何とか今年末までにはアメリカ編を終わらせるよう頑張ります。
ケルト軍の総本部……ホワイトハウスに一組の男女がいた。
一人は白を基調としたドレスを纏い、頭に王冠を被り、鞭を持った少女……第五特異点の元凶、ケルト軍の首魁、女王メイヴ。
もう一人はフードを被り、体に不気味な刺青が刻まれ、その手には魔槍ゲイ・ボルグを持つメイヴが望んだ邪悪な王のクー・フーリン……またの名をクー・フーリン・オルタ。
二人は伝令兵から連絡を受けてこれまでにないほどに戦慄した。
一つ目はアメリカがレジスタンスと世界最後のマスターと同盟を組み、カルデア連合軍を結成した。
二つ目はカルデア連合軍を結成したことにより、ケルト軍の何十倍ものサーヴァントの数が揃った。
三つ目は先発したフィンが倒れ、ディルムッドがカルデア連合軍の捕虜となった。
そして、四つ目……見たことない巨人や怪物達が現れて進軍し、ケルト兵達を一気に殲滅していく。
「そんな……私が産んだケルト兵が一気に倒されていくなんて……」
メイヴは圧倒的有利だと思っていたケルト軍が僅かな時間でそれが逆転し、覆されてしまった。
その事が信じられず頭を抱えて悩んだ。
「こいつは想定外だ。まさか、世界最後のマスターがこんな大魔術を繰り出すとはな……」
クー・フーリン・オルタも想定外の事態に多少は驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……何て面をしてやがる」
「……えっ?」
「それでもてめぇはコノートの女王、メイヴか?この俺を呼び出した女がそんなちんけな面をするんじゃねえ。女王ならもっと堂々としろ」
クー・フーリン・オルタは槍を振り回して肩に担ぐと真剣な眼差しでメイヴを見つめる。
「メイヴ、全力を投入するぞ」
「王様……!?」
「全てのケルト兵を戦場に出せ。全てオレが殺す」
「っ!?ま、待って!あっちにはまだこっちも把握していない沢山のサーヴァントに、あなたの師匠のスカサハ。それに……あなたじゃない、もう一人のクー・フーリンがいるのよ!?」
「関係ねえ。オレはサーヴァントを手当たり次第にブチ殺す。そして、あの巨人共を操る世界最後のマスターを殺せば全てが終わる。簡単な話だ……」
クー・フーリン・オルタは不敵な笑みを浮かべた。
戦いを求めるために、全てを葬るために戦場へ向かおうとするその姿にメイヴは思わずクー・フーリン・オルタの手を掴む。
「ま、待って!一人じゃ……」
メイヴは死地に向かうクー・フーリン・オルタを止めようとした。
しかし、クー・フーリン・オルタはメイヴの手を払い、言葉を掛けた。
「オレは国家を成立させるための機構だ。敵対する者を殺戮する武器に徹する」
「……分かったわ。もう止めない。行ってらっしゃい、王様」
メイヴはクー・フーリン・オルタを見送り、その背中を目に焼き付けた。
「ふふふ、ふふふ、ふふふふふ!世界で一番王様らしくない王様。国を統べる気がないクセに国を作る事だけに専心する。だから負けない。敵対した者を必ず殺す。敵対者がいなくなれば、やがて味方を殺すかも」
クー・フーリン・オルタの王としての矛盾としたその生き様。
しかし、それこそがメイヴが望んだクー・フーリンの理想の姿である。
「……もしかすると、私はそれこそを望んでいるのかもしれないわ。あなたという王様が、この世界の何もかも無茶苦茶にするのを。まったく平等に、その
メイヴは改めてクー・フーリン・オルタに惚れ込み、うっとりと心と体を熱く火照させる。
そして、これから対峙するであろう世界最後のマスターとそれに従うサーヴァント達を今か今かと待つ。
☆
フィンを撃退し、ディルムッドと再契約を交わした遊馬達はS・H・Ark Knightの上に乗って進軍を再開した。
遊馬達はD・ゲイザーの望遠機能で周囲を見渡して警戒すると、ケルト兵の中に一際オーラの違う存在を見つけた。
褐色の肌に白い衣装を着た弓を持つ青年。
レティシアに確認してもらったところ、その青年はサーヴァントだと確定した。
「間違い無いわね。あいつはカルナの宿敵、アルジュナよ……」
アルジュナ。
インドの叙事詩『マハーバーラタ』の大英雄。
授かりの英雄の二つ名を持つ弓の名手。
「すぐにカルナに連絡を──」
「その必要は無い」
「え?どわぁっ!?い、いつの間に!?」
かっとび遊馬号に待機していたはずのカルナがいつの間にか遊馬達の背後に現れていた。
「アルジュナの気配を感じて船から降りてきた。オレもアルジュナも、この戦に抑えきれない葛藤もある。──故に、アルジュナとは……オレが戦わなければならない」
「行くんだな?」
「ああ。すまない、戦いに個人的な感情を持ち込んでしまって……」
「気にすんなって。アルジュナが強えサーヴァントならそれに匹敵する相手で抑えないといけないからな。でも、行くからには絶対に勝てよ!」
遊馬はカルナに向けて拳を向け、必ず勝つと約束させる。
「……承知した、マスター」
カルナは笑みを浮かべ、自らも拳を作って遊馬の拳とぶつけ合う。
そこにかっとび遊馬号から二つの影が降り立つ。
「カルナ君よ、いよいよ宿敵との決戦だな!君の全てを相手にぶつけるのだ!」
「カルナ、必ず勝ってね。負けたら承知しないからね!」
それはこの特異点でカルナと付き合いの長かったエジソンとエレナだった。
「エジソン……エレナ……分かった。この世界で共に戦ったお前達の為にも必ず勝つ……!」
カルナはエジソンとエレナのエールを受け、槍を強く握り締めてアルジュナの元へ飛んだ。
遊馬達は引き続きケルト兵を倒していくが、それだけではなくワイバーンや巨龍などのモンスターも現れた。
ナンバーズ軍団で襲いかかって来る竜種を次々と薙ぎ払っていると……。
ゴォオオオオオン……!!!
まるで天変地異が起きたような轟音が鳴り響き、遊馬達がいる場所から何十キロも離れた場所で大爆発が起きた。
大地が抉れ、空気が燃え上がり、激しい衝撃波が轟く……その中心にいるのがカルナとアルジュナである。
今まで特異点で数多くのサーヴァントの戦いを見てきたが、これはそれを遥かに凌駕する神々の戦いだった。
「うわぁ……これがインド神話出身のサーヴァントのガチバトルかよ。無茶苦茶だぜ……」
「ああ。私達のナンバーズを駆使してまともにやりあえるかどうか……」
遊馬とアストラルはカルナとアルジュナのあまりにも凄まじい戦いに圧倒される。
しかし、レティシアは大きなため息をついて冷めた目で二人を見る。
「何を馬鹿なことを言ってんのよあんた達。確かにあの二人の戦いは凄いけど、あんた達もやろうと思えば普通にやりあえるでしょうが」
「「「うんうん」」」
レティシアの意見に同意するかのようにマシュ達が同時に頷く。
神々の黄昏を連想させるホープ・カイザー達、ナンバーズ軍団でケルト兵を蹴散らしている時点で普通に遊馬達も神々の戦いにガチで渡り合えるレベルである。
そうかなと内心不安に思う遊馬とアストラルを他所にかっとび遊馬号から残りのサーヴァント達が一斉にS・H・Ark Knightに降りて来た。
「みんな、どうしたんだ?」
「何か嫌な予感がしてな。もしもの時のために飛行船から降りてきたんだよ。オレの偽物がまだ出て来てねえからな……」
クー・フーリンはクー・フーリン・オルタを警戒するが、今のところ現れる気配が無い。
あまりにも相手の動きが静かで不気味過ぎる……何かが起きても最低でもマスターの遊馬を守れるようにクー・フーリン達は遊馬達の側にいる事にした。
しばらくすると、カルナとアルジュナの戦いに決着が着こうとした。
互いの実力はほぼ互角だが、僅かにカルナが上回っていた。
このまま行けばカルナが勝利する。
クー・フーリンなどの百戦錬磨のサーヴァント達はそう確信した──。
その時だった。
「──『
禍々しい真紅の光が飛び散り、次の瞬間に遊馬達の目に映ったのは……。
「カルナ……?」
それは……アルジュナに最後の攻撃をしようとしたカルナの胸に真紅の槍が突き刺さった光景だった。
「悪く思うな、施しの英雄。何しろこいつぁ、ルール無用の殺し合いでね」
そして、カルナとアルジュナの近くに現れたのは……不気味な刺青を体中に刻み、フードを被ったアルスター伝説の勇士。
メイヴが聖杯によって邪悪な王として召喚された最強最悪のケルト戦士──クー・フーリン・オルタだった。
「──っ!?カルナァッ!!」
「S・H・Ark Knight!カルナの元に!」
アストラルはS・H・Ark Knightを全速力で発進してカルナの元へ向かった。
クー・フーリンとスカサハはすぐにクー・フーリン・オルタの元へ飛び、遊馬達は倒れているカルナに駆け寄る。
「カルナ君!しっかりするのだ、カルナ君!!」
「カルナ、死んじゃダメよ!必ず勝つって私たちに約束したじゃない!!」
エジソンとエレナはカルナの深く傷ついた姿に涙を流して必死に声を掛ける。
「緊急治療を開始します!カルナ、しっかりしなさい!!」
ナイチンゲールはすぐにカルナの治療を開始する。
既にラーマの時にどうやって治療をすれば良いのか分かっているので出来るだけ効率よく、効果的な治療を行なってカルナの心臓を治していく。
一方、カルナとの一騎討ちを邪魔されたアルジュナは怒りの形相でクー・フーリン・オルタを睨み付ける。
「クー・フーリン……貴様……!!」
「──うるせえ。好き勝手に始めやがって。一騎討ちなんぞオレが認めたか?テメエの趣味に走るのは趨勢が決まってからだろうが。後ろから刺されなかっただけでも感謝してな、授かりの英雄」
「っ……!」
クー・フーリン・オルタはその気になればアルジュナすらも不意打ちで心臓を穿つ気でいた。
そんなクー・フーリン・オルタの凶行に二人のサーヴァントが前に出る。
「カルナとアルジュナ……互いが待ち望んでいた一騎討ちを邪魔するとはそこまで堕ちたか……」
「てめぇがもう一人のオレか……下らねえ真似をしやがって。良いぜ、ぶっ殺してやるから覚悟しな……!!」
スカサハとクー・フーリン……師弟の二人がクー・フーリン・オルタに対して怒りを込み上げながらそれぞれは真紅の槍を構える。
「はっ……上等だ、まとめて掛かってきな!」
クー・フーリン・オルタもやる気になった……その時だった。
「クー・フーリン、スカサハ師匠。悪いけど、最初に俺にやらせてくれるか?」
クー・フーリンとスカサハの間を遊馬が静かに歩いて前に出た。
「マスター、危ねえから下がって──ちっ、分かったよ。だがヤバくなったら俺が出るぜ」
クー・フーリンは遊馬を下がらせようとしたが、遊馬の顔を見てすぐにその意思を尊重した。
スカサハもすぐに遊馬の思いに気づき、無言で下がった。
今の遊馬は誰よりも冷静でありながら強い怒りに燃えていた。
カルナとアルジュナの一騎討ちに水を刺し、そして不意打ちでカルナを重症に負わせたクー・フーリン・オルタを遊馬は許せなかった。
クー・フーリン・オルタは臆する事なく堂々と対峙する遊馬を見て鼻で笑った。
「へぇ……お前が世界最後のマスターか。どんな奴かと思ったが、ただのガキじゃねえか」
「ただのガキかどうか……その目によく焼き付けろ」
次の瞬間、遊馬の体から真紅の光が溢れ出して無数の衝撃波を放つ。
「ガキ……何をするつもりだ?」
「決まってるだろ、てめえを……ぶっ飛ばす!!」
遊馬はクー・フーリン・オルタに啖呵を切ってデッキトップに指を置く。
「何だ……?あの、光は……!?」
アルジュナはその光に共鳴するかのように自分の中にある『何か』を押さえつけるように胸元を強く掴んだ。
それは遊馬の持つ欲望……カオスの光。
クー・フーリン・オルタへの怒りが感情を爆発せずにそのままカオスの光となって遊馬の体から溢れ出ている。
「俺の……ターン!!」
遊馬は溢れんばかりのカオスの光をカードに込めながらドローする。
「行くぜ、マシュのオーバーレイ・ユニットになっているフォウの効果でデッキから2枚ドローして手札1枚を墓地に送る!そして、セットカードオープン!罠カード!『リサーガム・エクシーズ』!!」
遊馬が発動したのはアストラルのフィールドに召喚されているコート・オブ・アームズの最終形態の姿が描かれた罠カード。
「リサーガム・エクシーズはフィールドの全てのモンスターエクシーズの攻撃力を800ポイントアップする!更に、1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨て、自分フィールドのモンスターエクシーズ1体を対象として発動!その自分のモンスターと同じ種族でランクが1つ高い「CNo.」または「CX」1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する!俺は手札から『RUM - アージェント・カオス・フォース』を墓地に送る!」
遊馬はアージェント・カオス・フォースを使用出来るはずなのにわざわざリサーガム・エクシーズのコストとして捨てた。
アージェント・カオス・フォースをコストにしたのには理由がある。
リサーガム・エクシーズはランクアップマジックを捨てないとこの効果でランクアップしたモンスターエクシーズはエンドフェイズにエクストラデッキに戻ってしまう。
カオスナンバーズをフィールドに残す為に貴重なランクアップマジックを捨てたが、アージェント・カオス・フォースにはランクアップの他にもう一つ効果がある。
「俺はランク6のアトランタルでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!」
アトランタルが光となって天に上り、天空から中央にリングを付属した上下一対の岩石状の物体が現れた。
「降臨せよ!CNo.6!有限なる時空を破り、今、その存在を天地に刻め!『
岩石が変形し、灼熱の炎をその身に宿した大地の巨人が降臨した。
カオス・アトランタルから熱気と共にカオスの力が溢れ出し、その場の空気を支配していく。
「この瞬間、墓地のアージェント・カオス・フォースの効果!自分フィールドにランク5以上のモンスターエクシーズが特殊召喚された時、デュエル中に1度だけこのカードを手札に加えられる!」
カオス・アトランタルがエクシーズ召喚された事で条件を満たし、墓地に捨てたアージェント・カオス・フォースが手札に戻る。
リサーガム・エクシーズでアージェント・カオス・フォースをコストにしたのはこれが狙いだったのだ。
ここから怒涛の連続ランクアップが始まる。
「行くぜ!俺は手札から『RUM - アージェント・カオス・フォース』を発動!自分フィールドのランク5以上のモンスターエクシーズ1体を対象として発動!そのモンスターよりランクが1つ高い「CNo.」または「CX」1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する!ランク8のヘブンズ・ストリングスでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」
ヘブンズ・ストリングスが光となって天に昇り、光の爆発を起こし、無数の赤いの糸が降り注ぐ。
「現れろ、CNo.40!運命の糸を操る悪魔よ、人類の叡智の結晶にて再び蘇れ!『ギミック・パペット - デビルズ・ストリングス』!!」
天使の姿をした巨大人形が双身剣を持つ不気味な悪魔の巨大人形へと転身した。
2体目のカオスナンバーズの登場で膨大なカオスの力が更に周囲の空間に広がるが、遊馬の手は止まらない。
「まだまだぁっ!俺は更に手札から『RUM - バリアンズ・フォース』を発動!自分フィールドのモンスターエクシーズを1体選択して発動!そのモンスターと同じ種族でランクが1つ高い「CNo.」または「CX」1体を対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する!俺はランク9のダイソン・スフィアでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」
ダイソン・スフィアが光となって天に昇り、光が紫色に輝く球体となり……天から宇宙へと上昇する。
紫色の球体がこの星……地球の周りを何度も周回して駆け抜ける。
駆け抜けた球体が宇宙の力を宿し、天空を覆う星が凶事の前兆と言われ、不吉を告げる妖星へと姿を変える。
「現れろ、CNo.9!天空を覆う星よ、森羅万象をその内に宿し、今ここに降臨せよ!『
現れたのは禍々しい五芒星を象った巨大な人工衛星。
巨大な人工衛星であるカオス・ダイソン・スフィアが天空に召喚されたことにより、更に膨大なカオスの力が広がる。
やがて、暗雲が広がり、青空が不気味な真紅の空へと変貌した。
「一緒に行くぜ!III!Ⅳ!V!これが誇り高きトロン三兄弟の想いが詰まったカオスナンバーズ達だ!!」
今ここに、III、Ⅳ、Vのトロン三兄弟のカオスナンバーズ達が怒涛の連続召喚を達成した。
「クー・フーリン・オルタ!このカオスナンバーズ達でお前を追い詰めてやるぜ!」
「ちっ……まさかこんな化け物共を呼び出すとはな!」
ケルト神話でも見た事のない未知なる化け物……モンスターの出現にクー・フーリン・オルタも僅かな動揺を見せる。
「デビルズ・ストリングスの効果!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手フィールドのモンスター全てにストリングカウンターを置く!」
デビルズ・ストリングスは双身剣で自身の体にある弦を弾いて音を奏でると、クー・フーリン・オルタとケルト兵達にストリング・カウンターが置かれ、その体に無数の赤い糸のようなものが貫かれる。
しかし、糸に体を貫かれたクー・フーリン・オルタ達には痛みが無い。
「何だ……?お前、何をした……?」
「こうするんだよ!罠カード『ディメンション・ゲート』!その効果でデビルズ・ストリングスをゲームから除外!」
デビルズ・ストリングスの真上にワープゲートが現れ、デビルズ・ストリングスが吸収されてフィールドから異次元へと送られる。
「更に手札から速攻魔法『サイクロン』!フィールドの魔法・罠を1枚破壊する!ディメンション・ゲートを破壊し、ディメンション・ゲートが墓地に送られたことで除外されたデビルズ・ストリングスを特殊召喚する!」
デビルズ・ストリングスが再びフィールドに現れたことで、その真の力が発揮される。
「この瞬間、デビルズ・ストリングスの効果発動!特殊召喚に成功した時、フィールド上のストリングカウンターが乗っているモンスターを全て破壊し、自分はデッキからカードを1枚ドローする!」
「何だと!?」
「喰らえ、クー・フーリン・オルタ!メロディ・オブ・マサカ!!」
デビルズ・ストリングスが再び双身剣で体にある弦を弾いて別の音を奏でると、それが無数の闇の衝撃波となってストリングカウンターと共鳴してケルト兵達が次々と倒されていく。
クー・フーリン・オルタにも多大なダメージを与えるが……。
「痛えじゃねえか!癒しのルーン使わなかったら少しヤバかったな!」
クー・フーリン・オルタは癒しのルーンを使ってダメージを回復している。
しかしまだ全快には程遠く、今のうちに遊馬は残りのカオスナンバーズで追い詰めていく。
「かわされたか!だけど、デビルズ・ストリングスの効果で1枚ドローする。次はカオス・アトランタルの効果!このターン、相手に与えるダメージが0になるが、1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択し、攻撃力1000ポイントアップの装備カード扱いとしてこのカードに装備出来る!」
カオス・アトランタルは拳を突き上げてエネルギー波を放ち、クー・フーリン・オルタを吸収しようとするが……。
「ちっ、しゃらくせえ!」
クー・フーリン・オルタは治癒とは別のルーン魔術を使い、カオス・アトランタルに効力を与えた。
すると、カオス・アトランタルは自身の感覚を狂わされて効果発動が無効化されてその場に膝をついてしまった。
「カオス・アトランタルの吸収装備効果もかわされたか……!」
「それなら、バトルだ!カオス・ダイソン・スフィアで攻撃!」
「カオス・アトランタルの効果を使用したターン、相手にダメージを与えられない。だが、バトルは行うことは出来る!」
カオス・ダイソン・スフィアは天空を超えた宇宙空間に存在している。
これならクー・フーリン・オルタのルーン魔術もそこまでは届くことは無く、問題なくバトルを行える。
「カオス・ダイソン・スフィアの効果!このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずにそのモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする事が出来る!」
妖星の名の通り、不気味な色彩で輝くカオス・ダイソン・スフィアから無数のレーザーが降り注ぐ。
「よく分からねえが、変なデカブツに喰われる訳にはいかねえな!!!」
クー・フーリン・オルタは魔力を爆発させて高く飛び、ゲイ・ボルグを構えて禍々しい真紅の光を放つ。
「まだ体は治り切ってねえが、出し惜しみはしねえ……ここで全員葬ってやるぜ!」
「セタンタ!私たちも行くぞ!」
「やられる前に、あいつの心臓を貰い受ける!」
クー・フーリン・オルタの宝具……ゲイ・ボルグが解放されればこの場にいる全員が全滅する可能性がある。
その前にスカサハとクー・フーリンが同時にゲイ・ボルグを放ってクー・フーリン・オルタを止める。
しかし、それよりも早く二人の前を一人のサーヴァントが飛び出す。
「私が、止めます!」
「マシュ!?」
「嬢ちゃん!?」
それは双翼を展開して高速で飛翔するマシュだった。
「私が……みんなを必ず守ります!!遊馬君!!!」
「ああ!行くぜ、希望の守護者 マシュの効果発動!モンスターの効果・魔法・罠が発動した時、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、その発動を無効にして破壊する!!」
「フォウさん、お願いします!」
「フォーウ!」
オーバーレイ・ユニットになっているフォウが使用され、丸い球体となって盾に吸収される。
これで遊馬とアストラルは強力なドローソースを失ったが、既に二人は手札補充と更なる強力なドローカードを確保したので、フォウは十分に役目を果たした。
元のフォウが遊馬の肩にポン!と現れてそのまま肩に乗り、盾から聖なる光が溢れ出す。
マシュの背中に装着されている未来皇ホープの機械の双翼が消え、代わりに純白の天使のような双翼が生える。
「これが、私の想いと魂の輝き!マシュビングです、私!!」
聖なる光がこの空間を支配し、真紅に染まった空が美しい黒の夜天の空へと変わり、無数の星々が美しい光を放って煌めく。
マシュが幼い頃から夢見ていたもの……それは『空』を見ること。
この星天はマシュの願いと夢が込められた、まさに理想の世界。
クー・フーリン・オルタはゲイ・ボルグの真名解放をし、全力で投げ飛ばす。
「抉り穿つ鏖殺の槍!!!」
放たれたゲイ・ボルグに対し、マシュは盾を振り上げて思いっきり振り下ろすと星天の星々の光が最高潮に輝く。
「希望の星域……ロード・カルデアス・サンクチュアリ!!!」
星々が天翔る流星群となり、北米の大地に降り注ぐ。
流星群の光はゲイ・ボルグの力を封じ込めて弾き飛ばし、更に流星群がクー・フーリン・オルタに襲い掛かる。
「バ、バカな!?グァアアアアアッ!??」
クー・フーリン・オルタは流星群を受けてその場から大きく吹き飛ばされた。
「オ、オレの槍が……ゲイ・ボルグの発動を完全に無効にしただと……!?」
クー・フーリン・オルタのゲイ・ボルグの全体に大きなヒビが入り、とても修復するのが難しいレベルだった。
宝具の発動さえも無効にし、遊馬とアストラルと仲間達を守護する。
これこそが希望の守護者へとランクアップしたマシュの力。
「これが……私と遊馬君とアストラルさんとの力の結晶です!!」
マシュは威風堂々と立ち、盾をクー・フーリン・オルタに向ける。
「ふっ……私でも勝てるかどうか難しいあいつにあれほどの痛手を与えたか。私の見込み以上だな」
スカサハはマシュは絶対に強くなると思った自分の目と勘は間違ってはいなかったと満足そうに頷く。
「やるじゃねえか、嬢ちゃん。初めて会った時とはまるで比べものにならねえほど強くなりやがって」
クー・フーリンは冬木で初めて会った時のことを思い出し、あれからよくここまで強くなったと感慨深いものを感じた。
一方、吹き飛ばされたクー・フーリン・オルタは自分の体に治癒のルーンを全力で施しているが、カオスナンバーズの効果に自身のゲイ・ボルグのダメージ、そしてマシュの流星群によってとてもすぐに回復出来るものではなかった。
「チッ……流石に喰らいすぎたな。帰って休ませてもらうぜ」
「……逃げても無駄ですよ、クー・フーリン・オルタ。どれほど猛ろうと、その傷は決して癒されない。貴方は、病気です」
ナイチンゲールはカルナの治療を行いながらクー・フーリン・オルタの受けた傷を見て瞬時に診察し、その狂った王としての在り方に病気だと告げた。
「……ハ。お前の言う通りだ、血塗れの聖女。オレが癒される日なんざ、永遠に来ねえだろうよ。倒れて朽ち果てるその日まで、オレは王であり続けるだけだ」
クー・フーリン・オルタはクー・フーリンとスカサハ、そして遊馬とアストラルとマシュを見つめて最後に告げる。
「──来るなら来い。ワシントンで戦ってやる」
それはクー・フーリン・オルタが遊馬達を己が倒すべき敵だと認めた証だった。
それを最後にクー・フーリン・オルタはその場から一瞬で消え去った。
「ワシントンか……」
「遊馬、そこにはメイヴもいる……いよいよ最終決戦だ」
アストラルは遊馬の隣に立ってそう告げる。
カルデア連合軍とケルト軍の戦いがいよいよ最終決戦に突入しようとしている。
しかし……。
「──待て」
「ん?何だよ、アルジュナ」
アルジュナは弓を下ろして遊馬に話しかけた。
「世界最後のマスター……名はなんという?」
「……俺は遊馬だ。九十九遊馬」
「ユウマ……君に一つ問う、何だあの力は?」
「あの力?」
アルジュナは敵でありながら遊馬にどうしても聞かなければならない事があった。
遊馬の体から溢れた真紅の光……ナンバーズをカオスナンバーズへと進化させた力。
欲望の力……カオス。
それはアルジュナにはあまりにも許せないものであった。
.
トロン三兄弟のカオスナンバーズ怒涛の連続召喚、やり遂げて満足です。
ぶっちゃけこいつらを相手にしたらクー・フーリン・オルタでも結構ダメージくると思ったので。
マシュの神宣効果でクー・フーリン・オルタに大ダメージ!
強くなったなと思います。
次回は皆さんお待ちかねだと思う遊馬とアルジュナの対話です。
アルジュナはカオス……欲望否定派ですからね。