Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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遊戯王ZEXALの一番の大きな謎……遊馬の正体が判明します。

遊馬の設定って普通に神話レベルのものですよねー。
まあ遊戯王主人公なら結構ありますけど。
遊戯→古代エジプトの名も無き王の魂が宿る。
十代→前世からの付き合いであるユベルと超融合
遊星→赤き竜に選ばれた戦士・シグナー
遊矢→四つに分かれたズァークの分身
そう言えば、遊作には前世とかの設定は無いですね。
まあVRAINSのネットワーク中心の近未来の世界観の設定なら仕方ないですが。


ナンバーズ127 明かされる真実

遊馬の鉄拳聖裁によりエジソンは倒れ、カルデア・レジスタンス連合軍の勝利に見えたが……。

 

「おお……おおおぉおおお!まだだ、まだ敗北しない!わたしは屈さない!」

 

エジソンは魂を奮い起こして再び立ち上がる。

 

「ちっ、見た目通りタフだな!姐御直伝の鉄拳聖裁を喰らっても立ち上がるなんてな!」

 

「戦士として及ばないというのであれば、この身を科学に捧げるまで!」

 

エジソンは何処からかいかにも怪しい薬品が入った試験管を取り出した。

 

「トーマス、大変身、大改造の時である!この人間味溢れた紳士の体を捨てて、今こそ、今こそ獣の如き雷音強化(ブースデッド)!トーマス・マスタ・エジソンに変貌してくれ──」

 

ヒュン!グサッ!!

 

「ぐおっ!?な、何かが手に……こ、これはカード!?」

 

エジソンの手の甲にカードの角が突き刺さり、持っていた薬品が落ちて床にぶちまけてしまった。

 

「あっぶねー……間一髪ってところだな」

 

遊馬はデッキからドローしたカードを投げ飛ばしてエジソンの手に突き刺したのだ。

 

「ば、馬鹿な!?こんな紙のカードでこの紳士の体に突き刺したというのが!?」

 

「ふふん♪デュエリストのスキルってところかな?」

 

「君は何処の世界の暗殺者だ!?」

 

思わずエジソンがツッコムほどのデュエリストの謎スキルに驚く。

 

「あー、あれは結構痛いんだよなぁ……」

 

クー・フーリンも冬木市でマシュの体に触った後に遊馬からカード手裏剣を受け、手の甲を摩りながらその時の痛みを思い出す。

 

「くっ……私の超人薬が……」

 

「やっぱりろくでもない薬じゃねえか……」

 

エジソンが飲もうとしたのは超人薬と言う、飲んだらエジソンがとんでもないことになることが確定の怪しい薬だった。

 

そんなエジソンにラーマとの戦いを切り上げたカルナが近づく。

 

「エジソン、ここまでだ。お前が倒れた時点でオレたちは敗北した。それに、第一。間違いなく体に悪いぞ、その薬は。ユウマが阻止しなかったらオレが薬を落としていた」

 

「ノー!良薬は舌に苦いものだ、心臓が爆発するぐらい耐えて見せるとも!」

 

「いや、心臓が爆発したら普通死ぬからな?」

 

「ここで私が踏み止まらなければ、誰がこの国を守るというのだ……!」

 

「はぁ……何でもかんでも一人で背負い込むなよ、エジソン」

 

遊馬はため息をつきながらエジソンに近づく。

 

「歴代のアメリカ大統領と一つになったからアメリカを守りたい気持ちは理解したよ。でもさ、今のあんたはその使命に囚われすぎて見失っているんだよ」

 

自分の経験を元にエジソンに語りかける。

 

「俺もさ、元いた世界で三つの世界を邪神から救うために沢山の仲間たちから思いを託された。負けられない、必ず勝たなきゃって気持ちはよく分かる。だけどさ……仮に勝てたとしても、世界にたった一つの国しかないアメリカに未来はあるのか?」

 

「未来、だと……!?」

 

「ああ。エジソンはケルトに対抗するために機械のアメリカ兵を作ってるけど、その資源はいつかは尽きるよな?それぐらい、天才のあんたなら分かるよな?」

 

「うっ、ぐっ……」

 

「資源が無くなったら国は成り立たなくなり、いつかは滅びる……それは歴史で証明されている。そんなアメリカを誰が望むんだ?」

 

遊馬の的確な論理からの説明にエジソンは追い込まれていく。

 

すると遊馬はデュエルディスクを見てあることを思いついて話題を変えた。

 

「なあ、エジソン。一つ小話をするぜ。実は俺、アメリカって国に憧れてたんだよな。だって……」

 

遊馬はデュエルディスクからデッキを外してエジソンに見せる。

 

「デュエルモンスターズはアメリカ人が作ったんだぜ」

 

「な、何と!?そのカードをアメリカ人が!?」

 

「アメリカの大企業、インダストリアル・イリュージョン社の会長にしてデュエルモンスターズの創造主……ペガサス・J・クロフォード。その人がエジプトにあった古代エジプトの古い石板に刻まれたモンスター達を見て、デュエルモンスターズを生み出したんだ」

 

デュエルモンスターズのルーツは古代エジプトで二枚の古く大きな石板に刻まれたモンスター達を見てインスピレーションを得た。

 

画家でもあったペガサスはそのモンスター達を自ら描いてデュエルモンスターズを生み出した。

 

何故ペガサスがエジプトに行ったのかは……それは遊馬は知らないが、その裏ではまるで誰かに導かれ、最初から定められたかのようなペガサスの運命を変える出来事があった。

 

「デュエルモンスターズを世界中の人達に発信し、今でも世界を動かすほどの力を持っている。でもデュエルモンスターズそれだけじゃ、そこまでの大きな影響力は無かった。デュエルモンスターズの可能性を大きく広げたのはデュエルディスクのお陰だ。ちなみに、デュエルディスクを作ったのは何人だと思う?」

 

「それほどの高性能で小型の立体映像装置……分かったぞ、この天才である私と同じアメリカ人だな!」

 

「ぶっぶー、残念、不正解。このデュエルディスクやソリッドビジョンを作ったのは……俺と同じ日本人だぜ?」

 

「な、何と!?極東の小さな島の者たちが!?」

 

「おいおい、日本人を馬鹿にするなよ。海馬コーポレーション社長、海馬瀬人さんは伝説のデュエリストだけじゃなく、あんたにも匹敵する天才発明家なんだぜ?まあそれ以外にも世界中に海馬ランドって言う遊園地を経営したりする世界最高峰の社長でもあるんだからな」

 

伝説のデュエリスト、武藤遊戯の永遠のライバルである海馬瀬人。

 

彼のお陰でデュエルモンスターズは革命が起き、世界中に普及したと言っても過言ではない。

 

「ま、まさか……日本にそれほどの天才がいるとは……」

 

「まあ俺の世界のだけどな。なあ、エジソン、それにアメリカ大統領のみんな。自分の国だけを守りたい気持ちは分かるけどさ、それじゃあ、つまんねえじゃん」

 

「つまらないだと……?」

 

「国がたくさんあれば、文化や宗教や人種の問題があって争うこともあるけど、違うからこそ互いに新しい刺激がある。組み合わされば未知なる可能性が生まれるんだ。それって、世界にたった一つの国じゃあ生まれないよな?多分アメリカだけ残ってもあまり発展する事はできないと思うぜ」

 

国はその国だけでなく他国の要素を得る事で発展している。

 

遊馬の世界のデュエルモンスターズはまさにその代名詞と言わんばかりの存在である。

 

今度はその話を補足するかのようにナイチンゲールが隣に立って話をする。

 

「エジソン、我々はアメリカだけでなく、この世界を癒さなければ、救わなければならない使命(オーダー)がある。イ・プルーリバス・ウナム」

 

「イ・プルー……何だ?」

 

ナイチンゲールが聴き慣れない単語を言い、遊馬は首を傾げると静かに側に現れたアストラルがその説明をする。

 

「イ・プルーリバス・ウナムとは『多数から一つ』……『多州から成る統一国家』を意味する。つまり、このアメリカ合衆国を表している」

 

「なるほど……」

 

「多数の民族から成立した国家である貴方がたは、あらゆる国家の子供に等しい。ならば、貴方がたには世界を救う義務がある。そこから目を逸らして、自分の国だけを救おうとするから──エジソンは苦しむのです」

 

「ぬ……ぐ……」

 

ここでナイチンゲールはエジソンにとって禁句である強烈な言葉を治療と言わんばかりに浴びさせる。

 

「そして、そんなだから──同じ天才発明家としてニコラ・テスラに敗北するのです、貴方は」

 

「GAohooooooooooo!?」

 

ナイチンゲールの最後の言葉が決定打となり、エジソンは悲鳴を上げながら倒れてしまった。

 

(いちばん重いの言っちゃったー!)

 

(……手加減してやってほしかったがな……)

 

エジソンの心の傷をど真ん中に打ち抜かれ、ナイチンゲールの容赦のない言葉にエレナとカルナは戦慄する。

 

エジソンは痙攣しながら倒れてしまい、ナイチンゲールが言った言葉の意味が分からずに遊馬はアストラルに聞く。

 

「ん?エジソンがニコラ・テスラ……ニコラのおっさんに負けたってどう言う事だ?」

 

「簡単に言えば、エジソンとニコラは電気の流れである直流と交流のどちらが優れているかで揉めていたんだ。それはやがて電流戦争と呼ばれるほどの争いになったんだ。結果はニコラの交流送電が上だと証明され、エジソンはニコラに負けたことになる」

 

「じゃあ、電気に関してはニコラのおっさんの方が考えが上だったわけか」

 

「GOFU……!!」

 

アストラルの説明と遊馬の純真無垢な言葉が今のエジソンにとってはマシンガンで全身を撃たれて吐血するように心に大ダメージを受けた。

 

「ユウマ、アストラル、ストップストップ!それ以上言わないで!エジソンが死んじゃうから!」

 

エレナは慌てて遊馬とアストラルの元に走ってこれ以上エジソンが傷つかないように口を止めさせる。

 

ナイチンゲールは無理矢理エジソンを起き上がらせて尋ねる。

 

「命に別状はありません。エジソン、答えなさい。貴方は、どうしたいのですか?」

 

「……ぐ……む……そうだな。認めよう、フローレンス・ナイチンゲール。私は歴代の王たちから力を託され、それでも合理的に勝利できないという事実を導き出し……自らの道をちょっとだけ踏み間違えた……愚かな思考の迷路を、彷徨っていたようだ……」

 

「……ちょっとだけ……ちょっとだけ、ですか。まあいいでしょう。傷を癒すには、まず病であると認めることから始めます。迷ったとしても構いません。貴方はいま、スタート地点に戻ってきたのですから」

 

「そうか……ここまで市民たちに犠牲を敷いておきながら、やっとスタート地点とは……これは厳しい……厳しいな、実際。私はこれからどうすればいいのか……」

 

エジソンが自分がこれからどうすれば良いのか悩んでいると……。

 

「かっとビングだ、エジソン!!!」

 

遊馬が大きく床に思いっきり一歩を踏み出しながら叫んだ。

 

「かっと、ビング……?」

 

「かっとビングは俺の父ちゃんが教えてくれたチャレンジ精神だ。俺は小さい頃から描いた夢をずっと周りの奴らに馬鹿にされてきた。だけど、俺は諦めずにかっとび続けた。何度負けても、何度絶望の淵に立たされても、俺はかっとビングで道を切り開いてきた!かっとビングがあったからこそ俺は大切な仲間たちと絆を結び、夢を叶えることが出来た!エジソン、あんたは途方もない実験を何度も何度も繰り返して電球や沢山の発明したじゃねえか!あんたこそ、俺が憧れる父ちゃんと同じ最高のかっとビング魂を持つ男だ!」

 

エジソンの諦めずに実験を繰り返し、閃きを得たからこそ人類を発展させる大きな発明をしてきた。

 

それは遊馬のかっとビングと同じチャレンジ精神があったからこそ成せた結果だ。

 

「確かにケルト軍は強大な敵だ。だけど、踏み間違えた道からスタートラインに立った今のあんたなら喜んで俺たちの力を貸す。一緒にこのアメリカを、世界を救おうぜ。かっとビングだ、エジソン!!」

 

「かっとビングか……よく分からない言葉だが、不思議と心に再び炎が灯ったように温かくなる。そして、力が漲る!!」

 

エジソンの両眼が金色に輝いて全身の筋肉が膨れ上がり、力強く立ち上がる。

 

「大統王は死なぬ、何度でも立ち上がらねば!繁栄の世界の夢、ここに復活!かっとビング……否、キングビングだ、私!!」

 

エジソンは勝手にかっとビングを改造し、大統王からキングを取り、キングビングと名付けて叫んだ。

 

「キングビングか……良い感じだぜ、エジソン!」

 

「また新たにかっとビングを継ぐ者が増えたな」

 

アストラルは順調にかっとビングを継ぐ者が増えて満足そうに頷いた。

 

「カルナ君、ブラヴァッキー嬢!迷惑をかけたな!」

 

「いいのよ、友達でしょ」

 

「……そうだな。さしでがましいが、友人だな、ここまで来ると」

 

「──ふ。私はいつも、いい友人に恵まれる。こればかりは、あのすっとんきょうにも及ぶまい。私だけの財産というワケか」

 

エジソンはエレナとカルナと言う部下ではなく、大切な友人に恵まれたからこそ、今までケルトからの猛攻をギリギリ耐えることができた。

 

次にエジソンは遊馬たちに向けて頭を下げて謝罪の意を示した。

 

「……そして謝罪し、感謝するユウマ。彼の助けとなるサーヴァントの諸君にもだ。正直、私にはまだ思いつかない。世界を救う方法も、ケルトを倒す方法も。だが──」

 

「心配するな、俺にはあんたと同じ天才の頭脳を持つ相棒がいるからさ!」

 

「共に考えよう、エジソン。この戦いを導く勝利の方程式を!」

 

「ありがたい。そして頼もしい。そうだ。私は大変な忘れ物をしていた。大統領の傍らには常に副大統領がいるものだ。時に、大統領自身より有能な、ね」

 

エジソンは優しい笑みを浮かべながら遊馬とアストラルを見つめる。

 

その言葉の真意を二人はすぐに気づき、嬉しさから同じく笑顔になっていく。

 

「私はトーマス・アルバ・エジソン。アメリカの繁栄、その礎を担った一因。であれば、今度こそ──世界を救う大発明を成し遂げたい!無論、ユウマ君、君のサーヴァントとして、だ!」

 

エジソンは遊馬をアメリカの副大統領とし、マスターとサーヴァントの契約する事を宣言した。

 

「ああ!もちろん、喜んで!」

 

「では、今ここに私と、私が持つ全てをユウマ、貴方にお渡ししよう。そして共に、世界を救ってもらいたい……我がマスター」

 

「よろしくな、エジソン!」

 

遊馬は手を差し伸ばし、それに応えてエジソンも手を伸ばして握手を交わす。

 

交わされた握手によって契約が始まり、エジソンの体が光の粒子となって新たなフェイトナンバーズが誕生した。

 

フェイトナンバーズからエジソンが出てくると遊馬と不可視の絆で結ばれて無事に契約が完了した。

 

「ねえねえ!エジソンが契約したから私もいいよね?」

 

「おう!もちろんだぜ、エレナ!」

 

ようやく遊馬の仲間になれるのでエレナは興奮しながら契約を交わす。

 

エレナと握手をしてフェイトナンバーズを誕生させると、すぐにエレナは自分のフェイトナンバーズを遊馬から借りてそれを興味深そうに見ていく。

 

そして、最後に残ったカルナは遊馬の前で跪いて視線を合わした。

 

「ユウマ……君は俺の想像を超える素晴らしい英雄だ。君と共に戦える事を誇りに思う」

 

「カルナ……」

 

「これからよろしく頼む、マスター」

 

「ああ!よろしくな、カルナ!!」

 

遊馬はカルナと握手をして契約を交わし、フェイトナンバーズを誕生させ、これでアメリカ軍の三人のサーヴァント全員と契約が完了した。

 

カルデア・レジスタンス・アメリカの連合軍が誕生し、エジソンはすぐにでも会議を開こうとしたが、それをアストラルが待ったをかけた。

 

「すまない、エジソン。その前にどうしても話さなければならない大事な事案がある」

 

「会議の後ではいけないのか?」

 

「遊馬と約束したからな。頼む……」

 

「良いだろう、だが手短に頼むぞ」

 

「分かってる」

 

アストラルは不安そうに見つめている遊馬と向き合う。

 

「アストラル……」

 

「オルガマリー、すまないがカルデアにいるサーヴァント及び職員全てにも私の声が伝わるようにしてくれるか?」

 

「え、ええ……分かったわ……」

 

オルガマリーはD・ゲイザーでカルデアと連絡を取り、アストラルの声をカルデアの施設全体に伝えるようにした。

 

アストラルは大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

これから語る真実はアストラルと極一部のものしか知らないこと。

 

その事を遊馬に伝えたくはなかった。

 

何故なら……。

 

「出来れば、この事は君に知られずに済めば良いと思っていた……何も知らずに、幸せになって欲しいと思っていた……」

 

唇を噛み、拳を強く握りしめてアストラルは自分の本音を語るが、遊馬はその真実を知りたがっている。

 

真実を知ることで遊馬がどう反応するのか分からず不安しかないが、アストラルは意を決して静かに口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊馬……君は……君自身の魂は、数千年前の古の戦いで二つに分かれた、私の分身……もう一人の私なのだ……」

 

「……………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明かされた真実。

 

それは遊馬をこれまで以上に呆然とさせ、同時に小鳥やマシュ達も驚愕で言葉を失った。

 

遊馬がアストラルの魂の半身……それは誰もが予想出来るわけもない。

 

遊馬は自分の手を見つめてその真実を口にする。

 

「俺が、アストラル……?俺の魂が、アストラルの半身……?」

 

自分が人間だと信じていたが、その自分自身の魂が最も信頼する相棒の半身。

 

一体どういうことなのか?

 

何故自分がアストラルの半身なのか?

 

まさか、アストラルと出会うことも、ナンバーズを賭けた戦いに巻き込まれたことも、バリアンとの戦いも、ヌメロン・コードを賭けた戦いも……全て偶然ではなく、必然だったのか?

 

「俺は……俺は……」

 

遊馬とアストラルがこれまでの戦いで築き上げてきた信頼、紡いで来た数々の言葉の、一緒に過ごしてきた時間、そして……繋いで来た仲間達との絆。

 

その全ては遊馬にとって何物にも変えがたい、掛け替えのない宝物である。

 

しかし、それは全て偽りのものだったのか?

 

初めから仕組まれていたものだったのか?

 

そう考えたその時、遊馬の中にある『九十九遊馬』と言う一人の人間を構築する幾つものの大切なモノ……『絆』……『記憶』……『夢』……『心』……『未来』……その全てにヒビが入る。

 

「全部……嘘、だったのか……?」

 

遊馬がその言葉を口にした瞬間、皇の鍵の紐が切れて床に数回跳ねて落ちた。

 

そして、大切なモノが全て砕け散り、意識が全て真っ暗になり、全身の力が無くなるように倒れた。

 

「っ!?遊馬!??」

 

「遊馬君!?」

 

「遊馬!?」

 

遊馬が突然倒れ、アストラル達は駆け寄る。

 

すぐにナイチンゲールが診察をし、遊馬が倒れたのは強いストレスによる意識消失だと診断された。

 

それほどまでに自分の正体を知ったことにショックを受けたのでしょう……とナイチンゲールは言う。

 

その後、遊馬は用意された部屋で休ませ、オルガマリーはエジソンと話し合い、明日にケルトとの最終決戦を迎えるための会議を行うことにした。

 

出来れば遊馬には早めに復活してもらいたいところだが内容が内容だけにかなり難しい状況だった。

 

全員が悩む中、一人だけ気合を入れた表情をした少女がエレナに近付いた。

 

「あの、エレナさん。この城にキッチンはありますか?」

 

それは小鳥で皇の鍵の飛行船に置いてきた大量の食材が入った大きなリュックを持って背負って来た。

 

「え?キッチン?あるけど……あなた、料理するの?」

 

「はい。日頃からやっているので」

 

「分かったわ。エジソン、一旦解散しない?みんな色々思うところもあるみたいだし」

 

「そうだな……では、皆のもの。一旦解散としよう。それから、出来るだけこの城からは出ないようにしてもらいたい。もちろん、ここにいる人数分の部屋を用意する」

 

既にアメリカ軍とは協力関係を結んだので今更城から出る理由はないので、マシュ達はそれに同意して頷く。

 

マシュ達はそれぞれの想いを秘めつつ、玉座の間から解散した。

 

「さあ、キッチンに案内するわ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

エレナは小鳥をキッチンへと案内し、小鳥は気合を入れて料理に励む。

 

 

 

「んっ……うぅん……?」

 

遊馬は目を覚まし、起き上がるとそこは見慣れない部屋でしかもベッドの上だった。

 

「何処だ、ここ……?」

 

見慣れない部屋に困惑しながら近くのテーブルに皇の鍵と体から外されたデュエルディスクとD・ゲイザーを見つけ、紐が切れた皇の鍵を手に取りながら窓際に行く。

 

窓から見える風景は夜の中に複数の灯が灯る城の風景。

 

ここは城の中の一室だとすぐに理解すると、ベッドに横たわって皇の鍵を見つめる。

 

「俺は……何だ……?」

 

自分がアストラルの半身だと知り、自分自身が何なのか分からなくなってしまった。

 

今までの日常や戦いを振り返り、それは全て偽りだったのかと思い込むようになってしまい、それが負のスパイラルとなって遊馬の全てを埋め尽くす。

 

その時……遊馬の負の心に応えるかのように皇の鍵が輝き、遊馬の体が金色の光に包まれる。

 

思わず目を閉じてから光が静かに収まり、目を開くとそこには驚くべき世界が広がっていた。

 

「アストラル世界……!?」

 

そこはアストラルの故郷でランクアップした魂が行き着く青き世界……アストラル世界だった。

 

遊馬がいるのはアストラル世界の中心地で一番大きな塔の前で周りを見渡すが、住人の姿が一人も見えない。

 

「住人どころか、エリファスもいないか……」

 

住人だけでなくアストラル世界の守護神・エリファスの姿も無い。

 

遊馬はこの世界を不審に思いながら塔に向けて歩き出す。

 

塔の中に入り、以前は全く見る暇は無かったのでゆっくりと眺めながら階段を登っていく。

 

そして、最上階に到着するとそこは巨大な皇の鍵と水晶の飾りがある玉座の間。

 

そこはかつて傷ついて離れ離れになってしまったアストラルが眠っていた。

 

遊馬はこの場でアストラルを取り戻し、アストラル世界を変えるために、エリファスと全てをかけたデュエルを行った。

 

しかし、遊馬はその玉座に違和感があった。

 

「……っ!?誰だ!?」

 

青の世界であるアストラル世界に赤い光があり、静かな鼓動を響かせていた。

 

遊馬はホープ剣を両手に作り出して警戒すると、その赤い光が近づいて来た。

 

ボヤけるような赤い光は遊馬に近づくにつれて人型へと形作られていく。

 

その姿に遊馬はホープ剣を手から離してしまうほど驚愕した。

 

「お前は……!?アストラル……!?」

 

それは……真紅に輝くアストラルだった。

 

顔と目の形、逆立った髪の形、体の模様、両耳のピアス……全てがアストラルと同じで、まるで鏡に写したようにそっくりだった。

 

「こうして会うのは初めてだな……遊馬」

 

声までもアストラルと同じで遊馬は困惑していく。

 

「お前は……まさか……」

 

遊馬は目の前にいる謎のアストラルが何なのか理解した。

 

「そうさ……私は君で、君は私。私はアストラルの半身だ」

 

「アストラルの半身……俺の、魂、前世……」

 

「だが、このままでは少々呼びにくいな……私の事は『アナザー』とでも呼んでくれ』

 

「アナザー……お前が俺をここに呼んだのか?」

 

「そうだ。君は自分の正体を知って迷っていたからな」

 

「ここはアストラル世界じゃねえよな……」

 

「ああ。ここはアストラル世界を模した私の心象風景だ。最も、今はアストラルがヌメロン・コードの力でアストラル世界とバリアン世界を一つにしたからこの風景はかなり違っているだろうが……」

 

アストラルの半身……アナザーは自分の故郷である今のアストラル世界を模してこの世界を作った。

 

しかし、アストラルがヌメロン・コードによってアストラル世界とバリアン世界を一つになり、新たな世界となった。

 

アナザーはまだ新しいアストラル世界を目にしてないので少し寂しい表情を浮かべていた。

 

「さて、こうして無事に対面出来たんだ。話し合いと行こうか」

 

アナザーは指を鳴らすと二つの椅子が現れた。

 

それは大きな皇の鍵を模した背もたれが取り付けられた金色の椅子で遊馬とアストラルの半身のアナザーに相応しい皇が座る為の玉座だった。

 

遊馬とアナザーは玉座に座り、互いに目線を合わせる。

 

遊馬は緊張した面持ちだが、アナザーは余裕そうな笑みを浮かべて足を組んでいた。

 

「遊馬、君が知りたい事、聞きたい事は全て分かっている。包み隠さず、全て答えよう」

 

「本当か……?」

 

「心配するな、アストラルと同じように私も嘘はつかない」

 

「……分かった」

 

「では、始めようか」

 

アナザーは再び指を鳴らし、心象風景のアストラル世界を暗転させた。

 

「私と君の、秘めたる謎を」

 

遊馬とアナザー……二人に秘められた数千年に渡る謎が遂に語られる時が来た。

 

 

 




遊馬の前世……もう一人のアストラルはアナザーと名付けました。

次回は遊馬の秘密について迫ります。
アニメの内容を元に私なりの考えを出して行きます。
この話のためにずっと考えていたので存分に書いていこうと思います。

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