ある意味Fateで最恐の二人がコンビを組んで最高のステージをやります!
ロビンフッドの案内で遊馬達はセイバーとランサーに会いに向かう。
かっとび遊馬号でひとっ飛びで向かう中、ロビンフッドは未だに嫌な表情を浮かべて露骨に会いたく無いアピールを出していた。
「もしかして、ロビンフッドは二人とどっかの聖杯戦争で戦ったのか?」
「あー、まぁ、そんな感じだな……セイバーの方はちょっと違うみたいだが、あの二人とは腐れ縁でな……」
戦い以外で何か大きな苦労をしたらしく、ロビンフッドは大きなため息を吐き続ける。
「ふーん。あ、もうすぐ到着だ。やっと迎えに行けるぜ」
案内された街へと到着し、地上に降り立つと異様な光景が広がっていた。
「ケルト兵が弱っている……?」
街の入口あたりにケルト兵が大勢いたが、今までとは異なり、とても弱っていた。
弱っているのでとりあえずケルト兵達を全て倒したが……。
「こ、この歌声は……」
「フォ、フォウ……」
街の中央から歌声が響き渡り、マシュとフォウはそれに聞き覚えがあり、気分が悪くなって思わず耳を塞いだ。
他の者達もその歌声に気分が悪くなっていき、特にロビンフッドは今すぐこの場から逃げ出したい気分だった。
ただ一人を除いては……。
「あはははっ!相変わらず良い歌じゃねえか!」
「「「ええっ!??」」」
遊馬だけが笑顔で腕を組んでウンウンと頷いているのでみんなが驚いてその場で思いっきり引いた。
そう……遊馬だけが聞いた者の殆どが理解できないであろうその歌の良さを理解しており、遊馬はこの歌を響かせる主の元へと向かい、マシュ達も渋々向かうのだった。
「♪ハートがチクチク 箱入り浪漫♪それは乙女のアイアンメイデン♪愛しいアナタを閉じ込めて♪串刺し血濡れキスの嵐としゃれこむの♪浮気はダメよ、マジ恋ダメよ♪アタシが傍にいるんだからネ?」
声は綺麗だが物凄く物騒な歌詞を歌っているのは自称アイドルのドラ娘サーヴァント、エリザベート。
ロビンフッドが出会い、遊馬達が探していたランサーである。
「おーっす、エリちゃん!」
「あら?マスターじゃない!こんなところでどうしたの?」
エリザベートはいつものゴスロリドレスではなく、ピンクを基調とした華やかなドレスを着用していた。
「どうしたって、エリちゃんがカルデアからいなくなったから迎えに来たんだよ」
「そうなの?でもまだ帰れないわ。私はやることがあるのよ!何しろここは欲望に肥え太ったブタ達の集う芸能地獄。その名も──ブロードウェイ!なのだから!」
「ブロードウェイ?あのミュージカルの?」
「そうよ!そこは輝ける娯楽の殿堂。なんだなキラキラした天上の表現大国……ま、今はまだただの田舎町だけど。このアタシが、ここをブロードウェイと定めたのよ!アメリカでかちがあるのはこことあそこだけ。ふふ。アタシには見えるわ。このアタシの歌声に聴き惚れたブタたちが、一人また一人と押し寄せて──やがてここにはアタシ専用ステージとアタシ専用の劇場とアタシ専用の映画館がビルディング。まさに登りきれない魔塔として君臨するでしょう。他に必要なものは──そうね、彫像よ!このアタシの美しさを限りなく忠実に再現した、全長五百メートルの超・彫像!トマトを片手に高らかに歌う鮮血の女神として、血で血を洗うアイドル界に終止符を打つの!」
エリザベートは頰を染めて自分が描く夢……と言う名の妄想を力強く語り出し、マシュやロビンフッド達は呆れ果てていた。
しかし、遊馬だけは違っていた。
「相変わらずスケールデケェな、エリちゃんは。でもさ、今アメリカはヤバイ状況なんだよ。このままだとアメリカそのものが滅ぶんだぜ?」
「ええっ!?よ、よく考えればここは特異点だったわね……アメリカに浮かれていて忘れていた」
「エリちゃん、もし俺たちに付いて来てくれるなら今のエリちゃんに足りないものを埋めてやるぜ」
「ア、アタシに足りないもの!?な、何よ、それは!?」
エリザベートは自分に足りないものがあると指摘され、たじろぎながら遊馬に尋ねる。
遊馬はデッキケースから5枚のカードを取り出し、空いている片手でビシッとエリザベートを指差す。
「エリちゃんに足りないもの、それは……演奏家だ!」
ガーン!!!
エリザベートは強烈なショックを受けた。
「え、演奏家!?」
「そうだ!エリちゃんは歌や振り付けやダンスを頑張っているが、バックで演奏してくれる演奏家が誰もいない!宝具で大っきなアンプを出せるけど、生演奏には敵わないぜ!」
「くっ、確かにそうだけど……楽器を演奏出来るサーヴァントなんてアマデウスぐらいしか思いつかないわよ!それにあいつ、アタシの歌をダメ出しするし!」
「それじゃあ、エリちゃん!最高にホットでクールな奴らを紹介するぜ!」
「え!?ここにいるの!?」
エリザベートの期待が膨らみ、遊馬はデュエルディスクに先ほど出した5枚のカードを並べて一度に召喚する。
「ギター!『弦魔人ムズムズリズム』!」
ダブルネック・ギターを巧みに操り、口に薔薇を咥えたキザな黒猫の魔人。
「ドラム!『太鼓魔人テンテンテンポ』!」
大中小の様々なドラムを楽しそうに叩きまくる少年魔人。
「トランペット!『菅魔人メロメロメロディ』!」
宙に浮く大きなトランペットに乗る少女魔人。
「キーボード!『鍵魔人ハミハミハミング』!」
美しい黄金のグランドピアノを鮮やかに演奏するもう一人の少女魔人。
「そして、魔人達の演奏を完璧なハーモニーへと導く指揮者……マエストロ!『交響魔人マエストローク』!」
マーチングバンドのドラムメジャーの格好をし、レイピアの形をした指揮棒を持つ青年魔人。
「見たか、エリちゃん!これが俺の音楽魔人だぜ!」
今ここに、遊馬のもう一つのエクシーズ軍団『音楽魔人』が集結した。
音楽魔人は師匠・六十郎から譲り受けた決闘庵秘伝のデッキにあったモンスターエクシーズで、ナンバーズ使いではない……いわゆる一般人デュエリスト向けのモンスターエクシーズとして使っていた。
「お、音楽魔人、ですって……!?」
エリザベートは頭に自分と同じような魔物の角が生えた音楽魔人達に親近感を覚えると、マエストロークは指揮棒を構え、それに続いてムズムズリズム達が楽器を構える。
そして、一斉に演奏が始まり、ダブルネック・ギター、ドラム、トランペット、キーボードの異なる音が奏でられるが……。
「み、耳が……!!」
「フォウ〜……!!」
指揮者がその音楽は一応ハーモニーを奏でているが、エリザベートの歌と同じように聞く者の耳を破壊させる超音痴破壊兵器と同等の怪音波を出していた。
それもそのはず、あまり害のないように見えるが仮にも彼らは『魔人』……彼らが奏でる音色は聞く者にダメージを与える怪音波となっているのだ。
「いやー、相変わらず良い音楽だな!」
「……君のセンスはたまに理解ができない」
ただし、マスターである遊馬だけは別で何故かその怪音波を気に入っており、アストラルは理解不能だった。
そして……その曲を聞いたエリザベートは……。
「素晴らしいわ!なんて素敵な演奏なの!!」
当たり前と言うか、必然と言うか、大絶賛だった。
エリザベートは目を輝かせながら音楽魔人達に近寄り、一人一人に握手をして自己紹介をする。
「はじめまして!アタシはエリザベート=パートリーよ!アナタたちの演奏、とても素晴らしかったわ!そこでお願いがあるの……アタシの専属の演奏家になって!一緒に天上の舞台へ上り詰めましょう!!」
エリザベートはすぐに音楽魔人達を気に入り、自分の専属の演奏家になってもらえるように頼み込んだ。
すると、音楽魔人達は互いの顔を見ると頷いて笑顔で楽器を鳴らした。
『『『『『イェーイ!』』』』』
音楽魔人達もエリザベートを気に入り、すぐに了承したのだ。
「音楽魔人のみんな、これからよろしくね!」
「さてと!演奏家が決まったところでエリちゃん!もう一人の仲間を迎えてアメリカ横断ツアーと洒落込もうぜ!」
「アメリカ横断ツアー!?うんうん、ブロードウェイを立ち上げる前に私と音楽魔人の素晴らしさを広げておくのも良いかもしれないわね。もう一人の仲間って……もしかして!」
「ああ!エリちゃんのダチだぜ!俺と一緒に組めば最強無敵だぜ!」
「そうね!マスターとあの子が一緒ならアメリカを……いいえ、世界だって狙えるわ!そうと決まったら早く迎えに行ってリハーサルよ!」
「オッケー!かっとび遊馬号は上で待機しているからすぐに行こうぜ!」
遊馬とエリザベートは互いにグッドサインを見せながら一緒に歩いていく。
「嘘だろ……あのドラ娘とあそこまで息のあった会話が出来るなんて……」
苦労人であるロビンフッドはエリザベートの性格を知っているが故に遊馬の異常さに戦慄した。
「何故あんなにもエリザベートさんと仲が良いのでしょう……」
「知らないわよ……」
「エリザベートさん……後で燃やしてあげますわ……」
マシュとレティシアと清姫はエリザベートに対して嫉妬の炎がメラメラと燃えていた。
さて、ここで一つ疑問が出てくる。
何故遊馬とエリザベートがあんなにも友人のように仲が良いのか。
遊馬とエリザベートの年齢が近いこともあるが、二人には共通して似たところがある。
それは……目立ちたがり屋だ。
遊馬は多少ではあるがこれでもWDCのチャンピオンなので他人からちやほやされたい願望があり、エリザベートは日本のアイドルを志しているので当然ファンにちやほやされたい願望がある。
更には不協和音の音楽魔人を使う遊馬と超音痴破壊兵器のエリザベート……そんな二人の性格が合うのはもはや必然なのだ。
ある意味最恐のマスターとサーヴァントのコンビに戦慄の恐怖を抱きながらマシュ達は遊馬とエリザベートの後を追う。
☆
エリザベートのいた街から少し離れた場所の街では二人のサーヴァントが戦闘を繰り広げていた。
一人は純白の花嫁衣装を身に纏うローマ皇帝、ネロ。
もう一人はケルト神話の赤枝騎士団筆頭にしてアルスターの元王、フェルグス。
ネロは無人の街で何か大きな計画を立てていたが、そこにフェルグスが現れた。
フェルグスはネロを殺しに遥々とやって来て、すぐに二人は戦闘を始めた。
しかし、生粋の武人であるフェルグスにネロは徐々に追い詰められていく。
それだけではなく、ネロは現在はぐれサーヴァントで魔力を供給出来ていないので魔力が少なくなっていき、まともに動けなくなっていたのだ。
このままではフェルグスに敗北してしまう未来は簡単に予想ができ、ネロは大きな決断に迫られる。
「くっ、仕方ない……!」
ネロは生き残る為、残り少ない魔力を使って宝具を使おうとしたその時だった。
「ムーン・バリア!!!」
ネロの前に大きな影が空から降り立ち、フェルグスの攻撃を防いだ。
「何っ!?」
「ネロから離れろや、おっさん!!」
その直後に大きな影の背中から小さな影が降り立つと、フェルグスの剣を弾き返し、強烈な蹴りがフェルグスの腹部に炸裂する。
そのままフェルグスをぶっ飛ばし、小さな影がネロの前に姿を現わす。
「無事か、ネロ!」
「あっ、あぁ……!お主は……!」
ネロは戦闘中ではあるが思わず涙が溢れそうになるほど歓喜した。
「全く、来るのが遅いぞ……ユウマ!」
それはネロがこの世で最も愛する男……九十九遊馬だった。
「百貌のハサンから連絡があって、ホープに乗って、すっ飛んできたんだ」
今から数分前、エリザベートのいた街を出たその時にアメリカの各地へと情報収集を行なっている百貌のハサンの内の一つのチームからネロが敵サーヴァントに襲われていると連絡があり、遊馬は居ても立っても居られずに希望皇ホープを召喚して全速力で飛んだ。
かっとび遊馬号よりも希望皇ホープで飛んだ方が早く、遊馬が一足先にネロを助けに来たのだ。
「にしても、まさかあんただとはな……フェルグス!!」
原初の火をソードホルダーにしまい、デュエルディスクを構えた遊馬はフェルグスを睨みつけた。
「俺を知っているこか?だが俺はお前のことは知らぬが?」
「あんたは知らなくても俺は知ってる。一度戦ったことがあるからな。女好きのダメ大人のフェルグス!」
監獄塔で戦った時にあまりにも女体を求めるその姿に遊馬はフェルグス=ダメ大人のイメージがついてしまった。
「うっ、うぅ……まさかいきなりダメ大人と言われるとは……」
初対面の子供からダメ大人扱いされるとは思いもよらずフェルグスも少し心が傷ついてしまった。
「どうせあんたの事だから、ネロを奪いに来たんだろうけど、ネロは俺の大切な仲間だ!絶対に手出しはさせない!!」
「ユウマ……!」
遊馬はネロを庇うように立つと、ネロは遊馬が自分を守ってくれる事と、俺のものだから手を出すなと言っているように聞こえてしまい、ただでさえベタ惚れのネロが益々遊馬に惚れてしまうのであった。
一方、フェルグスは遊馬とネロの仲を敵とは言え微笑ましいと思いながらもすぐに真剣な表情を浮かべて剣を構える。
「確かにネロは素晴らしい女だ。是非とも口説いて抱きたいぐらいにな。だが、今回は違う。俺は女王の命により、殺しに来たのだ」
「女王……ディルムッドとフィンの言ってた奴と同じか」
「少年、ユウマと言ったか?お前のような将来有望な男を若いうちに摘むのは心苦しいが、恨むなら俺だけを恨め」
フェルグスはネロだけでなく遊馬も敵として認識して排除する事に決めた。
歴戦の騎士の殺気が向けられるが、遊馬は臆する事なく不敵の笑みを浮かべる。
「それはどうかな?俺は絶対に殺されないし、俺には最高の仲間達がいるからな!」
遊馬が空に向かって指差すと空気を震わせる轟音を響かせながらかっとび遊馬号が現れた。
船内からアストラルとマシュ達がワープで一斉に降り立ち、遊馬の周りに集結する。
「待たせたな、遊馬」
「お待たせしました!」
「おう、ナイスタイミングだぜ!」
「ネロ!来たわよ!」
「おお、エリザベート!貴様も来ていたか!」
ネロとエリザベートは再会に喜んでいると、フェルグスは一気に戦力が逆転されて考え込む。
「ふむ。流石にこの数で戦うのは無謀か」
「降参してもいいんだぜ、おっさん」
「──は、まさか。ならば、こちらも遠慮なく女王の力を借りるとするか!出て来い、誇り高き戦士達よ!」
フェルグスの呼び声に街中に隠れていたケルト兵達が一斉に現れてフェルグスの後ろに控えた。
「十対一では流石に勝てぬが、百対十ならそれなりに拮抗するだろう」
「みんな、フェルグスの宝具はかなり厄介だ。気をつけろよ!」
遊馬はフェルグスの戦いを体験しているのでそれを伝えながら対処しようとした……その時だった。
「悪いが、そいつとの戦いは俺に譲ってもらうぜ」
勇ましく凛とした声が響いた次の瞬間、遊馬のデッキケースから藍色の光が飛び出してフェルグスに向かった。
フェルグスは向かってきた藍色の光から真紅の槍が鋭く飛び出し、剣で防ぐとその正体に驚愕する。
「お、お前は……!?」
「よう、久しぶりじゃねえか……叔父貴!」
それはアイルランドの光の御子、クー・フーリンだった。
「ク、クー・フーリン!?何でお前が!?」
遊馬は突然クー・フーリンが現れたことに驚くと、すぐにその答えが返ってきた。
「あぁん?ちょいと俺の偽物が暴れまくってるって話を聞いてよ。折角だから俺も暴れてやろうと思ってな……その手始めに、叔父貴と派手に戦おうと思ってな!」
「フッ……まさか、ここでお前と相見えることになるとはな。久しいな、クー・フーリン!!」
フェルグスはクー・フーリンに再会したことに歓喜し、狙いを遊馬達からクー・フーリンに向ける。
フェルグスはクー・フーリンの叔父であると同時に養父でもあり、二人は友でもあった。
そんな二人の再会に楽しく酒を酌み交わしたいところだが、今は敵同士として戦わなければならない。
「マスター!叔父貴は俺がやる!他の奴らは任せた!!」
「はははっ!久々にやり合おうぞ、クー・フーリン!!」
クー・フーリンはフェルグスを弾き返すと街から飛び出し、フェルグスもその後を追う。
残った遊馬達はクー・フーリンの言葉に従ってケルト兵を相手する。
すると、エリザベートは何かを思いついたようにネロに話しかける。
「ねえ、ネロ。さっきマスターと話していたんだけど、私達でアイドルコンビを組まない?」
「何?アイドルコンビだと!?」
「そうよ。実はね、さっきマスターから素敵な演奏家達を紹介してもらったのよ。だから……後は、ネロがいれば最高なのよ!マスターもそれを望んでいるから!」
「何と!?ユウマもそれを望んでいると!?それなら喜んでエリザベートとアイドルコンビを組もう!」
「そう来なくちゃね、よろしく頼むわ!ネロ!」
「こちらも頼むぞ、エリザベート!」
ネロとエリザベートが固い握手を交わすと、遊馬のデッキケースから2枚のフェイトナンバーズが飛び出した。
それはネロとエリザベートのフェイトナンバーズでそれぞれから光が帯びると、新たなカードが誕生し、遊馬の手の上に静かに降りた。
「これは……!?ネロとエリザベート、二人の絆が生んだ新たな力だ!」
それはフェイトナンバーズの新たな可能性だった。
フェイトナンバーズは遊馬とサーヴァントの絆、サーヴァント自身の心の成長により新たな力を誕生させる。
今回はネロとエリザベートが結んだ友の絆によって新たな力が誕生したのだ。
遊馬は希望皇ホープを消すと、すぐにそのカードをデッキに入れて空中に浮いているネロとエリザベートのフェイトナンバーズを持つ。
「ネロ、エリザベート!二人の初ライブ、行こうぜ!」
「分かった!任せたぞ、ユウマ!」
「頼むわよ、マスター!」
ネロとエリザベートをフェイトナンバーズに入れ、遊馬はデュエルディスクの機能でデッキをシャッフルしてデッキトップからカードを5枚ドローして手札にし、デッキトップに指を添える。
マシュ達がケルト兵を抑えている間に遊馬はデュエルを開始する。
「俺のターン、ドロー!魔法カード『オノマト連携』!手札を一枚墓地に送り、デッキから『ドドドバスター』と『ガガガマジシャン』を手札に加える!更に魔法カード『二重召喚』!このターン、通常召喚を二回行える!」
これで準備は整い、ここから怒涛の連続召喚が始まる。
「自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札からドドドバスターを特殊召喚し、レベルを4にする!次にガガガマジシャンを召喚!」
これでレベル4のモンスターが二体揃い、次の召喚に移る。
「更に『クレーンクレーン』を召喚!その効果で墓地からレベル3モンスターを特殊召喚出来る!来い、『ガガガカイザー』!」
先ほどのオノマト連携で墓地に送ったガガガカイザーが蘇り、これでレベル3のモンスターも二体揃った。
「行くぜ、俺はレベル3のクレーンクレーンとガガガカイザーでオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」
クレーンクレーンとガガガカイザーが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。
「轟け、雷鳴!響け、歌声!魅惑の音色で暗き世界を明るく照らせ!現れよ、『FNo.91 雷竜魔嬢 エリザベート』!!!」
『No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン』の姿形を模したエレキギターを持つエリザベートが派手な演奏を奏でながら召喚される。
「イェイ!さあ、どんどん盛り上げていきましょうか!!」
「エリザベートの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、次の自分のスタンバイフェイズ時まで、相手フィールド上の全てのモンスターは効果を発動出来ず、攻撃することが出来ない!」
エリザベートはオーバーレイ・ユニットを一つ食べ、口から電気が溢れていく。
「『
エリザベートの口から声と共に電撃が響き渡り、ケルト兵達の動きを一時的に止めた。
ケルト兵達が止まっている間に遊馬はもう一人のアイドルを呼び出す。
「次はこいつだ!レベル4魔法使い族のガガガマジシャンとレベル4戦士族のドドドバスターでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」
ガガガマジシャンとドドドバスターが光となって床に吸い込まれて光の爆発が起きる。
「炎のようにその心を熱く燃やし、真紅の薔薇の如く、絢爛豪華の舞台に舞い降りろ!!現れよ!『FNo.0 薔薇の皇帝 ネロ・クラウディウス』!!」
未来皇ホープのプロテクターを装着したネロが現れ、そこから更にネロのもう一つのフェイトナンバーズを重ねる。
「かっとビングだぜ、俺!このカードは手札1枚を除外し、自分フィールドの『FNo.0 薔薇の皇帝 ネロ・クラウディウス』をエクシーズ素材として、エクシーズ召喚することができる!!」
手札のカードを1枚除外し、『FNo.0 薔薇の皇帝 ネロ・クラウディウス』の上に光り輝くフェイトナンバーズを重ねた。
「アナザー・コスチューム・エクシーズ・チェンジ!!!」
ネロは祈るように手を組み、光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きると純白に輝く白薔薇の花吹雪が吹き荒れる。
「孤高なる魂の皇帝よ、純真無垢な白薔薇の美しき光を纏いて夢と願いの式場に舞い降りろ!現れよ!『FNo.0 白薔薇の花嫁 ネロ・ブライド』!!」
ネロはこの特異点で召喚された時と同じ花嫁衣装のブライドモードへと衣装をチェンジした。
「ネロの効果!このカードがエクシーズ召喚に成功した時、デッキからフィールド魔法を1枚選択して発動出来る!」
そして……遊馬は先ほど誕生した新たな力を秘めたカードを手札に加えて発動する。
「行くぜ、フィールド魔法発動!ネロ、エリちゃん、頼むぜ!」
「行くぞ、エリザベート!」
「ええ!思いっきり行くわよ、ネロ!」
二人はハイタッチを交わすと魔力が満ち溢れ、共に切り札の宝具を同時に発動する。
「春の陽射し、花の乱舞。皐月の風は頬を撫で、祝福はステラの彼方まで !開け!『
ネロは白薔薇を取り出して上に投げ、原初の火を床に突き刺すと巨大な魔法陣が展開され、黄金劇場を創り出す。
「アタシ達最高の歌を聴かせてあげるわ!『
エリザベートはエレキギターを弾き鳴らし、背後に巨大アンプに改造した生前の居城を召喚する。
二人の宝具が発動し、ここで遊馬が発動したフィールド魔法のカードが光り輝くと、二つの宝具が渦巻き状となって一つに合わさり、新たなフィールドと言う名の特設舞台が誕生する。
「ネロとエリちゃんの夢の舞台!現れろ!『ジョイント・リサイタル』!!」
ネロとエリザベートを中心に眩い光が放たれ、マシュ達も思わず一瞬だけ目を閉じた。
そして、マシュ達がすぐに目を開けるとそこには……薄暗い空間が広がっていた。
ケルト兵達は一箇所にまとめられて何が起きたのか分からず困惑していると、天井からライトが点灯し、二人の主役を照らし出す。
「よくぞ、来たな!皆の者!余とエリザベートの初ライブに!」
「今日はみんなを死ぬほど痺れさせてあげるからね!覚悟しなさい!」
ネロとエリザベートはテンションが最高潮に上がっており、満面の笑みでステージに立っていた。
その後ろには遊馬が静かに立っており、ネロとエリザベートの間に向かって歩く。
「さあ、二人共、準備はいいか?」
「うむ!」
「もちろんよ!」
「よし!ジョイント・リサイタルの効果!自分フィールドに『ネロ』Xモンスター及び『エリザベート』Xモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドのモンスターは戦闘・効果では破壊されず、相手モンスターの攻撃力・守備力は半分になる!」
空間全体に光が灯るとそこはまるでアイドルが歌って踊るような巨大なドーム型の劇場となっていた。
元々ネロの黄金劇場は固有結界ではないがそれに近い領域の宝具だったが、エリザベートの鮮血魔城と遊馬の力が一つになった事でランクアップを果たし、ネロとエリザベートの願望として現代のステージを思い浮かべて固有結界として完成したのだ。
ネロとエリザベートはそれぞれが光の粒子を纏うと、踊りやすいように衣装が更に可愛らしく変化した。
一方で観客でもあるケルト兵達の力が半減され、その場で崩れ落ちていく。
一方マシュ達は突然連れてこられた固有結界に呆然としていたが、ハッと気付いてすぐに近くの壁を叩いた。
「だ、出して!今すぐここから出してください!!」
「フォフォウー!」
「ああもう!なんてところに閉じ込めるのよあいつらは!?」
「お願いします!今回はネロさんとエリザベートさんを焼かないから出してください!」
「いかんな……とてつもなく嫌な予感がする……」
「ちくしょう!何でよりにもよってこんなことになったんだよ!?」
「人生でここまで恐怖に震えたのは初めてだよ……」
出口はどこにも存在せず、マシュ達は必死に壁を壊そうとしたがネロとエリザベート、そして遊馬の力が一つに合わさったこの劇場を壊せるわけがなかった。
その強度はたとえアルトリアの約束された勝利の剣でも破壊は不可能であろう。
マシュ達は逃げられないがアストラルは緊急退避で自ら粒子化して皇の鍵の中に入り、難を逃れた。
一方でノリノリな遊馬達は準備を着々と進める。
「ジョイント・リサイタルの更なる効果!1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を選択して発動出来る。自分のエクストラデッキから『魔人』Xモンスターを任意の数だけ墓地に送る!」
遊馬はデッキケースから全ての音楽魔人を選択して墓地に送ると、遊馬達の背後に音楽魔人達が現れる。
「墓地に送った音楽魔人は5体!その数×500ポイントの攻撃力をアップし、相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃する事が出来る!」
「ネロ、任せたわよ!」
「任された!」
ネロは原初の火を軽やかに振り回して掲げると音楽魔人達から放たれる光を集めると、その力を最高潮に高める。
「これでネロの攻撃力は2500+500×5で5000だ!」
原初の火が光り輝くと剣から純白に白薔薇の飾りが施されたスタンドマイクへと形を変える。
「マスター、歌に集中するから頼むわよ!」
エリザベートはエレキギターを遊馬に渡し、ネロとの初めてのライブで歌に集中するためにスタンドマイクを構える。
遊馬はエレキギターのベルトを肩にかけてピックを構える。
「あまり上手くは出来ないと思うけど、精一杯やらせてもらうぜ!」
全ての準備が整い、遂にネロとエリザベート……白薔薇と常夜の姫達の
「待たせたな、観客達よ!」
「アタシとネロの初ライブ!記念すべきファーストソングは……」
ネロとエリザベートはビシッと指をさして宣言するように曲名を言う。
「「BRAVING!」」
遊馬と音楽魔人の演奏が始まると同時にネロとエリザベートの歌が始まる。
シリアス調ながらも見えない未来から希望を探し出すと言う、曲名の意味などから遊馬のかっとビングを連想させる歌だった。
ネロとエリザベートは二人共とんでもない音痴だが、一緒に歌えることを心の底から喜び、密かにカルデアで練習していたことからその歌声は美しいハーモニーを奏でていた。
しかし、ここで忘れてはいけないのはライブではあるが、あくまでこれは攻撃である。
いくらネロとエリザベートの歌が良かろうとも、それは最恐の音波攻撃となり、観客席にいるケルト兵達を悶絶させて次々と倒していく。
そして……敵ではなくその攻撃の対象ではないマシュ達は……。
「み、耳が、悪夢の歌がぁ……」
「フォウ〜……」
「ああ、もうダメ……ジャンヌ……いいえ、お姉ちゃん……素直になれなくて、ごめんなさい……」
「あぁ、意識が朦朧としてきました……こんなことならもっと早く旦那様との夜這いを……」
「まさか歌でここまで追い詰められるとは……」
「い、言わなきゃ良かった……全力で逃げるべきだった……」
「不思議だね……天国への階段が見えるよ……」
思わず死をも覚悟してしまうほどの歌にマシュ達は追い詰められ、遺言を残すものもいた。
そして、歌は終わりを迎え、ライブの終焉の時を迎える。
「さあ、名残惜しいがこれで終幕だ!」
「今度は来世で聞きなさい!!」
ネロはスタンドマイクを振り回すと元の原初の火と戻り、エリザベートと共に柄を持って掲げる。
「「謳え!『
二人一緒に振り下ろした原初の火から純白の白薔薇の花弁の花吹雪と共に眩い閃光が放たれる。
放たれた閃光の輝きによりケルト兵達は倒され、全て消滅した。
それはケルト兵との戦いが終わると同時に初ライブの終わりを意味していた。
「終わった……いや、終わってしまったな」
「ええ。でも最高の初ライブだったわ!やっぱり、アナタは最高よ。ネロ!」
「お主もな、エリザベート!」
二人は再びハイタッチを交わそうとしたが、もう一人の立役者が名乗り出る。
「おいおい、俺を忘れるなよ!二人共、最高のライブだった。感動したぜ!」
「おお、ユウマ!すまない、お陰で最高のライブが出来た!」
「ありがとうね、マスター!」
遊馬とネロとエリザベートは今度は三人でハイタッチを交わした。
ちなみに、マシュ達は気絶して会場の隅で倒れてしまい、死屍累々の状態となっていたが、それに気がつくのはこの後すぐである。
.
ネロとエリザベートの歌に皆さんノックダウン(笑)
普通ならほぼ全てのマスターは止めたり嫌がりますが、音楽魔人を扱う遊馬はむしろノリノリな設定にしました。
その結果は大惨事ですが(笑)
今回のカードはこれです。
『ジョイント・リサイタル』
フィールド魔法
このカードは自分フィールドに『ネロ』Xモンスター及び『エリザベート』Xモンスターがいる時に発動出来る。
自分フィールドに『ネロ』Xモンスター及び『エリザベート』Xモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドのモンスターは戦闘・効果では破壊されず、相手モンスターの攻撃力・守備力は半分になる。
1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を選択して発動出来る。自分のエクストラデッキから『魔人』Xモンスターを任意の数だけ墓地に送り、対象モンスターはその数×500ポイントの攻撃力をアップし、相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃する事が出来る。この効果を使用したエンドフェイズ終了時、自分はこの効果で除外したカードの数×500ポイントのライフを失う。
自分フィールドに『ネロ』Xモンスターもしくは『エリザベート』Xモンスターがフィールドから離れた場合、このカードは墓地に送る。
ネロとエリザベート、そして音楽魔人の力を結集した悪夢のステージをイメージしました。
癖はありますが面白い感じに仕上がりました!
次回は書けたらいよいよシータとの再会になるかもしれません。
頑張って書きます!