お待たせしてしまってすいません。
今回は遊馬とアルジュナの対話です。
ぶっちゃけかなり難しかったです。
アルジュナの設定とか色々難しかったというか面倒な奴なのでこれで合っているかどうか微妙なのでもし何か不備があったら是非とも指摘をお願いします。
狂王、クー・フーリン・オルタを退けたのも束の間、急いでケルト軍の本拠地であるワシントンに向かう前に授かりの英雄・アルジュナに呼び止められた。
アルジュナは遊馬が使った力について聞きたいことがあるらしい。
「力……?もしかして、カオスの事か?」
「カオス……?」
遊馬は右手をカオスの力を再び宿し、真紅に輝かせてアルジュナに見せる。
「カオスは俺たちの世界では欲望の力をそう呼んでいるんだ」
すると、アルジュナは顔を歪めて声を震わせた。
「欲望の力だと……!?それがこの魔物達に、狂王……クー・フーリンを追い詰めるほどの力を与えたのか……!?」
「逃げられちまったけどな……でも、次こそは絶対にクー・フーリン・オルタを必ず倒す!」
「ふざけるな……」
「え?」
「ふざけるな!欲望の力だと!?カオスだと!?世界最後のマスターが……人類と世界の未来を救う勇者が、そんな力を使うなど……あってはならない!!」
冷静な雰囲気を漂わせていたアルジュナが突然声を荒げてカオスを強く否定して弓を遊馬に向けた。
すると、ラーマが遊馬の前に出て剣を構え、シータは遊馬の隣で弓を構えた。
「アルジュナよ……我らがマスター、ユウマ様に手出しはさせない!!」
「その弓を下ろしてください。アルジュナ様、貴方ほどの英雄がユウマ様に弓を向けるなんていけません!」
「お前達は……ラーマとシータ……!?馬鹿な、二人には離別の呪いがあるはず……呪いはどうした!?」
「呪いはユウマ様とこちらにいる精霊のアストラル様が余とシータの為に、命をかけて解いてくれた!」
「私たちはお二方のお陰で一緒にいることが出来るのです!」
「何だと……!?だがお前達の呪いは霊基に刻まれるほど強力だったはず……それをその少年と隣にいる精霊が解いたというのか!?」
カルナが戦えない今、アルジュナを抑えられるのは同じインド神話のラーマとシータしかいない。
ラーマとシータは命をかけてでも遊馬を守ろうとするが、遊馬は二人の肩に手を置いて前に出る。
「二人共、気持ちは嬉しいけど落ち着けって。アルジュナとはちゃんと話すからさ」
何故アルジュナがそこまでカオス、欲望を否定するのか分からないが、遊馬は落ち着いてアルジュナにしっかり向き合い、堂々と話す。
「アルジュナ、俺はお前のことを何も知らない。お前が何でカオスを拒絶するのか知らねえけど、確かに欲望って言うのは行き過ぎると自分が破滅するし、誰かを不幸にしてしまう」
「その通りだ。それを分かっていて何故……」
「欲望ってのはそんな単純なものじゃねえよ。ここにいる俺の相棒、アストラルの故郷・アストラル世界って言う異世界の住人、エナから聞いた受け売りだけど……カオスは自分の為に生きる欲望の力。だけど、カオスの中には誰かを守りたい、誰かの為に生きていきたい。そう願う心が含まれているんだ。それこそが生きる力であり、原始的な生命の源なんだ」
かつて、遊馬がアストラル世界に向かい、そこで出会った住人達のまとめ役の女性、エナから聞いたカオスの話を思い出しながら話す。
「カオスが……生きる、力……?」
「だけど、そのアストラル世界は遥かなる高みに登る為に……ランクアップする為に大昔にカオスを排除した。だけど、その所為でアストラル世界が衰退し、住民達も弱って死に掛けてしまったんだ」
「なっ……!?カオスが……欲望の力が無くなった所為で世界が一つ滅びかけたと言うのか!?」
「そうだ。全ての人……いいや、全ての生きとし生けるものがカオスを失ったら、生きることは出来ないんだ!死ぬと同じことなんだよ!!」
カオス……欲望の力が無くなる事で一つの世界が滅びかけたと言う事実にアルジュナは戸惑いを隠すことができなかった。
「アルジュナ、お前は世界を救う勇者が欲望の力を使うなって言ったよな。確かに俺はこの世界を救うために戦っているけど、俺はかなり強欲だぜ?」
遊馬は自分の指で数を数えながら思いつく限りの自分の欲望を口にする。
「えっと、小鳥のデュエル飯を毎日食べたい、みんなとデュエルをたくさんやりたい、サーヴァントのみんなから色々話をしたい、子供たちを笑顔にしたい……」
強欲と言いながらもそれは人として当たり前や些細な事ばかりの欲望であった。
そして遊馬はまだ子供としての至極当たり前な欲望を口にする。
「それから……離れ離れになっている俺の家族、友達と仲間に会いたい……」
「っ!?」
遊馬の少し悲しそうな表情にアルジュナは固まってしまった。
少し考えれば当然の事だ。
人理が焼却された世界を救う為に異世界からやって来た遊馬はまだ幼い少年だ。
愛する家族や友に会いたいと思うのは当然の事だ。
しかし、その会いたいと思うその気持ちも欲望の一つとも言える。
「今度は俺からの質問だ。一番大切な人と会いたい気持ちや、ずっと一緒にいたいって気持ちをお前は否定するのか?」
「それは……」
アルジュナが欲望を否定する事は遊馬の欲望……願いを否定する事と同じである。
授かりの英雄と呼ばれながらも欲望を否定するアルジュナに遊馬の言葉が心に深く突き刺さっていき、自然と弓が下される。
「それに、アルジュナ……お前はカルナと決着をつけたかったんだよな?経緯とかの話はまだ聞いてないし、インド神話の本を読んでいないから分からないけど、それも立派な一つの欲望じゃねえか」
そう……アルジュナは欲望を否定しながらもカルナとの対決を心から望んでいた。
そうでなければ最強クラスのサーヴァントであるカルナとあれほどの激しい戦闘を行うことは出来ない。
「私は……私は……」
アルジュナの中にある矛盾な心を遊馬が的確に指摘し、それに気付かされたアルジュナは震えてしまう。
何がアルジュナに欲望を否定させるような事になったのか、遊馬は知らないがそれをこれ以上追求するつもりはない。
それにクー・フーリン・オルタを追いかけて決着をつけなければならない。
時間をこれ以上かけるわけにはいかず、遊馬はアルジュナに最後の言葉をかける。
「最後に一つ、英霊のあんたに偉そうに言うけど、欲望を否定する限りあんたは何も変わらない。あんたの中にある『何か』に囚われたままだ!変わりたいなら、何かを変えたいなら足掻くしかない!前に向かって、一歩でも前に進めばいい!小さな事でもそれが道を切り開くきっかけになる!かっとビングだ、アルジュナ!!」
「かっと、ビング……?」
自分よりも幼い遊馬に欲望について諭され、謎の言葉……かっとビングを聞いてアルジュナは呆然とした。
遊馬がアルジュナから立ち去ろうとすると、そこにナイチンゲールの治療をある程度完了し、エジソンに支えられたカルナが来た。
「アルジュナ……」
「カルナ……大丈夫か?」
「ああ。だが、この体ではお前との決着をつけることは出来ない……不意打ちとはいえ、クー・フーリン・オルタの攻撃を受けて倒れてしまった。今回の戦いはオレの負けだ……」
「っ!?何を言うんだ!?まだ私達の決着は……」
「それでもオレが倒れた事実は変わりない。だから、オレとの約束を果たせ……アルジュナ!」
カルナとアルジュナは戦いの際にある一つの約束を交わしていた。
もしもアルジュナがカルナを倒した時は本来の英霊の責務……世界を救うために戦うと。
しかし、クー・フーリン・オルタの介入によってカルナは倒れ、結果としてはアルジュナの思い描く戦いにはならなかった。
アルジュナは願いが叶えられず、心が晴れずにいたが、遊馬の考えと言葉が深く突き刺さると同時に変化が起きていた。
「……カルナ、すまない。今はまだその答えを出すことが出来ない」
「アルジュナ……」
「ユウマ、と言いましたね。私がこの世界で行った償いは必ずします。信じていただけますか?」
「分かった。アルジュナ、お前を信じる」
「……あなたの言葉は、虚ろな心にもよく響きますね。では、さようなら」
アルジュナは別れを告げるとその場から撤退して何処かへと消えていった。
いなくなったアルジュナにクー・フーリンはゲイ・ボルグで軽く肩を叩きながら遊馬に話しかける。
「良いのかよ、何もしないで行かせちまって」
「ああ。アルジュナはきっと来てくれるって信じているからさ。それに、今俺たちにはやるべきことがあるだろ?」
「そうだな。さっきはマスターに譲ったが今度こそ、あの野郎をぶちのめすのは俺だからな?」
「分かってる。クー・フーリン・オルタは今度こそクー・フーリンとスカサハ師匠に任せるって……あっ、そうだ!」
「あ?どうした?」
「クー・フーリン、オルタとは全力で戦いたいだろ?良いことを思いついたぜ!」
「良いこと?何だよそれ」
遊馬はクー・フーリンが全力でクー・フーリン・オルタと戦う方法を思いついた。
正確に言うならその方法をずっと考えていた。
クー・フーリン・オルタはクー・フーリンよりも強い力を持ち、師匠のスカサハですら勝てないと言っていた。
どうすればクー・フーリン・オルタに勝てるのか、何か良い手は無いのか?
その方法を遊馬はやっと見つけたのだ。
「これが、勝利の方程式だ!受け取れ、クー・フーリン!」
「マスター、こいつは……!?」
遊馬はクー・フーリンに勝利の方程式を完成させる物を渡した。
それはクー・フーリンの想いを叶えるだけではない。
アメリカを……世界を救うための一手としてクー・フーリンにその力を授けた。
クー・フーリンは無言でその力を受け取ると、遊馬の前で跪いた。
「マスター、約束する。必ずあいつをこの手で倒す。この槍と光の御子、クー・フーリンの名にかけて……!」
「ああ!頼むぜ、クー・フーリン!」
遊馬のクー・フーリンは固い約束を交わし、クー・フーリンは必ず狂王、クー・フーリン・オルタを倒すと誓った。
すると……新たなサーヴァントの気配が近付いて遊馬達の前に現れた。
「おっと待ちな。今度は俺と戦ってもらうぜ」
アルジュナ、クー・フーリン・オルタの次に現れたのはアルカトラズ島で戦ったベオウルフだった。
ベオウルフはアルカトラズ島と同じく大量のワイバーンを引き連れてやって来た。
「お前はベオウルフのおっさん!」
「性懲りもなく来たわね。遊馬!ここは私がベオウルフを止める!みんなは先に行きなさい!」
一度戦ったレティシアは旗を広げて相手にしようとすると……。
「すまんな、娘。ここは儂がこやつの相手をする」
「えっ!?」
赤い影がレティシアの目の前に現れ、そのままベオウルフに襲いかかる。
「おいおい、何者だ?」
「通りすがりの、神槍である、真名を李書文」
現れたのはマシュと戦い、行方知れずとなっていた李書文だった。
李書文は戦いを求めて戦場を駆け、ようやくベオウルフという強敵に出会ったのだ。
「あんた……分かったわ。李書文、あんたに任せるわ」
「李書文、ベオウルフのおっさんを頼むぜ!あのワイバーン達は俺たちが排除しながらワシントンに向かう!」
「心得た。儂も後から追いかける」
「ああ!みんな、行くぞ!」
遊馬達はベオウルフを李書文に任せ、かっとび遊馬号に乗る。
李書文はベオウルフと対峙し、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「……フム。これはこで役得よな。名高きベオウルフと打ち合えるとは、光栄の至りよ」
「ほう?神槍とは大きく出たな。李書文……ああ、よく知ってるぜ」
「何、そう呼ばれていたこともあるだけよ。で、どうする?。ベオウルフと言えば、怪物グレンデルを素手で殴り殺したと謳われる闘士でもある。であれば──」
李書文は神槍の通り名の由来の槍を捨てて拳を構えた。
「ケッ、うまく煽るじゃねえか。そう言うお前さんは何だったか?あー、そうそう。二の打ち要らずだ。二の打ち要らず!大層なハッタリだな、オイ!」
「うむ。ただの誇張が通り名か、試してみてはどうかな?偶然にも、こんな場所で無手で戦えるサーヴァントが二人、出会ってしまったのだ。運命とは真に数奇なものよ」
「確かに数奇だなぁ。って事はやっぱりあれかい。いわゆる
元々ベオウルフの剣はレティシアとの戦いで壊れて消滅してしまったので素手で戦うしか方法がなかったのだが、ベオウルフの戦いの真骨頂は拳にある。
ベオウルフは同じ拳で戦うサーヴァントと戦場で出会えたことを心から喜びを感じていた。
「我が拳が果たして届くかどうか。試させて貰うとしよう。この八極──受けてみせい!」
「いいだろう、いいだろう。英霊に奉り上げられて幾星霜。それでもアイツを殴り殺した時の感覚は、そうそう忘れるものじゃねぇ。そして今、あのグレンデルより手強そうな奴が俺の目の前にいる。だったら──やらない手はないよなぁ!!」
「応とも!!」
「一」
「二の……」
「「三ッ!!」
二人はカウントダウンを数え、三を発したと同時に体が動き、拳で殴り合いを始めた。
それは神でも止めることができない暴風が渦巻くような激しい戦い。
それは武器を一切使わず、己が鍛えた拳のみで戦うという原始的な戦い。
もしもここに同じく拳で戦うサーヴァントの一人であるマルタがいれば闘争心が湧き上がったかもしれない。
それほどまでに二人の戦いは熱くなるものであった……。
☆
遊馬達はかっとび遊馬号に戻り、そこでカルナの容態を確認する。
カルナは心臓を貫かれながらも自身の治癒能力とナイチンゲールの治療のお陰で何とか生き延びている。
しかし今回はラーマの時とは違って完全に治すことは不可能であり、クー・フーリン・オルタを倒さなければ呪いを解くことは出来ない。
「ナイチンゲール、治療を頼む……せめて、あと一回だけオレの宝具を撃てるぐらいに……」
「それは却下です。患者に無理をさせるわけにはいきません。大人しく治療を受けなさい」
「カルナ君、後は私たちに任せるのだ!」
「そうよ。あなたはよく戦ったわ。もう敵はメイヴとクー・フーリン・オルタの二人だけだから後は私たちで何とかするわ」
「……分かった。だが、お前達に危機が迫ったらたとえこの身がどうなろうとも、オレは前に出る」
カルナは本当に危険な時以外は前に出ないと約束し、一時戦線離脱をする。
遊馬とアストラルはかっとび遊馬号の甲板に出て上から戦場を見下ろす。
まだまだ戦場には大量のケルト兵とワイバーン達がおり、ここで一気に数を減らさなければワシントンには向かうことは出来ない。
「遊馬、私のターンで一気に蹴散らす」
「分かった。アストラル、頼むぜ!」
「ああ!私のターン、ドロー!私は魔法カード『希望の記憶』発動!自分フィールドのナンバーズの数だけ、デッキからカードをドローする。私のフィールドのナンバーズは全部で5体。よって、デッキからカードを5枚ドロー!」
ホープ・カイザーのナンバーズ大量召喚の効果にとても噛み合った希望の記憶の効果で大量ドローし、アストラルは自分フィールドのナンバーズで一気に攻め立てる。
「バトルだ!コート・オブ・アームズの攻撃!ゴッド・レイジ!!」
コート・オブ・アームズから禍々しい赤い光が天に登り、そこから邪悪な光の束が降り注ぎ、ワイバーン達を撃墜していく。
ここでアストラルはコート・オブ・アームズをカオスの力で進化させる。
「コート・オブ・アームズのバトルが終わったこの瞬間、私は遊馬のリサーガム・エクシーズの効果を発動する!手札から魔法カード『RUM - リミテッド・バリアンズ・フォース』を捨て、私はコート・オブ・アームズを選択!私はランク4のコート・オブ・アームズでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」
コート・オブ・アームズが光となって地面に吸い込まれて光の爆発が起き、カオスの力が紫電の閃光となって周囲に広がる。
「荒ぶる紋章の神よ、混沌の力を以って愚者に滅びと怒りの鉄槌を下せ!!現れろ!『CNo.69
現れたのは愚者に鉄槌を下し、死へと誘う恐ろしき巨大な死神。
カオス・オブ・アームズはトロンが召喚した訳でなく、カオスの力で暴走したミストラルが呼び出したモンスターで強大な力を秘めている。
「カオス・オブ・アームズの攻撃!カオス・デス・ドゥーム!!」
カオス・オブ・アームズの全身から紫電が轟き、口から邪悪なエネルギーを放ち、ワイバーン達を一気に消滅させる。
「S・H・Ark Knight!狙いはワイバーンのリーダー格だ!ミリオン・ファントム・フラッド!」
S・H・Ark Knightは無数のレーザービームを放ち、ベオウルフが乗っていたワイバーン達のリーダー格を狙い撃つ。
「更に手札から速攻魔法!『RUM - クイック・カオス』!!自分フィールドの「CNo.」以外の「No.」を選択し、そのモンスターよりもランクが1つ高く、同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」をエクストラデッキから特殊召喚する!S・H・Ark Knightでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! 『S・H・Dark Knight』!!」
クイック・カオスによってS・H・Ark Knightが光となって地面に吸い込まれ、異次元に送り込まれる。
異次元にてS・H・Ark Knightの中心部に眠る漆黒の守護者の封印が解き放たれ、混沌が渦巻く戦場に降臨する。
その混沌の深淵の力を宿したその身を包む漆黒の装甲に仇なす敵を滅ぼす三俣の槍を操る槍術士の姿に同じ槍術士のスカサハは親近感を覚えた。
「何だ、あのランサーは……とても他人とは思えないほどに強い力と意志を感じるな……」
「そりゃあそうだ……あのランサーはマスター曰く、不死身の槍術士らしいからな」
「不死身の槍術士……それは面白い、後でユウマに頼んで手合わせを願いたいものだ」
「もう好きにしてくれ……」
自身と同じ不死身の槍術士であるS・H・Dark Knightにスカサハは是非とも手合わせをしたいと心から望み、相変わらずなスカサハにクー・フーリンはため息を吐いた。
「S・H・Dark Knightの攻撃!ダーク・ナイト・スピア!!」
華麗に三俣の槍を振り回し、力を込めて投げ飛ばす。
今のS・H・Dark Knightはリサーガム・エクシーズの効果で攻撃力が800ポイントアップしており、更にエクシーズ・テリトリーで1000ポイントアップで、攻撃力4600の攻撃は強力でワイバーンのリーダー格の体を貫き、完全に倒して撃墜させた。
「私はこれでターンエンドだ。さあ、掛かって来るのだ!」
アストラルはカオス・オブ・アームズとS・H・Dark Knightでワイバーン達を倒すだけでその他の敵には一切攻撃せずにカードをセットもしなかった。
攻撃が止まり、今度はこちらの番だと言わんばかりにケルト軍が一斉攻撃をする。
しかし、これこそがアストラルが設置した最大の罠である。
相手の攻撃こそが罠の発動の鍵であり、カオス・オブ・アームズの眼が怪しく輝くと同時に全身から膨大なカオスの紫電が轟く。
「相手が攻撃したこの瞬間、カオス・オブ・アームズの効果発動!相手モンスターの攻撃宣言時、相手フィールド上のカードを全て破壊出来る!!!」
攻撃によってカオス・オブ・アームズの死神の逆鱗に触れ、敵の全てを滅ぼす。
これこそがカオスの力によって神から死神へと進化したカオス・オブ・アームズの恐るべき力である。
「ケルト軍よ、これで終わりだ!一掃しろ、カオス・オブ・アームズ!カオス・オブ・カタストロフィ!!」
敵に滅びを齎らす死神の紫電が戦場全体に降り注ぐ。
降り注がれた紫電はケルト軍全ての兵士に落ち、見渡す限りの軍団はあっという間に全て消滅してしまった。
対軍宝具並みの恐るべき力にサーヴァント達は唖然とし、エジソンは体中から大量の汗を流しながら呟いた。
「マスター達と本気で敵対しなくてよかった……下手したら我々アメリカが滅ぼされていたかもしれん……」
一時期敵対していたとは言え、心優しい遊馬とアストラルが世界最後のマスターで本当に良かったと心からそう思うエジソンだった。
ケルト兵とワイバーン兵が全滅し、これで心置きなくワシントンに向かう事が出来る。
クー・フーリン・オルタとメイヴとの最終決戦に臨むため、かっとび遊馬号でワシントンへ全速前進で向かった。
☆
一方、遊馬達がワシントンに向かっている頃、一つの巨大な存在が同じくワシントンに少しずつ近付いていた。
ズシン……ズシン……!
一歩一歩、大きな足音を響かせて歩き、それはホープ・カイザーと同じくらいの大きさを持つ巨人だった。
その巨人の肩には一人の男性が乗っていた。
「さあ、もうすぐワシントンだ。今こそ君の力を活躍させる時だ!」
「うん……でも、大丈夫かな……私なんかの力で……」
「心配するな、レディ。君の力は私が保証する。その力を振るって、今こそこの国を蝕むケルトを排除するんだ」
「分かった。私、頑張るよ。おじさん」
「レディ、そこはおじさまと呼んでくれないか?」
「うん!おじさん!」
「……分かった、もうこれ以上は言うまい」
男性は苦笑を浮かべながらワシントンの方角を見つめる。
「ははははは、ははははは!よし……声の調子は良好。さあ、次は真の天才の登場を華々しく飾る手順を考えよう。あの凡骨エジソンの吠え面を見るのが実に楽しみだ!そして、希望の勇者達よ、今こそあの時の借りを返す時だ!」
高笑いを響かせ、エジソンに対して何らかの強い感情を抱いており、更には希望の勇者達……遊馬とアストラルに対して強い思いを抱いていた。
男性のよく分からない発言に巨人は頭に疑問符を浮かべながら歩み続けた。
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次回はクー・フーリン・オルタとメイヴの対峙で出来るだけ早めに投稿したいと思います。