ZEXAL編第一部最終回です!
WDC決勝からカイトのデュエルまで名言とか多すぎて大変でした。
DVDを借りて何度も見直して……早くZEXALの再放送、もしくはネット配信をしてもらいたいです。
こうして見るとやっぱりZEXALは好きだなと改めて感じました。
先日、プリズマ☆ファンタズマを見てきました!
ネタバレはしませんが、桜ちゃんが可愛くて満足しました!
早くイリヤと美遊とクロエの三人を早く我がカルデアに迎えたいですね。
激戦と波乱のWDCの予選を無事に突破した遊馬とアストラル。
大会運営より、WDC決勝大会の前夜祭が行われ、遊馬達は正装で訪れた。
遊馬はイメージカラーである赤のタキシードを着ており、その姿を見てレティシアは思った。
「遊馬……」
「何だよ、レティシア」
「あんた……タキシード姿似合ってないわね……」
「うるせぇ、ほっとけ!」
まだ13歳で幼さが残るためかタキシードがあまり似合ってなかったのでレティシアにダメ出しされ、遊馬はそっぽを向く。
「やっぱ、遊馬はいつもの格好が一番ね」
「そうですね、活発的な遊馬君の一番似合う服はそれしかないですね」
レティシアとジャンヌは遊馬の似合う服はやはりいつものTシャツと白ズボンに赤のパーカーが一番だと感じた。
前夜祭のパーティーに向かおうとしたが、遊馬がうっかり招待状を忘れて入れないというトラブルが起きてしまった。
しかし、そこにゴーシュが現れて遊馬達の入場が認められ、無事にパーティー会場に入ることができた。
パーティー会場に入るとそこには予選を勝ち抜いたツワモノ揃いのデュエリストが沢山おり、その中には凌牙にカイトやⅣや長髪の青年もいた。
しかし、先日遊馬と激闘を繰り広げた末に絆を結び、既に予選を突破しているはずのIIIの姿が何処にも見当たらなかった。
それからしばらくしてWDCの主催者であるMr.ハートランドが参加者の前に現れて挨拶をするが、すぐさま会場の照明が消えると同時に笑い声が響き渡る。
そこに現れたのはWDC予選突破者の一人……仮面を被った謎の少年、トロン。
「おじさん、あなた達のこと……ぶっ潰してあげる。ハハハハハッ!!!」
トロンは不気味な雰囲気を漂わせながら笑みを浮かべ、Mr.ハートランドに対して宣戦布告をする。
更には近くにいた遊馬にも決勝で会おうと声を掛けるが、その視線はアストラルにも向けられていた……。
「……あの子供、ただの子供ではない……強い邪悪な意志を感じる……」
「それだけではない。あいつからヒシヒシと感じるぞ、復讐に満ちた憎悪を!」
アタランテはトロンがただの子供ではないと一目で見抜き、またエドモンはトロンに復讐心が宿っていると察知した。
遊馬は会場を少し離れるとそこで、カイトと再会した。
全力で戦い合うと強気の姿勢を見せる遊馬だが、カイトが意識を向けているのはアストラルの方だけ。
しかし、遊馬は全力でカイトと戦うことを望んでいた。
そして、翌日……遂にWDCの決勝大会が始まる。
1万人以上のデュエリストから、決勝大会に進出したのは遊馬達を含めてたったの23人。
世界中が注目するだけあって、ハートランドシティの住民や日本中、果てには世界から大勢観客が来ており、観客席は超満員だった。
試合会場には、23台のジェットコースターが用意されていた。
その名は『デュエル・コースター』。
23人のデュエリストたちはそれに乗り込んでデュエルを行うことになる。
デュエル・コースターの起動にはハートピースが必要だが、遊馬はもはやうっかりの極みでそれを忘れてしまっていた……。
「……今更だけど、今度から特異点に向かう時には必ず遊馬の持ち物をチェックしましょう」
「そうだね。流石にこれはちょっとね……」
今まで特に忘れ物をしなかったので気にしていなかったが、遊馬がこれほど大切なイベントや決勝大会で重要なものを連日続けて忘れているのでオルガマリーとロマニは今度から持ち物チェックを必ず行おうと強く誓った。
ハートピースが無く焦る遊馬を尻目に、22台のコースターが一斉スタートしてしまった。
一方で、遊馬のハートピースは九十九家の自室で発見された。
明里はバイクに乗って試合会場に向かい、ナンバーズ・クラブの小鳥たちは遊馬の為にある作戦を開始する。
その作戦は小鳥たちがハートピースを投げ渡していくというもので、仲間たちの連携により最後に小鳥がキャッチして全力で遊馬の元へ向かった。
しかし、デュエル・コースターに着く直前に小鳥は躓いてしまい、既に着席していた遊馬の膝に乗った状態でハートピースがハート型の穴にセットされ、小鳥を乗せたままデュエル・コースターが起動して勢い良く発進してしまった。
「「「何故(ですか)!??」」」
本来なら遊馬一人で発進するはずのデュエル・コースターが小鳥を乗せて進んでしまったのか……マシュ達は何故こんなことになったのか全く理解ができなかった。
最早偶然に偶然が重なった結果としか言いようがなかった。
「もしかして、小鳥って幸運がかなり高いのかしら?」
「今まで危険な目にあっても特に大きな怪我はしてないし、何だかんだでマスターと一緒にいるし……ありえるかもね」
女神で幸運のランクがEXのステンノとエウリュアレは遊馬と行動を共にする小鳥のこれまでの経緯を見て、実は一般人とはかけ離れたかなりの幸運の持ち主ではと考えた。
事実、デュエル・コースターは小鳥を乗せたままレールの上を進み、主催者のMr.ハートランドも面白そうと思ったのか主催者権限で独断で許可してしまい、遊馬はアストラルと小鳥の3人で決勝大会を戦うことになった。
何だかんだで遊馬と一緒にデュエル・コースターを乗ることになった小鳥を見てネロと清姫は抗議に向かった。
「コトリよ!お主は観客席ではなくユウマを側で応援する為にワザと転んだな!??これが嫁としての行動力……何て恐ろしい娘なのだ!!」
「ち、違いますよ!本当に躓いただけで偶然ですよ!!」
「あざとい、あざといですよ、小鳥さん!そこまでして旦那様と一緒にいるなんて!!しかも膝の上に乗るなんて……羨ましいです!!」
「誤解ですって!だからそんな怖い蛇の目で睨みつけないでください!!」
ハートピースを届けようとして偶然転んでしまったのに何故自分がここまで言われなければならないのかと小鳥は涙目になりながら必死に弁明した。
デュエル・コースターでは通常のデュエルとは異なり、かなり特別なルールが設けられており、複数あるレーンのうち、同じレーンを走ればデュエルを行うことが出来る。
そしてデュエルで敗者となったデュエリストのデュエル・コースターはレーンから外れ、デュエリストも席から強制射出されてしまう。
また、走行するレーンは自由に変えることは出来るが、一歩間違えれば大怪我は免れないリスクもある為、冷静かつ的確に判断しなければならない。
既に前方では多くのデュエルが行われ、脱落者が続出する。
遊馬も対戦相手を探そうとするが、そこに『フォール・ガイズ』と呼ばれるデュエルの裏世界でそれなりに名高い3人が待ち伏せしていたのだ。
驚くことに遊馬を脱落させる為に誰かに金で雇われて3人がかりで襲ってきた。
振り切ろうとする遊馬だが、その前方には『T』の文字が表示された大きなカードが現れた。
それは罠カード『仕込みマシンガン』で遊馬のライフポイントにダメージが与えられた。
デュエル・コースターの特別ルールでレーンのあちこちに様々な魔法・罠カードがセットされており、通過した際にその効果が発動する。
今回は罠カードが設置された場所を通過した為に、遊馬はその効果を受けることになってしまう。
フォール・ガイズはフォーメーションを組み、遊馬にデュエルを挑んできた。
1対3の圧倒的不利な状況でデュエルを行うこととなり、フォール・ガイズは共通効果を持つマグネットモンスターを操り、破壊された時に他のマグネットモンスターの攻撃力を上昇させる効果がある。
ゴーシュとドロワの時以上に不利なデュエルを強いられ、絶体絶命のピンチに陥ってしまった……その時!
「爆走特急ロケット・アローで攻撃!!!」
ロケットのような形をした巨大な列車が現れてフォール・ガイズのモンスターが破壊され、遊馬とフォール・ガイズのデュエルに乱入者が現れた。
「俺が力を貸すぜ、遊馬!」
「ア、アンナァ!?」
それは先日、遊馬とデュエルを行った少女・神月アンナだった。
彼女はWDCの出場資格が無いはずだが、何故かデュエル・コースターに乗り込んで遊馬に助太刀する。
事情は後で聞くことにし、急遽遊馬とアンナの二人でフォール・ガイズとデュエルを行うが、今度はアンナがピンチとなり、助けてもらった礼に遊馬が助太刀する。
「よけーなことすんな!あんな奴にやられる俺じゃねえ!」
「も~!助けてもらったくせにぃ!」
「先に助けたのはこっちだ!」
「ぐぬぬ……」
「ああ。ありがとな、アンナ!」
「え!?い、いや、褒めてもらいたいわけじゃ……エヘヘッ……」
「めっちゃ喜んでるし!」
遊馬に感謝され、頬を染めながらめちゃくちゃ喜んでいるアンナ。
その姿にマシュ達は気付いてしまった。
アンナは勘違いから遊馬にデュエルを挑んで結局好意を抱いていたのは別人だった訳だが……どうやらあのデュエルでアンナは遊馬に好意を抱いてしまったようだった。
「ギャハハハ!やるじゃねえか、マスターちゃんよ!たったあれだけの時間であんなに可愛いオレっ娘の巨乳のお嬢ちゃんを堕とすなんてよ!」
「全くだ、前から思っていたが本当に将来有望な女誑しマスターだぜ!色々と楽しませてくれるな!」
遊馬の無自覚天然女誑しにアンリマユとクー・フーリンは大笑いしながら楽しんでいた。
「やはりマスターはうちのシロウと同じ……いや、もしかしたらそれ以上の女誑しですね」
「まさかマスターがこれほど酷い女誑しとは……末恐ろしい」
「僅か十三の歳で……将来が不安だな」
「それに加えてこのカルデアにもマスターに惹かれている子は沢山いるし……もう修羅場どころじゃないわね」
「マスターさん、大丈夫でしょうか……幼い頃の私もこの前お嫁さんになるって宣言していたので……」
アルトリア、オルタ、ランサー・アルトリア・オルタ、イシュタル、パールヴァティーは遊馬はこれから女性関係で大丈夫なのかどうか心配になって不安になる。
そして、サーヴァントの中で遊馬と同等の無自覚天然女誑しと言われているエミヤは一筋の涙を流しながら呟く。
「マスター……私の知人はこう言っていた。『女は魔物だ!』と……これから何が起きるか想像も出来ないが、死ぬな、負けるな……マスター……!!」
エミヤも女性関係で色々大変だが、遊馬が13歳でこれだけ大変な目にあっているので応援せずにはいられなかった。
フォール・ガイズは一番上の兄であるウルフを守るため、そして遊馬を脱落させる為に他の二人は犠牲になっていく。
再び訪れた遊馬の危機的大ピンチ……だが、ここで二人目の乱入者が現れた。
「ノリが悪いな、遊馬!!!」
「ゴ、ゴーシュ!??」
それはゴーシュで、遊馬を脱落させない為に助太刀に現れ、これでデュエルは3対3のフェアな戦いとなる。
ウルフを倒す為にアストラルはある提案をする。
それは遊馬とアンナとゴーシュの3人の力を一つに合わせること……それぞれのフィールドにはレベル4のモンスターが一体ずつ。
3人のモンスターをオーバーレイし、『隻眼のスキル・ゲイナー』をエクシーズ召喚し、一気に攻め立てる。
形勢は逆転し、フォール・ガイズのウルフ以外の二人を倒した。
ウルフはレーンを変えて逃走し、ひとまず危機は脱した。
アンナが何故WDCに参戦しているかというと、決勝進出者の一人を縛り上げてハートピースを奪ったらしい……。
何故そんなことをしたのか問うと……。
「だって、お前に会いたか──」
「何だあれは!?」
勝利を喜ぶのも束の間、ウルフがレーンを逆走して戻って来た。
ウルフは切り札の『超電磁竜マグネドラゴン』で遊馬にダイレクトアタックをしようとしたが、アンナがダイレクトアタックを引き受けるモンスターを呼び出して身代わりとなった。
アンナは脱落し、席から強制射出してしまうが、飛行形態のフライングランチャーが飛んで来てアンナを乗せる。
「こうなりゃ、正真正銘のダイレクトアタックだ!!!」
意地でも遊馬を倒す為にウルフはデュエル・コースターをぶつけて脱線させようとした。
しかし、それよりも早く遊馬がスキル・ゲイナーで攻撃し、マグネドラゴンを破壊してウルフを脱落させる。
フォール・ガイズを全員脱落させ、これで遊馬への危機は去った。
アンナはフライングランチャーで遊馬に近付き、エールを送る。
「信じてるからな、負けんじゃねーぞ。あばよ、絶対優勝しろよな~」
アンナは遊馬への勝利を信じ、レーンから離れた。
23人のデュエリストの大半が脱落し、デュエル・コースターによる決勝戦のパークセクションが終わり、次のステージへと突入する。
決勝戦・地下セクション……地下に潜った遊馬達は生き残る為に互いに激しい攻防を繰り広げる。
そして、最後に生き残ったのは遊馬を含めて8人。
この先は4つのステージへと別れており、1つのステージで2人がデュエルを行い、最後の4人が決勝トーナメントの準決勝に進出する。
その8人は遊馬、凌牙、カイト、ドロワ、ゴーシュ、トロン、Ⅳ、V。
四つのステージでデュエルが行われ、それぞれ特別な効果があるフィールド魔法が展開されている。
まず最初に『ジャングル・ステージ』でデュエルを行なったのはドロワとトロン。
ドロワは前夜祭で感じたトロンへの異常さや恐怖からカイトと戦わせない為にデュエルを挑んでいた。
それはMr.ハートランドの指示でも忠誠心からでも無い、全てはカイトの為だった。
何故なら……。
「私は、彼を愛している」
ドロワはハルトの為に誰にもすがらずに己の全てをかけて戦い続けるカイトを愛しており、彼の為にデュエルをしているのだ。
ドロワは万全の対策を取ってトロンを追い詰めるが、それを嘲笑うかのようにトロンのナンバーズ……『No.8 紋章王ゲノム・ヘリター』をエクシーズ召喚し、ドロワのフォトン・バタフライ・アサシンの名と効果と力の全てを奪い、形成を逆転させた。
トロンは自分に歯向かった報いを受けさせるためか、紋章の力を使ってIIIが遊馬にしたようにドロワのカイトへの想いや記憶を奪い始めた。
遊馬の必死の言葉で辛うじて意識を保ったドロワは自分のライフポイントを賭け、相打ち覚悟でトロンを倒そうとしたが……一歩及ばずにドロワは敗北してしまった。
そして、敗者の末路と言わんばかりにトロンの紋章の力でドロワからカイトへの想いや記憶の全てが奪われて行く。
だが、ドロワにはカイトに伝えたい想いがある。
それを駆け寄って支えてくれている遊馬に託した。
「カイトに伝えて……私を、覚えておいて……」
その言葉を最後にドロワは魂を抜かれたように意識が失った。
トロンのあまりにも卑劣なやり方に、遊馬の怒りが込み上げてくるのだった。
そして、それはこの場にいるほぼ全ての女性陣にとっても同じことだった。
愛する人への大切な想いと記憶を奪う……それを平然と楽しそうに行ったトロンに既に怒りが爆発しかけていた。
拳を強く握りしめて己を抑えていた。
魂を奪われ、意識を失ったドロワをWDCの職員に任せ、遊馬と小鳥はデュエル・コースターに乗って次のステージに向かう。
するとそこにカイトを心配して飛んできたオービタル7がデュエル・コースターの席に割り込み、そのままカイトのいるステージまで向かうことにした。
次のステージ、『スペース・フィールド』に到着すると既にカイトと長髪の男・Vがデュエルをしていた。
早速遊馬はドロワがトロンにやられてしまったこと、そして……ドロワの想いを伝えるが、カイトは自分には関係無いと一蹴してしまう。
カイトの態度に思わず掴みかかる遊馬だったが、Vに声を掛けられる。
遊馬はVにも聞きたいことがあると意識はそちらに向けられた。
Vはこの場に遊馬とカイト……このWDCの戦いに導かれて集った者達に運命を感じ、自分だけが知る真実を語り出す。
Ⅴ達家族が何故このWDCに現れて暗躍を始めたのか……そしてカイトとハルトに……否、二人の父・Dr.フェイカーに復讐しようとしている理由を。
「Dr.フェイカーが、カイトとハルトの父親ですって!??」
薄々気づいている者も何人かいたが、その事実にレティシア達は驚愕する。
全ての始まりは今から5年前。
科学者であるVの父・バイロンとDr.フェイカーは、異世界の扉を発見する研究を続けていた。
だが、あと一歩のところでその場所を特定することが出来ず、Dr.フェイカーは焦っていた。
そんはDr.フェイカーにバイロンは冒険家の一馬を紹介した。
一馬は冒険家だけではなく、大学の講師をしており、考古学など様々な分野で優秀な学者でもあったのだ。
Dr.フェイカーは一馬に金や名声などの下心が無いことを確認し、自らの意見を語った。
異世界への扉が出現したことにより、世界中の21ヶ所の地点で異常データが観測されており、これを分析すれば次に出現する場所が特定出来るはず……それが21次元方程式と呼ばれるものだ。
しかし、一馬はあと2ヶ所の出現場所があるとし、23次元方程式を提唱したのだ。
一馬の考えから、次に出現されるだろう異世界への扉の場所を割り出し、一馬のガイドのもと、早速調査を行うことになった。
それから数日経過し、一馬達はとある遺跡に辿り着いた。
この先に異世界への扉があるはず……様々な罠を潜り抜け、ついにその場所を発見したが、そこは行き止まりになっていた。
足元に何かの文章が刻まれて一馬とバイロンは理解出来なかったが、Dr.フェイカーだけは解読が出来ていた。
「二つの魂を捧げる時、大いなる扉が開かれる」
突如、部屋の空間が赤い粒子に包まれて床が扉となって開き、そこは異世界への扉となっており、二人は底が見えない異世界と言う名の奈落の底へと落ちそうになる。
二つの魂とは一馬とバイロン……Dr.フェイカーは二人の魂を生贄に、自らの望みを叶えようとしていたのだ。
そして、バイロンはDr.フェイカーへの恨みを叫びながら、一馬と共に異世界の狭間へと落ちて消えてしまった。
「遊馬君のお父さんが……なんて事を……!」
「フォウ……!!」
一馬が行方不明になった原因にマシュとフォウは怒りで震えており、遊馬を慕う他の者達も怒りを募らせていた。
それから長い時間が経過し、バイロンは異世界からこの世界に戻って来た。
しかし、Dr.フェイカーへの復讐だけを心の支えとし、代償としてその姿は変わり果ててしまった。
バイロンの今の姿……それは顔を仮面で隠し、子供の姿となってしまった……。
そう……トロンこそ、V達の父親、バイロンだったのだ。
全ての元凶、因縁はDr.フェイカー……だからこそ、Ⅴ達はその報いを必ず受けてもらうと行動しているのだ。
「そういう事か。この俺と同じように復讐者となって異世界から帰還したという事か……愛する我が子達も巻き込んでか……」
かつて全てを奪われて復讐を誓い、壮絶なる復讐を起こしたエドモンは同じ復讐者としてトロンに親近感を抱いた。
カイトにとってDr.フェイカーの行いは興味は無く、自分にあるのはハルトへの想いのみだった。
カイトは銀河眼の光子竜を召喚し、既にVがエクシーズ召喚した『No.9 天蓋星ダイソン・スフィア』を攻撃するが、その攻撃は届かなかった。
動揺するカイトの前に、遂にダイソン・スフィアのその姿を現した。
それは太陽も覆い隠す、デュエルモンスターズ史上最大の大きさを誇る、超巨大モンスターだった。
Vはカイトのデュエルを手に取るように理解し、優位に立っていた。
何故なら、Vはカイトにデュエルを教えた師匠だったのだ。
三年前……突如、父のバイロンがいなくなったことで家族はバラバラになってしまった。
ⅣとIIIは施設に引き取られ、Vはバイロンが行方不明となった事件の真相を知るためにDr.フェイカーのもとに残った。
そんな時にVはカイトとハルトと出会い、Vは二人に自らの兄弟を重ねていた。
弟を守るために強くなりたいと願うカイトに Vはデュエルを教えたのだ。
倒れたカイトに声を掛ける遊馬。
そんな遊馬の姿にVは意外だと感じていた。
カイトが一馬を裏切ったDr.フェイカーの息子で、同時にナンバーズ・ハンターでもある。
カイトが生き延びるということは、遊馬もいずれナンバーズと魂を狩られるかもしれないと言う事だ。
しかし、遊馬にとってカイトは敵ではなく、一度デュエルしたカイトは仲間であると同時に目標だった。
仲間を大切にすると言う、遊馬の真っ直ぐな心にVはかつての一馬の面影を感じた。
しかし、VはやはりDr.フェイカーと、その息子であるカイトを許すことはどうしても出来なかった。
敗北寸前のカイトに、今度はⅤが声を掛ける。
ナンバーズ・ハンターの使命とハルト……その全ての苦しみはここで解放されると。
それがVが掛けられる、最後の情けだが……カイトにとってハルトは苦しみではない。
むしろ逆でハルトは希望を与え続けてくれる生き甲斐なのだ。
満身創痍でありながらも、カイトは再び立ち上がった。
そして、運命のラストドロー……そのカードはカイトに勝利を齎す希望のカードだった。
「魔法カード……『未来への思い』を発動!!」
それは手紙が入った瓶が星空の輝く海に漂うイラストのカードで、Vすら知らないカードだった。
それもそのはず……このカードは人生でたった一枚、父……Dr.フェイカーから貰ったもので、これまで一度も使ったことがないのだ。
父親を憎むカイトが、そんなカードをデッキに入れているはずがない。
そう考えるVだが、遊馬にはカイトの想いが理解出来た。
「当たり前だろ、そんな事!誰だって家族は守りたい!あんた達が家族を守ろうとするようにな!だから、カイトもそのカードを持っていたんだ!自分の家族にだって、希望があるって!!だから、カイトは……!!」
「黙れ!お前に、俺の気持ちを代弁してもらうつもりはない!」
遊馬の言葉がカイトの心をそのまま表しているようで、図星同然だったようだ。
未来への思いはカイトのハルトを守りたい思い、そしてDr.フェイカーを信じたいという強い思いが込められていた。
未来への思いの効果で墓地からレベルの異なるモンスター三体を攻撃力0の状態で復活させるが、このターンにエクシーズ召喚をしなければカイトのライフポイントが一気にゼロになってしまう。
カイトはフィールドに呼び出した銀河眼の光子竜を含む三体のモンスターのレベルを統一させる魔法カードを発動し、これでレベル8のモンスターが三体揃った。
そして、ハルトとの兄弟の絆の証である切り札、超銀河眼の光子龍をエクシーズ召喚し、鉄壁と思われたダイソン・スフィアの効果を無効にし、更にオーバーレイ・ユニットを吸収してその攻撃力を高めた。
カイトは師匠であるVを越える時が来た……その興奮を胸に超銀河眼の光子龍でダイソン・スフィアを破壊し、Vを倒した。
Ⅴは父を、トロンを救いたかった。
だが、戻ってきたトロンの心はDr.フェイカーへの復讐に取り付かれていていた。
復讐の先にあるのは空しさだけ……Vはそれを分かっていながらもトロンを止めることが出来なかった。
それが親子というものだと納得しようとしたVだが、カイトはそれを否定。
カイトは親に抗うために戦っている。
いつかハルトの件が解決したとき、Dr.フェイカーと決着をつけるために。
カイトはVの想いを受け継ぎ、トロンと決着をつける決意をしていた。
Ⅴはそんなカイトの強さを感じ、満足そうな表情を浮かべてダイソン・スフィアのカードを残して消えていった。
カイトはダイソン・スフィアのカードを回収し、オービタル7を飛行形態にして飛び去った。
「彼ら二人が動き出した時、私はこの世界に送り込まれた。ならば、それがアストラル世界にいる君の父親の意思」
アストラルは遊馬と力を合わせ、Dr.フェイカーとトロンを止める為にこの世界に送り込まれたと考える。
「やってやる、やってやるぜ!俺もガツンと言ってやる!自分勝手な大人達に!!」
遊馬はアストラルと出会った意味を感じ、自分勝手な大人達……Dr.フェイカーとトロンを止めると誓った。
カイトとVのデュエルを見届け、スペースフィールドを出た遊馬たち。
アストラルは紋章の力を感じ、トロンがいるかもしれないと力を感じる先へと進んで辿り着いた場所にいたのは凌牙とⅣだった。
次のステージは灼熱の溶岩が広がるマグマフィールド。
ここでは、凌牙とⅣのデュエルが行われていた。
マグマフィールドに展開されているフィールド魔法の『マグマ・オーシャン』は、水属性モンスターを召喚したときにそれを破壊する効果を持ち、水属性デッキの凌牙には圧倒的不利なデュエルだった。
しかし、凌牙はそれを見越して水属性モンスターの効果破壊を守るカードを発動していた。
アストラルは凌牙がこの一戦に賭ける意気込みを感じていた。
実際に凌牙は例えどんな手を使ってもⅣを倒す……それほどの決意を持って挑んでいた。
凌牙は海咬龍シャーク・ドレイクをエクシーズ召喚するが、シャーク・ドレイクは元々はIIIが所有していたモンスターでⅣはとても驚いていた。
それを凌牙に渡すよう仕向けたのは、幻影として現れたトロンだった。
トロンはⅣの苦戦をおちょくると、Ⅳの怒りが爆発し、Ⅳは自らの使命を口にし出した。
それは……凌牙を心の闇の中に落とすこと。
そのために凌牙を大会で罠にはめ、更には凌牙の妹に大怪我を負わせたのだ。
遂に真実を知ったシャーク。
怒りを露わにする凌牙と遊馬達の前に、トロンが現れた。
アストラルはトロンに何が目的か問うと、トロンは正直に答える。
トロンの目的……それは凌牙を操り、Dr.フェイカーの刺客とするためだった。
Ⅳは反発するが、トロンはDr.フェイカーを倒すにはⅣよりも凌牙の方が適任だと考えていたのだ。
Ⅳは怒りのままNo.40 ギミック・パペット - ヘブンズ・ストリングスをエクシーズ召喚し、装備魔法の効果で脅威の8回連続攻撃を喰らわせた。
その連続攻撃に凌牙は大ダメージを与えられ、あまりにも悲惨な光景に怒りを露わにする遊馬。
トロンは遊馬を黙らせるために紋章の力で鎖を生み出して縛り、身動きを取れなくなってしまった。
それでも遊馬はデュエルを人を幸せにするもの、皆が仲間に、友達になれると豪語する。
そんな遊馬の言葉にトロンは一馬を連想させて言葉を掛けた。
恨むなら一馬を奪ったDr.フェイカーを恨めと囁くトロンだが……トロンはドロワを苦しめ、ⅢやⅤを復讐の道具にした張本人。
遊馬はトロンを絶対に許すわけにはいかず、その囁きには乗らなかったが、遊馬の中に闇が生まれつつあった。
一方、追い詰められた凌牙に悪魔の囁きが訪れた。
それはシャーク・ドレイクの声だった。
自らを受け入れ一つになれと迫るシャーク・ドレイクだが、凌牙はそれを拒否する。
もうナンバーズに取り込まれる気など無いのだと正気を取り戻し、立ち上がった凌牙は永続魔法『異次元海溝』で発動し、シャーク・ドレイクを除外した。
シャークの判断は賢明だが、唯一の切り札を失ったことになる。
Ⅳはトロンの為にも凌牙を倒そうと意気込むが、トロンの態度は冷たく、Ⅳを信頼していなかった。
何故なら、友であるDr.フェイカーに裏切られた今のトロンが信じられるのは自分自身と、異世界で彷徨った際にその命を助けてくれた者たちのいるバリアン世界だけだった。
Ⅳは勝つ為の最後の切り札を呼び出し、現れたのは『No.88 ギミック・パペット - デステニー・レオ』。
デステニー・レオはオーバーレイ・ユニットが全て無くなった時に特殊勝利を発動させる強力なモンスターエクシーズ。
次にⅣのターンが来れば、そこで勝利が確定するということだ。
復讐の相手であるⅣに、一矢も報いぬまま負ける……追い詰められた凌牙にトロンが助言した。
「シャーク・ドレイクが呼んでいる」
勝つためにはシャーク・ドレイクを呼び戻し、一つになるしかない。
そうすれば全てが叶えられると。
Ⅳとトロンを倒し、復讐を成し遂げる……妹を傷付けられた日から、復讐に全てを捧げてきた。
それが叶えられるなら、例え悪魔にこの身を奪われても構わない……!
遊馬は何度も必死に声をかけるが、勝ち続けるための力を得ることを凌牙は決意した。
異次元海溝を破壊し、これにより除外されていたシャーク・ドレイクがフィールドに復活した。
シャーク・ドレイクを呼び戻すための布石は予め、用意されていた。
凌牙は何度も拒否しながらも、ナンバーズの誘惑を断ち切ることが出来ていなかったのだ。
「俺が新たな力を手に入れるのはここからだ。復讐を遂げる為、全てを受け入れる!さあ、シャーク・ドレイクよ!俺の望みを受け入れ、進化せよ!俺は海咬龍シャーク・ドレイクをカオス・エクシーズ・チェンジ!!」
復讐を遂げるため、全てを受け入れる……凌牙の体が紫色に輝き、新たな力を顕現させる。
シャーク・ドレイクが変形前へと戻ると、天に昇って光の爆発を起こす。
「現れよ!『CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!!」
そして、現れたのは純白に輝き、鋭利な爪を携えた巨大な鮫……それは遊馬とアストラルだけが所有している希望皇ホープレイに続く新たなカオス・ナンバーズだった。
何故凌牙がカオス・ナンバーズを作りだせたのか遊馬とアストラルは驚きを隠せずにいた。
シャーク・ドレイク・バイスの効果でデステニー・レオの攻撃力は下がり、そして……復讐を遂げる最後の一撃でデステニー・レオを貫き、凌牙はⅣに勝利した。
凌牙の覚醒に満足した様子のトロンは姿を消し、一方で敗北したⅣは意外にも素直に謝罪した。
Ⅳは帰って来た父を、トロンを止めることが出来なかった。
数年前、トロンに命じられるまま凌牙の妹とデュエルをし、渡されたカードを使った。
しかしそのカードは炎の竜巻を実体化する危険な力を秘めたカードで大火災が起きてしまった。
Ⅳは妹を傷付けるつもりはなく、その際にⅣは顔の右半分に大きな十字傷を付けながらも必死に助けようとしていた。
だがシャークを罠にはめ、妹を意識不明の重体にまで追い込んでしまったことに変わりはない。
Ⅳはその事を深く責任を感じていた。
恨むなら自分だけを、その代わりにトロンを……父を救ってほしい。
そして、兄と弟と共にあなたの帰りを待っていると伝えて欲しい……それがⅣの最後の願いだった。
Ⅳの言うことが真実であれば凌牙の復讐心は全てトロンに向けられる。
新たな復讐心を胸に去っていく凌牙に悲しい視線を送る遊馬。
復讐の対象が変わっただけで、結局は何も変わらない。
「シャーク……デュエルで復讐や恨みを晴らしたって、誰も幸せになんかなれない。デュエルは……デュエルは……」
デュエルは復讐の道具ではない……そう信じる遊馬だが、今は凌牙たちを止めることは出来ない。
「遊馬。今は君が信じる道を貫け。君が正しければ、必ず道は開ける」
アストラルは遊馬を今出来ることをやるしかないと励ます。
「ああ、やってやる……どんな道でも切り開いてやる!!」
遊馬は自分の道を貫き、切り開くために自分のデュエルフィールドへと向かう。
「復讐が復讐を招くか……復讐の連鎖がこれほど複雑に絡み合っているとはな……」
エドモンは凌牙とトロンの復讐心がこれほどの多くの悲劇を生み出している事に溜息をついた。
「ふざけるな!!……あれだけ貴様の身を案じ、全てを犠牲にした我が子達を復讐の道具として使い簡単に切り捨て、更には関係ない兄妹を追い詰めるなんて……良いだろう、私が貴様に引導を与えてやる!!」
一方、アタランテはトロンの非情な復讐に怒りが爆発し掛け、その身に闇を纏ってオルタ化しそうになっていた。
「ア、アタランテ!??ジャック、アタランテを止めてくれ!」
「う、うん!えっと……アタランテ、落ち着いて?」
ジャックは立ち上がろうとしたアタランテの膝にちょこんと乗り、体がより密着したことでアタランテは非常に驚いて思わず闇が消え去った。
「ジャ、ジャック!?」
「アタランテ、落ち着けって!とりあえずこのまま見てろって!」
「しょ、承知した……ジャック、このまま座ってもらって良いか?」
「うん、いいよ」
アタランテは膝に乗ったジャックを抱きしめて頭を撫で撫でして至福の時を味わい始めた。
今後アタランテが暴走し掛けた時には子供達とスキンシップをさせた方が有効だった。
三つのデュエルが終わり、最後のデュエルフィールドへと向かう遊馬達。
辿り着いたのは果てしなく続く荒野でまるでアメリカの西部開拓時代を連想させるフィールド、『デンジャラス・キャニオン』。
そこで待ち受けていたのはゴーシュだった。
決勝トーナメントに進出する最後のデュエルが始まる。
デンジャラス・キャニオンはモンスターを攻撃表示で召喚した時と攻撃する時にそのプレイヤーは200ポイントのダメージを受ける。
だがこのフィールドは今の遊馬にとって致命的過ぎる効果だった。
何故なら遊馬はここに来るまでに運悪く多くの罠カードを通過してライフポイントが100にまで追い詰められてしまったのだ。
ゴーシュは効果ダメージを気にも留めずに『H・C ガーンデーヴァ』をエクシーズ召喚し、デュエルにかける強い気迫に満ちていた。
遊馬は残りライフとフィールド魔法の効果でまともにデュエルを行うことができず弱気になるが……。
ここでゴーシュは罠カード『ヒロイック・ギフト』を発動した。
その効果は相手のライフが2000以下のとき、ライフポイントを4000にして自分はカードを2枚ドローするものだった。
「あいつ……まさか遊馬と本気で戦うために……?」
敵に塩を送る行為の戦術はレティシアは唖然とした。
ゴーシュは遊馬のライフポイントを回復させ、万全で本気の遊馬と戦いたいからこその行動だった。
ライフが回復したものの、遊馬はモンスターを裏守備表示でセットしてターンエンドしてしまった。
遊馬は守りに徹するが、ダメージを恐れずに攻め続けるゴーシュに突破されてしまい大ダメージを受けてしまう。
いつもと違う遊馬の異変に、アストラルは気付いていた。
勝つことに慎重になり、デュエルを怖がっていた。
カイトや凌牙のデュエルを見て、無意識のうちにデュエルに対する恐れが生まれてしまったのだと……。
遊馬は否定するものの、どこか自覚していた。
遊馬はガガガモンスターのモンスターエクシーズ、『ガガガガンマン』を守備表示で特殊召喚し、その効果でゴーシュに800ポイントのダメージを与える。
デュエルの戦術の一つとしてはバトルが終わった後に次のターンに備えるなど間違ってはおらず、寧ろ有効な一手とも言える。
しかし、遊馬のデュエルにゴーシュは怒りを露わにする。
「俺はお前と……お前とこんなつまらねえデュエルをしたかった訳じゃねえ!!」
ゴーシュの本気の叫びに遊馬はハッとなる。
ゴーシュがレベル4のモンスター3体分でエクシーズ召喚したの日本神話の武神をモチーフにしたモンスター、『H・C クサナギ』。
「さあ、来い!俺を倒したければ、本当のお前の!お前自身のデュエルでかかって来い!それこそがデュエルってもんだろ!!」
ゴーシュの言葉に遊馬はようやく気付いた。
ゴーシュはどんな時だって自分のデュエルを通してきたが、今の遊馬は自分のデュエルを行ってはいない。
ようやく過ちに気付いた遊馬は小鳥をコースターから降りてもらい、自分の全てを賭けてゴーシュとのデュエルに挑む。
「絶対に勝って、迎えに来るんだぞ!頑張れー!遊馬ー!」
小鳥は遊馬を応援した見送った。
小鳥が席を離れたことで、アストラルは遊馬の隣に座る。
「遊馬。カイトやシャークは強い。恐るべき力を持っている。そんな彼らに君が恐怖を感じたとしても、それは私にも十分理解出来る。だが、君はいつだってそんな恐怖を乗り越えてきたはずだ」
「アストラル、行くぜ。俺は結局、自分のデュエルをするしかねぇんだからな!」
遊馬は恐怖を、迷いの全てを振り切り、自分のデュエル魂を蘇らせることができた。
「ゴーシュ!今度こそ俺のデュエル、見せてやるぜ!」
「おう!ようやく本気になりやがったか!!」
ゴーシュが望んでいた遊馬が元の気迫に戻り、嬉しそうにしながらデュエルを再開する。
ガガガガンマンとクサナギの激しい攻防により、遊馬のライフポイントは600まで追い詰められてしまったが、当然諦めるつもりはない。
ゴーシュはこれが遊馬とのデュエルに求めていた最高のノリだとテンションを最高潮にまで上げる。
ところが……レーンが突然途切れてしまい、2人は地面へと落下してしまうのだった。
レーンが途切れたのは事故ではなく、デュエルフィールドの仕掛けだった。
フィールドは夕日の決闘場へと姿を変えた。
まるで西部劇のような夕日が沈む荒野のフィールドで遊馬とゴーシュは銃を構えるガンマンのように立つ。
ガガガガンマンとクサナギは互いの効果を駆使して攻撃力を高め、相討ちとなってしまう。
互いがフィールド魔法の効果で300ポイントの効果ダメージを受けることになり、後がない状況となる。
そして、互いのモンスターが相討ちとなって破壊された瞬間、ゴーシュは最後の罠カード『エクシーズ熱戦!!』を発動した。
モンスターエクシーズがバトルで破壊された時、ライフを1000支払うことで互いのプレイヤーは破壊されたモンスターエクシーズを素材とすることで、同じランクのモンスターエクシーズを特殊召喚することが出来る。
ゴーシュはエースモンスターの『H - C エクスカリバー』を特殊召喚すると、遊馬に希望皇ホープを召喚しろと迫った。
ゴーシュは互いの持つエースモンスター同士による最後の勝負を熱望しているのだ。
その勝負に受けて立ち、遊馬は希望皇ホープを特殊召喚し、最後のバトルが始まった。
希望皇ホープが攻撃を仕掛け、ゴーシュはエクスカリバーの効果で攻撃力を2倍の4000にし、このままでは希望皇ホープが戦闘破壊される。
対する遊馬は希望皇ホープの効果で自身の攻撃を無効にするが、ここでバトルが終わればエクシーズ熱戦!!の効果でモンスターは破壊され、お互いは300ポイントのダメージを受けることになる。
現在のライフが300ポイントの遊馬は、このままでは敗北してしまうが……。
「いいや、俺にはまだ!このカードがある!!」
遊馬の手札にはダブル・アップ・チャンスがあった。
これはモンスターの攻撃が無効になった時、攻撃力を2倍にしてもう一度攻撃することが出来る。
希望皇ホープの攻撃力は5000となり、エクスカリバーの攻撃力を越え、二振りのホープ剣がエクスカリバーを斬り裂き、遊馬の勝利となった。
この瞬間、遊馬のWDC決勝トーナメント進出が決定した。
敗北したものの、ゴーシュは満足そうな笑みを浮かべていた。
ゴーシュは立ち上がって遊馬に楽しかったと互い称え合う。
「遊馬、こいつを持っていけ。その代わり、ノリの悪いデュエルなんかしやがったら、この俺が承知しねえからな」
するとゴーシュは遊馬に一枚のカードを託した。
それは……ゴーシュのエースモンスター、先程希望皇ホープと激しい戦いを繰り広げた王の剣……エクスカリバーだった。
「これは、エクスカリバー!?でも、このカードは……」
大切なカードであるはずのエクスカリバーを差し出され、驚く遊馬にアストラルは助言する。
「デュエリストとは、負けたデュエリストの想いも引き受けていくもの。彼は自分のデュエルに対する想いを君に託したのだ」
かつてはナンバーズ・ハンターとして遊馬のナンバーズを狙おうとしたが、遊馬のデュエルに熱い心に突き動かされ、一人のデュエリストとしてのデュエル魂を思い出した。
ゴーシュは自分の想いを遊馬に託し、遊馬のWDC優勝を応援するのだ。
「ありがとう、ゴーシュ!お前の想い、確かにこの俺が受け取ったぜ!」
「ああ、頼むぞ!頑張れよ!!」
遊馬とゴーシュは互いに熱い握手を交わし、ゴーシュは遊馬の健闘を祈った。
デュエルをすればみんな仲間……遊馬の目指し、信じている道が確かに証明された瞬間だった。
WDCの決勝トーナメントの進出を果たした遊馬。
それを祝い、九十九家では小鳥たちを呼んでパーティーが開かれていた。
さまざまな強敵に考えるアストラルだったが、遊馬はゴーシュとのデュエルで前向きになっていた。
しかし、遊馬はあろうことか、自分のデッキを失くしてしまっていたのだ。
「デュエリストが大切なデッキを無くさないでよ、バカ……」
「はい、すいません……」
デッキをなくした遊馬にレティシアの厳しい言葉がかけられ、遊馬は素直に謝る。
デュエリストのデッキケースには、Dパットと連動するGPS機能が付いており、それを調べた結果、遊馬のデッキケースはハートランドにあると判明したのだ。
しかし、夜中であるため封鎖されており、忍び込むことは不可能だった。
途方に暮れる遊馬たちだったが、そんなとき、建物内に入っていくトラックが目に留まる。
そこで徳之助はハートランドに入っていくオボットを乗せたゴミ回収車から侵入作戦を思い付いた。
遊馬と小鳥と鉄男は作戦通り、ハートランド内への侵入に成功した。
しかし、落とされた場所はゴミを運ぶベルトコンベアーの上。
このままでは最悪の場合、ゴミと共に処分される危険もある。
ところが何故かその動きは止まり、遊馬たちは近くの扉から脱出した。
扉の先には巨大なゴミ処理場があり、ハートランドの下に何故こんなものがあるのかと、遊馬たちが疑問を抱く中、アストラルの脳裏に妙なビジョンが浮かんだ。
それは人々の悲鳴と、星と思わしき場所で起こる数々の爆発……。
すると、この部屋の上にハルトの気配を察知したからだ。
デッキのことは一旦忘れ、ハルトのもとへ向かうことになり、エレベーターのある部屋に到着した。
しかし、そこには侵入者を察知した警備ロボがいた。
通るためにはデュエルで勝つしかないが、警備ロボが挑んできたのは普通のデュエルではない特別ルールで、その特徴と攻略法を理解した鉄男は小鳥と共に警備ロボを足止めして、遊馬とアストラルを先に向かわせた。
エレベーターでハルトの部屋に辿り着いた遊馬とアストラル。
そこにハルトはいたが、トロン達から奪い返したあの時のまま、まだ意識は戻っていなかった。
深く眠り続けるハルトに、WDCで勝ち残った事や、優勝する決意を優しく語る。
遊馬の心の中にはあの日、ハルトをトロン達に渡してしまったことに後悔の念が深く突き刺さっていた。
遊馬の瞳から涙が溢れ落ちると、それに呼応してハルトは突然青い光を放つ。
遊馬とアストラルが気付くと、そこは見渡す限りの美しい草原が広がる風景だった。
それはハルトの意識の中で、ハルトは遊馬とアストラルが来ることを信じて待っていたのだ。
「お願いがあるんだ、兄さんを助けて。兄さんはとっても疲れている。でも、僕には兄さんを助ける力はない……僕はここから出られない。お願い、兄さんを助けてあげて……」
ハルトは遊馬に自分の願いと想いを遊馬に託した。
本物のハルトの意識は心の奥に閉じ込められており、動くことはできないのだ。
もしも意識を解放することが出来れば、元に戻すことが可能かもしれない。
それにはカイトがナンバーズを集めることと何か関係があると思われるのだが……遊馬とアストラルがこのままナンバーズを集めればハルトは治らない。
逆にカイトがナンバーズを集めてしまっては、アストラルが消えることになってしまう。
これまで幾度となく現れる答えの出ない大きな問題に遊馬は頭を抱えてしまうのだった。
アストラルかハルト……どちらも選ぶことができない遊馬に対し、アストラルは……。
「戦うのは君だ。君が決めれば良い」
自分の命がかかっているにも関わらずその答えを遊馬に託した。
「俺が負けちまったら、お前は消えちまう……」
「遊馬。デュエルを共にする中で私は君から多くのことを学んだ。私は共に戦えたのが君でよかったと思っている。私は君が選んだ道に従う。それが如何なる道であろうとも……」
それがアストラルの決意だった。
遊馬を誰よりも信頼し、自分の命の全てを託しているからこそ遊馬の選択に従うと言う答えを出したのだ。
しかし、遊馬はそれに納得出来るわけがなかった。
「アストラル……お前、なんでそんな事言うんだよ!?もっと喚いたり泣いたりすれば良いだろう!?記憶を取り戻してくれ、このまま消えたくないって……そしたら、俺だって割り切って戦えんだよ。なのに、何で、何でだよ……」
アストラルがもっと自分の本音をぶつけてくれれば、もっとワガママを言ってくれれば良いのにと……涙を浮かべながら黙り込んでしまった遊馬。
だがそこに、Dr.フェイカーの立体映像が現れた。
遊馬たちの侵入に当初から気づき、Dr.フェイカーにはアストラルが見えている。
アストラルは、今まで思っていた疑問を投げかける。
ナンバーズはアストラルの記憶の欠片、ナンバーズを集める目的とは何なのか?
それは……アストラル世界と並ぶもう一つの異世界『バリアン世界』。
Dr.フェイカーはバリアンと取り引きをしていた。
アストラル世界を滅ぼし、最強の力を手に入れ、この世界の支配者となる……それこそがDr.フェイカーの目的だった。
そのためには自分の子供……カイトとハルトすらも犠牲にするというのだ。
そして、遊馬の父・一馬も……。
Dr.フェイカーの言葉に遊馬はこの男は本当に二人の父親なのか、なぜそこまでして力を求めるのかと怒りよりも先に疑問が出てきた。
Dr.フェイカーは明日の決勝大会を楽しみにしていると言い残すと、遊馬と小鳥と鉄男を再びゴミ山へと落とす。
そこに遊馬のデッキケースが落ちてきて、本来の目的はこれで果たされることになった。
遊馬はデッキをしまい、Dr.フェイカーへの怒りを心の奥に押し込めて小鳥と鉄男に感謝しながら帰路につく。
翌日……勝ち残った4人によるWDC決勝トーナメントが始まる。
準決勝の対戦の組み合わせは、トロンVSカイト、遊馬VS凌牙。
「アストラル。俺は必ず優勝して、そして、全てをこの手で解決してやる!」
「ああ!」
遊馬は決意を新たに、アストラルと共に決勝トーナメントに挑む。
WDCも遂に決勝トーナメント。
準決勝はデュエルタワーで行われ、昨日と同様に大勢の観客がいる。
準決勝第一試合、遊馬の対戦相手は凌牙……これまで何度もデュエルを交わし、互いの使用するカードや戦術は分かっている。
凌牙がⅣとのデュエルでシャークが召喚したシャーク・ドレイク・バイス……その禍々しさは応援席にいた小鳥を不安にさせる。
だがそんな小鳥の心配をよそに、遊馬はいつもの調子だった。
しかし、対する凌牙の様子はおかしく、生気を感じられなかった。
凌牙の異変の原因にアストラルは見当が付いていた。
それは昨日のⅣとのデュエルでも見せた、ナンバーズの闇の力。
もしも今の凌牙が最初のデュエルで『No.17 リバイス・ドラゴン』を手にした時以上にナンバーズに取り込まれていたとしたら、その戦いの本能は更に研ぎ澄まされているはず……。
遊馬は油断せずに全力を持ってデュエルで語るつもりでいた。
デュエルが始まり、遊馬はいつものように攻めるが、凌牙は洗練された戦法を全くせず、戦う意欲が伝わってこない。
そして……しばらくしてから起き上がった凌牙の手の甲には驚くべきことにトロンと同じ紋章が浮かび上がっていた。
トロンは凌牙に妹の璃緒を傷付けた復讐の相手がDr.フェイカーで、手を組んだ片割れが遊馬であると記憶を捏造したのだ。
凌牙の憎しみはトロンではなく遊馬に向けられることになってしまい、凌牙は完全にトロンの操り人形と化していた。
凌牙はレベル4のモンスターが3体召喚し、シャーク・ドレイクをエクシーズ召喚した。
アストラルが危惧していたナンバーズが姿を現した。
早く助けなければ……遊馬はその想いでシャークに訴えかける。
最初の対戦やタッグデュエル、皇の鍵を巡るカイトとのデュエル……それらを通じて絆を深め合ってきたはずだと。
しかし、トロンに洗脳された凌牙には言葉は届かなかった。
ならばデュエルで気持ちを伝えるだけと意気込み、デュエルを続ける。
遊馬は攻撃を仕掛けるが、妹の恨みを晴らす復讐心は更に燃え上がり、遂にシャーク・ドレイクが進化し、シャーク・ドレイク・バイスが姿を現した。
シャーク・ドレイク・バイスの攻撃に何とか耐えたが、遊馬は次のターンで決着をつけなければ勝ちは無い。
遊馬は最後の希望のカード、希望皇ホープをエクシーズ召喚する。
しかし、希望皇ホープの攻撃力ではシャーク・ドレイク・バイスに及ばず、自爆覚悟で突っ込むしかないと嘲笑うシャークだが、遊馬はそれを真っ向から否定する。
「違う!ホープは死なない!そしてお前のナンバーズも!」
「なっ!?」
「俺はお前を救いたい。もちろん、負けるのは嫌だ。デュエル・カーニバルで優勝して、トロンやDr.フェイカーにガツンと言ってやりてぇ。でも勝ったとしても、それでお前を失うのはもっと嫌だ!だから俺は、俺は……どんな手を使ってでもお前を助ける!お前を、トロンの呪縛から解き放つ!!」
遊馬は凌牙を救うための覚悟を決めた。
凌牙からトロンの呪縛を解き放つために遊馬は希望皇ホープによる攻撃を仕掛ける。
しかし、遊馬は希望皇ホープの効果を発動し、攻撃を無効にし……ここで永続罠『好敵手の絆』を発動した。
その効果は自分のモンスターの攻撃が無効になった時にバトルしていた相手モンスターにこのカードを装備し、そのコントロールを得る。
希望皇ホープの効果に適した永続罠で、シャーク・ドレイク・バイスのコントロールは凌牙から遊馬へと移された。
その瞬間、凌牙の手からシャーク・ドレイク・バイスが離れたことにより、ナンバーズの力が消えていき、遊馬との出会ったからの日々を思い出し、妹を傷つけたのがトロンだと思い出し、洗脳が完全に解かれて正気を取り戻した。
ところが、シャーク・ドレイク・バイスのナンバーズの闇の力は今度は遊馬を苦しめ始めた。
ナンバーズの耐性を与える皇の鍵と、ナンバーズに耐性の体質を持つ遊馬ですらシャーク・ドレイク・バイスの強大な闇に取り込まれかけてしまう。
しかもそれはトロンの目論み通りだった。
トロンの幻影が現れ、仲間を放っておけない凌牙に大きな選択が迫られる。
トロンが凌牙を洗脳する時に一緒に渡した罠カード『殲滅の紋章』。
これは自分のモンスターを相手がコントロールしているとき、その攻撃力以下のモンスターを全て破壊出来るという効果を持ち、シャーク・ドレイク・バイスと希望皇ホープは破壊され、その攻撃力の合計分5300のダメージも受けることになってしまう。
だが、遊馬の手札には自分フィールド上の永続罠を破壊して、自身を特殊召喚することが出来るモンスターが握っており、この効果で好敵手の絆を破壊すれば、希望皇ホープとアストラルは救われる。
しかし、シャーク・ドレイク・バイスの戻った凌牙は再びナンバーズの闇が襲いかかり、トロンの洗脳を受けてしまう。
アストラルか凌牙……どちらを選ぶべきなのか、その選択は遊馬に委ねられた。
「この外道が……!!ユウマとリョウガをそこまで追い詰めるとは……!!」
人の心を弄ぶあまりにも卑劣な手を使うトロンにネロは拳を握りしめて怒りを抑える。
「君が決めろ、遊馬」
「アストラル!?」
「この状況では私に出来ることは何も無い。君のデュエルだ、君が考え、君が決めるんだ
「そんな事……お前かシャークを選ぶなんて……ぐぁあああああっ!??」
遊馬に選べるわけがなく、ナンバーズの闇が遊馬の体に激痛を走らせる。
迷う凌牙にトロンは再び悪魔の囁きをし、殲滅の紋章を発動しろと誘う。
遊馬は立ち上がり、自分の答えを出す……。
「選べねぇ、選べねえ!お前も、シャークも、俺にとって、どっちも大切な……仲間なんだよぉおおおおおっ!!!」
遊馬の答え……それは選べない……アストラルも凌牙もどちらも掛け替えのない大切な仲間だから、選べるわけがないのだ。
「遊馬……!」
遊馬の答えに突き動かされ、凌牙は自分の進むべき未来を選んだ。
それは最初に伏せていた速攻魔法『深海雪原封印』を発動し、シャーク・ドレイク・バイスを除外し、その代償として凌牙は1000ポイントのダメージを受けた。
凌牙は自分を全力で助けようとした遊馬を助ける為に自滅の道を選び、勝者は遊馬となった。
敗北しながらも、シャークの表情は晴れ晴れとしていた。
「遊馬、デュエルの最中もお前の声はずっと聞こえていた。お前の諦めない心が、かっとビングが、トロンから救ってくれた。礼を言う。そして、頼む……トロンを倒せ……お前なら、出来る……!」
凌牙は自身の想いの全てを遊馬に託した。
遊馬の諦めない心と、凌牙との友情の絆……それらがトロンの邪悪なる策略を打ち砕いたのだ。
アストラルの命はシャークに救われた。
このデュエルは勝ちを譲られ、想いを託された。
凌牙の想いも全部ひっくるめて必ず勝ってやる……遊馬は打倒トロンを目指すのだった。
「遊馬君の想いと凌牙さんとの友情がトロンの思惑を打ち砕きました……!お二人の友情には感服しました……!」
マシュは相棒とは異なる、遊馬と凌牙の間に結ばれた友情と言う名の強い絆に感服した。
準決勝第二試合、カイトVSトロン。
因縁深い二人の対決となり、準決勝を終えた遊馬はカイトに激励を送る。
決着をつけるため、カイトと決勝で戦いたいと考えている遊馬だが、カイトが視線を向けるのはアストラルの方。
その場に崩れて落ち込む遊馬だが、カイトは少なからず遊馬の実力を認めている様子だった。
カイトとトロンをフィールドに乗せて起動するデュエルタワーに、観客席ではつまらないと遊馬は側で見るために同乗するのだった。
デュエルを前にトロンは歓喜に打ち震えていた。
Dr.フェイカーの視線を感じ、待ち望んでいた復讐の時がやって来たからだ。
同時にカイトもハルトへの仕打ちを忘れておらず、その為にトロンを葬る決意をする。
カイトは銀河眼の光子竜を召喚したが、カイト自身はナンバーズ・ハンターとして魂を狩り続けて満身創痍だったのだ。
トロンはカイトの奮戦を褒め称える。
ボロボロの体ながらも、ハルトのために戦うという目的があることは良いことだと。
しかし、トロンにも目的はある。
カイトの父・フェイカーへの復讐。
フェイカーに裏切られて異世界との狭間を彷徨った挙句、トロンの体は子供の姿に。
そして全てを失ってしまったのだ……ただ一つ、復讐心を除いて。
復讐のために自分の子供を利用したトロンを非難するカイト。
だがカイトもハルトのためとはいえ、魂を狩り続けてきた。
でもいつしか、魂を狩る喜びを感じていたんじゃないのか?
目的のためには全てを犠牲にしてしまう……トロンは自分自身とカイトが似ていると感じていた。
カイトはハルトを助けられるなら何を言われても構わないが、トロンの腐りきった魂は必ず狩る……その為に託された新たな力を使う。
「皮肉なる運命よ……命じるが良い。V……いや、クリスの想いを鉄槌と変え、愚かなる父へ降り落とせ!出でよ、『No.09 天蓋星ダイソン・スフィア』!!」
カイトはV……師匠のナンバーズ、ダイソン・スフィアをエクシーズ召喚する。
カイトはVの想いも背負って一緒に戦うつもりでいた。
カイトは一撃必殺の攻撃を喰らわせるが、トロンは罠カードでダメージを抑えた。
カイトを喜ばせようとトロンは自らの仮面に手をかける。
遂に暴かれたトロンの素顔。
そこにはカイトが愛する、ハルトの顔があった。
ハルトの顔と声でカイトに迫るトロン。
それはカイトにとってこれ以上ない侮辱だ。
しかしトロンは、自分こそがハルトだという。
ハルトを誘拐した時にトロンは自らの体にハルトの力と記憶を全て吸収していた。
その結果、互いの空っぽの心と心が交わり、今ではトロンとハルトの意識が繋がっており、トロンが受けた痛みはハルトも感じるということだ。
居ても立っても居られず、思わず飛び出すカイト。
だがトロンにデュエルアンカーで繋がれてしまうが、代わりに遊馬が名乗り出てオービタル7と共にハルトの元へ向かう。
トロンは紋章王ゲノム・ヘリターでダイソン・スフィアを攻撃し、カイトは一気に追い詰められてしまう。
このデュエルは、その衝撃が実際のものとなって肉体を襲う。
よってトロンが受けた衝撃はそのまま、ハルトへのダメージとなるということだ。
しかもトロンは意識を共有したハルトが苦しむ様子を見せ、カイトを精神的にも追い詰めていく。
その頃、遊馬はオービタル7と共にハートランドタワーのセキュリティーを突破し、ハルトの部屋へと突入した。
ハルトはトロンの外道な策略によって苦しめられ、ブーディカやアタランテなど子を大切に思うサーヴァント達は怒りから殺気を放っていた。
ハルトが受ける苦しみに胸を痛め、手を握る遊馬。
すると、握ったハルトの手が光を発すると、遊馬とアストラルは昨夜と同じようにハルトの意識の中へと飛ばされた。
だが、美しい風景を穢すように邪悪なる闇が無辺に広がり、そこにはトロンの姿があった。
トロンは禍々しい龍の化け物の姿へと変え、遊馬に襲いかかる。
それに対抗するため、遊馬は希望皇ホープを召喚した。
「いっけー!ホープ!ハルト君を救ってー!」
かつて自分が絶望の中から救われたようにハルトを救って欲しいと願いを込めながら桜は応援した。
ハルトを救う為、希望皇ホープのホープ剣の一閃が龍の化け物を切り裂く。
そして……トロンは遊馬への怨みの声を上げながら消滅し、同時に遊馬とアストラルはハルトの意識から現実に戻る。
遊馬と希望皇ホープの活躍により、ハルトの中にあるトロンの意識を退治し、ハルトとトロンの繋がっていた意識を切り離すことに成功した。
これでハルトはこれ以上トロンの策略によって傷つくことはない。
遊馬はカイトにトロンを倒せとエールを送り、カイトは心の中で遊馬に感謝をしながらトロンへの怒りを爆発させ、その体を真紅に光り輝かせる。
そして、カイトとハルトの兄弟の絆の象徴、『超銀河眼の光子竜』をエクシーズ召喚する。
超銀河眼の光子龍の攻撃でゲノム・ヘリターを攻撃……決まればカイトの勝ち。
だがトロンのライフは残っていた。
罠カード『無敵の紋章』により超銀河眼の光子龍の攻撃力は800ポイント下がり、トロンは辛うじてライフを残したのだ。
生き残ったことで、トロンは自らの勝利に確信を得ていた。
全てはカイトのおかげ……その怒りで、眠れる『紋章神』を呼び覚ますことになった。
トロンはレベル4のモンスターを3体召喚し、エクシーズ召喚したのは禍々しい姿をした巨大な悪魔の姿をした神……『No.69 紋章神 コート・オブ・アームズ』。
コート・オブ・アームズを操るには莫大なエネルギーが必要になる。
それは怒り。
トロンには感情がなく、だからこそトロンはドロワや凌牙、そして自分の息子たちを使って怒りを溜めてきた。
もちろんカイトの怒りも利用して。
全てはコート・オブ・アームズを呼ぶための布石でしかなかったのだ。
コート・オブ・アームズはオーバーレイ・ユニットを使わなくても効果を発動することが出来る。
フィールドにいる自分以外のモンスターの効果を無効にし、その全ての効果を得るというもの。
これにより超銀河眼の光子龍の効果は奪われてしまい、その鮮やかな真紅の輝きは奪われて灰色となってしまい、カイトの纏う真紅の輝きも失ってしまった。
「そんな……カイトとハルトの……超銀河眼の光子龍が……」
レティシアはこれほども無惨に超銀河眼の光子龍が力を奪われたことにショックを受けた。
そしてトロンは、奪った超銀河眼の光子龍の効果を発動し、攻撃力を上昇して複数回攻撃を可能にした。
コート・オブ・アームズは複数回攻撃をし、二度に渡る攻撃でカイトのライフは0に……カイトは敗北してしまった。
しかし、トロンの攻撃は終わらなかった。
復讐に取り憑かれたトロンはコート・オブ・アームズの三度目の攻撃を繰り出した。
だがその時、カイトの前に光が現れてコート・オブ・アームズの攻撃を防いだ。
それは……ハルトだった。
僅かに残っていた最後の力を使い、カイトを守ったのだ。
デュエルは終了し、トロンは若干の不満を残して不味い復讐だったと言い、カイトから魂と全てのナンバーズを奪い姿を消した。
ハートランドタワーから急いで駆け付けた遊馬はカイトに駆け寄るが、カイトは完全に意識を失ってしまっていた。
カイトはオービタル7が運び、小休憩の後は……いよいよWDC決勝戦、遊馬とトロンのデュエルが始まる。
遊馬は控え室でカイトが敗北したことにショックを受けていた。
そんな遊馬にアストラルはトロンをデュエルで倒し、紋章の力を破壊すれば……みんなを助けられる可能性があると助言し、遊馬はそれを聞いて希望を見出した。
するとそこに鉄男達がやってきて決勝戦前に応援を送り、みんなで手を重ねて遊馬の健闘を祈る。
その際、鉄男達には見えないがアストラルも手を重ね、みんなの想いが一つになる。
遊馬とアストラルは会場への廊下を歩くと、先ほどいなかった小鳥が何かを持って来た。
「遊馬!」
「ん?おわっと!?おおっ、デュエル飯じゃん!サンキュー、小鳥!」
小鳥は決勝戦前に急いでデュエル飯を作り、遊馬に思いを込めて渡した。
元気の源であるデュエル飯を貰い、遊馬は嬉しそうにする。
「それ食べて、絶対勝つのよ!」
「へへっ、任せとけ!」
「絶対の絶対だからね!」
「絶対の絶対の絶対だ!それじゃあ、行くぜ!!」
遊馬は小鳥と勝利を約束し、デュエル飯を懐にしまってアストラルと共に会場へと向かう。
「どうせ止めたって、行っちゃうんだから……」
小鳥は遊馬に危険なトロンと戦って欲しくはなかった。
決勝戦を辞退してもらいたかった。
もしも遊馬が負けてしまったらと嫌な想像が頭の中によぎってしまう。
しかし、小鳥は誰よりも分かっていた。
遊馬は止めても必ず行ってしまう……だから、今は自分に出来る事をするだけ。
遊馬の大好物のデュエル飯を渡して最大限の力で戦ってもらい、自分は全力で応援する。
小鳥は遊馬の無事を願い、応援席へと戻る。
そんな小鳥の不安そうだが健気な姿を見て一人の英霊がこう言った。
「なーんか、戦場に向かう夫を見送る不安そうな妻みたいな光景だな……」
戦国時代の英霊である信長こと、ノッブのたわいもない言葉であったが、確かに誰が見てもそう見える光景だが……その瞬間、マシュ達はギロリとノッブを睨みつけた。
「……もしかして儂、何か地雷踏んだかの?」
「ノッブ……骨は拾ってやりますよ」
「おう、何てこった……」
ノッブはこの身に感じた数多の殺気にもしかして地雷を踏んだのではと危惧し、沖田はため息をつきながらジュースを飲む。
WDC決勝戦……遊馬とトロンが遂に対峙する。
その舞台となるのは、ハートランドが技術の総力を結集して作り上げた『スフィア・フィールド』。
無数の透明なカードに覆われるような不思議な球体の空間で、今までのフィールドとは全く違う、異世界の疑似空間だった。
トロンはデュエルの前に遊馬に話をした。
異世界の狭間を彷徨った地獄の時間の中、何度も生きるのを諦めかけた。
そんな時、いつも思い出していたのは遊馬の父・一馬のことだった。
一馬がいつも言っていた友情、仲間、そして諦めない心……だがDr.フェイカーに裏切られたトロンにとって、それらは無意味なことになってしまった。
それでも、諦めない心に関しては別。
諦めなかったからこそ復讐という希望を持ち、こうして生まれ変われた。
しかし、遊馬はそれを真っ向から否定する。
家族を救って欲しい……IIIと約束した遊馬はトロンから復讐という悪魔を追い出し、救うことを誓う。
トロンの復讐のためにIIIとVとⅣは犠牲になってしまった。
だが、トロンにとって彼らは役に立たなかった存在で彼らに与えられた紋章は、力を得る代償として魂に直結していたもの。
デュエルに負ければ魂を消耗してしまうため、今では魂の抜けた抜け殻になってしまっていた。
アストラルはここまで醜い心を持つ人間がいるのかと驚いた。
しかし、そもそも悪いのはDr.フェイカーで一馬もその犠牲となっており、復讐しないのかと問うトロンだが、遊馬にそんな気は無い。
何より一馬はそんなこと望んでいないからと。
しかし、トロンには思い当たる節がある。
それはアストラルの存在。
ナンバーズには恐るべき力がある……それは、この世界すら滅ぼす強大な力が宿っている。
復讐の使者こそが、一馬がこの世界に送り込んだアストラル。
つまり遊馬は、この世界に報復する使者に力を貸しているということだ。
トロンによる衝撃の一言。
だが遊馬はそれに屈するつもりはなかった。
トロンとDr.フェイカー……自分の子供を不幸にするダメ大人はやっつけてやる為に絶対にデュエルに勝つ!
スフィア・フィールドによるデュエルは通常と異なり、ナンバーズの力を最大限に引き出すフィールド。
各プレイヤーは手札にある同レベルのモンスター2体をオーバーレイすることで、召喚条件を無視してエクストラデッキからランダムにナンバーズを特殊召喚出来る。
但しこの方法で召喚されたナンバーズは、オーバーレイ・ユニットが無くなった時に破壊されてしまう。
数多のナンバーズを持つ選ばれたデュエリスト、遊馬とトロンの決勝戦が遂に幕を開ける。
先攻のトロンは早速スフィア・フィールドの効果を使い、カイトから奪ったナンバーズ、『No.56 ゴールドラット』を召喚する。
アストラルは、先ほどトロンから聞かされた話が気になっていた。
ナンバーズには本当にこの世界を滅ぼす力があるのだろうか?
アストラルには記憶が無いため、自分がこの世界に送られてきた理由が復讐のためである可能性も考えられる。
遊馬はその理由は知らないが、アストラルが悪い奴でないことは分かる。
遊馬は一馬を信じている……父ちゃんは復讐を望んでいない、アストラルは世界に報復する使者ではない。
ナンバーズに凄い力があるというのなら、尚更トロンやフェイカーに渡すわけにはいかない。
遊馬はその力をアストラルなら正しいことに使ってくれる、そう信じて託そうとしていた。
アストラルは自分を信じてくれる遊馬の言葉に不安は取り除かれ、今は全力でトロンと戦う事を誓う。
遊馬もスフィア・フィールドの効果で闇川のナンバーズ、『No.12 機甲忍者クリムゾン・シャドー』をエクシーズ召喚し、ゴールドラットを破壊した。
続いてトロンのターンに『No.10 白輝士イルミネーター』、『No.30 破滅のアシッド・ゴーレム』、『No.8 紋章王ゲノム・ヘリター』……怒涛の連続召喚にフィールドに3体のナンバーズが揃った。
トロンは3体のナンバーズで一斉に攻撃を仕掛け、罠カードとクリムゾン・シャドーの防御効果で何とかトロンの1ターンキルを防いで遊馬はライフを守りきった。
遊馬も負けじと『No.34 電算機獣テラ・バイト』、『No.17 リバイス・ドラゴン』、そして……『No.39 希望皇ホープ』をエクシーズ召喚し、遊馬も3体のナンバーズを連続召喚した。
互いのフィールドにそれぞれ3体のナンバーズが揃った。
遊馬は希望皇ホープたちの力を結集して一気にトロンのナンバーズを一掃することに成功。
フィールドに存在するのは、遊馬のナンバーズが3体のみ。
本気を出す舞台が整ったと、トロンは自らのターンを迎える。
手札ゼロからレベル4のモンスターが3体揃え、カイトの超銀河眼の光子龍を倒したトロンの切り札……紋章神コート・オブ・アームズをエクシーズ召喚した。
コート・オブ・アームズはトロンの復讐心を具現化したモンスター……トロンの憎しみが闇となって顔から溢れ、仮面の隙間から漏れていた。
何もかもが奪われる遊馬にとってはこれが最後のデュエルだからと、トロンは仮面を取り、自らの素顔を晒した。
トロンの顔の左半分は、異界化しており存在しないものとなっていた。
異世界を彷徨う間にこの世界の人間ではなくなってしまったのだ。
トロンはコート・オブ・アームズの効果を発動し、自分以外の全てのモンスターの効果を無効にして奪い、希望皇ホープ達の効果は無効となってしまう。
リバイス・ドラゴンが破壊され、遊馬は残りライフ500ポイントまで一気に追い詰められたがまだ諦めてはいない。
「まだ? フフッ もういい加減諦めちゃいなよ。使えないⅣやIIIやVと違って、僕は無敵なんだ。そう、このコート・オブ・アームズは親と子ほどの力の差があるのさ!」
「くっ! 親と子か、確かにそのモンスター、お前そっくりだ!」
「何?」
遊馬はコート・オブ・アームズの凶悪さ……そして、その醜さがトロンと同じだと指摘した。
「今じゃ良く分かる!IIIだって、Ⅳだって、Vだって、みんな大した奴だった!立派だった!必死に自分を支えようとして、最後にはみんな、あんたのことを心配してた……なのに、どうしてあんな良い奴らが、あんたみたいな奴のために、全部投げ出しちまうのか!」
「……っ」
「あんたはそれを親子だから当たり前だと思っている。けど、そうじゃねぇ!みんな信じてたんだ!あんたがいつか元に戻ってくれるって!」
「遊馬……」
「どうしてあんたは戻ってきた時、あいつらに優しくしてやらなかったんだよ!?どうして復讐なんてくだらないこと、やり始めちまったんだよ!!」
遊馬はIII達家族を巻き込み、道具のように利用して捨てたトロンに対し、復讐を真っ向から否定する。
「分かるはずないさ、君みたいな子供には……」
「分かるさ!父ちゃんがいなくなって、どんなに寂しい思いをするのか俺には分かる!あいつらみんな、あんたがいなくて寂しかったんだ!!」
「っ!?」
「不安で泣きたくて、一生懸命だったんだよ!!」
大好きな父が……一馬が行方不明になり、今では大丈夫だと元気でいるが、遊馬もとても寂しい思いをしているのだ。
寂しくて、不安で、泣きたくて……III達と同じ思いをしていたのだ。
遊馬にはまだ家族である明里と春、仲間の小鳥達がいたが、III達はそうではなかった。
III達は帰ってきたトロンといつか本当の家族に戻れる日をずっと待って夢見ていた……そして、最後までトロンの身を案じて倒れていった。
「……っ!?黙れ!お前にそんなこと言われる──」
その時、遊馬の家族を想う言葉にトロンの脳裏には家族との幸せな思い出が蘇った。
「III……Ⅳ……Ⅴ……家族……思い出……そんなの!……そんなものは!!……この、顔と共に……!!」
遊馬の言葉が確実にトロンの心の中に突き刺さり始めていたが、復讐の炎はまだ消えてはいない。
「俺は諦めねぇぜ、このデュエル!俺はみんなから色んなものを預かってきたんだ!あんたにそれが伝わるまでは、絶対諦めねぇ!!」
遊馬の背中には沢山の人達の想いを背負っている。
その人達の為にも、遊馬はこのデュエルに必ず勝利する。
そして、トロンを復讐から解き放つ為に全力で尽くすと心に決める。
マシュ達は遊馬の強い想いに言葉を失った。
遊馬とはまだ一緒にいる期間は短いが共に未来を取り戻す仲間として戦ってきた。
喜怒哀楽の内、喜びと怒りと楽しみの感情はこれまで数多く見てきたが、ここまで『哀』の悲しみの感情を露わにする姿を見たのは初めてだった。
それほどまでに遊馬はIII達に対して強く想いを馳せていたのだ。
「行くぜ アストラル!……」
「遊馬……」
「ZEXALだ。奴に勝つには、ZEXALの力しかねえ!」
トロンに勝つためには、想いをぶつける為には奇跡と絆の力、ZEXALの力しかないと遊馬はアストラルに頼む。
「遊馬……このスフィア・フィールドは異世界に似せて作り上げられた疑似空間、皇の鍵の中と同じ。ここでならZEXALになれる。ただし、このデュエルは大勢が見ている」
アストラルは大勢の観客が見ている事を警告するが、遊馬はそんな事は関係ないと笑みを浮かべていた。
「んな事どうだっていい。みんなの想いを、あいつに渡せるなら。行くぜ、アストラル!」
「行こう、遊馬!私と共に!」
アストラルも覚悟を決めて自分達の全力を持ってトロンと戦う事を決めた。
「かっとビングだ!俺!俺と!」
「私で!オーバーレイ!!」
遊馬は赤い光、アストラルは青い光となり、スフィア・フィールド内を駆け巡る。
「うぉおおおおおっ!」
「はぁあああああっ!」
遊馬とアストラルは激突し、肉体と魂が一つに交わり、奇跡の力が解放される。
「遠き二つの魂が交わる時、語り継がれし力が現れる!」
復讐の悪魔……トロンを倒す為、絆と希望の英雄が降臨する。
「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!」」
遊馬の突然の変身に観客がざわめく。
観客達にはZEXALが本物のヒーローに見えるという事でかなりの好評で、徳之助はZEXALという名前を伝えようとしたが……徳之助の独特の語尾である「ウラ」が合わさり、誤った名前が伝わり、「ZEXAL」から「ゼアルウラ」として認識されることになった。
「「「ゼアルウラ!ゼアルウラ!ゼアルウラ!」」」
取り返しのつかない誤解を生んでしまったが、観客の心が一つになって遊馬を……ゼアルウラを応援する。
余談だが、遊馬はカッコよくZEXALに変身したのにゼアルウラと言う意味不明な名前に不満を持っているが、アストラルは意外に気に入っているらしい。
「し、神秘の秘匿が……マスターには、この世界にはそんな事は関係ないというのか!??」
魔術世界には一般人には知られない為に神秘の秘匿で魔術の存在をバレないようにしているが、遊馬とアストラルは下手をすれば封印指定並みの強大な力、ZEXALをあっさり大勢の観客の前で見せたことにエルメロイII世は強烈な頭痛と共に卒倒しかけた。
「あー、これなんか親近感あると思ったら子供向けのヒーローショーだわ」
「ヒーローがマスターさんで、ヴィランがトロンさん……そうですね、見ただけでわかるほどの明確な勧善懲悪な戦いみたいですね」
イシュタルとパールヴァティーはこの光景はヒーローショーだと合点がついた。
「正義のヒーローか……マスター、君にはたまに嫉妬を覚えるよ」
正義の味方を目指すエミヤは紛れも無い正義のヒーローとなっている遊馬に思わず嫉妬してしまうのだった。
「「「「ゼアル!ゼアル!ゼアル!」」」」
遊馬のかっこいいヒーローみたいな登場に桜達ちびっ子軍団は正しく「ゼアル」とコールする。
「ありがとう、ちゃんとZEXALって呼んでくれて……」
遊馬はゼアルウラではなくちゃんと名前を呼んでもらえたことに感動して涙を流す。
ZEXALは希望皇ホープをカオス・エクシーズ・チェンジし、『CNo.39 希望皇ホープレイ』をエクシーズ召喚する。
ZEXALは魔法カード『セブンストア』を発動し、テラ・バイトをリリースして3枚のカードをドローする。
「最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!」
「行くぜ、アストラル!」
「「全ての光よ、力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!」」
「コート・オブ・アームズは相手のモンスター効果を無効にして吸収する だが装備されるゼアル・ウェポンの効果までは奪えない!」
「『ZW - 雷神猛虎剣』を装備!」
紫電が轟き、雷をその身に宿す白き虎が現れ、希望皇ホープレイが左腰のホープ剣を掲げると、白き虎とホープ剣が合体し、鍔に虎の装飾が施された剣……雷神猛虎剣となる。
雷神猛虎剣を装備した希望皇ホープレイで攻撃力は3700でコート・オブ・アームズを攻撃する。
「「ホープ剣・ライトニング・ブレード!」」
ところが、トロンはこの攻撃を待っていた。
コート・オブ・アームズのもう一つの効果が発動し、相手モンスターが攻撃した時、フィールドのカードを一枚破壊する。
コート・オブ・アームズの姿が変形し、悪魔から魔神の姿へと変貌し、希望皇ホープレイに無数の赤い閃光が貫く。
しかし、ZEXALは雷神猛虎剣の効果を発動し、ZWを手札に戻すことで、希望皇ホープレイの破壊を免れ、バトルは墓地にある『タスケルトン』を除外し、希望皇ホープレイの破壊とダメージを無効にした。
手札に戻した雷神猛虎剣を再び希望皇ホープレイに装備し、カードをセットしてZEXALはターンエンドをした。
続くトロンのターン、コート・オブ・アームズの効果で、希望皇ホープレイから奪った効果を発動し、コート・オブ・アームズの攻撃力を500ポイントアップし、希望皇ホープレイの攻撃力を1000ポイント下げて攻撃する。
だが遊馬は、罠カードのハーフ・アンブレイクで希望皇ホープレイの破壊を阻止し、ダメージを抑えたが、ライフポイントはギリギリの50にまで追い詰められてしまった。
コート・オブ・アームズのオーバーレイ・ユニットが無くなったことであすとか勝利の方程式が見えてきたが、トロンは墓地の『紋章獣ツインヘッド・イーグル』を除外することで、オーバーレイ・ユニットを2つ復活させた。
息を切らし、精神的に疲労して膝を突くZEXAL……遊馬。
そんな遊馬にアストラルは心配そうに見つめる。
「どうした遊馬、大丈夫か?遊馬!」
グゥ〜ッ!
「は、腹が……腹減ったぁ……」
ズコーン!!
こんな緊迫したデュエルの中で腹の虫を豪快に鳴らすZEXAL……遊馬の図太い精神にマシュ達は再びずっこけた。
「何を言っているんだこんな時に……」
「だって、腹が減ったんだからしょうがないだろう……そうだ!」
ZEXALは左肩のプロテクターの内側に手を突っ込むと、そこから取り出したのは……小鳥のデュエル飯だった。
「これこれ!小鳥から貰ったデュエル飯!」
遊馬は大盛りのデュエル飯を頬張り始める。
突然のZEXALの食事に会場がざわめき、トロンは呆れる。
一方、デュエル飯を頬張るZEXAL……それは遊馬と合体したアストラルも同様にデュエル飯を食べていた。
肉体と魂が一つに合体したことで本来なら食事を行うことができない精霊のアストラルも食事をして遊馬と同じように味覚と満腹感を味わっていた。
「んっ。何だ、この感覚は……!?」
「そうか、お前飯食うの初めてか!」
「これが食事と言うものか……」
「ああ!腹が減ったら戦は出来ねえ!」
「不思議だ……体の底から再び闘志が湧いてくる……」
初めての食事にアストラルは今まで感じたことのない食事からエネルギーを得る、闘志が湧いてくる感覚が出てきた。
「ははっ、そうだろ?」
「これが生きる実感……!今消えるとも限らないこの瞬間にこの感覚!面白い!遊馬、君と一緒にいると実に面白い!」
アストラルは生きると言う実感を深く感じ、遊馬と一緒にいると沢山のことを学び、改めて面白いと感動した。
「降霊科の魔術師達が見たら頭を抱えそうな光景だな……」
時計塔の魔術協会には降霊科と呼ばれる学科があり、異世界の精霊であるアストラルがあそこまで食事に感動し、遊馬の影響でどんどん人間臭くなっていることにエルメロイII世は白目を剥きたくなる気分だった。
「勝とうぜ、アストラル!」
「ああ!私はもっとデュエル飯が食べたい!大盛りで二つ、いや、三つだ! そして生きることを、もっと感じたい!!」
アストラルは今まで見たことのないほど子供のような輝く純粋無垢な笑顔を見せた。
初めての食事に生きる実感……アストラルの素晴らしい初体験にその身に宿る力が無限大に広がる。
「その調子だぜ、アストラル!」
遊馬とアストラルはデュエル飯で腹が満たされ、闘志が沸き起こり、今のZEXALは全力全開の状態だった。
「遊馬、既に勝利の方程式は揃っている!私を信じろ!」
「おう!俺のターン!」
「「全ての光よ、力よ!我が右腕に宿り、再び希望の道筋を照らせ!ファイナル・シャイニング・ドロー!」」
ZEXALは再び右手を光り輝かせて全ての力を込めてドローする。
「「来い!『ZW - 風神雲龍剣』!!」」
旋風が巻き起こり、紅の龍が現れ、希望皇ホープレイが左腰のホープ剣を抜くと合体し、鍔に龍の装飾が施された剣が完成する。
「白き虎の剣に紅き龍の剣……!龍虎双剣の二刀流……!!」
右手に雷神猛虎剣、左手に風神雲龍剣……魅力的で強力なZW二刀流に二刀流剣士の武蔵は目を輝かせる。
希望皇ホープレイに装備されたZWの二刀流にトロンは驚愕する。
これで希望皇ホープレイの攻撃力は合計で驚異の5000となり、更に雷神猛虎剣は自分フィールド上の魔法・罠カードを破壊の対象に出来なくなり、風神雲龍剣は装備モンスターを破壊の対象にされなくなる。
つまり、希望皇ホープレイもZWも破壊できなくなり、二つのZWの互いに作用し合う効果によりコート・オブ・アームズのカードを破壊する効果は封じられるということだ。
ZEXALは無敵となった二刀流の希望皇ホープレイで攻撃を仕掛ける。
「「ホープ剣・ダブル・カオス・スラッシュ!!!」」
装備されたZWからそれぞれ元の白き虎と紅き龍の幻影が現れ、コート・オブ・アームズに襲いかかろうとした。
だがトロンは伏せていた罠カード『爆風紋章』を発動し、無敵のZW二刀流希望皇ホープレイの唯一の弱点を突き、二枚のZWを手札に戻し、バトルフェイズを終了した。
更に追加効果で手札に戻ったカード1枚につき500ポイントの効果ダメージをこのターンの終了時に与える。
残りライフポイントが50ポイントのZEXALには抗いようがなかった
しかし、デュエル飯でエネルギーを満タンにしたアストラルの勝利の方程式はまだ他にも用意されていた。
ZEXALはシャイニング・ドローしたカードと墓地にあるカードを駆使して2体のZWをフィールドに召喚した。
「無駄な足掻きだったな、遊馬、アストラル!」
2体のZWもコート・オブ・アームズの効果無効の餌食となるが、ZEXALの狙いはそこではなかった。
「「それはどうかな?」」
「!?」
「雷神猛虎剣と風神雲龍剣のレベルは2体とも5!」
「これで条件は揃った!」
「まさか!?2体のZWで……!?」
「そのまさかだ、トロン!俺はレベル5の雷神猛虎剣と風神雲龍剣でオーバーレイ!2体のZWでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」
雷神猛虎剣と風神雲龍剣がオーバーレイし、トロンの想像を超える新たな奇跡の力が降臨する。
「「現れろ!『ZW - 獣王獅子武装』!」」
現れたのはZWを統べる最強の獣王。
獣王獅子武装は瞬時に希望皇ホープレイに装備され、その体が無数のパーツに分離し、ホープレイの体に次々と装着して合体する。
「「闘志が纏しその衣!轟く咆哮、大地を揺るがし!迸る迅雷、神をも打ち砕く!獣装合体!!『ライオ・ホープレイ』!!」」
希望皇ホープレイが獣王獅子武装と合体した最強の姿。
獣王獅子武装を装備し、攻撃力が5500となった希望皇ホープレイはバトルが終わった後で、もう一度攻撃が出来る。
これこそが、究極のZWである証。
だが、ZWが一つになったことで、相互に働いていた無敵効果は消え、トロンはコート・オブ・アームズの真の姿とし、その破壊効果で希望皇ホープレイを狙う。
しかし、獣王獅子武装にはもう一つの効果があった。
1ターンに一度、相手モンスターの効果を無効にして、その攻撃力を半分にする。
ライオ・ホープレイから放たれた灼熱の閃光により最強を誇るコート・オブ・アームズはその力を失い、トロンはその光景に衝撃を受ける。
ZEXALはトロンとの戦いに終止符を打つ最後の攻撃を命ずる。
「「行け、ライオ・ホープレイ!!ホープ剣・トリプル・カオス・スラッシュ!!!」」
ライオ・ホープレイの渾身の三連撃にコート・オブ・アームズは破壊され……トロンのライフポイントは遂に0となった。
激しい攻防からの希望と絶望、そして怒涛の大逆転劇……WDC決勝はZEXAL……遊馬の勝利となった!
「第1回WDC優勝者は……九十九遊馬だぁっ!!!」
Mr.ハートランドが高らかに遊馬の勝利を宣言し、会場は観客達による大歓声に包まれる。
遂に遊馬の夢だったデュエルチャンピオンが叶い、小鳥達は大喜びをするが……事態は急変する。
スフィア・フィールドが歪みだし、フィールド全体にエネルギーが電気のように激しく迸る。
突如、ZEXALとトロンの体に異変が起こる。
それぞれの体から全てのナンバーズが飛び出し、フィールドに出現した異空間に収束した。
トロンは反撃しようとしたがZEXALにデュエルで敗北し、ナンバーズを失ったことで紋章の力も弱体化してしまった。
同時にデュエルタワーも故障して崩壊を始め、決勝戦終了の大興奮から一転、観客達はパニックに陥る。
力が弱体化したトロンは壁に叩きつけられ、異空間へ吸い込まれそうになる。
ZEXALはトロンを救う為に滑空し、トロンの手を掴み、空いた左手で雷神猛虎剣を呼び出してスフィア・フィールドの壁に突き刺した。
「遊馬……一馬……」
トロンは自分を助けた遊馬にかつて異世界の扉で自分を助けようとした一馬の影を重ねた。
トロンは静かにこの状況を遊馬とアストラルに語り始める。
「遊馬、アストラル、スフィア・フィールドは、ナンバーズを全て回収するためのフィールド」
「何!?」
「どういう事だよ!?」
「デュエル・カーニバルで集められたナンバーズは決勝戦で集結する。この絶好の機会をDr.フェイカーが逃すはずがないだろう……」
このWDCもスフィア・フィールドにおけるデュエルも、全てはナンバーズを集めるための壮大な罠だったのだ。
しかもこのフィールド内ではトロンは異物の存在で異空間へ飛ばされたら最後だ。
手を離すように遊馬に告げるが……。
「嫌だ!俺は、俺は諦めねえ!!」
「何故だ……?何故僕を助ける……?」
「当たり前だろ!デュエルをやったら仲間なんだよ!」
「遊馬……」
「難しいことはよく分かんねえけど、デュエルが仲間を、絆を作ってくれる!だから、デュエルをしたらお前も仲間だ!!」
そんな遊馬の姿にトロンはようやく全てに気付いたのだ。
「ふっ……今やっと分かったよ……君が何故諦めないのか。君達のデュエルは、僕の復讐の先にあったんだね。遊馬、僕は君や一馬のようには生きられなかった」
「トロン……」
「でも、全てをフェイカーの思い通りにはさせない!僕が捕らえた魂を全て解放する!」
トロンはかっとビングをして生きる遊馬と一馬に憧れ、嫉妬していたのだ。
トロンはせめてものの償いとして残った紋章の力を使い、今まで捕らえた魂を全て解放した。
その中にはカイトとハルトの魂も含まれていた。
「お別れだ。遊馬、アストラル」
そして、トロンは自ら手を離した。
「トローン!!!」
トロンはとても穏やかな表情を浮かべながら最後に三つの魂を見つめる。
「許してくれ、みんな……今度は忘れない……あの頃を……」
III、Ⅳ、Vの三人の息子達のことを想い、その魂を解放した。
そして、トロンは異空間の中へと消えていくのだった。
異空間は爆発的に広がりを見せ、巻き込まれたZEXALはスフィア・フィールドごとハートランドタワーへと飛ばされた。
ZEXALが気がつくと目の前にはDr.フェイカーの姿があった。
Dr.フェイカーは、アストラル世界を滅ぼすという最後の仕上げを行おうとし、高笑いを響かせた。
Dr.フェイカーはアストラル世界を滅ぼすためにスフィア・フィールド砲を作り出し、遊馬とアストラルをその弾丸にしようとしていた。
遊馬たちが連れて行かれようとしている場所は地下のゴミ処理場……そこに発射口があり、アストラル世界に向けられている。
アストラルが取り戻した記憶の一部の中にはアストラル世界が攻撃されるビジョンがあり、これまでも行われてきた。
だが今回はレベルが違うのだ。
スフィア・フィールドはナンバーズの力を一つに集約させた弾丸。
それを一気に打ち放つことによりアストラル世界は滅ぶ。
WDCもナンバーズを集めるために開催したもの。
つまり、WDCの参加者全員がDr.フェイカーの道具として利用されていたのだ。
その真実に怒りを露わにする遊馬だったが、この計画の最重要人物の登場に困惑してしまう。
それは……トロンに魂を解放されて目を覚ましたが、虚ろな表情を浮かべているハルトだった。
その体はスフィア・フィールド砲の一部となってしまい、異世界の力を持つハルトはその引き金にされようとしていたのだ。
Dr.フェイカーの夢……アストラル世界を滅ぼし、バリアン世界の力を得て、この世界の支配者となる念願が叶おうとしていた。
異常事態に混乱を見せるWDCのスタジアム。
バイクで駆けつけた明里は鉄男達の無事を確認するが、小鳥の姿だけが見つからなかった。
小鳥は遊馬を追ってスタジアムを飛び出し、ハートランドタワーへとやって来たのだ。
ハートランドタワーの中に入るとそこにはカイトとオービタル7の姿があったが、カイトは崩壊する塔の瓦礫に埋もれ、身動きが出来なくなっていた。
必死にカイトを助けようとする小鳥とオービタル7の前に遊馬の身を案じて病院から抜け出した凌牙が現れた。
凌牙の協力により、カイトは無事に瓦礫から助け出すことが出来た。
小鳥の追求でオービタル7からDr.フェイカーの企みを知り、スフィア・フィールド砲の場所を問う凌牙だが、ハルトのことでいっぱいのカイトはその話を取り合わない。
それどころか、カイトは過去のデュエルの因縁を持ち出して凌牙に挑発じみた態度を取るが、凌牙は冷静だった。
それは自分を助け、代わりにトロンを倒してくれた遊馬を助けたいという強い想いを持っていたからだ。
それは小鳥も同じだった。
遊馬だけでなくハルトも助けたい。
小鳥は遊馬がハルトを想っていることを諭すと、カイトの脳裏には遊馬がハルトを想い、守る為に行った数々の言葉や行動が思い出された。
カイトも遊馬との関わりから特別な感情を抱き始め、素っ気ない態度を取るカイトも遊馬の身を案じ、小鳥と凌牙を地下へと案内する。
しかし地下への通路は瓦礫で塞がれ、他の道を探そうとしたが、オービタル7にホストコンピュータをアクセスさせようとしたが、接続部分が崩壊によって壊れてしまい、足止めを食らってしまった。
そこで小鳥はコンピュータ操作が得意な明里に協力を要請した。
明里は外部からのハッキングでタワー内の地下へのルートを調べることが出来、小鳥達は無事に地下のゴミ処理場へと到着した。
「これ……小鳥ちゃんがいなかったら終わってた?」
ロマニの言葉に誰もが同意した。
小鳥が遊馬を助ける為にハートランドタワーに向かわなかったらカイトは瓦礫に埋もれたままで、凌牙も場所が分からず彷徨い、カイトと凌牙もいがみ合っていたことは間違いなかった。
下手をすれば時間がかかって全てが間に合わないかもしれなかったのだ。
ゴミ処理場に到着するとMr.ハートランドが待ち受けていた。
頭上にはスフィア・フィールド砲に取り込まれて苦しむハルトと、スフィア・フィールド内で弱り切った遊馬とアストラル……ZEXALの姿があった。
Mr.ハートランドはDr.フェイカーの邪魔をさせない為に複数のオボットを操って戦闘用に変形させ、カイト達の排除を行う。
その数はあまりにも圧倒的だが、オービタル7も遊馬と戦った時と同じ戦闘モードとなり、同じロボットを倒すのは心苦しいがカイトとハルトの為にオボットを破壊する。
カイトと凌牙は一般人を遥かに超える圧倒的な戦闘力でオボット達を次々と破壊していく。
そして……小鳥も破壊されて転がっているオボットの部品を武器代わりにしてオボットを倒していき、その姿にオービタル7も感心する。
「小鳥……お前、俺たちの知らない間にオボット達と戦ってたのか……!??」
「あの時は意識が朦朧としてスフィア・フィールドからの脱出で頭がいっぱいだったからな。それにしても、まさか小鳥があれだけの活躍をするとは……流石だ」
遊馬とアストラルは小鳥の意外な活躍に唖然としていた。
Mr.ハートランドはDr.フェイカーの長年の計画が達成される時を心待ちにしていた。
Dr.フェイカーの夢は自分の夢、Dr.フェイカーに全てを懸けてきたのだ。
だからこそ、ここで誰にも邪魔されるわけにはいかなかったのだ。
Mr.ハートランドは床の扉を開放するとそこには奈落のような深い穴があった。
それは異世界の扉でその先はアストラル世界へと通じており、カイトたちをそこに叩き落とそうとする。
このままでは異世界の扉の中に落とされてしまう……小鳥はこの大量のオボットはどこからか指示を受けて動いており、それを突き止めて破壊すれば良いと閃く。
オービタル7はスキャンモードを起動し、ホストコンピュータを発見した。
オボット達の群れを掻い潜り、オービタル7は気合を入れてジャンプする。
「カシコマリングだ!オイラ!そして、ずっとオイラのターン!!」
実はオービタル7はカイトとハルトを心配して想いやる遊馬の事を馬鹿にしながらも好意的に見ており、いつの間にか遊馬のかっとビングを受け継いでいて自分流にアレンジしていた。
オービタル7はホストコンピュータにアクセスすると、自らの体を犠牲にして大量の電圧を与えてコンピュータに負荷をかけ、オボット達の動きを止めた。
「ちょ、ちょっと待って……!誰か、誰か助けてくださぁーい……!!」
その混乱の中、Mr.ハートランドは乗っていたドローンの出力が落ち、抗うことも出来ずにアストラル世界へと落ちてしまった。
オービタル7はボディに大量の電圧を受けてボロボロになって倒れ、小鳥は駆け寄り、カイトはよくやったと褒めた。
カイトから褒められてオービタル7は本望だと言ってそのまま機能が停止してしまい、小鳥は感謝の言葉と同時に涙を流した。
一方、スフィア・フィールド砲のエネルギーも弱まり始めた。
ZEXALは意識を取り戻して立ち上がると、アストラルは遊馬とのZEXALを解き、遊馬だけをここから脱出させようとする。
ナンバーズのオリジナルであるアストラルは、スフィア・フィールドから出ることが出来ないのだ。
「希望……そして、未来……行くんだ、遊馬。行って、ハルトを助け、アストラル世界を救ってほしい!」
希望と未来の象徴である希望皇ホープと海咬龍シャーク・ドレイクのカードを遊馬に託し、アストラルはスフィア・フィールドから遊馬を突き飛ばした。
「君に未来を託す……!」
アストラルのお陰でスフィア・フィールドから脱出に成功した遊馬だが、スフィア・フィールド砲の発射は迫っている。
遊馬は2枚のナンバーズにアストラルから託された想いに気づいた。
「そうか、そういう事か……!分かったぜ、アストラル!」
遊馬はシャーク・ドレイクのカードを凌牙に差し出す。
「シャーク、カイト!俺に力を貸してくれ!アストラルに託された希望と未来を守るんだ!」
「希望と未来……」
凌牙は遊馬に力を貸すためにアストラルから託された想いに応える為にシャーク・ドレイクのカードを受け取る。
「お前も俺に託すんだな……希望と未来を……」
カイトは超銀河眼の光子龍のカードを取り出し、ハルトを守る為に凌牙と同じ様にアストラルから託された想いに応える。
バラバラだった三人の心は決まり、遂に一つになる。
「俺たちの心は決まったぜ!みんなの未来を懸けて!デュエルで勝負だ、Dr.フェイカー!!」
遊馬は希望皇ホープ、凌牙はシャーク・ドレイク、カイトは超銀河眼の光子龍を掲げる。
世界の未来を救う最後の希望……遊馬と凌牙とカイトの三人の勇者……『三勇士』がここに集結した。
「遊馬、カイト、シャーク……あなた達こそ、みんなの希望。守って、未来を……!」
小鳥はオービタル7を支えながら遊馬達の勝利を願った。
遊馬と凌牙とカイトは力を合わせ、Dr.フェイカーに世界の運命を懸けたラストデュエルを挑む。
ラストデュエルでは特別ルールが適応され、遊馬・凌牙・カイトの3人とDr.フェイカーによる3対1のデュエルで、遊馬達のライフは3人共通で4000ポイント、対するフェイカーは3人分の12000ポイント。
初老のDr.フェイカーがまるでサイボーグのような屈強で異形の姿となり、Dr.フェイカーの先攻から始まる。
Dr.フェイカーはレベル5のモンスター3体を並べてナンバーズの頂に立つ最強のナンバーズ……『No.53 偽骸神Heart-eartH』をエクシーズ召喚する。
遊馬は希望皇ホープを召喚し、Heart-eartHに攻撃を仕掛けるが、Heart-eartHの効果で攻撃力を上げて希望皇ホープを返り討ちにする。
だが、遊馬は希望皇ホープの効果を使い攻撃を無効にし、そこからダブル・アップ・チャンスで、攻撃力を2倍にして再度攻撃した。
遊馬の必勝コンボを繰り出すが、Heart-eartHを倒しきることができなかった。
続いて凌牙はオボットとの戦いで脇腹を怪我しながらも自身を奮い立たせて海咬龍シャーク・ドレイクを召喚し、Heart-eartHの効果の隙を突き、魔法カードのコンボ攻撃で攻める。
そして、カイトのターン。
遊馬と凌牙の思いを受け継ぎ、ハルトを救うために父であるDr.フェイカーに立ち向かう。
カイトは銀河眼の光子竜を召喚し、これで3人のエースモンスターが揃った。
しかし、カイトの体はナンバーズ狩りを続けて体を酷使し、限界を迎えていたのだ。
それでもカイトは体に鞭を振り、デュエルを続行する。
遊馬と凌牙のバトルで、カイトはHeart-eartHの力を見極めて効果を封じ、銀河眼の光子竜の攻撃で勝負を決める。
これで勝負が決まったかに思えたが、Dr.フェイカーのフィールドに新たなモンスターが出現した。
それはHeart-eartHをエクシーズ素材とし、悪魔の心臓から神の龍へと転生した最凶のナンバーズ……『No.92 偽骸神龍Heart-eartH Dragon』がエクシーズ召喚された。
Heart-eartH Dragonの凶悪な効果とそれに相性の良いカードで遊馬達を追い詰める。
遊馬達はそれぞれがセットしたカードや手札にあるカードでライフポイントを守り抜いていく。
遊馬はアストラルから希望皇ホープと共に託された希望……希望皇ホープレイを召喚するが、Heart-eartH Dragonの効果で除外されてしまった。
Dr.フェイカーは遊馬たちの言う絆の力を幻想だと真っ向から否定。
しかし、凌牙の考える絆とは、もっともっと心の奥底で繋がっているもの。
それがあり続ける限り、想いは必ず届くのだと信じていた。
「俺も諦めねえ、やってみせるぜ。俺なりのかっとビングを!!」
凌牙はシャーク・ドレイクを進化させて海咬龍シャーク・ドレイク・バイスを召喚し、Dr.フェイカーを直接攻撃するがそれすらも避けられてしまった。
思うようにダメージを与えられず、満身創痍の凌牙だがその想いはカイトへと届いていた。
再びHeart-eartH Dragonの効果でシャーク・ドレイク・バイスとセットカードが除外された。
だが、凌牙はこの瞬間を狙っていた。
罠カード『エクシーズ・ディメンション・スプラッシュ』はこのカードが除外された時、デッキからレベル8の水属性モンスター2体を特殊召喚する。
凌牙は『エンシェント・シャーク ハイパーメガロドン』を2体を呼び出してカイトに託した。
「お前の想い……確かに受け取った!うぉおおおおおっ!!」
カイトは凌牙の想いに闘志を燃やして体を真紅に輝かせ、銀河眼の光子竜とエンシェント・シャーク ハイパー・メガロドン2体で超銀河眼の光子龍をエクシーズ召喚し、全てのオーバーレイ・ユニットを吸収して攻撃力を上昇させる。
そして、三人の想いを背負った超銀河眼の光子龍の攻撃がHeart-eartH Dragonを打ち砕いた。
Dr.フェイカーに大ダメージを与え、遂にライフを150ポイントまで追い詰めた。
「諦めろ、Dr.フェイカー。もう終わりだ。今すぐハルトを解放しろ!」
そう迫るカイトに、Dr.フェイカーは思わぬ反応を見せる。
「貴様……自分が何をしているのか分かっているのか?ハルトが生き続けるためには、アストラル世界を滅ぼすしかないのだ!!」
衝撃の事実に遊馬達は驚愕する。
そして、何故Dr.フェイカーがナンバーズを集め、アストラル世界を滅ぼそうとしているのか……その真実が語られる。
「ハルトはバリアンの力がなければ生きてはいなかった。生まれながらに虚弱だったハルト、だからこそ私はその命を救う為に異世界に行かねばならなかった……私は、ハルトを救うと決めた時、全てを捨てると決めた!」
それはDr.フェイカーの友だったはずのバイロンや一馬までも……彼らを生贄にすることで異世界の扉を開くことに成功し、その向こうで待っていた者がバリアンだった。
彼らの世界は実体の存在しない、ある種のエネルギー世界で、この世界には無い高次元の能力を持っていた。
Dr.フェイカーは彼らと取り引きを交わし、ハルトを生かす力を得る代わりに、アストラル世界を滅ぼすことを契約した。
だからナンバーズを集め、スフィア・フィールド砲を使おうとしたのだ。
その約束が守られなければ、バリアンはいずれハルトを奪いに来ると……。
Dr.フェイカーがこれまで真実を語ってこなかったのは、カイトを想ってのことだった。
もしもカイトがそれを知れば、一人でその業を背負おうとすると思えたからだ。
しかし、何も言わずナンバーズ・ハンターとして戦ったカイトに感謝していた。
そして、もうこれ以上苦しめたくないという想いもあった。
憎んできたはずの父……Dr.フェイカーが見せた本当の姿。
それは悪魔に魂を売ってでも愛する息子を助けようとした一人の父親だった。
「それは違う!何故家族を信じない!?何故そいつらを信じ、俺を信じてくれない!?……父さん!!」
だからこそカイトは、信じてほしかったと本音をぶつけ……憎んでいたDr.フェイカーを父と呼んだ。
「俺がハルトを守る!絶対に守り抜いてみせる!この命にかえても!!」
カイトのハルトを守ろうとする想いに遊馬と凌牙も賛同する。
「カイト、俺も協力するぜ!バリアンだが何だか知らねえが、俺が一緒にぶっ飛ばしてやる!」
「俺もだ」
「シャーク!」
「勘違いするな、そいつらには貸しがある。俺がぶっ潰してやるぜ!」
遊馬は元より、凌牙もカイトと同様に大切な妹がいる為に同じ兄としてハルトを守ろうとするカイトの想いに賛同したのだ。
カイト達のハルトを想う優しく、強い想いはDr.フェイカーに通じた。
Dr.フェイカーはカイト達を信じ、全ての計画をやめる決心を付いた……その時だった。
突如、Dr.フェイカーは急に苦しみ出す。
そして、Dr.フェイカーの中から出てきたのは……赤い体を持つ不気味な精霊だった。
「九十九遊馬、天城カイト、神代凌牙……デュエルの決着は付いてないぞ」
「誰だお前は!?」
「フフ……我こそはバリアン!」
「バリアンだと!?」
それはバリアン世界から現れた使者だった。
バリアンはアストラル世界を滅ぼすために現れ、Dr.フェイカーの体を乗っ取って一体化し、Dr.フェイカーがまるで紅い悪魔の様な姿となって遊馬達にデュエルの続きを挑んできた。
Heart-eartH Dragonは破壊された時に復活する効果があり、墓地から蘇ると除外されているカードの数だけ攻撃力を上昇させる。
満身創痍とも言えるカイトだが、ハルトを守るため、ここで屈するつもりはない。
しかし、カイト渾身の一撃は、空しくもかわされてしまい、モンスターがいなくなってしまった遊馬たち。
凌牙とカイトは二人ともその場で膝をつき、今にも倒れそうになっていた。
残りライフも100という僅かという絶体絶命の状況……すると突然、ハルトの体が輝き出した。
遊馬やカイトの頑張りに感化され、自らの持つバリアンの力でスフィア・フィールドを砲台から切り離したのだ。
これはアストラルを解放するチャンスにもなる。
「遊馬、今だ、アストラルの元へ行け!」
「カイト…」
「遊馬、お前とアストラルの力、奴に見せてやれ!」
「シャーク…」
シャークとカイトに促され、遊馬は気合を入れてその場でバク転をして下がり、助走をつけて大ジャンプする。
「うぉおおおお!! かっとビングだ、俺!!」
大ジャンプした遊馬は降りてきたスフィア・フィールドの中にいるアストラルの元へ向かう。
「遊馬!」
「アストラル!」
スフィア・フィールドに突入した遊馬はアストラルと手を重ねる。
「俺とお前で、オーバーレイ!俺たち二人でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
「遠き二つの魂が交わる時、語り継がれし力が現れる!」
再び遊馬とアストラルの肉体と魂が一つに合体し、奇跡の力が再臨する。
「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!」」
ZEXALとなった遊馬とアストラルはバリアンと決着をつける為のラストターンを決める。
シャイニング・ドローにより新たなZWを創造し、自分フィールドに召喚する。
「「『ZW - 玄武絶対聖盾』を召喚!」」
それは亀の幻獣、玄武をモチーフにしたZWで除外されたモンスターを特殊召喚する効果を持つ。
これで復活させるのはZEXALの希望皇ホープレイ、凌牙のシャーク・ドレイク・バイス、カイトの超銀河眼の光子龍。
「「甦れ、CNo.39 希望皇ホープレイ!」」
「遊馬、行くぜ!」
「俺達の力を合わせるぞ!!」
「吼えろ、CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス!」
「蘇れ、我が魂!超銀河眼の光子龍!!」
凌牙とカイトは立ち上がり、それぞれ光を纏って除外されたエースモンスターを呼び出した。
「見たか!これが俺たちの底力だ!!」
それと同時にHeart-eartH Dragonの攻撃力は2000となった。
しかし、バリアンはスフィア・フィールド砲を復活させる。
アストラルは逃したが、充填したエネルギーは十分で全員まとめてアストラル世界と共に滅ぼすつもりだった。
ZEXALは希望皇ホープレイに玄武絶対聖盾を装備し、守備力は2000ポイントアップする。
そして更なる装備魔法の『エクシーズ・ユニティ』を希望皇ホープレイに装備し、連続攻撃を行うがバリアンは永続罠の『バリアンズ・バトル・バスター』を発動して攻撃を無効にしていく。
そして、バリアンはバリアンズ・バトル・バスターを墓地に送ることで、フィールドのモンスターを強制的にバトルするよう仕向けた。
このまま希望皇ホープレイがバトルすれば、6800のダメージが跳ね返ってしまうが……。
「「それはどうかな?」」
ZEXALは不敵な笑みを浮かべ、装備した玄武絶対聖盾には更なる効果を発動する。
これが装備カードの時、発生した効果ダメージを無効にし、その数値分だけ攻撃力に加える。
これにより希望皇ホープレイの攻撃力は16600へと上昇し、玄武絶対聖盾が光となって大剣が取り込まれて背丈の何倍にも巨大化し、希望皇ホープレイの体が金色に輝く。
「バカな、バカな……バカなぁあああああっ!?」
まさかの逆転により、バリアンは絶望に叩き落とされることとなる。
そして、効果が無効になったHeart-eartH Dragonに最後の攻撃を繰り出す。
「「ホープ剣・アルティメット・スラッシュ!!!」」
希望皇ホープレイの究極の一撃がHeart-eartH Dragonを斬り裂き、ZEXAL達の勝利となった。
「見たか、バリアン!これが俺たちの絆だ!!」
バリアンはDr.フェイカーの体から弾き出されて何処かへと消え去った。
だがその直後、スフィア・フィールド砲が崩壊を始めた。
ハルトはスフィア・フィールド砲から解放され、カイトが受け止める。
「兄さん……」
「もう大丈夫だ。お前の悪夢は全て消え去った……」
ハルトの表情はとても穏やかで与えられていたバリアンの力が消えていたが、その肉体は結果的に健康になっていたのだ。
すると、崩壊するタワーから瓦礫が降り注ぎ、凌牙はとっさにZEXAL達を守って大怪我を負い、遂には動けなくなってしまう。
その一方で力尽きたDr.フェイカーはアストラル世界へと落下してしまう。
カイトは再起動して復活したオービタル7にハルト達を託し、Dr.フェイカーを助ける為に飛び降りる。
「父さんは連れて来る!必ず連れて帰る!」
「小鳥、みんなを頼んだ!」
「えっ!?」
「行くのか?」
「ああ、かっとビングだ!」
ZEXALは小鳥に後を任せてカイトに続いて飛び降りた。
小鳥は背中にオービタル7を装着して飛行モードになり、動けないハルトと凌牙を連れて先に崩壊するハートランドタワーから脱出する。
落下するDr.フェイカーをカイトは手を取るが、足場が崩れて落ちそうになり、もう片方の手でデュエル・アンカーを投げてどこかに引っ掛けようとしたが、ZEXALがそれを掴んだ。
「遊馬!?」
「何故だ、九十九遊馬……何故お前は私を……?」
Dr.フェイカーは一馬を奪った仇敵であるはずの自分を助けようとしている遊馬に驚く。
遊馬は自分の思いを、Dr.フェイカーに対する答えを静かに語る。
「あんたのことは憎いさ。けどあんたは一生懸命ハルトを生かそうとした。きっと父ちゃんなら仕方がないって笑う……」
遊馬はハルトを救おうとしたDr.フェイカーの想い、そして大好きな父の想い……その全てを理解し、復讐をしない道を選んだのだ。
「遊馬君……」
遊馬の復讐をしない道にマシュは涙を流して感動した。
マシュだけでは無い、遊馬の選んだ道に多くのものが感動していた。
「ハッ……!?」
その時、Dr.フェイカーの目にはZEXAL……遊馬に一馬を重ねて見えた。
「もう良いのだ、遊馬……私の犯した罪は大きい……私は許されるべきではない……」
自らの犯した罪の重さを悔いるフェイカー。
「父さん……!」
「そうだよ、君の罪は重すぎる」
「トロン!?」
そんな時に異空間に飛ばされたはずのトロン……バイロンが現れる。
「トロン……止めろ、トロン!もう復讐は終わったんだ……!」
「バ、バイロン……頼む、バイロン……カイト達に罪は無い……悪いのは全て私だ!」
Dr.フェイカーは復讐をするなら自分だけにしてくれ、せめてカイト達を助けてくれと命乞いをする。
「父さん……」
「止めろ、トロン!」
「これが私の……最後の力だ!」
そして、トロンはその体から光を放つとZEXALたちを突き落とし、光に包まれた。
小鳥達はタワーから脱出し、遊馬達の無事を祈る……すると、時空の歪みと共に遊馬達が現れた。
小鳥は遊馬達の無事に安堵し、涙を流し、凌牙もホッとした表情を浮かべた。
「父さん!兄さん!」
ハルトはDr.フェイカーに駆け寄り、Dr.フェイカーは元気になったハルトを抱きしめる。
トロンによって突き落とされた時……異空間にてDr.フェイカーと最後の言葉を交わしたのだ。
「バイロン……!」
「フェイカー……」
「バイロン……すまなかった……」
「さらばだ、友よ……」
トロンは……バイロンは最後の最後で、友であるDr.フェイカーの裏切りと罪を許し、最後の力を使って命を助けたのだ。
「こんな私を許してくれた、バイロン……」
罪深い自分を許し、救ってくれたトロンに対し、Dr.フェイカーは感謝や罪悪感など気持ちが複雑に絡み合いながら涙を流す。
こうして、長きに渡る戦いは終わり、その結果はとても良いものとなった。
トロンは復讐心から解放され、Dr.フェイカーを許したのだ。
Dr.フェイカーはハルトが元気になり、カイトとも和解することが出来た。
それは全て、遊馬のかっとビング……諦めない心と仲間を信じる絆が、みんなに希望の光を与えたのだ。
「遊馬……君の諦めない心が、仲間を信じる絆がみんなに希望の光を取り戻してくれた。ありがとう……」
アストラルはこの戦いで見せた遊馬の大きな強さを改めて感じた。
大怪我をした凌牙はゴーシュと魂を解放されてすぐに復帰したドロワと共にヘリコプターで病院へと送られる。
壮絶な戦いの後の静けさが広がり、アストラルはこれで終わったと呟く。
「終わったようだな、デュエルカーニバル」
「いいや!終わってない!まだ、デュエルカーニバルで優勝した商品をもらってねえ!デュエルカーニバル優勝者は自分の望みを叶えてもらえるんだよな!」
こんな時に空気の読めない発言をする遊馬に小鳥は何を言うのかと心配するが、遊馬の望み……それは誰も予想のつかないものだった。
「俺の望みはカイトたち親子が仲良く暮らすことだ!!」
その望みに食堂にいる誰もが驚愕した。
父を奪った仇敵であるDr.フェイカーを許すどころか、カイトとハルトと一緒に仲良く暮らすと言う家族の幸せを願った。
それは誰にでも出来ることではなく、遊馬の持つ心の優しさと強さに驚愕と共に感嘆するのだった。
「ああ、もう……本当に君は……呆れるぐらいに、カッコよくて優しいんだから……」
第二特異点のローマで事の顛末を既に聞いていたブーディカだったが、映像で改めて遊馬のその勇ましく優しい姿に心を打たれて涙が溢れていた。
一方でブーディカとは真逆の反応をする者がいた。
「馬鹿な……!?何故だ、何故お前はそこまで……」
エドモンは遊馬の出した復讐に対する答え、そしてその先の願いに困惑していた。
本来ならば遊馬にも復讐者としてDr.フェイカーに復讐する権利はある。
だが遊馬はそれどころか自分よりも仇敵の幸せを願った。
これほどまでに復讐者と言う存在を揺るがすほどの強さと優しさを持つ者はそうはいない。
エドモンは遊馬の事をまだまだよく知れていない、もっと理解を深めるべきだと悟った。
「……フッ、余計なお世話だ」
遊馬の望みにカイトは小さく笑みを浮かべながら素直にそれを受け取らなかった。
そんな事をしなくても自分達はこれからの未来を歩んでいく。
だからこそカイトは挑発して遊馬の本当の望みを引き出す。
「あーっ!わかったよ!わかった!だったら俺の本当の望みだ!カイト!!お前との決着がまだついてねぇ!俺とデュエルだ!!」
「なるほど、面白い。事実上の決勝戦というわけか!」
「良いだろう、受けてやる……遊馬、アストラル!」
遊馬はカイトと何のしがらみもないデュエルを望み、カイトもそれを受け入れる。
ここに遊馬とカイトのWDCの事実上の決勝戦が始まる。
実質的の大敗だった初めてのデュエル以降、皇の鍵の中のデュエルではアストラルとZEXALになり引き分け、そしてハルトを助けるためにタッグデュエルを行った。
それらで感じられたのは、カイトの圧倒的な強さ。
だがその強さこそが、遊馬にとって越えるべき大きな目標となっていたのだ。
アストラルと一緒に必ずカイトに勝つと遊馬はいつになく意気込んでいた。
互いの準備が終わり、広場にて対峙する遊馬とアストラルとカイト。
「カイト!今日こそ決着をつけてやる!」
「デュエリストのプライドを賭けて君に挑む! そして勝つ!!」
「遊馬、アストラル。俺の全力を懸けて、受けて立ってやろう!」
デュエリストの全てを懸けた全力のデュエル。
小鳥と合流した鉄男達だけでなく、凌牙を病院に送って戻って来たゴーシュやドロワも見守る中、遂に二人のデュエルが始まる。
「遊馬!負けたらタダじゃおかないからね!アストラルもむっつりしてないで頑張るのよ!」
小鳥は遊馬にいつものように声援を送るが……アストラルにも声援を送った。
「えっ……?お前まさか、こいつが見えるの!?」
「何だか見えるようになっちゃった♪」
「「「えぇ〜っ!?」」」
普通の人には見えていないはずのアストラルの姿。
どうやら先ほどのバリアン世界の使者とのデュエルがきっかけで、小鳥とカイトと凌牙にもアストラルが見えるようになったらしい。
そうでなくても小鳥はこれまで誰よりも遊馬とアストラルのナンバーズを懸けたデュエルを間近で見てきたのだ。
その肉体と魂に何らかの変化が起きてもおかしくはなかった。
これで小鳥はいつでもアストラルと話が出来るようになり、小鳥は嬉しそうにしていた。
遊馬は銀河眼の光子竜対策の戦術を取るが、カイトは得意の銀河眼の光子竜と敵のカードを封じる戦術で攻める。
「そうだよなカイト…やっぱお前とのデュエルはこうでなくっちゃな!面白れぇな!」
「面白い……?俺の戦術のどこが面白い?」
「戦術なんて知らねぇよ。俺は心のドキドキを言ってるんだよ!」
「心のドキドキ?」
「このドキドキがデュエルなんだ!これがかっとビングなんだ!そして、デュエルをすれば相手の事がすっげぇわかる!仲間になれるんだ!こうやってドキドキが伝わってみんな集まってくれたんだ!」
「私もドキドキしてる……遊馬とカイトのデュエルに……!」
デュエルをまだやったことの無い小鳥でも遊馬とカイトのデュエルに胸を弾ませていた。
それほどまでに遊馬とカイトのデュエルは人を魅了させる力があるのだ。
「このドキドキがあればみんな仲間になれる!デュエルで一つになれる!カイト!お前もそうだろ!?」
「だったらお前の全力を見せてみろ!ナンバーズだ!俺の真の勝利はお前達のナンバーズを倒してこそ。さぁ呼べ!ナンバーズを!」
「ああ。見せてやるぜ。俺のかっとビングを!」
遊馬もエースモンスターの希望皇ホープを召喚し、初めてのデュエルの時と同じように希望皇ホープと銀河眼の光子竜が対峙する。
しかし、今のままではモンスターエクシーズキラーの銀河眼の光子竜の前に破れてしまうが、遊馬には銀河眼の光子竜対策のもう一つの戦術があった。
遊馬は希望皇ホープの攻撃無効効果に適した速攻魔法カードを使用して銀河眼の光子竜の効果を無効にし、カイトの戦術を越えて遂に銀河眼の光子竜を破壊することが出来た。
希望皇ホープの攻撃で銀河眼の光子竜を破壊し、カイトに大ダメージを与えて遊馬は一つの目標を越えられて浮かれまくった。
その姿にカイトはこれまでの遊馬の戦いぶりを思い出すことになった。
何度失敗しようと、どんなピンチに立たされようと、諦めず必死になって立ち上がり、デュエルを心の底から楽しんでいた。
そう考えた時、カイトはある決断をした。
「遊馬、アストラル。これで終わりだ……俺にはもう、デュエルは出来ない。このデュエル、サレンダーする」
カイトは自ら敗北を認めてデュエルをここで終わらせようというのだ。
カイトの突然の言い出しに遊馬達は驚愕する。
カイトはデュエルする意味を見い出せなくなってしまったのだ。
これまではハルトを救い為だけにデュエルを行ってきたが、ハルトが救われた今……戦う意味が無くなってしまったというのだ。
もう遊馬のように熱くデュエルすることは出来ないのだと……。
カイトの言い分にアストラルは否定した。
「カイト。それは違う。遊馬はナンバーズを集めるために私と共に戦い、勝利は私に記憶をもたらしてくれた。だがそれは過去の集まりに過ぎない。遊馬とのデュエルはもっと大切な物を私にもたらしてくれた。それは仲間だ。デュエルを通じて心と心で語り合い絆を深めていった仲間……」
アストラルにとってナンバーズを、記憶を集めるのは大切な事だが、遊馬と出会い、重ねていったデュエルは記憶よりも大切なものを与えてくれた。
「カイト。君もそうだ。私にとって君は大切な仲間だ。記憶は過去のものだ。仲間は未来にある。君ももう過去に縛られる必要はない」
遊馬と同様にアストラルもカイトを大切な仲間と認めている。
「そして、この事に君も気付いていたのではないか?だからこの場所に来たのではないか?」
カイトも口では語らないが、既に遊馬とアストラルの事を仲間として認めている。
「俺は……」
悩み続けるカイトに遊馬が声を掛けた。
「カイト!カイトビングだ!カイト!」
遊馬はカイトに対し、カイトだけの持つかっとビングで一歩を踏み出せと励ました。
「俺は感じていたぜ!お前のドキドキを!だがお前のドキドキはこんなもんじゃねぇ!もっとだ!もっと見せてくれよ俺に!感じさせてくれよ!カイトビングを!」
遊馬の偽りのない真っ直ぐで純粋な言葉……それはカイトの悩みと迷いを吹っ切れさせた。
「……フン。ドキドキじゃ飽き足らぬ。この先に何が待つかわからない。だが切り開いてやろう!俺の道を!俺のデュエルを!」
カイトの中にかっとビング……否、カイトビングが宿り、カイトはナンバーズ・ハンターとしてではなく、一人のデュエリストとして新たな未来への道を切り開く。
一方……遊馬とカイトのデュエルを見守る者達がいた。
「どうやらカイトは自分のデュエルを取り戻したようだね。九十九遊馬……まったく不思議な奴。一馬の息子か……」
それは……トロン、III、Ⅳ、Vの四人だった。
四人は遊馬のかっとビングのお陰でバラバラだった家族が再び一つとなったのだ。
「さぁ、帰ろう。僕達の場所に……クリス。トーマス。ミハエル」
トロン達は遊馬達に別れを告げずにそのまま異空間を開いて何処かへと消えてしまうが、トロン達はもう復讐の道には進まない。
元の仲の良かった家族として未来を歩き始めたのだ。
「遊馬……またいつか、きっと」
IIIは遊馬との再会を願い、トロン達と一緒に消えていった。
カイトの悩みと迷いも晴れ、デュエルは中盤戦へと突入した。
カイトは銀河眼の光子竜を失い、ナンバーズ・ハンターとして回収したナンバーズの全てはアストラルの手にあるが、まだ強力な効果を持つモンスターがある。
光属性レベル4のモンスター2体で『輝光子パラディオス』をエクシーズ召喚し、希望皇ホープの効果を無効にして破壊した。
遊馬はカイトの強さを改めて感じ、その壁を意地でも越えてやると意気込む。
負けじと遊馬は戦士族レベル4のモンスター2体でエクシーズ召喚したのは……。
「現れろ!『H - C エクスカリバー』!!!」
ゴーシュから想いと共に受け継いだモンスター、エクスカリバーだった。
「おっ!あれ俺がやったモンスターじゃねえか!ぶちかませ、遊馬!」
エクスカリバーの登場に当然ゴーシュは大興奮した。
「ゴーシュ、お前はどっちの味方だ?」
しかしトロワはカイトのピンチであるため、ゴーシュの態度に不満をもらしていた。
「一刀両断、必殺神剣!」
エクスカリバーの攻撃でパラディオスを撃破し、大ダメージを受けたカイトは、ライフが200ポイントまで減ってしまった。
カイトは装備魔法『銀河零式』で銀河眼の光子竜を復活させて、エクスカリバーを破壊し、遊馬のライフポイントも残り300と僅かとなる。
遊馬も同じく装備魔法で墓地から希望皇ホープを特殊召喚し、希望皇ホープレイへと進化させる。
希望皇ホープレイの姿にカイトは新たな誓いを立てる。
「ホープレイ……希望……アストラル。お前は言った。もう過去に縛られる必要はないと」
「ああ」
「俺のデュエルは誓いのデュエルだった。ハルトを絶対助けると誓いながらデュエルをしていた。だがこれからは……望み、希望……俺自身のためのデュエルをする!」
「そうだよカイト!未来は俺達のもんだ!俺達が決めるんだ!」
己が決めた未来を突き進む遊馬とカイトは一進一退の攻防を繰り出す。
最強クラスのデュエリストと言っても過言では無いカイトと対等以上に渡り合えるほどまでに成長した遊馬にアストラルは感心していた。
「遊馬、君は強くなったな。君のかっとビングの精神は本当に素晴らしい。君はもう一人でも……」
もう自分は必要ないと思えるほどにこの数ヶ月で成長した遊馬にアストラルは僅かな寂しさを覚えるが、遊馬は否定する。
「何言ってんだ!俺達は二人で一つのかっとビングだ!ずっと一緒に……前に進もうぜ!」
遊馬はアストラルがいなければここまで強くなることは出来なかった。
今では文字通りに一心同体になるほどの絆を深めている。
これからもアストラルと一緒に強くなりたいと遊馬は願った。
「……遊馬、勝つぞ!」
「ああ!」
カイトはこのターンで決める為に最後の切り札を召喚する。
カイトは『銀河の魔導師』を召喚し、その効果でレベルが8となり、2体分のエクシーズ素材とすることが出来るモンスターで銀河眼の光子竜とオーバーレイし、超銀河眼の光子龍をエクシーズ召喚する。
遊馬のフィールドにはモンスターはなく、超銀河眼の光子龍のダイレクトアタックをするが、遊馬は永続罠『ディメンション・ゲート』の効果で除外していた希望皇ホープレイを復活させる。
希望皇ホープレイと今の超銀河眼の光子龍は攻撃力が互角のため、相討ちとなった。
だが遊馬はこれで終わらない。
「行け!遊馬!」
「よっしゃ!かっとビングだ!俺!速攻魔法!『エクシーズ・ダブル・バック』発動!モンスターエクシーズ1体が破壊されフィールド上からモンスターがいなくなった時、破壊されたモンスターエクシーズ1体とその攻撃力以下のモンスター1体を墓地から特殊召喚出来る!現れろ!希望皇ホープ!希望皇ホープレイ!!」
エクシーズ・ダブル・バックの効果で遊馬のフィールドに希望皇ホープと希望皇ホープレイが並び立つ。
白と金色の希望皇ホープ、漆黒の希望皇ホープレイ……2体の希望皇が並び立ち、通常では実現が難しい展開はまさに壮観だった。
これで次のターン、遊馬の勝利が決まった。
ところが……カイトのフィールドに銀河の光が爆発する。
カイトのフィールドに銀河眼の光子竜と超銀河眼の光子龍が姿を現した。
カイトも遊馬と同じくエクシーズ・ダブル・バックを発動させたのだ。
攻撃力はいずれもカイトの銀河眼の光子竜と超銀河眼の光子龍の方が上……遊馬にはその攻撃を防ぐ手立てなど残されてはいない。
「銀河眼と超銀河眼の2体でホープレイとホープを攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!アルティメット・フォトン・ストリーム!!」
「ぐあぁぁぁああ!!」
ダブルギャラクシーアイズの攻撃により、ダブルホープは撃破され……デュエルに決着がついた。
今回のデュエルは僅差でカイトの勝利となった。
「いてて……負けちまった……」
ぶっ飛ばされて倒れた遊馬にカイトは近づいて手を差し伸べ、遊馬はその手を取って立ち上がる。
「カイト……次は絶対お前に勝ってやるからな!」
「何度でも相手になってやる。何度でもな」
遊馬の挑戦をカイトは何度でも受けるつもりでいた。
「ああ!やってやる!諦めなければ!かっとび続ければいつかお前に辿り着けるかもしれないからな!」
今はまだカイトの方が上だが、いつの日か……遊馬が諦めずにかっとビングを続ければカイトに辿り着けるかもしれないと疑わない。
カイトは遊馬の言葉に笑みを浮かべてオービタル7を装着し、飛行形態となって家族の元へと帰っていく。
「遊馬〜!」
小鳥達はデュエルが終わった遊馬に駆け寄る。
「小鳥……」
すると次の瞬間、遊馬は力が抜けたように小鳥に倒れ込んでしまった。
「遊馬?」
小鳥はその場で座り込み、遊馬はそのまま小鳥に膝枕してもらいながら熟睡してしまった。
「遊馬、遊馬ったら、もう……」
みんなの想いを背負って戦う激戦に次ぐ激戦……世界の命運を懸けた戦い……そして、カイトとのデュエルに流石の遊馬も体力と精神力が限界が来て眠りについてしまったのだ。
「ねえ、アストラル。遊馬を……」
「私にはどうすることも出来ない……」
熟睡してしまった遊馬にアストラルも何も出来ずにお手上げだった。
「むにゃむにゃ、かっとビングだぜぇ……」
遊馬は嬉しそうな夢を見て寝言を言っていた。
「しょうがない……しばらくこのままにしてあげるか」
小鳥は頑張った遊馬の頭を撫でそのまま膝枕をして眠らせてあげることにした。
アストラルは沈む夕日を眺めながら新たな発見をすることになった。
「観察結果その21。気持ちの良い敗北も……どうやらあるらしい」
アストラルは新たな発見をし、この心地よく素晴らしい時を深く感じて噛み締めていた。
数多の陰謀が渦巻くWDCが本当に完結し、全てを救い出した遊馬とアストラル。
こうして二人の戦いに一つの終わりが迎えるのだった。
遊☆戯☆王ZEXAL第一部……これにて完結となり、エンドロールが流れる。
数分間のエンドロールが終わり、食堂が明るくなるかと思いきや、まだ映画には続きがあった。
舞台が一変し、場所は真紅に輝く異世界……バリアン世界。
バリアン世界では先の戦いから新たな刺客が動き出そうとしていた。
王座の間のような場所にローブに身を包んだ四人の者達がいた。
不気味な雰囲気を漂わせる四人は人間界でバリアンの使者を退けた遊馬とアストラルの存在を危険視した。
「九十九遊馬、アストラル。私の想定外だ。次は……我々が出ねばなるまい!」
遊馬とアストラルの戦い……一つの大きな戦い終わり、また新たな戦いの幕開けとなる。
謎に包まれた異世界、バリアン世界との戦いが始まろうとしていた。
映像はそこで終わり、食堂が明るくなるとダ・ヴィンチちゃんが立ち上がる。
「これにて遊☆戯☆王ZEXAL第一部は完結!第二部は現在製作中だから乞うご期待!」
遊馬とアストラルの戦いはまだ続くが、それが公開されるのは少し先の話。
映画が終わると遊馬とアストラルと小鳥の周囲にみんなが集まる。
その時の戦いや行動の心境はどうだったなど、何故そうしたのかと色々話をする。
その日は夜遅くまで食堂で遊馬達の話をネタに宴が行われるのだった。
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マシュ「遊馬君……まだ私はあなたとアストラルさんの戦いの全てを見てませんが、お二人の不屈の絆と強さに近づけるようにもっおもっと頑張ります。マシュビングです、私!」
ジャンヌ「全てを救う……これは余りにも難しく、不可能に近いことです。それは恐らく神にも不可能な事です。しかし、遊馬君とアストラルさんは全てを救い、そして世界を救った……お二人は神をも超えたと思います」
レティシア「もう呆れ果てるわ……ここまで馬鹿でお人好しがみんなを、世界を救うなんてね。でも、そんな諦めないあんただからこそ虚ろな私を救ってくれた……私はあんたに出会えて幸せよ」
清姫「旦那様……今回の一連の戦い、とても難しい葛藤が続いておりましたが、よくあれだけのご立派なご判断されたと思います。それから……悔しいですが、小鳥さんとアストラルさんの存在はやはり旦那様には必要不可欠だと感じました。やはりお二方との絆は強いですね」
ブーディカ「ユウマ、やっぱり君は本当に凄いよ。話には聞いていたけど、両親が行方不明になる元凶……仇敵に復讐せずに、最後は仇敵とその家族の幸せを願った。それは誰にでも出来ることじゃない。君がマスターで私はとても誇りに思うよ。それと……寂しかったら、いつでも言ってね。大したことはできないけれど、君のお母さんの代わりになってあげるからね」
アタランテ「やはり……ユウマは両親がいなくなって寂しかったのだな。だからこそ、大人達に子供としての思いの全てをぶつけた。そして、自分が不幸せで辛いのを必死に押し殺しながら、他の辛い者達を全力で救おうとしている……本当にお前は優しすぎる子だ……」
ネロ「ユウマよ、お主は本当に優しく強い奴だ。敵である存在とその家族に心を向け、手を差し伸べる……そんなお主だからこそ、余は惚れたのだ……流石は余の自慢の夫だ!惚れ直したぞ!!」
武蔵「こんなにも複雑な状況をよく全て解決できたね……いや、全部解決出来たわけじゃ無いけど、少なくとも遊馬やアストラルが納得出来る結果になった。凄いや、剣を振るってるだけの私じゃ絶対に無理だよ。未来を信じる子供の願いが道を切り開いたわけだね……」
桜「お兄ちゃんも辛い思いを重ねてきたんだね……そして、お兄ちゃんは頑張って全てを救った……私、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんで幸せだよ!」
ジャック「おかあさんの戦いは辛いことばかりだけど、おかあさんは諦めずに戦った……私達もかっとビングで絶対に諦めない!」
エドモン「何故だ……何故復讐をしない!?Dr.フェイカーは事情があるにせよ、マスターから父を奪った!マスターには復讐する権利はある!恨み言の一つでも言えばいい!一発顔を殴ってもいい!しかし、貴様はそれどころか、その者達の幸せを願った……本当に貴様はアヴェンジャーキラーだな!フッ、貴様のような奴は俺みたいな奴が側にいなければ不安で仕方ない、せいぜい覚悟するんだな!!」
天草「罪を憎んで人を憎まずと言う言葉がありますが、マスターはそれを越えてその者とその家族の幸せを願う……素晴らしい!マスター、やはりあなたは私とは比べ物にならないほどの本物の英雄です!」
アルトリア「私はかつて皆の理想を背負って戦ってきました……そして、マスターは多くの人の願いや想いの全てを背負って戦った。マスターはその小さな背中に多くのものを背負いながらも、その言葉と行動の一つ一つが全てを救い、幸せへと導いた……あなたは私以上の素晴らしい『皇』です!天晴れです、マスター!!」
エミヤ「友の復讐を終わらせ、他者の家族を幸せにし、そして世界を救う……全く、僅かな時間でこれだけのことをやり遂げるとは恐れ入ったよ。君のかっとビングが切り開いた未来……君こそ、本当の『正義の味方』かもしれないな……」
次回はカルデアの日常を投稿し、その次はいよいよ第五特異点を書き始めます!
やっとこの時が来ました……!
大好きなスカサハ師匠を出せる……!
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