Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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なんとかそれなりに順調に書けているのでこのままのペースを保ちつつ更新したいですね。

今回は色々な再会がありますのでお楽しみに!


ナンバーズ149 母と子、親子の奇跡の再会

遊馬達はイリヤ達魔法少女三人娘を連れてレイシフトした先は千年前の日本。

 

場所は本州近くにある一つの島で遊馬達が降り立ったところは海岸だった。

 

デッキケースからフェイトナンバーズを取り出してマシュ達を出すと、やる気満々のイリヤが早速行動する。

 

「じゃあ、私とミユで空を飛んでザッと周囲を見てきます!」

 

「何かあるかチェックします」

 

「おう。任せたぜ、二人共!」

 

イリヤは空を飛び、美遊は魔力で足場を使って跳んでいく。

 

「いやー、空を飛べるって凄いな」

 

「美遊は足場を作ってジャンプしている……イリヤみたいに飛べないのか?」

 

アストラルは美遊が何故イリヤのように飛ばないのか疑問に思っているとクロエが呆れるように話し出す。

 

「ミユは頭がいいんだけど、常識に囚われていてね。簡単に言えば頭の固いの。イリヤは魔法少女は飛ぶものって思い込みで飛べるんだけど、ミユは人は飛べないって常識が強すぎて結局飛べないの。だから、ああやって足場を作って跳ぶ方法を取っているのよ」

 

「そっか。もったいないな、魔法少女なのに」

 

「なるほど、思考の違いによって魔法少女としての動きもかなり違ってくるのだな」

 

遊馬とアストラルは魔法少女について色々考えていると、イリヤと美遊が戻ってきた。

 

「遊馬さん、なんかこの島……変ですよ?」

 

「ええ……こんな島、日本ではあり得ません」

 

「あり得ない?」

 

「それはどう言うことだ?」

 

イリヤと美遊はこの島は変であり得ないと言い、今まで静かだったマシュも静かに口を開く。

 

「この島の全景……日本の方なら分かると思います」

 

「全景……ああっ!」

 

「これは……まさか!?」

 

遊馬とアストラルはこの島の全景を改めてよく見るとその異常さがよくわかった。

 

普通ではあり得ない形状……まるで、絵本に描かれている挿絵そのもののような……あまりにも分かりやすすぎる『島』。

 

それは日本人である遊馬と美遊、ついでにハーフであるイリヤとクロエも一度は見たことあるその島。

 

その結論を口にする前に遠くを見渡していたクロエが何かを見つけた。

 

「ね、ねえ、みんな!あっちに誰か倒れている!それになんか変な化け物が囲んでいるわ!?」

 

「助けに行くぞ!」

 

遊馬達は急いでクロエが見つけた倒れた人物の救出に向かう。

 

近づくと、そこに倒れていたのは赤毛の少年でその周りを囲んでいた化け物は……。

 

「お、鬼!?」

 

それは日本の化け物の代表でもある鬼だった。

 

鬼は少年を囲って食べようとしていた。

 

「っ!ミユ、クロ、行くよ!」

 

「うん!」

 

「ええ、鬼退治と行きますか!」

 

イリヤと美遊とクロエは少年を救うために先陣を切って鬼退治に向かう。

 

「マシュ・キリエライト、行きます!」

 

「フォーウ!」

 

「遊馬、マシュとイリヤ達のサポートをする。このナンバーズだ!」

 

「分かった!俺のターン、ドロー!魔法カード『増援』!デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える!デッキから『影無茶ナイト』を手札に加えて『ズババナイト』を召喚!更に影無茶ナイトの効果でレベル3モンスターの召喚に成功した時、手札からこのカードを特殊召喚できる!レベル3のズババナイトと影無茶ナイトでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

ズババナイトと影無茶ナイトが召喚され、光となって地面に吸い込まれると『20』の刻印が空中に輝く。

 

「大地に輝け、小さき命の鼓動!同胞達に命の煌めきを与えよ!現れろ!『No.20 蟻岩土(ぎかんと)ブリリアント』!!」

 

赤い球体を持つ植物の種が現れ、そこから変形して現れたのは光り輝く巨大蟻。

 

「ブリリアントの効果!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、自分フィールドに表側表示で存在するモンスターの全ての攻撃力を300ポイントアップする!ブリリアント・ライトパワー!」

 

ブリリアントがオーバーレイ・ユニットを1つ食べると光り輝く羽根を高速に羽ばたかせて光の粒子を放出し、マシュとイリヤ達がそれを被ると攻撃力が上昇する。

 

「力が……湧いてきます!」

 

「凄い……デュエルモンスターズはこう言うこともできるんだ!」

 

「とても面白いです。今度色々遊馬さんとアストラルさんから教えてもらいます」

 

「パワーアップしたところで、一気に終わらせるわよ!」

 

パワーアップしたマシュとイリヤ達は鬼を次々と蹴散らしていく。

 

すると、倒れていた少年が目を覚ました。

 

「っ……う……君たち、は……」

 

「俺たちは……鬼退治をしている桃太郎ご一行ってところだぜ!」

 

「……よくわからない、けれど……君たちが鬼と戦っているのは……分かる。僕を助けるため……なら……疲労困憊、精神衰弱につき、僕は本当、全然駄目なのですが……」

 

少年は懐に手を入れた瞬間に小さな光が輝くと、鬼の額に何かが突き刺さった。

 

「えっ!?今のは!?」

 

「あれは……苦無。忍者が使っていた小刀……君は一体?」

 

「……すみません。名乗るほどのものではないのですが……えーと……僕は風魔小太郎。なんとなくですが、五代目小太郎……です」

 

「ふ、風魔小太郎ってあの風魔忍者の!?」

 

風魔小太郎。

 

第五代目頭目であり、北条早雲の後継者氏綱に仕える忍者集団「風魔一党」の頭領。

 

つまり……日本に歴史を残す有名な忍者の一人である。

 

「ええっ!?に、忍者!?本物!?」

 

「忍者……本当にいたんだ……」

 

「流石は忍者!正確無比で見事な苦無捌き!アーチャーとしては是非ともコツを教わりたいわね!」

 

「アイエエエ!?ワァオ!?ジャパニーズニンジャ!?本物の忍者さんの登場はテンション上がりますねぇ!」

 

「忍者の使う忍術が本物なのか……是非とも忍術を見てみたいですね」

 

イリヤ達は本物の忍者の登場に大興奮していた。

 

忍者は日本人だけでなく外国人にも人気のある存在で、小太郎は何故ここまで興奮しているのか分からないが、とりあえず目の前の敵の殲滅に集中する。

 

「小太郎さん、大丈夫か?」

 

「あなたは……もしやマスターですか?」

 

「ああ!俺は九十九遊馬だ!とりあえずこの鬼達はすぐに片付けるから少し待っててくれ!」

 

「いえ、僕も……僕も戦います。女子だけに戦わせるわけには行きません!」

 

男として情けないところを見せないために小太郎は限界寸前なのに立ち上がる。

 

「あんまり無茶するなよ。罠カード『ギフトカード』!相手は3000ライフポイントを回復する!」

 

遊馬は相手のライフポイントを回復するギフトカードを使って負傷している小太郎を回復させる。

 

「これは……!?消耗していた僕の力が回復している……!?」

 

「風魔忍者の力……見せてくれよな!」

 

「承知……!助けていただいた仁義を通します!」

 

小太郎は遊馬に力を回復してもらい、助けてもらった仁義を通すために忍者として助太刀する。

 

マシュとイリヤ達、そして小太郎によって鬼は次々と退治されていくが、森の奥から次から次へとどんどん鬼が現れていき、やがて大群となって攻めてきた。

 

「くっ、数が多すぎるぜ!」

 

「鬼を束ねる頭がいないとなると、単純に数が多いだけだな」

 

あまりの大群にこちらが不利となっている状況下でイリヤと美遊はクラスカードを取り出す。

 

「遊馬さん!一気に鬼を蹴散らします!」

 

「私とイリヤで夢幻召喚をして一掃します!」

 

夢幻召喚で英霊化して鬼を全て蹴散らそうとした……その時。

 

パラリラパラリラパラリラ〜♪

 

独特なラッパ音が響き、更にはエンジン音が轟くように響き渡る。

 

そして……崖の上に現れ、そのまま飛び降りて砂地に降り立った。

 

「いよう。鬼の臭いに釣られてみれば、こいつはご機嫌な展開じゃねえか。ゴールデンなパーティーだぜ。なあ、そう思わねえか、大将さんよぉ!」

 

「ゴールデン!」

 

颯爽と登場したのは金髪のおかっぱの髪型を変え、黒と金を基調としたレザージャケットを身につけ、アメリカンタイプの大型バイクを跨るその男は……ゴールデンこと、坂田金時。

 

「……!?あれが……坂田、金時……?」

 

小太郎はマシュからゴールデンの真名である坂田金時と聞いて衝撃を受けていた。

 

「はい、信じられないとは思いますが、あの方は坂田金時さんこと、ゴールデンさんです。私たちも最初は戸惑いました!あ、でも……いつにもまして、今日は特に……」

 

「ゴールデン、そのバイクは何なのだ?」

 

「……チッ。聞くかよそれ。つーか聞いちまうか。やっぱり聞くよなあ、コイツのコトをよぉ!おう、耳の穴研ぎ澄ませてよーく聞いてくれ!コイツこそ唯一無二のオレの相棒!一噴きで百里をカッ飛ぶ極上アクセル!熊百頭が行く手を阻もうと関係ねぇJETエンジン!まさに──まさにゴォォォォオルデンッ!こいつこそ足柄山にその(クマ)ありと謳われた伝説ッ!ハイパー・ウルトラ・デンジャラスマシン──ゴールデンベアー号、つーワケさぁ!」

 

ゴールデンベアー号……つまり、ゴールデンの幼少期である金太郎が友となった熊が……何故かアメリカンタイプのバイクになっていた。

 

「「「えー……」」」

 

どうして金太郎の熊がバイクになるのか訳がわからず、イリヤたちは冷めた目でゴールデンベアー号を見つめていた。

 

一方、遊馬は……。

 

「か……かっこいい!やばいぜ、ゴールデン!そのバイク、超かっこいいぜ!そのエンジン音から高スペックのバイクだってよく分かるぜ!」

 

「へへ、やっぱ分かるよな大将!このベアー号のモンスターっぷりがよぉ!」

 

一応バイクが乗れる遊馬は目をキラキラと輝かせてゴールデンベアー号を見惚れており、ゴールデンと意気投合していた。

 

「……ゴールデン、すまないが状況を見てくれないか?」

 

「OKOK、皆まで言うなアストラル。つーかなんだそりゃ、その鬼ども!何かのギャグか?能だけにノウってか!オレっちは鬼退治のプロだがよ、こんな絵に描いたようなマヌケ面、見た事ねえぞ!やべえ、とくに理由はねえのに面白ぇー!笑いすぎて死にそうだ!ギャハハハハ!」

 

ゴールデンからしたら、この鬼達は平安時代で跋扈していた鬼とは比べ物にならないほどの下等な存在らしく、大笑いしていた。

 

「Mr.ゴールデン!大爆笑している暇はありません!イリヤさんと美遊さんが鬼を一掃するのを手伝うべきでは!?」

 

「何……?イリヤと美遊が鬼を一掃だと……?はっ、サーヴァントとはいえ、可愛い子供達をあまり戦わせるわけにはいかねーな。下がっていろ、嬢ちゃん達。あとはオレに任せな」

 

イリヤ達が戦ってると知り、スイッチが入ったゴールデンはゴールデンベアー号のエンジンをフルスロットにする。

 

「大将!アストラル!マシュの嬢ちゃん!子供達!あとそこの小僧!見ていろよ、これが、バーサーカーからライダーへとクラスチェンジをしたオレの力だ!」

 

ゴールデンは最初に召喚された時のクラスはバーサーカーだったが、今回はライダークラスとして召喚されていた。

 

「疾風迅雷、電光石火、輝くボディはゴールデン!神馬一体、こいつがオレとベアー号!」

 

ゴールデンはゴールデンベアー号を再び走らせて鬼の大群に突撃する。

 

「OK、 振り落とされんなよ?そんじゃあカッ飛ばそうか!ベアーハウリング!」

 

ゴールデンベアー号から金色の閃光を纏い、まるで空を翔ぶ龍のように光り輝いて駆け抜ける。

 

「『黄金疾走(ゴールデンドライブ)』!」

 

爆走するモンスターマシンが、鬼の大群に突撃した次の瞬間には瞬く間に大量の鬼を轢殺していき、稲妻烈火を巻き上げて灰すら残さずに消滅させた。

 

「『夜狼死九(グッドナイト)』……!」

 

ゴールデンベアー号を停止させてカッコよく決めたゴールデン。

 

そして、大量にいた鬼を文字通りゴールデンベアー号で全て蹴散らしてしまった。

 

「すっげえ!流石だぜ、ゴールデン!」

 

「おう!オレ様にかかればこんなもんよ!」

 

遊馬とゴールデンは勝利のハイタッチを交わした。

 

周囲に鬼の気配は感じられず、とりあえずこの一帯の鬼は全滅させたので、一旦落ち着いて情報整理を行う。

 

「やはり……あれだけの鬼の大群にこの島の形。ここは……鬼ヶ島で間違いありません」

 

鬼ヶ島……日本昔話の桃太郎などで登場する鬼が住むとされる島。

 

一応日本には鬼ヶ島のモデルとなった島は複数あるが、それとは異なるここはまるで絵本やイメージにある鬼ヶ島そのものだった。

 

前回の羅生門の特異点と何か関係があるのかと考えながらも、遊馬達の目標はこの鬼ヶ島という名の特異点を解決する事と決まり、次に小太郎の話を聞く。

 

「はい。恩を受けましたので、お手伝いします」

 

小太郎は遊馬達に大きな恩を受けたことからサーヴァントとして契約を交わすコトを決めた。

 

「それじゃあ……よろしくな、小太郎!」

 

「はい、マスター!」

 

遊馬と小太郎は握手をして契約を交わし、小太郎のフェイトナンバーズが誕生する。

 

「大将、一応オレもクラスチェンジしたから再契約を頼むわ」

 

「ああ!ゴールデン!」

 

既にゴールデンは遊馬と契約しているが、クラスチェンジしたので念のために一応再契約を交わした。

 

元々あったゴールデンのバーサーカーのフェイトナンバーズからライダーとしてのフェイトナンバーズが誕生し、これで再契約が完了した。

 

「では、僕はまだ鬼がいないかどうか、他に何かあるかここ一帯を探ってみます」

 

「おう、オレも付き合うぜ。大将、確か遠くにいても話せる道具があったよな?それを貸してくれ」

 

「分かった。頼んだぜ、ゴールデン、小太郎」

 

遊馬はゴールデンにD・ゲイザーを渡し、ノリノリで左目に装着しながらゴールデンベアー号に跨る。

 

「いくぜ、ボーイ!ついて来れるかぁ!?」

 

「はい!全力でお供します!」

 

ゴールデンはゴールデンベアー号を走らせ、小太郎は忍者としての速い脚で走って付いていく。

 

二人が帰ってくるまで周囲を警戒しながら休憩を始めようとすると……休む間も無く新たな出会いが訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅーん……随分愉快な格好をしているのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、冷たい氷のような声が響いた。

 

全員が振り向くと崖の上にその声の主がいた。

 

その姿を見た瞬間、イリヤ達は自分の目を疑った。

 

「う、嘘……な、何で……!?」

 

特にイリヤは震えるほど驚いていた。

 

長い銀髪と美少女と言っても過言ではないドイツ系の血筋の整った顔……目の色は青色だが、そこにいたのは間違いなく……イリヤだった。

 

そのイリヤは不思議な民族衣装を着ており、その隣には大きな白熊が立っていた。

 

イリヤは白熊の背に乗って崖から飛び降りて無事に着地した。

 

「あなた……イリヤ……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンね?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「そっちの褐色の子は?」

 

「……私はクロエ。クロエ・フォン・アインツベルン。ここにいるイリヤの姉であり、半身みたいな存在よ」

 

(だから姉は私の方でしょ!?)

 

イリヤはそう叫びたかったがそんな事を言える雰囲気ではなかったのでグッと堪えた。

 

「姉、ねぇ……じゃあそっちの黒髪の子は?あなたが持っているステッキと似ている物を持っているけど」

 

「私は美遊・エーデルフェルト。イリヤの親友……」

 

クロエと美遊がそれぞれ自己紹介をすると、もう一人のイリヤは体を微弱に震わせながら自身も名乗る。

 

「私は……イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。でも、今の私は擬似サーヴァント。真名は『シトナイ』。クラスは『アルターエゴ』よ」

 

「シトナイ?」

 

「シトナイはアイヌの伝承における少女だ。村を襲う大蛇に自分が生贄として捧げられたが、猟犬と共に返り討ちにしたと言われている……」

 

「ですが、アルターエゴと言うクラスなんて聞いたことがありません。まさか、ルーラーやアヴェンジャーと同じエクストラクラス……!?」

 

アストラルの説明とマシュの驚きで一同に更なる緊張感が走る。

 

新たなエクストラクラスのサーヴァントが登場し、驚愕する中……シトナイは腰に身に付けた山刀『マキリ』を引き抜いて構える。

 

シトナイはイリヤを睨みつけて地を蹴り、マキリを振り下ろす。

 

突然襲われて驚いたがイリヤはルビーの柄でマキリを受け止める。

 

「ちょっと!?い、いきなり何をするの!?」

 

「気に入らない……気に入らないわ。私が手に入らなかったもの……姉妹と友達を持っているあなたを!!」

 

シトナイは自分が持っていないもの……手に入らなかったものを平然と持っているイリヤに嫉妬をして襲いかかった。

 

「それに、気持ち悪いわ!私と同じはずなのに、全く違うあなたを!」

 

「──っ!?だからって、だからってそんな身勝手な理由で襲わないでください!」

 

イリヤはシトナイを弾き返して自分もルビーを振るって魔力弾を放って傷つけない程度の軽い攻撃する。

 

「私は、少し前までは自分が普通の女の子だと思っていたから……でも、自分が聖杯の器で、ホムンクルスだとママから教えられてショックだった。もしかしたら、あなたは私の想像を絶する辛い人生を送って来たのかもしれません……あなたから見れば私の存在がおかしいのかもしれない。だけど、私は私、あなたはあなたです!あなたの人生にも輝くほどの大切なものはないんですか!?」

 

イリヤは強い意志を込めた瞳でシトナイを見つめる。

 

シトナイはイリヤの言葉にハッと気付いた。

 

シトナイの人生にももちろん大切なものがある。

 

それは掛け替えのない大切なものであり、イリヤの人生では手に入らないものである。

 

「それでも……それでも私は!!」

 

シトナイはマキリを鞘に納めて氷の弓を作り出して氷の矢を番える。

 

イリヤはルビーを構えて物理保護を展開し、美遊とクロエも動こうとしたその時……針金で出来た小鳥が現れてイリヤとシトナイの間に割り込んだ。

 

「えっ!?何これ!?」

 

「これは……シュトルヒリッター!?」

 

その針金の小鳥は魔術の一種、錬金術で作られたものでシトナイはそれが何なのかよく知っている。

 

そして、二人に向かって静かな足音が響き、優しい声が広がる。

 

「ごめんなさい……本来なら来ちゃいけないんだけど、オルガマリーに無理を言って送ってもらったの」

 

「ええっ……!?」

 

「う、うそ……そんな……!?」

 

イリヤとシトナイはその人物の登場に驚いた。

 

特にシトナイは信じられないと言った様子で驚いて両目に涙が浮かんでいた。

 

「マ、ママァ!?」

 

「ええ、アイリママよ。イリヤちゃん」

 

それはカルデアにいるはずのアイリだった。

 

つい先ほどデッキケースが開いてアイリのフェイトナンバーズが届き、カルデアからの連絡を受けて遊馬はすぐにアイリを召喚したのだ。

 

アイリは母としての慈愛の笑みを浮かべながらイリヤとシトナイに近づく。

 

アイリは唖然としているイリヤの頭を軽く撫でるとシトナイに向けて両腕を大きく開いた。

 

「イリヤ……会いたかったわ。私のイリヤ」

 

「う、うそよ……だって、だって、お母様はずっと前に……!」

 

「この私は確かに別の世界の存在だけど……私は生まれてから第四次聖杯戦争で命を落とした時の全ての記憶を持つ天の杯。あなたの母……アイリスフィール・フォン・アインツベルンよ」

 

「あっ、あっ、ああっ……!」

 

シトナイは体が震え、大粒の涙を流しながら走り出す。

 

「お、お母様……お母様ぁ!わぁああああん!お母様ぁ〜〜!!」

 

そして、両腕を広げたアイリの胸に飛び込み、大泣きしながら抱きついた。

 

「イリヤ……私のイリヤ……会いたかったわ……この時を、ずっとずっと待っていたわ……」

 

アイリも涙を流し、もう二度と離さないと言わんばかりに、シトナイを強く……強く抱きしめた。

 

もう二度と会うことの叶わない母と娘の親子の奇跡の再会……その光景に遊馬達も小さな涙を流す。

 

 

アイリと再会したことでイリヤへの怒りと憎しみはすっかり落ち着いたシトナイは遊馬達からカルデアの話を聞く。

 

「カルデアか……そっか、そこにお母様がいるんだね」

 

「そうよ。今回は来る予定はなかったんだけど、イリヤが召喚されて……カルデアの所長のオルガマリーに無理を言ってこっちに送ってもらったのよ」

 

今回の特異点ではイリヤ達の経験と実戦と見極めの為でもあったが、シトナイ……イリヤにどうしても会いたかったアイリは土下座する勢いで頼み込み、流石のオルガマリーも折れて送り出したのだ。

 

「ねえ、イリヤ。カルデアにはね……なんとキリツグもいるのよ!」

 

「……ええっ!?キ、キリツグもいるの!?」

 

アイリだけでなく父親であるキリツグもいると知って更に驚くシトナイ。

 

「そうよ。会いたい?会いたければマスターとオルガマリーに頼めばすぐにでも──」

 

「嫌だ!!」

 

シトナイは自分の父……キリツグに会うのを即答で拒否した。

 

まさかの即答の拒否にみんなが驚く中、アイリは困惑しながらその理由を尋ねる。

 

「えっ!?ど、どうして?キリツグに……あなたのお父さんに会いたくないの?」

 

「キリツグは……私を捨てた、帰って来なかった、約束を破った……そんな人は私の父じゃない!会いたくもない、大嫌いよ!!」

 

シトナイは涙目を再び浮かべて、その瞳の奥には憎しみが宿っており、はっきりと大嫌いと告げた。

 

イリヤとクロエは自分の父親をここまで憎んでいるのには何か大きな理由があると察するが、イリヤとクロエ自身は自分の父親がどんな人物なのかは全ては知らない。

 

自分の知っている父親は滅多に帰って来ないけど、それでも自分を大切にしてくれて娘として愛してくれている、それは確かだ。

 

カルデアにいるキリツグも並行世界の存在である自分を大切に想っている。

 

きっと何か大きな勘違いや食い違いがあるのだと思う……イリヤはシトナイとキリツグの仲をなんとかしたいと強く思うのだった。

 

「イリヤ……」

 

「お母様。私は二度と会えないと思っていたあなたに会えただけでとても嬉しいわ。これ以上の幸せは望まないわ。それと、私の事はイリヤじゃなくてシトナイって呼んで。そうじゃないと、そっちの私と混合しちゃうでしょ?それにシトナイの名前も気に入ってるからね」

 

「そうなの……?分かったわ、イリヤ……いえ、シトナイ」

 

「うん!」

 

シトナイとアイリはもう一度抱きしめ合い、話がひと段落したところでイリヤ達が挨拶をする。

 

「えっと、その……色々あったけど、よろしくね。シトナイさん!」

 

「よろしくお願いします、シトナイさん」

 

「とりあえずよろしくね〜」

 

「……ええ、よろしく。イリヤ、ミユ、クロエ……」

 

まだイリヤ達のことを認めてないが、最愛の母と再会して気持ちが落ち着いたシトナイはとりあえず挨拶だけした。

 

「どうもどうも〜。私、イリヤさんの相棒、カレイドルビーちゃんでーす!並行世界のイリヤさんことシトナイさん、よろしくお願いしまーす!」

 

「私は妹のカレイドサファイアです。どうぞよろしくお願いします、シトナイ様」

 

「随分話が出来る魔術礼装ね……えっと、それから……マシュとフォウ。そして……ユウマとアストラル……あなたたちがマスターなのね?」

 

「ああ。よろしくな、シトナイちゃん」

 

「ちゃんはやめて。呼び捨てでいいわ。それにしても……ふーん。ねえ、あなたの魔術回路は?どんな魔術が使えるの?」

 

「魔術回路?そんなもんはねえよ」

 

「魔術回路が無い?馬鹿言わないで。それでどうやってサーヴァントと契約して魔力を与えているのよ?」

 

「ああ、それならこれこれ。アストラル」

 

「承知した」

 

遊馬は未来皇ホープとマシュのフェイトナンバーズ、アストラルは希望皇ホープのカードを取り出してシトナイに見せる。

 

「カード……?」

 

「ナンバーズとフェイトナンバーズ。俺たちの絆の証だ」

 

「君は生粋の魔術師らしいな。それでは軽く、私たちのことも説明しよう」

 

遊馬とアストラルはシトナイに自分たちが異世界から来たこと、デュエルモンスターズとナンバーズとフェイトナンバーズの関係などを簡潔に話した。

 

「異世界のマスターね……面白そうじゃない。でも、まだあなたとは契約するつもりはないから。あなたのことを……じっくりと見極めさせてもらうわ」

 

「ああ、それで構わないぜ。ところでさ、シトナイ。あの白熊は……何?」

 

遊馬が気になったのは海で狩をして魚を取っているシトナイが乗っていた白熊だった。

 

「あの子は私の宝具で使い魔よ。名前はシロウって言うの!」

 

「シロウって……まさか、お兄ちゃんじゃないよね……?」

 

よく見ると何処となく白熊……シロウの眉毛が衛宮士郎に似ており、イリヤは血の気を引きながら恐る恐る聞いた。

 

するとシトナイはニヤリと小悪魔の笑みを浮かべて口を開く。

 

「さぁ……?それはどうかしらね……?」

 

「ちょっとぉ!?」

 

もちろん冗談なのだが、早速シトナイの小悪魔な性格に弄られるイリヤだった。

 

それから少しして偵察から小太郎が戻ってきた。

 

「マスター。ただいま戻りました。それと……」

 

小太郎は何か言いにくそうな態度を取り、どうしたんだと遊馬達は疑問符を頭に浮かべた。

 

「実は……はぐれサーヴァントを一人見つけて……一緒に来てもらいました」

 

「はぐれサーヴァント?何処だ?」

 

「──此処にいます」

 

突如、遊馬達の前に一つの影が一瞬で降り立った。

 

「どわっ!?えっ、だ、誰?」

 

現れたのは……綺麗な黒髪に金色の瞳を持ち、美遊の魔法少女の衣装に近い少々露出度の高い衣装に身を包んだ女性だった。

 

「お初にお目にかかれます。ワタシは……加藤段蔵と申します」

 

加藤段蔵。

 

戦国時代末期に活躍した風魔の流れを汲む忍者。

 

しかし、その体は……。

 

「機械の……腕?」

 

段蔵の両腕が人のものではなく、精巧に作られた機械の腕だったのだ。

 

そして、段蔵の口から衝撃的な事実が話される。

 

「はい。ワタシは人ではなく……からくり人形です」

 

『『『……はぁ!??』』』

 

人ではなくからくり人形と言う事実に遊馬達は驚愕するのだった。

 

小太郎は段蔵を見つめながら複雑そうな表情を浮かべ、長い前髪から僅かに見える赤い瞳に深い悲しみを宿していた。

 

「母上……」

 

そして、誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。

 

 

一方、その頃のカルデアでは……。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!」

 

「落ち着くんだ、じいさん!今すぐ銃を手放せ!!」

 

「起源弾はやめなさい!起源弾は!そんな事をしても自分が苦しむだけです!何も解決しません!」

 

「離してくれぇえええええっ!イリヤに……イリヤに嫌われた僕には生きる資格は無いんだぁあああああっ!!」

 

モニタリングをしている管制室ではとんでもない修羅場が起きていた。

 

特異点にいるシトナイ……イリヤに大嫌いと言われて拒絶されたキリツグはあまりのショックに絶望してしまい、自分の体に起源弾を撃ち込んで苦しみながら死のうとしていた。

 

こう見えてもキリツグはイリヤに対して子煩悩であり、親バカである。

 

イリヤが生まれた時から誰より愛おしい、世界を滅ぼしても守りたいと思うほど大切に想っていた。

 

流石に死なせるわけにはいかないのでエミヤとアルトリアが必死に止めている。

 

「そこはちゃんと話し合えば良いだろう!?じいさんがどれだけイリヤを大切に想っているか伝えるんだ!」

 

「そうです!私もモードレッドと話し合ってそれなりの親子関係になれたのですからキリツグも大丈夫です!」

 

「うぁあああああっ……イリヤァ……イリヤァ……!!」

 

キリツグは二人に説得されて何とか銃を手放したがその場に崩れ落ちて涙を溢す。

 

モニターを見ながらイシュタルとパールヴァティーは並行世界ではなく自分達の知っているイリヤが擬似サーヴァントになって召喚された現状に薄々あり得るかもと思っていたが、まさか現実になることに驚いていた。

 

「それにしても、こっちのイリヤまで来るなんてね……もう第五次聖杯戦争関係者の擬似サーヴァント化が凄いわよ」

 

「そうですね……特に先輩の家に集まっていた私達が選ばれるのは不思議な縁を感じますね」

 

「士郎の家か……ん?ちょっと待って」

 

「どうしましたか?姉さん」

 

イシュタルはパールヴァティーの言葉にとある人物の事を思い出した。

 

「ねえ、士郎の家に普段からいる人……”もう一人”いない?」

 

「えっ?”もう一人”……ああっ!?」

 

それはエミヤ達にとって共に同じ時間を過ごして来た大切な人でもあり、恩師でもある人だった。

 

「いや、でも、”あの人”は直接聖杯戦争に関係ない一般人だからあり得ないわよね〜」

 

「そうですよ。実家はちょっとアレですけど、本人は剣道が強いだけのただの英語の先生ですよ?魔術の魔の字も関係ないから流石に来ませんよ」

 

「そうよね。あははははっ!」

 

「もう姉さんたら!ふふふふふっ!」

 

その恩師は魔術師でもなければ聖杯戦争に全く関係のない一般人同然の人物なのであり得ないと二人揃って笑っていた。

 

しかし……笑い話となったイシュタルのこの想像が後に現実になることを今はまだ知らなかった。

 

しかも、とんでもない神霊に選ばれて、とんでもない力を手に入れて大暴れすることになるとは……今はまだ知らない。

 

 

 




早い展開ですがシトナイちゃんとアイリさんを再会させました。
キリツグさんは……マジでドンマイです。
仕方ないよね、プリヤ軸と違ってそれだけのことをやらかしたんだから。
そして、小太郎君と段蔵ちゃんもまさかの再会です。
段蔵ちゃんは本来なら英霊剣豪七番勝負で登場しますが、今回の鬼ヶ島のテーマを個人的に『母と子』にしたかったので、小太郎君のお母さんを登場させました。
FGOの親子でこの二人はかなり好きなので幸せになってもらいたい気持ちを込めました。

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