Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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遂にラーマとシータの呪い問題を片付ける時が来ました。
FGOでも有名な涙腺崩壊の話をぶち壊します!

それと、前話のナンバーズ122でクー・フーリンの戦いでフェルグスとの間に戦いのゲッシュがあるのを見落としていましたので、後で最初の部分を書き直します。
英霊の設定が色々あるとやっぱり大変ですね。



ナンバーズ123 呪いを斬り裂く奇跡の光

遊馬達はアルカトラズ刑務所に突入し、遂に囚われの姫君……シータを見つけた。

 

ようやくシータを見つけ、ラーマは嬉しそうに近付くが……。

 

「……ラーマ様!?」

 

「シータか?迎えに来たぞ、迎えに……来たんだ……」

 

ラーマは全身の力が抜けるように崩れ落ち、シータが体を支えた。

 

「……ああ、くそ。目が霞む。何も見えん……」

 

既にラーマの体は限界が近く、体が全く動けなくなり、目が霞んで何も見えなくなっていた。

 

シータはラーマをその場に寝かせ、寄り添いながら優しく語りかける。

 

「シータはここにおります、ラーマ様」

 

「どこだ……シータ……どこにいる……?」

 

すぐそばにいるがラーマはシータの姿を目にすることが出来ない。

 

そんなラーマは心が弱くなりながら自分の気持ちを打ち明けた。

 

「……会いたかった、会いたかった。本当に、本当に会いたかったんだ。僕は、君がいれば、それだけで良かった……!」

 

今のラーマは大昔のインドの王ではなかった。

 

たった一人の愛する女性を探し求めていた一人の男だった。

 

ナイチンゲールは急いでラーマの治療を再開し、マシュは経緯と現状をシータに説明した。

 

シータは内容を納得するとある決意をする。

 

「私がこの身を捧げましょう。私の身を以て、この呪いを解きます。私がこの呪いを背負い、消滅すればいい」

 

シータはラーマを救うためにゲイ・ボルグの呪いを自分に移して代わりに消滅する道を選んだ。

 

シータは愛するラーマを救えるなら自分が犠牲になっても構わなかった。

 

ラーマとシータの受けた『離別の呪い』の影響で英霊の座で二人の英霊の枠が共有され、ラーマがシータのどちらかが『ラーマ』として召喚され、二人同時に召喚されることは決してないのだ。

 

通常の聖杯戦争では決して再会は叶わない、それでもこうして姿を見て、手を握り、僅かだが言葉を交わすことが出来た……それだけでシータは満足だった。

 

「大好きよ。……本当に、本当に、大好きなの」

 

ラーマがシータを愛しているように、シータもラーマを愛している。

 

愛するものを守り、助ける為の自己犠牲……それはとても美しく尊いものだった。

 

シータはラーマを抱きしめてその呪いを背負おうとした──その時だった。

 

「馬鹿野郎、勝手に消えようとするんじゃねぇ」

 

遊馬はシータの手を掴んでラーマから引き離して呪いを背負うのを阻止した。

 

「あなたは……?」

 

「俺は遊馬。この世界の唯一のマスターだ。全く、せっかく二人を再会させようと思ったのに、勝手なことをすんなよ。夫婦揃って無茶ばっかりしやがるんだから……」

 

遊馬は無茶ばかりする二人に似た者夫婦だなと思いながらため息をつく。

 

「ですが、私とラーマ様は呪いで再会することは……」

 

「その呪いを消すために俺はここに来たんだよ」

 

遊馬は自分の胸に手を当てると、中から金色の光が輝き、静かに取り出したものにシータは目を見開いて驚いた。

 

「その金色の杯は、まさか……!?」

 

「そう、聖杯だ。と言ってもこれは魔術師が作ったものじゃない、ギリシャ神話の海神・ポセイドンが持っていたオリジナルの聖杯」

 

オリジナルの聖杯の登場にかつて聖杯戦争に参加したロビンフッドは声を荒げて驚いた。

 

「オ、オリジナルの聖杯!?ちょいと少年君、そんなもんを何処で手に入れたんだ!?」

 

「ん?フランシス・ドレイク船長が世界を海に沈めようとしたポセイドンをシバいて手に入れて、その後に俺にくれたんだ」

 

「何その耳を疑うような恐ろしい事態は!?」

 

「まあその詳しい話は後にしてくれ。ちょっとこれ、持っててくれる?」

 

遊馬はシータに聖杯を持たせた。

 

対するシータは突然聖杯を持たされて動揺し、体が震えていた。

 

目の前に願望器である聖杯があるのだ、動揺するのも当たり前だった。

 

「あ、あの……!この聖杯をどうするつもりですか……!?」

 

「ん?決まってるだろ?その聖杯を使って二人にかけられた猿の呪いを解いてやる」

 

聖杯をあっさり自分たちのために使ってくれるという事実にシータは信じられない気持ちと嬉しい気持ちで困惑していた。

 

「っ!?そ、それはとても嬉しいですが、それではあなたの願いは!?聖杯はあなたのものでしたら、願いを叶える権利が……」

 

「俺自身の願いはとっくの昔に自分で叶えたから良いんだ。でもそれだけじゃ呪いを解くのに力が足りないと思う。だから、サーヴァントの絶対命令権の令呪も重ねて使う。シータ、俺と契約してくれるか?」

 

「は、はい!」

 

遊馬はシータと握手をして契約を交わし、フェイトナンバーズを生む。

 

横たわっているラーマにも了解を得てないが握手をして契約を交わしてもう一枚のフェイトナンバーズを生む。

 

ラーマとシータのフェイトナンバーズを持ち、三人との間に強い絆が結ばれる。

 

そして、呪いを解くための更なるもうひと押しに遊馬はアストラルに目を向ける。

 

「アストラル、頼む……!」

 

「君ならそう言うと思っていた。私もこの二人の呪いを解いてあげたいとずっと思っていた……行こう、遊馬!」

 

遊馬とアストラルは手を重ねて光を放つ。

 

「「俺達/私達でオーバーレイ!!」」

 

遊馬は赤い光、アストラルは青い光となって登る。

 

二つの光が螺旋状に絡まり合い、一つとなって地面に落下し、奇跡を体現する英雄が現れる。

 

「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL II!」」

 

ZEXAL IIの降臨にその姿を初めて見る者達は驚愕する。

 

「これは……一体何が起きているのですか……!?」

 

「人と精霊が合体しただと……!?そんなことがあり得るのか……!??」

 

「おいおいおい……ここまで破茶滅茶なマスターは初めてだぞ……!?」

 

「いやはや、只者じゃないと思ってたけどまさかここまでとはね……」

 

ナイチンゲール達はZEXAL IIの降臨に驚愕していた。

 

ZEXAL IIは静かにシータに近付くと、シータはポカーンと口を開けて呆然としていた。

 

「大丈夫か?」

 

「……え?は、はい!大丈夫です!」

 

「聖杯を。今から二人の呪いを解いてやる」

 

「……あの、ユウマ様。一つよろしいでしょうか?」

 

「何?」

 

シータはZEXAL IIに聖杯を渡しながら静かに尋ねた。

 

「どうして、どうして、私とラーマ様にそこまで親身になってくれるのですか……?とても貴重な聖杯を使ってまで……」

 

シータは遊馬の行動に疑問を抱いていた。

 

知り合いでも友人でも何でもない、会ったばかりなのにどうして自分たちにそこまで親身になってくれるのか。

 

何か裏があるのではないかと思わず疑ってしまうほどだった。

 

「うーん、別に深い理由はないぜ。ただラーマは本当にシータの事を大切にしている、愛しているって気持ちが伝わったから、助けたいと思っただけなんだよな……」

 

ZEXAL II──遊馬は髪を手でかきながらシータの質問に素直に答えていく。

 

「まあ、強いて言うなら……呪いってものは絶対に解いてやりたいって気持ちがあるからな」

 

「何か理由があるのですか……?」

 

「時間がないから大部分は削るが、私と遊馬は人類と世界を滅ぼそうとした邪神と戦った。その邪神が人類の中から選んだ七人の戦士達には呪いがかけられていた。それこそ、君とラーマにかけられたぐらいの魂に刻み込まれる強い呪いだ」

 

アストラルから語られた話を聞いてシータは言葉を失った。

 

夫のラーマは自分を取り戻すために魔王と戦っていたが、まさか目の前にいる少年が邪神と戦っていたなんて予想も出来なかった。

 

「俺は……その七人を救うことは出来なかった。最後はみんな人間として転生して新たな人生を歩むことは出来たけど、それでも救えずに後悔ばかりだった。だからこそ、二人を救いたいんだ」

 

「シータ、君が疑うのも無理はない。だが遊馬は君たちの境遇に心を痛め、救いたい一心で聖杯を使うことを決めた。その思いだけは疑わずに受け取ってほしい」

 

遊馬とアストラルの想いにシータの疑う心はいつのまにか消えた。

 

そして、自分とラーマの未来をこの二人に託したいと思い、ラーマと喜び合える未来を願って頭を下げた。

 

「どうか、よろしくお願いします……」

 

「ああ、任せろ。行くぜ、アストラル!」

 

「もちろんだ。全力で行くぞ!」

 

ZEXAL IIは左手に二人のフェイトナンバーズを持ち、右手に聖杯を持つ。

 

「行くぜ」

 

「はい……!」

 

シータはラーマの手を握り、目を閉じる。

 

ZEXAL IIは深呼吸をして心を落ち着かせ、聖杯を二人に向けて願いを告げる。

 

「「聖杯よ、この二人の運命を縛りし離別の呪いを解き放て!!!」」

 

聖杯から金色の光が解き放たれ、溢れ出る光の粒子が二人に浴びられる。

 

そこから更にZEXAL IIの右手甲に刻まれた令呪を輝かせて二人に絶対命令を下す。

 

「「令呪によって命ずる!!ラーマ、シータ!二人を引き離す離別の呪いを解き放て!!!」」

 

令呪による絶対命令で二人の体に赤い光が纏われる。

 

聖杯と令呪、そしてZEXAL II……奇跡の重ね掛けでラーマとシータの運命を引き離す離別の呪いを解く。

 

「うっ……」

 

「くぅっ……」

 

しかし、二人の体にまるで重力を付加したような重みが架せられ、苦しみ出した。

 

中々呪いが解ける気配が起きず、それほどまでに離別の呪いが重く、恐ろしいものだと物語っていた。

 

「諦めてたまるか、かっとビングだ!!」

 

ZEXAL IIは令呪を更に輝かせて二画目を使う。

 

「「重ねて令呪によって命ずる!ラーマとシータよ!残酷な運命に負けるな、その手で運命を切り開け!!」」

 

二画目の令呪を使い、呪いを解き放とうとするが、それでも二人の呪いが解けず、二人の体に大きな苦しみが襲いかかる。

 

「うぐぅっ……」

 

「あっ、がっ……」

 

マシュ達はもうダメかと思われたその時、ZEXAL IIは右手を金色に輝かせながら最後の令呪の一画から紅い光を放つ。

 

「「最後の令呪によって命ずる!!その手に愛する者との掛け替えのない幸せを掴み、新たな未来への道を歩め!!!」」

 

ZEXAL IIはラーマとシータの幸せと未来を願い、怒涛の令呪の三重掛けを行なった。

 

「うぁあああああっ……!」

 

「あぁあああああっ……!」

 

すると、ラーマとシータの体から不気味な闇が溢れ出した。

 

それは二人を引き離す離別の呪いが視覚化したものだった。

 

奇跡の重ね掛けは不可能を可能にする力を引き起こし、解けないと思われていた呪いが二人の体から抜け出ていく。

 

このままいけば二人の呪いを解ける……そう思った……その時だった。

 

『ジャマヲ、スルナ……!!!』

 

不気味な声が響き、聞いたことのない声にZEXAL II達が警戒すると、その声の主が静かに現れた。

 

ラーマとシータから溢れ出た闇が人型の形となり、一瞬でこの場の空間を埋め尽くすほどの闇が濁流のように広がった。

 

闇はラーマとシータを触手で縛って意識を失わせ、更にはこの場にいる全てのサーヴァントを縛り、動けなくした。

 

マシュ達はスキルや宝具を使って闇を退けようとしたが、何故か発動することが出来なかった。

 

「みんな!?」

 

「サーヴァントのみんなを縛るほどの力……まさか、貴様は……!?」

 

ZEXAL IIはこの闇を操る謎の人型に心当たりがあった。

 

「ラーマの味方の猿達が敵対していたバーリの妻か……!?」

 

『ソノ、トオリ……ワタシハ、コノフタリニ、エイエンノ、ノロイヲ、アタエルモノ……』

 

ラーマとシータに呪いをかけた元凶の猿。

 

それは二人に復讐を果たすための亡霊と化して二人を縛り付けていた。

 

『コノフタリハ、トモニ、ヨロコビヲ、ワカチアウコトハ、ナイ……!ワタシガ、フタリヲ、エイエンニ、ノロウ……ノロイツヅケテヤル!!』

 

その歪んだ復讐心は只の逆恨みであるが、二人の英霊を縛り、この場にいるサーヴァントを封じ込めるほどの強さを持っている。

 

それはアヴェンジャークラスのサーヴァント以上の恐ろしい復讐心と言っても過言ではなかった。

 

「やめろ!復讐はもう十分だろ!?いい加減に二人を解放しろ!!」

 

『ダマレ!!』

 

「ぐぁあっ……!?」

 

「くっ……!?」

 

亡霊はZEXAL IIを触手で強く縛り上げ、その身に襲いかかる闇の力にZEXAL IIの合体が強制的に解除されてしまう。

 

その際に聖杯と二枚のフェイトナンバーズが遊馬の手から離れて地面に転がり落ちる。

 

邪魔者がいなくなり、亡霊はラーマとシータに近付き、闇を操って首などを強く縛り上げていく。

 

『キエロ……!!!』

 

亡霊はこのまま二人を絞め殺して消滅させようとしている。

 

「ふざけるな……」

 

遊馬は亡霊を強く睨みつけて声を振り絞った。

 

「確かにラーマは騙し討ちをした……でもそれは味方を守るためだ。俺に戦いを教えてくれた英霊のみんなから言わせれば、一対一の正々堂々の決闘ではない限り、戦いならどんな手を使っても勝って生き残れば勝者だ……」

 

戦いは綺麗なものではない。

 

どのような手を使っても、戦いに勝利すれば勝者となる。

 

もちろん、人として決して踏み外してはいけない境界線はあるが、卑怯という言葉はルールのある戦いの中で適応される。

 

異なる時代の戦を経験してきた歴戦の英霊たちからその事を聞き、純粋で優しい遊馬は悩みながらも理解した。

 

「それでもな、ラーマはその時のことを悔やんでいた、犯してしまった罪を背負っているんだ……お前は逆恨みで二人に呪いをかけた……もう良いじゃねえか、二人は充分に苦しんだ……もう二人を縛り付けるのは止めろ……二人を解放しろ!!!」

 

遊馬は必死に亡霊に語りかけて説得を試みる。

 

しかし、亡霊は聞く耳を持たない。

 

『ダメダ、コノフタリハ、エイエンニ、クルシンデモラウ……ノロイヲ、ケソウトシタツミデ、コンドハ、メトミミヲ、ウバッテヤル』

 

既に亡霊は理性というものは一欠片も存在せず、ただ二人への怨みを果たし続ける為の復讐の怨霊と化していた。

 

「止めろ!そこまでする権利はてめえにはねえ!!」

 

『ダマレ!キサマモ、ドウザイダ……キサマモ、ニドト、タイセツナモノト、アエナクシテヤル!!』

 

亡霊は遊馬の首を絞めてシータとラーマと同様の強い呪いをかけようとした。

 

「ぐぁあああああっ!??」

 

「遊馬!?」

 

「遊馬君!!」

 

アストラル達は遊馬を助けようと必死にもがくが、触手がどんどん縛っていき、体が益々動けなくなる。

 

遊馬の体に亡霊の邪悪な力が侵食していき、その魂にまで呪いが及ぼうとしていた。

 

このままでは遊馬にも離別の呪いがかけられてしまう。

 

その時、遊馬の脳裏には家族と仲間の姿が浮かんでいた。

 

「そんな事は、させない……」

 

大切な人と永遠に会えない……冗談じゃない。

 

生きている限り別れはいつかは来る、それは理解している。

 

しかし、こんな理不尽で身勝手な理由で自分の未来と世界を奪う事はさせない。

 

「俺の未来を、世界を……」

 

遊馬の両眼の瞳の色が紅から虹色に輝く。

 

自分だけじゃない、互いを深く愛し合っているラーマとシータ……この二人の未来を守りたいと願う。

 

「ラーマとシータの未来を……てめぇに奪わせてたまるものかぁあああああっ!!!」

 

遊馬の強い思いに応えるように胸元から青白い輝きが放たれる。

 

眩い光が亡霊の触手が全て消し去り、亡霊も何が起きたのか分からずにいる。

 

『ナ、ナンダ!?』

 

「うぉおおおおおおっ!!!」

 

遊馬の背中から純白の双翼が生え、両手を開くと右手に雷光が轟き、左手に疾風が吹く。

 

雷光と疾風をそれぞれの手で握りしめると、遊馬の両手に希望皇ホープの最強の双剣……雷神の虎の剣『雷神猛虎剣』と風神の龍の剣『風神雲龍剣』が現れる。

 

虹色の眼に純白の双翼、両手に雷神猛虎剣と風神雲龍剣……いつもの遊馬とは異なる姿をしていた。

 

「二天一流!!」

 

雷神猛虎剣と風神雲龍剣を泰然と構えると、二つの剣から雷神の虎と風神の龍の幻影が現れ、それぞれが雷と風を纏わせた爪と牙で亡霊を攻撃する。

 

そして、遊馬が二つの剣を重ねて振り上げると、巨大な光の刃となる。

 

龍虎双天無限刃(りゅうこそうてんむげんじん)!!!」

 

それは二刀流剣術の師、宮本武蔵の宝具……『六道五輪・倶利伽羅天象』をイメージして考えた遊馬だけの技である。

 

いつか雷神猛虎剣と風神雲龍剣が遊馬の手で生み出した時、技を出せるようにと武蔵と修行していたのだ。

 

遊馬の攻撃は亡霊の闇を確実に打ち消していき、やがて胸元に輝く光が少しずつ落ち着き、その正体が判明する。

 

「あの光は……!?」

 

マシュは遊馬の胸元に輝く光に目を疑った。

 

それは夢で見たことのあるもの、聖杯以上に強大な力を秘めた代物。

 

パズルのようにバラバラになりながら回るカードの形をしたもの、それは……。

 

「ヌメロン・コード……!??」

 

遊馬とアストラルの世界に存在し、あらゆる世界の運命を司る神のカード……ヌメロン・コード。

 

ヌメロン・コードは二度と誰の手にも渡らず、悪用されないようにアストラル世界で封印されているはず。

 

それが何故、遊馬の胸元で光り輝いているのか……?

 

「遊馬……」

 

マシュ達が困惑する中、アストラルはその事実を知っているようで冷静に立ち上がる。

 

「はぁあああああっ!!!」

 

アストラルは雄叫びを上げ、体から閃光を輝かせて一枚のカードを掲げた。

 

亡霊を倒す……否、完全に呪いを解き放つには滅するつもりでなければならない。

 

そうでなければこの場を乗り切る事はできず、ラーマとシータを救う事はできない。

 

その為にもアストラルは今の自分が呼び出せる最強の力を召喚する。

 

「現れよ!No.99!!」

 

上空に遊馬の苗字の『九十九』と同じ『99』の刻印が浮かび上がる。

 

暴風が吹き荒れ、紫電が轟き、その中からナンバーズの力を一つにした最強の魔物が現れる。

 

「『希望皇龍(きぼうおうりゅう) ホープ・ドラグーン』!!!」

 

『ゴォオオオオオーッ!!!』

 

屈強な鎧と武装を装着した純白の巨龍が姿を現した。

 

「な、何、あのドラゴンは!?」

 

今までの銀河眼や他のナンバーズのドラゴンとは異なる異質なドラゴンの登場にレティシアは興奮した。

 

希望皇龍ホープ・ドラグーンは全てのナンバーズの終焉にして、頂点に君臨する皇龍。

 

遊馬は双剣を地面に突き刺すとデッキケースから一枚のカードを取り出して掲げる。

 

「現れよ!FNo.0!!」

 

希望皇龍ホープ・ドラグーンの隣に『00』の刻印が浮かび上がり、次元の果てから未来を司る皇が現れる。

 

「『未来皇ホープ』!!!」

 

遊馬自身のナンバーズ、未来皇ホープが希望皇龍ホープ・ドラグーンの隣に降り立つ。

 

終焉の頂点と無限の未来……対を成す二つの『皇』が姿を現わす。

 

「一気に決めるぞ、遊馬!」

 

「ああ!」

 

アストラルは希望皇龍ホープ・ドラグーンに命令を下し、亡霊の力を削ぐ。

 

「滅び去れ、邪悪なる怨霊よ!!神滅のホープ・インフェルノ!!!」

 

希望皇龍ホープ・ドラグーンの口から神をも滅ぼす灼熱の業火を吹く。

 

業火は亡霊の放つ触手を全て焼き払い、ラーマとシータを縛る闇を一欠片残らず焼き払った。

 

ラーマとシータはその場に横たわり、二人の手が重なる。

 

「行け、遊馬!ラーマとシータの呪いを解き放て!!」

 

「おうっ!!うぉおおおおおっ!!!」

 

遊馬は胸元のヌメロン・コードを握り締め、光を手の中に押さえつけながら掲げる。

 

「来い!未来皇ホープ!!」

 

遊馬が命ずると、未来皇ホープの体が光となって遊馬と激突する。

 

遊馬と未来皇ホープの肉体と魂が一体化し、未来皇ホープの胸元の宝玉が皇の鍵の形へと変わる。

 

そして、未来皇ホープは両手にある双剣を捨てて右手を握り締める。

 

そこから現れたのは美しい純白の羽根の剣。

 

先ほど遊馬が握りしめたヌメロン・コードによって生み出された奇跡の剣で未来皇ホープは両手で力強く持ち上げる。

 

「ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!!!」

 

『ヤメロ!ヤメロォオオオオオ!!』

 

羽根の剣を振り下ろし、亡霊の脳天から真っ二つに斬り裂いた。

 

断末魔の叫びを上げる間も無く亡霊は斬り裂かれ、その中心から無数の光の波動が解き放たれた。

 

亡霊の闇が消え去ると、遊馬は未来皇ホープと分離し、眼の色が元に戻り、背中に生えていた双翼は静かに消えた。

 

『オノレ……』

 

しかし、亡霊の闇が僅かに残り、煙のように登っている。

 

まだ亡霊の意識があり、横たわるラーマとシータに手を伸ばしていた。

 

遊馬とアストラルはラーマとシータを守ろうと走り出したその時。

 

「後は俺様に任せな」

 

皇の鍵から漆黒の霧が噴き出し、亡霊の前にミストラルが現れた。

 

「ミストラル!?」

 

ミストラルはニヤリと笑みを浮かべて右手を伸ばした。

 

「俺様は元々、ドン・サウザンドの呪いから生まれた存在だ。この呪いの残留因子……全て喰わせてもらう!!!」

 

右手が輝くと亡霊を掃除機のように勢い良く吸収していく。

 

『アァ……ノロイガ……』

 

亡霊の僅かに残った力がミストラルに吸収されていき、それがミストラルの失われた力を補うための糧となる。

 

「諦めな、お前は手を出しちゃいけねえ二人を敵に回したんだからな」

 

ミストラルは亡霊の力を全て吸収し、その意識を完全に消滅させた。

 

「ふん、これでようやく半分を越えたぐらいか……」

 

冬木で奪われたミストラルの力も全盛期の半分を越えた程度にまで回復し、少し満足したように頷いた。

 

「ミストラル……」

 

「……礼は言わないぞ」

 

「俺様は自分の力を取り戻すために猿の怨霊を取り込んだだけだ。礼を言われる必要はない。じゃあな、俺は皇の鍵の中で寝る」

 

ミストラルは用がなくなると粒子化して皇の鍵の中に戻った。

 

どんな理由であれ亡霊の残りを倒してくれたことは事実だ。

 

内心感謝しつつ、遊馬とアストラルはラーマとシータに恐る恐る近づいた。

 

すると、ラーマとシータの重なる手がピクッと動き、自然と手が絡み合って強く握りしめた。

 

「シータ……?」

 

「ラーマ様……?」

 

二人の意識が戻り、目を開いて顔を上げた。

 

ラーマは霞んで見えていた視界が開けていき、光が差し込む。

 

抉れていた心臓はいつのまにか塞いでおり、体に重いダルさがあったが、目を凝らすとそこには待ち望んでいた光景が広がっていた。

 

「ああっ……シータ……!見えるよ、君の顔が見える……!!」

 

それは愛する妻……シータの姿を目に焼き付ける事だった。

 

「ラーマ様……!はい……!私も、あなた様の顔がよく見えます……!!」

 

ラーマが自分の顔を見れている事に気付き、シータは涙を浮かべて精一杯の笑顔を見せる。

 

二人は起き上がり、空いている手で互いの頬に触れる。

 

手に感じる確かな暖かい温もりに二人の眼から涙が溢れる。

 

「シータ……愛している。僕は、君だけいれば何もいらないよ……」

 

「私もです。愛しております、ラーマ様……」

 

二人は互いが持つ愛情を言葉にして送った。

 

そして、二人は顔を近づけて互いの唇を重ね、愛を深める為のキスをする。

 

それは二人にかけられた残酷な運命の呪いから解き放たれた瞬間だった。

 

ようやく二人が再会できた事実にマシュ達は喜んだ。

 

声に上げて喜びたかったが、二人の邪魔をしてはいけないと声を必死に抑えていた。

 

遊馬とアストラルは微笑みながら二人を見守り、視線を合わせて手を挙げる。

 

「やったな、アストラル」

 

「ああ。遊馬、君の強い想いが奇跡を起こしたんだ」

 

二人はハイタッチを交わして喜びを分かち合った。

 

「何言ってんだよ。お前がいてくれた、お陰……だ……ぜ……」

 

突如、遊馬は意識が朦朧とし、その場に崩れて倒れる。

 

「遊馬!?くっ……」

 

遊馬に駆け寄ろうとしたアストラルも意識が朦朧として遊馬に重なるように倒れた。

 

「遊馬君!?アストラルさん!??」

 

遊馬とアストラルが倒れ、マシュは声を上げて叫んだ。

 

それに気付いたラーマとシータは遊馬とアストラルが倒れている事に顔を真っ青にした。

 

「ユウマ!!アストラル!!」

 

「ユウマ様!アストラル様!」

 

ラーマとシータは遊馬とアストラルに駆け寄り、必死に呼びかけるが既に二人の意識は無かった。

 

そして、二人の意識が無くなると未来皇ホープとホープ・ドラグーンが静かに消滅する。

 

その際、未来皇ホープが持っていた羽根の剣が小さな光となり、遊馬の中に戻るように入っていった。

 

 

アメリカ軍の城……そこでエレナは遊馬から渡されたD・ゲイザーを弄りながらお茶を飲んでいた。

 

すると、突然エレナの手からカップが落ち、派手にカップが割れて砕け散る。

 

「あっ、あぁ……」

 

エレナは体がガタガタと大きく震えて両腕で自分を強く抱きしめた。

 

「エレナ、どうした!?」

 

「大丈夫か?」

 

エジソンとカルナはエレナの異変に心配するが、エレナは歓喜の笑みを浮かべていた。

 

「感じるわ……感じるわ!!」

 

「な、何がだ……?」

 

「何を感じたんだ……?」

 

エジソンとカルナはエレナの見たことない歓喜の笑みに軽く引いていた。

 

「マハトマよ、マハトマ!私には分かるのよ!しかも、これは……そうか、そうだったのね!!」

 

エレナにしか分からないマハトマにエジソンとカルナは訳が分からずに困惑する。

 

「ユウマ、やっぱりあなただったのね!うふふ、今度会ったら体の隅々まで調べてあげるんだから!」

 

よく分からないがエレナは遊馬に何かを感じたらしい。

 

エレナが遊馬を襲う光景がエジソンとカルナの頭に浮かんだ。

 

互いの理想の違いで別れた敵とは言え、流石にそれは色々まずいと思い、その時はエレナを全力で止めようと心に誓った。

 

 

アルカトラズ島から離れた地で一人の女性が走っていた。

 

その女性は黒い戦装束に真紅の魔槍を携え、赤い瞳を持っていた。

 

「何だったんだ、先ほどの力の波動は……」

 

女性は僅かに感じた力の波動……しかし、その波動は今まで感じたことがないほどのものだった。

 

それはケルト軍のサーヴァントでも無ければアメリカ軍のサーヴァントの仕業でもない。

 

では一体誰が何のために放ったのか?

 

女性はその真実を確かめる為に大地を駆け抜けた。

 

 

 




ラーマとシータの呪いが解かれ、二人は再会できました!
しかし、皆さん疑問に思うところはあると思います。
それは……遊馬君にヌメロン・コードが宿っていたことです。
やりすぎじゃないか?と思う人も多いかと思いますが、これは独自設定になりますが、ちゃんと本編を何度も見直してから気が付いたことなどを踏まえた理由は考えてありますので後々本編で説明します。

次回はいよいよFGOで私が一番大好きなあの人を登場させます!

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