Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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言い忘れていましたが、今回の鬼ヶ島編は牛若丸と弁慶は登場しません。
あまりキャラが多くなるのも大変なのと、二人は第七章のバビロニア編で登場するので今回の登場は無しにしました。

FGOのレクイエムイベントですが、やって思ったことは……これ、闇のゲームじゃね?でした。
是非ともゲームの天才&闇のゲームの番人の遊戯さんやアテムさんをお呼びしたいなと思っちゃいました(笑)


ナンバーズ150 鬼殺しの女武者

鬼ヶ島で小太郎が連れてきた加藤段蔵……しかし、その正体は人間そっくりに作られたからくり人形だったのだ。

 

加藤段蔵は謎に包まれている忍者であったが、その正体を小太郎は静かに語り始めた。

 

「は……いえ、加藤段蔵殿は果心居士と初代の風魔小太郎が作った女忍者形のからくり人間なのです」

 

「かしんこじ……?」

 

「果心居士とは戦国時代に存在した謎の法師だ。妖術師とも言われている」

 

「でも、とても機械とは思えぬほど人間に見えますね……」

 

見れば見るほどとてもからくり人形とは思えない人間に近い見た目をした段蔵にマシュだけでなくその他のみんなも驚きを隠せない。

 

「……あなたが、マスターですか?」

 

「あ、ああ。九十九遊馬だ。それで、段蔵さん。ゴールデンと小太郎と一緒に来たってことは、一緒に戦ってくれるのか?」

 

「はい。からくり人形ですが、私も風魔の忍です。五代目頭目の風魔小太郎殿が契約したマスターならば、私もお供します」

 

「ありがとう!それじゃあよろしくな」

 

「はい」

 

段蔵は同じ風魔忍者の小太郎がいるので信頼できると遊馬と契約して新たなフェイトナンバーズが誕生した。

 

それから遊馬達は小太郎が集めてきた情報を纏める。

 

この鬼ヶ島には鬼と人が集まっている場所があり、そこでは鬼が人を無理やり働かせる強制労働所のようなものだった。

 

捕まっている人々は目的は不明だが地面を掘ったり、土や丸太を運んでいた。

 

捕まっている人々を助けようにも鬼の数が多く、更には何ヶ所も同じようなものがあるので全てを助けるのは難しい。

 

そして、どうやら最奥部の頂上にこの鬼ヶ島の元凶が存在するようだった。

 

しかし、頂上に向かう道には三つの大門を開かなければならず、迂回も不可能で開くには門番らしい特殊な大鬼が持つ鍵が無ければ開かない。

 

更には鬼達は恐ろしい用心棒を雇っているらしく、一筋縄ではいかないようだ。

 

試しに遊馬はかっとび遊馬号を使おうと提案したが、鬼ヶ島と言う特殊な特異点の空間が不安定で上手く動かせないことが分かったので諦めて徒歩で向かうことになった。

 

ゴールデンが先に最初の大門の近くで見張っているので合流する為に小太郎が先導して向かう。

 

ちなみに……。

 

「ちょっと、あなたもちゃんと歩きなさいよ」

 

「えー、だってシロウは私の宝具なんだから良いじゃない」

 

「ガオ」

 

シトナイはシロウに乗って自分一人だけのんびりと山登りをしており、クロエは不満を漏らした。

 

すると、前髪に隠れた小太郎の瞳が光るとその場に伏せた。

 

「──しっ。皆さん、伏せてください」

 

忍者として気配に敏感な小太郎が静かにそう言うと遊馬達もすぐに口を閉じてその場に伏せた。

 

岩陰に隠れて小太郎が見つけた気配の先を見ると、そこにいたのは数体の鬼だった。

 

人語を話せる鬼で労働所から来たようで、中間管理職のような役割を担っているのか人間の弱さや脆さを愚痴にしてこぼしていた。

 

しかし、その中で許さない事を口にした。

 

鬼の一体は老人の首を撥ねて肝を取り出して弁当として持って来たのだ。

 

「許せねえ……」

 

「落ち着いてください、マスター。まだ伏兵が潜んでいる可能性があります。下手に出ない方が良いです」

 

遊馬は鬼に対して怒りを露わにしながら原初の火の柄に手を掛けてすぐにでも飛び出そうとしたが、小太郎が押さえ込む。

 

すると、アストラルは近付いてくるもう一つの気配に気がついた。

 

「これは……サーヴァントの気配……?ゴールデンのじゃないな……」

 

それはサーヴァントの気配でゴールデンとは別の者が近付いていた。

 

「何をしているのです、アナタたちは」

 

現れたのは刀と弓を携え、鎧を着た雅で清潔、そして……艶やかな妙齢の女性だった。

 

女性は鬼に対して怒りを露にしており、殺気を込めた瞳で睨み付けていた。

 

「……罪のない老人を、何の理由もなく殺める……やはり、心底から外道なのですね」

 

女性の登場に鬼達は驚愕し、そこから恐怖で震え上がった。

 

「一刀曇りなし。されど天雷が如く奔り、雪華が如く耀き、白雨が如く慈悲を与えん」

 

女性は弓を消すと代わりに腰に刺した刀を抜いて構える。

 

「──誅伐執行。激痛を孕みながら死になさい」

 

振り下ろした刀が鬼の堅い肉をまるで豆腐のように簡単に切り落とし、次々と鬼を斬り殺していく。

 

「俺たちも行くぞ!」

 

遊馬達は女性──女武者に加勢しに向かう。

 

しかし、結果として遊馬達の助けはほとんどいらなかった。

 

女武者は鬼と戦い慣れているのか全く疲れを見せずにまるで舞をしているかのように華麗に鬼を斬り殺していき、あっという間にこの場にいた鬼を全滅させた。

 

鬼の血で塗られた刀を軽く振って血を振り払うとそのまま鞘に納め、女武者は遊馬達に笑みを浮かべた。

 

「ご尽力感謝いたします、名も知れぬ異邦の方々。珍しい出で立ちですが、どうやってこの島に?港に船が来るのはまだ先の筈ですが……あら?」

 

頼光は遊馬達の中で一番異質な存在を見つけると笑顔が消えて眼を細めた。

 

「……鬼ではありませんが、見たことのない異形がいますね……?」

 

女武者はアストラルに視線を向けると同時に殺気を放った。

 

どうやら女武者は鬼などの異形の存在に対してとても敏感であり、それに気付いた遊馬はアストラルの前に立ち、原初の火を抜いてホープ剣を作り出して構えた。

 

遊馬が立ち塞がり、女武者は冷たい刃のような言葉で尋ねる。

 

「……童よ、何故その異形を庇うのですか?」

 

「アストラルはさっきの鬼みたいに人を襲ったり喰らったりしない!俺と一緒に世界を救うために命がけで戦ってる、俺の半身で、大切な相棒だ!!」

 

遊馬の純粋で真っ直ぐな言葉に面を食らった女武者は目をぱちくりさせた。

 

そして、女武者は遊馬の眼を見つめた。

 

その眼に宿る強い意志と光……それを見極めた女武者は静かに刀から手を離した。

 

「……童、あなたの言葉を信じましょう。確かにその異形からは鬼のような悪しき力も、悪しき心も感じません」

 

「お、おう……」

 

「童、あなたの名は?」

 

「俺の名前は九十九遊馬だ!」

 

「九十九、遊馬……良い名前ですね」

 

女武者は遊馬の名前を覚えると、次はイリヤ達に目線を向けた。

 

「まあまあ、とても可愛らしいお嬢さん達ですね。もしかして、三人共……あなたのお子さん?」

 

イリヤとクロエとシトナイがアイリにとても似ているので、全員アイリが産んだ子だと思った。

 

確かにイリヤ達はアイリが産んだ娘なのは間違い無いが、並行世界や異世界など色々とややこしい事情があるのでどう説明しようか悩んでいると……。

 

「ええ、もちろん♪」

 

「わぷっ!?」

 

「むぐっ!?」

 

「ふにゅ!?」

 

アイリはイリヤとクロエとシトナイの三人を器用に抱き寄せてギュッと抱きしめた。

 

「この子達はみーんな、私の可愛い愛娘たちよ♪」

 

アイリは三人の愛娘を抱きしめながら愛おしそうに頬擦りをしていく。

 

「マ、ママ!?ちょっとやめて?!」

 

「く、苦しいし、暑いわよ!?」

 

「お、お母様……流石に恥ずかしいわ……」

 

流石に人前でこんな風に母親にハグをされてイリヤ達は恥ずかしくなって抜け出そうとするが、アイリはそう簡単に逃さないと抱きしめる力を強くする。

 

「そうだわ、ミユちゃんも来なさい」

 

「えっ?」

 

「そうね……とっても可愛くていい子だし、シロウがキリツグの養子だから、私の養子も良いわね〜」

 

アイリの提案で美遊の養子話が突然飛び込んできた。

 

「ミ、ミユが養子……!?だ、だったら、是非とも私の妹で!」

 

「ミユが私の妹……良いわね、それ!ミユ、これから妹ボイスで私をお姉ちゃんって呼んで!」

 

スイッチが入って暴走しかけるイリヤとクロエ。

 

「ま、待って!?なんで私が妹!?そ、それも確かに良いけど……」

 

そして、二人の妹に妄想が膨らんでいく美遊。

 

「ちょっと……本当にイリヤとクロエは並行世界の私?何か私よりも色々とぶっ飛んでない?大丈夫なのこの子達?」

 

シトナイはイリヤとクロエが幾ら人生と育ち方が違うと言え、ここまで性格がぶっ飛んでいるのかと悩んで頭痛が走ってきた。

 

その光景に女武者は微笑ましく見ていたが、その瞳にはどこか悲しく、どこか寂しさが宿っていた。

 

「それでは、私はこれにて失礼します。親娘いつまでも、仲良くいてくださいね……」

 

女武者はアインツベルン親娘にそう言い残すとその場を後にする。

 

追いかけようと思ったが、誰もがこの場から動くことは出来なかった。

 

「何か、怖い姉ちゃんだったな……」

 

「あのサーヴァント、何者だ?鬼を斬った女武者だけの情報しかないからな……」

 

鬼殺し、女武者……これだけでは情報が少なすぎるので真名の判明は出来ない。

 

「不思議な雰囲気の女性でしたね。包容力があるといいますか、母性的と言いますか」

 

「あら?包容力と母性なら4人の娘と1人の息子を持つ私は負けないわよ!」

 

「ママ、そこは張り合わなくて良いからね……」

 

女武者の包容力と母性に張り合おうとするアイリにイリヤがツッコミを入れる。

 

サーヴァントならその内また会えるだろうと思い、遊馬達は心を切り替えて引き続き山道を歩いていく。

 

しばらくすると見事な装飾で飾られた怪しげな大門が見えてきて、その近くにゴールデンがいた。

 

「よう。待ってたぜ、大将」

 

「悪い、ゴールデン。遅れたぜ」

 

「おうよ、遅いからもう少しでベアー号で迎えに行こうと思ってたぜ。何があったのか?」

 

「実はさっき、女武者のサーヴァントと会って鬼退治をしていたんだ」

 

「身長は約175cm。紫に近い長い黒髪で、紫を基調とした服装をしていた包容力と母性の雰囲気がある女性だ」

 

「──あ?」

 

アストラルが女武者の特徴を詳しく説明すると、ゴールデンは一瞬自分の耳を疑うように固まった。

 

「……どういう事だ、そりゃあ。いや、まさかな……」

 

ゴールデンは女武者に何か心当たりがあるようだったがまさかなとその考えを捨てた。

 

「ゴールデン?」

 

「ああ、いや、なんでもねえ。それより、あの大門に大きな鬼と用心棒がいるぜ」

 

「よーし、早速本格的な鬼退治の始まりだな!」

 

気合いを入れて遊馬達は第一の大門に向かったが……。

 

「……あー」

 

「「小次郎か!?」」

 

鬼が雇った用心棒がまさかの小次郎で遊馬とアストラルは同時にツッコミを入れた。

 

小次郎の側には大刀を持った緑色の大鬼が立っていた。

 

「少しばかり話をしていいだろうか。ちと、尋ねたい事がある」

 

「……何?」

 

「我が秘剣の煌めきを請われ、鬼共の用心棒として──『ツバメもキジも鳥だからだいたい一緒だろう』という闇鍋的思考、否、大胆な考察により、キジ絶対殺すマンとして、嘴から光線を吐く魔鳥を討つために星一つで雇われた身なのだが」

 

「キジが光線なんか吐くわけねえだろ!?」

 

「日本の国鳥がそんなモンスターだったら日本は色々と終わっているぞ!?」

 

ツバメを斬ると言う強い思いが変な風に暴走した小次郎に対して頭痛が響く遊馬とアストラルだった。

 

「ああもう、なんか心配して損したぜ!小次郎、カルデアに戻ったらマルタの姉御とメディアに説教してもらうからな!」

 

「ま、待て!あの鉄拳聖女と魔女だけは勘弁してくれ!拙者はただキジを斬りたいだけなのだ!そ、そうだ……そこの赤毛の少年!お主は初めてみる顔だな……何者だ!?もし良ければせめて手合わせを所望する!」

 

「……あ、僕は風魔小太郎です。キジではないですけど、えっと、分身と土雷の術とかなら、なんとか……」

 

「なに?風魔小太郎……?伊賀、甲賀、の次に来るあの風魔忍群か?ほほう、それは失礼した。風魔の頭領が相手であれば溜飲も下がると言うもの。名前も良いしな。小太郎。小次郎。これは甲乙付けがたい名勝負の末、友情が芽生え──」

 

「芽生えません。僕は今から小次郎絶対殺すマンとなりました」

 

突如、小太郎の雰囲気がガラリと変わって表情が怒りに満ち溢れていた。

 

「何故だ!?同じ日本人枠ではござらんか!?」

 

「お黙りなさい。無気力な僕ですが、許せないものが三つあります。一つ、武器の手入れをおろそかにする同業者。一つ、宅配してくれる商人を追い返す手下達。そして最後が──我ら風魔を伊賀者と甲賀者の後に格付けする者です!貴殿は今、僕の禁域に踏み込んだ!風魔忍群五代目頭領として、その珍しい刀を貰い受ける!」

 

「小太郎殿、私もお供します!風魔忍群を格下と見られて黙っているわけにはいきません」

 

「いいえ、段蔵殿。ここは僕にやらせてください。風魔忍群五代目頭領の名にかけて、必ずあの男を叩き潰します!」

 

段蔵も参戦しようとしたが小太郎の怒りとやる気が既にマックスなので、段蔵はそれに従って下がる。

 

「小太郎……その事を気にしていたんだな……」

 

「こればっかりは仕方ないな……」

 

確かに日本では風魔よりも忍者としては伊賀や甲賀の方が知名度が高いのは事実だ。

 

「俺は風魔は好きだけどな。ほら、風魔って伊賀や甲賀に比べて名前とかカッコいいし」

 

「名前の問題なのか!?」

 

「マスター!そう言っていただけて嬉しいです。今度風魔について段蔵殿と一緒に御教授しますよ!」

 

「ああ!楽しみだぜ!」

 

話がひとまず終わると、小次郎は先ほどの失言の詫びとして忠告した。

 

隣にいる大鬼の名は風越丸。

 

鬼の王曰く『速さ』の化身で『速さ』では決して勝てぬらしい。

 

「さて……鬼はともかく、小次郎は他のサーヴァントと違って宝具と呼ばれるものは存在しないが、宝具に匹敵する神秘を兼ね備えた最高の剣技……『燕返し』がある。燕返しを突破出来る方法……」

 

燕返しは小次郎が一生をかけて生み出した剣技であり、小次郎自身の剣技はアルトリアや武蔵に匹敵する。

 

剣の腕だけで言えばカルデア内のサーヴァントでも上位に入るほどの腕前……まともに戦えばそう簡単に勝つことは出来ない。

 

「剣をすり抜けてダイレクトアタックで直接小次郎にダメージを与えれば良いんだけどな……」

 

遊馬の言葉にアストラルはハッと気付いてこの状況を打破する唯一のナンバーズを思い付く。

 

「剣をすり抜けて、ダイレクトアタック……?そうか、その手があったか!遊馬、君のお陰で必勝法が見つかったぞ!」

 

「えっ!?本当か!?」

 

「ああ。勝負は一瞬で決まる……小次郎の剣技と風越丸の速さが来る前に決着を着ける。小太郎、いつでも動けるように準備を」

 

「わ、分かりました!」

 

「遊馬!このナンバーズだ!」

 

アストラルはまだ使用したことのない癖のあるナンバーズを遊馬に渡す。

 

「こいつは……?へぇー、こう言う効果のナンバーズか。面白いぜ!」

 

「小太郎、君の切り札……宝具で小次郎と鬼を同時に倒せるか?」

 

「一度にですか?ええ、もちろん行けますよ」

 

「俺たちで小太郎を小次郎と鬼の間合いに一瞬で送り込む。そしたら、宝具で一気に決めてくれ!俺のターン、ドロー!魔法カード『オノマト連携』!手札を1枚墓地に送り、デッキからオノマトモンスターを手札に加える!デッキから『希望皇オノマトピア』と『ドドドドライバー』を手札に加える!」

 

小太郎にはすぐに動けるよう待機してもらい、遊馬も手札とフィールドを整えていく。

 

「そして、希望皇オノマトピアを召喚!オノマトピアの効果!1ターンに1度、オノマトモンスターを手札から守備表示で特殊召喚出来る!手札からドドドドライバーを特殊召喚!この瞬間、ドドドドライバーの効果発動!このカードがドドドモンスターの効果で特殊召喚されたターンにドドドモンスターのレベルを1つ上げるか下げることができる!」

 

「オノマトピアはドドドモンスターとしても扱うのでこの効果は適用される!」

 

オノマトピアとドドドドライバーが並び、ドドドドライバーの効果で2体のレベルを変化させる。

 

「オノマトピアとドドドドライバーのレベルを1つずつ下げ、レベルは3となる!レベル3のオノマトピアとドドドドライバーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

レベル3となったオノマトピアとドドドドライバーが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「異次元への道、果てなき旅路の先……今こそ、終焉の地へと導け!現れろ!『No.26 次元孔路オクトバイパス』!」

 

光の爆発と共に現れたのは機械の体を持つ大きなタコで右頭部に『26』の刻印が刻まれている。

 

「オクトバイパスの効果!自分・相手のバトルフェイズ開始時に、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、このバトルフェイズ中にモンスター1体でしか攻撃出来ない!」

 

オクトバイパスがオーバーレイ・ユニットを体内に取り込み、8本の脚を開いて内側を見せると……そこには異次元への孔路が開かれていた。

 

「しかし、そのモンスターの攻撃は直接攻撃になる!!」

 

「小太郎!オクトバイパスの内側に飛び込め!!」

 

「承知!マスター……あなたを信じます!」

 

小太郎は未知なる領域であるオクトバイパスの異次元の孔路に飛び込んだ。

 

小次郎と風越丸は小太郎がどこに消えたと周囲を見渡したが気配を感じられなかった。

 

すると、二人の背後の空間が大きく歪み、その中から小太郎が現れた。

 

「馬鹿な!?拙者の間合いに!?」

 

「素晴らしい……まさかこれほどの力をお持ちとは……どうやら僕は凄いマスターに出会えたようだ」

 

小太郎は遊馬とアストラルのマスターとして申し分ない力を持ち、感動しながらも目の前の敵を倒す為に全力を尽くす。

 

「即ち此処は阿鼻叫喚……」

 

小太郎の周囲に苦無を両手に持った黒い装束を身に纏った忍者が大量に現れた。

 

それは第五代目頭目である小太郎の部下二百人を霊体であり、小太郎はそれを自身の宝具として召喚したのだ。

 

小次郎が長刀・物干し竿で斬り伏せようとし、風越丸は大刀を振り下ろそうとしたが……既に勝負はついていた。

 

二百人の霊体はまるで機械のように一斉に正確に小次郎と風越丸の周囲を高速で駆け抜けると、灼熱の炎が激しく燃え上がった。

 

やがてそれは巨大な炎の竜巻となり、敵である小次郎と風越丸を阿鼻叫喚の地獄に叩き込む。

 

「大炎熱地獄!『不滅の混沌旅団(イモータル・カオス・ブリゲイド)』!!!」

 

「ぐわぁあああああっ!?」

 

小次郎は炎を防ぐ方法が無く全身に熱のダメージが与えられ、風越丸は焼き尽くされて消滅する。

 

「くっ……見事……」

 

炎のダメージを負った小次郎はその場に倒れて動けずにいた。

 

「待ってて、すぐに治療するわ」

 

アイリは治癒魔術を使って小次郎を治癒する。

 

小太郎は小次郎に対して宝具の威力を抑えていたのでそこまでダメージは大きくないので、治療はすぐに終わった。

 

「ううっ……アイリ殿、かたじけない」

 

「ええ。じゃあカルデアに戻りなさい。もう満足したでしょ?」

 

有無を言わせない母の笑みに小次郎は頷くしかできなかった。

 

「……そうだな。すまない、マスター。佐々木小次郎、これよりカルデアに帰還する」

 

「ああ。先に戻ってくれ、小次郎」

 

小次郎をフェイトナンバーズに入れてカルデアに戻し、倒した風越丸から鍵を抜いて最初の大門の扉を開ける。

 

「よしっ!第一の扉をクリアだ!」

 

「まだ先は長いな。最初の用心棒が小次郎だとするともしかしたら他の用心棒は……」

 

「そうだよな……出来るだけ戦わずに済むことを考えないとな」

 

カルデアから消えたサーヴァントの数人がこの先の大門の用心棒になっている可能性が高い。

 

今回は小次郎が小太郎の逆鱗に触れてしまったために仕方なく倒したが、今後は出来るだけ戦闘は避けたいと遊馬は思う。

 

「小太郎殿!」

 

「だ、段蔵殿……?」

 

「見事な宝具でした。風魔の忍と共に地獄の炎を巻き上げて敵を倒す様はとても立派でしたよ!」

 

「ありがとうございます、段蔵殿……」

 

段蔵は小太郎の活躍に何故か自分のことのように喜び、褒められた小太郎は嬉しそうに笑みを浮かべたが、どこか複雑な表情もしていた。

 

 

大門の扉を開け、奥に進むと鬼ヶ島で働かされている人たちの集落を見つけた。

 

しかし、集落といってもスラム街的なもので、必要最低限の文化レベルしか維持ができていないものだった。

 

救出したいがあまりにも人数が多く、鬼に連れ戻されるのがオチなので一刻も早く鬼ヶ島の元凶を倒すのが一番だと考えた。

 

集落の外れに小さな空き家があり、鬼ヶ島に来てから連戦続きで食事もまだしてないので休憩と食事を取ることにした。

 

「オレさ、これでも武家大将の家で育てられたからさ、朝は何もしてねえと凄ぇ膳を出されるんだよ。オレゃあ、あれがちょい苦手でな。行儀良く朝飯を食うとかナーバス過ぎるぜ。朝飯は握り飯で十分さ」

 

「ええ、わかります、わかります!僕も朝は簡単なものでいいと言うのに、手下たちがですね、妙に凝った物ばかり出して!」

 

「へぇー、二人ともそれぞれの立場とか身分があるから食事も豪華だったんだな。でもやっぱりデュエル飯……おにぎりは最高だよな!俺は朝食に婆ちゃんが作ってくれてるからほぼ毎日食ってたぜ!」

 

「デュエル飯……おにぎりは最高のご馳走だ。ただ米を握っただけのもので簡単だが力が溢れてくる!」

 

「だよなぁ!やっぱり握り飯は最高だな!」

 

「ええ、すぐに食べられてしかも美味い!言うことはないですね!」

 

遊馬とアストラル、ゴールデンと小太郎の四人でまさかのおにぎりを話題とした語り合いが始まってしまった。

 

おにぎりの語り合いはどんどん熱くなり、男性陣がここまでおにぎりに拘りを見せているので美遊はため息をついてD・ゲイザーでカルデアに連絡する。

 

「すいません……お米とお水、後は何か適当な食材を用意してくれますか?」

 

美遊の要望で米と水などの食材を送ってもらい、空き家にある台所を借りて調理を行う。

 

「ミユって、料理出来るの?」

 

シトナイは素朴な疑問をすると、イリヤとクロエは自信満々に応える。

 

「もちろんだよ!美遊はスーパー小学生メイドなんだから!」

 

「ミユの料理の腕は最高よ!調理実習で高級料理とウェディングケーキを簡単に作れるんだからね!」

 

「ごめん、あなた達が何言っているのかよく分からないわ……」

 

シトナイは美遊が本当に小学生なのか不安に思うほどの才能に戦慄していた。

 

「大したことはしてないよ。それと、クロ。魔術で包丁とフライパンを出せる?」

 

「投影魔術で?まあお兄ちゃんに習ったから出せるわ」

 

クロエはエミヤから投影魔術を教わり、剣や弓などの武器だけでなく包丁やフライパンなども出せるようになっていた。

 

ちなみに包丁は干将・莫耶のような模様が入っており、そこはエミヤのこだわりが入っていた。

 

「ありがとう。みんな少し待ってて、すぐに作るから」

 

「美遊殿、私もお手伝いします」

 

一人で料理を始めようとしたが、そこで段蔵が手伝いを名乗り出た。

 

「段蔵さん……料理が出来るんですか?」

 

「はい。サーヴァントの身で作るのは初めてですが、問題なく作れます」

 

「それじゃあ……お願いします」

 

からくり人形の段蔵が料理が出来ることに驚いたが、試しに頼んでみた。

 

すると、段蔵は手際良く料理の下拵えをしていき、美遊も料理がしやすかった。

 

「英霊って、サーヴァントって……本当に不思議……」

 

美遊は一緒に料理をしている段蔵を見ながら英霊……サーヴァントが本当に摩訶不思議な存在なのだと改めて思い知らされてそう呟くのだった。

 

 

 




次回は一気に話を進めていきたいと思います。
このペースなら鬼ヶ島編は6月中に終わると思いますね。
そしたら、夏休み編に突入して……ああ、まだまだやることいっぱいやで。

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