、食堂から飛び出してしまった。

 

アルトリアは急いでモードレッドを追いかけようとしたが、絶叫を聞きつけてキッチンから出てきたブーディカに止められた。

 

「待って、アルトリア。ここは私に任せて」

 

「ブーディカ女王……」

 

「お姉さんに任せて。ユウマ、マシュ、アストラル、一緒にお願い出来る?」

 

「ああ!モードレッドを放っておけないからな!」

 

「はい!行きましょう!」

 

「仕方ないな」

 

遊馬とマシュとアストラルとブーディカはモードレッドを追いかけ、食堂を後にした。

 

 

遊馬達は逃亡したモードレッドを必死に捜索し、途中会ったカルデアの職員やサーヴァント達の話を聞いてようやく隠れている場所を発見した。

 

「モードレッド、かくれんぼは終わりだぞ」

 

「ユウマ……」

 

そこは普段あまり人の立ち入りがない倉庫でモードレッドは鎧を消し、ロンドンで見せた露出度の高い服で体育座りをして考え事をしていた。

 

ここなら他の誰にも話を聞かれないと思い、扉を閉めて遊馬達も床に座る。

 

「あー……そりゃあビックリするよなぁ。いきなり父親から新しい母親を紹介されたらな」

 

「……あんな幸せそうな父上、初めて見た……」

 

生前では考えられないほどの優しい笑顔をするアルトリアにモードレッドは目が虚ろになっていた。

 

つまり、エミヤがアルトリアを幸せにした……その事実がモードレッドの心に深く突き刺さっている。

 

「……モードレッド、前から聞きたかったことがある」

 

「んだよ……」

 

「君はどうやって生まれたのだ?アルトリアは女性だ。しかし、アルトリアを君は父上と呼んでいる……アーサー王物語の事は記憶しているが、君の出生に関して明らかに矛盾点が多い」

 

「ちっ……オレの心の傷を抉るような事を言いやがって」

 

「すまない。だが、私達は共に戦う仲間だ。出来れば君とアルトリアの仲を取り持ちたいと思っている。その為に君のことを教えてくれ」

 

「……はぁ、分かったよ。ただし、他の奴らにはチクるんじゃねえぞ。この事はここにいるみんなを信用して話すんだからな」

 

モードレッドは胡座をかいて大きく深呼吸をして、心を決め、静かに語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは間違いなく父上の子だ。だがな、その正体はオレの母上……『モルガン』が造り上げた『ホムンクルス』なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは遊馬達に衝撃を与える事実だった。

 

アーサー王物語ではアルトリア……アーサー王とその姉、モルガンとの近親相姦によってモードレッドが生まれた事になっている。

 

しかし、アルトリアは女性で同じく女性のモルガンでは子を作る事は不可能である。

 

そこで強力な魔術師でもあるモルガンはアルトリアを魔術によって擬似性転換させ、更に魔術で幻惑して精子を採取……最後に自身の子宮で育てた。

 

そして……アーサー王のコピー、クローンとも言える存在であるモードレッドを造り上げたのだ。

 

「何だよそれ……おかしいだろ……」

 

「狂ってる……嫉妬や憎しみがここまで人を狂わせるのか……」

 

遊馬とアストラルはモルガンの狂気に背筋が凍るほどに戦慄してしまう。

 

監獄塔で七つの大罪を学んだ二人だったが、ここまで狂気に満ちた行為には驚きを隠せない。

 

「ふざけるのもいい加減にしなさいよ……許せないよ、モルガン……」

 

そして……ブリテンよりも前の時代の女王……ブーディカはモルガンの凶行に怒りを爆発させていた。

 

アルトリアやモードレッドを苦しませた事はもちろん、何より許せなかったのは自分の子であるモードレッドを国を滅ぼすための道具として産んだ事だった。

 

「子供って言うのはね、母親がお腹を痛めて文字通り命をかけて産む奇跡とも言える大切なものだよ。それを国を崩壊させる為に、まるで物を作るようにするなんて……もしも会ったら徹底的に説教をしてやるんだから」

 

ブーディカは一人の母親としてモルガンにあったら説教をすると心に誓った。

 

「子供……母親……」

 

マシュはモードレッドとブーディカの話を聞いて暗い表情を浮かべた。

 

「……モードレッド、ありがとう。よく話してくれた」

 

「サンキュー、話してくれて……」

 

「別に構わねえよ。オレにとっては忌々しい過去の話だが」

 

「それを踏まえて尋ねたい。君はモルガンの事を母として慕っているか?」

 

アストラルの質問にモードレッドは瞬時に怒りの表情を浮かべて吠えた。

 

「はぁ!?んな訳ねえだろ!?オレはあの女が大嫌いだ!あいつと同じ雰囲気のサーヴァントに対しても思い出して大嫌いだと思うぐらいだ!!」

 

モードレッドは既にモルガンに対し、母としての愛や想いは一欠片も存在していない。

 

犬のように激しく吠えるモードレッドにアストラルは制しながら新しい考えを導いていく。

 

「分かった。君はモルガンへの思いはもう無い。しかし、今の君には新しい親になるであろう存在がいる」

 

「さっきの……エミヤ、シロウだっけ?」

 

「ああ。関係はかなり複雑だが、形式的にはアルトリアの嫁である彼が君の新しい親になるだろう」

 

「……なぁ、エミヤシロウって、どんな奴なんだ……?オレ、あいつの事は何も知らねえし、父上が本当に選んだ相手なら、少なくともギネヴィアよりも良い奴だと思うけど……」

 

モードレッドは遊馬達にアルトリアが惚れたエミヤの事を聞こうとしたが……。

 

「うーん、教えても良いけど、俺たちよりもモードレッド自身が聞いたほうがいいんじゃねえか?」

 

「オレが……?でも……」

 

「他人を知るって言うのは口では簡単だけど、難しい事は確かだ。最初から気の会う友達や仲間ならまだ知りやすくて良いけど、相手が自分の義理の親になる男なら尚更難しいよな。俺だって、アストラルの事を知って、絆を深めるのにも時間が掛かったからな」

 

種族はもちろん、価値観や考えの違いから遊馬とアストラルは互いを理解して絆を深めるのには時間がかかった。

 

そして、多くの人たちと言葉を交わし、ぶつかって来た遊馬だからこそ今の悩めるモードレッドに対して答えを出していく。

 

「だからさ、モードレッドは勇気を出してエミヤと話すんだよ。毎日少しずつでも良いからさ。好きなもんや嫌いなもん、特技や趣味。小さい事から話していけば自然と話は出来ると思うぜ?」

 

「……そんなもんか?」

 

「そんなもんだよ。確か、モードレッドは聖杯大戦でマスターといい関係を築けたんだろ?それを思い出しながら話せば良いんだよ」

 

「あっ……」

 

モードレッドは聖杯大戦のマスター……獅子劫の事を思い出した。

 

獅子劫はモードレッドのたわいの無い話から相談事までよく聞いてからちゃんと答え、良いコミュニケーションを築いていた。

 

少なくとも、聖杯大戦の参加したマスターとサーヴァントの中でも一番信頼関係を築いた二人と言っても過言ではない。

 

だからこそモードレッドは精神的に大きく成長することができ、ロンドンではランサー・アルトリア・オルタを越えることが出来たのだ。

 

「そうだな……その通りだよな。ありがとよ、ユウマ。お陰でオレの進むべき道が見えたぜ!」

 

「頑張れよ、モードレッド!かっとビングだ!」

 

「おう!かっとビングだな!行くぜ行くぜ!!」

 

無意識にもモードレッドにも遊馬のかっとビング精神が受け継がれ、その勢いのまま食堂へと戻っていく。

 

食堂では夜の宴会の準備が行われており、料理長であるエミヤが指示を出していた。

 

そんなエミヤにモードレッドは意を決して近付いた。

 

「お、おいっ!」

 

「ん?ああ、モードレッド。どうしたんだ?」

 

「お前……本当に、父上の大切な人……なんだな?」

 

「……ああ。私と、アルトリアもお互いを大切に想っている。アルトリアの嫁……とは少々複雑な気分だかな」

 

エミヤは苦笑を浮かべていると、モードレッドは左手で胸元を強く押さえながら右手で力強くエミヤを指差した。

 

「モードレッド?」

 

「お、お前が……父上の嫁なら、オレにとっては……モルガンに代わる、新しい母親になるからな!」

 

「……は?君の、母親?」

 

「だから、今からお前を……あなたを、母上と呼ばせてもらう!!」

 

モードレッドの怒涛の宣言により食堂にいた誰もが呆然とした。

 

「いや、あの……念のため言っておくが、私は男だから母上はちょっと……」

 

「良いんだよ!父上は父上なんだから、その嫁のあなたは母上だ!これは決定事項だ!」

 

「な、何でさ!?」

 

モードレッドの固い意志と強引な理論にエミヤも困惑し出して口癖を言って頭を抱えだす。

 

するとそこに二人の女性が近づいて来た。

 

「良いんじゃない?あんたが母上で」

 

「そうですよ、先輩は女子力と嫁力が圧倒的に高いんですから」

 

「り、凛……桜……」

 

「あぁん?誰だよ、あんたら」

 

来たのはエミヤの嫁である遠坂凛ことイシュタルと、間桐桜ことパールヴァティーの二人だった。

 

「私は遠坂凛。今は女神イシュタルの擬似サーヴァントでそこにいる士郎の嫁よ」

 

「私は間桐桜。同じく、女神パールヴァティーの擬似サーヴァントで、先輩のお嫁さんです!」

 

「……はぁあああああ!??ちょっ、まっ、は、母上!?どういう事だよ!?父上がいながら嫁が二人って……それに、女神の擬似サーヴァントってどういう……うがぁあああああっ!!もう何が何だか訳がわかんねえよ!!!」

 

モードレッドはイシュタルとパールヴァティーの二人の存在により関係が理解不能にまで達してしまい、頭をクシャクシャにして混乱してしまった。

 

「へぇー、本当にアルトリアにそっくりね。流石は親子。あっ、そうだ……私の事をお母さんって呼んでも良いわよ。関係が複雑だけど、一応あなたの義母になると思うから」

 

「それは良いですね、姉さん!私も是非お母さんって呼んでください!アルトリアさんの娘さんなら大歓迎です!」

 

イシュタルとパールヴァティーは思いつきで自分たちもモードレッドの義母になると名乗り出てしまい、モードレッドを更に混乱の深みへと落としていく。

 

「何ぃっ!?あ、あんた達も俺の義母に!??えっ、でも、これは……うわぁあああああっ!もう本当に訳わかんねえよ!!誰か説明してくれぇえええええっ!!!」

 

モードレッドの混乱に満ちた絶叫がカルデアに響き渡るのだった。

 

「うーん、これは確かに分かんねえな」

 

「あまりにも複雑過ぎる家族関係だな」

 

「そ、そうですね……これはあまりにも……」

 

「頑張れ、モードレッド!って、応援するしかないね」

 

その光景を影から見守っていた遊馬達はモードレッドを応援するしか出来なかった。

 

そして……。

 

「何者なのだ……あの男は……?」

 

ランサー・アルトリア・オルタは遠くからエミヤを見つめるのだった。

 

エミヤを中心とするハーレム、それに新たな波乱が巻き起ころうとしている。

 

 

 




やったね、モー君!
新しいお母さんが三人もできたよ!(笑)
家事万能で料理が美味しいエミヤ。
うっかりだけど、なんだかんだで優しいイシュタル。
優しいけど黒くて怒ると怖いパールヴァティー。
これは色々と複雑な家庭環境になりそうですね。

次回はエミヤとランサー・アルトリア・オルタの話になると思います。
ランサー・アルトリア・オルタがエミヤとどうなるか……。
アルトリアの修羅場が来るかもしれませんね。
だって、ランサー・アルトリア・オルタにはWアルトリアにはない、あの見事なメロンがあるので(笑)

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