Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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カルナって本当に強すぎてヤバいですね。
まあインド系のサーヴァントが化け物揃いってのもありますが。
聖杯大戦でジークとアストルフォ、よく戦い抜いたな……。


ナンバーズ119 傷ついた大英雄

エジソンの考えるアメリカだけの世界を作る歪んだ考えに反対した遊馬達は共闘を断った。

 

「その誠実さ、真摯さ。トーマス・アルバ・エジソンとしては許すべきなのだろう。しかし、残念だ。大統王としての私はお前達をここで断罪せねばならん」

 

エジソンはここで遊馬達を倒すと宣言するが、それにエレナが真っ向から反論する。

 

「ま、待ちなさい、エジソン!この子達を傷つけることは許さないわ!安全は保障するって約束したんだから!!」

 

「それはならん!今ここで彼らを断罪せねば後々アメリカの脅威になる!カルナ君、頼んだぞ!」

 

「……承知した」

 

「くっ……」

 

エレナは唇を噛み締めて悔しそうにしながら遊馬達に申し訳無さそうな表情を向けた。

 

安全を保障すると言う約束を守れなかったエレナに対しては遊馬達はこの状況では仕方ないと許していた。

 

遊馬は手札から装備カードを希望皇ホープに装備する。

 

「希望皇ホープに装備魔法『ホープ剣スラッシュ』を装備!」

 

それは希望皇ホープの攻撃名であるホープ剣・スラッシュと同じ名前のカードで、デュエルモンスターズではモンスターの攻撃名と同じ名前のカードが存在し、通称『必殺技カード』と呼ばれている。

 

発動したホープ剣スラッシュのカードはクルクルと回転しながら希望皇ホープの体内に取り込まれるが、特に攻撃力と守備力に変化は起きていない。

 

「装備された希望皇ホープは効果では破壊されない。カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

先行は攻撃出来ないので遊馬は希望皇ホープを呼び出して次のターンに備えた。

 

カルナは本能で希望皇ホープが現れた時からあれは真っ先に倒さないといけないと察した。

 

神をも打ち倒す力を秘めた神霊の戦士・希望皇ホープ。

 

カルナは多少場内が破壊されても仕方ないと判断して宝具を発動する。

 

「真の英雄は目で殺す!『梵天よ、地を覆え』!!」

 

カルナの右眼が光り輝き、極大のレーザービームを放つ。

 

それは遊馬達の意識を奪った時に使用した宝具だった。

 

「希望皇ホープの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」

 

希望皇ホープはオーバーレイ・ユニットを取り込んで片翼を半月の形に展開し、カルナのレーザービームを防いだ。

 

「オレの宝具を防いだ……!?」

 

「馬鹿な……!?カルナ君の宝具を防ぐとは……!?」

 

「凄いわね……うちのカルナに匹敵する召喚獣なんて……本当に凄い」

 

希望皇ホープがカルナの宝具を防いだ事に、カルナ本人だけでなくエジソンとエレナも驚いていた。

 

「この瞬間、ホープ剣スラッシュの効果!攻撃が無効になる度にこのカードにホープ剣カウンターを1つ置く!希望皇ホープはホープ剣カウンターの数×500ポイントアップする!」

 

ホープ剣が描かれた小さな宝玉が現れて希望皇ホープの胸の宝玉に取り込まれ、攻撃力が上昇し、希望皇ホープの真紅の瞳が力強く輝く。

 

「どうだ!これが、俺たちの力だ!!」

 

自信満々に堂々と言葉を発する遊馬とその隣で静かに強い意志を瞳に宿すアストラル、そして二人の想いを背負っている希望皇ホープ。

 

「これが異世界の英雄達の力か……」

 

カルナは遊馬達のその姿に英雄と呼ぶに相応しい強い光を感じた。

 

遊馬は右手を高く掲げて全ての力を込める。

 

「カルナ!お前に見せてやるぜ、世界を越えた俺たちの絆の力を!」

 

右手が真紅に輝き、カオスの力を解き放つ。

 

「俺のターン!力を借りるぜ、璃緒……メラグ!!」

 

遊馬の隣に璃緒……バリアン七皇の紅一点、メラグの幻影が現れる。

 

メラグは後ろから遊馬の両肩に優しく手を置いて頷く。

 

「行くぜ、バリアンズ・カオス・ドロー!」

 

真紅に輝く右手でドローし、デッキトップに移動させたカードを発動させる。

 

「俺はドローしたこのカード、『RUM - 七皇の剣』を発動!このカードは通常ドローをした時に発動する事が出来る!エクストラデッキ、または墓地から『オーバーハンドレッド・ナンバーズ』を特殊召喚して、そのモンスターをカオス化させる!」

 

眩い閃光と共に『103』の刻印が輝き、辺りに気温を一気に下がらせる吹雪が吹き荒れる。

 

「現れろ、No.103!全てを凍らせる戦乙女の氷結の刃が、神を葬る!『神葬零嬢ラグナ・ゼロ』!!」

 

吹雪の中から氷の剣を携え、神を葬る力を秘めた令嬢が姿を現わす。

 

「そして、神葬零嬢ラグナ・ゼロでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

神葬零嬢ラグナ・ゼロが赤い光となって天に昇り、光の爆発が起きる。

 

謁見の間が一瞬で冷たい氷原と化し、その中央に光の球体が現れる。

 

「現れろ、CNo.103!時をも凍らす無限の力が、今、蘇る!『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』!!」

 

光の中から氷の剣から神の命を刈り取る真紅の大鎌を携え、黒と紫の衣装を身に纏う美しき令嬢が現れる。

 

希望皇ホープとはまた異なる新たな神霊の戦士にエジソン達は驚愕する。

 

「更に魔法カード、『アームズ・ホール』!このターン、通常召喚出来ない代わりに、デッキトップを墓地に送り、デッキ・墓地から装備魔法を手札に加える!」

 

デッキトップを墓地に送り、デッキから装備魔法を手札に加えて発動する。

 

「装備魔法、『災いの装備品』を……カルナ、お前に装備する!」

 

不気味な顔の模様をした紫色の装備品が現れ、カルナに無理矢理装着される。

 

装備カードは自分のモンスターだけではなく、相手にも装備をすることが出来る。

 

「何だと!?」

 

「災いの装備品を装備したカルナの攻撃力は、俺のフィールド上に存在するモンスターの数×600ポイントダウンする。俺のフィールドには希望皇ホープとラグナ・インフィニティの2体で1200ポイントダウンする!」

 

災いの装備品から紫色の呪いのオーラがカルナに纏われ、神に匹敵するその力がダウンする。

 

「くっ……だが、この程度の呪いを受けたからとは言え、オレは敗れはしないぞ!」

 

カルナは災いの装備品で呪いを受けながらも全く怯んではいない。

 

「バトルだ!希望皇ホープとラグナ・インフィニティでカルナに攻撃!」

 

希望皇ホープは腰からホープ剣を抜き、ラグナ・インフィニティは大鎌を振りかぶり、カルナに攻撃を仕掛ける。

 

「ホープ剣・スラッシュ!インフィニティ・ジャッジメント!!」

 

希望皇ホープとラグナ・インフィニティの渾身の一撃がカルナに襲いかかり、二体の攻撃をまともに受け、その場からぶっ飛ばされて壁に大激突する。

 

「よっしゃあ!カルナに大ダメージだ!」

 

「……いや、遊馬!まだだ!」

 

「えっ?」

 

アストラルの忠告で遊馬は大激突した壁をよく見ると……。

 

「見事な攻撃だ。だが、そう簡単にオレは倒せんぞ」

 

瓦礫を薙ぎ払いながら擦り傷程度の損傷しか受けていないカルナが平然と現れた。

 

「う、嘘だろ……!?」

 

「インド神話ではカルナが纏う鎧は神々でも破壊は困難とされ、カルナを殺すことは出来ないと言われている。それがカルナの宝具になっていたら……!」

 

アストラルの推測は当たっていた。

 

カルナには究極の宝具とも言える太陽の輝きを放つ、強力な防御型宝具『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』。

 

それはカルナが纏っている黄金の鎧と耳輪で、強力な宝具の攻撃すらも余裕で防げると言うとんでもない宝具なのだ。

 

「長期戦になったらやべぇな……」

 

「ああ。私達が全力全開で挑めばまだ勝機はあるかもしれないが、今の状態だと難しい」

 

遊馬とアストラルが希望皇ホープの進化形態と奇跡の力を使えばまだカルナに勝てる可能性はある。

 

しかし、今の段階で全力全開で戦う事は後の戦いに影響を与えるかもしれない。

 

「俺たちが倒すべき相手はケルトだ。だったらここは……」

 

「戦略的撤退だな。遊馬、ラグナ・インフィニティの効果だ!」

 

「おう!」

 

遊馬とアストラルはこの戦争で生き残り、勝つ為の手段を選択する。

 

「頼むぜ、ラグナ・インフィニティ!」

 

遊馬の声にラグナ・インフィニティは反応するように真紅の瞳が怪しく輝き、大鎌を華麗に振り回して掲げる。

 

「カルナ、ちょっくら異次元に飛んでもらうぜ。ラグナ・インフィニティの効果!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動!俺はカルナを選択!選択したモンスターの攻撃力と、その元々の攻撃力の差分のダメージを相手ライフに与える!」

 

ラグナ・インフィニティはオーバーレイ・ユニットを大鎌で切り裂いて取り込み、真紅の刃が光り輝く。

 

「この場合、カルナの主はエジソン。即ち……」

 

「エジソン!1200ポイントの効果ダメージを喰らえ!!」

 

「な、何と!?ヌォオオオオオオ!??」

 

大鎌から真紅の光線が放たれ、エジソンは避ける間も無く直撃し、後ろに吹き飛ばされる。

 

「エジソン!?」

 

「そして、選択したモンスターをゲームから除外する!カルナ、異次元の彼方にぶっ飛びな!!ガイダンス・トゥ・パーガトリィ!!!」

 

振り下ろした大鎌から巨大な斬撃が放たれ、カルナは槍を構えて斬撃を防ぐが、周囲の空間が大きく歪み、カルナの姿が消えた。

 

「カ、カルナ君!?」

 

「そんな、カルナが倒されたの!?」

 

エジソンとエレナはカルナが倒されて消滅したと思い、顔を真っ青にするがそれは誤りだった。

 

「心配しなくて良いぜ。カルナは少しの間だけ異次元にいるだけだからさ!」

 

デュエルモンスターズには『除外』と呼ばれるシステムがある。

 

墓地とは異なり、基本的に除外されたカードは除外に対応したカードを使用しない限りデュエルで使用することがほぼ不可能となり、かなり厄介である。

 

遊馬とアストラルは除外するカードをほとんど使ってこなかったが、これからの戦いで必要になると考えて相手を除外するためのカードをデッキに採用した。

 

しかし、ここで一つ疑問が出てくる。

 

敵として対峙したサーヴァントと戦う際、除外した場合にその相手はどうなるのか……下手をしたらそのまま除外され、異次元に取り残されるのではないかと危機感を感じた。

 

遊馬とアストラルはカルデアで練習用のエネミーを用意してもらい、そこで除外カードを実際に使用して実験を行ない、次のような実験結果を得た。

 

・除外された敵は一定時間経過後に元の場所に帰還される。

 

・敵の強さによって除外される時間は変化する。

 

・敵が強ければ強いほど除外される時間は短くなる。

 

・遊馬とアストラルがデュエルを終了、または中断してその場から立ち去った時点で除外の効果が終了して帰還する。

 

・空間を越える能力を持つスキルや宝具で異次元から帰還できる。

 

カルナをどれだけ除外出来るか不明だが、強力なサーヴァントを長時間の除外は不可能。

 

遊馬とアストラルは互いに顔を合わせて頷くと、遊馬はジェットローラーを起動して全員のフェイトナンバーズを掲げる。

 

「みんな、今すぐ撤退だ!!」

 

「ホープ!ラグナ・インフィニティ!先導して機械兵士を薙ぎ払え!」

 

遊馬はマシュ達をフェイトナンバーズに入れ、希望皇ホープとラグナ・インフィニティはアストラルの指示で機械兵士を薙ぎ払って扉を切り開き、出口への道を作る。

 

「エレナ!エジソンのおっさん!俺たちは自分の道を行く!だけど!」

 

遊馬はポケットから特異点先の通信用のD・ゲイザーを取り出してエレナに投げ渡した。

 

「えっ?」

 

D・ゲイザーを受け取ったエレナは目をパチクリさせて遊馬を見つめる。

 

「エレナ!もしもピンチになって、俺たちの力が必要になったらそいつで連絡してくれよ!じゃあな!」

 

希望皇ホープとラグナ・インフィニティが先導して飛び、遊馬はジェットローラーで城内を走り抜けてその隣をアストラルが飛ぶ。

 

エジソンは自分では逃げる遊馬達を捕まえることはできないと諦め、エレナは安全を保障する約束を守れなかったので何もせずにそのまま見逃した。

 

謁見の間には嵐の後のような静けさが広がり、そこに除外されたカルナが戻ってきた。

 

「おお!カルナ君、無事か!?」

 

「ああ……見たことのない空間にいたが、特に問題はない。彼らは……」

 

「逃げたわよ……これを残してね」

 

「エ、エレナ……!そのD・ゲイザーを私に渡してくれないかな……!?」

 

エジソンは調べてみたかったD・ゲイザーが目の前にあり、目を輝かせて手を伸ばすが、エレナはパッとその場から下がってポケットにしまう。

 

「ダメよ。エジソン、あなたは彼らに手を出さないでってお願いしたのに無視したじゃない」

 

「そ、それは……」

 

「だからこれは渡さないわ。遊馬が私の為に渡してくれたんだからね」

 

エレナは遊馬がやったようにD・ゲイザーを展開して左眼に装着する。

 

「へぇー、こんな感じなのね。面白いじゃない♪」

 

「エレナァアアアアアッ……私の霊フォンの夢がぁ……」

 

未知なる技術の結晶が詰まったD・ゲイザーがエレナが持って行ってしまい、エジソンはショックでその場で崩れ落ちる。

 

「ユウマ……アストラル……」

 

カルナは異世界から来た英雄と同じ輝きを持つ二人の名を呟き、その存在を心に刻みつけた。

 

 

遊馬とアストラルは希望皇ホープとラグナ・インフィニティの先導によって無事に城を脱出し、外に出ると同時にアストラルはかっとび遊馬号を皇の鍵から召喚する。

 

かっとび遊馬号は遊馬とアストラルを船内に搭乗させると、すぐに発進してその場から離脱する。

 

「遊馬、念の為に飛行船をステルスモードにするぞ」

 

「えっ?そんなことが出来るのか!?」

 

アストラルが手を伸ばし、かっとび遊馬号のシステムを操作すると、飛行船全体が透明となって地上から見えなくなる。

 

「この機能はダ・ヴィンチが飛行船の存在を知った後から少しずつ改良してもらい、追加してもらった」

 

「凄えな、流石はダ・ヴィンチちゃんだぜ」

 

「ノリノリでやっていたからな。他にも色々追加したらしい」

 

「それは後の楽しみってやつだな。あ、そうだ!みんなを出さなきゃ!」

 

遊馬はマシュ達をフェイトナンバーズから出し、初めてかっとび遊馬号に乗るナイチンゲールはとても驚いて機器や上甲板からの景色を見渡している。

 

「凄いです……これがユウマの言っていた飛行船ですか。これなら確かに何処へでもすぐに行けそうですね」

 

「それで、これからどうするのよ?アメリカ軍とは協力出来なくなったんだし、今後どうするか話さないとじゃない?」

 

レティシアの言う通りでこれからどうするのかすぐに話し合った。

 

するとアストラルは顎に手を添えて考える動作をしながら案を出す。

 

「みんな、一つ当てがある」

 

「当て?」

 

「フィンと戦った時、アメリカ軍でもない謎の軍隊がケルト軍を追い払った。フィンは彼らのことをレジスタンスと呼んでいた」

 

「レジスタンス……反乱軍って事か?」

 

「これは私の推論だが、もしかしたらそのレジスタンスに、エジソンが言っていたアメリカの各地に散らばっていると言うサーヴァントがいるかもしれない」

 

「そっか!アメリカ側に就きたくないサーヴァント達がケルトに対抗しているかもしれないからな!」

 

「では、散らばっているサーヴァント達に協力をお願いして戦力増強と情報収集と言う方向ですね」

 

「もちろん、患者の治療も行います」

 

マシュが今後の方針の内容をまとめ、それにナイチンゲールが更に要点を追加した。

 

話が決まったところで早速遊馬は舵を取り、かっとび遊馬号を発進させる。

 

アメリカ軍の拠点はナイチンゲールがある程度把握しているので、それ以外の小さな街に立ち寄る事にした。

 

アストラルとレティシアがいるのでサーヴァントの気配はある程度分かるので、それを頼りに探していく。

 

遊馬達は西部の小さな街を見つけ、そこにはサーヴァントの気配が複数あり、すぐに向かうことにした。

 

地上に降り、静かに街の入り口に入ると……。

 

「待て、何者だ?」

 

遊馬達の前に現れたのはナイフを持ち、褐色の肌に不思議な一本の縦線の白い模様を付けた男性サーヴァントだった。

 

遊馬は令呪を男性サーヴァントに見せると、すぐに遊馬がマスターだと知った。

 

「君がマスターなのか!?その隣にいるのは……まさか、精霊なのか……!?」

 

遊馬の隣にいる精霊のアストラルに驚愕し、敬意を払うかのようにその場で跪いた。

 

「あなた様のように強い力を放つ精霊は初めてお会いしました」

 

アストラルから放たれる力の波動を男性サーヴァントはその身で感じ取り、まるで信仰するかのような態度を示す。

 

「私はアストラル。異世界から来た精霊だ。君はサーヴァントだが、真名はなんと言う?」

 

レティシアは真名看破で分かっていたが、アストラルはあえて本人から真名を聞き出す。

 

「ジェロニモ……私の名はジェロニモと申します」

 

「ジェロニモ……アパッチ族の戦士だな」

 

ジェロニモ。

 

北米大陸における先住民族の一つ、アパッチ族の戦士。

 

妻子をメキシコ兵に殺され、その報復でメキシコ軍と戦い、その名を轟かせたインディアンの伝説的な指導者。

 

「なあ、ジェロニモ。俺たちは戦うつもりは無いんだ。まずは話を──」

 

「患者の気配がします!!!」

 

ナイチンゲールは遊馬の言葉を遮ってその場からダッシュして街の中へ突入する。

 

「ナ、ナイチンゲール!?」

 

「ナイチンゲール……!?それは本当か!?良かった、実は治療してもらいたいサーヴァントがいるんだ。あなたにお願いしたい」

 

「お任せください、その方を殺してでも救います!!」

 

とても安心できない言葉を残してナイチンゲールは走り去っていく。

 

「え、えっと……ジェロニモ。とりあえず、歩きながら話そうか?」

 

「そうだな……ところで少年、君の名は?」

 

「九十九遊馬。遊馬が名前だ、よろしくな!」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

遊馬達は歩きながらジェロニモと話をしていく。

 

ジェロニモはレジスタンスを率いるサーヴァントで他には二騎のサーヴァントが仲間として今は別の場所にいる。

 

レジスタンスは戦力不足で迂闊に動くことが出来ず、怪我を負っているサーヴァントを治療出来るナイチンゲールを迎えに行こうと考えていた。

 

そこに遊馬達がやって来たのでこれはレジスタンスにとって喜ばしいことだった。

 

「俺たちはケルトの奴らをぶっ飛ばして聖杯を確保する。そして、この時代を修正する。ジェロニモ、共闘してくれか?」

 

「もちろんだ。この時代を潰す訳にはいかないからな」

 

ジェロニモはエジソンと違い、ケルトを倒してこの時代を元に戻す事を考えていたので、遊馬達と共闘することを快く引き受けた。

 

すると……。

 

「あ、イタタタタ!き、貴様もうちょっと手加減できんのか!?余は心臓を潰されているのだぞ!」

 

重傷を負っているというサーヴァントが休んでいる家から大きな声が響き、その驚愕の内容に度肝を抜きながら遊馬達は急いで中に入る。

 

そこではナイチンゲールが治療を開始しており、治療対象であるサーヴァントは……。

 

「あれ?お前は……」

 

そこにいたのは遊馬と同じぐらいの年齢の少年で、かなりの美形で燃えるような紅く長い髪をしていた。

 

その少年を遊馬が見覚えがあり、すぐに駆け寄った。

 

それはこの特異点に来る前に夢で見た謎の少年だった。

 

「おい、お前!大丈夫か!?」

 

遊馬は少年の胸元を見て目を見開いて驚愕した。

 

それはあまりにも酷い傷で心臓が半端抉られている状態で生きていることが不思議だった。

 

「お前は……マスターか?フッ……余と同じぐらいの子供ではないか」

 

「そんなことはどうでもいいんだよ。お前、名前は?」

 

「余はラーマ……コサラの偉大なる王である!」

 

ラーマ。

 

インドの二大叙事詩の一つ、『ラーマーヤナ』の主人公である。

 

「お前もインドのサーヴァントだったのか。なぁ、あの子はいねえのか?」

 

「あの子……?誰の事だ……?」

 

「えっと、お前にそっくりで紅い髪を左右に縛っている女の子だよ」

 

次の瞬間、ラーマは血相を変えて起き上がり、遊馬の胸ぐらを掴んだ。

 

「貴様!?シータを……シータを知っているのか!?」

 

「シータ……?」

 

「我が妻、シータだ!!余は、シータに会うために……!!」

 

遊馬はその言葉でラーマの抱く想いを察知し、優しい笑みを浮かべてラーマの手を退かせる。

 

「そっか、あの子はお前の奥さんか。ちゃんと事情を話すから大人しく聞いてくれ。じゃねえと……そこにいる婦長さんがいい加減ブチ切れるぜ?」

 

ラーマが振り向くとそこには……鬼のような恐ろしい形相を浮かべ、拳銃とメスを構えて問答無用に激痛を伴う治療を行おうとしているナイチンゲールがいた。

 

幾千の戦いを繰り広げたラーマですら肝を冷やし、大人しく遊馬から離れてベッドに横たわった。

 

「まずは事情を聞かせてくれ。俺たちに出来る事なら何でも協力するからさ。そのシータって子の事も」

 

「す、すまない……」

 

ラーマは冷静さを取り戻し、ナイチンゲールの治療を受けながら説明をするのだった。

 

 

 




アメリカ軍を脱出してやっとレジスタンスに合流したので、次回はサーヴァント達と合流ですね。

早いところラーマとシータを再会してもらって幸せになってもらわないと……!

あの二人はちびちゅきだと離別の呪いがないので幸せなんですよね。

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