Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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皆さん、大変お待たせしました。
記憶編第2話、やっと投稿できました。
本当に書くことが多くて大変です。
次回は来月になるかもしれません……。

しかし、良いこともありました。
祝、ナンバーズ全種類判明!
後はドン・サウザンドのナンバーズだけですが……あれ、カード化できるのかな……?


ナンバーズ113 遊☆戯☆王ZEXAL 第一部・第二章『夢への挑戦!激闘、ワールドデュエルカーニバル!』

カイトとの激闘から数日後……ハートランドシティではある話題で持ちきりだった。

 

それはハートランドシティ主催のデュエル大会……ワールド・デュエル・カーニバル、通称WDC。

 

一般人からプロまで世界中から大勢のデュエリストが集まり、参加条件を問わない。

 

優勝者にはWDCの初代デュエルチャンピオンの称号、ハートランドシティ遊園地の生涯無料パスポート、そしてハートランドの権力者であるMr.ハートランドからどんな願いも一つだけ叶えてもらう事が出来る。

 

鉄男達も今から楽しみで、もちろん遊馬も楽しみだったが……参加証でもあるハートピースが届かなかった。

 

それは何故かというと、遊馬はデュエリスト全員に向けた招待制だと思っていたのでうっかりしており、ハートランドのホームページで参加登録をしてなかったのだ。

 

しかも既に登録は終了しており、ショックを受けた遊馬は学園を飛び出した。

 

遊馬は全力疾走でハートランドシティを駆け抜け、中心地であるハートランドタワーへ向かう。

 

その後を気になった凌牙がバイクで追いかけた。

 

13歳とは思えない凄まじい速力にオルガマリーなど現代の人物達は思った。

 

(((オリンピックに出れば普通に優勝出来そう……)))

 

幼少期から活発で更には冒険家の一馬による冒険に連れて行って貰ってるので、身体能力は既に13歳の平均値を大きく超えている。

 

遊馬は凌牙と話をし、WDCに出るのかと尋ねたが、凌牙は出場する気はなく、自分なりにデュエルと向き合うと言った。

 

遊馬と出会った事で精神的に成長し、大きく変わった凌牙だった。

 

ハートランドタワーに到着した遊馬は頼み込むとMr.ハートランドが部下の二人と共に登場し、直談判したお陰もあってか無事に参加証のハートピースを手に入れることが出来た。

 

WDCはデュエルチャンピオンになるという一馬との大切な約束を果たすための大会。

 

しかし遊馬は、勝ちにこだわるつもりはなかった。

 

アストラルと出会った事でデュエルに対する想いに変化が生じていた。

 

アストラルに出会う前は負け続けていたが、デュエルを重ねる毎に強敵にも勝てるようになったが、同時に負けて失うものがあることを知った。

 

しかし、どんな時でもデュエルを嫌いになることはなかった。

 

遊馬は思ったのだ、デュエルに勝ちも負けも関係無い、デュエルとは繋がりなのだと。

 

もちろん、ナンバーズを賭けたデュエルはアストラルの命がかかっているので、当然勝利を目指し、アストラルの為なら何でもやるつもりで、カイトとの戦いでもその気持ちは変わらない。

 

アストラルは遊馬の考えには賛同は出来なかったが、デュエルには勝ち負けを越えたものがある……その先にもっと大事なものがあるのだという遊馬の言葉が、強く印象に残るのだった。

 

そして……数日後、遂にWDCが開幕する。

 

ハートランドシティには世界中のデュエリストが集結し、大幅に人口が増えて大規模な町興しにもなっていた。

 

WDCの予選は三日間行われ、参加証のハートピースを賭け合ってデュエルを行うバトルロイヤル形式でハートピースの欠片を5つ集め、完全なハート型にしなければならない。

 

しかし、ハートピースの欠片の形がそれぞれで違う為、同じ部位のハートピースを持っていても意味がなく、それぞれ別の部位を持つデュエリストと戦わなければ完成しないのだ。

 

遊馬は早速参加者のデュエリストとデュエルを行い、順調に勝利をしてハートピースを集めていく。

 

参加者にはナンバーズを所有していないデュエリストが多いので、遊馬はエースモンスターの希望皇ホープではなく決闘庵の秘蔵のデッキで追加した新たな仲間のモンスターエクシーズを駆使して勝利し、デュエリストとして確実に成長していた。

 

今回遊馬にはアストラルだけでなく、最早周囲から遊馬いるところに小鳥ありと言わんばかりに小鳥が側で応援しており、WDCのルールや注意点を教えていた。

 

すると突然、遊馬の命を狙う謎の少女が現れた。

 

その少女は飛行マシンに変形出来る大砲『フライングランチャー』で遊馬を砲撃でぶっ飛ばそうとした。

 

その際に遊馬は小鳥を庇って押し倒すようにして守ったり、手を引っ張ったりして一緒に逃げた。

 

その際にマシュ達は一瞬小鳥をギロリと睨みつけたが、小鳥は知らんぷりをする。

 

逃げた遊馬を付け狙うかのように少女はフライングランチャーを飛行形態にして飛びながら砲撃をし、下手したらテロリスト並みに砲撃で街を荒らしていった。

 

「街中であれほど派手にランチャーを撃つとは……やるな、あの娘」

 

キリツグは変な風にランチャーをぶっ放す少女を感心してしまう。

 

謎の少女から逃げる為に遊馬と小鳥は街を逃げ回ったが、逃走劇の末に遂に追い詰められてしまった。

 

その少女は神月アンナ。

 

数年前、遊馬と小鳥と同じ小学校のクラスメイトで別の小学校に転校してしまった。

 

どうやら遊馬に好意を抱いていたらしく、転校する前に告白しようとして遊馬を呼び出したらしいが、来なかったので告白出来なかった恨みから遊馬に復讐しようとしていた。

 

復讐しようとしたアンナに遊馬はデュエルを持ちかけ、アンティルールでアンナが勝てば遊馬を貰うと言うとんでもないデュエルが始まった。

 

高レベルモンスターから高ランクのモンスターエクシーズを繰り出すデュエルに遊馬は負けそうになったが、罠カードの組み合わせによるコンボ攻撃で見事に遊馬の逆転勝利を収めた。

 

悔しがるアンナだが、アンナが好意を抱いていたのは実は遊馬ではなかったのだ。

 

それはアンナの勘違いと言うか、人違いでアンナが好意を抱いていたのは遊馬ではなく同じクラスの別の少年で遊馬と名前が少し似ているだけで間違えてしまったと言う余りにもアホなオチだった。

 

しかもWDCの参加者ではないのでデュエルに勝利してもハートピースが貰えなかったので散々な遊馬だった。

 

だが、アストラルはアンナのド派手な攻撃を繰り出すデュエルには爽快感などあって感心していたので、またデュエルをしたいと思っていた。

 

ここまで色々なデュエリストとデュエルをしてきまが、未だにナンバーズを持つデュエリストと出会っていなかった。

 

そんな時に明里から連絡があり、チャーリーという男を捕まえておけと言うものだった。

 

明里には頭が上がらない遊馬は渋々了承すると、WDCには出ないと言っていた凌牙と遭遇した。

 

しかし、凌牙には事情があり、目的を果たしたらWDCを抜けるつもりらしい。

 

その事情とは、数年前に起きた全国大会での因縁の相手・Ⅳの存在だった。

 

かつてⅣは凌牙を罠にはめる為に凌牙の大切な家族を傷付け、今でも眠りについており、その借りを返すことが目的だったのだ。

 

凌牙は自分とは関わらないよう告げて去って行くのだった。

 

復讐の道へ走る凌牙に遊馬は想いを馳せる中、遊馬は明里の目的の人物、チャーリーを見つけた。

 

チャーリーは遊馬が明里の弟だと知るとデュエルを挑もうとするが、そこにWDC出場中のデュエリストの男が現れ、チャーリーがデュエリストだと思いデュエルを挑む。

 

ところが、チャーリーはWDCには参加しておらず、何と遊馬のハートピースを賭けてデュエルを始めることになった。

 

チャーリーは負けるかと思ったが、何とナンバーズの所有者で『No.7 ラッキー・ストライプ』を召喚した。

 

チャーリーはサイコロを使うギャンブルデッキで驚異の運で6を連続で叩き出し、勝利を収めた。

 

デュエルが終わると警察に囲まれるチャーリーだったが、ラッキー・ストライプを持つチャーリーは驚異的な運でその場から逃走し、更には吹き荒れた突風により多くのデュエリストのカードが奪われ、アストラルのナンバーズも一枚奪われてしまった。

 

チャーリーはその場から逃走してしまい、その直後に明里がバイクに乗って到着した。

 

チャーリーは一馬の大学の教え子で、一馬に憧れてトレジャーハンターとして世界を飛び回っているらしい。

 

奪われたナンバーズを取り戻す為、そしてチャーリーからラッキー・ストライプを回収するために遊馬達は捜索を開始するが手掛かりはない。

 

するとアストラルはチャーリーが何度も口癖にしていた「Life is Carnival」と言葉に、遊馬と以前モノレールに乗っていた時にその言葉を掲げる建物を見たという。

 

アストラルの言葉を頼りに、遊馬達はベイエリアへと向かう。

 

ベイエリアへ向かうモノレールの駅には、警察が集まっており、アストラルの読み通り、チャーリーはそこへ向かおうとしていたのだ。

 

ところが、モノレールは停止しており動かない状況。

 

チャーリーはまたもや完全に包囲されていたが、ラッキー・ストライプを掲げると激しい稲光が降り注がれ、何とモノレールは起動した。

 

モノレールはベイエリアに向けて走行を開始し、遊馬と小鳥は辛うじて乗り込み、車中でチャーリーと対峙することに。

 

現在、モノレールはコントロールセンターで制御が出来ていない。

 

それにより、モノレールは目的地まで一直線に向かい、その間にカードを賭けてデュエルしようと提案したチャーリーにナンバーズを回収するために遊馬とアストラルはそのデュエルに乗った。

 

しかし、二人がデュエルを行う場所はモノレールの車内ではなく、モノレールの上だった。

 

「一体何処でデュエルをしているのよあいつらは!?」

 

何で暴走するモノレールの上でデュエルをしているのか理解不能でレティシアは頭を抱えてツッコミを入れた。

 

何故あえて暴走するモノレールの上でデュエルをするのか……デュエリストは時としてあまりにも危険な舞台でデュエルをするものだが、今のレティシアはもちろん遊馬とアストラル以外誰も理解できる者はいない。

 

チャーリーは先ほどのデュエルと同じようにすぐさまラッキー・ストライプをエクシーズ召喚をする。

 

ラッキー・ストライプは所有者には運命すら味方する絶対的な強運を与えると言う強力な力を持つナンバーズだった。

 

それによってチャーリーは最早天文学的な数値の確率でサイコロの連続6の数字を出し、対戦者の遊馬の運を吸い取ってしまっているのだ。

 

アストラルはこれまでのチャーリーのサイコロの連続6の数字を出す計算をしており、その結果は遂に27万9936分の1を叩き出した。

 

「27万9936分の1……アストラルの計算能力も凄いけど、まさかあのナンバーズがそれほどの運を操作するなんて……」

 

オルガマリーはアストラルの計算能力に驚くと同時にラッキー・ストライプに運命を左右するほどの強運をもたらす力があるとは思いもよらず頭痛が襲ってきた。

 

「Life is Carnival……太陽が真っ二つにならない限り、俺の運は尽きない!!」

 

すると、チャーリーを追ってきた明里がバイクを乗ってラッキー・ストライプに関するある伝承を教えた。

 

「太陽が二つに別れし時、その力、風と共に去らん」

 

何のことだから全く分からない遊馬とアストラルで、チャーリーはラッキー・ストライプを持っている自分には勝てないと諦めさせようとしたが、遊馬はたとえ運がなくても諦めるつもりはなかった。

 

「運があろうと無かろうと、全ての力を出し切って戦う、それが俺のデュエルだ!俺はそう父ちゃんに教えてもらった!」

 

遊馬の諦めないかっとビングでデュエルを続けるが、希望皇ホープすらも奪われて絶体絶命の危機に陥る。

 

しかし、チャーリーが発動した『太陽の天秤』が逆転への答えとなった。

 

アストラルの指示で遊馬が発動した『剣の采配』で太陽の天秤を破壊すると、太陽が真っ二つに切り裂いた。

 

伝承通りに太陽を切り裂いたことでラッキー・ストライプの運の力が一気に無くなり、ライフを大幅に回復させるカードの効果も意味がなくなり、チャーリーも元のライフポイントとなってしまった。

 

遊馬とアストラルはこの瞬間に勝機を見出し、一気に攻める。

 

モンスターの洗脳を解除させる魔法カードで希望皇ホープを取り戻し、希望皇ホープレイに進化させた。

 

希望皇ホープレイの効果で攻撃力を上昇してラッキー・ストライプの攻撃力を下降させて攻撃し、一撃でチャーリーのライフポイントをゼロにした。

 

チャーリーを倒したが、モノレールは止まらずにそのまま終着駅の駅に突撃しようとした……その時だった。

 

「かっとビングよ、明里!」

 

明里は暴走するモノレールに自身が乗ってきたバイクを乗り捨ててぶつけ、その衝撃で無理矢理モノレールを止めた。

 

「「「ええええええーっ!??」」」

 

「一体何処の電車系アクション映画よ!??」

 

暴走する電車を止めるアクション映画みたいな展開に多くの者が声を上げて驚き、イシュタルが鋭いツッコミを入れた。

 

「物凄くアクティブな女性なのだな、マスターの姉は……」

 

常々遊馬は明里は恐ろしくて逆らえず、一番恐ろしい存在と言っていたのでエミヤは遠い目をしながらその意味がよく分かった。

 

モノレールが止まり、ラッキー・ストライプの強運を失い、全ての希望を失ったように崩れるチャーリーは何故こんなことをしたのか正直に話し出した。

 

チャーリーの知人の少女、まゆみは重い病気で手術を控えていたが難しい手術らしく、チャーリーはまゆみを助ける為に持ち主に強運をもたらすラッキー・ストライプを渡したかったのだ。

 

遊馬はそのまゆみを助ける為にアストラルを説得し、ラッキー・ストライプをまゆみに貸すことにした。

 

チャーリーはまゆみにラッキー・ストライプをお守りとして渡し、そして勇気のおまじない、かっとビングを教えた。

 

そして、後にまゆみは無事に手術は成功し、ラッキー・ストライプは無事にアストラルの元へと戻るのだった。

 

WDC二日目、連戦連勝中の遊馬は、残り二つのハートピースを集めるべく気合いを入れると、鉄男と等々力が嬉しそうにしていた。

 

それは極東チャンピオンのプロデュエリスト、Ⅳから直々にデュエルの誘いがあったのだ。

 

顔に大きな傷があるが、紳士的な態度から多くのファンがいるⅣ。

 

バトルロイヤルルールで鉄男と等々力と共にデュエルをすることになり、二人は果敢にⅣに自分のデュエルをする。

 

ところが、Ⅳの弟でアストルフォみたいに少女に近い顔を持つ美少年とも言うべき少年、IIIが現れ、デュエルの決着を急かすとⅣの表情と態度が凶悪に変わり、衝撃のエースモンスターを召喚する。

 

「現れろ、No.15!地獄からの使者、運命の糸を操る人形……『ギミック・パペット - ジャイアントキラー』!!」

 

Ⅳは何とナンバーズ使いでしかも遊馬やカイトのようにナンバーズに取り憑かれずに使用していた。

 

そして、ジャイアント・キラーは今まで見てきたどのナンバーズよりもあまりにも不気味で気色の悪いモンスターだった。

 

ジャイアント・キラーの登場に遊馬は思い出したかのように立ち上がって声を上げた。

 

「令呪によって命ずる!メドゥーサ!ブーディカ!アタランテ!急いでチビッ子達の目を塞いで!今から流れる映像はショッキングだから!!」

 

普段ほぼ全くと言って使っていない令呪を使い、メドゥーサは桜、ブーディカは凛、アタランテはジャックとナーサリーの目を命令通りに塞いだ。

 

何故遊馬がこんな命令を下したのか疑問だったが、その意味はすぐに分かった。

 

ジャイアント・キラーはモンスター破壊効果を持っているが、その破壊をする為の表現があまりにも恐ろしいのだ。

 

指から糸が放たれてモンスターを縛ると、胸部のローラーを開放し、そこにモンスターを引きずり込みながら粉砕して呑み込むのだ。

 

モンスターの破壊と言うよりも、言わば粉砕機によるモンスターを処刑するようなグロテスクな表現にマシュ達は顔を真っ青にし、血肉にも慣れているサーヴァントですら嫌な顔をするほどだった。

 

唯一の救いはまだ鉄男と等々力の出したモンスターエクシーズが人や動物の形をしていなかったことだった。

 

流石にあのグロテスクなシーンを桜たちが見たら完全にトラウマものになるので遊馬は令呪を使ってでも目を塞いだのだ。

 

まさに今のⅣの残虐な性格を表しているかのようなナンバーズで、ジャイアント・キラーは破壊したモンスターエクシーズの攻撃力分のダメージを相手に与えるので、その効果で鉄男と等々力に大ダメージを与える。

 

更にⅣは二人を追い詰めるためにコンボカードによって破壊したモンスターエクシーズを復活して再びジャイアント・キラーで破壊させ、ライフポイントがゼロになったにも関わらずファンサービスと称してダイレクトアタックを決めたのだ。

 

余りにも残虐過ぎるデュエルのやり方にレティシアは拳を震わせていた。

 

「何よアイツ……もうデュエル勝ったのに、そこまでする必要があるの……?しかも自分を慕ってくれたファンに対して……ふざけんじゃないわよ!!」

 

遊馬からデュエルの楽しさやそこから始まる大切な絆の繋がりを学んでいたレティシアにとってはⅣのデュエルは絶対に許せないもので、もしもその場にいたら全力で思いっきり殴り飛ばした後に旗でぶん殴りたい気持ちだった。

 

今のレティシアと同じように遊馬も友人二人を痛めつけられ、卑劣な態度に怒りを燃え上がらせてⅣにデュエルを申し込もうとしたその時にバイクに乗ったシャークが駆けつけた。

 

全国大会で起きた不正問題と、愛する妹を今も意識不明の事故への追いやった元凶……凌牙にとってⅣは憎むべき相手だった。

 

「ほぅ……あの少年、強い憎しみの力があるな。アヴェンジャーの素質があるな」

 

エドモンは凌牙の愛する妹を奪われた憎しみの心にニヤリと笑みを浮かべた。

 

今こそ凌牙は復讐を遂げようとするが、それを阻んだのはIIIだった。

 

IIIは自身と凌牙をデュエルアンカーで体が繋ぎ、二人はデュエルが終わるまで離れることが出来なくなってしまった。

 

ⅣはIIIに後を託してその場から消え、凌牙とIIIのデュエルが始めた。

 

IIIは古代文明の謎の遺産、オーパーツをモチーフにした『先史遺産』モンスターを使い、Ⅳ同様にナンバーズを召喚したが……。

 

「現れろ、No.32!最強最大の牙を持つ、深海の帝王!その牙で、全てのものを噛み砕け!『海咬龍シャーク・ドレイク』!!」

 

それは赤紫色に輝く大きな鮫をモチーフにしたナンバーズで、どう見てもIIIのデッキとシナジーが合わないナンバーズだった。

 

一方でナンバーズを持たない凌牙は前回のカイトの戦いの二の舞にならないようにしっかりとシャーク・ドレイクの効果を確認し、自分のデッキにも使えると確信を持ってからIIIからコントロールを奪った。

 

しかし、皇の鍵も無く、ナンバーズへの耐性を持たない凌牙はすぐにシャーク・ドレイクによって心が暴走しそうになってしまった。

 

だが、凌牙の心の中に映し出されたのはⅣへの復讐心ではなかった。

 

遊馬とのデュエル、交わした言葉、そして共闘……遊馬との出会いによって少しずつ変わることが出来た。

 

「俺はもう、あの時の俺じゃねえ!!俺は……俺だぁっ!!!」

 

凌牙はナンバーズの力を無理矢理押さえ、シャーク・ドレイクを自分のものとした。

 

デュエルを再開し、まるでシャーク・ドレイクを凌牙に渡すような戦術をとっていたIIIも本気を出すが、結果はIIIの戦術を上回るデュエルタクティクスを見せつけた凌牙の勝利となった。

 

IIIは既にハートピースを完成させて予選を突破しており、凌牙にハートピースとシャーク・ドレイクを渡してその場から消えた。

 

そして、凌牙は遊馬にもう自分に関わるなど告げてその場を後にした。

 

デュエリストは皆仲間だと考える遊馬は二人の間違ったデュエルに頭を悩ませていた。

 

デュエルは復讐の道具でも、人を傷付けるものでもないと……。

 

悩む遊馬を気遣う小鳥だが、遊馬はまるで聞く耳持たず、その事に小鳥は怒ってしまい、その場を去ってしまった。

 

すると、明里から突然連絡があり、WDC出場者の速水秀太と言う男を探せと言われ、渋々街に出て探す。

 

何でも未来を変え、その未来の内容を写真に撮ることが出来るらしく、アストラルはその力はナンバーズに関係するのではないかと推測する。

 

街に出てデュエルに引かれたアストラルの後を追うと、そこには秀太の姿があり、アストラルの予想通りナンバーズ使いだった。

 

だがそれ以上に、遊馬には怒りを覚える光景が広がった。

 

それは秀太に敗北し、痛めつけられた相手デュエリストの姿だった。

 

秀太の仕打ちが許せずに遊馬は彼に詰め寄る。

 

秀太がデュエルをする理由は、ナンバーズを手に入れることにあった。

 

多くのナンバーズを手に入れ、世界中の人を驚かせる大スクープ写真を撮るためだった。

 

二人が睨み合う中、明里が駆け付け、秀太の人の命を危険に晒してまで撮るスクープ写真を許せないと言う。

 

すると、秀太は次のとっておきのスクープ写真を見せつける。

 

それは、エンジントラブルを起こした、ハートランドシティ上空を飛ぶ飛行船の船内を写したものだった。

 

そして、何よりも驚く事にその墜落寸前のその写真には、小鳥の姿が写されていた。

 

秀太と小鳥は先輩後輩の関係の知人で写真を撮っていたのだ。

 

小鳥を心配した遊馬がすぐに連絡を取ると、小鳥は飛び立った飛行船の船内にいた。

 

そして、次の瞬間にエンジントラブルが発生し、明里は飛行船を何とかする為に管制塔へ向かった。

 

チャーリーのラッキー・ストライプの時と同様に、遊馬が勝てば所有者に取り憑いたナンバーズの力が消える。

 

つまり、秀太に勝てば写真に写った最悪の未来は消える。

 

小鳥を助けるためにも、遊馬は秀太にデュエルを挑むが、秀太は遊馬の写真を撮り、それを渡した。

 

そこにはデュエルに負け、ナンバーズを奪われる遊馬の姿が写されていた。

 

遊馬は今まで以上に不安を覚えながらデュエルを始めた。

 

すると、秀太は先ほどの写真は結末だけでなく、その過程をも写されていたのだと教えた。

 

それは、遊馬は5ターン目で希望皇ホープを召喚し、6ターン目で秀太の出したナンバーズに敗れる……その未来は必ず実現すると、秀太は絶対的な自信を見せた。

 

「未来を実現させるナンバーズ……ラッキー・ストライプと同様に恐ろしい効果です……」

 

マシュはナンバーズにはまだまだ恐ろしい力が秘めているものがあると知り、顔を真っ青にする。

 

その後もデュエルが続いていき、運命の5ターン目。

 

ここで遊馬が希望皇ホープを呼び出せば敗北の未来が訪れ、墜落寸前の飛行船に乗った小鳥や多くの人達が犠牲になってしまう。

 

速見が写真に写し出した未来は、彼が望んだことを具現化したもので、小鳥の乗った飛行船の事故は悲劇だと言う。

 

しかし、秀太はナンバーズを手に入れてからスクープを写す事に目覚めてしまったため、飛行船を見た時からあの事故のことを思わずにはいられなかったとのこと。

 

「うるせえ!自分の未来を決められるのは自分だけだ!!」

 

遊馬は未来を決められてたまるか、未来を決めるのは自分自身の力だと反論するが、未だにどうすれば良いか迷っていた。

 

それに対し、アストラルは遊馬にある助言をする。

 

「遊馬、迷ったら立ち止まり、自分の道を見つければ良い。もしかしたら、予言に反することで、新たな道が、新たな未来が開けるかもしれない。その先にどんな未来が待ち受けているかは分からないが、自分の未来を決められるのは自分だけ……そう言ったのは君だ」

 

アストラルの言葉に気付かされた遊馬は未来を切り開く決意を決めた。

 

フィールドにはレベル4のゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントの2体が揃い、希望皇ホープを呼び出せる場面は整った。

 

そして、遊馬が切り開いた未来……それは、希望皇ホープを呼ばない事だった。

 

秀太が決めた未来通りに動かない遊馬に動揺を隠せず、未来を決める元となったナンバーズ、『No.25 重装光学撮影機(フルメタル・フォトグライド)フォーカス・フォース』を呼び出した。

 

速水が撮った未来の写真はあくまでイメージで、これまでデュエルに連勝できていたのも『この未来からは逃れられない』と繰り返し聞かせ続けていた暗示だった。

 

しかし、遊馬は運命の5ターン目で希望皇ホープを呼ばなかった事でその暗示を逃れ、未来を変えたのだ。

 

ナンバーズの力に頼り切り、デュエルの腕を磨かなかった秀太は最早遊馬の敵ではない。

 

遊馬は一気に勝負をつける為に希望皇ホープを召喚し、そこから更に希望皇ホープレイを召喚した。

 

希望皇ホープレイの効果で一気に逆転し、秀太のライフポイントを0にして勝利した。

 

これでフォーカス・フォースの力が無くなるが、飛行船が起こしたエンジンの故障を無かったことにするなど不可能。

 

このままでは飛行船の事故は免れない、万事休すかと思われたその時だった。

 

空から高速で飛翔するものがあり、それは飛行形態のオービタル7を装着したカイトだった。

 

カイトは操縦室に窓を突き破って入って操縦桿を握り、オービタル7は飛行船の下に潜り込んでジェットエンジンを噴射させ、飛行船の墜落を防いで不時着させたのだ。

 

小鳥は無事に飛行船から降り、カイトが小鳥達を助けてくれた事に遊馬は感謝し、「やっぱりデュエリストはみんな仲間だ!」と喜ぶが、カイトはWDCが中止させない為だと、素っ気ない態度でその場から立ち去った。

 

ナンバーズから解放された秀太は深く反省し、カメラマンとして改めて歩く事になる。

 

秀太のハートピースで遊馬の残るハートピースは一つとなるが、何故かアストラルの姿が見えず皇の鍵の中にいた。

 

そんな中、遊馬はクラスメイトの太一と出会う。

 

太一もWDCに参加していたが、遊馬の仲間の徳之助が太一を騙してハートピースを飴で出来た偽物と交換したのだ。

 

友人たちの問題を無視することも出来ず、遊馬は徳之助を捜すことになった。

 

「まあ、何て酷い事を……学友に嘘をついて、騙し取るなんて……骨の髄まで燃やしたいですわ」

 

あまりにも平然と嘘をつく徳之助に嘘が大嫌いな清姫は冷酷な表情を浮かべていた。

 

遊馬と小鳥はMr.ハートランドと初めて会った時に一緒にいたWDC運営委員の二人、ゴーシュとドロワに連れていかれそうになった徳之助を発見した。

 

悪事を犯した徳之助にゴーシュたちが下した裁きはデッキの没収とWDC参加権の永久剥奪、それにハートランドシティからの追放だった。

 

遊馬は徳之助へのあまりに理不尽な対応に怒り、徳之助を助ける為にデュエルで勝負を挑む。

 

遊馬の申し出を受けるゴーシュとドロワだが、徳之助の悪事を見逃す為のある条件を突き付ける。

 

デュエルは遊馬一人に対してドロワとゴーシュのタッグで、そのどちらかを倒せば勝ちだが、逆に負ければ遊馬に徳之助と同じ罰を受けてもらうものだった。

 

アストラルが不在の今、遊馬にとってはあまりにも無謀すぎるデュエルだが、仲間を放っておけない遊馬はその条件を呑んだ。

 

一方、遊馬の前から姿を消していたアストラルは、皇の鍵の中で自らの失われた記憶に考えを巡らせていた。

 

ナンバーズが集まってきたが、これといった真新しい情報も得ることが出来ず、遊馬との奇跡の合体であるZEXALについても分からなかった。

 

そう考えているアストラルの前に、突如として黒いアストラル……No.96が現れた。

 

封印されていたはずのNo.96が現れたのは回収した他のナンバーズの総意があってこそだった。

 

No.96が現れた理由はアストラルに使命を思い出させるためだった。

 

その使命とは……世界の破滅だった。

 

No.96は再びアストラルを取り込もうとするが、それを阻んだのは唯一ナンバーズの総意を拒んだ希望皇ホープだった。

 

希望皇ホープの出現にNo.96も自身の分身である『No.96 ブラック・ミスト』を出現させ、二体は激しい戦いを始めた。

 

「おいおい、ミストラルちゃんよぉ。タイミング良いと言うか悪いと言うか、マスターのピンチに反乱しやがって……やるじゃねえか!」

 

No.96の反乱にアンリマユは意地悪そうにニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 

遊馬のデュエルが始まり、守備を堅めるが、ゴーシュとドロワのデュエリストとしての見事な実力と連携で一気に遊馬は追い詰められてしまった。

 

遊馬は守りの力を持つモンスターで何とか九死に一生を得たが、相変わらずピンチには変わらなかった。

 

遊馬はレベル4のモンスター2体を揃えたが、エクストラデッキに希望皇ホープは無く、自分に出来ることをしてモンスターで攻撃をした。

 

その頃、No.96とブラック・ミスト相手に激しい戦いを繰り広げていたアストラルと希望皇ホープ。

 

すると、アストラルは遊馬がデュエルで窮地に陥っていると察知し、遊馬を助ける為に希望皇ホープを遊馬の元へと向かわせた。

 

何も出来ずにターンエンドをしようとした遊馬の元に希望皇ホープがエクストラデッキに戻って来たが、皇の鍵からはアストラルが現れない。

 

もしかしてアストラルもどこかで戦っているのではないかと感じつつも、希望皇ホープが戻ってきたのはアストラルから託された想いだと信じ、遊馬は希望皇ホープをエクシーズ召喚して守備表示にする。

 

すると、ゴーシュとドロワは遊馬がナンバーズ使いに驚愕し、罰を巡るデュエルから一変し、二人のエースモンスターを呼び出した。

 

ゴーシュは『フォトン・ストリーク・バウンサー』、ドロワは『フォトン・バタフライ・アサシン』……それはカイトと同じ『フォトン』モンスターだった。

 

実は二人はカイトと同じナンバーズ・ハンターでフォトンを出した事に遊馬は驚き、カイトの名を口にするとゴーシュとドロワも驚いた。

 

遊馬はカイトとデュエルをしたと言い、カイトの実力の高さはゴーシュとドロワもよく知っている。

 

そのカイトとデュエルをして生き残っている事実にある結論に辿り着いた。

 

それは遊馬にナンバーズのオリジナル……アストラルが取り憑いていると言う事だった。

 

二人は遊馬の持つナンバーズのオリジナルを狩る為に全力で攻め、希望皇ホープのムーン・バリアや罠カードで守っていく。

 

そして、遊馬のラストターン……ドローソースで最後の希望を託した2枚をドローするが……それは希望皇ホープのオーバーレイ・ユニットが無い状況では無意味のカードだった。

 

未来を閉ざされて絶望に打ちひしがれ、その場に崩れ落ちる遊馬。

 

小鳥と徳之助は諦めないでと応援と励ましをし、遊馬はかっとビングで立ち上がった。

 

そして、アストラルはNo.96に触手で縛られ、取り込まれそうになっていた。

 

しかし、遊馬のかっとビングがアストラルに伝わり、その体が金色に輝いた。

 

「遊馬……感じるぞ、君のかっとビングを……!」

 

アストラルは希望を信じる遊馬のかっとビングの輝きでNo.96を弾き飛ばして力を打ち消した。

 

再びNo.96と全てのナンバーズを再封印し、遊馬の元へ飛んだ。

 

皇の鍵が輝くと遊馬の背後が美しく煌めき、アストラルが現れた。

 

アストラルの出現にゴーシュとドロワは揺らいだ姿でしか確認出来なかったが、ナンバーズのオリジナルが現れたと確信した。

 

「待たせたな」

 

遊馬はアストラルがやっと来たことで喜びを表そうとしたが恥ずかしくてツンツンした態度を取る。

 

「二人掛かりで遊馬を……!」

 

アストラルはデュエルの状況を見てゴーシュとドロワの二人掛かりで遊馬とデュエルを行なっていた事に静かな怒りが沸き起こる。

 

「勝利のピースは揃っている。君の戦いは無駄ではなかった」

 

アストラルにはこの状況を打破出来る勝利の方程式を解いていた。

 

「アストラル……!」

 

「勝つぞ、遊馬!」

 

「おう!」

 

アストラルが来た事で調子を取り戻した遊馬は二人でデュエルを行う。

 

墓地にある『オーバーレイ・イーター』でモンスター効果を無効にするフォトン・ストリーク・バウンサーからオーバーレイ・ユニットを希望皇ホープに移し、フォトン・バタフライ・アサシンに攻撃する。

 

ここで希望皇ホープの効果を発動し、自身の攻撃を無効とし、『ダブル・アップ・チャンス』を発動。

 

攻撃力が2倍になり、更にもう一枚、速攻魔法『バイテンション』で、その攻撃力を更に2倍の合計4倍の攻撃力となった。

 

「行くぞ、遊馬!」

 

「ああ!」

 

希望皇ホープの体とホープ剣が火星のように紅く煌めき、炎を纏って燃え上がる。

 

「「ホープ剣・マーズ・スラッシュ!!!」」

 

炎に燃え上がるホープ剣がフォトン・バタフライ・アサシンに襲いかかるが、ゴーシュが発動した罠カード『バウンサー・ガード』で、希望皇ホープの攻撃対象がフォトン・ストリーク・バウンサーに変更される。

 

ドロワが受けるダメージをゴーシュが庇ってその身に受け、ゴーシュのライフポイントが0となり、遊馬の勝利となった。

 

遊馬がデュエルに勝利した事で約束通り徳之助の悪事は見過ごされることとなった。

 

「約束通り、イカサマのことは忘れてやる。だが覚えていろ!次は必ずお前を倒す!ナンバーズのオリジナルと一緒にな!!」

 

ゴーシュは遊馬の事を一人のデュエリストとして認めて再戦を誓い、ドロワと共にその場から立ち去った。

 

ちなみに、悪事が見過ごされた徳之助だが、今までハートピースを騙し取った人達から仕返しされ、全てのハートピースを奪われて失格となってしまった。

 

自業自得で因果応報なので、特に遊馬達も擁護はしなかった。

 

WDC二日目も間も無く夕暮れで終わりを迎える頃、遊馬のハートピースが子犬に奪われる事件が起きた。

 

遊馬の仲間のキャッシーは何故か猫と話が出来、猫達に頼んでその子犬の居場所を突き止めた。

 

そこには犬が多くおり、遊馬のハートピースを賭けて犬を束ねるボス犬とキャッシーのデュエルが始まってしまった。

 

実はボス犬の背負っている樽には少女が入っており、その名はドッグちゃん。

 

恥ずかしがり屋でキャッシーと同じように犬と話が出来る。

 

猫と話が出来るキャッシーに犬と話が出来るドッグちゃん……魔術師でも無い普通の少女達が何故猫や犬と話が出来て意思疎通が出来るのか理解が出来なかった。

 

「マスターの世界の住人はどいつもこいつも異能者揃いか……?」

 

時計塔のロードの一人であるエルメロイII世も頭を抱えて悩ませた。

 

その後ドッグちゃんはみんなからの応援でかっとビングを覚え、自分流にアレンジして『ドッグビング』と叫んで勇気を出せるようになった。

 

WDCの二日目も終了し、遊馬と小鳥は帰路につくが、そこで不思議な少年と出会った。

 

それは遊馬がかつて研究所で見た写真でカイトと一緒に写っていた少年だった。

 

その少年の名はハルトで、ハルトは虚ろな目をしており、不思議な力を持っていてアストラルが見えていた。

 

放っておけない遊馬はハルトを家に連れて行き一時的に保護をするが、ハルトは何かを求めて何処かに消えてしまった。

 

探す中でようやく見つけたハルトの不思議な力が暴走し、遊馬とアストラルのお陰でなんとか意識を取り戻して力を抑えた。

 

ハルトは疲れて倒れている兄、カイトに大好きなキャラメルを渡したかったのだ。

 

カイトとハルトの兄弟愛に感動していると、ハルトを迎えに来た謎の長髪の青年が現れた。

 

青年はハルトに何かの暗示をかけると素直に着いて行き、最後に衝撃的な言葉を呟いた。

 

「僕の使命はアストラル世界を壊すこと……」

 

何故ハルトがアストラルの故郷であるアストラル世界を壊すのか?

 

大きな謎を残しながらハルトは連れてかれてしまった。

 

しかし、その後カイトとゴーシュとドロワが現れ、ハルトが別の人間に連れ去られたと知った。

 

カイト達はハルトを取り戻すために捜索を開始し、遊馬はハルトを連れて行かれた責任とハルトをカイトに会わせるという約束を守る為に独自にハルトを追う。

 

ハルトを探しながらアストラルは今までの情報からある結論に辿り着いた。

 

以前カイトとデュエルした際にハルトのために悪魔に魂を売り、ナンバーズ回収を行っていることを知った。

 

ドロワとゴーシュは誰かの命令でハルトを探しているが、失踪という失態を隠すために慌てており、二人はWDCの運営委員であり、主催者であるMr.ハートランドの直属の部下でもある。

 

つまり、ハルトを探しているのはMr.ハートランドの指示だと考えられ、ハルトはMr.ハートランドの管理下から逃げ出した……。

 

これらのピースを一つ一つ繋げていくと、一つの真実に辿り着く。

 

カイトはハルトの為にMr.ハートランドからの命令でナンバーズを集めている。

 

つまり、カイトの言う悪魔……それはMr.ハートランドのことを指しているのではないかと言うものだった。

 

Mr.ハートランドがカイトの背後にいる黒幕だと知り、驚く遊馬。

 

しかし、今はそれどころではなくハルトを連れ去ったのはMr.ハートランドの関係者では無い、謎の第三の者達。

 

その者達の理由は不明だが、ハルトを狙っている。

 

謎の敵勢力に遊馬とアストラルの不安は高まるばかりだった。

 

すると、アストラルにハルトからの助けを呼ぶ声が聞こえた。

 

連れ去られた場所を示すヒントを元に町外れの使われなくなった美術館に到着すると、カイトにもハルトの声が聞こえていたので一足遅れて到着した。

 

ハルトの約束を果たす為に食ってかかるカイトの制止を振り切って遊馬は美術館に突入する。

 

美術館の奥に進み、そこにいたのは何とⅣとIIIだった。

 

Ⅳは鉄男と等々力を傷付けた張本人であり、あの時の怒りが蘇ってくる遊馬だが、デュエルを復讐には使わないと決めている為、心は冷静でいた。

 

ハルトは今は無事だが、どうなるか分からず、助けたいのならデュエルで勝てと言うⅣはIIIと共にタッグデュエルを挑んできた。

 

ハルトを取り戻す為、遊馬とカイトの即席コンビで迎え撃ち、タッグデュエルが始まった。

 

ⅣとIIIはまずは強敵であるカイトを先に片付けようとし、対するカイトはフィールド魔法『光子圧力界(フォトン・プレッシャー・ワールド)』を発動するが、それはフォトンモンスターを操るカイト以外のプレイヤーに効果ダメージを与えるもので、タッグを組んでいる遊馬までもが効果の対象となってしまうものだった。

 

もはやタッグデュエルの意味は全くなく、カイトにとっては遊馬の力は必要とせずに自分の力だけで勝つつもりだった。

 

あまりにも非協力的なカイトに腹を立てる遊馬だが、ハルトの命がかかっており、カイトと争う余裕はなく自分のデュエルを行おうとするが、そんな遊馬の様子に気付いたⅣは、カイトが何故ナンバーズ・ハンターとしてナンバーズを狩るのかその真実を口にする。

 

カイトは重い病気にかかったハルトを治すためにDr.フェイカーとMr.ハートランドの指示でナンバーズを集めていたのだ。

 

弟のハルトのためなら他人の魂など関係無い、ナンバーズを持つ者は皆、狩の標的だったのだ。

 

衝撃の事実に遊馬は動揺して迷いを見せた。

 

ナンバーズはアストラルの記憶の欠片でアストラルの為にも全部集めなければならないと思っているが、それは同時にハルトの病気が治らないことを意味していた。

 

動揺する遊馬に対し、アストラルは自分の記憶が関わっているにも関わらずとても冷静で、今は目の前のデュエルに集中するべきだと助言をし、遊馬は何とか落ち着きを取り戻した。

 

一方、IIIもナンバーズを呼び出し、巨大な宙に浮く城の形をしたモンスター、『No.33 先史遺産マシュ=マック』をエクシーズ召喚する。

 

そして、遊馬を格下のデュエリストだと思っているⅣとIIIの前で遊馬はエースモンスターである希望皇ホープをエクシーズ召喚をする。

 

遊馬がまさかのナンバーズ使いだと知り、驚くⅣとIII。

 

それでこそ倒し甲斐があると、Ⅳは鉄男と等々力を倒したジャイアント・キラーを呼び出して希望皇ホープを効果破壊した。

 

その際に先ほどと同じように桜たちの目を塞いで貰い、希望皇ホープのショッキングな破壊シーンは見せずに終わった。

 

大ダメージを受ける遊馬だが、Ⅳのジャイアント・キラーの効果は知っていたのでその対策として用意していた『ダメージ・メイジ』で受けた効果ダメージ分回復した。

 

Ⅳは攻撃目標をカイトに向け、カイトに大ダメージを与えようとしたが、遊馬がセットした罠カードでカイトを守った。

 

敵であるはずの遊馬が自分を守ったことにカイトは驚愕し、素直に受け取らなかった。

 

しかし、遊馬はそれでも構わなかった。

 

何故なら遊馬にはこのデュエルにかける強い想いがあったからだ。

 

「俺はお前が敵だって言うなら敵でも構わねえ。けど、俺はハルトと約束したんだ。あいつはずっとお前に会いたがっていた。だから、必ずお前をハルトの元に連れて行く!!」

 

それはハルトとの約束、兄であるカイトに合わせるという強い想いが遊馬を動かしていた。

 

敵であろうがなかろうがそんな事は関係ない、兄弟二人を会わせる為なら全力でカイトを守り、必ずこのデュエルに勝つ……遊馬はその覚悟を決めていた。

 

「本来なら敵同士のカイトですら守り、ハルト君との約束の為に戦う……良いよ、良いよ!それでこそ私の弟だよ、遊馬!」

 

遊馬の優しさと戦う覚悟に武蔵は嬉しそうに何度も頷いた。

 

しかし、自分の思うようにデュエルが進行しないと腹を立てたⅣは、ファンサービスと称して新たな行動に出る。

 

それは、何かの魔術的な儀式によって苦しむハルトの姿の映像を見せてカイトに精神的ダメージを与えるという卑劣なものだった。

 

これにカイトは怒り狂い、自分の怒りを込めて銀河眼の光子竜を召喚した。

 

しかしそれはカイトを陥れるための罠だった。

 

IIIが発動した罠カードによって銀河眼の光子竜は攻撃も効果も全て封じられてしまった。

 

そして、マシュ=マックの効果でカイトに大ダメージを与えようとしたが、遊馬の捨て身の罠カードでカイトのライフポイントを守り抜いたが、カイトは相変わらず素直に受け取らなかった。

 

遊馬のライフが大幅に減ったことでアストラルの体が点滅していき、消滅の危機に陥るがアストラルは仕方ないと言った表情をした。

 

「仕方あるまい……これが君のデュエルだ。慣れてきたよ」

 

アストラルは相棒として遊馬の性格を熟知してきたので多少の痛みは既に覚悟が出来ていた。

 

「アストラルさん……遊馬君を理解しているからこそ、それほどの覚悟を……」

 

マシュはアストラルが背負う遊馬としての相棒の覚悟に尊敬した。

 

IIIはⅣの卑怯なやり方にやりすぎだと言うが、Ⅳは怒りを露わにした。

 

「やりすぎだと!?お前は俺達が味わった苦しみを忘れたのか!?」

 

まるでそれはカイトに何か恨みを持っているような言い方だった。

 

遊馬は心を乱してまともなデュエルが出来ていないカイトを落ち着かせようとする。

 

「カイト、落ち着け!」

 

「黙れ!お前に俺の苦しみ、俺の憎しみの何が分かる!?」

 

カイトは怒りや憎しみからの苛立ちを遊馬にぶつけた。

 

そう、遊馬にはカイトが背負ってきた苦しみや憎しみを分からない。

 

しかし、そんな遊馬でも一番大切なことを分かっている。

 

「……ああ、分からねえ。分からねえさ!お前や、ハルトの憎しみも悲しみも!だけど、俺はお前とデュエルした!デュエルを通じてお前を知っちまったんだ!デュエルは新しい仲間を……絆を作ってくれる!」

 

遊馬はデュエルを通じてカイトを知り、デュエルは新しい仲間と絆を作ると感じた。

 

だからこそ今のカイトやⅣ達のデュエルを許すわけにはいかなかった。

 

デュエルがあったからこそ遊馬はアストラルと出会い、そこから新しい一歩を踏み出すことができた。

 

「そして、デュエルってのは新しい自分にかっとビングさせてくれる!決して恨みや憎しみをぶつける道具じゃねえ!見せてやる!俺のかっとビングを!!」

 

遊馬はデュエルが恨みや憎しみをぶつけるものでない、絆を作り出すものだと証明するために想いを込めてドローする。

 

「俺のターン、ドロー!来た!俺は魔法カード『死者蘇生』を発動!蘇れ、希望皇ホープ!!」

 

起死回生の死者蘇生で破壊された希望皇ホープが蘇る。

 

今更希望皇ホープを呼んだところで状況は変わらないと感じたⅣとIIIだが、遊馬には切り札が残っていた。

 

「ホープの力はこれだけじゃ終わらない!これが俺のかっとビングだ!!」

 

遊馬とアストラルは希望皇ホープの真の力を解き放つ。

 

「「カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ!CNo.39!希望皇ホープレイ!!」」

 

逆転の力を持つ攻めの希望皇ホープレイが現れ、カオスナンバーズと言う初めて見るナンバーズの進化形態にⅣとIIIは衝撃を受ける。

 

「カオスナンバーズだと!?」

 

「こんなナンバーズ、見たことない……」

 

遊馬は希望皇ホープレイの効果を使ってジャイアント・キラーを対象にし、一撃必殺の攻撃を放つが、Ⅳの罠カードで間一髪のところでダメージが防がれてしまった。

 

Ⅳは最後のファンサービスと称して新たなナンバーズ、『No.40 ギミック・パペット - ヘブンズ・ストリングス』を呼び出してカイトに最後の攻撃を繰り出す。

 

ところが、またしても遊馬が自分のライフを削りながらもカイトを守り抜き、Ⅳは苛立ちが最高潮に溜まっていく。

 

Ⅳはヘブンズ・ストリングスの効果を使い、希望皇ホープレイと銀河眼の光子竜に無数の赤い糸を貫かせ、次のターン終了時に破壊して効果ダメージを与える。

 

このままでは次のカイトのターンが終わった瞬間に遊馬とカイトの敗北が確定してしまう。

 

しかし、カイトは極限まで心身共にダメージが与えられ、もはや立ち上がる事が出来なかった。

 

カイトの情けない姿を見て遊馬は声を荒げた。

 

「立てよ……立つんだカイト!このまま負けちまって良いのかよ!何で立たねぇんだよ……カイト!」

 

遊馬はカイトのそんな情けない姿を見たくなかった。

 

敵でありながら遊馬はデュエリストとしてカイトの事を心の底から尊敬しており、弟のハルトの為に命懸けで戦う姿に憧れていた。

 

ハルトを守れるのはカイトしかいない、遊馬はカイトを奮え立たせるために魂の叫びを挙げる。

 

「お前が、ハルトを守らなくて……誰がハルトを守るんだよ!!!」

 

遊馬の魂の叫びがカイトの心に響く。

 

「ハルト!……俺はまたお前を……」

 

カイトの脳裏にはハルトを連れていかれ、戦う事を誓った日のことを思い出した。

 

カイトは再び立ち上がり、ハルトを守る誓いを新たにし、愛する弟の名を呼ぶ魂の叫びを轟かせる。

 

「俺はお前を……絶対に守ってみせる!!……ハルトォオオオオオ!!!」

 

カイトの魂の叫びがハルトに届くと、兄弟の互いを思いやる願いと思いが奇跡を起こした。

 

ハルトは儀式で力を全て奪われる前に、全ての力をカイトへと託した。

 

ハルトから不可思議の力を受け取ったカイトの体が真紅に光り輝き、エクストラデッキに新たなカードが創造された。

 

「ハルト……お前がくれたんだな。この力を……」

 

カイトはハルトから受け取った力を無駄にしない為にデュエルを再開する。

 

「銀河眼の攻撃力はゼロ!貴様のライフはわずか100!くたばり損ないに何ができるんていうんだ!!」

 

Ⅳは声を荒げて叫んだが カイトは諦めていなかった。

 

「くたばるのは貴様達だ!!」

 

その瞬間 カイトの瞳には銀河眼と同じ銀河の輝きが宿った

 

新たなカードを使う為にカイトは場を整えようとするが、どうしてもまだもう一手が足りなかった。

 

「アストラル!そこにいるのか!?お前は以前俺と遊馬が似ていると言ったな、だったら俺に共鳴してみろ!」

 

素直ではないカイトのその言葉は遠回しに力を貸してくれと言っているようなもので、その意図を理解した遊馬とアストラルは笑みを浮かべた。

 

「遊馬!我々のモンスターでカイトを助けるぞ!」

 

「ああ!カイト!俺のモンスターを使え!行っけー!」

 

遊馬の希望皇ホープレイとダメージ・メイジをリリースし、カイトは『フォトン・カイザー』をアドバンス召喚する。

 

召喚されたフォトン・カイザーの効果でもう1体のフォトン・カイザーが現れ、これでカイトのフィールドには銀河眼の光子竜を含め、レベル8のモンスターが三体揃った。

 

「俺はレベル8の銀河眼と二体分となったフォトン・カイザーでオーバーレイ!三体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!!エクシーズ召喚!!!」

 

IIIの罠によって拘束されていた銀河眼の光子竜が解放され、フォトン・カイザーと共に光となって天に昇ると、カイトの手元に大きな槍のような物体が現れる。

 

「逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりて姿を現すがいい!」

 

それを握ると天に出来た渦巻きに向けて投げ飛ばすと、超新星の如き真紅の光の爆発が放たれる。

 

「降臨せよ!我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!!」

 

カイトとハルトの兄弟の絆によって銀河眼の光子竜が新たな姿へと進化した。

 

「そうか……超銀河眼の光子龍はカイトとハルトの兄弟の絆から生まれたんだ……」

 

レティシアは超銀河眼の光子龍の誕生の経緯を目の当たりにし、天城兄弟が見せた強い絆に感動していた。

 

進化した超銀河眼の光子龍はモンスターエクシーズキラーである銀河眼の光子竜の力を進化させた効果を発揮し、フィールドの表側の全てのカード効果を無効にし、更にモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットを全て奪い、その数だけ攻撃力を上昇して複数回攻撃を可能にした。

 

攻撃力6000の怒涛の3回攻撃を繰り出し、まずはIIIのマシュ=マックを破壊してIIIのライフポイントを0にし、残るはこれまで卑劣なデュエルをしたⅣだけだった。

 

「Ⅳ!懺悔の用意は出来ているか!!」

 

「くっ……!」

 

「アルティメット・フォトン・ストリーム!!!」

 

Ⅳに怒りの鉄槌を下す為、超銀河眼の光子龍がトドメの龍の咆哮が轟き、ヘブンズ・ストリングスを破壊し、Ⅳのライフポイントを0にして遊馬とカイトが勝利した。

 

敗北したものの、Ⅳはハルトの居場所を教えようとせず、カイトは怒りに身を任せてナンバーズ狩りを実行した。

 

だが、Ⅳは右手に刻まれている不思議な絵柄が刻まれた謎の力でナンバーズと魂を奪うフォトン・ハンドを弾くと、アストラルはナンバーズ回収を試みたが、IIIも同じ力でアストラルを弾き飛ばした。

 

ⅣとIIIは『紋章』と呼ばれる謎の力に守られており、受けた屈辱を倍にして返すと言い残し、IIIと共に消えてしまった。

 

ハルトの手掛かりが失われ、途方に暮れるが、そこへハルトを連れて行った青年がハルトを抱き上げて現れた。

 

カイトがその青年を見て驚いたことからどうやら面識があるようだった。

 

ハルトは返されて無事だったが意識を失い、しかも力まで失っていた。

 

何故ならカイトを守る為に残っていた力を全て与えてしまったからだ。

 

一方で、青年の意識は遊馬に向けられており、衝撃的な事実を告げた。

 

「君の父、九十九一馬はアストラル世界で生きている」

 

それは遊馬にとって、これ以上ないほどの衝撃的なの一言だった。

 

行方不明だった父親がアストラル世界で生きている……それ以外のことを青年から聞き出すことは出来なかったが、アストラル世界からの使者であるアストラルの記憶が戻れば何か分かるかもしれない。

 

しかし、その為にはナンバーズを回収すれば良いのだが、同時にそれはカイトと戦うことになり、更にはハルトの病気も治らない。

 

また、仮にナンバーズの力でハルトの病気が治ったとしても、今度はハルトが一馬のいるアストラル世界を滅ぼすかもしれない……。

 

遊馬はアストラルの記憶を取り戻したい、カイトと戦いたくない、ハルトを見捨てたくない気持ちが渦巻いて解決策が見出せずに悪循環してしまうが、一つだけ方法を思いついてその夜に行動した。

 

遊馬が思いついた方法……それはアストラル世界に行って父親を探し出すことだった。

 

しかしそれは、一時的とはいえ大切なナンバーズ集めを放棄することで、更にはデュエルチャンピオンになる為の夢の舞台でもあるWDCを途中棄権することだった。

 

アストラルにとって、遊馬の考えた行動はとても賛同出来るものではなく、今の遊馬は迷走しているようなものだった。

 

そんな時に遊馬を止める為に小鳥から話を聞いた明里と春、そして遊馬の様子を見に決闘庵の山から降りて来た師匠の六十郎が現れた。

 

六十郎はデュエルを捨てようとする遊馬を見過ごせず、どうしても行くのなら自分をデュエルで倒していけと強要した。

 

遊馬は六十郎にデュエルに挑むことになったが、アストラルは今の遊馬に助力をするつもりはなかった。

 

唐突に始まった遊馬と六十郎のデュエルだが、迷走している遊馬はいつものデュエルが出来ずにただモンスターを並べて攻めるだけのデュエルを行なっていた。

 

そして、六十郎は天位の称号を持つ伝説の究極融合騎士『アルカナ ナイトジョーカー』を融合召喚し、遊馬に一気にトドメを刺した。

 

六十郎は迷う遊馬に一喝し、遊馬は今の心境を吐いた。

 

アストラルを選ぶか、ハルトを選ぶか……それを決められずに悩んでいたのだ。

 

だが、六十郎にとってそれは、逃げたことに等しいと指摘した。

 

父親を探すという名目の元に、ライバルや友、家族や相棒すらも全て捨てようとしているからだ。

 

今、遊馬がすべきことは、自分の足下をしっかり見ること。

 

そしてデュエルと向き合い、今までと同じようにかっとビングをして、一歩を前に踏み出せば良い……その歩く道の先に、必ず一馬がいるはず。

 

デュエルこそが遊馬と一馬を結ぶ大切な絆で、仮に遊馬がデュエルを捨ててまで一馬を探し出せたところで、遊馬のデュエルと夢を応援していた一馬は絶対に喜ばないからだ。

 

六十郎の説得により、遊馬は自分の本当の気持ちに気付いた。

 

それは誰にも負けないぐらいデュエルが好き、大好きでデュエルチャンピオンになる夢を叶う為にWDCに勝つことだ。

 

それこそが今の遊馬が成すべきことだった。

 

デュエルの後、遊馬と六十郎は一緒に風呂に入り、祖父と孫のように楽しそうに師弟の絆を深めていた。

 

一緒にWDCの優勝特典のMr.ハートランドにどんな願いを叶えてもらおうか楽しく話していたが、アストラルも一緒に風呂に入っていた。

 

「「「何故精霊のアストラル(さん)が一緒に風呂に入っている……???」」」

 

アストラルがさも当然のようにシレッと一緒に風呂に入っていることに疑問を持ちながら、マシュ達は静かに嫉妬が燃え上がって来た。

 

六十郎のお陰で悩みが無事に解消した遊馬だが、続いて頭に浮かんだのは、Mr.ハートランドについてだった。

 

六十郎によれば、その名の通りハートランドシティのシンボルであり、子供たちの人気者だが、その裏には黒幕がいるとの噂もあるらしい。

 

そして、100年に一人と言われている天才科学者・Dr.フェイカー。

 

ハートランドシティを造り上げた人物と言われているが、多くの謎に包まれた人物で、現在は生死不明。

 

春はDr.フェイカーが実は一馬とも繋がりがあるのを知っており、一馬が行方不明になる時に最後にガイドした相手がDr.フェイカーだったのだ。

 

一馬とDr.フェイカーとMr.ハートランド……この三人が遊馬が知らない何かで繋がっていた。

 

遊馬とアストラルが踏み出すその先にはDr.フェイカーとMr.ハートランド……そして、一馬がいる……。

 

「絶対に勝つぞ、アストラル」

 

「当然だ」

 

遊馬とアストラルはデッキを組み直しながら勝利と真実に向かうために、WDCで勝ち続ける決意を新たにする。

 

翌朝、WDCの予選三日目の最終日となり、遊馬は六十郎のお陰で迷いは振り切れたものの、まだ揺らいでいた。

 

どうすれば良いのかまだ分からないが、遊馬が今願うことは……。

 

「俺は、みんなが幸せになれる道を探すんだ」

 

それは平和を、幸せを願う者なら誰もが一度は考える道。

 

しかし、それはあまりにも険しく不可能にも等しい道……遊馬は幼いからこそ、その理想の道を考える。

 

小鳥達と合流した遊馬は街で一際賑やかなデュエルをしている場所に向かう。

 

それはかつてナンバーズに取り憑かれ、遊馬とデュエルした『異次元エスパー・ロビン』として人気を博している奥平風也だった。

 

撮影で忙しかったという風也は、今日がWDC初参戦となる。

 

そして、そんな風也に目を付けたのは同じく初参戦のゴーシュだった。

 

WDCの運営委員のゴーシュだが、遊馬とのデュエルで心を震わされ、デュエリストの魂が燃え上がって参加者となったのだ。

 

風也は異次元エスパー・ロビンの劇中に登場するモンスター達を駆使し、ゴーシュは遊馬とのデュエルで使ったバウンサーではなく、ゴーシュ自身のデッキ『ヒロイック』を使用した。

 

風也の華麗な戦術にゴーシュの熱いデュエル……実力者二人が魅せるデュエルに遊馬も興奮していた。

 

ゴーシュに追い詰められる風也だが、どんなに追い込まれようと決して諦めず、自分を信じ続ける……かつてデュエルした遊馬から教わったかっとビングの精神が、風也にも受け継がれていた。

 

その諦めない気持ちが、逆転へのドローカードを引き寄せ、切り札の『超次元ロボ ギャラクシー・デストロイヤー』をエクシーズ召喚した。

 

一気に逆転されるゴーシュだが、ゴーシュもまた遊馬のかっとビングに影響され、最後まで諦めずにデュエルを続けた。

 

そして、召喚したのはゴーシュの真の切り札『H - C(ヒロイック チャンピオン) エクスカリバー』。

 

希望皇ホープレイに匹敵する一撃必殺の剣を持つエクスカリバーでギャラクシー・デストロイヤーを破壊し、ゴーシュが勝利を収めた。

 

デュエルを終えた二人は満足げな表情を浮かべていた。

 

ゴーシュは遊馬のデュエルに魅せられてから、今度は誰にも邪魔されることなく一対一の燃えるようなデュエルをする為にわざわざ運営委員を抜けてWDCに参戦したことを告げた。

 

必ず勝ち残って決勝まで上がって来いとそう言い残し、付き添いで来ていたドロワと共に去って行く。

 

そんなゴーシュの様子に、風也は一つの確信を得た。

 

「不思議だね、遊馬とデュエルした者はみんな笑顔になる」

 

ゴーシュも自分同様、遊馬にデュエルの楽しさを教えられたのかもしれないと。

 

遊馬とデュエルした者は皆が笑顔になる。

 

デュエルで人を幸せにする力……遊馬にはそんな不思議な力があるのかもしれない。

 

デュエルで皆を幸せにする。

 

風也の一言で、遊馬は本当の意味で迷いを吹っ切り、その道を進もうと誓い、アストラルもまた、自分の道を見つけようとしていた。

 

残る一つのハートピースを手に入れる為に遊馬は対戦者を探すが中々見つからずに難儀していた。

 

そんな中、遊馬は傷だらけで倒れたデュエリスト達を発見する。

 

彼らが傷付いたのは、凌牙のデュエルだった。

 

凌牙に会う遊馬だが、その瞳は出会った頃……否、それ以上に昔に鋭い眼光をしていた。

 

今のシャークを突き動かしているのは、Ⅳへの憎しみに秘めた復讐心だけ。

 

放っておけない遊馬はアストラルの制止も聞かずに凌牙にデュエルを挑む。

 

しかし、激しく攻める凌牙に対し、遊馬はバトルを一切せずに守りに徹していた。

 

そして、体はボロボロになり、遂にライフポイントが100にまで追い詰められる

 

何をしたいのか分からないアストラル達だが、遊馬はこのデュエルで最初から勝つ気はなかった。

 

「俺はこのデュエル、勝ち負けなんてどうでもいいんだよ!憎しみで!復讐で!デュエルしてお前、楽しいのかよ!!」

 

ただ、凌牙にデュエルを使って復讐して欲しく無かった。

 

「お前はデュエルだけは大好きな奴だっただろ!だけど、そのデュエルさえ憎もうとしてるじゃねえか!俺は……そんなお前を……見たくねえんだよ!!」

 

デュエルは楽しいもの、デュエルの楽しさや喜びを取り戻した凌牙に戻って欲しくて遊馬はデュエルを挑んだのだ。

 

遊馬の魂が込められた熱い言葉に凌牙は唖然とする。

 

ところが……。

 

ぐぅ~!

 

遊馬のお腹が空腹で大きくなってしまった。

 

ズササーッ!!

 

緊張感を一気に壊す事態にマシュ達は思わず椅子からずっこけてしまった。

 

「ゆ、遊馬君らしいと言いますか……」

 

「フォウ……」

 

マシュとフォウは苦笑いを浮かべるが……。

 

「この決着は決勝でつける!フッ……」

 

遊馬の言葉と行動にいつのまにか凌牙の憎しみの心が抑えられ、笑みを浮かべてその場から立ち去った。

 

「あははっ!それでこそ、私を復讐者から取り戻してくれたユウマだね!」

 

「チッ……相変わらずアヴェンジャーキラーとも言うべき男だな、マスターは」

 

凌牙の復讐心を抑えた遊馬に対し、かつてオガワハイムでアヴェンジャーになりかけたが遊馬によって心を取り戻してくれたブーディカは嬉しそうに笑みを浮かべるが、世界を代表するアヴェンジャーのエドモンはいとも簡単に復讐心を抑えたことに舌打ちした。

 

一旦九十九家に帰った遊馬はそこで思わぬ出会いをした。

 

それは昨夜にタッグデュエルで戦ったIIIだった。

 

敵であるはずのIIIだが、遊馬の部屋にある両親が世界中から持って来た古代文明の遺産に興奮しており、とてもハルトを連れ去り、酷い事をした者達の一員とは思えなかった。

 

IIIはその件についても素直に謝罪をした。

 

敵同士だが、遊馬とIIIはすぐに仲良くなる。

 

IIIは他人の為に戦う遊馬の事を知りたくてやって来たらしく、そのまま小鳥とIIIと一緒に九十九家で昼食をとることになった。

 

仲睦まじい遊馬と明里と春の家族の光景に、IIIは何かを思い出して涙を流し、そのまま九十九家を飛び出してしまった。

 

急いで追いかけた遊馬だが、IIIは何かの決意を固めていた。

 

「遊馬、君がいる限り復讐は果たせない!だから、僕ら家族のために……君を倒さなきゃいけないんだ!!」

 

IIIは自分の家族を守る為に遊馬にデュエルを挑む。

 

遊馬もハートピースを得るだけでなく、IIIの本当気持ちを知りたいと思い、そのデュエルを受け入れた。

 

その日の夕方、小鳥だけでなく鉄男達と合流して遊馬とアストラルはIIIから支持された場所に向かった。

 

IIIの覚悟の表情に遊馬とアストラルも全力で立ち向かい、デュエルが始まった。

 

しかし、IIIは今までのデュエルとは異なる大好きなはずの先史遺産モンスターを繰り返し犠牲にする戦術を取るが、それはIIIのデュエルではないと遊馬は批判した。

 

すると、IIIは涙を浮かべて今まで溜め込んできた感情を全て吐き出した。

 

「君には分からない、仲間に囲まれ、幸せでいる君には……本当に苦しい時や悲しい時、誰にも側に居てもらえなかった僕の気持ちは……やっと取り戻した僕の家族!ボロボロだった!すっかり歪んでいた!でも、それでも僕は守りたいんだよ!遊馬、ウザいんだよ!目障りなんだよ!君の一々が!!」

 

家族と仲間に囲まれて幸せそうな遊馬に対し、IIIは本当に苦しい時、悲しい時に誰にも側にいてもらえなかった。

 

ようやく取り戻した家族……しかし、それすらも歪んでしまっていた。

 

それでもIIIは家族を守りたい気持ちでいっぱいだった。

 

家族を守る為にIIIは最後の一線を越えてしまった。

 

IIIは古代の戦士のような金色の鎧を着て左手の甲に刻まれた紋章を輝かせた。

 

「闇に堕ちろ!遊馬!!」

 

紋章の輝きが遊馬に襲いかかると、IIIは遊馬の精神を操作した。

 

遊馬にとって大きな力……それは一馬から受け継いだチャレンジ精神、かっとビング。

 

紋章は遊馬の過去の記憶を遡り、そこからかっとビングの全てを消し去ったのだ。

 

かっとビングを失った遊馬はいつもすぐそばにいるはずの皇の鍵とアストラルが見えなくなり、更にIIIは紋章の力でアストラルを封じ込めた。

 

いつも元気で活発な遊馬だが、かっとビングを失ったことで幼少期から周囲に馬鹿にされ続け、自信をなくして気弱な性格になったと仮定される……これは言わば遊馬のとある一つの可能性……IFの遊馬になってしまったのだ。

 

「まさか……遊馬君からかっとビングが奪われただけであんなにも弱くなるなんて……」

 

これまで数多くの戦いを臆することなく戦い続けた遊馬を側で見続けたマシュは気弱になった遊馬に衝撃を受けると同時にかっとビングがどれほど大切なものか実感した。

 

それは他の者達も同じ思いで、正々堂々と戦うはずのデュエルで相手の心を操作する非道なやり方をするIIIに対して怒りが湧いてくる。

 

遊馬はデュエルが出来る状態ではなく、サレンダーをして負けを認めようとしたがIIIは遊馬の全てを奪うためにそれを認めなかった。

 

IIIがトドメを刺そうとしたが、未だに捕らわれたアストラルは最後の力を振り絞り、遊馬に失われたかっとビングを思い出させようとする。

 

すると、その想いが通じたのか、遊馬は手札にあった『ガガガガードナー』を特殊召喚をし、辛うじてダイレクトアタックを回避して敗北を免れた。

 

遊馬の咄嗟の行動がアストラルによるものだと知ったIIIは、紋章の力を強めて捕えたアストラルを痛めつけた。

 

そして……紋章の力によって、アストラルを消滅させるのだった。

 

「アストラルさん!?」

 

「フォーフォウ!?」

 

アストラルの消滅にマシュ達は驚愕する。

 

そして、アストラルの消滅時に放った紋章の衝撃波が遊馬に襲いかかり、遊馬は崖から落ちそうになり、小鳥と鉄男達が遊馬を助けて引き上げる。

 

「どうして君たちが……?」

 

「当たり前だ!俺たちは仲間だろ!?どんなピンチにだって勇敢に立ち向かう!俺の知っている遊馬はそういう奴だ!!」

 

遊馬は忘れてしまっているが、小鳥と鉄男達は忘れない。

 

遊馬の諦めないその姿、かっとビングを胸にチャレンジをし続ける姿に尊敬しているのだ。

 

すると、IIIは今度は小鳥達を紋章の力で閉じ込めて声を遊馬に届けなくした。

 

その際に遊馬の首から皇の鍵が外れて小鳥の手の中に収まり、これで遊馬を支えるものの全てが排除されてしまった。

 

かっとビングを、アストラルを、そして仲間との絆、その全てを奪われた遊馬。

 

絶体絶命の危機に陥った……その時だった。

 

「ここまで汚い手を使ってくるか……」

 

皇の鍵の中にある飛行船にアストラルではない謎の人物がいた。

 

その人物は手をかざすと飛行船に納められているナンバーズの刻印が輝き、停止している飛行船が動き始めた。

 

「今回は、お前の力だけじゃ、どうにもならないようだ」

 

そして、飛行船の先端から金色のエネルギーが放たれる。

 

「遊馬ぁ!!一番大事な事を忘れてんじゃねぇぞ!!!」

 

それは遊馬への想いが込められた叱咤……遊馬に一番大事な事を思い出させ、それを伝える者はこの世で一人しかいなかった。

 

皇の鍵から眩い金色の閃光が放たれ、小鳥達を囲う檻を破壊し、そして遊馬の体を包み込んだ。

 

遊馬に刻み込まれていた紋章の力が破壊され、失った大切なものが蘇る。

 

「遊馬!」

 

小鳥は皇の鍵を投げ渡し、皇の鍵を受け取って掲げると、金色の閃光が最高潮にまで輝きを放つ。

 

「そうだ……俺が忘れていたのは……かっとビングだぁあああああ!!!」

 

かっとビングが遊馬の中で完全復活し、皇の鍵の中でその光景を見守り、微笑む人物……その正体は……。

 

「と、父ちゃん……!??」

 

遊馬は声を震わせて呟いた。

 

その人物の正体は行方不明だった遊馬の父、一馬だった。

 

何故一馬が皇の鍵の中にいるのか、何故飛行船を操って遊馬に刻まれた紋章の力を破壊できたのかは不明だが、これだけは確かだった。

 

一馬は遊馬を遠くから見守り、遊馬の最大の危機に父として手助けをしたのだ。

 

かっとビングを取り戻し、いつもの調子に戻った遊馬だが、先程までの気弱だった僅かな間の記憶は無く、アストラルがいないことに気付く。

 

IIIはアストラルは消したと言い、遊馬はその事を信じられなかった。

 

「嘘だ!あいつは俺を置いて、何処にも行かねえ!!」

 

遊馬は小鳥に目線を向けるが、アストラルの最期を見た小鳥は涙を浮かべて首を振った。

 

小鳥の涙が全てを語り、遊馬は今までにない程の怒りが燃え上がった。

 

「許さねえ……!III!!絶対に許さねえ!!!」

 

アストラルは遊馬にとっては仲間であると同時に一緒に同じ時を過ごす家族のような存在になっていた。

 

その家族を奪ったIIIに対し、遊馬は怒りを爆発させてデュエルを続行し、カードをドローする。

 

怒りを爆発させながらも、遊馬の頭は意外にもとても冷静であった。

 

遊馬の脳裏にはアストラルと二人で家の屋根の上に登り、星空が輝く夜空の下で語り合った時を思い出していた。

 

「遊馬、君にデュエルの心得を教えてやる。私はいつ消えるかも分からない。だが君は未来がある、無限の可能性が残されている。だから私は、私がいた証を残したいんだ。君の記憶の中に」

 

アストラルはこれから熾烈を増すナンバーズを賭けた戦いの中で自分が消滅することを既に覚悟していた。

 

しかし、遊馬には未来が、無限の可能性がある。

 

遊馬が一流のデュエリストとして成長してもらいたいという願いと、自分が遊馬と共にいたと言う証を残すためにデュエルの心得を教えるのだ。

 

アストラルは数々のデュエルの心得を教え、最後にこう言い残した。

 

「後は君らしく、かっとビングをすれば良い」

 

遊馬はアストラルから教えてもらったことを思い出し、今のフィールドの現状を冷静に把握し、突破する方法を考えた。

 

「行くぜ、アストラル!お前と共に戦ってきた記憶が、俺の肉だ!血だぁっ!!」

 

アストラルと共に戦ってきたデュエルの数々、それが遊馬のデュエリストとしての形を形成していた。

 

遊馬はアストラルが残してくれた最後の希望……希望皇ホープをエクシーズ召喚をする。

 

「こいつは、アストラルが俺に残してくれた最後の希望だ!!!」

 

遊馬は希望皇ホープと共にIIIに挑み、果敢に攻めて形勢を逆転させる。

 

するとIIIは真の切り札である『No.6 先史遺産アトランタル』を呼び出した。

 

アトランタルの強力な効果に追い詰められる遊馬だが、自分自身とアストラルのかっとビングを胸に立ち上がり、希望皇ホープと共に諦めずに勝利を目指していた。

 

遊馬は希望皇ホープと共に残してくれた最後の希望、希望皇ホープレイを呼び出し、アトランタルを斬り裂こうとしたが、IIIはその攻撃を読んで罠カードで攻撃を防いだ。

 

もはや遊馬には勝ち目は無いとIIIは自分の勝利を疑わなかったが、その体に異変が起きて身体中に不気味な黄色の紋様が浮かんでいた。

 

それはIIIが使った紋章の力の代償だった。

 

強力な力を持つアトランタルを操ることが出来る代わりにIIIの精神と肉体に多大のダメージを与えていたのだ。

 

しかしそれもIIIにとっては覚悟の上の行動だった。

 

大切な家族を守る為なら例えこの身が切り裂かれても構わないほどの覚悟で戦っていた。

 

IIIはアトランタルの効果を使って遊馬を更に追い詰め、希望皇ホープレイを叩き潰すために攻撃を繰り出した。

 

遊馬は防御系の罠カードを繰り出して希望皇ホープレイを守ろうとするが、IIIはアトランタルと共に託された罠カード『アンゴルモア』を発動させてその効果を無効にした。

 

しかし、遊馬は更なる罠カードで希望皇ホープレイと自身のライフポイントを何とかギリギリの所で守りきった。

 

遊馬は自分が危機的状況にも関わらず、IIIに何度も語りかけた。

 

良き友になれたはずなのにどうしてこんなことになってしまったのか、家族という大切なものを語り合いたかった。

 

その想いはIIIにようやく届いたが……既に遅く、事態は急変する事となる。

 

IIIが発動したアンゴルモアには強大な力が込められており、それはデュエルのみならず現実世界にまで影響を与える禁断の破滅のカードだった。

 

それは次元の扉を開き、この世界の全てを吸い込んで破滅に導くカードで、IIIの紋章の力でも制御する事が出来ない。

 

世界の破滅を止めるにはIIIにデュエルで勝つしか方法は無いが、アトランタルの力でIIIにダメージを与える事が出来ず、今の遊馬のフィールドと手札とデッキのカードでは対処法が無かった。

 

万事休すかと思ったが、遊馬はたった一つだけの可能性を思い付いた。

 

それは……遊馬とアストラルの合体による奇跡の力、ZEXAL。

 

ZEXALならなんとか出来るかもしれないが、アストラルは消滅してしまった……そんな時、この世界の破滅を望んでいないIIIはある方法を思い付いた。

 

紋章の力でアストラルが消滅したなら、紋章の力を遊馬に流し込めば何とかなるかもしれないと……だがそれは確率の低い余りにも危険な賭けでもある。

 

しかし、遊馬はその方法に全てを賭けた。

 

アストラルを取り戻す為と世界の破滅を防ぐ為、遊馬は覚悟を決めて手を伸ばし、IIIも覚悟を決めて頷いて手を伸ばす。

 

二人は手を重ね、IIIは遊馬に紋章の力を流し込んだ。

 

紋章の力が遊馬を呑み込もうとし、精神と肉体に多大なダメージを与え、体を蝕む激痛からの悲鳴を上げた。

 

しかし、アストラルを取り戻す為に遊馬はかっとビングを叫び、紋章の力を見事に掌握し、アストラルを求める魂の叫びを轟かせた。

 

紋章の力を遊馬が手にした事で皇の鍵の中で消滅したアストラルが飛行船の上で復活した。

 

すると、一馬が近づいてアストラルに声を掛けた。

 

「アストラル、俺の息子が呼んでいる。助けてやってくれ」

 

「あなたは……!?」

 

アストラルは行方不明だった一馬がいることに目を見開くほど驚き、何故ここにいるのか尋ねようとしたが、遊馬が助けを求めていることに気付き、急いで遊馬の元へ向かった。

 

「君の声が聞こえた……勝つぞ!」

 

皇の鍵から出現したアストラルは遊馬が自分を助けてくれた事と、自分を求めてくれた想いをしっかりと受け取り、優しい笑みを浮かべた。

 

「アストラル!お前、お前……全くいつも偉そうに!!」

 

遊馬はアストラルが復活した事に喜びの余り大粒の涙を流す。

 

IIIは無事にアストラルが復活した事に安心したが、紋章の力を失った事でアトランタルに囚われてしまった。

 

「遊馬、僕の事を気にしないで!早く、こいつを……!!」

 

「III!!!」

 

「遊馬、ZEXALだ!」

 

「おう!行くぜ、アストラル!俺は俺自身とお前でオーバーレイ!!俺たち二人でオーバーレイ・ネットワークを構築!!!」

 

「遠き二つの魂が交わる時、語り継ぐべき力が現れる!!」

 

「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!」」

 

遊馬とアストラルはZEXALへと合体し、初めてその姿を目にする小鳥たちは驚愕した。

 

ZEXALは右手を金色に輝かせ、新たにデッキトップを創造してシャイニング・ドローをする。

 

「「現れよ!『ZW - 不死鳥弩弓』!!」」

 

新たに創造したカードは一角獣皇槍に続く幻獣・フェニックスをモチーフとした第二のZW。

 

赤い粒子を放ちながら飛来した不死鳥弩弓は希望皇ホープレイと合体し、新たな武器となる不死鳥弩弓は巨大な弓・弩弓となる。

 

希望皇ホープレイは不死鳥弩弓に足を掛けて弦を両手で掴んで全身の力を込めて思いっきり引っ張り、第三と第四の腕で矢へと形を変えた大剣を番えた。

 

「「不死鳥炎舞撃(フェニックス・フィニッシュ)!!」」

 

放たれた不死鳥の炎の矢はアトランタルを貫き、その効果でIIIのライフポイントをゼロにし、デュエルに勝利した。

 

IIIにデュエルで勝利したことにより、アンゴルモアの効果は消え、開き掛けた次元の扉は消滅し、世界の破滅を防いだ。

 

ZEXALは合体を解除し、一安心するとIIIは何かに解放されたようなすっきりとした表情をしていた。

 

「君は僕の最初で最後の友達だ」

 

そして、IIIはようやく言う事が出来た遊馬を友として認めると同時に遊馬にある願いをした。

 

「遊馬、お願いがある。僕の家族を救ってくれないか?君なら、君のかっとビングならきっと……」

 

それは未だに復讐の中に囚われている父と兄達を救ってほしいというものだった。

 

まるで遺言のような頼みをするIIIはハートピースと2枚のナンバーズ、マシュ=マックとアトランタルを置き、背後に次元の歪みが現れるとその場から消えた。

 

遊馬は最後のハートピースを埋め込んで完成し、これでWDCの予選突破を決める事が出来た。

 

IIIの最後の願い……遊馬は友としてそれを聞き入れ、復讐者へと堕ちた者達と戦い、そして救う決意を決めるのだった。

 

 

 




今回もマシュ達の反応を書きました。

マシュ「まさか既に一度、遊馬君とアストラルさんが世界の破滅を救っていたなんて驚きでした」

ジャンヌ「既にこの時点で英雄と呼ぶに相応しいお方でしたか……流石としか言いようが無いですね」

レティシア「やっぱり遊馬はバカよ!IIIにあんな酷いことをされたのに、それを聞き入れるなんて……本当にバカでお人好しよ!!」

清姫「旦那様に対するアストラルさんと小鳥さんのイチャイチャっぷりが話を重ねる毎に段々と上がっていることにも嫉妬しますが、男女問わず少しずつ旦那様に惹かれていくのも嫉妬しますね……」

ブーディカ「ユウマはアストラルやコトリだけじゃない、沢山の人から愛され、支えられているんだね」

アタランテ「彼らの持つ復讐心……どれも尋常では無かった。子供達が何故、ああなってしまったのか……」

ネロ「ユウマの未来を信じて歩く姿は良いな。しかし、コトリとアストラルの嫁力の高さが凄まじいな……」

武蔵「いやー、姉として弟の成長物語を見るのは格別だね!でも……遊馬って本当に13歳?」

桜「お兄ちゃんがかっとビングを失ったらあんな風に弱くなっちゃうなんて……やっぱりかっとビングって凄いんだね」

ジャック「私達を救ってくれたかっとビング……本当に凄いんだね……」

エルメロイII世「マスターの世界の人間は一体全体どうなっている……?魔術師でもないのに摩訶不思議な異能者が多すぎるだろう……」

マルタ「カイトのたった一人の弟、ハルトを救う為に自分の全て懸けて戦う姿……胸が打たれたわ」

エドモン「レティシアと同意見だが、お人好しにも程がある。自分やアストラルの事で充分なのに、どうして他人を助けようとする、他人の願いを聞き入れるのか……」

天草「全くですね……ですがそれがマスターの良いところなのでしょう……」

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