最近スランプ気味で執筆が遅れました。
死せる書架の国の中心部で謎のゴースト達に襲われた遊馬達は戦闘を行う。
次々と現れるゴーストにキリがなく、一度撤退した方がいいと考えたその時だった。
「……ずいぶん騒がしいのね。こんな魔力の涸れた荒地を訪れる魔法少女が、まだ居たなんて……」
屋敷から出て来たのは魔法少女と思われる少女でゴーストが自然と消えていった。
「エレナ……?」
それはアメリカで出会ったサーヴァント、エレナ・ブラヴァッキーだった。
「あら、お詳しいこと。そう呼ばれても否定しないわ」
ここのエレナもどうやら遊馬達がアメリカで出会った存在とは別のようだった。
エレナがこの国の女王だと推測するが、それはすぐに否定されると同時に衝撃的な事実が発覚する。
「ここは魔法少女たちの墓場。ここの廃墟の亡霊は、みな、魔法少女のなれの果て。私はただの墓守人。そして司書。女王でもないし、魔法少女だったのも昔の話よ」
「魔法少女の……ぼ、亡霊……!?あわわわ……っ……」
イリヤはゴーストが魔法少女の亡霊だと知り、恐怖でガタガタと震え出した。
「亡霊……?何故そのような存在に……?」
遊馬が召喚していたブラック・マジシャン・ガールは首を傾げて頭に疑問符を浮かべた。
イリヤはエレナにミユのことを聞こうとしたが、ここではなんだからと屋敷の書斎に案内した。
書斎には壁一面に本がズラっと並べており、イリヤはすごいと感心していたが、ルビーは何かを感じていたのか珍しくブルブルと震えていた。
「あっ、ライオンのお人形さん☆」
イリヤはテーブルに置かれていたライオンの人形を見て嬉しそうに持ち上げた。
それはどこぞのアメリカ大統王をデフォルメしたような人形だった。
「それは、私の元パートナーだけれど……言葉を発しなくなってから、もうずいぶん経つわ」
「……電気を与えたら再起動するんじゃね?」
遊馬はそう思って呟いたがエレナには届かず、早速話し始めた。
この国……『死せる書架の国』のその由来を。
「さて、まずは……外にいた亡霊たち、そしてこの部屋の無数の書物、その全てはかつて魔法少女だった者たちのなれの果て。この世界に堕とされた、不幸な少女たちの墓標なの。彼女たちは『
「エコー……イアソンが言っていたのはこの事だったのか……」
イアソンが言っていたエコーはギリシャ神話の森の妖精ではなく、魔法少女の成れの果てのことを言っていたのだ。
「あの〜、ちょっとよろしいですか?」
ブラック・マジシャン・ガールは挙手をして質問をする。
「あら?何かしら?」
「ここの亡霊たちは何故冥界に行かないのですか?死んだのなら、普通は冥界に行くはずですし……」
「……確かにあなたの言う通りね。でもここは魔法少女の世界、冥界なんてものは存在しないわ。むしろここは魔法少女にとって現世と冥界……二つが混ざり合った世界と言っても過言ではないわ」
「そんな事が……誰がこんな世界を?」
「この世界を創ったのは、一人の魔法少女よ。彼女は『ファースト・レディ』と呼ばれている」
ファースト・レディ。
この固有結界を生み出した者でこの世界の中心にある閉鎖空間、黒い壁の向こう側にいると言われている。
黒壁はどんな魔法でも破壊することはできず、内側の様子を知ることも不可能。
ファースト・レディとメイヴは別の存在だと言う事が分かった。
「私達魔法少女は、元はと言えば、様々な平行世界からこの場所に招かれたのよ。私達はもう、自分の世界では様々な理由で魔法少女ではいられなくなった存在だから。ここに来るしかなかった。他に行き場所が無かった。けれど、この世界なら魔法少女であることを続けられる。ここはある意味、私達の楽園。そして、終着の地なの」
「でも、なんでイリヤちゃん達が?それにブラック・マジシャン・ガール達も、そして俺達も……」
「それは私にも分からない。ファースト・レディに聞いてくださる?ただ……残酷なことを言うようだけど……そうやって自分の立場を認められない子達が外で暴れている亡霊になるのよ」
「……一つ確認したい事がある。マシュも魔法少女として召喚されたのか?」
アストラルはマシュがこの世界に召喚された事が魔法少女として召喚されたのかと確認した。
「そう推測するのは妥当では?そちらの
「フォウフォーウ……マシュのマシュコットならまんざらでもないフォウ?」
フォウは自分が魔法少女のマシュのマスコットキャラとして良いんじゃね?と思い、再び人語を話し出した。
「フォウさん!?いえいえ、あなたは後から来たじゃないですか!?」
「また普通に喋ってるよ……」
「もう好きにさせよう……」
フォウが再び喋った事に対して遊馬とアストラルはもう既にツッコム気力が無くなり、ため息をつく。
「あなたが気にすることは無い。マシュ・キリエライト。いいえ──
「デミ魔法少女です!……じゃなくてっ、デミ・サーヴァントです!!」
エレナがとんでもないマシュの魔法少女名を命名し、すぐにマシュが訂正する。
その話を聞いて遊馬とアストラルはふとあることを思いつく。
「なあ、アストラル。俺たちの力でマシュのフェイトナンバーズを魔法少女系のカードに出来るかな?」
「ふむ……マシュは意外にも魔法少女に興味津々だ。それもアリかもしれないな……」
「フォウフォウ(マシュの魔法少女化を是非ともお願い)!」
「遊馬君、アストラルさん、フォウさん、後でお話があります!」
遊馬達が漫才のような会話をしていると、デッキからクリボーが現れてブラック・マジシャン・ガールに近づく。
「クリクリ〜?」
「うーん……クリボー、今の話が本当なら、あなたは私の守護獣として一緒にこの世界に来てしまったって事になるわね。ごめんね、巻き込んじゃって……」
「クリ?クリリー!」
クリボーは気にするな!と言うようにブラック・マジシャン・ガールに頬擦りをする。
「うふふっ。ありがとう、クリボー」
「……ねえ、あなた。普通の魔法少女とは何かが違うようだけど、あなたは何者?」
エレナはブラック・マジシャン・ガールが今まで見て来た魔法少女の中でもかなり異質な存在だと気づいた。
「私ですか?そうですね……うーん……実は私、大昔に死んじゃってるんですよねー」
「……………………はぁ!??」
突然告げられた事実にエレナは声を上げて驚いた。
「えっと、大体……現世で換算すると、紀元前千年ぐらいの人間で、死んだ後はこの姿で冥界や精霊界で魔術とか色々な修行をしています」
「き、紀元前千年って……幾らなんでもそんな時代に魔法少女は存在しないわよ!?」
「あ、いえ。元々私は魔法少女じゃなくて、王家に仕える魔術師兼神官でーす!」
「……えぇえええええーっ!??」
ブラック・マジシャン・ガールは魔法少女ではあるが、本職(?)が王家に仕える魔術師であり、神官であることにエレナは今度は大声で叫んで驚いた。
もちろん驚いたのはイリヤとルビーも一緒で大慌てでブラック・マジシャン・ガールに質問していく。
「ブ、ブラック・マジシャン・ガールさんは大昔の人だったんですか!?」
「そうですよ。まあ、精霊になってからは時間の流れは特に気にしてないのであまり大昔って感じはありませんけど」
「ち、ちなみにご出身はどちらですか!?紀元前千年ですと、イリヤさんの世界で換算するなら……さ、三千年前でこれほどの魔法少女がいるとは思いませんが!??」
「出身地?エジプトですよ」
「「エジプト!??」」
ブラック・マジシャン・ガールの出身地がまさかのエジプトだと聞き、更なる驚愕の事実が判明した。
「あ、あの……ブラック・マジシャン・ガールさん!あなたがエジプト人ならどうして肌が真っ白なんですか!?あちらの方なら褐色の肌でもおかしくないのに……」
「私も生前は元々、みんなと同じで褐色肌でしたよ。でも、精霊の時から何故か肌が白いんですよね……何でだろう?」
ブラック・マジシャン・ガールから語られる驚愕の過去にマシュ達は驚きの連続だった。
そして、この事実に遊馬とアストラルはある確信を得た。
「古代エジプト……って事は……!??」
「間違いない……!ブラック・マジシャン・ガールが仕えているマスターとは……!!」
ブラック・マジシャン・ガールが仕えるマスター……その人物に遊馬とアストラルは心当たりがある。
それはデュエルモンスターズの長きに渡る歴史の中でも伝説として語り継がれる最強のデュエリスト。
しかし遊馬とアストラルは今はその事を聞いたり話したりする暇はないので興奮する気持ちをグッと押さえ込んだ。
「と、とりあえず……あなたが他の魔法少女とはかなり違うことは分かったわ。そんなあなたにこれを託すわ。この石は、ヴリルなんて名付けたけれど、もうどうでもよい話ね」
エレナはオレンジ色に輝く魔法少女の宝石を取り出してブラック・マジシャン・ガールに渡そうとする。
「……良いんですか?」
「……別に良いの。遅かれ早かれ、ここへメイヴがやって来たでしょうから。私はもう魔法少女じゃない、ただの墓守だから。石の力にはこだわらない。躊躇う必要は無いわ。あなた達も同じ運命を辿るのだから」
「それって、どういう意味ですか……?」
イリヤはエレナの同じ運命を辿るという言葉の意味を尋ねた。
「……いずれあなたも世界に棄てられる時が来る、イリヤ。望みを失う時が。一番大切な事を教えるわ。あなたの友人、美遊・エーデルフェルトについて。これは推測だけど、彼女をさらったのはメイヴじゃない──ファースト・レディだわ」
美遊をさらったのはメイヴではなく、ファースト・レディ……その事実に遊馬達は衝撃を受ける。
「黒い壁の向こうにいる彼女が、ひそかにこの世界を観察していると私は睨んでいた。自分の使い魔を、他の魔法少女のものに紛れ込むように変身させてね。メイヴに尋ねれば、より真相に近づけるでしょう。その後も生存を許されていればの話だけれど」
「ありがとう……エレナさん……これを、ミユの件を一番知りたかったんです!でも宝石までは要りません」
「黒い壁の向こうに行くためには、全ての宝石を合わせた力が必要だとしても?」
「えっ……全ての……って……」
「ぜ、全部の宝石ってことは、メイヴのも含めて全ての魔法少女の石を奪う必要があるのかよ!?」
「それはつまり、魔法少女の宝石を全て集めることでファースト・レディの黒い壁を打ち破れると?」
「ええ。亡霊たちの囁きが教えてくれた。宝石は願いを叶える想いの結晶。壁を越えて、外なる世界にすら届くだろうと。でもそれもまた、レディの狙いの内なのかも。だとしえと確かめる手段は一つだけ。石を集めるのみ」
「お、おい、ちょっと待てよ……ファースト・レディは魔法少女たちをわざと戦わせて宝石を集めさせ、その願いを叶える力を使わせるためにこんな事を……!?くそっ、どうしたら良いんだ!」
「この世界のルールは絶対よ。レディは絶対の存在だからね」
エレナが諦めるように言い、遊馬達もどうしたら良いのか答えを見つけることができないでいた。
すると、ブラック・マジシャン・ガールはエレナにソッと近づいて手を取った。
「エレナさん、私達と一緒に行きませんか?」
「はぁ!?いきなり何を言い出すのよ!?」
「神官で、精霊でもある私には分かるんです。ここにいる魔道書の想いが……あなたの想いを……」
古代エジプトの神官でもあり、精霊でもあるブラック・マジシャン・ガールは亡霊となった魔法少女達、そしてエレナの想いを感じ取ったのだ。
「運命に抗うために戦い、そして……此処にいるんですよね?」
「う、うるさい!もう疲れたの!終わりにしたいの!さっさと私の宝石を持っていけばいい!」
「私も過去に数えきれない絶望を味わいました……だけど、世界は絶望のままで終わらない。必ず、希望の光が待っています。だから、もう少しだけ抗ってみませんか?」
震え、暴れようとするエレナにブラック・マジシャン・ガールは静かに抱き寄せる。
母のようにエレナの背中を撫で、ブラック・マジシャン・ガールは優しく諭していく。
「私には確信があります。遊馬さんとイリヤさん……二人が必ず奇跡を起こしてくれるって」
「二人が奇跡を……?どうして分かるの……?」
「二人には私のマスターと同じ、未来と希望をその手に掴む眩い光があるからです」
ブラック・マジシャン・ガールには遊馬とイリヤに自分が仕えるマスターと同じ『光』があると確信している。
「……本当に、出来るの?」
「ええ。史上最強の魔法使いの弟子の私が言うんですから、間違いありません!」
自信満々に言うブラック・マジシャン・ガールの言葉にエレナは呆れ果てた表情をして笑った。
「分かったわ。そこまで言うのなら付き合ってあげる。せいぜい、バッドエンドを迎えないように頑張りなさいよ」
「と言うわけで……エレナさんも同行する感じで、良いですよね?」
宝石を奪うのではなく、宝石の所持者であるエレナに同行してもらう……遊馬達にとって好ましい展開となり、ブラック・マジシャン・ガールを称賛した。
「ああ!最高だぜ、ブラック・マジシャン・ガール!」
「うんうん!エレナさん、よろしくね!」
こうしてエレナが遊馬達と同行することになり、ファースト・レディの事などを踏まえてカルデアに報告しようとしたが……。
『遊馬……大変よ。カルデアが襲撃されたわ』
「はぁ!??」
オルガマリーからの報告に遊馬達は度肝を抜かれるほどの衝撃を受けた。
遊馬達が死せる書架の国に入った頃、突然カルデアに数体のモンスターが襲撃してきたのだ。
そのモンスターは雪原に特化しており、それはメイヴが支配しているモンスターだった。
カルデアは遊馬達の持つD・ゲイザーとの間に強力なレイラインが繋がっており、それで通信などを行うことが出来る。
メイヴはそのレイラインを利用し、モンスターを直接カルデアに送り込んだのだ。
カルデアは以前ちびノブ達が襲撃された事があったので、その経験からすぐに襲撃用の緊急警報が発令され、カルデアにいるサーヴァント達の協力で瞬殺されて被害は最小限に抑えられた。
しかし、もしもこれ以上カルデアに襲撃が重なるなら致命的な事となる。
オルガマリーはすぐにでも遊馬とマシュとアストラルとフォウを帰還させるべきだと考えるが、遊馬達の性格を考えてそれは無理だと判断する。
そこで……。
『遊馬……』
「は、はい……何でしょうか、オルガマリー所長……」
映像越しからでも分かるオルガマリーのただならぬ気配に遊馬は背筋をビシッと伸ばして姿勢を正した。
『所長として、本来ならマシュと一緒に早く帰還しなさいと言うべきでしょうけど、イリヤスフィールの事もあるから貴方たちは帰るつもりはないでしょう?』
「そ、そうですね……」
更に体中から冷や汗が流れ、思わず敬語になってオルガマリーの言葉に返事をしていく。
『それなら、そのまま任務を続行しなさい。その代わり……』
「その代わり……?」
『カルデアを襲撃したメイヴのいる国に向けて今すぐカチコミをかけなさい……魔法少女だか女王だか知らないけど、誰を敵に回したか……カルデアの恐ろしさを思い知らせるのよ!!派手にぶちかましなさい!!!良いわね!?」
「は、はいぃぃぃっ!ア、アイアイサー!!」
『私が直々にメイヴの眉間に魔弾をぶちかましたいところだけど、私も暇じゃないから……遊馬、やるなら徹底的にやりなさい!!』
「ぜ、全力でやらせていただきます!」
『私は襲撃の事後処理があるから連絡を切るわ。頑張ってね』
カルデアとのD・ゲイザーの連絡を切り、遊馬は苦笑いを浮かべてアストラルに目線を向ける。
「アストラル……どうしょう……」
「やるしかないな。遊馬、メイヴは明らかに最初から我々に敵対し、イリヤを捕らえようとして、更にはカルデアを襲撃したんだ。ここまでやられて黙っているわけにはいかないだろ?」
アストラルに言われ、遊馬は目を閉じて静かに思い出しながら考えた。
メイヴにどんな理由があるのか分からないが今までやって来た行いを思い出す度に沸沸と怒りが湧いてきた。
「よし……やってやるか!アストラル、派手に行くぜ!!」
「ああ!イリヤ、君は確か母親がドイツ人だったな?」
「は、はい。そうですけど……」
「ならば……さあ、遊馬、このナンバーズを使ってメイヴの城に向けてカチコミを仕掛けようではないか」
アストラルはニヤリと笑みを浮かべると一枚のナンバーズを取り出す。
☆
一面が雪の銀世界に覆われた雪華とハチミツの国の城。
その国のメイヴとクー・フーリン・オルタが住まう城。
メイヴは豪勢な玉座に座りながらイリヤが来るのを今か今かと待っていた。
「ウフフフフ、イリヤがもうすぐここに来るのね。まあ、お邪魔虫も一緒だけど。あの子を私の魔法少女軍団に入れたいからね」
「そいつはかなり苦労するぜ。どうやら新しい魔法少女が現れたらしいからな」
「新しい魔法少女?それは聞き捨てならないわね。私の軍団に入れる価値があるか見定める必要があるわね」
メイヴが怪しい企みを考えていると……。
ヒューン……!
「え?何この音は?」
「あ?何だ?」
何かが飛んで来るような音が響いた。
次の瞬間。
ドガァアアアアアン!!
突如、何かが飛来して城の扉が破壊し、大きな穴が開いた。
飛来したそれは人の数倍の大きさがある巨大な弾丸だった。
「キャーッ!?な、何!?し、城が……私の城がぁ……!?」
「くそっ、敵襲か!?一体どこから……」
ドカァン!ドカァン!!ドカァン!!!
更に連続で弾丸が飛来して城の扉の周囲を破壊して穴を大きくしていく。
「何よこれ……これは魔法少女の攻撃でも魔術じゃない……!?」
「な、何だあれは!?あそこに巨大な物があるぞ!?」
クー・フーリン・オルタが城の穴が開いた場所から遠くを眺めると見たことない物体が城に近づいていた。
☆
城から数十キロ離れた場所……雪原に現れたのは大砲を備えた全長約50メートルの巨大な列車だった。
「ア、アストラルさん……これは一体……!?」
そこに乗車しているイリヤは口を大きく開けてガタガタと震えていた。
「『No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ』……これの元になったものは80cm列車砲。第二次世界大戦でドイツ陸軍が開発した世界最大の巨大列車砲だ」
ナンバーズの中でも巨大な部類に入るスペリオル・ドーラ。
遊馬達はあの後、死せる書架の国を後にした後すぐに雪華とハチミツの国に突入した。
そして、スペリオル・ドーラを召喚して全員乗り込んで城に攻撃を仕掛けたのだ。
「ええっ!?ドイツはこんなものを作ったんですか!?と言っても、私は物心つく前から日本にいたのでドイツにいた記憶はないですけど……」
スペリオル・ドーラの元々の存在はドイツで開発された80cm列車砲だと知り、イリヤは驚愕した。
イリヤはドイツ人のハーフであるが実はドイツに行ったことはないのだ。
それはさて置き、メイヴの城が大破している光景を目の当たりにし、やり過ぎではないのかと遊馬に話しかける。
「あ、あの、遊馬さん……ちょっとやり過ぎでは……?」
遊馬は操縦室で何か吹っ切れたような表情を浮かべ、思い出すように言った。
「イリヤちゃん、俺の仲間がこう言っていた……『やられたらやり返す! それが孤高なる鮫の流儀だ!』ってな!」
それはシャークこと凌牙の言葉だが、その流儀に意味がわからないとイリヤはすぐにツッコミを入れる。
「鮫!?何で鮫なんですか!?そこはせめて人間の流儀で行きましょうよ!」
「まあ、シャークだからなー」
「シャーク!?それがあだ名ですか!?」
「おう。俺達はシャークって呼んでるぜ。さてと、それじゃあ……城に向けて、出発進行!」
砲撃を止め、城に向けてスペリオル・ドーラを走らせる。
すると、オーロラが彩る空の果てから一つの星が飛来する。
「おや?あれは……イリヤさん!あれを見てください!」
「あれ?」
ルビーが何かに気付き、イリヤは目を細めて見つめると……。
「イリヤ様ー!ルビー姉さん!遅くなりましたー!」
それはルビーと良く似た六芒星にリボンの飾りが付いた喋るステッキだった。
そのステッキこそ、ルビーの妹で美遊と契約している魔術礼装……マジカルサファイア。
イリヤはスペリオル・ドーラのドアを急いで開けてサファイアを中に入れる。
「サファイア!?あなただけ!?ミユは!?」
「まずは、こちらをご覧下さいませ。美遊様から託されたメッセージです」
サファイアはプロジェクター機能で壁に映像を映し出し、そこは城と思われる場所の内部でその中央には黒髪の美少女がリボンに縛られていた。
その美少女こそ、イリヤの親友でもう一人の魔法少女……美遊・エーデルフェルト。
美遊はサファイアに伝言を頼んで脱出させたのだ。
美遊はこの固有結界の世界を創った張本人、ファースト・レディに囚われており、この世界の中央に位置する黒い障壁の内部に城がある。
イリヤと美遊をこの世界へと招き入れたのはファースト・レディで、レディは平行世界へと干渉するなんらかの技術を得て、美遊を捕らえているのも何か関係がある。
ファースト・レディを止めるためにサファイアを道案内を兼ねて脱出させるが、何故かイリヤが来てはいけないと釘を刺した。
何故イリヤが来ては行けないのか分からず、そこで映像は終わってしまった。
イリヤは美遊からのメッセージを受けて酷く落ち込んでしまった。
そんなイリヤにサファイアは励ました。
「──イリヤ様。美遊様は、イリヤ様を待っておられます。気を落とさずに……私もご協力します」
「……うん、そうだよね。ありがと、サファイア。無事に再会できて嬉しい」
「はい。美遊様のお側にいるはずの私が、一人戻りまして……本当に悔しいのです!それにこちらのカルデアの方々も……イリヤ様をお守りくださって……感謝の念で一杯です。どうか、どうか……美遊様をお救いくださいまし……!」
サファイアは姉のルビーと違い、マスターの美遊に忠実で礼儀正しく、遊馬達に感謝の気持ちを伝え、美遊の救出を心の底から願った。
「サファイア、事はイリヤちゃん達だけの問題じゃなくなってきたからな。俺たちとしても、ファースト・レディが何を企んでいるか知らないけど、悪巧みならそれを阻止する。そして、ミユちゃんの救出に全力を尽くすぜ」
「はい……!ありがとうございます……!」
遊馬はサファイアと握手をして協力関係を結ぶ。
「ファースト・レディ……美遊・エーデルフェルトを拐った張本人……エレナ、君はファースト・レディの正体について何か知らないか?」
アストラルは謎の敵であるファースト・レディについての正体の情報をエレナに尋ねる。
「レディの正体──それなら、私たちも推測はしたわ。ファースト・レディ。この魔法少女の総覧たる、固有結界の所有者。彼女は──『最初の魔法少女』と、云われている」
「最初の魔法少女?」
「人類史を彩る数多の英雄たちにも、その原初たる、英雄の王が存在するように。魔法少女としての概念を、最初に確立した少女がいる……」
ファースト・レディ……最初の魔法少女。
全ての魔法少女の始まり、原初の存在とも言える。
「最初の魔法少女……ちょっと待てよ、だったら大昔の神話の時代とかも考えるなら、メディア・リリィとかもそれに当てはまるんじゃねえのか?」
遊馬の指摘はもっともな話であるが、メディア・リリィは既に大海原と竜の国の魔法少女であったのでそれは違うことになる。
「確かにそう考えられるが、メディアの場合はどちらかと言うと魔女として呼ばれていた。ギリシャ神話や他の神話でも、魔法を使う女性……魔女はたくさんいる。しかし、魔女と魔法少女は別の存在として考えるなら話は違うのではないか?」
考えれば考えるほど謎が深まるファースト・レディ……そんな存在に不安を覚えるが、まずはメイヴ達と話をつけなければならない。
「遊馬、考えるのは後だ……今はメイヴのところへ!」
「ああ、それもそうだな……早いところケリをつけて、ミユちゃん救出に行こう!スペリオル・ドーラ、全速前進!!」
スペリオル・ドーラのエンジンを全開にし、半壊した城に向かって全速力で発進した。
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ブラック・マジシャン・ガールのネタを色々入れました。
前世ネタ……結構色々豊富ですよね。
古代エジプト出身で後に神官で魔術師、死後は魔法少女の精霊……何だコレ?
メイヴとの対決は次回に持ち越しとなりました。
既に半分ほど書いてあるので早めに投稿出来ると思います。