Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回はジャンヌ・オルタちゃん回です。

ヌメロン・コードやバリアン七皇の話も含めています。

先週からお願いした小鳥ちゃん登場のアンケートですが、現在の投票結果は賛成12票、反対5票です。

小鳥ちゃん達の正妻戦争を見たい反面、マシュ達ヒロインが影になりやすいと思う意見もあったので賛否両論がありました。

6月10日までなので残り4日、よろしくお願いします。


ナンバーズ17 竜皇の巫女

廊下で外の雪景色を眺めているジャンヌ・オルタに遊馬が通りがかって一緒に外の風景を見る。

 

「遊馬、何をしているのよ。子供はもう寝る時間よ?」

 

「仕方ねえじゃねえか。ダ・ヴィンチちゃんに夜遅くまでかっとび遊馬号の調査に付き合わされたんだからよ……」

 

げっそりとした様子で遊馬は大きなため息をついた。

 

「あの天才に付き合わされたらめんどくさそうね……アストラルは?」

 

「アストラルは皇の鍵の中で休んでる。ダ・ヴィンチちゃんに遊馬号についてかなり質問攻めを受けて疲れていたからな」

 

ダ・ヴィンチにとって皇の鍵の飛行船……かっとび遊馬号は人間界とアストラル世界の叡智の結晶とも言える、異世界の未知なる技術で作られた飛行船。

 

天才発明家でもあるダ・ヴィンチが遊馬達に役に立つであろう新たな発明を思いつくために、そして自分の探究心のために遊馬とアストラルを巻き込んだ。

 

「二人ともお疲れ様……」

 

「おう、サンキュー……あ、そうだ。ジャンヌ、これ飲むか?」

 

遊馬は両手に持っていた円柱の形をしたアルミ製の物……ジャンヌ・オルタからしたら未来の物である缶ジュースを見せる。

 

「何それ……?」

 

「さっき、ロマン先生から貰った差し入れの缶コーラ。ジャンヌにとって未知なる飲み物だけどな」

 

「コーラ……良いわ、飲んでみようじゃない。って、どうやって開けるのよ?」

 

「待ってろ、すぐに開けてやるから」

 

缶コーラのプルタブを開け、炭酸が溢れる音が鳴り、ジャンヌ・オルタに渡して遊馬も自分の缶コーラを開けた。

 

「はい、乾杯」

 

「乾杯」

 

缶コーラを軽くぶつけ、二人同時に口をつけて喉に流す。

 

しかし、炭酸飲料を初めて飲むジャンヌ・オルタは驚いてコーラを吹き出しそうになった。

 

「ぶはっ!?な、何これ!?口の中が痺れる!?」

 

「はははっ!これが炭酸飲料って奴だ。飲み慣れれば癖になるだろ?」

 

「炭酸ね……ゴクッ!んっ、確かにこれは癖になりそうね……」

 

「コーラは未来で結構人気だからな、すんげぇ美味いんだ!」

 

「そう……良いわね、雪を見ながらこうして飲むなんて」

 

「そうだな。でも雪が晴れていれば山の上だから綺麗な星が見えていただろうな……そしたらもっと美味いだろうな」

 

「綺麗な星を見ながらね……中々のロマンチストね」

 

「そうか?そうだ、俺んちの家の屋根の上から見る景色も結構良いんだぜ。俺の部屋が屋根裏部屋だから安全に行けるし」

 

「へぇー。あなたの家、屋根の上に乗れるのね。楽しみにしているわ」

 

「おう!」

 

少し前までは敵同士だった二人だが、まるで姉弟のような楽しい話をする。

 

ジャンヌ・オルタはコーラを飲み干し、空き缶を置いて息を吐くと話を切り替えた。

 

「……ねえ、遊馬」

 

「ん?」

 

「あなた……過去を変えたいと思わないの?」

 

「……えっ?」

 

唐突なジャンヌ・オルタの問いに遊馬は目を見開く。

 

ジャンヌ・オルタはヌメロン・コードの話を聞いてからずっとその事を考えており、遊馬の答えを聞く前に更に問い続けた。

 

「だって、あなたの両親が行方不明になったり、普通に生きていたのに突然命を賭けた戦いの中に巻き込まれて……いっぱい傷ついて涙を流して……本当なら暖かい家族と幸せな生活を送っていたんじゃないの?」

 

遊馬は普通の少年だったが、両親が行方不明となりアストラルと出会ったことで壮絶なる戦いに巻き込まれた。

 

「ドン・サウザンドを倒した後にヌメロン・コードを使って遊馬の人生をやり直せば……」

 

「俺は過去を変えるつもりはない」

 

遊馬はキッパリと答えた。

 

遊馬ならそう言うと思っていたがあまりにも早い即答だったのでジャンヌ・オルタは目を丸くした。

 

「人には誰だって辛い過去を持っている。例え持ってなくてもいつかは辛い現実にぶち当たり、それが過去になる……過去があるから現在があり、未来へ繋がる」

 

「辛かったんじゃないの……?」

 

「確かに戦いは辛かったけど、俺はアストラルと出会って本当に幸せなんだ。アストラルと言う最高の相棒ができて、希望皇ホープと言う最高の切り札ができて、シャークにカイト……沢山の最高の仲間達を作ることができた。あの戦いがあったからこそ俺は掛け替えのない沢山の宝物ができたんだ」

 

「……それはあなたにとって価値のあるものをたくさん得られた戦いだったからじゃないの?私やジャンヌにはそんなもの……」

 

「確かにジャンヌは聖杯で作り出されて、姉ちゃんは火炙りで処刑されて……本当に辛かったと思う。だけどさ、これだけは言える」

 

「何……?」

 

「俺たちに出会えたじゃないか」

 

遊馬の言葉にジャンヌは目をパチクリさせる。

 

まさか遊馬がそんな言葉を言うとは思いもよらなかった。

 

確かにジャンヌ・オルタは遊馬と出会えたことでその運命が大きく変わっている。

 

「遊馬……」

 

「別にジャンヌが処刑されて良かったとは絶対に言わないけど、あの時の戦いがあったから俺たちは出会えて仲間になれた。違うか?」

 

「そうね……」

 

ジャンヌ・オルタは遊馬とアストラルによって受肉と言う新たな命を授かり、一人の少女として歩くきっかけをくれた。

 

そして……カルデアのサーヴァントの一人、遊馬達の仲間となった。

 

すると遊馬はドン・サウザンドと同じく敵だった七人の男女について話し始めた。

 

「実はドン・サウザンドに運命を狂わされた七人の皇……バリアン七皇がいたんだ」

 

「バリアン七皇?」

 

遊馬はD・パッドを取り出して操作し、そこに一枚の写真を見せた。

 

それは六人の男性と一人の女性が並ぶ写真で服装や顔つきもかなり異なっている。

 

「ドン・サウザンドがバリアン世界の為に戦う七人の皇を選んで人生を狂わせて、この七人の前世は異なる時代の英雄だったんだ」

 

「英雄……?もしかして英霊なの?」

 

「みたいなものかな?まず一人目、俺の仲間でライバル、神代凌牙ことシャーク……ナッシュ。前世はとある国の王様でバリアン七皇のリーダーだった」

 

「……仲間だったけど敵だったの?」

 

「まぁな。大切な仲間だったけど最初からアストラルと敵対する運命だったんだ」

 

「そう……どんだけ邪悪なのよ、そのドン・サウザンドは……」

 

復讐していた頃は自分は邪悪な存在だと思っていたが、ドン・サウザンドという邪神に自分の復讐がどれだけ小さかったかと思い、ため息をついてしまう。

 

「それで、二人目はシャークの妹でいもシャ……」

 

『その名で呼ぶな!!』

 

「はうっ!?は、はいっ!!?」」

 

遊馬は凛とした鋭い声が耳に響き、冷や汗をかいて周りを見渡すがこの場には遊馬とジャンヌ・オルタにしかいない。

 

「どうしたの?」

 

「い、今、恐ろしい幻聴が……え、えっと……名前は神代璃緒ことメラグ。シャークの双子の妹で前世は国王だったシャークの国の巫女をしていたんだ」

 

「へぇー、双子の兄妹なのね。兄妹にしてはかなりベタベタしている……あら?この二人、同じ指輪をしているわね……怪しいわね」

 

璃緒は凌牙の腕に抱きついており、更に二人の指には同じ指輪がはめており、ジャンヌ・オルタから見て兄妹には見えないほど仲が良かった。

 

「そうか?シャークと璃緒は両親がいないから仲が良いんだよ。三人目はドルベ。前世はペガサスに跨る騎士でシャークと仲が良くて、真面目だけどちょっと天然なんだ」

 

「ペガサスの騎士ね……メドゥーサに話したら?きっと食いつくわよ」

 

「メドゥーサもペガサスに跨るし、そうだな……後でメドゥーサには話すよ。四人目はギラグ。前世は日本で伝説の武将だったんだ」

 

「伝説の武将ね……鍛え抜いた肉体にかなり奇抜な髪型……面白そうな男ね」

 

「でもとってもいい奴だぜ。それで、ギラグの親友で五人目はアリト。カウンターが得意な熱いデュエルをして、前世は最高の剣闘士だったんだ」

 

「剣闘士か……本当にこの世界だったら英霊の座に呼ばれて、下手したらサーヴァントで召喚出来そうね」

 

「そうだな……六人目はミザエル。こいつはジャンヌと気が合うかもしれないぜ。銀河眼の光子竜と異なる銀河眼使いで、前世は竜と心を通わす少年だったんだ」

 

「え?もう一人の銀河眼使い!?しかも竜と心を通わしていた!?それは是非とも会って見たいわ!」

 

「ミザエルは根っからのドラゴン好きだからな。そして、七人目は真月零……ベクター。前世はとある国の王子で、いい奴だったけど残虐な父親に母親を殺されて、心が壊れちまって狂気の王子になっちまったんだ」

 

「……ジルと同じね。大切な人を殺されて狂っちゃったのね」

 

ジルもジャンヌが処刑されてからおかしくなり、真月に対して妙な親近感を抱いた。

 

「ああ。特にベクターから敵として酷いことを沢山されてきたけど、あいつとは親友として一緒にいた時期があったからな。裏切られても俺はあいつを信じ続けた」

 

ベクター……真月は何度も遊馬を陥れようとしたが、遊馬は真月に宿る優しい心を信じ続けた。

 

「信じるか……敵だった私ですら助けたんだもの。このベクターも救われたでしょうね……それで、バリアン七皇は遊馬達と敵として戦って……その後はどうなったの?」

 

「バリアン七皇は戦いの後に全員消滅しちまったんだ。だけど、アストラルがヌメロン・コードを使って人間として転生させたんだ」

 

「ヌメロン・コードで人間として転生させた……?凄い、消滅した存在を人間として転生させるなんて」

 

ヌメロン・コードで消滅した存在を人間として転生させる力がある事に驚き、D・パッドには遊馬とシャーク達の楽しそうな日常風景の写真が次々と映される。

 

「ヌメロン・コードを使えばドン・サウザンドに狂わされた七皇の過去の運命を正すことは出来たかもしれないけど、アストラルは過去を変えずに七皇……シャーク達に新しい未来を与えたんだ。そして、今度こそ俺たちの仲間として過ごし、今は一緒に同じ学校にいるんだ」

 

「アストラルはヌメロン・コードで下手に過去を変えずに、戦いで失った全てを取り戻したのね。そして、二度と悪用されないように封印か……きっと遊馬がいたからこそ、そう決断したのね」

 

過去を変えてしまったら今まで積み上げてきたモノが全て消えてしまう。

 

だからこそ共に生きる未来をアストラルは与えたのだ。

 

バリアン七皇の話がひと段落すると、遊馬は前々から思ったことを聞く。

 

「なぁ、ジャンヌ。いつまでも姉ちゃんと同じ名前だと不便だよな?いっそのこと、新しい名前でもつけるか?」

 

ジャンヌもジャンヌ・オルタも同じ名前で今のままだと呼ぶ時とかに不便で仕方ないので遊馬が新しい名前をつけようと提案した。

 

「私はあいつが姉とは認めてないけど……大丈夫?あなた、名付けが下手みたいじゃない。変な名前なら却下よ」

 

「だ、大丈夫だって!そうだな……えっと……」

 

遊馬が腕を組んでジャンヌ・オルタの名前を考えようと唸る。

 

その時、遊馬の脳裏に不思議な光景が広がる。

 

綺麗な青空と草原の風景にジャンヌに良く似た女子高生風の格好した少女が口を開いて何かを呟く。

 

そして、遊馬はその少女の呟きをそのまま口にした。

 

「……『レティシア』」

 

「え?」

 

「いや、頭にジャンヌに似た女の子の姿が思い浮かんで、その名前が……」

 

何故遊馬にその少女と名前が浮かんだのか分からないが、その綺麗な名前をジャンヌ・オルタは呟く。

 

「レティシア。レティシアね……うん、良い名前じゃない。気に入ったわ」

 

「本当か!?」

 

ジャンヌ・オルタは立ち上がり、黒い旗を取り出して広げ、改めて自己紹介をする。

 

「今から私の名前はレティシアよ。よろしくね、マスター」

 

「ああ!よろしくな、レティシア!」

 

ジャンヌ・オルタ……聖杯から生まれたジャンヌの偽物ではない一人の少女として付けられた新たな名前……レティシア。

 

遊馬とレティシアがハイタッチを交わすとデッキケースから光が漏れる。

 

「え?こいつは……」

 

デッキケースを開けてカードを取り出すと『FNo.62 竜皇の魔女 ジャンヌ・オルタ』の真名が変化していた。

 

「見ろよ、ジャンヌ・オルタのカード名が……」

 

「これって、名前が変わった?」

 

それは遊馬がジャンヌ・オルタに新たな名前を与え、レティシアが遊馬との間で強い絆で結ばれたことによりフェイトナンバーズに変化が起きた。

 

「『FNo.62 竜皇の巫女 レティシア』……?」

 

竜皇の魔女 ジャンヌ・オルタから竜皇の巫女 レティシアに真名が変化し、効果も一部追加されており、遊馬とレティシアは困惑する。

 

フェイトナンバーズにはまだ未知なる力が秘められている事を物語っていた。

 

「魔女から巫女に変わった……?どう言うことよ?」

 

「分かんねえ。でも、ジャンヌ……レティシアが新しい道を歩き出した証じゃねえか?」

 

復讐の魔女という鎖から解き放たれ、竜皇に仕える巫女として生まれ変わった瞬間だった。

 

「竜皇の巫女ね……本当に遊馬は面白いわ。こんなに面白いマスターは何処にもいないんじゃないかしら?」

 

「そうか?過去にも聖杯戦争があってたくさんのマスターがいたらしいけどな」

 

「イレギュラーがあったとしても、あなたみたいにサーヴァントをカード化させて新たな力を与えたり、私やジルみたいに敵を救ったりしないわよ」

 

「あはは……サーヴァントのカード化は俺も驚いたよ。もしかしたら俺自身に何かあるかもしれないな……」

 

遊馬は自分の右手を見つめると一瞬だけ金色に輝く。

 

戦いを重ねる毎に薄々自分が『普通の人間』ではないと勘付いていたが、自分が何者だろうと関係ない。

 

「ま、だとしても俺は俺だ。九十九遊馬という一人の人間には変わりないんだ。かっとビングだぜ!」

 

「それは良いんだけど……かっとビングって何よ?今まで特に気にしてなかったけど変な言葉よね?」

 

「かっとビングは父ちゃんから教わったんだ!」

 

「遊馬のお父さんから?」

 

「そう!かっとビング、それは勇気をもって一歩踏み出すこと!かっとビング、それはどんなピンチでも決して諦めないこと!かっとビング、それはあらゆる困難にチャレンジすること!」

 

かっとビングと言う遊馬の不屈の精神があったからこそ、遊馬はどんなに辛い戦いでも最後まで戦い抜くことが出来たと言っても過言ではない。

 

かっとビングこそが遊馬の根源だと理解したレティシアは納得したように頷く。

 

「勇気、諦めない、挑戦……なるほど、人間の正の心ってことね。確かに言いやすいし、力が湧きそうね」

 

「だろだろ!?レティシアも是非言ってくれ!」

 

「……考えておくわ。叫ぶのはちょっと恥ずかしいから」

 

かっとビングは確かに叫ぶのは少し恥ずかしいが、徐々に周りに浸透していく不思議な魅力があるのをレティシアは知らない。

 

実際に遊馬の仲間達はかっとビングを心に秘めて生きているのだ。

 

そして、マシュを始めとするカルデアのサーヴァント達にも徐々にかっとビングが浸透していってる。

 

「さて……そろそろ寝るかしらね」

 

「そうだな……ふわぁ……おやすみ、レティシア」

 

「ええ、おやすみ。遊馬」

 

遊馬とレティシアはその場で別れ、それぞれの自室へ戻る。

 

翌朝、レティシアが遊馬に名付けてもらったと自慢そうにみんなに話すとそれに嫉妬した清姫が喧嘩を売り、トレーニングルームで激しいバトルを繰り広げるのだった……。

 

 

 

.




ジャンヌ・オルタちゃんがレティシアに改名されました!

最初はオリジナルの名前を考えようと思いましたが、やはりジャンヌのもう一つの名前はレティシアしかないなと思ってそちらにしました。

次回は遊馬のカルデアでの1日みたいな話を書いていきます。

遊馬がカルデアでどんな1日を過ごすのかサーヴァントたちとどんな触れ合いをするのか楽しんでもらえたら幸いです。

第2章はもう少々お待ちください、私も早くネロちゃんに会いたいので(><)

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