Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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父娘の再会についてはとあるFate作品のパロディ全開です(笑)
これはずっと前から考えていました。


ナンバーズ155 父娘の再会と説教

鬼ヶ島の特異点から帰還した遊馬達は真っ先に召喚ルームに向かった。

 

召喚する前にバーサーカーからライダーへとクラスチェンジした金時の新たなフェイトナンバーズが覚醒した。

 

愛機のゴールデンベアー号に跨り、雷鳴を轟かせながら爆走する姿が描かれており、真名は『FNo.56 黄金疾走 坂田金時』。

 

召喚サークルに4枚のフェイトナンバーズを並べ、マシュから聖晶石を貰って砕いてばら撒く。

 

英霊召喚システムにより、遊馬達が望んだ四騎のサーヴァントが召喚される。

 

「シトナイよ。よろしくね、マスターさん」

 

最初に召喚されたのはシトナイだった。

 

シトナイのフェイトナンバーズはシトナイが白熊のシロウと共に極寒の森の中を歩く姿が描かれており、真名は『FNo.21 氷雪の女神 シトナイ』。

 

「サーヴァント、アサシン。風魔小太郎。このようなナリですが、どうぞよろしく」

 

フェイトナンバーズは燃える炎の中で苦無を構えながら駆け抜ける姿が描かれており、真名は『FNo.12 風魔忍者 風魔小太郎』。

 

「加藤段蔵。ここに起動。入力を求めます、マスター」

 

フェイトナンバーズはどこかの城の上で風に舞う花弁と共に美しく座っている姿が描かれており、真名は『FNo.12 絡繰忍者 加藤段蔵』。

 

「こんにちは。サーヴァント、セイバー……あら?あれ?私、セイバーではなくて……バーサーカーの源頼光です。よろしくお願いします」

 

最後に召喚されたのは頼光で本人はセイバーだと思っていたがバーサーカーとして召喚されており、戸惑いながら挨拶をした。

 

頼光のフェイトナンバーズは雷鳴が轟く中、童子切安綱を構える姿が描かれており、真名は『FNo.5 天雷の神秘殺し 源頼光』。

 

小太郎と段蔵は遊馬に駆け寄り、頼光は金時に駆け寄ってそれぞれ再会を喜んだ。

 

そして、シトナイが静かに真っ先に向かったのは生前に生き別れた父……エミヤキリツグの元だった。

 

「……キリツグぅぅ!」

 

「イリヤ……!」

 

生き別れた親子の時空を越えた感動の再会が再び起きようとした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャーマンナッコォ!」

 

「げふぅ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそれはあまりにも儚い幻想だった。

 

「ジャーマンスープレックス!!」

 

「ゴッチ!?」

 

「ジャーマン一本足四の字!!!」

 

「いがりィィィッ!?」

 

シトナイは自分の身長の40cm以上の体格差がある男性のキリツグに対してプロレス技をはじめとした豪快な体術を繰り出している。

 

「「「えぇえええええーっ!??」」」

 

「きゃー!?イリヤ、どうして……!?」

 

あまりの予想外過ぎる展開に遊馬達は驚愕して叫んだ。

 

シトナイは見たことのないほどの殺気をキリツグに向けて放つ。

 

「ここで会ったら百年目!今ここでキリツグを殺すわ!」

 

「がーん!いつか来ると思ってたけど、我が娘に反抗期が来ちまった!殺すとかキッツイなあもう!」

 

キリツグは愛する娘に殺すと言われてかなりショックで娘を持つ父親の共通の悩みである反抗期が来たと勘違いをした。

 

反抗期にしてはあまりにも物騒過ぎるのでイリヤもツッコミを入れる。

 

「いやいやいや!もはや反抗期レベルじゃないからね!?私はそこまで言うつもりはないから!」

 

「……うん、ごめん!私は前科あるから否定出来ないわね!」

 

「クロさんはイリヤさんと出会った時は殺意バリバリでしたからね〜」

 

「今はもう流石にないけどね」

 

「薄々感じていましたが、やはりクロ様はイリヤ様よりもシトナイ様に近いようですね」

 

クロエは少し前にイリヤを殺して自分がイリヤになり変わろうと考えていた時期があったのでシトナイを否定出来なかった。

 

「イ、イリヤ……」

 

シトナイのキリツグに向けた予想外の殺意にアイリはオロオロしていた。

 

「イリヤ……じいさん……」

 

「これは……下手したら私とモードレッドの関係以上に拗れてますね」

 

「これはそう簡単に関係修復出来そうにないわね……ってかあの豪快なプロレス技は何処で習得したのよ?あの成金馬鹿を思い出すわ……」

 

「もしかして、先輩の家のテレビで藤村先生と一緒に見ていたプロレス番組ですかね……?」

 

エミヤとアルトリアとイシュタルとパールヴァティーはアイリと同じようにシトナイを心配してオロオロする。

 

「反抗期じゃないわ……まじこのオヤジ、一回シメるわ……!」

 

「イリヤ、女の子がシメるとか言っちゃいけません!言うことを聞かないとお尻ぺんぺんだぞー!」

 

「こ、このセクハラオヤジ!もうキリツグ殺す!マジ殺す!!」

 

「あれー?!」

 

シトナイを子供扱いをして軽く叱るキリツグだが、それが逆にシトナイの逆鱗に触れて更に激昂し、殺意が高まってしまう。

 

「私を捨てて、約束を破った怨み……今こそ復讐を果たすわ!!」

 

両眼に涙を溜めながらマキリを鞘から抜いてキリツグに向ける。

 

「ま、待ってくれ!イリヤ!僕は……!」

 

「問答無用よ!!」

 

キリツグの弁明も無視してシトナイは積年の怨みを晴らすために襲いかかった。

 

ところが……。

 

「…………!」

 

「うわぁっ!?えっ?バ、バーサーカー!?何をするの!?」

 

シトナイの背後にヘラクレスがいつの間にか回り込み、シトナイの体を優しく掴んで持ち上げた。

 

そして、ヘラクレスはシトナイを自分の左肩に乗せると、シトナイは昔を懐かしむようにヘラクレスの頭に抱き付く。

 

「バーサーカー……」

 

巨体であるヘラクレスの左肩はシトナイ──イリヤスフィールの特等席であり、移動や戦闘でよく乗っていた。

 

ヘラクレスは大きな手でシトナイの頭を軽く撫でた。

 

大好きなサーヴァントに心を落ち着かせてもらい、シトナイの怒りが鎮まっていく。

 

「……分かったわ。今回はバーサーカーに免じて止めるわ」

 

キリツグへの復讐は一旦止めてシトナイはエミヤに目線を向ける。

 

「シロウ、私は久しぶりにあなたの手料理が食べたいわ!」

 

「ああ、喜んで。料理のジャンルは?」

 

「そうね……和食で!いつもより腕によりをかけてね!」

 

「ふっ、かしこまりました。お嬢様」

 

「ええ、楽しみにしているわ♪」

 

久しぶりに大好きなエミヤの料理を食べられるのでシトナイは上機嫌となる。

 

「バーサーカー、このままカルデアの中を散歩するわよ。シロウ、来なさい」

 

「……ガオッ」

 

白熊のシロウはシトナイが自分ではなくヘラクレスの左肩に乗っていることに不満な表情を浮かべながら歩き出すバーサーカーの後を追う。

 

「うーん、シトナイとキリツグさんとの関係はヤバいなぁ……」

 

「シトナイの殺意は凄まじかったな……」

 

「それほどまでにキリツグさんを憎んでいるのですね……」

 

遊馬達は最悪な関係となっているシトナイとキリツグをなんとかしたいと考える。

 

ガシッ!

 

「えっ……?」

 

突然、遊馬は背中から大きな何かに掴まれた感覚が襲い、視線を下に向けると悍しい巨大な手が遊馬を掴んで持ち上げていた。

 

「な、何だ!?」

 

「ふははははっ!さあ、愚かな馬よ!召喚などの用が済んだところで行くぞ!」

 

「い、茨木!??」

 

それは茨木の右手で宝具の力で巨大化させて遊馬を掴んで持ち上げたのだ。

 

遊馬が茨木に襲われていると思い込んだ頼光は瞬時に戦闘態勢を取る。

 

「っ!?この、虫が……マスターに何をするのですか!?」

 

「ま、待て!頼光よ、別に馬を傷つけたりはしないぞ!?」

 

「せやで、頼光。別に悪い事をする気はないんやから、そんな殺気を放たんでもええやろ?」

 

「酒呑童子……!!」

 

早速因縁の相手と再会した頼光はギロリと殺気を放つが、酒呑はその殺気には乗らず、ケラケラと軽く笑い飛ばしながら対応する。

 

「そうやなぁ……なあ、頼光。あんたも一応当事者やから一緒に来るか?」

 

「当事者……?」

 

「せやで。さあ、旦那はん。行こうか♪」

 

「い、行くって何処にだ!?」

 

「心配せんでも、別に変なところには行かんよ。まあ、そこで地獄のような苦痛が待ってるかもしれへんけどなぁ……うふふふふっ……」

 

「待って!?俺に、俺に何をするんだぁ!?」

 

遊馬は茨木と酒呑に連れてかれてそのまま召喚ルームを後にした。

 

茨木と酒呑の殺気が感じられなかった頼光は唖然としたが、遊馬を見過ごすわけには行かずにアストラルやマシュ達と一緒にすぐに後を追いかけた。

 

 

遊馬が連れていかれた場所、それはカルデアの憩いの場所である食堂だった。

 

その食堂の中央で遊馬は正座で座らされていた。

 

「あ、あの……どうして僕はこんなところで正座をさせられているのでしょうか……?」

 

あまりの予想外の事態に遊馬も思わずいつもの口調を忘れて丁寧語になっていた。

 

「決まっているでしょう?今から遊馬に説教をするためよ!」

 

正座をさせられている遊馬の前で小鳥が仁王立ちをして見下ろしていた。

 

遊馬は鬼ヶ島での頼光の刀を受け止めた行為をし、これまで何度も無茶をしてきたのでここで一度きっちりと説教をすることになった。

 

説教するのは小鳥とブーディカとオルガマリー、そして茨木と酒呑の五人である。

 

「せ、せめて別の部屋でやってくれませんか……?ここだと、みんなの視線が……」

 

「ダメに決まってるでしょ。我慢しなさい」

 

「そんなぁ……」

 

食堂はカルデアで一番人が集まる場所でもあるので、食堂に訪れた職員やサーヴァント達の視線が自然に遊馬に集まる。

 

一種の晒し者のような状態となり、みんなから集まる視線に遊馬は羞恥心で恥ずかしくなる。

 

アストラルとマシュは今回ばかりは遊馬のためでもあるので何も出来ず、そのまま遊馬への説教が始まった。

 

「本当に、本当に遊馬はバカなんだから!いくらなんでも切れ味のいい日本刀を素手で受け止めるなんて有り得ないわよ!それで指が切れたらどうするの!?もうデュエル飯を握れないし、カードをドローすることも出来ないのよ!分かっているの!?」

 

小鳥は涙目で感情的な言葉で遊馬を責める。

 

「ユウマ……私もオガワハイムで助けられたからあまり強くは言えないけど、君が傷ついたらみんな心配するんだよ。世界を救う為に必死に戦っている君をみんなはいつも心配している。それだけはいつも覚えておいてね」

 

ブーディカは説教ではなく、あえて優しい言葉で遊馬を諭す。

 

「遊馬、現場の最前線で戦っているあなたの意思は最大限主張することになっていますが、もう少し自分の身を大切にしなさい!あなたはこのカルデアの最後のマスターで、人類最後の希望なのよ!?仲間を守る気持ちは素晴らしいですが、もっと考えてから行動しなさい!」

 

優しいブーディカに対してオルガマリーはカルデア所長として、保護者代わりとして遊馬の姉の明里を連想させる厳しい言葉を送る。

 

「おい、馬!あの頼光に立ち向かうとか貴様は本物の馬鹿だな!死ぬ気なのか!?貴様は頼光ほどではないが、ちょっと人外が混ざっているだけで基本は人間なんだぞ!死んだらそこで終わりだ、もっと自分の命を優先しろ!!」

 

茨木は何だかんだで自分達サーヴァントと違い、人間である遊馬の命を心配していた。

 

「旦那はん……あんたは元いた世界で色々あったから何がなんでも仲間を守ろうとするその強い意志は素晴らしいと思うわ。でもな……人が鬼を守るなんて前代未聞や。鬼として少し侮辱された気分やわ。まあ、今回は許してやるわ。その代わり、もう少し……うちらを、あんたと契約したサーヴァントを信じてくれへんか?」

 

酒呑は遊馬が守ろうとしたとは言え、鬼としてのプライドを侮辱されたと僅かながらに感じており、今回はこの説教で特に何もせずに許してあげることにした。

 

しかし、それと同時に遊馬のサーヴァントとして自分だけでなく、他の者たちを信じて欲しい気持ちがあった。

 

「はい……ごめんなさい……」

 

さすがの遊馬も弁明出来ずに謝罪の言葉しか言えないのだった。

 

説教は約数時間にも及び、その間は足を崩すことも許されなかった。

 

ようやく説教が終わり、言葉が身に染みた遊馬は解放されたが……。

 

「うががががぁ……あ、足がぁ……!?」

 

数時間も正座をした代償に両足が痺れてしまい、動けなくなってしまった。

 

「「「「じぃーっ……」」」」

 

そこにちびっ子組の桜と凛、ジャックとナーサリーが見つめていた。

 

すると、ニコッと笑みを浮かべて小さな人差し指を出す。

 

「な、何を……ま、まさか!?」

 

「「「「えいっ!」」」」

 

そのまま子供特有の悪戯心が出て遊馬の痺れた足を何度も突っつく。

 

「のぉおおおおおっ!??足がぁあああああっ!??」

 

痺れた足を突っつかれ、刺激が全身に響いた。

 

「ちびっ子達……何をするんだぁ……!!」

 

遊馬は足が動けないので両手で体を動かしてゾンビのように這いずり回りながら追いかける。

 

「「キャー!」」

 

「「にげろぉ〜!」」

 

ちびっ子達は一斉に遊馬から逃げ出して食堂を飛び出す。

 

「おのれ……悪戯好きなちびっ子達め……」

 

珍しく動けない遊馬にちびっ子達の悪戯で地味なダメージを受けるのだった。

 

一方、そんな動けない遊馬を見て密かに動き出す者達がいた。

 

「い、今こそ……旦那様に膝枕をする時!鬼ヶ島でしていただけたお礼をお返しをします!」

 

鬼ヶ島で膝枕をしてもらった清姫が今度は自分の番だと意気込んでいた。

 

「そうはさせません!遊馬君は私が膝枕をします!」

 

「あんただけずるいわよ!酔っ払って膝枕をしてもらえるなんて!」

 

そこにジャンヌとレティシア姉妹が乱入して清姫を阻止する。

 

「待つのだ!ここはユウマの嫁である余の出番!貴様ら達には任せられんぞ!」

 

「それはこっちの台詞だよ!遊馬は姉であるこの私が膝枕をするからね!」

 

更にネロと武蔵も乱入し、それぞれが武器を構えて誰が遊馬に膝枕をしてあげるか一触即発状態となる。

 

「さーて、遊馬を労ってあげようかなぁ♪」

 

「では、私も遊馬君に……!」

 

そこに既に何度も遊馬に膝枕をした事がある小鳥とマシュがちゃっかり行こうとした。

 

「「「待てぇっ!!」」」

 

「「「ずるいっ!!」」」

 

しかし清姫達が遊馬の嫁候補ナンバーワンの小鳥と遊馬のもう一人の相棒のマシュを全力で阻止する。

 

食堂でいつものような騒がしい声が響く中、一つの影が静かに遊馬に忍び寄った。

 

そして……。

 

「あれ……?ゆ、遊馬がいない!?」

 

「「「ええっ!?」」」

 

いつのまにか遊馬の姿が消えており、慌てて遊馬を探しに食堂を出るのだった。

 

 

消えた遊馬の行き先……それは遊馬の自室だった。

 

「ふぅー、やっと落ち着いたぜ……」

 

遊馬は自室のベッドで横になり、落ち着くことができてそこで大きく深呼吸をする。

 

未だに足が痺れてまともに動けない中、遊馬を自室に運んだのは……。

 

「頼光さん、ありがとう」

 

「いいえ、これぐらい大したことありませんよ」

 

優しい母のような笑みを浮かべながら椅子に座る頼光だった。

 

頼光は動けない遊馬を見過ごすことは出来ず、こっそりと動けない遊馬を抱き抱えて食堂から自室まで移動したのだ。

 

それに加え、頼光は遊馬とゆっくり話をしたかったのでちょうど良かったのだ。

 

「マスター……その、手と肩は大丈夫ですか……?」

 

「ああ、それなら大丈夫だ。アイリさんが治癒魔術で治してくれたから。ほらな!」

 

遊馬は右手と左肩を見せて傷が無いことを頼光に証明する。

 

「それは良かったです……私が言うのもなんですが、無茶だけはしないでください……」

 

「あー、えっと……頑張ります……」

 

説教されたばかりだがそう簡単には自分の信念を変える事は出来ず、今の遊馬にはそれしか言えなかった。

 

「そう言えば、頼光さんの中にいる丑御前は大丈夫なのか?」

 

「……ええ。今は落ち着いています。丑御前は私に神気が高まることで出て来ますので滅多には出て来ません」

 

「そっか。また丑御前が出て来たら俺たちが必ず止めてやるからな」

 

「……マスターは私が……丑御前が怖くないのですか?」

 

頼光は自分が牛頭天王の化身・丑御前であることに怖くないのかと恐る恐る尋ねるが遊馬はあっけらかんと答える。

 

「怖い?何で?別に怖くも何ともないけど?」

 

「どうしてですか……?幾らあなたが不思議な術を使うとは言え、人であることには変わりません。それが、こんな化け物みたいな私を──」

 

「俺もさ、頼光さんと少し似ているからさ」

 

「似ている……?」

 

遊馬は起き上がって軽く目蓋を閉じ、精神を集中させると背中から純白の翼が生え、目蓋を開くと両眼が虹色に輝く。

 

「背中から翼……!?それに眼の色が……!?」

 

「実は俺もさ、頼光さんみたいにある存在の転生者なんだよ。まあ、そいつとはちゃんと話はついているけどな」

 

「何故……何故そこまで平然としていられるのですか?なんとも思わないのですか……?」

 

頼光は今でも自分の中にいる丑御前の事で悩んでいるが、遊馬は既に自分の中のもう一人の存在……アナザーとの決着はついており、吹っ切れていた。

 

「そりゃあ、俺だって色々悩んだり苦しんだよ。自分の存在理由とか生まれた意味とかさ。だけど、俺には俺のことを思ってくれている大切な人と仲間達がいる。だからこそ、堂々と言えるんだ。俺は九十九遊馬って言う一人の人間だってな」

 

遊馬の人間として迷うことなく生きると決めている威風堂々とした態度に頼光は言葉を失った。

 

「頼光さん、せっかく俺のサーヴァントとして召喚されたんだからここで色々やってけばいいと思うぜ」

 

「色々とは……?」

 

「例えば、生前の平安時代では出来なかった事とか、やってみたいこと、後は自分の中の丑御前とどう向き合っていくかを考えるとか……とりあえず時間は沢山あるから、頼光さんのこれからの未来を生きていけばいいんじゃねえか?」

 

「未来、ですか……?」

 

「ああ!もしも相談したいこととかあればいつでも言ってくれよ。マスターとして出来る限りの事をするからさ!」

 

遊馬は満面の笑みを浮かべて頼光に笑いかけた。

 

頼光にとって遊馬は初めて出会うタイプの人物だった。

 

息子の金時と同じ元気で優しいのは共通しているが、言葉で言い表せない大きな違いがあると思った。

 

「はい!ありがとうございます、マスター!」

 

頼光は遊馬の事をもっと知りたい、一緒にいたいと願うようになった。

 

 

一方、遊馬の自室の外では息を潜めた二人が壁に耳を当てていた。

 

「ふぅー、頼光様。とりあえず落ち着いてくれてよかったぜ」

 

「やるなぁ、旦那はん。あの頼光を落ち着かせるなんてな」

 

それは金時と酒呑の二人だった。

 

頼光が遊馬を食堂から連れ出すのを目撃し、大丈夫だと思うが丑御前関係で何か起きたらすぐに対処出来るようにこっそりついて来たのだ。

 

大丈夫だと判断した金時と酒呑はその場から静かに離れる。

 

「もしかしたら、頼光の闇を旦那はんが払ってくれるかもな」

 

「オレにはそれが出来なかったからな……情けねえ話だが、大将なら何とか出来るかもな」

 

「せやな。ああ、でも、もしも上手くいったら旦那はんが小僧の義父になるかもしれんなぁ〜?」

 

「……おいおい、勘弁してくれよ……そんな事になったらカルデアがマジでヤバいことになるぜ……」

 

「それが面白いんやで。それを肴にして酒を飲むのもまた格別やからなぁ〜♪」

 

金時は近い未来に起きるかもしれない騒動に顔が真っ青になり、対する酒呑は面白おかしく楽しんでいるのだった。

 

 

数日後……小さいが新たな特異点が発見され、遊馬達はすぐにレイシフトを行った。

 

レイシフトを行い、地上に降り立った遊馬達は目の前の光景に唖然とした。

 

「ここ、何処……?」

 

「見たところ……無人島だな……」

 

「オケアノスで見た島を連想させる風景ですね……」

 

青い空、白い雲、照りつける太陽。

 

見渡す限りの綺麗な海、太陽の光に反射して輝く砂浜、緑が生茂る森林。

 

そこは人の気配と文明が無い、大きな手付かずの無人島だった。

 

「どうするか、これから……」

 

今までと違い、サーヴァントの気配すら一切感じられない無人島でどうするか悩むのだった。

 

 

 




次回から夏イベのカルデアサマーメモリー編の開始です。
無人島開拓とバカンスと遊馬達の修行を行います。

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