Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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No.99希望皇ホープ・ドラグナー……恐らくは最後のナンバーズと思われるその効果はまさに皇!
他の1から100のナンバーズを自由に呼び出せるとか最高です!
ナンバーズを集めてて良かったと思いました。
この性能は最終決戦仕様と言ってもおかしくないので未来龍皇ホープも含めてどこで出すべきかマジで悩みます。


ナンバーズ170 遊☆戯☆王ZEXAL 第二部・第三章『滅びゆく三つの世界!ZEXAL VS No.96(前編)』

四つの遺跡を巡った遊馬達は一度日本に帰還してそれぞれの家に帰宅した。

 

遊馬は小鳥とアストラルと一緒に九十九家に帰るが……そこで待ち構えていたのは明里の怒号だった。

 

「こらぁ!遊馬!今までどこほっつき歩いてたのよ!!」

 

遊馬達は一刻も早く遺跡のナンバーズを集めるためにサルガッソの時とは違って明里達に何も言わずに向かってしまったのだ。

 

母親代わりを務めている明里は遊馬のことを心配すると同時に小鳥を連れ回したことに激怒していた。

 

春は遊馬達が冒険に出かけたのだと察していたのであまり心配せずに見守っていたが、明里は反省しない遊馬にプロレス技のコブラツイストを喰らわせて折檻する。

 

「何が大冒険よ!反省しろ、この!!」

 

「ギャーッ!?」

 

いつも以上に激しい明里からの折檻を受けて心身共にダメージを受けていると遊馬の目に映ったのは春が見ていたニュースに出てるある人物だった。

 

『春さーん!遊馬ー!』

 

「ろ、六十郎じいちゃん!?」

 

ニュースに出ていたのは何と遊馬のデュエルの師匠・六十郎だった。

 

六十郎はある歴史的な発見をした事でニュースに出演しているようだった。

 

それはこの地の戦国時代の武将を祀った石像なのだが……。

 

「「「……ギラグ?」」」

 

その武将の石像はバリアン七皇の一人、ギラグに瓜二つだった。

 

伝説の武将の名は喜楽壮八。

 

戦上手で並み居る武将達と戦い、戦で得た富は全て領民に分け与えていた。

 

自分は徹底して質素倹約し、この地では伝説の名君と言われた男だ。

 

「ノッブ、そんな人……戦国時代にいましたか?」

 

「いいや、そんな奴の名は聞いたこともない。多分、その男が存在するのはマスターの世界だと思うが……」

 

沖田は戦国時代の大名でもあるノッブに一応念のために確認したが、喜楽壮八の名前は聞いたこともない。

 

ノッブは恐らくは喜楽壮八は遊馬の世界にだけ存在する戦国武将なのだと推測する。

 

今回発見された石像の他にも色々な宝が見つかり、助手として一緒に出演していた闇川が宝を入れた箱を持ってきた。

 

箱の中には小判や勾玉などの宝が入っていたが、その中には何故か一馬の覇者のコインも一緒に入っていた。

 

覇者のコインにアストラルが思い出したかのように説明した。

 

実は遺跡のナンバーズが示す地図には何とこの日本にもあったのだ。

 

遊馬達は真相を知るためにも急いで喜楽壮八の石像がある決闘庵に急いだ。

 

決闘庵への階段を登りながら喜楽壮八の石像からギラグの伝説だと考えるが、ギラグが偉い武将だとはいまいちピンと来なかった。

 

すると、上から悲鳴が聞こえると階段を転げ落ちてきたのは……なんとギラグと喜楽壮八の石像だった。

 

遊馬は咄嗟に小鳥を押し出したが、遊馬は転げ落ちてきたギラグと石像に巻き込まれて一緒にそのまま転げ落ちていく。

 

なんとか階段の中腹で止まり、頑丈な遊馬は特に大きな怪我もなく起き上がり、ギラグも起き上がったが……。

 

「はっ、これは!?やっと自由になれただポン!」

 

鼻が真っ赤に染まり、頬から左右にそれぞれ3本の長い髭が生えていた。

 

顔だけでなく声も違って礼儀正しくなったギラグはそのまま立ち去ろうとしたが……。

 

「俺の体、返しやがれ!」

 

突如、石像が立ち上がってギラグの声が響いた。

 

「石像じゃねえ、俺はギラグだ!」

 

石像がギラグと名乗り、訳がわからない遊馬達にギラグは必死に説明する。

 

「わかんねえけど、この石像の中に取り込まれちまったんだ!あいつ、あそこにいる俺はナンバーズの精霊だ!」

 

どうやら石像の中にいたナンバーズの精霊とギラグの魂が入れ替わってしまったようだった。

 

しかし、そう簡単に信じられない遊馬達にギラグはハートランド学園で潜入捜査していた時の遊馬の秘密を暴露し始めた。

 

「俺はお前のことを何だって知っているぞ。お前、その女の弁当のおかず、いつも盗み食いしてたろ。バリアンの情報網を舐めんなよ!」

 

遊馬は実は学校のお昼休みでみんなで昼食を食べているときに小鳥の弁当の鳥の唐揚げなどのおかずを盗み食いしていたのだ。

 

今時子供でもやらない弁当の盗み食いをする遊馬に対し、みんなからのジト目で冷たい視線で見つめられる。

 

そして、その時のことを思い出した小鳥は怒りのオーラを放ち、遊馬は全身に汗をかきながら小鳥の前で正座をして頭を下げる。

 

「あの時は色々あってすっかり忘れていたけど……遊馬、どうして私の弁当のおかずを盗み食いしていたのかしら?」

 

「え、えっと……こ、小鳥様の作ったお弁当のおかずが美味しそうだったので、つい……」

 

遊馬は小鳥以外の弁当を盗み食いをしていない。

 

「ふーん……盗み食いしたくなるほど、私の作ったお弁当を食べたいんだ……」

 

それはつまり……遊馬は小鳥の料理が美味しい、盗み食いをしてでもいつも食べていたいと言う事実でもある。

 

その事実に気づいた小鳥は自然と怒りのオーラが消えて笑みを浮かべて遊馬に宣言する。

 

「しょうがないわね。今度からお弁当の量を倍に増やして持ってきてあげるわ。盗み食いなんてはしたないことをしないで、一緒に食べましょう」

 

「マ、マジで!?ありがとうございます、小鳥様!!」

 

ちゃっかり遊馬にお弁当を作る約束と好感度を上げた小鳥のあざとさにマシュ達の嫉妬の視線が向けられるのだった。

 

ギラグの肉体に入ったナンバーズの精霊はこれからは自分が喜楽壮八になると宣言し、アストラルは伝説の武将の喜楽壮八はやはりギラグだと確信する。

 

「おい、頼む!デュエルで奴に勝って俺の体から追い出してくれ!」

 

ギラグは石像に閉じ込められて動けないので敵である遊馬に頼み込んだ。

 

「敵に肉体を取り戻してくれとか頼んでどうするのよ……」

 

「バリアンの人たちって……どこか抜けているね……」

 

「本人達は否定するけど、人間らしいよね……」

 

オルガマリーとロマニとダ・ヴィンチちゃんはギラグやバリアン七皇は敵であるが、とても人間らしいなと思うのだった。

 

ナンバーズの精霊は遺跡のナンバーズを所有しているので、回収するためにも遊馬はデュエルを挑む。

 

ナンバーズの精霊は可愛らしい狸の姿をしたモンスターを繰り出し、早速遺跡のナンバーズを召喚する。

 

「現れろ、No.64!混沌と混迷の世を斬り裂く知恵者よ。世界を化かせ!『古狸三太夫』!」

 

現れたのは赤と黒の甲冑に身を包んだ武将の姿をした狸だった。

 

古狸三太夫は自分フィールドに影武者狸トークンを特殊召喚し、フィールドの一番攻撃力の高いモンスターと同じになり、更に影武者狸トークンがいるときに古狸三太夫は攻撃対象にならない効果を持つ。

 

影武者を繰り出して自分の身を守るまさに武将らしい効果である。

 

続く遊馬のターンで手札には希望皇ホープを呼び出せるカードが揃っていたのだが……。

 

「ポ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポ……ポーン!」

 

突然ナンバーズの精霊は団扇を持って簡単な舞を見せて両眼を強く見開いた。

 

そして……次の瞬間、驚くべき事態となった。

 

「遊馬……ヒゲ?」

 

「ど……あっ?ちょっ……うわ〜っ!お前!?」

 

遊馬の鼻が赤く染まり、頬にはヒゲ。

 

そして、ギラグは困惑している様子。

 

この光景にマシュ達は血の気が引きながら顔を引き攣らせた。

 

「ま、まさか……遊馬君と精霊が入れ替わったんですか!?」

 

ナンバーズの精霊は今度は遊馬の体と入れ替わったのだ。

 

心……魂が二つの肉体の間で入れ替わったと言うとんでもない事実にエルメロイII世はテーブルを思いっきり叩きながら立ち上がった。

 

「ふざけるな!魂がゲームのカセットのように簡単に入れ替わってたまるか!?しかも入れ替わっていながら体に何の影響も無いとかどう言うことだ!?生きていた頃は人間に変化していたと言うことは相当な力を持つ狸……いや、この場合は日本風に言うなら変化狸か。ドラッグルーオンの経緯も考えると、死後にナンバーズの力と一体化したことで魂の入れ替え能力を手に入れたと言うのか……!?」

 

この魔術世界では魂の入れ替えなどそれこそ大掛かりな儀式でもしない限りは簡単にできるはずがない。

 

しかし、ナンバーズの精霊として魂が高い次元として昇華したことで簡単にその能力を使えることにエルメロイII世は頭を抱えながら推理するのだった。

 

遊馬の体を支配したナンバーズの精霊は次々と手札のカードを場に出していき、本来ならば希望皇ホープを出せるはずがそれを無視して好き勝手に展開したのだ。

 

死者蘇生などの有力カードさえも無駄遣いしていき、遊馬のフィールドは無茶苦茶になってしまった。

 

そして、バトルを行う瞬間に遊馬とナンバーズの精霊はそれぞれ元の体に戻り、影武者狸トークンの攻撃で遊馬に大ダメージを与える。

 

遊馬は何故こんなことをするのかと尋ねると、ナンバーズの精霊は自分の事を語り始めた。

 

ナンバーズの精霊……その正体はデッキ内容や口癖からも察せられるが元々はタヌキで、喜楽壮八の影武者だったのだ。

 

戦国時代……激しい戦いの中、迷い込んだタヌキを喜楽壮八が助けた。

 

タヌキはその恩に報いるために喜楽そっくりに変化をして影武者となり、代わりに戦をしたのだ。

 

タヌキは人間ではないが、戦の天才で連戦連勝を飾るほどとても強かったのだ。

 

「た、狸が戦を……?」

 

「え?嘘、マジで?あの狸……有能じゃの。是非ともわしの配下にマジで欲しい」

 

沖田はタヌキが武将として戦をしていたことに困惑し、ノッブはその有能すぎる能力からマジで欲しいと思うのだった。

 

ちなみに戦を経験したことのある多くのサーヴァント達はタヌキが変化をし、更には戦の天才というとんでもない存在に遊馬達の世界の『異常』さを改めて感じるのだった。

 

しかし、喜楽は突然狸をクビにして国から追い出し、それから間も無く喜楽は戦に負けて死んでしまった。

 

タヌキは自分がやれば絶対に勝てていたと思うと同時に自分を捨てた喜楽をざまぁ見ろと蔑み、それから間も無くタヌキも死んでしまった。

 

そして気がつくとタヌキの魂は喜楽石像の中に閉じ込められてしまい、今度はタヌキはギラグの体を乗っ取って本物の喜楽壮八になると決意したのだ。

 

タヌキの話を聞き、遊馬はギラグへの想いを打ち明ける。

 

「なあ、タヌキよ。お前が言うようにギラグの野郎は卑怯なところはある。せこいところもある。嫌な野郎だ。でも……でもさ、俺どっか憎めねえんだよ、奴を……」

 

わずかな時間ではあるがスポーツデュエル大会の時に共にデュエルをし、倒れたアリトの為に命懸けで戦ったギラグの事を卑怯なところはあるが、どこか憎めなかった。

 

しかし、タヌキは遊馬の言葉に耳を傾けずデュエルを続行し、古狸三太夫と影武者狸トークンでダイレクトアタックをしかける。

 

大ダメージを受け、最後の攻撃が来た瞬間、遊馬が最初にセットした罠カード『バースト・リバース』を発動し、墓地からドドドガッサーを裏守備表示で特殊召喚する。

 

ドドドガッサーは攻撃力は0だが、守備力は3000もあるので影武者狸トークンのバトルは中止となる。

 

続く遊馬のターンでドドドガッサーを反転召喚する。

 

ドドドガッサーは普通に召喚してもその力を発揮できない。

 

真の能力は裏守備表示でセットしてから反転召喚した時にのみ、大きな力が発揮されるのだ。

 

反転召喚した時、相手フィールド上のモンスター2体を選択して破壊し、更に攻撃力はお互いのライフポイントの差分アップする。

 

それにより、2体の影武者狸トークンが破壊され、ドドドガッサーの攻撃力が一気に3500に上昇する。

 

ドドドガッサーの攻撃時、タヌキは罠カード『千畳敷返し』を発動してドドドガッサーを破壊して攻撃力分のダメージを与えようとした。

 

しかし、そこで遊馬のカウンターが入る。

 

今ドローしたモンスターカード『チャウチャウちゃん』は手札から墓地に送ることで相手が発動した罠カードの効果を遊馬が発動することが出来る。

 

これにより、千畳敷返しの効果の対象がドドドガッサーではなく古狸三太夫に移り、古狸三太夫は破壊されてタヌキに攻撃力分のダメージを受ける。

 

そして、ドドドガッサーのダイレクトアタックが炸裂する。

 

「ポン太ぁーっ!!」

 

ダイレクトアタックを受け、吹き飛ばされるタヌキにギラグは『ポン太』と悲痛な叫び声を上げて呼んだ。

 

今回のデュエルは奇跡的にナンバーズ無しでも勝利することができた。

 

ギラグは石像のままタヌキ……否、ポン太の前に近づいた。

 

ギラグは優しい声でポン太に話しかけた。

 

どうやら喜楽壮八としての記憶が蘇ったらしい。

 

ポン太は何故自分を捨てたのかと震えながらギラグに尋ねた。

 

それは……領民にばかり富を与えていた喜楽を気に入らない家臣達が寝返ったのだ。

 

気付いた時にはどうにもならない状況でせめてポン太だけでも生き延びて欲しいとあえて最低な言葉を言って逃したのだ。

 

真実を聞いたポン太は大粒の涙を流した。

 

自分だけ生き延びても意味がない、共に戦おうと言って欲しかった、最後まで一緒にいたかったと……。

 

真実を知り、全ての悔いが無くなったポン太はギラグの体から抜けて成仏して消えようとした。

 

その時だった。

 

「んなわけねえだろ!!!」

 

石像が壊れてギラグの魂が飛び出してポン太の魂を掴むとそのまま食べて自分の中に取り込んでしまったのだ。

 

ギラグの魂は元の肉体に戻り、ギラグは悪人面を見せる。

 

「へっ!まんまと作り話に引っかかりやがって……お前らみんな、化かしてやったぜ!」

 

先程の話はギラグの作り話で全てはポン太を騙すための嘘だった。

 

「お前!」

 

「九十九遊馬……今度会う時は必ず、お前を倒すっから!」

 

ギラグはそう言い残すと異世界の扉を開いて撤退した。

 

「ギラグ!お前は……」

 

遊馬はギラグの卑劣な行いに怒りを覚えるのだった。

 

予想外過ぎる展開にマシュ達は呆然としていると、ジャックは遊馬に近づいて服の裾を軽く引っ張る。

 

「ねえねえ、おかあさん」

 

「ん?ジャック、どうした?」

 

「あのギラグ……解体してもいい?」

 

ジャックはギラグの体を解体して中にいるポン太を助けようと思ったらしく、ナイフとメスを取り出していた。

 

遊馬は苦笑いを浮かべながらジャックの頭を撫でる。

 

「え、えっと……ギラグとポン太の事なら大丈夫だから、解体はやめような?」

 

「……ほんとう?」

 

「ああ、もちろん!人間界に行ったらちゃんと会わせてやるからさ!」

 

「うん!わかった!」

 

ジャックを諭して元の席に座らせる。

 

一方、ノッブと清姫はギラグの嘘に唸りながら疑問を持っていた。

 

「うーむ、あの時代背景ならギラグの話もあながち作り話と言えなくもないが……」

 

「映像だから分かりづらいですが、私にはギラグさんの話が全て嘘とは思えませんね……」

 

戦国武将としての経験と嘘を見破る二人の視点からギラグの話が嘘だとは思えなかった。

 

第五の遺跡のナンバーズを回収し、残るは二つの遺跡のナンバーズのみとなった。

 

第六、第七の遺跡は同じ場所にあるが、今度はインド洋のど真ん中にあり、地図上では陸地がどこも見当たらなかった。

 

今回は最初と同じで遊馬とアストラルと小鳥、凌牙と璃緒の5人のメンバーで向かうこととなり、早速かっとび遊馬号で遺跡に向かう。

 

異次元トンネルで向かう中、遊馬はバリアンについて改めてアストラルに尋ねた。

 

「なあ、アストラル。バリアンの奴ら、あいつら本当に人間だったんだよな?」

 

「ナンバーズから得た記憶に間違いは無い」

 

「バリアンって、要するにお前みたいな存在なんだろ?」

 

「アストラル世界とバリアン世界を同じとするなら、そう言うことになる」

 

「なんであいつらがバリアンに?」

 

「彼らの伝説に共通する『何か』が、彼らをバリアンに転生させたのかもしれない」

 

アストラルは元人間であったバリアン七皇の魂が『何か』によって、アストラル世界ではなくバリアン世界に向かったのではないかと推測する。

 

そんな二人の話に凌牙は割り込み、バリアンに深入りするなと警告する。

 

「デュエルに感情を持ち込まないのが、君の哲学というわけか」

 

「戦う理由は常に自分のためだけでいい。だから俺は一匹狼でいる」

 

凌牙は己を一匹狼と称して遊馬とアストラルに自分の戦いの信念を伝えた。

 

「一匹狼……でも、凌牙さんには妹の璃緒さんがいますし、何だかんだで遊馬君達と一緒にいますよね?」

 

一匹狼と自称する凌牙だが、とてもそうは思えないとマシュはツッコミを入れてみんなはそれに同意するように何度も頷く。

 

異次元トンネルを抜けて、地図の指定されたポイントに到着したが、そこは予想通り海の真上で陸地はなく、しかも遺跡のナンバーズの影響かとてつもない嵐が吹き荒れていた。

 

あまりにも危険なので一度この場から撤退しようとしたが、飛行船の動力が停止してしまい、この場に留まった。

 

まるで飛行船が意思を持つようにこの場から動かないようだった。

 

すると、璃緒は何かの声が聞こえ、そのまま導かれるように意識が朧げになりながら体が勝手に動き、操舵室から出ていくと大雨と暴風が吹き荒れている外の甲板へと出て行った。

 

そして……凌牙の静止の声も聞かずに、驚くことに璃緒は甲板から飛び降りてしまった。

 

そのまま璃緒は海の底に消えていく。

 

凌牙は璃緒を追いかけて自らも飛び降り、遊馬とアストラルも後を追う。

 

流石に小鳥は後を追って飛び降りる出来ず、飛行船をそのままにするわけにもいかないので一人で留守番となってしまった。

 

遊馬達は海の中で意識を失ってしまった。

 

そして……目が覚めた遊馬達が見た光景は想像を絶するものだった。

 

それは海の底にある巨大な海底神殿だった。

 

驚くことにこの海底神殿は空気で包まれていて水がほとんどなく、遊馬達が問題なく呼吸が出来るほどだった。

 

しかも、海底神殿には2枚の覇者のコインがあり、ここが目的の遺跡だということが示されていた。

 

「すっげぇな、マスターの世界は。海の底にあんなでけぇ海底神殿が今でもあるなんて」

 

「確かに凄いけど……あのコインがあるってことは、マスターのお父さんも来たことがあるのよね。どうやって海の底まで来たのかしら……?」

 

海神の息子のオリオンは神の力が宿る海底神殿が異世界にも残っていることに驚き、アルテミスはその海底神殿に一馬がどうやって来たのか疑問に思うのだった。

 

遊馬達は海底神殿に入るが、そこはただの神殿ではなく巨大な迷路だった。

 

遊馬は一馬の教えから迷宮の抜け方であるひたすら壁沿いに進む右手方を使って迷宮を進んでいく。

 

しかし、いつのまにか凌牙と離れ離れになってしまい、迷宮の入り口まで戻ろうとしたが戻ることができずアストラルは同じところを何度も進んでいることに気がつく。

 

この迷宮は常に壁が作られていて形が変わっていくのでこれでは凌牙と璃緒の元には辿り着くことができない。

 

どうやって進めば良いのか悩んでいると、海底神殿を包む空間の一部が破れてそこから大量の海水が流れ込むと一人の来訪者が現れた。

 

「あっ……ドルベ!?」

 

「遊馬、アストラル」

 

「何でお前がここに!?」

 

「お前達を追ってきた。これ以上、ナンバーズを渡すわけにはいかない」

 

人間ではなくバリアンの姿のドルベが遊馬とアストラルの前に現れた。

 

「ここで決着をつけようってのか。ドルベ、どうしてもお前と戦わなくちゃならないのか!?」

 

「何を今更……」

 

「だってお前は俺たちを助けてくれた!あの時、あの遺跡でお前が居なかったら、俺たちはどうなっていたか。だから……!」

 

「それはお前の勝手な思い込みだ。所詮、我らは戦わねばならぬ宿命」

 

「なあ、ドルベ。遺跡にあった伝説はお前達のことなんだろ!?何があったのかわかんねえけど、お前達は元々俺たちと同じ人間だったんだ!それがどうしてアストラルと戦わなきゃならねえんだよ!?」

 

「ふざけるな!我らが人間だったなどそんな話、私は信じない!」

 

ドルベはバリアンとして人間を下として見ており、自分が元人間だと言うことを強く否定する。

 

「バリアン世界はアストラル世界と対となる世界。そして、敵対する世界だと運命づけられている!」

 

アストラル世界とバリアン世界は敵対する関係だが……実は何故敵対するのか、何故戦わなければならないのかと、本当の意味をどちらも理解していないのだ。

 

「なんだよ、それって……じゃあ、お前もアストラルも、戦う本当の意味を知らないってことじゃねえか!?そんなくだらねえことで戦ってんじゃねえ!!」

 

明確な理由も目的もなく、一見すれば無意味な戦いを行なっているアストラルとバリアン七皇に対し、遊馬は真っ向から否定する。

 

無意味な戦いを正論で否定した遊馬の言葉にサーヴァント達の何人かの心にグサッと突き刺さるのだった。

 

「お前が何と言おうと、我々が共に生きることはない。そうだな、アストラル!」

 

「私の使命は……バリアン世界を滅ぼすこと」

 

「ア……アストラル……?」

 

遊馬はアストラルから見たことない不穏な雰囲気を漂わせながら滅ぼすと恐ろしいことを口にしたことに唖然とする。

 

「さあ、決着をつけよう!デュエルだ!」

 

「ドルベ、デュエルの前に一つ聞きたいことがある。バリアンの七皇の中に、まだ我々が出会っていない者が二人いる。この遺跡には恐らくその者達の伝説が残されているはず。何故その二人は私たちの前に姿を現さない?」

 

アストラルは未だ姿を現さないバリアン七皇の残る二人についてドルベに尋ねた。

 

「その二人とは……我らバリアン七皇のリーダー、ナッシュ。そして、メラグ……彼らは必ず生きている。そして、戻ってくる!」

 

ナッシュとメラグ。

 

行方不明となっている理由は不明だが、二人は必ず戻ってくるとドルベは心の底から信じている。

 

すると、突然海底神殿の上空にオーロラが現れ、そこに凌牙と璃緒がデュエルをしている光景が映し出されていた。

 

何故二人がデュエルをしているのか遊馬は困惑していると、ドルベは何かを感じ取ったのか遊馬とデュエルをせずに空を飛んで遺跡の中心地へ向かう。

 

遊馬は飛ぶことは出来ないのでどうすることもできずにいると、アストラルはドルベが開けた穴から流れた海水を見て打開策を見つけた。

 

遊馬は一寸法師をモチーフとしたモンスターの『針剣士』を召喚し、針剣士はお椀で川を渡った一寸法師のようにカードに乗りながら海水の上を進んでもらった。

 

アストラルは水の流れる先が迷宮の出口があると答えを見つけ、遊馬は針剣士の後を追う。

 

すると突然、アストラルの目の前に遺跡とは全く異なる光景が広がった。

 

それは夕暮れ時に数多の船が戦を繰り広げており、その中心には巨大な海神が現れていた。

 

「なんだ?はっ!?ここはまさか、遺跡の記憶の中!?」

 

アストラルはそれが遺跡に眠る記憶だとすぐに分かったが、その記憶には驚くべき人物達の姿があった。

 

「りょ、凌牙さん……?璃緒さん……?」

 

そこには何と船の上で多くの兵士を引き連れた剣士の姿をした凌牙と巫女の衣装を着た璃緒がいた。

 

更に驚くことに凌牙と璃緒と対峙する敵は何とベクターだったのだ。

 

「ベクター!またあんたなの!?」

 

ベクターの思わぬ登場にレティシアはまたなのかとツッコミを入れた。

 

ベクターは海神を操って街を破壊し尽くしていく。

 

そこに璃緒が馬を使って海神に近づくと、海神は璃緒を捕らえて人質にした。

 

ベクターは璃緒を人質に凌牙に降伏しろと言うと、そこに乱入者が現れた。

 

「我が友よ、何を驚く。私が君の危機に駆けつけないと思ったか!」

 

それは天を駆けるペガサスに乗る騎士……ドルベだった。

 

ドルベは凌牙を友と呼び、これが過去に起きた本当の記憶ならばドルベと凌牙は過去の世界において友人同士ということになる。

 

「そんな……私が、過去で、凌牙と……!?」

 

衝撃の事実にアストラルとドルベが驚く中、璃緒は海神の手の上で目を覚まして立ち上がる。

 

璃緒は覚悟を決めた様子で凌牙に向けて笑みを浮かべた。

 

「邪の呪印を解くには聖なる代償で神を浄化するしかない。お兄様、私の魂がアビスを浄化するわ」

 

「璃緒……璃緒!!」

 

璃緒はその場から飛び降りて自ら生贄となって海に飛び込んだ。

 

そして、海の中に消えた璃緒……そこから眩い青き光が放たれて海神を浄化するモンスターが現れた。

 

この記憶の光景にアストラルとドルベはある結論に辿り着く。

 

「まさか、シャークと璃緒は……」

 

「ナッシュとメラグだと言うのか……!?」

 

凌牙と璃緒がナッシュとメラグ。

 

バリアン七皇の最後の二人。

 

その驚愕の事実にマシュ達はこの映画を見て一番の衝撃を受けた。

 

「そ、そんな……お二人が……バリアン……!?」

 

遊馬の仲間である凌牙と璃緒が人間ではなく、実は敵対するバリアン七皇のメンバーだと言う事実に驚きや困惑の表情を浮かべる。

 

一方、遊馬は水の流れを辿って遂に迷宮の到達点である中央の祭壇に到着した。

 

しかし祭壇では凌牙は璃緒ではなく、この遺跡のナンバーズの精霊・アビスとデュエルをしていた。

 

驚くことに巫女の装束に身を包んだ璃緒が精霊の手によって渦の中に落として生贄に捧げられようとしていた。

 

「そんな……今のは、俺の記憶……俺は璃緒を救うことはできなかったのか……」

 

「このフィールドはお前の心そのもの。お前は再びこの世界でも妹を失うことになる。お前の心の弱さが大切なもの全てを失わせる」

 

「璃緒っ!!」

 

デュエル中で璃緒を助けることができない凌牙は絶望に打ちひしがれる中、仲間を救い出す為に遊馬が走り出す。

 

「遊馬!?」

 

「かっとビングだ、俺ぇっ!!!」

 

自分の身を顧みず、遊馬は全力疾走から大きくジャンプして璃緒に向かって飛びつきながら抱きつく。

 

抱きついた勢いで璃緒は間一髪のところで生贄から解放され、そのまま遊馬と共に床に転げ落ちる。

 

咄嗟に遊馬が身を挺して璃緒が傷つかないようにしっかりと抱き寄せて、床に背中を打ったが、受け身を取ったのでダメージはほとんどなかった。

 

「シャーク、妹は助けたぜ!心置きなく、そいつをぶっ倒せ!!」

 

璃緒は意識を失っているが体には傷一つなく、遊馬はグッドサインを見せながら絶望しかけていた凌牙を鼓舞する。

 

アストラルは記憶の世界から戻ってくると遊馬が命懸けで璃緒を救い出したことに安堵の笑みを浮かべる。

 

「「「おお〜!」」」

 

璃緒を見事救い出し、更には凌牙を鼓舞する遊馬の勇気ある行動にマシュ達は感心して拍手を送る。

 

「恐らくはあれは神への生贄のはずだ。しかし、ユウマ様は臆することなく仲間のリオを身を挺して救った……流石はユウマ様だ!」

 

「もしもあと少し遅ければ間に合わなかったかもしれません。しかも失敗すればユウマ様の身も危ない……そんな中の決死の救出。お見事です、ユウマ様」

 

ラーマとシータは自分たちを命懸けで救ってくれたことを思い出しながら遊馬への信頼度と忠誠心を更に高めるのだった。

 

ちなみに魔術サイドと神霊サイドからしたら遊馬の行動は冷や汗ものだった。

 

本来ならば神への生贄は古来より世界各地で行われており、国や宗教などで違いはあるが基本的には神聖なものであり、それを阻止することは絶対にあってはならないことだ。

 

もし仮に阻止することがあらば神の怒りが降り注ぐことになるだろうが、遊馬は大切な仲間を守るためならその神すらぶっ飛ばすだろうとマシュ達は頷きながらそう思うのだった。

 

「遊馬……」

 

璃緒を救出されて安堵した凌牙の前に一枚のカードが現れた。

 

「このカードは璃緒の化身のナンバーズ……!」

 

それはアビスが召喚した遺跡のナンバーズ……『No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ』と同じ、この遺跡に眠るもう一枚のナンバーズだった。

 

そしてそれは記憶の世界で璃緒が命を捧げて生まれたナンバーズでもある。

 

「さぁ、凌牙。我を倒し、自分の記憶を取り戻し、皇として世界を導くのだ!」

 

「ふざけるな。俺は誰でもねえ。俺は俺だ!!」

 

遊馬の鼓舞で立ち上がった凌牙は反撃に出る。

 

凌牙はフィールドにレベル5のモンスターを召喚し、既に召喚して破壊されていた『ブラックレイ・ランサー』を死者蘇生で復活させて罠カード『フル・アーマード・エクシーズ』を発動してエクシーズ召喚を行う。

 

「現れろ、No.94!氷の心を纏し霊界の巫女、澄明なる魂を現せ!『極氷姫クリスタル・ゼロ』!」

 

現れたのは氷の姫巫女でどことなく璃緒によく似たナンバーズだった。

 

フル・アーマード・エクシーズの効果でクリスタルゼロにブラック・レイ・ランサーを装備させて攻撃力を上昇させる。

 

クリスタル・ゼロはオーバーレイ・ユニットを使って相手モンスターの攻撃力を半分にする効果を持ち、二つのオーバーレイ・ユニットを使ってアビス・スプラッシュの攻撃力を半分の半分で四分の一にまで減少させた。

 

ブラック・レイ・ランサーの力を身に纏ったクリスタル・ゼロの怒涛の攻撃でこの遺跡のナンバーズであるアビス・スプラッシュを撃ち破り、ナンバーズの精霊・アビスに打ち勝ったのだ。 

 

「何故だ?どうして璃緒と俺にこんなことを……」

 

「我はそなたの命令に従ったまで。そなたの記憶を呼び覚ますという命令に……」

 

「俺の命令だと?おい、どういうことだ!?おい!」

 

アビスの姿が消えると、凌牙の手にアビス・スプラッシュのカードが収まる。

 

「これが俺のナンバーズ。まさか、そんな……」

 

2枚のナンバーズを凌牙が手にし、遊馬達に濃霧が出現するとアビスの力によって遊馬達はかっとび遊馬号の甲板に転送した。

 

小鳥は帰ってきた遊馬達に安堵するが、璃緒は未だに意識を失ったままだった。

 

「璃緒!!!」

 

凌牙は目を覚さない璃緒に駆け寄った。

 

七枚の遺跡のナンバーズを巡る旅は終わりを迎えた。

 

しかし、それにより隠された真実が判明し、遊馬達の戦いにかつてないほどの大きな変化が及ぼすことになるのだった。

 

 

 




次回はNo.96との決戦でそれが終わったらマシュの出生秘密の話を書いていよいよ第六特異点に入る予定です。
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