Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回はオルガマリー所長の心の悩みなどを書きます。
まあこの人は色々ありますからね。
ここらで立ち上がってもらいたい気持ちもあって描写しました。

※ナンバーズ122の最初の部分を書き直しました。
大変お待たせしてすみません。


ナンバーズ125 オルガマリーの再起

オルガマリーが聖杯によってデミ・サーヴァントとなってしまい、驚愕しながらも落ち着いて状況を整理する。

 

「お、落ち着きなさい……まずは私の中にいるサーヴァントの真名と宝具を確かめないと……」

 

「大丈夫か?所長……」

 

「大丈夫よ……」

 

オルガマリーは目を閉じて神経を集中し、まずは宝具を発動する。

 

どんな宝具か分からないが期待に胸を躍らせると……。

 

ポンッ!

 

オルガマリーの手に一つのファイルが現れた。

 

「……ファイル?」

 

ファイルには『O&C』と書かれており、オルガマリーはキョトンとしながらファイルを開くとそこには写真付きの資料があった。

 

「誰よ、この老人は?」

 

写真にはオルガマリーが見たことのない老人の白黒写真だった。

 

「これは……オルガマリー、君の中にいる英霊の正体が分かったぞ」

 

アストラルはその写真とファイルの『O&C』から英霊の正体が判明した。

 

「アメリカ連邦捜査局、通称FBI……その初代長官『ジョン・エドガー・フーヴァー』」

 

「……はぁ!?FBIの初代長官!?」

 

ジョン・エドガー・フーヴァー。

 

FBIの初代長官で、当時マフィアの影響力が非常に大きかったアメリカでFBIを巨大な捜査機関に成長させた。

 

近代的・科学的な捜査方法を大々的に導入した立役者として知られている。

 

「FBIって結構近代に出来た組織じゃねえか?その初代長官って事は、そのファイルが宝具?」

 

ファイルの資料に書かれている文にこの宝具の事が書かれており、マシュはそれを読み上げた。

 

「何かファイルに書いてあります。えっと……この宝具は『公式かつ機密(オフィシャル・アンド・コンフィデンシャル)』。その能力は『敵の秘密や弱みを暴いて脅迫する』……え?」

 

攻撃的な宝具ではなく敵対する者の情報を全てを暴くものでサーヴァントの真名や弱点を暴くことができる。

 

「何よそれ!陰険な宝具じゃないの!??」

 

「なるほど、フーヴァー長官が所持していたファイルには多くの政治家の機密情報や不祥事、スキャンダルのデータベースがあり、死後に発見された遺品には国家を複数回転覆させられるほどの情報があったらしい……それが宝具になった訳だな」

 

フーヴァーはFBI長官だが、その反面暗黒面も非常に大きく、連邦捜査局の調査過程には違法捜査も多く行ってきた。

 

それによりフーヴァーのファイルには膨大な数の恐ろしい情報が揃っていたのだ。

 

「ああもう!他に無いの!?使える宝具は!??」

 

オルガマリーが頭を抱えて叫ぶと、突然周囲に黒いスーツを着た男性達が現れた。

 

「今度は誰よ!?あなた達は!?」

 

「あ、宝具の説明がもう一つあります!『黒服の男たち(ガヴァメント・メン)』。エージェントを呼び出し、あらゆる情報を収集してお届けする……らしいです」

 

「情報って……じゃあ、アメリカ軍とケルト軍の情報、持ってこれる?出来れば今夜中に……出来る?」

 

男たちは頷くとその場で瞬時にその場から消えて情報収集に向かった。

 

「はぁ……遊馬、先に情報収集に向かった百貌のハサンたちに連絡をお願い」

 

「お、おう、了解」

 

遊馬はD・ゲイザーを使ってアメリカ各地に向かっている百貌のハサン達に連絡を取って全員を集める。

 

「情報収集が完了次第、作戦会議を行います。それまでは自由時間とします」

 

オルガマリーは髪を手櫛でかき、アルカトラズ刑務所にある備品のデスクなどを借りて資料を整理し始めた。

 

思わぬ自由時間に遊馬達はそれぞれの時間を過ごす。

 

ほとんどは刑務所の外に出て戦いの疲れを癒すためにのんびりと過ごし、小鳥は夕飯の準備をする。

 

アルカトラズ島には少し前に倒したワイバーンが山ほどいるので、クー・フーリンなどに解体してもらって新鮮で良質な肉を切り取り、残りの骨や内臓は清姫に焼いて灰にしてもらう。

 

小鳥は大量のワイバーンの肉が手に入ったので、バーベキューをする事にし、カルデアから野菜を送ってもらい、串焼きバーベキューとご飯の炊き込みの仕込みをする。

 

そこにシータがやって来た。

 

「あ、あの……」

 

「シータさん、どうしました?」

 

「よろしければ、お手伝いします」

 

「え?でも、ラーマさんと一緒にいなくて良いんですか?」

 

「大丈夫です、ラーマ様とはこれから沢山一緒にいられますから。ラーマ様は寝起きなので体が鈍っていると、これからの戦いに向けて体を動かしています」

 

ラーマは目先に必ず戦わなければならない相手としてアメリカ軍にいるカルナがいる。

 

最強クラスのサーヴァントであるカルナには生半可な覚悟では相手にはならない。

 

ラーマはシータが信じる世界一強い戦士として、そして……自分たちを救ってくれた遊馬とアストラルの為にも必ず勝つと決意し、修練を積む。

 

「だったら、ラーマさんの為にも沢山作らないとですね!」

 

「はい!あの、コトリさん。よろしければ、ユウマ様とアストラル様の事を教えていただけますか?お二人の事は全然知らないので……」

 

「もちろん、良いですよ。じゃあどこから話そうかな……」

 

小鳥とシータは夕飯の準備をしながら遊馬とアストラルの話をする。

 

 

一方、遊馬とアストラルは……。

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

二刀流最強剣士・武蔵とケルト最高峰の魔槍戦士・スカサハの模擬戦を見ていた。

 

互いに二振りの得物を使う者同士、二人は楽しそうに笑みを浮かべてそれぞれ刀と槍を振るっている。

 

流石に宝具を使ったら相手を殺しかねないので宝具の使用なしの武術のみの模擬戦である。

 

「すげぇな……!」

 

「時代と国を超えた二つの得物を持つ達人同士の戦いか。やはりサーヴァントだとこう言った戦いが見られるのは素晴らしいな」

 

「そりゃあ、別に構わねえんだけどよぉ……」

 

遊馬とアストラルは二人の戦いに感心しているとクー・フーリンが隣に座る。

 

「兄貴?どうしたんだ?」

 

「あー、ラーマの相手が終わったんでスカサハの様子を見に来たんだけどよ……」

 

「それで?」

 

クー・フーリンは顔をげっそりとしながらスカサハを見つめた。

 

「なぁマスター、スカサハは俺の師匠なんだが……なんだよあれ……城に居た時より腕前上がってねぇかあの人?」

 

「そうなのか?」

 

「影の国で門番をしていて、ずっと戦い続けてきたからか……?」

 

「てかゲイ・ボルク二槍流って俺の立場無いですよね!?」

 

クー・フーリンは二つのゲイ・ボルグを巧みに操るスカサハに対して愚痴をこぼして頭を抱えた。

 

スカサハは生前のクー・フーリンが知っている以上にかなり強くなっており、スカサハ自身の『願い』を考えるとあまりの強さに最早呆れ果てるほどだった。

 

「うーん……スカサハ師匠って、確か不老不死だったんだよな?どれぐらい生きていたんかな……?」

 

「ケルト神話の年代を考えると……最低でも2000年は越えているな」

 

「うへぇ……そんなに生きていたなんてな……」

 

「全く、あの師匠は。ババァなんだからもう少しは歳を考えて自重──」

 

クー・フーリンは出来るだけ小さな声でつぶやいたが……。

 

「『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ・オルタナティブ)』!」

 

「え?ちょっ、おまっ──ギャアアアアアアーッ!??」

 

突如、クー・フーリンにゲイ・ボルグの二槍が飛び、空高くぶっ飛ばされてそのままアルカトラズ島の外の海へと落ちていった。

 

「えぇえええええーっ!?あ、兄貴ー!?」

 

「クー・フーリンがまたぶっ飛ばされた……」

 

「あらら……面白いように派手にぶっ飛ばされちゃったね……」

 

遊馬とアストラルは目の前で起きた事に驚愕し、武蔵は突然スカサハが戦闘を中断して宝具を解放してクー・フーリンをぶっ飛ばした事に唖然とした。

 

「全く、あの馬鹿弟子は口が減らないな……」

 

スカサハはゲイ・ボルグで軽く肩を叩きながら愚痴をぼやいていた。

 

さっきのクー・フーリンの悪口はしっかりとスカサハの耳に届いていた。

 

やはりスカサハもサーヴァントとは言え、一人の女性なのでやはり年齢の事を色々言われるのは嫌らしい。

 

下手をすればクー・フーリンの二の舞になる可能性がほぼ確実である。

 

「それで……お主らも私をババァと呼ぶか?」

 

ギロリと殺気が込められた視線が遊馬とアストラルにも向けられた。

 

まさかの矛先の転換に遊馬とアストラルは全力で否定する。

 

「いえいえいえ、滅相もございません!見た目が婆ちゃんそのまんまなら、俺も婆ちゃんって呼んだかもしれねえけど、スカサハ師匠は姉ちゃんと同じぐらいの若い見た目だから呼べる訳ねえって!」

 

「わ、私も、不死ではないが長いこと生きていたのでそもそも言うつもりはない!」

 

「……そうか。なら良い。ちなみに、マスターのその姉の歳はいくつだ?」

 

「え?二十歳だけど……」

 

「二十歳か……そうか、そうか。それなら良い!」

 

遊馬の姉、明里は二十歳なのでスカサハもそれぐらい若く見られると知り、上機嫌となる。

 

元々言うつもりは無かったが、遊馬とアストラルは女性サーヴァントに対してこれからも年齢の事を一切口にしないと心に誓った。

 

 

夕食のバーベキューを食べ、しばらくした後……。

 

「はぁ……」

 

オルガマリーは本日数度目となる溜息を吐きながらペンを動かす手を止めた。

 

「なんとか資料作成は終わったわね……」

 

百貌のハサンと黒服の男たちから集められた情報を元に資料を作成し、今度はそれをファイリングして分かりやすくまとめる。

 

「以前の私ならここまで効率よく上手に作れなかったわね……流石は世界に名だたるFBIの初代長官ね」

 

戦闘能力は高くは無いが、情報収集やファイリングなど『情報』と言う点においてはフーヴァーに勝るサーヴァントはそうそういないだろう。

 

それに加え、黒服の男たちが集めた情報は情報量が多く、それを元にフーヴァーの『公式かつ機密』で秘密を暴き、不明だった謎を解き明かすことが出来た。

 

「それにしても……この資料は恐ろしいわね……」

 

元々あった資料の中にはフーヴァーが生前に集めたアメリカに関するものもあった。

 

魔術世界という名の裏社会出身のオルガマリーでも思わず顔が真っ青になるほどのアメリカの国家における重大な機密情報が事細かに記されていた。

 

こんなものが仮に人理焼却が起きる前に世界に暴露されたらアメリカが転覆し、下手すればアメリカという国が崩壊し、世界に多大な影響を与えるものだった。

 

「これは忘れましょう……」

 

オルガマリーはパタン!とファイルを閉じてその資料のことを全力で忘れる事にした。

 

「それにしても……この特異点で召喚されたサーヴァントは化け物揃いね。文字通り化け物みたいな見た目のもいるし……」

 

揃えた情報からこのアメリカに現存しているサーヴァントの情報が集まっており、今までの特異点とは比べ物にならないほどの化け物と呼べるほどの強力なサーヴァントの多さにオルガマリーは頭を抱える。

 

「クー・フーリンの師匠で影の国の女王のスカサハが味方になってくれたのは大きいわ。でもケルト軍と戦うにはアメリカ軍を何とか味方に引き入れないといけない……」

 

アメリカ軍、ケルト軍、そして今自分たちがいるレジスタンス軍……三つ巴の戦いであるが、強大な力を持つケルト軍に対抗する為にはまずアメリカ軍を味方に引き入らなければならない。

 

しかしそれには力を示す必要があり、最強クラスのサーヴァントであるカルナを何とかしなければならない。

 

「やはりアメリカ軍の一番の難敵はカルナね。同じインド神話のラーマが無事に復活したとは言え勝てるかどうか……いいえ、その心配は無いわね。奥さんのシータと再会して心身共に絶好調みたいだからね」

 

誰が見ても今のラーマは絶好調であり、シータがいる限り全力全開で戦える事は確実。

 

シータの愛がある限りラーマが負ける事はまず無いだろう。

 

資料をまとめながら色々考えるオルガマリーにナイチンゲールが近づく。

 

「どうぞ、コーヒーです」

 

「え?あ、ありがとう……」

 

「ミス・コトリが用意してくれました。カルデアと呼ばれる所から運ばれてきました」

 

コーヒー豆とコーヒーマシンがカルデアから届けられ、それを小鳥が淹れたのだ。

 

「そう、わかったわ」

 

オルガマリーはナイチンゲールから受け取ったコーヒーを飲み、一息いれる。

 

紅茶よりもコーヒー派であるオルガマリーは落ち着いた表情を浮かべる。

 

すると、ナイチンゲールもコーヒーを飲みながらオルガマリーに話しかける。

 

「ミス・オルガマリー。あなたは心に深い病を抱えていますね?」

 

「……そりゃあ抱えているわよ。私の人生は色々あったからね」

 

「よろしければ私に話していただけますか?少しは楽になりますよ」

 

「どうしてあなたに──いいえ、お願いしようかしら……」

 

オルガマリーは異性のロマニとは違い、同性で看護婦であるナイチンゲールに話せる気がして大きく息を吐きながら打ち明けた。

 

オルガマリーの誰にも認められずに育ってきたこれまでの過去と数年前に亡くなった父の犯した『大罪』。

 

人理焼却によるカルデア所長として自分の背中に伸し掛かる大きな責任と自分が一番の信頼を寄せていた男が自分や大勢のカルデア職員を殺した裏切り者でしかも本物の悪魔。

 

遊馬とアストラルのお陰で蘇り、世界と人類の未来、そして遊馬達のために命を賭けると心に誓った。

 

しかし、自分は役立たずで遊馬とアストラル達のように大きな力は無く、戦うことは出来ない。

 

せっかく奇跡が起きてデミ・サーヴァントになったが、戦う力の無い後方支援専門の宝具に能力……オルガマリーは自分の不甲斐なさに絶望していた。

 

「私は……カルデア所長として、遊馬とアストラル……それに、マシュの為にも力が欲しかった。少しでもみんなの役に立てるように……」

 

オルガマリーは自分に力が無いことを呪い、不甲斐ないと感じていた。

 

自分よりも幼い少年少女達に戦場に送り、自分だけは安全な場所で見守り、指示を出す。

 

何て卑怯な大人なんだろう、せめて自分にも力があれば……と、オルガマリーは何度も自分を責めていた。

 

そんなオルガマリーの心境にナイチンゲールは静かに質問する。

 

「……ミス・オルガマリー。いくつか質問します。カルデアの組織についてはまだあまりよく知りませんが、あなたはカルデアの所長……つまりはその組織のトップですね?」

 

「ええ、そうよ……」

 

「では、軍で言うなら……私達サーヴァントのマスターであるユウマが指揮官、あなたは最高司令官……という事になりますね」

 

「まあ……そうなる、わね……」

 

「なら話は早い。あなたに宿った英霊は戦う力はないかもしれません。しかし、あなたは最高司令官。最高司令官は直接戦う必要はありません。大切なのは部下に的確な指示を出し、戦争を勝利に導くかです」

 

「確かにそうかもしれないけど、私は助言とかしている程度で……実際に現場で戦って判断しているのは遊馬とアストラルとマシュで……」

 

「でしたら、フーヴァー長官の力を存分に使えばいいのです。見た所、情報収集と分類と整理がとても素晴らしい。それを使ってマスター達を全力でサポートすれば更に勝率が上がると思われます」

 

「それも、そうね……」

 

「私は戦場で天使とよく言われましたが、実際に看護婦として生きていたのはわずか2年半でした。その後は病に侵されて死ぬまでずっとベッドの上でした。しかし、私は自分にできる事を精一杯やりました」

 

ナイチンゲールは白衣の天使と呼ばれているが、実際に戦場で看護婦として活躍したのは僅か2年半。

 

その後の亡くなるまでの54年間はベット上での生活を余儀なくされながらも、衛生管理の改善、看護婦の重要性などを説いた。

 

「ミス・オルガマリー、あなたは体が万全に動きます。あなたは、あなただけに出来ることを最後まで精一杯やるのです。ユウマはあなたが後ろで全力でバックアップをしてくれるこそ、安心して戦えるのです」

 

ナイチンゲールは自分の過去などの話を踏まえ、悩んでいるオルガマリーを励まし、そして導いていく。

 

「私だけに出来る事……」

 

オルガマリーは胸に手を当て、目を閉じて深く考える。

 

自分は一度死んだ身だが、遊馬とアストラルが立ち上がる為の大きな希望をくれた。

 

縁も所縁もないが、こんな自分にフーヴァーは力を託してくれた。

 

それはカルデア所長……最高司令官として戦い抜けという意味が込められているのではないかとオルガマリーは解釈をする。

 

「ありがとう、ナイチンゲール……あなたのお陰で吹っ切れたわ」

 

オルガマリーはコーヒーを一気に飲み干し、気合いを入れて目の前の資料に向き合う。

 

「そうよ、私は人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長……オルガマリー・アニムスフィア。かっとビングよ、私!!!」

 

オルガマリーは初めてかっとビングと叫び、作業の続きに取り掛かった。

 

「心の病が無くなりましたね、治療完了ですね」

 

ナイチンゲールはオルガマリーの心の病が無事に治療出来たことに満足して静かに退室した。

 

 

翌朝、朝食を終えると作戦会議が始まった。

 

「では、これから作戦会議を始めます!」

 

「なんか所長……気合い入ってね?」

 

「そうですね、いつもより気迫が違いますね……」

 

オルガマリーがいつも以上に気合いが入っているので、遊馬とマシュは驚いてヒソヒソ話をしている。

 

「そこ、無駄口を叩かない!」

 

「「は、はい!」」

 

「まずは現状を相関図でまとめました!」

 

オルガマリーは大きなボードを用意し、そこにアメリカ軍、ケルト軍、レジスタンス軍の相関図を作った。

 

ケルト軍には遊馬が見たことない名が連なっていた。

 

「えっと……メイヴ?アルジュナ?誰だ?」

 

「メイヴ、この特異点の元凶よ」

 

「何者なんだ?」

 

「ケルト神話で登場するコノートの女王よ。大の男好きで数多くの王や勇士と結婚し、アルスター伝説最大の戦争を引き起こした張本人。そして、クー・フーリンを死に追いやった女よ」

 

「クー・フーリンを!?」

 

「ああ。と言っても、あいつに直接やられた訳じゃねえけどな。そこんところは説明するのは面倒だから、後で本でも呼んでくれ」

 

「おう、分かった。それで、そのメイヴがクー・フーリン・オルタを作り出したのか?」

 

「いいえ、レティシアの時とは違って、作った訳じゃないわ。メイヴが『自分と共にあれる邪悪な王のクー・フーリン』を願ったことによって、変転した姿なのよ。生前の狂戦士状態ですらない……本来のバーサーカーとはまた異なる姿での召喚されたらしいわ」

 

邪悪な王として無理矢理歪められた存在として召喚された狂王……クー・フーリン・オルタ。

 

オルガマリーの公式かつ機密により、クー・フーリン・オルタの秘密が判明し、クー・フーリンは呆れてため息をつく。

 

「あの馬鹿女……そんなことを願いやがったのかよ……」

 

「メイヴがお前に対する未練の所為だな」

 

「ちなみにこのメイヴが無限に現れるケルト兵を生み出しているわ。メイヴを止めない限りケルト兵はまだまだ現れるわよ」

 

無限に現れるケルト兵は全てメイヴが生み出している。

 

「なるほどな……それで、アルジュナって誰?」

 

「アルジュナはラーマとシータが出る『ラーマーヤナ』と並ぶインドの二大叙事詩の一つ、『マハーバーラタ』に出ている『授かりの英雄』と呼ばれている大英雄で、カルナとは異父兄弟よ。アーチャークラスでカルナに匹敵するサーヴァントよ」

 

カルナとアルジュナ、ラーマとシータ。

 

これでインドの二大叙事詩のそれぞれの主要人物が揃っていることになった。

 

「マジかよ……あのカルナと同じくらい強いサーヴァントか」

 

「しかし解せぬ……英雄アルジュナが何故ケルト軍にいるのか……」

 

ラーマは直接面識はないが同じ同郷の英霊であるアルジュナが何故ケルト軍に属しているのか理解出来なかった。

 

「少なくとも私達の敵で間違い無いわ。戦うからには全力でやらないとこちらが負けるわ。そこで私はアメリカ軍と交渉したいと考えているわ」

 

「交渉って、カルナとエレナはともかく、あのエジソンを説得出来るか?」

 

「交渉は対等に渡り合えなければ話にならないわ。だけど、今こちらにはラーマとスカサハがいる。これで戦力は対等以上になったと言えるわ。エジソンにはこちらのカードを見せて交渉に応じさせるわ。でも、もしもエジソンが頑固でまだ世界をアメリカだけにすると言ったら……」

 

「言ったら?」

 

オルガマリーは不敵の笑みを浮かべてトンデモナイ爆弾発言をする。

 

「決まっているわ……話を聞かないエジソンを容赦なくぶっ飛ばして、私たちカルデア・レジスタンス連合軍がアメリカ軍を占拠しましょう!」

 

「……えぇえええええっ!?ちょっと、オルガマリー所長?」

 

「そ、それで良いのか……?」

 

「確かにそれはちょっと……」

 

遊馬とアストラルとマシュは待ったをかけようとしたが……。

 

「はははっ!言うようになったじゃねえか、嬢ちゃん!乗ったぜ、その作戦!」

 

「分かりやすい結論だ。力を示し、手に入れる……実に単純明快だ」

 

オルガマリーの提案はケルト組のクー・フーリンとスカサハにとっては好ましいもので、やる気を出していた。

 

他のサーヴァント達もその提案に賛同していき、遊馬もエジソンともう一度話したいと思い、賛同することにした。

 

ケルト軍と対決する前にアメリカ軍と交渉し、最悪戦闘を交わしてでもアメリカ軍を占拠して手に入れる。

 

「さあ……アメリカ軍に向けて、カチコミと行きましょうか!」

 

「あれ?所長も式の影響を受けてる?」

 

式が色々とヤバイ家のお嬢様なのでたまに語られる話に遊馬達も偶に影響を受けている。

 

遊馬はかっとび遊馬号を呼び出し、初めて乗る飛行船にシータやスカサハは驚き、アルカトラズ島からアメリカ軍の城へと一気に向かう。

 

 

アメリカ軍の城の真上にかっとび遊馬号が現れ、遊馬達が降り立つと兵士たちは騒ぎを起こしたが、それをマシュ達サーヴァントがすぐに鎮圧する。

 

そして、正面の扉を開けて堂々と城の中に入る。

 

いつでも反撃出来るように宝具や武器を構えていると……。

 

ドドドドド……!!!

 

「何だ?」

 

何かが走ってくる音が廊下に響き渡り、手をかざして廊下の奥を見渡すと……。

 

「ユウマァアアアアアッ!!!」

 

「エレナ?」

 

全力疾走で走ってきたのはエレナだった。

 

とてもキャスタークラスのサーヴァントとは思えない見事な走りに感心していると、エレナは遊馬の前で急停止をする。

 

エレナは目をキラキラと輝かせながら見た目相応の笑顔を見せながら遊馬の手を握る。

 

「来てくれたのね、ユウマ!私の方から連絡して行こうと思っていたところなのよ!」

 

「ど、どうしたんだ?そんなに興奮して……」

 

「興奮しない訳ないじゃない!だって貴方自身がマハトマだったんだから!」

 

「えっと、どう言う意味だ?」

 

「もう、隠さなくても良いわよ!あなたの中からアカシックレコード……いいえ、ヌメロン・コードの力を感じたんだから!」

 

エレナの口から語られた内容に遊馬はキョトンとなって首を傾げた。

 

「俺から、ヌメロン・コード……?」

 

「ほら、昨日使ったでしょう?私、その時の力の波動をビビビッて体に感じてね、思わず飲んでいたお茶を落としたんだからね」

 

楽しそうに話すエレナに対し、遊馬は頭を抱えた。

 

「昨日……?俺、ヌメロン・コードなんて使ったのか……?そもそも、俺に何でヌメロン・コードが……?」

 

遊馬は昨日、ラーマとシータを亡霊から助ける時にヌメロン・コードの力を使用したが、その時の記憶がすっぽりと抜け落ちている。

 

未来皇ホープを召喚して一体化して攻撃した時の事は覚えているが、どうやって攻撃したのかなど覚えていないのだ。

 

「覚えていないの?それじゃあ……私が調べてあげようか?どう、私の部屋でゆっくりと……」

 

「そこまでだ、ブラヴァッキー」

 

「えっ?キャアアアアアッ!?は、離しなさいよ、カルナ!」

 

エレナが暴走する直前にカルナが現れ、エレナの首根っこを掴んで遊馬から離す。

 

昨日のエレナの異常な反応を心配して来て見れば案の定、遊馬に対して暴走していたので首根っこを掴んで止めたのだ。

 

エレナの暴走にマシュ達の堪忍袋の尾が切れて宝具を発動仕掛けたので、もう少し遅ければ廊下で激しい戦闘が起きていただろう。

 

「よく来たな……レジスタンス。そして、異世界の来訪者、ユウマとアストラル。エジソンが待ってる」

 

「ちょっと!離しなさいよ、カルナ!レディに対してこれは失礼よ!」

 

「――だが己の欲を満たすために少年を自室に連れ込もうとした言葉ではあるまい」

 

「べ、別にやましい事はしないわよ!?私はもうおばあちゃんなんだし!」

 

「すまんが、見た目的にユウマと歳が近いとなると、色々と危ない」

 

エレナの意見をカルナは真っ向からバッサリと論破し、そのまま遊馬達を連れてエジソンの待つ謁見の間へ向かう。

 

「……アストラル」

 

遊馬は自分の知らない真実を知っているであろうアストラルに向けて静かに名を呼ぶ。

 

「……分かっている。アメリカ軍との交渉が終わったら、君が求めている全てを話す」

 

アストラルは何かを覚悟したように頷く。

 

「分かった……」

 

その言葉に遊馬は自分の頬を叩いて気合を入れ、目の前のことに集中する。

 

そして、アメリカ軍の代表……大統王エジソンとの二度目の会合となる。

 

 

 




オルガマリー所長に宿ったサーヴァントはFBI初代長官のフーヴァーでした!
これはマンガで分かるFGOで登場したアサシンから出しました。
所長関連で調べていたらあったので、マンガで分かるFGOを見直して採用しました。
カルデア所長という立場から単純な力の戦力よりも情報収集の方が良いと思いましたので。

冷静に考えると敵サーヴァントの情報を全部丸わかりって凄いですよね。
仮に普通の聖杯戦争なら抜群に強いと言われてますから。

後半は案の定、エレナが暴走しました(笑)
カルナが来なかったらエレナ大ピンチでしたね。

次回は遂に今年の夏で衝撃を与えて暴れまくったあのバーサーカーの登場です!
同時に遊馬と小鳥ちゃんの大ピンチですが(笑)

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