Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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前回から設置したアンケート、反響が結構あって驚きました。
最終的に決めるのは私なのでアンケート結果を見て、改めてプリズマイリヤを全巻見てから考えようと思います。



ナンバーズ144 突入!ファースト・レディの国へ!!

遊馬とガガガマジシャンとの絆によって誕生したガガガガマジシャンで強化された未来皇ホープの攻撃によってメイヴは敗北した。

 

メイヴは敗北した悔しさから遊馬を罵倒した。

 

「くぅっ、この私があんな海老みたいな髪の子供に──!」

 

「誰が海老の髪だ!?この髪は父ちゃん譲りで子供の頃からずっとこの髪型だ!」

 

「生前から色々な男にあったけど、そんな奇抜過ぎる髪型は最早意味不明の領域よ!」

 

「うるせぇ!人の髪型にケチつけるんじゃねえ、このピンク女!」

 

「何よ、このクソガキ!!」

 

もはや戦いというよりも子供の口喧嘩みたいな感じとなっていた。

 

「……ったく。前菜なんざ食ってる暇があるからやられるんだよ、マヌケ。らしくなく丁寧に、順序立てて侵略するとはな。以前のテメエならまず主菜から食い殺しただろうに。同じ魔法少女の末路とやらに少しでも同情したおまえさんの負けだよ、メイヴ」

 

「くっ、バッカじゃないの……!?いくらクーちゃんでも、その台詞は許せないわ……!」

 

「はあ?基本、オレはテメエの敵だぞ?敵同士でつるみ合ってるのがオレたちの契約じゃねえか」

 

「そ、それはそうだけど、クーちゃんにはいつも愛憎入り交わっているけど!でも、基本的にはラブのが強かったの!だってトゲトゲが格好いいんだもの!」

 

「はいはい。趣味悪いな、テメエ」

 

「何か……夫婦漫才みたいなのが始まったな」

 

「我々は何を見せられているんだ?」

 

突如始まったメイヴとクー・フーリン・オルタの夫婦漫才みたいな会話に遊馬とアストラルは唖然とした。

 

「それよりさっきの失言、取り消して!私は女王、他の魔法少女なんてどうでもいいんだから!私が救われて、私が満足して、私が可愛くて、私が一番偉い──そんな世界のために軍団を作っただけよ!行き場のない魔法少女を集めていたのは結果論!」

 

メイヴの言葉に遊馬とイリヤ、他のみんなも驚いて目を丸くした。

 

「なによ、その顔。不思議なものを見るような目とか、何様のつもり!?」

 

「いやー、何かメイヴの言葉が意外でさ……」

 

「はい。でも、クーちゃんさんの指摘は正しいと思います。メイヴさんは立派な女王さまだったんですね」

 

「はあ?何ですって?」

 

「だって、メイヴは『私だけが』って言ってないもんな?」

 

「言葉にはしないけれど、メイヴさんは消えていった魔法少女たちを、仲間として認めていたんですね」

 

遊馬とイリヤはメイヴの言葉の中にある本心を気付いたのだ。

 

メイヴは確かに女王として振る舞っていたが、自分だけ幸せになるとは言っていない。

 

絶望に抗い、希望を手にしようとしていた……そして、消えていった魔法少女達を仲間として認めていた。

 

すると……。

 

ゴゴゴゴゴ……!

 

突然、城が崩れだして轟音が響き渡った。

 

「城が崩れる!?もしかして、大砲を撃ちすぎちまったか!?」

 

遊馬はここにカチコミする時のスペリオル・ドーラの砲撃を撃ちすぎたのかと思ったが、それをクー・フーリン・オルタが否定した。

 

「違うぜ。今のでトドメになったんだよ」

 

「トドメ?」

 

「いまメイヴの心が折れた。城が崩れだしたのはその証拠だ。なあ、そうだろメイヴ?テメエの甘さに気付いて、今自分を本気で殺したよな、テメエ?」

 

「…………ごめんなさい。でも、こんな私はクーちゃんに相応しくないから……死んで出直してくるわ……もっともっと邪悪で、放蕩で、悪虐な──もうすっごい魔法少女になってカムバックするから!その時まで待っていてね、クーちゃん♡」

 

「縁があったらな。まあ、そん時はそん時で返り討ちにしてやるけどよ」

 

「…………ふふ。そうよね。そういう関係よね、私達。さて、これで私も退場、打ち切りかあ。悪役にしてはもった方かなあ。で、そこのブタ。カルデアの、なんて言ったっけ?」

 

「……遊馬、九十九遊馬だ!」

 

「遊馬。つっまんない名前。覚えたくもないから、さっさと行って。そこの雌犬と精霊も連れて。こんな所にいないで。あなたのくだらない世界を救いなさいよ。最後まで、やってみせなさい」

 

くだらないと言いながらもメイヴは遊馬の事を認め、必ず世界を救えとエールを送った。

 

「待てよ、メイヴ!お前も一緒に!」

 

「そうです!外にいるエレナさんの力も借りれば助かります!」

 

「無駄だ、こいつは、揺り戻しって奴だ。無理をして他の世界に干渉したツケがメイヴ自身に還ってくるのさ。それを誤魔化すことはメイヴへの侮辱だ。コイツは最初から承知の上で悪役を始めた。命も心もくれてやったが、その矜持まではやれねぇよ。テメエらはさっさと先に進みやがれ」

 

メイヴは僅かながらも他の世界に干渉した対価として大きなダメージが襲い掛かるのだ。

 

しかし、メイヴはその事を既に受け入れているのだ。

 

「だからって……!」

 

未来皇ホープと一体化している遊馬は無理矢理にでもメイヴを連れていこうとしたが、それをクー・フーリン・オルタが立ち塞がる。

 

「テメエがメイヴの最期を邪魔するって言うなら、オレが全てを掛けてでもテメエを止める」

 

「クー・フーリン・オルタ……」

 

「もう一度言う。先に行け……テメエらには、やらなければいけないことがあるんじゃねえのか?」

 

クー・フーリン・オルタの鬼気迫る想いに遊馬は拳を握り締め、その場を振り返った。

 

「ごめん……メイヴ、クー・フーリン・オルタ……」

 

イリヤも泣きそうになるのを必死に堪えながら振り返る。

 

「メイヴさん……クーちゃんさん……」

 

遊馬達はメイヴとクー・フーリン・オルタを残し、城の外へと脱出する。

 

城を脱出して数十秒後、城は完全に崩壊してしまい、中にいたメイヴとクー・フーリン・オルタは恐らく消滅してしまった。

 

すると、崩壊した城の中から城に輝く楕円形の宝石が現れてマシュの手の中に収まった。

 

「…………そう。メイヴは亡霊になったのね。ならいずれ、私の書斎で会えるでしょう……彼女が本好きだったためしなんて無いけれど」

 

エレナはメイヴが亡霊になった事に少し悲しそうな表情を浮かべていたがすぐに気を取り直した。

 

「その宝石はメイヴが託したのでしょう。イリヤではなくマシュ、あなたにね。遂に……こうして宝石が四つ揃った。と言うことは──」

 

「黒い壁の内側……ファースト・レディの王国へ……!」

 

すると、四つの宝石が共鳴するかのように輝きを増していき……そして、黒い壁が全て消滅した。

 

「……黒い壁が弾けました……!」

 

「これでファースト・レディの王国に突入出来るぜ……!」

 

「よし、ではすぐに突入しよう。ファースト・レディも黒い壁を消されて使い魔達をすぐにでも出してくるだろう」

 

「またスペリオル・ドーラで行くか?」

 

「いいや、スペリオル・ドーラは威力はあるがスピードが足らない。ここは銀河眼の双竜で一気に攻めよう!」

 

「なるほどな……!あの二体なら、この魔法少女の世界で多少パワーダウンしても暴れられるな!」

 

「頼むぞ、遊馬!」

 

アストラルのアドバイスを受け、頷いた遊馬は一度未来皇ホープをカードに戻し、フィールドをリセットしてデッキをシャッフルし直し、デッキから5枚の手札をドローする。

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード『オノマト選択』!このカードの発動処理としてデッキからオノマト選択以外のオノマトカードを手札に加える。デッキから『オノマト連携』を手札に加えて発動!手札を1枚墓地に送り、デッキからオノマトモンスターを2枚手札に加える!」

 

『オノマト選択』は遊馬のデッキの強力なサーチカードである『オノマト連携』をサーチすることができ、初動を安定させられる。

 

「行くぜ、『希望皇オノマトピア』を召喚!」

 

希望皇ホープをデフォルメさせた可愛らしいモンスターが召喚され、仲間であるオノマトモンスターを導く。

 

「希望皇オノマトピアの効果!手札からオノマトピア以外のオノマトモンスターをそれぞれ1体ずつ守備表示で特殊召喚出来る!手札から『ガガガマジシャン』と『ズバババンチョー - GC(ガガガコート)』を特殊召喚!」

 

手札からガガガマジシャンと新たな仲間……ガガガモンスターの羽織りを纏い、ノコギリみたいな凶悪な剣と鎧を装着した番長のモンスター、ズバババンチョー。

 

「ズバババンチョーの効果!自分の墓地の、「ゴゴゴ」モンスターまたは「ドドド」モンスター1体を特殊召喚する!蘇れ、『ゴゴゴゴーレム』!!」

 

ズバババンチョーは羽織りを翻しながら剣を地面に突き刺すと魔法陣が浮かび上がり、オノマト連携のコストで墓地に送ったゴゴゴゴーレムを蘇らせる。

 

「ガガガマジシャンの効果!1ターンに1度、ガガガマジシャンのレベルを1から8の任意のレベルに変更する!ガガガマジシャンのレベルを4から8に変更する!」

 

ガガガマジシャンのバックルの八つの星が輝き、レベルが8に変更される。

 

これでガガガマジシャンのレベルが他の3体のモンスターと異なるが、ここでオノマト選択のもう一つの効果が発動される。

 

「オノマト選択のもう一つの効果!1ターンに1度、自分フィールドのオノマトモンスターを1体選択し、自分フィールドの全てのモンスターのレベルはターン終了時まで対象のモンスターと同じレベルになる。俺はガガガマジシャンを選択し、全てのモンスターのレベルを8にする!!」

 

オノマト選択により、己が星を操るガガガマジシャンの効果を最大限に活用する事ができ、他の3体のモンスターのレベル8となり、これでレベル8のモンスターが4体となった。

 

「さあ、アストラル。準備は完了だ。派手にぶちかまそうぜ!」

 

「ああ!魔法少女のこの世界に、ファースト・レディに見せてやろう!我々の力を!」

 

遊馬とアストラルはそれぞれナンバーズを1枚ずつ取り出し、同時にエクシーズ召喚を行う。

 

「俺はレベル8のガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!」

 

「私はレベル8の希望皇オノマトピアとズバババンチョーでオーバーレイ!」

 

レベル8のモンスターが2体ずつオーバーレイを行い、二つの光の爆発が起きる。

 

光の爆発の中から無限大に輝く銀河の煌めきが空一面に広がる。

 

「宇宙を貫く雄叫びよ。遥かなる時を遡り、銀河の源より蘇れ!顕現せよ、そして我を勝利へと導け!『No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)』!!」

 

「現れろ!銀河究極龍、No.62!宇宙に彷徨う光と闇、その狭間に眠りし哀しきドラゴンたちよ。その力を集わせ、真実の扉を開け!『銀 河 眼 の(ギャラクシーアイズ・)光子竜皇(プライム・フォトン・ドラゴン)』!!」

 

世界を創造したドラゴンの分身、時の竜と光の竜……銀河眼の時空竜と銀河眼の光子竜皇がここに揃った。

 

「え……えぇえええええーっ!?ドドド、ドラゴン!??ドラゴンって本当に存在したの!?」

 

「げ、幻想種!?しかもドラゴンですと!?竜種は幻想種の頂点に立つ化け物じゃないですか!??」

 

「幻想種は世界から消えたはず……それなのに、竜種が2体も……あ、ありえません……」

 

「う、嘘でしょ……宇宙のドラゴン……?そんな存在は聞いたこともないわよ……」

 

イリヤ 、ルビー、サファイア、エレナは2体の銀河眼に驚愕していた。

 

「そんな……この2体のドラゴン……マスターが操る3体の神にも匹敵する力……!?」

 

そして、ブラック・マジシャン・ガールは口を手で抑え、震えながら驚きを隠せないでいた。

 

「よっしゃあ!」

 

遊馬は気合を入れると器用に銀河眼の時空竜の体を登って胴体の上に乗り、アストラルは銀河眼の光子竜皇の肩に乗る。

 

「みんな!銀河眼に乗るんだ!」

 

「このまま一気にファースト・レディの城に向かうぞ!」

 

「の、乗るんですか!?」

 

「乗ってもいいんですか!?」

 

ドラゴンの背に乗る……それはある意味ファンタジーでは夢の体験であり、マシュとイリヤは更なる驚きと同時に興奮してきた。

 

「で、では私は時空竜の方で……!」

 

「じゃあ、私はこっちのキラキラ綺麗なドラゴンさんで!」

 

マシュは銀河眼の時空竜を選択して遊馬の後ろに座り、イリヤは銀河眼の光子竜皇を選択して恐る恐るその背に座る。

 

「エレナさん、私達も」

 

「わ、分かっているわよ」

 

ブラック・マジシャン・ガールは銀河眼の光子竜皇、エレナは銀河眼の時空竜の背に乗り、残ったルビーとサファイアは慌ててイリヤの元に向かい、これで全員2体の銀河眼に乗った。

 

「みんな、しっかり掴まってろよ!」

 

「目標……ファースト・レディの城!ミユを救い出し、ファースト・レディとの決着をつける!!」

 

『『『はいっ!!!』』』

 

この世界での最後の戦い……ファースト・レディと決着をつけ、囚われの美遊を救い出すために2体の銀河眼は翼を広げ、決闘者と魔法少女達を乗せて飛翔する。

 

雪華とハチミツの国を後にし、ファースト・レディの王国に突入すると、ファースト・レディが放ったと思われる大量の使い魔が待ち構えていた。

 

「フィールド魔法『エクシーズ・テリトリー』!モンスターエクシーズがモンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ、そのモンスターエクシーズの攻撃力・守備力はランクの数×200ポイントアップする!」

 

銀河眼の光子竜皇と銀河眼の時空竜のランクは共にランク8でバトルの時に攻撃力と守備力は8×200で1600ポイントアップする。

 

使い魔程度ならこの世界でも充分に倒すことが出来る。

 

「このまま全力で突っ走れ!!」

 

「薙ぎ払い、突き進め!!」

 

『グォオオオオオン!!』

 

『ガァアアアアアッ!!』

 

二体の銀河眼はドラゴンとしての圧倒的な力で使い魔を捻じ伏せ、薙ぎ払い、吹き飛ばす……膨大な数の使い魔をものともせず、サファイアの道案内で一直線に美遊が囚われているファースト・レディの城に向かう。

 

「すごいすごいすごーい!こんなにも綺麗で強くてかっこいいドラゴンさんの背中に乗って空を飛ぶなんて……自分で飛ぶのと違って最高の気分だよ!」

 

イリヤは二体の銀河眼の強さと美しさに感動し、魅了されてしまった。

 

「ああっ!イリヤさんがまさかの大喜び!?いけませんよ、イリヤさん!魔法少女がドラゴンに乗って大喜びするなんて!むしろドラゴンは大昔から敵役として決まっているのですから!」

 

「そんなことはありませんよ?私もドラゴンに乗って戦った事がありますから」

 

ルビーのドラゴンを否定する言葉にブラック・マジシャン・ガールはまたしてもとんでもない発言をした。

 

「ええっ!?ブラック・マジシャン・ガールさん、前にもドラゴンに乗ったことがあるんですか!?」

 

「ええ。精霊界に古くから伝わる伝説の竜と共に戦いましたよ。その時、私は騎士の鎧と剣を持って……『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』として活躍したんですから!」

 

「竜騎士……魔法少女から竜騎士とは、なんとエロいのでしょう!なるほど、ジョブチェンジと言うのですか、それもそれでアリですね!」

 

「姉さん、こんな時に変な発言をしないでください」

 

「竜騎士か……あっ、そうだ!」

 

イリヤは竜騎士と言う言葉に豆電球が光ったように何かが閃いた。

 

「ルビー!私達もブラック・マジシャン・ガールさんに倣って行くよ!」

 

「倣うって……もしかしてあれですか!?」

 

「うん、行くよ!」

 

イリヤはカードケースからクラスカードを取り出して構える。

 

「夢幻召喚!」

 

夢幻召喚を行い、クラスカードがイリヤの中に入り込み、英霊の力をその身に宿す。

 

「クラスカード『セイバー』!!!」

 

薄桃色の服に両手両足に鎧を装着し、長髪の銀髪を黒のリボンでポニーテールに纏め、手には人々の願いが込められた最強の星の聖剣……『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』が握られていた。

 

「約束された勝利の剣……あれはアルトリアの……!」

 

「やはり、セイバーのクラスカードにはアルトリアの力が込められていたか。しかし、その身に纏っている鎧が違うな……」

 

約束された勝利の剣は遊馬とアストラルが何度も見てきたのでその剣の形と輝きは紛れも無く本物だと断言出来るが、鎧だけはアルトリアのでもオルタのでも違い、軽装でどこか少女らしいものだった。

 

「行きます!!!」

 

イリヤは銀河眼の光子竜皇からジャンプして飛んでいるモンスターを約束された勝利の剣で次々と斬り伏せて行く。

 

舞う蝶のように戦うイリヤの姿にアルトリアが重ねて見える。

 

二体の銀河眼と共に戦い、時にその背に乗って聖剣を振るう。

 

その姿はただの騎士ではなく、竜騎士と言っても過言では無かった。

 

やがて、ファースト・レディの城が目視で確認出来るまで近づくことができ、イリヤは一気に攻めるチャンスだと思い立った。

 

「遊馬さん!アストラルさん!一気に決めましょう!」

 

「分かった!銀河眼の時空竜!!」

 

「行け、銀河眼の光子竜皇!!」

 

銀河眼の時空竜と銀河眼の光子竜皇はその眼に宿る銀河の輝きを解き放ち、それぞれ時の力と光の力を口に宿す。

 

イリヤは約束された勝利の剣を右肩に担ぐように構えて刀身の金色の輝きを最高潮に高める。

 

「殲滅のタキオン・スパイラル!!!」

 

「エタニティ・フォトン・ストリーム!!!」

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!」

 

二体の銀河眼から繰り出される時と光の力を込めた竜の咆哮が轟き、振り下ろされた星の聖剣から金色の奔流が繰り出される。

 

三つの光が瞬く間に使い魔達を消し去り、城への道が開けた。

 

「うっ……」

 

しかし、イリヤは酷く疲れた表情を浮かべると、夢幻召喚が解除されて胸からクラスカードが飛び出した。

 

「魔力……切れ……?」

 

「あの宝具は魔力消費が大きすぎます!魔力供給にはしばらく時間がかかりますよ!」

 

約束された勝利の剣は魔力を大量に消費してしまう為、イリヤの持つ魔力量では一度の使用でしばらく使えなくなってしまうのだ。

 

「イリヤさん!」

 

銀河眼の光子竜皇がイリヤとルビーを回収すると、ブラック・マジシャン・ガールはイリヤの背中に手を置いた。

 

「ブラック・マジシャン・ガールさん……?」

 

「私があなたに回復の魔術をかけます。それと同時に私の魔力を注ぎます」

 

ブラック・マジシャン・ガールはイリヤに回復の魔術をかけると同時に自身の魔力を注ぎ込んで疲労困憊のイリヤを回復させる。

 

「良いんですか……そんな事をして……?」

 

「これでも最強の魔術師と言われた、お師匠様から魔力を受け継いだ弟子ですよ?これぐらいは大丈夫です。ミユさんを救う前にヘロヘロじゃあダメですからね」

 

大丈夫だとブラック・マジシャン・ガールは微笑みながら回復を行い、あっという間にイリヤは回復してすぐに元気になった。

 

「ありがとうございます、ブラック・マジシャン・ガールさん!」

 

「イリヤさん、もうすぐ到着します。気合を入れましょう!」

 

「はい!」

 

それから間もなく……ファースト・レディの城に到着し、銀河眼の光子竜皇と銀河眼の時空竜は城の前に降りて遊馬達を下ろす。

 

流石に中に美遊が囚われているのでそのままドラゴン達の攻撃で突入するわけにもいかないのでサファイアが脱出した時のルートで向かう事にする。

 

「……遊馬、先に行きなさい」

 

「エレナ?」

 

エレナは城の反対方向を向いていた。

 

「レディが放った使い魔はあらかた片付けたけど、世界に散らばっていた使い魔がこの城に集結している……だから、私はここに残って使い魔を抑えるわ!」

 

「で、でも、エレナさんを残して……」

 

「告白するけれど──イリヤ。これほどあなたが気概を見せるとは驚かされたわ。魔法少女の紛い物だと、みくびっていた。伝統、経験、知識、そんな魔術の奥義からはかけ離れた力を隠していると、あらためて気付かされた」

 

「え……?」

 

「来臨!」

 

エレナは光を纏うと帽子を被り、ローブを着崩すように羽織って大きな魔道書を宙に浮かせる。

 

それはエレナの魔法少女としての姿だった。

 

「今まで黙っていたけど、宝石を持っているから私も魔法少女として戦えるわ。さあ、行きなさい、遊馬。イリヤを連れて、レディの元へ。使い魔達は魔法少女を狙っている。それなら、私が……!」

 

「……分かった。エレナ、ここは任せた!」

 

「ありがとう、遊馬。機会があれば、私の物語を教えてあげる」

 

「エレナさん……!」

 

「私の贈った時間を無駄にしないで、早く行って!」

 

「……心より恩にきます、エレナ様。さあ、イリヤ様──皆様もお早く!」

 

サファイアはエレナに感謝の言葉を告げ、自分が一度通った道を戻って道案内をする。

 

エレナにこの場の後を頼み、遊馬とイリヤ達は城内へと侵入する。

 

城内に侵入したが構造は複雑でサファイアの道案内が無いと迷ってしまうほどだった。

 

城内にいる使い魔は殆どおらず、手薄だと感じたが、それは逆に誘い込まれているようで不気味に感じた。

 

そして……到着したのは部屋の全てが美しいクリスタルのような装飾が広がる玉座の間。

 

その玉座に一人の少女の影が見えた。

 

「あれがファースト・レディ……で……ハッ!?」

 

「おやおやー?」

 

「……え……?……っ……あなたは……」

 

サファイア、ルビー、イリヤは少しずつ近づいて来た少女の影に驚愕した。

 

クリスタルのシャンデリアの光に照らされ、その姿が露わになる。

 

赤い外套に露出度の高い黒いプロテクターを身に纏い、褐色の肌にピンク色が混ざった銀髪の少女。

 

しかし……その少女の姿は紛れもなくイリヤと瓜二つだった。

 

「──クロ!?」

 

「あーあ、来ちゃったか。ほんと諦めが悪いんだから」

 

その少女こそ、イリヤの妹……クロエ・フォン・アインツベルンなのだ。

 

「クロ……!?ど、どうして、クロがここに!?」

 

「彼女がクロさん……双子同然とお聞きしましたが、本当にイリヤさんにそっくり……!」

 

イリヤが以前言っていたようにクロエは双子のようにそっくりな少女だった。

 

しかし、クロエの姿に遊馬達は首を傾げるほどの見覚えがあった。

 

「あれがイリヤちゃんの妹……なんか、あいつに似てね?」

 

「あの格好と肌の色……とても見覚えがあるな……」

 

「はい……もしも二人が並んだら親娘と言ってもおかしくないほどに……」

 

「フォーウ……」

 

遊馬達カルデア組にとってクロエの格好と肌の色にあまりにも似ているサーヴァントを一人思い浮かんだ。

 

しかし今その謎を証明する暇もないので黙っておき、クロエの様子を伺った。

 

「……サファイア、イリヤの妹がここにいると言うことは彼女も魔法少女なのか?」

 

「──はい。ですが……なぜ私自身、クロ様の存在に気付かなかったのか……」

 

「ハァ……まったく派手にやってくれて。あまり痛手は受けてないから痛覚共有が来なかったけど、こっちの身にもなってほしいわ」

 

「あ……ごめん。ていうか!ミユは!?そっか、クロ、助けに来てくれたんでしょ?リンさんや、ルヴィアさんは?」

 

クロがここにいるということは保護者(?)のリンとルヴィアもここにいるとイリヤは思い込んだ。

 

「ううん、リンたちはいない。私とミユだけよ。ずっといたわ。最初からここにいたの──私」

 

「……え、何言ってるの……クロ?ここにずっと……?」

 

クロエの謎の言葉にイリヤは衝撃を受けて戸惑う中、遊馬は背中の原初の火の柄を持ちながら小声でサファイアに聞く。

 

「サファイア、ミユちゃんは何処だ?」

 

「あちらです……!ですが、お気をつけください!」

 

部屋の奥にレースのような拘束で体を縛られて動きを封じられている少女……美遊がいた。

 

「ジェットローラー!!!」

 

遊馬はジェットローラーを起動してダッシュし、原初の火をソードホルダーから引き抜いて美遊に近づくと拘束の一部が変化して使い魔のような形となる。

 

遊馬は使い魔を全て斬り裂き、美遊を縛る拘束を斬り下ろすために振り下ろした。

 

しかし、原初の火が拘束に触れた瞬間、遊馬の体に激しい電撃が襲いかかり、更に強い衝撃波が遊馬を吹き飛ばした。

 

「ゆ、遊馬さん!??」

 

美遊を助けようとした遊馬がダメージを受けて吹き飛ばされ、イリヤは顔を真っ青にした。

 

「遊馬、大丈夫か!?」

 

「遊馬君、しっかりしてください!」

 

「すぐに傷を治します!」

 

「うっ、いってぇ……」

 

吹き飛ばされた遊馬にマシュとアストラルが駆け寄り、ブラック・マジシャン・ガールはすぐに遊馬に治癒の魔術をかける。

 

服喪面紗(ヴォワラ・ドゥイユ)の防衛反応。対魔法少女用の礼装だけど、人間……かどうかは微妙だけど、お兄さんもダメージ受けちゃったわね」

 

「なんですってー、対魔法少女礼装!?ありえません!限定的で事案発生な匂いがプンプンします!」

 

「愉悦型なんとか精霊のルビーには言われたくない……っと、それはともかく!どういうことなのクロ?冗談ならいい加減にして!ミユを自由にしなさい!そして、遊馬さんに謝りなさい!!」

 

イリヤはクロエの姉として厳しく怒りを示して叱り付けた。

 

「お兄さんの件は知らないわよ。私が言う前に勝手に動いたのが悪いんだし。ミユはどうしようっかな。せっかく、私のモノになったんだし。いつもイリヤに独り占めされて癪だったのよね。フフッ……なんだか懐かしい感じ。そうね。こっちの方が、ほんとの自分に近いのかな?」

 

「イリヤちゃん……クロエちゃんは操られているのか?」

 

ブラック・マジシャン・ガールの治癒の魔術で傷を治した遊馬はすぐに立ち上がってイリヤに尋ねた。

 

「うっ……そうかも。でも意外と自然体にも見えるし……クロって、ああいう悪ふざけ好きなとこがあって……」

 

「確かに、妙な魔力は感じませんねー?いたってフツーのクロさんです」

 

イリヤとルビーはクロエの様子からしていつもと変わらないように見えた。

 

「ふぅ……ごちゃごちゃ言ってるわね……誤解されても面倒だから、疑問は解消しておくわ。イリヤとミユと一緒に『鏡面界』へと向かった時──私、実は一緒にいたの」

 

「えっ……?」

 

クロエはイリヤと美遊が鏡界面に行く時に慌てて一緒に向かったが、気付いたらこの世界にいた。

 

イリヤと美遊が来るよりもずっと前に……不安定な世界により時間のずれが生じてしまったのだ。

 

この世界を見渡せば戦っている魔法少女ばかりでクロエの味方か敵かわからない。

 

気配を殺して隠れても魔力は消費されるだけで消えてしまいそうで、とても心細かったが……。

 

「その時、出会ったの──彼女(レディ)と。正確にはその使い魔とね」

 

「……っ……なっ……なんでそんなムチャしたのー!クロのバカぁー!」

 

「はぁ?私に声もかけずに鏡界面へ行くとかありえないでしょ!?」

 

「だって、リンさんたちに急かされて仕方が無かったんだもの!」

 

「私だって、リンや、ルヴィアが助けてくれないか期待したわ。だけど、そもそも気付かれていないんじゃ助けに来ようがないものね。でもね……そうじゃなかった。私がここへ来るのは必然だったのよ。レディは私に言ったわ。明け透けに。肋骨を抜けるナイフみたいに。『あなたの存在意義は、イリヤの付属品なの?手懐けられ、牙を抜かれたヤマネコみたい……』って」

 

クロエの負の感情が具現化したかのように闇のようなオーラが纏われた。

 

「そんなこと……っ……!」

 

「ええ、はいはい、わかってる。あなたが否定するのは。だってイリヤだもの。なにより私自身が、そんなつもり毛頭ない。だけど、ね……どこかであなたを第一に考えていた──とも気付かされた。あなたの為ならミユとだって仲良くもするわ。だって私自身の為だもの。それが当然よね」

 

「クロ……」

 

「クロエちゃん、こんな事をしても君は幸せになれないぞ。勢いだけに任せて行動して……本当はわかってるんじゃないのか?自分は間違っているって……」

 

遊馬は今のクロエは正気ではないと判断してそう言葉をかけた。

 

「わかってるわよ!不条理さが世界の本質だってことは!厭味を言うのが馬鹿らしくなるくらい、あなたがとても真っ当な人だって事もね……!でもね、私にだって叶えたい願いはあるのよ。自分だけのために。自分だけの願いを──世界へ届かせたい」

 

クロエは両手に双剣を投影した。

 

その双剣は雌雄一体の夫婦剣、干将・莫耶。

 

遊馬達が思い浮かべる一人のサーヴァントが好んで使う双剣だった。

 

「……っ……!クロが……武器を投影して!」

 

「あら〜、これは完全に戦闘モードですねー?」

 

「……クロったら……もう!遊馬さん、マシュさん、アストラルさん、ブラック・マジシャン・ガールさん、少しだけ、私に時間をください!」

 

戦う意志を示すクロエにイリヤもそれに応えて戦おうとする。

 

しかしこれは戦いでもない、殺し合いでもない、イリヤとクロエ……ただの姉妹喧嘩である。

 

「姉妹喧嘩だな、わかった!存分にやるんだ!」

 

「姉妹の覇権を賭けた全力全開魔法ゴンバット……ちょっと惹かれま……い、いえ!危険になったらすぐに止めに入りますので!」

 

「ありがとうっ……ルビー!?」

 

「いえーす☆おイタのクロさんには一発プスっと?」

 

「もう一刻も待てません。私の洗脳電波デバイスで……」

 

ルビーは怪しい緑色の液体が入った注射器を取り出し、サファイアは体からパラボラアンテナのようなものを出していた。

 

明らかにろくでもない、危ないものであるとすぐに察しできる。

 

「──違うってば!変に入っちゃってるスイッチを戻してあげるの!」

 

「ハイハーイ☆真心(ぶつり)説得(なぐれ)ですネー?承知しておりますとも!でも、色々放置していた件はイリヤさんも後で謝った方がいいとは思いますけどー?」

 

「……うっ……とにかくミユを離しなさい!クロ!」

 

「イヤよ!もう、ミユは私のものよ!」

 

「この……バカクロッ!」

 

クロエは干将・莫耶を構えて床を蹴り、イリヤはルビーを持って同じように床を蹴って互いに接近し、互いの想いをぶつける姉妹喧嘩を始めた。

 

「ミユちゃんを自分のモノに……なんか、あの子のカオス……欲望が色々と暴走しているな」

 

「恐らくはファースト・レディのせいだろう。この世界でたった一人……愛する者や身近な人間が側にいなくて心細く、精神が不安定な時に悪魔の囁きのような言葉をかけられて自分の欲望が抑えられなくなってしまった……そう推測出来る」

 

「今、ミユちゃんを助ける事はできない……クロエちゃんはイリヤちゃんと姉妹喧嘩をするから、俺たちは待機だな」

 

「ああ。今はイリヤとクロエ、二人に姉妹喧嘩をさせてあげよう。だが、ファースト・レディがいつアクションを起こすか分からない。今のうちに準備だけは整えておこう」

 

「オッケー、分かったぜ」

 

遊馬はすぐにでも状況の変化に対応出来るようにイリヤとクロエが姉妹喧嘩をしている間にフィールドと手札を整えておく。

 

 

 




クロエちゃん、可愛いですよね。
まあ色々とヤバイ性格でカルデアに来て……下手すれば桜ちゃんの逆鱗に触れそうな気がします(笑)

次回はイリヤちゃんとクロエちゃんの姉妹喧嘩?は軽くして、本題はファースト・レディとの対話とバトルですね。
ぶっちゃけファースト・レディの問いについて遊馬とアストラルとマシュは答えを持ってるんですよねー。
遊馬とアストラルは一回自分たちの世界を救ったし、新たな未来や夢を見つけてるし。
そして、遊馬とアストラル、そしてイリヤちゃんの全力全開を見せる事になると思います。

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