マネキンキャット当たらなすぎてヤバかったですが友人に譲ってもらえて幸いでした。
ヴレインズ第2話、デコード・トーカーがカッコよくて震えました。
無事にスターターを買えて良かったです。
まだ遊作は謎の生命体を人質だから信頼感ゼロですね。
そのうち遊馬とアストラルみたいな関係になってくれればいいですね。
今回はゼアルの色々な要素が盛りだくさんです。
ジャンヌ・オルタの憎しみの象徴であるファヴニールを銀河眼の光子皇竜で打ち倒した遊馬は座り込むジャンヌ・オルタに対して手を差し伸べた。
仲間になろうと差し伸べたその手はジャンヌ・オルタにとって救いの神が現れたのだと錯覚し、震えながら手を伸ばした。
その時、ジャンヌ・オルタの背後に闇が現れた。
「私の聖女に触れるな!!」
不気味な声と共に闇の中から魔力弾が放たれ、とっさに両腕でガードした遊馬を吹き飛ばした。
「ぐっ!?」
「遊馬!」
「遊馬君、大丈夫ですか!?」
「この声は……まさか!?」
ジャンヌはその声に聞き覚えがあり、闇から一つの影が現れた。
それは幾重にも重ねたローブと貴金属に身を包み、眼を広く剝いた異相をした長身の男性だった。
「ジル……」
ジャンヌ・オルタは長身の男性の名を呟いた。
「ジル……?ジャンヌと共にオルレアン奪還を果たした『ジル・ド・レェ』か!?」
ジル・ド・レェ。
フランスの貴族軍人でジャンヌと共にオルレアン奪回を果たした英雄だが、ジャンヌの処刑により絶望し、自分の領地に住む近隣の少年を拉致して殺害した殺人鬼である。
「まさか、聖杯で黒ジャンヌさんを作り出したのは……!?」
「ジル、あなたどうして……?」
「まさかファヴニールを倒すとは……しかし、ジャンヌに触れさせませぬぞ!」
「ジル、待って。私は……」
「さあ、行きましょう。今は逃げるべきです」
「ま、待って!!」
ジャンヌ・オルタの制止を聞かず、ジルは再び闇を纏ってジャンヌ・オルタと共に何処かへ消えてしまった。
「消えた!?」
「いえ、恐らく二人はオルレアンの城へ向かったはずです!すぐに追いかけましょう!」
ジャンヌ・オルタはオルレアンを支配してからフランスの各地を攻撃し始めたので、そこが拠点なのは間違いがない。
「嫌な予感がする……すぐに行くぞ!」
「でもアルトリアさん達は……」
アルトリア達を置いて先に向かうわけにはいかないと思ったが、それは杞憂に終わる。
「問題ありませんよ、マシュ。全て片が付きました」
アルトリア達、八人のサーヴァントは無事に四人の敵サーヴァントを倒しており、その手には四枚のフェイトナンバーズのカードが握られていた。
四枚のフェイトナンバーズを遊馬は受け取り、すぐに城へ向かう準備をする。
「流石だぜ、みんな!」
「遊馬、飛行船ですぐにオルレアンへ向かおう!」
「おう!来い、かっとび遊馬号!プライム・フォトンは一緒についてきてくれ!」
皇の鍵から飛行船を呼び出して全員を乗せ、急いでオルレアンへ向かい、銀河眼の光子竜皇は後を追う。
☆
ジルはジャンヌ・オルタを連れて拠点であるオルレアンの城に到着した。
すぐにでも敵である遊馬達を迎え撃つためにジャンヌ・オルタに提案する。
「ファヴニールは滅び、ワイバーンも数が少ない、そして召喚したサーヴァントは全滅……ジャンヌよ、新たなサーヴァントを召喚するのです!」
「ジル……私はもう戦えません」
すっかり戦意を失ったジャンヌ・オルタの姿にジルは嘆くように驚いた。
「なんと……!?そうですか……分かりました、後は私一人で戦います」
「無理よ……ジルも見たでしょう?ファヴニールを倒すことができるドラゴンを操るマスターに大勢のサーヴァント、勝ち目はないわ」
「ご心配なく、私にはこれがあります……!」
ジルが懐から取り出したのは金色に輝く杯だった。
それこそがこの特異点の元凶であり、ジャンヌ・オルタを生み出したものである願望器……聖杯である。
そして、ジルの宝具である不気味な魔本……『
「ジ、ジル?何をするの……?」
「大丈夫です、ジャンヌ。私にお任せください。私がずっとお守りします……」
魔力が漂うと床中に無数の不気味なモンスターが召喚され、それがジャンヌ・オルタに近づいていく。
ジャンヌ・オルタは動けずモンスターが近づいていく。
「や、やめて……嫌ぁあああああっ!!」
希望の光が照らされかけていたジャンヌ・オルタに絶望の闇が襲いかかった。
☆
飛行船でジャンヌ・オルタとジルを追い、当初の目的地であるオルレアンに向かう。
オルレアンには人の影が一つもなく、まるで廃墟みたいだった。
そして、そびえ立つ城の中にジャンヌ・オルタとジルがいるはすだが、このままでは銀河眼の光子竜皇は中に入ることはできない。
「あの城、多少ぶっ壊しても構わないよな!?」
「え、ええ……特異点で聖杯を回収すれば歴史が修正されて大丈夫なので……」
「よし!プライム・フォトン!お前が入れる程度に城の一部を壊せ!」
緊急事態なので仕方ないことと、城にはジャンヌ・オルタとジル以外は『既に始末された』のでそこは目を瞑り、銀河眼の光子竜皇は尻尾で城の一部を破壊して大きな穴を開ける。
飛行船から降りた遊馬達は続々と破壊した城の穴に突入していく。
しかし、城に入った瞬間……遊馬達は言葉を失った。
何故なら見るも気色の悪すぎる現状に鉢合わせてしまったからだ。
「何……これ……?」
マシュは目を見開いて目の前の現状に頭が真っ白になった。
それは巨大な蛸と海星を組み合わせたような不気味な生物……海魔は無数の触手を出現させてジャンヌ・オルタの体を縛り、取り込もうとしていたからだ。
「ジャンヌ!!!」
遊馬はとっさに体が動き、触手を回避しながらジャンヌ・オルタを助け出そうとした。
「ジャンヌに近づくな、小僧!!!」
「ぐはっ!?」
触手で近づく遊馬を弾き返し、ジルの声が聞こえたのでどこにいるのか周りを見渡すが何処にもいなかった。
そして、更に驚くべき光景が遊馬達の目に映る。
一番大きな海魔の体から植物が生えるように現れたのは……ジルの上半身だった。
遊馬とアストラルは瞬時にそれが何を意味するのか理解した。
「自分の体をモンスターと合体させたのか!?」
「なんて男だ……正気の沙汰ではないとなると、かなりの精神が狂っているな……」
「私は聖杯戦争でキャスターと戦いましたが、彼には海魔と合体する力は持ち合わせていません。となるとやはり……」
アルトリアは人理が消滅する過去の世界の聖杯戦争でジルと戦ったことがある。
戦ったことでジルの宝具を詳しく知っていたが、今ほど強力なものではなく、明らかに変化していた。
そこから導き出される答えは一つ。
「聖杯の力か……」
一人の人物を作り出せるほどの力を持つ聖杯なら宝具に甚大な力を与えるのは簡単なことである。
遊馬はジャンヌ・オルタを触手で縛って捕らえていることに怒りを覚え、ジルに向かって怒号を放つ。
「てめぇ……ジル!ジャンヌを離せぇっ!!」
「ジャンヌは私のものだぁ!貴様らに渡さぬぞぉおおおおお!!」
ジルは闇に堕ちてから他人の言う事をまともに聞かなくなっている。
更にバーサーク・キャスターとして狂化属性が付与されて自分勝手な行動に拝借がかかっている。
ジャンヌ・オルタを取り戻すには力付くしかなかった。
「サーヴァントたちに指示を出す!マシュとジャンヌと清姫とエリザベートとゲオルギウスは遊馬を守れ!エミヤは弓矢、マリーとアマデウスは宝具で後方支援!アルトリアとジークフリートは剣で海魔を斬れ!」
アストラルの指示でマシュたちサーヴァントはすぐに陣形を作り、マシュとジャンヌと清姫とエリザベートとゲオルギウスの五人体制で近づく大量の海魔から遊馬を守る。
前衛はセイバーであるアルトリアとジークフリートが剣を振るって海魔を次々と切り、後衛でエミヤが黒弓や複数の剣を投影して正確に海魔を狙い撃つ。
「聴くがいい!魔の響きを!『
「さんざめく花のように、陽のように!咲き誇るのよ、踊り続けるの!『
そして、マリーとアマデウスは同時に大軍宝具を発動する。
マリーの宝具は栄光のフランス王権を象徴した宝具でフランス王家の紋章が入ったガラスで構成させている美しき馬。
馬からきらきらと輝く光の粒子を撒きながら戦場を駆け抜け、海魔にダメージを与えて同時に味方の体力や魔力を回復させる。
そして、マリーの動作に合わせてアマデウスは『死神のための埋葬曲』でレクイエムの演奏を奏でていき、海魔のランクをダウンさせていく。
銀河眼の光子竜皇では威力が強すぎて城が崩壊しかねないので、遊馬は新たなナンバーズを召喚する。
「俺たちの全力を尽くしてジャンヌを取り戻す!俺のターン、ドロー!魔法カード、『銀河の施し』を発動!自分フィールドにギャラクシーと名のついたモンスターエクシーズがいる時、手札を一枚墓地に送り、デッキから二枚ドローする!」
銀河眼の光子竜皇が存在するので条件が満たされ、遊馬は手札を一枚墓地に送ってデッキから二枚ドローする。
「よし!行くぜ!魔法カード、『オノマト
それは希望郷と同じくアストラル世界からの贈り物のカードの一枚で遊馬のモンスター達を繋ぐカード。
「手札を一枚墓地に送り、デッキから『ゴゴゴジャイアント』と『ドドドウィッチ』を手札に加える!!そして、ゴゴゴジャイアントを通常召喚!」
ゴゴゴジャイアントが通常召喚され、墓地の仲間を復活させる効果が発動する。
「ゴゴゴジャイアントの効果で墓地からゴゴゴモンスターを特殊召喚出来る!甦れ、『ゴゴゴゴースト』!更に、ゴゴゴゴーストの効果で墓地からゴゴゴゴーレムを特殊召喚出来る!来い、『ゴゴゴゴーレム』!!」
ゴゴゴジャイアントの効果で墓地に送った鎧を纏った幽霊のようなモンスターが現れ、更にゴゴゴゴーレムが特殊召喚され、一気にレベル4のモンスターが三体揃った。
「シャーク、お前の力を貸してくれ!レベル4のモンスター三体でオーバーレイ!三体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」
空中に『32』の数字が浮かび、地面から巨大な魚の尾びれを象ったものが現れた。
「最強最大の力を持つ深海の帝王!その牙で全てのものを噛み砕け!!」
魚の尾びれが変形し、赤紫色の二枚のヒレのような翼に二枚の五本の鋭い指爪を持つ二枚のヒレが現れ、 左胸に32の数字が刻まれ、額には赤い水晶が埋め込まれた鮫のような顔をした竜が現れる。
「『No.32
宇宙最強の銀河眼の光子竜と対を成す無限に広がる深海を支配する鮫の姿をした龍王。
それは遊馬のもう一人のライバルにして仲間、神代凌牙がかつて使用していたエースモンスターである。
「宇宙の竜だけでなく深海の竜まで……」
「行け、シャーク・ドレイク!デプス・バイト!!」
シャーク・ドレイクが口を開くと鮫のオーラが放たれ、海魔を次々次々と食い殺していくが、海魔は聖杯の魔力によって無限に増殖されていく。
アルトリアの約束された勝利の剣や銀河眼の光子皇竜の攻撃なら海魔を一掃することは簡単かもしれない。
しかし、ジャンヌ・オルタを狙わずに海魔だけを一斉に倒すのは困難を極めるが、遊馬は決して諦めたりはしない。
海魔の数を減らし続けていけばまだジャンヌ・オルタを助けられる可能性があると信じている。
「まだだ!俺のターン、ドロー!シャーク、もう一度行くぜ!海咬龍シャーク・ドレイクをエクシーズ素材とし、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」
「シャーク・ドレイクがカオスに!?」
マシュは同じくカオス化するホープを間近で見ていたのでシャーク・ドレイクもカオス化する事に驚いていた。
シャーク・ドレイクは変形前の鮫の尾びれに戻り、地面に吸い込まれて光の爆発が起きると新たな姿へと進化する。
「現れよ、CNo.32!暗黒の淵より目覚めし最強の牙!!」
空中に赤黒く輝く『32』の数字が浮かび、地面から紫色の宝石に七枚の白いヒレがついた物質が現れる。
変形していくと漆黒のホープレイと対比するような純白の装甲、両腕には刃物のような鋭い爪を持つ深海の竜王が降臨する。
「『海咬龍シャーク・ドレイク・バイス』!!!」
シャーク・ドレイクの真の姿にして、かつて凌牙が自分の命以上に大切な妹の仇と対峙した時に発現したカオスの力である。
「海魔の数は多い!遊馬、今のうちにホープを呼ぶんだ!」
「おう!『ドドドウィッチ』を召喚!その効果で手札からドドドモンスターを特殊召喚する!来い、『ドドドドライバー』!!」
ヴァイキングの格好をした魔女とその隣にリアカーを引きずる戦士が並び立つ。
「レベル4のドドドウィッチとドドドドライバーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!」
二体のモンスターが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発と共に光の使者が駆けつける。
「「現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!」」
遊馬とアストラルのエースモンスターである希望皇ホープが呼び出され、そこからカオスの力を解き放つ。
「「希望皇ホープ!カオス・エクシーズ・チェンジ!」」
希望皇ホープが変形前の白い塔の姿に戻り、地面に吸い込まれ、爆発を起こして希望皇ホープの真の姿となる。
「「混沌を光に変える使者!『CNo.39 希望皇ホープレイ』!!」」
純白から漆黒の戦士……守りから攻めに特化した姿へと姿を変わる。
希望皇ホープレイ、シャーク・ドレイク・バイス、銀河眼の光子竜皇……遊馬とアストラル、凌牙、カイト……四人の代表するエースモンスターが揃い踏みとなった。
「シャーク!カイト!俺たちの力でジャンヌを助けるぜ!」
そして、マシュ達の瞳には一瞬、遊馬とアストラルの隣に二人の男性の幻影の姿が映った。
一人は鋭い青い瞳を持ち、尖った藍色の髪をした少年で遊馬が持つデュエルディスクとD・ゲイザーと同じタイプの青いデュエルディスクと赤いD・ゲイザーを付けている。
もう一人は右目は青く、左目が赤く、左目の周りを覆うような青い刺青のようなものが刻まれ、白を基調とした服を着た青年で三日月の形をしたデュエルディスクを付けている。
それは世界を救うために集った三人の勇者……『三勇士』の力がこの場に揃うのだった。
「シャーク・ドレイク・バイスで攻撃!デプス・カオス・バイト!!!」
シャーク・ドレイク・バイスの口から先ほどの鮫のオーラとは異なり、レーザービームのような無数のエネルギーが放たれ、海魔を狙い撃ちにして一気に粉砕する。
「銀河眼の光子竜皇!エタニティ・フォトン・ストリーム!!」
光の竜の咆哮が放たれ、城を崩壊させないように海魔を薙ぎ払う。
「よっしゃあ!一気に減ったぜ!」
「続け、ホープレイ!!」
ホープレイは両肩のプロテクターから第三と第四の機械の腕が現れ、背中の大剣を掲げ、両手で腰の双剣を抜いて海魔に一気に近づく。
「「ホープ剣・カオス・スラッシュ!!」」
双剣と大剣の三刀流で海魔を斬り払い、海魔に取り込まれたジャンヌ・オルタの姿が露わになる。
「ジャンヌ!!」
「ユウ、マ……?」
「ジャンヌ、すぐに助ける!待ってろ!」
ホープレイが手を伸ばしてジャンヌ・オルタを引き上げようとしたが、すぐさま増殖した海魔によって押し戻されてしまった。
「……いい。このまま私ごと全てを消して」
ジャンヌ・オルタは全てを諦めた表情を浮かべていた。
それは自分の死期……運命を悟ったからである。
「なっ!?お前、何を言ってるんだ!?」
「私は、聖杯で生み出されたジャンヌ・ダルクの偽物……だから、ジルが倒されれば当然私も消える……」
元々サーヴァントは死んだ英雄が英霊の座と呼ばれる場所から聖杯の力で仮初めの肉体を得て召喚されるが、ジャンヌ・オルタはジルが聖杯の力で生み出したサーヴァントとは全く別の存在である。
「私は正規の英霊じゃないから、英霊の座に向かうことができない……それなら、いっそのこと消えて無くなりたい……そうだ、せめて銀河眼の光子竜皇の光で……」
竜の魔女である自分が美しいと惚れ込んだ銀河眼の光子竜皇の竜の咆哮で消えるなら本望だと遊馬にそう願おうとしたが……。
「ジャンヌ、お前の本当の願いを言え!」
遊馬がそれに応えるわけがなかった。
「本当の願い……?」
「お前は作られた存在でもちゃんと肉体と魂がある!心があるんだ!俺が必ずお前を消させはしない!!だから、希望を持て!」
何が何でもジャンヌ・オルタを救おうとする遊馬の強い想い。
ここまで自分の事を想ってくれる人は聖杯で生み出されてから初めてのことだった。
「ユウマ……おねがい……」
ジャンヌ・オルタは願った。
本来のジャンヌ・ダルクは神の声を聞き、処刑されるその時までそれまでのことは『罰と救済』だと全て受け入れていた。
しかし、このジャンヌ・オルタはジャンヌであってジャンヌではない。
だからこそ、彼女自身は違う思いを抱き、その心を言葉で紡ぐ。
「たす、けて……」
ジャンヌ・オルタの言葉と共に瞳から流れた光……それは植え付けられた憎しみではなく、遊馬と出会ったことで生まれつつある『心』から流した涙だった。
「ジャンヌ……!ああ、必ず助ける!!もう少しだけ待ってろ!!」
「うん……!」
そして、ジャンヌ・オルタは再び海魔の中に取り込まれ、遊馬はギロリと怒りを込めた眼差しでジルを睨みつけた。
「聞こえたか、ジル……ジャンヌは今、助けてって言ったぞ。それなのにまだこんな事を続けるのか!?」
「ジャンヌを助ける方法は一つ!貴様らを殺し、フランスを死の世界に変える事だ!!」
「ふざけんなぁ!! ジャンヌはもうそんな事を望んでねぇ!ジャンヌはてめぇの操り人形じゃねえ!!てめぇの身勝手な思いで、二人のジャンヌを苦しめるんじゃねぇ!!!」
「貴様ァアアアアッ!!私のジャンヌへの想いを愚弄するつもりかぁ!!?」
「てめぇ自身の復讐に誰かを巻き込むな!大切な誰かを失う悲しみは俺にだって分かる!だけど、だからと言って憎しみに支配されて復讐するのは間違ってる!戦うなら、その人の想いを背負って、生きて正しい道を進むべきなんだ!!」
遊馬は一度、アストラルを失ってナンバーズを託された。
失ったアストラルの影を追いながらも、自分にできることを精一杯行い、必死に仲間を守るために戦った。
だからこそ、ジルの間違った考えや思いが許せなかった。
「そんな間違った思いなんか打ち砕いてやる!そして、ジャンヌを必ず助ける!!」
「無駄だぁ!私には聖杯がある!聖杯がある限り私は無敵なのだぁ!!」
「ジル・ド・レェよ、奇跡を起こせるのは貴様だけではない!」
「アストラル……!」
「遊馬、あそこで囚われているジャンヌは憎しみを植え付けられて多くの人を殺めた。しかし、君と出会った事でその憎しみの心は変わりつつある……彼女はまだやり直せる!」
アストラルもかつては使命のために合理的に動く機械のような存在に過ぎなかった。
しかし、遊馬と出会えたことで今のジャンヌ・オルタのように心が生まれ、感情が芽生えた。
だからこそアストラルも遊馬によって変わりつつあるジャンヌ・オルタを助けたいと強く思った。
「……力を貸してくれ、アストラル。俺はあいつを……ジャンヌを助けたい!」
「行こう、遊馬。『私たちの仲間』を救おう!!」
「ああ!!」
遊馬がジャンヌ・オルタを救おうと前に出ようとした瞬間、ジャンヌが遊馬の手を握った。
「……遊馬君」
「ジャンヌ?」
「あの、実は私、妹が欲しかったんです」
「……は?」
突然のジャンヌの言葉に遊馬は唖然として思わず言葉を漏らしてしまう。
慌ててジャンヌは分かりやすいようにその言葉の意味を伝える。
「そ、それでですね、竜の魔女が私の闇ではないと知って、もし出来れば仲良くなりたいと思っているんです。血とかは繋がってないけど、あの子を私の妹として、大切にしたいんです。だから……」
今のジャンヌには囚われたジャンヌ・オルタを救う力はない。
遊馬に託してしまう形で大変申し訳ない気持ちでジャンヌは頭を深く下げてお願いした。
「お願いします……あの子を、助けてください」
「おう!任された!あいつを助けたら強く抱きしめてやってくれよ!」
「後は私達に任せろ」
遊馬とアストラルはジャンヌ・オルタを救うために静かに前に出る。
決意を固めた二人の雰囲気がガラリと変わり、マシュたちは今まで何度も遊馬とアストラルに驚かされてきたので、何をするのかと密かに期待してしまう。
新たなナンバーズを召喚するのか?と思うが、その予想は大きく裏切られることとなる。
遊馬は右手を、アストラルは左手を伸ばして高く掲げる。
「かっとビングだ!俺は俺自身と!!」
「私で!!」
「「オーバーレイ!!!」」
遊馬が赤い光、アストラルが青い光となって宙を飛ぶ。
予想外すぎる行動にマシュ達は目を疑う。
「うぉおおおおおっ!!」
「はぁあああああっ!!」
二つの光が近づき、離れるように飛び、やがて螺旋状に絡み合う軌道を描いていく。
「俺たち二人でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
絡み合っていた二つの光が一つに重なり、金色の光となりながら地面に降り立つ。
「遠き二つの魂が交わる時、語り継がれし力が現れる!」
金色の光の中で遊馬の肉体がアストラルと合体したことで再構築され、その姿が大きく変化する。
白いタイツスーツのような肉体に両手両足、胸と両肩を覆う赤いプロテクター、腰には白いベルトが装着されている。
左腕には赤い盾のような形をしたデュエルディスクが装着され、ホープレイとシャーク・ドレイク・バイスと銀河眼の光子皇竜の三枚のカードが置いてある。
「「強き絆が光を導く!!」」
遊馬の独特な髪が金色と赤色に変色し、両頬に緑色の刺青のようなマーカーが刻まれ、右目が金色、左目が赤色のオッドアイとなり、左目に顔の上部を覆うような緑色のDゲイザーが装着され、全ての変身が完了する。
「「エクシーズ・チェンジ!『
それは絆を紡ぎ、奇跡をその手に掴む希望の英雄。
遊馬とアストラルが合体した姿にして、二人の真の姿……ZEXAL。
数々の強敵を打ち倒し、世界を救った究極にして奇跡の力である。
「どういう……事だ……!?」
狂っているジルでさえ遊馬とアストラルが合体したことに度肝を抜かれて驚愕しており、間近にいるマシュ達も同様だった。
「この光……まさか、カルデアス内でオルガマリー所長を助けた時の……!?」
「遊馬君、アストラルさん……あなた達は一体……!?」
「シロウ……どうやら私たちは魔術師を遥かに凌駕した方がマスターになったみたいですね」
「そうだな。どうやらマスターは私たちと同じかそれ以上の過酷な運命を背負って戦ってきたようだな……」
「とっても綺麗な光……これは人々を救う希望の光なのね……」
「人と精霊の融合か……本当に面白いな!マスター!」
「旦那様がアストラルさんと合体……?妬ましいですが、何と美しいお姿……!」
「も、もう驚くのが疲れてきたわよ……竜を操って精霊と合体するなんて本当に人間なの!?」
「既に人間を超える存在であるな……しかもまだ力を隠している」
「ここには聖人や王など多くの英霊がいるが、まさかマスターも聖人……否、英霊になりうる存在とは……」
一方、マシュのD・ゲイザーで目の前の光景を映像で見ていたカルデアに残っている者たちも驚愕していた。
「私を助けたのはあなた達……ううん、あなただったのね」
一度肉体が滅んだオルガマリーをカルデアスの中で救ったのがZEXALであるとようやく気付いた。
「な、何だこれは!?今の遊馬君はサーヴァントに匹敵するエネルギーを叩き出しているぞ!?って、何なんだこの魔力値!?凄すぎるぞ!!本当に人間なのかい!?」
「遊馬君とアストラル君には驚かされてばかりだったけど、まさか合体するとは……しかもこれはマシュの英霊と融合したデミ・サーヴァントとはまた違う……」
マシュのように人間にサーヴァントを憑依させるデミ・サーヴァントとは異なり、遊馬とアストラルの肉体と精神と魂が一つに合体していることにダ・ヴィンチは推測する。
「はははっ!面白ぇ、本当に面白ぇマスターじゃねえか!まさかあの精霊と合体するとは驚きだぜ!!」
「流石は私達が見込んだマスターですね……」
クー・フーリンとメドゥーサは遊馬が優秀で無限の可能性があるマスターであることに喜びを感じた。
ZEXALは静かに右手を挙げ、遊馬とアストラルの二人が重なった声が響く。
「「最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!」」
カードを創造すると発言したZEXALにマシュ達は今度は耳を疑った。
デュエルディスクにセットされているデッキは既に予め構築されており、戦いの間に新たにカードを追加することはできない。
そこから新たなカードを創造することはとんでもない事である。
「行くぜ、アストラル!」
「このドローに全てを賭ける!」
ZEXALの右手が光り輝き、頭上に右手を掲げる。
「「全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!」」
右手に光の粒子が集い、デッキトップに手を置くとカードが奇跡の光を宿す。
「「シャイニング・ドロー!!」」
勢いよくドローしたカードはZEXALの力によって『デッキに存在しなかったカード』が『創造』され、そのカードは遊馬とアストラルが最も信頼するモンスター……希望皇ホープに新たな力を授ける。
すぐさま創造した奇跡のカードをデュエルディスクに挿入し、右手から光を天に向かって放ち、光と共にその姿を現わす。
「「現れよ!『
それは光る角に金色の双翼、そして黄金と白銀の装甲を持つ一角獣だった。
「あれは……ユニコーン!?」
「ば、馬鹿な!?聖処女にしか懐かないと言われる一角獣が何故あんな小僧が!!?」
聖処女を象徴する存在でもある一角獣を呼び出したことにジルは信じられないと言った様子で目が飛び出そうになる。
一角獣皇槍が宙を駆けながらホープレイに近づき、ZEXALは不敵の笑みを浮かべる。
「ユニコーン・キングはホープレイの装備カードとなり、攻撃力を1900アップさせる!」
ホープレイは大剣を掲げて大振りで振り回し、一角獣皇槍に向かって投げ飛ばす。
「「チェンジ!ユニコーン・スピア!!」」
一角獣皇槍と大剣が激突しながら合体し、双翼が先端となり、脚が持ち手となった巨大な一角獣の槍へと姿を変えた。
ホープレイは大剣を持つ第三と第四の腕で槍を担ぐように持ち、一角獣皇槍の聖なる力をその身に宿す。
ZWはZEXALの力で創造された聖獣などをモチーフにしたモンスターで希望皇ホープの専用の装備カードとなり、サーヴァント達の宝具に匹敵する強力な武器へと変形する。
「頼むぜ、ホープレイ!」
ZEXALはジャンプして槍に変形した一角獣皇槍の上に乗る。
そして、一角獣皇槍で確実に終わらせるためにホープレイの左右にいるシャーク・ドレイク・バイスと銀河眼の光子竜皇に最後の攻撃命令を下す。
「「海魔を薙ぎ払え!シャーク・ドレイク・バイス!銀河眼の光子竜皇!!」」
シャーク・ドレイク・バイスの無数のレーザービームと銀河眼の光子竜皇の光の竜の咆哮が轟き、海魔を一気に薙ぎ払い、勝利への道標を作る。
「「行け、ホープレイ!!ユニコーン・スラッシュ!!!」」
ホープレイの全力の槍投げで一角獣皇槍を投げ飛ばした。
一角獣皇槍の上に乗ったZEXALは余りの勢いに投げ出されそうになったが必死に踏ん張った。
「無駄だぁ!聖杯に敵う力などーー」
ジルは聖杯の力で障壁を作り出して一角獣皇槍を止めようとしたが、それは無駄である。
「「ユニコーン・キングを装備したホープレイの効果で、お前の効果は無効となっている!!」」
障壁は呆気なく破壊され、その槍の速度が止まることない。
「何ぃっ!?馬鹿な、馬鹿なぁあああああっ!?」
「「これで終わりだ!ジル!!」」
一角獣皇槍はジルごと海魔に突き刺さり、槍に込められた聖なる力が一気に解き放たれ、光の大爆発を起こす。
海魔は一瞬にして全て消滅し、眩い光が辺りを覆い尽くす。
すると、眩い光の中から一筋の金色の光が飛び出した。
それは爆発の瞬間に大剣と合体を解除して元の一角獣の姿に戻った一角獣皇槍でその背中にはZEXALが乗っていた。
そして……その胸の中には海魔の中から救い出したジャンヌ・オルタが静かに眠っていた。
この特異点の戦い、その全ての元凶であるジルを打ち倒し、邪竜百年戦争は終わりを告げた。
しかし遊馬とアストラルにはまだやるべきことが残っていた。
目の前の眠っている少女を消滅させないため、ZEXALは再び奇跡を起こす。
.
今回の話で自分の全てを出し切った気がします。
満足したぜ……。
やっぱりZEXALはいいですね。
サーヴァントの皆さん、驚くのはまだ早いですよ。
ZEXALにはまだ二段階進化を残していますかね(笑)
次回はエピローグで第1章は完結です。
ジャンヌ・オルタの運命はZEXALの手に掛かってます。