Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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なんか今回もやりすぎた感がハンパないです。
いつものことだと突っ込まれそうですが(笑)

とりあえず遊馬くんを下手に刺激させないでくださいと言いたい(笑)

最近ちびちゅきと衛宮さんちの今日のごはんにハマってます。
平和やギャグの話は好物なのでカルデア内での日常の話はそれを目指したいです。



ナンバーズ27 因縁の再会と出会い

遊馬は連合軍の砦に向かうために『No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ』を召喚し、メドゥーサに騎乗してもらい英騎の手綱でランクを上げて運転している。

 

連合軍の兵士たちはスペリオル・ドーラという超巨大移動兵器に恐れて次々と逃げ出し、勇気を持つ者は弓などの遠距離武器で攻撃をするが、スペリオル・ドーラの装甲には傷一つ付かなかった。

 

それもそのはず、スペリオル・ドーラの守備力は驚異の4000でそのモンスター効果から鉄壁の守りが売りのナンバーズだからである。

 

「案外悪くないですね……」

 

メドゥーサはライダーとして天馬や自転車などを運転したことがあるが、まさかこれほど巨大な乗り物を乗ったことがないので新鮮な気持ちだった。

 

そして、あっという間に砦に到着し、メドゥーサはスペリオル・ドーラを停止させて大砲を向けるが遊馬が止めた。

 

「メドゥーサ、待ってくれ。砦の中にいるサーヴァントを誘き出す」

 

「構いませんが、このまま砲撃したほうがいいのでは?」

 

「砦の中にも兵士はいるはずだ。下手に死人を増やしたくないからな」

 

「相変わらずお優しい……それで、どうやって誘き出すのですか?」

 

「考えがある。まあ、見てなって」

 

遊馬は車掌マイクを手に乗り、コホンと咳払いをして大きく息を吸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハ!レフに召喚された哀れな連合軍のサーヴァントよ、この列車に驚いたか?驚いたでしょうねぇ〜?さあ、このモンスターの大砲で砲撃して砦を破壊してあげましょう。砲撃して欲しくなかったら今すぐ出て来なさい。ご心配なく、正々堂々とサーヴァント同士で勝負しましょう。おっと、人質を使おうとは思わないでくださいね?あなたたちが捕らえた仲間はとっくに救出しましたからね!悔しいでしょうねぇ〜?フハハハハハッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりの予想外すぎる聞いた敵側がイラっとするであろうムカつく言葉を発する遊馬に驚愕するマシュたちだった。

 

すると遊馬は車掌マイクの電源を切ると緊張の糸が解けたようにため息を吐いた。

 

「ふぃ〜、緊張したぜぇ〜。これで出て来てくればいいけど……」

 

「遊馬、その言葉はまさか……」

 

「ああ。ちょっと前にⅣ……トーマスから教えてもらったんだ。外道な敵がいた時、挑発に使えって」

 

Ⅳことトーマス・アークライトは遊馬の仲間でⅢ……ミハエルの兄で家族のために外道や汚れ役を背負う優しい男なのだが……ぶっちゃけかなりドSな性格なのである。

 

「二度とⅣのその言葉を使うな……禁止令だ」

 

「そうだよ、ユウマ。君みたいに優しい子がそんな汚い言葉を使っちゃダメ」

 

アストラルとブーディカは保護者のように注意をし、遊馬は素直に頷いた。

 

「うん、俺も言ってかなり疲れた。二度と言わないぜ」

 

試しに言ってみたが遊馬の優しい性格上、合わないのは明白で二度と言わない事を誓った。

 

「ユウマよ……見事な挑発だったがそれだけで出てくるわけが……」

 

ネロは流石に出てこないだろうと思ったが……。

 

「貴様らぁっ!!上等だ、今すぐ出てこい!!俺が直々に相手をしてやる!!!」

 

砦の門から勢いよく敵サーヴァントが出て来た。

 

「って、見事に挑発に乗って来たぞ!?」

 

「お、おう、意外と敵の沸点低いな……」

 

予想以上に挑発の効果があり、言った本人の遊馬が一番驚いた。

 

砦から出てきたサーヴァントは今まで出会ったサーヴァントとはかなり異なり、現代風のスーツ姿をして煙草を咥えていた男性だった。

 

「彼はまさか……すいません、マスター。私が行きます」

 

アルトリアは出て来たスーツ姿のサーヴァントに心当たりがあるのか一足先にスペリオル・ドーラから出る。

 

「アルトリア?よし、エミヤも行くぞ!」

 

「やれやれ。だが、私も少し気になることがある……行こうか」

 

遊馬はアルトリアとエミヤと共にアルトリアの後を追う。

 

「待て!余も行くぞ!」

 

「ま、待ってください!」

 

ネロとマシュも後を追い、他のサーヴァントたちはすぐに動けるように準備をしている。

 

そして、アルトリアと敵サーヴァントが対峙すると、敵サーヴァントは目を見開いたように驚いた。

 

「貴様は……セイバー!?」

 

「やはり……まさかと思いましたが、ずいぶん成長しましたね。ウェイバー……」

 

「今はロード・エルメロイII世だ!」

 

そのサーヴァント、名はロード・エルメロイII世……アルトリアの知り合いだった。

 

「エルメロイ?それはランサーの……?」

 

「貴様には関係ないことだ!それより貴様、聖杯が欲しくて召喚されたのか!?」

 

「聖杯?そんなものは必要ありません。私が欲しいのはシロウです」

 

「シロウ……?」

 

「アルトリア!」

 

「エミヤ、あのサーヴァントはセイバーを知ってるみたいだな!」

 

エルメロイII世はその名前に聞き覚えがあり、その直後に遊馬とアストラルとエミヤが降り立つ。

 

そして、エミヤの姿を見てエルメロイII世は目を見開いて声を荒げた。

 

「シロウ……エミヤ……?まさか、お前は衛宮士郎(エミヤシロウ)なのか!?」

 

「……久しぶりだな。エルメロイII世……時計塔で話して以来だな」

 

エミヤ……衛宮士郎は仕方ないと言った表情でエルメロイII世と話すと、思わぬところで真名を知った遊馬とアストラルは目を丸くした。

 

「衛宮士郎……?それがエミヤの本当の名前か?」

 

「つまり君は日本人ということか……」

 

「そういう事だ。マスター、アストラル。出来れば過去はあまり聞かないで欲しいが」

 

「別にいいぜ、人には言いたくない過去の一つや二つはあるし」

 

「エミヤ、君が我々に話しても良いと決心した時にでも話して欲しい……」

 

「……分かった、感謝するよ。マスター、アストラル」

 

エミヤは遊馬の頭をポンポンと叩き、遊馬の前に出て干将・莫耶を投影して構える。

 

「その子供がマスターだと!?しかも隣には精霊!?一体どんな魔術師なんだ!?」

 

「ウェイバーよ、マスターは魔術師ではありません。しかも、あなたが聖杯戦争を参加した時よりも幼い十三歳ですよ」

 

「十三歳!?しかも魔術師じゃないだと!!?」

 

エルメロイII世は遊馬が魔術師ではない事と十三歳という事実に驚愕する。

 

「ところでアルトリア、そいつと知り合いなのか?」

 

「彼はウェイバー。私が経験した聖杯戦争のライダーのマスターでした。もっとも、私が知っている彼は少々頼りない見習いの魔術師の少年でしたが……」

 

「黙れ!!それ以上言うんじゃない!!!」

 

「驚きましたよ。ライダーに引っ張られていた少年がこれほどまでに逞ましく堂々とした風格を出すとは……」

 

「アルトリアよ、一応付け加えておくが彼は時計塔で『プロフェッサー・カリスマ』、『マスター・V』、『グレートビッグベン☆ロンドンスター』、『女生徒が選ぶ時計塔で一番抱かれたい男』……と言う数々の異名を持つ名物講師だぞ」

 

「言うなっ!それ以上言うなぁあああああっ!!」

 

「何と!?それは素晴らしいですね……良かったですね、ライダーもきっと喜んでますよ」

 

「貴様らは俺の親戚の兄姉か!?と言うか、アーサー王!貴様は本当にあの時のアーサー王か!?性格変わりすぎだろ!?」

 

「あの戦い以来、色々ありましたからね……ぶっちゃけ言うと王ではなく女に目覚めました」

 

「聖杯問答の時の話はどうなった!?貴様はあの時……」

 

「確かにあの時は聖杯を使って過去を変えようと思いましたが、シロウや多くの人との出会いでその考えは変わりました。私はもう過去を変えるつもりはありません。そして、今の私の願いはシロウを私の嫁にする事とシロウのご飯をいつまでも食べることです」

 

「嫁だと!?婿ではなく!?ってか飯だと!?何故に飯!??」

 

昔のアルトリアはどんな性格なのか分からないが、カルデアでの普段のアルトリアを見ている遊馬たちはもっともな願いだと感じた。

 

しかし、アルトリアの願いはそれだけではなかった。

 

「シロウは私の嫁です。それから……円卓の騎士のみんなと仲直り……とまではいかないと思いますが、ちゃんと話し合いたいです」

 

「アルトリア……」

 

アーサー王物語で円卓の騎士は様々な人と人との繋がりの亀裂で内部分裂が起きてしまい、それが国の崩壊へと繋がった。

 

アルトリアは絆を誰よりも大切にする今のマスターである遊馬の姿を見て、円卓の騎士の騎士ともう一度絆を繋ぎたいと思った。

 

しかし、大きく壊れた絆を直すことは不可能かもしれない……だがせめて円卓の騎士のみんなともう一度しっかり話し合って分かりあいたい……そう願うようになった。

 

「彼らに許してもらえないかもしれない、拒絶されるかもしれない……。それでも、私は逃げずに過去と向き合います」

 

過去と向き合うこと……それが今のアルトリアが見つけた答えだった。

 

その願いを聞いたエルメロイII世は小さく笑みを浮かべて納得したように頷いた。

 

「過去と向き合うか……確かにあの時とは違う答えだ。まるで別人のようだ……今の貴様なら『王』も喜んでいるだろうな……」

 

「そうですね。ところで、最初から気になってましたが、どうしてここに?それから、あなたからサーヴァントの気配がするのですが……」

 

「私は縁のゆかりもない英霊の依り代にされて過去に飛ばされた……」

 

「英霊の依り代?」

 

「諸葛孔明……それが私に宿る英霊の名だ。今の私は『擬似サーヴァント』と言ったところだな……」

 

「諸葛孔明って、呂布と同じ三国志で出て来る天才軍師じゃねえか!?」

 

「人間の肉体を依り代として英霊の魂を宿らせる……マシュのデミ・サーヴァントと同じと言うことか……?」

 

エルメロイII世には呂布と並ぶ三国志の天才軍師、諸葛孔明がマシュのデミ・サーヴァントのようにその英霊の魂が宿っていた。

 

何故エルメロイII世が選ばれたのか、どうしてこの世界に召喚されたのか本人も分からずに不明である。

 

「私と、同じ……?」

 

マシュは胸に手を置き、自分に似た存在に妙な親近感を抱いていた。

 

「それはさて置き、私はある人の軍師としてここにいる……そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「ごめんごめん、あの大きなものに見惚れていたよ」

 

エルメロイII世に呼ばれて砦から出てきたのは遊馬と歳が近そうな赤い髪をした少年だった。

 

その少年を見た瞬間、セイバーは再び驚いたように目を見開いた。

 

「彼はまさか!?ウェイバー……これは数奇な運命ですね……まさか『征服王』の幼き姿とは……」

 

「そうだな……私も驚いているよ」

 

エルメロイII世とその少年には深い関わりがあるのか複雑な心境をした表情を浮かべていた。

 

「僕はアレキサンダー。正確にはアレキサンダー三世だ」

 

アレキサンダー。

 

紀元前4世紀のマケドニア王国の若き王子であり、後に様々な名で呼ばれる多くの可能性を持つ者である。

 

美少年と言っても過言ではないアレキサンダーの姿を見てアルトリアは額に手を当てて大きなため息を吐いた。

 

「どうしてこんな美少年があんなムキムキマッチョな大男になるのでしょうか……」

 

そしてアルトリアはアレキサンダーについて何かを知っている様子でそう呟くのだった。

 

アレキサンダーはネロを見つめ、嬉しそうに話し出す。

 

「ようやく会えたね。待っていたんだ、君が来るのを」

 

「余の……ことを?待っていた?」

 

「うん。ちょっと、興味が湧いたからね。あれこれとちょっかいをかけたのは、そのためだ。話がしたかったんだ。君とね」

 

アレキサンダーの目的に遊馬は疑問を抱き、声を荒げながら問うた。

 

「おい、待てよ。ネロと話がしたかったんならどうして兵を使ったんだ?話をするのに兵を使って、それで両軍のたくさんの兵が死んだんだぞ!?」

 

「そうだね。僕もそれが本意じゃないんだけど、仕方なくね……」

 

「まさか、ブーディカを捕らえようとして兵を送り出したことは全て、あんたがネロと話をするためだけにか!?」

 

「そうだよ。色々あったけど、君たちの方から来てくれたから良かったけど」

 

アレキサンダーの回りくどいやり方にネロと遊馬は激怒する。

 

「それを、ただの話一つが目的というのか!」

 

「ふざけるな!だったらてめぇ一人で最初から来いよ!」

 

「うん。人間の命は尊いものだと思うよ。それは、僕だってそう思う。でもね、そうするのが一番だと思ったんだ。君の、いや……君たちのことが気にかかったから。ローマ皇帝第五代皇帝、ネロ・グラウディウス。そして、未来皇ホープ、ツクモ・ユウマ」

 

アレキサンダーの目的はネロだけでなく遊馬も含まれていた。

 

そして、アレキサンダーはゆっくりと二人に問う。

 

それは皇帝としての意味、戦いの意味を問うていた。

 

「さて、ネロ。君は何故、何故、戦うんだい?なぜ、連合帝国に恭順せずに。そうやって、いいや、こうやって戦い続ける?連なる『皇帝』の一人として在ることを選べば、無用の争いを生むことなどないだろうに」

 

「無用……無用といったのか、この戦いを。貴様は……」

 

「言ったよ。なら、どうする?」

 

ネロはこれまでの戦いを否定されたことに激怒し、ローマ皇帝としての、己の考える『皇帝の道』を宣言した。

 

「許さぬ……死から蘇った血縁であろうと、過去の名君であろうと、古代の猛将であろうと、伝説に名高き、大王その人であろうとも……今!この時に皇帝として立つ者は、ネロ・グラウディウスただ一人である!民に愛され、民を愛することを許され、望まれ、そう在るのはただ独り!ただ一つの王聖だ!ただ一つだからこそ輝く星!ただ一人だからこそ、全てを背負う傲慢が赦される!たとえローマの神々全てが降臨せしめて連合へ降れと言葉を告げようとも、決して退かぬ!退くものか……!そう信じて踏破するよが我が人生!我が運命!退かず、君臨し、華々しく栄えてみせよう!余こそが!紛うことなきこの世界である!」

 

「はははっ!すげぇや、ネロ。今の言葉、かっこよかったぜ!」

 

ネロの宣言に遊馬は感銘を受けてグッドサインを向けた。

 

アレキサンダーはネロの次に遊馬に質問をする。

 

「次は未来皇、君だ。君はどうしてネロに付き添い、共に戦うんだい?君はこの戦いをどう思う?」

 

アレキサンダーの問いに遊馬は目を閉じて数秒間考えて頭を整理しながら静かにそれを言葉にする。

 

「……確かにあんたの言う通り、ネロが連合帝国で皇帝の一人になれば無用な戦いは避けられる。だけどな……仮にネロがその決断を下せば真っ先に消され、ローマの民も……いや、この世界の全ての人間が消されるかもしれない!それはつまり、この時代とこれから先に生きる人たちの全ての未来が奪われるんだ!お前の言い分も正しいし、ネロの皇帝としての心は堂々としてかっこいいと思う。だから、次は俺の答えだ!」

 

遊馬は右手にホープ剣を一本作り出してネロを守るように前に出て、剣の切っ先をアレキサンダーに向ける。

 

「俺は、俺たちはこの世界の未来を守るためにここにいるんだ!ネロは俺の大切な仲間だ!ネロは俺が必ず守る!そして、人類を滅ぼそうと言う大馬鹿な災厄の元凶をぶっ倒して、ネロも、この世界も守る!!」

 

遊馬はネロを皇帝ではなく仲間として、守ることを誓う。

 

「ユウマ……」

 

ネロは自分を守ると誓う遊馬の小さくも大きな背中に心臓の鼓動が高まっていく。

 

「ネロだけでなく、世界も守る……でも君は知っているかい?世界は広くて巨大だ。世界を守ると言うことは全ての人を守ると言うことにも繋がるよ?それほど大きなものを君は背負えるのかい?」

 

「生憎だが、俺は背負うことには慣れっこなんだよ。俺が戦う時はいつも何かを背負ってるからな。それに……一度俺たちの世界の滅亡の危機をアストラルや仲間たちと一緒に救ったんだ。今更臆することはない!!それが俺の、かっとビングだ!!!」

 

遊馬の戦いはいつも何かを背負って戦ってきた。

 

その全てを守るために遊馬とアストラルは何度挫けそうになってもその度に立ち上がり、戦い続けてきたのだ。

 

ネロが目指す『皇帝の道』と遊馬が目指す『かっとビングの道』……二人の答えを聞いてアレキサンダーは拍手をして称賛した。

 

「素晴らしい!君たちは間違いなく皇帝だ!いや、ユウマは勇者と言うべきかな?そして、ネロ!君は『魔王』にだってなれるよ!」

 

「アレキサンダー、貴様はこの手で倒す!」

 

「付き合うぜ、ネロ。アレキサンダー!あんたが避けられない敵として立ち向かうのなら、俺たちはあんたを越えるぜ!」

 

「その意気だ、さあ来るんだ!ローマ皇帝、そして未来皇!!『始まりの蹂躙制覇(ブケファラス)』!!!」

 

アレキサンダーは自身の宝具であり、愛馬である黒毛の屈強な馬、ブケファラスを呼び出して騎乗し、スパタと呼ばれる片手剣を持つ。

 

「あちらはマスターとマシュとネロが相手をしますか。さて、ウェイバー。あなたはどうしますか?」

 

「……私の目的は彼をネロに会わせることだ。私自身は戦うつもりはない」

 

エルメロイII世は特に戦う理由はないのでその場で煙草を吸い、一応警戒のためにアルトリアとエミヤが見張る。

 

「アストラル!頼む!」

 

遊馬はアレキサンダーが出したあの黒い馬はヤバイと察すると、デッキケースから一枚のカードを取り出してアストラルに投げ渡す。

 

「分かった。少々出しずらいが、私がなんとかしよう!!」

 

アストラルが左手を掲げると左手首に藍色のデュエルディスクが現れ、デッキがセットされる。

 

アストラルもデュエルをすることが出来、アストラル自身のデッキがあるのだが、遊馬のデュエルディスクにセットされたデッキをそのまま反映させて構築して使用する。

 

「私のターン、ドロー!『セイバー・シャーク』を召喚!更に、自分フィールドに水属性モンスターがいる時、『サイレント・アングラー』を特殊召喚!私は水属性レベル4のモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!力を借りるぞ、シャーク!」

 

アストラルは凌牙の持つ額に刃を持つ鮫と提灯あんこうのようなモンスターを召喚し、二体が光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「吠えろ未知なる轟き!深淵の闇より姿を現わせ!エクシーズ召喚!現れよ、『バハムート・シャーク』!!」

 

現れたのは凌牙から受け取った鮫のような姿をしたドラゴンに似たモンスターエクシーズでその効果はとても強力なもので仲間の水属性モンスターエクシーズを呼び出せる。

 

「バハムート・シャークの効果!ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを一つ使い、水属性・ランク3以下のモンスターエクシーズをエクストラデッキから特殊召喚する!ゴッド・ソウル!!」

 

『グォオオオオオオッ!!』

 

バハムート・シャークがオーバーレイ・ユニットを一つ喰らい、咆哮を轟かせると目の前に大きな水の渦が現れる。

 

「現れよ、『牙鮫帝シャーク・カイゼル』!」

 

そして、水の渦の中から堂々とした風格を持つ巨大な鮫の皇帝が姿を現わすが、正規のエクシーズ召喚ではないのでシャーク・カイゼルにはオーバーレイ・ユニットが存在しない。

 

しかし、アストラルには更なる一手が握られていた。

 

「そして、このカードはランク3の水属性モンスターエクシーズを素材としてエクシーズ召喚することが出来る!私はシャーク・カイゼルをエクシーズ素材にし、フルアーマード・エクシーズ・チェンジ!」

 

それは希望皇ホープレイと同じく、モンスターエクシーズを素材として重ねてエクシーズ召喚できるモンスターエクシーズであり、シャーク・カイゼルがエクシーズ素材となり、新たなモンスターエクシーズを呼び出す。

 

「現れよ!『FA(フルアーマード)-ブラック・レイ・ランサー』!!」

 

それはシャークのエースモンスターである漆黒の槍を持つ海の戦士、『ブラック・レイ・ランサー』が仲間の力を得て新たな装備を身につけた姿である。

 

バハムート・シャークとFA-ブラック・レイ・ランサー、この2体だけでも十分戦えるのだがアストラルの目的は遊馬が戦えるようにお膳立てをすることである。

 

「行くぞ、遊馬!私はランク4のバハムート・シャークとブラック・レイ・ランサーでオーバーレイ!!」

 

バハムート・シャークとブラック・レイ・ランサーが光に吸い込まれ、強烈な光が爆発した。

 

二体のエクシーズモンスターを素材にして呼び出す特殊なエクシーズモンスター……それは遊馬だけが持つ無限の可能性を秘めたナンバーズである。

 

「現れろ、FNo.0!天馬、解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る!これが我が『半身』の天地開闢!無限の未来!!かっとビングだ、遊馬!『未来皇ホープ』!!」


 

遥かなる次元の果てから美しい双翼を羽ばたかせ、未来を切り開く二振りの剣を携え、遊馬の化身とも言える未来皇ホープが召喚された。

 

『ホォープッ!!!』

 

未来皇ホープの登場にアレキサンダーは年相応の表情と目を輝かせた。

 

「凄い!これが君の本当の力……未来皇ホープなんだね!」

 

「よっしゃあ!流石はアストラル!来い!未来皇ホープ!」

 

遊馬はアレキサンダーから離れ、双剣を消してバク転をして大きく下がると同時に未来皇ホープが金色の光となる。

 

そして、光となった未来皇ホープはなんとそのまま遊馬に激突して一体化するのだった。

 

「遊馬君と未来皇ホープが一体化した!?」

 

マシュたちが驚くのも無理はなく、遊馬は未来皇ホープの中に入り、文字通り一体化した。

 

未来皇ホープの胸にある0の紋章が大きな皇の鍵へ変化し、遊馬の意思で動くことになる。

 

「更に私は装備魔法『月鏡の盾』を未来皇ホープに装備する!バトルする時、装備モンスターの攻守は相手の攻守の高い数値+100ポイントとなる!」

 

アストラルは大きな満月が映し出された鏡を呼び出し、未来皇ホープの中に取り込ませてアレキサンダーと戦えるようにする。

 

「サンキュー、アストラル!行くぜ、ネロ!マシュ!」

 

「うむ!行くぞ、ユウマよ!」

 

「はい!!」

 

遊馬とネロとマシュはアレキサンダーと戦闘を開始するが、アレキサンダーが操るブケファラスは雄叫びを上げ、雷撃を撒き散らしながら突撃してきた。

 

遊馬は未来皇ホープの翼を広げて空を翔けながらアレキサンダーに攻撃する。

 

「ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!」

 

「ふっ!やるね!!」

 

アレキサンダーはスパタで遊馬のホープ剣を受け止め、激しい剣戟をしていくとネロが別の方向から駆け抜けて原初の火を振り下ろす。

 

ネロの攻撃に気づいたブケファラスはその身から雷撃を撒き散らしてネロの攻撃を中断させた。

 

「くっ!?」

 

「行け、ブケファラス!!」

 

「ネロさん!させません!!」

 

ブケファラスの凄まじい走りを止めるためにマシュがネロの前に出て盾で受け止める。

 

「マ、マシュ!?」

 

「くっ!!?」

 

その恐るべき猛烈な突撃と雷撃にマシュは負けそうになる。

 

しかし、シールダーの名にかけて、自分に戦う力をくれた名を知らぬ英霊のために、大切な人達を守ると誓ったマシュは自分を奮い立てて強く叫ぶ。

 

「私は、負け、ません!!はぁあああああっ!!!」

 

マシュは魔力を解放して全身の力を込め、その想いに反応して十字の盾が強く輝きを放つ。

 

「はあっ!!!」

 

そして、盾で押し返して屈強なブケファラスのバランスを崩し、予想外の事態にアレキサンダーは驚いた。

 

「おおっ!?」

 

「今です!遊馬君!ネロさん!!」

 

「おうっ!」

 

「感謝するぞ、マシュ!!」

 

マシュが作ってくれたアレキサンダーの大きな隙に遊馬とネロは一気に攻め立てる。

 

遊馬は未来皇ホープの双剣を構えて刃を金色に輝かせ、ネロは原初の火に真紅のオーラを纏わせて振り上げる。

 

「ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!!」

 

「これで終わりだ!!!」

 

三つの刃が煌めき、同時にアレキサンダーに斬りつけた。

 

それが致命傷となり、アレキサンダーとブケファラスは消滅していく。

 

「もう一つ、言葉を残しておくよ。可愛い皇帝さん。その誇り高さ……咲き誇る花の如き輝きは尊いものだろう。けれど、きっと危険なものでもあるはずだ。どうか……」

 

それはアレキサンダーからネロへの忠告であった。

 

ネロの美しくも危険が宿っているその心を危険視していたのだ。

 

その言葉を残しながらアレキサンダーは静かに消滅した。

 

「余は、間違ってなどいない。何一つ……余は、ただ一人の……皇帝だ……」

 

「……ネロ、何が本当に正しいのかどうかは分からない。一つの選択でいい意味でも悪い意味でも未来は大きく変わるからさ。だけど、ネロがローマを守るために戦うのは決して間違いじゃないはずだ。ネロが戦ってくれたから、この世界の未来は守られているんだ」

 

「ユウマ……ありがとう……」

 

アレキサンダーの問いに迷いが出ていたネロだったが遊馬の言葉に救われた。

 

ネロはローマ皇帝として戦い続けること……そして、連合軍の魔の手から守るために遊馬達と共に戦うと改めて誓うのだった。

 

一方、アレキサンダーとの戦いを見守ったアルトリアはエルメロイII世にどうするか尋ねた。

 

「さて、向こうの戦いが終わりましたが、ウェイバーはどうなさいますか?」

 

「好きにしろ。私では勝てぬ。たとえ貴様らを退けたとしてもまだ後ろに控えている大量のサーヴァントにやられるのがオチだ。元々私ははぐれサーヴァントで戦う意味もない……やるならさっさとやれ」

 

「では……捕虜として私たちについてきてください。ご心配なく、マスターはとても優しいお方ですから悪いようにはしません」

 

「ちっ……甘い奴か。子供なら当然か……」

 

エルメロイII世は一応遊馬たちの捕虜となり、一緒について行くことになった。

 

周囲の意見もあり、念の為にエルメロイII世と契約を交わしてフェイトナンバーズを誕生させて何かあった時に令呪で命令を下せるようにする。

 

その後砦はローマ軍が無事に占拠し、次こそはいよいよ連合軍の本部がある連合帝国首都に向かうことになった。

 

このままライダーが騎乗したスペリオル・ドーラで向かうのもありだが、何かもう一つ手が無いか考えていると遊馬は再びニヤリと笑みを浮かべた。

 

「遊馬……何を考えている?」

 

何か嫌な予感がしたアストラルは恐る恐る遊馬に尋ねる。

 

「いやー、俺はさ、今まで……というかこれからも特異点を巡る度に驚かされると思うんだよね。だから……敵をもっと驚かせてやるんだよ……」

 

(((いや、こっちも十分驚かされているのですが……)))

 

摩訶不思議なモンスターを召喚、サーヴァントも驚くような無茶な行動、中学生が実は世界を救った英雄、そしてトドメは精霊のアストラルと合体してサーヴァントに匹敵する存在に変身……マシュたちも今まで何度も遊馬とアストラルに驚かされたのか数え切れないほどだった。

 

遊馬は考えたことを実行するためにデュエルディスクを構えてカードをドローする。

 

「行くぜ、俺のターン、ドロー!ふふふ……流石は俺たちのデッキ、ちゃんと思いに応えてくれるぜ。魔法カード『おろかな埋葬』。デッキからモンスターを墓地に送る。俺はデッキから『銀河眼の光子竜』を墓地に送る。装備魔法『銀河零式(ギャラクシー・ゼロ)』を発動。墓地のフォトン、またはギャラクシーモンスターを蘇生させてこのカードを装備する。蘇れ、銀河眼の光子竜!」

 

遊馬は不気味な笑みを浮かべて銀河眼の光子竜を呼び出した。

 

しかし、銀河眼の光子竜は銀河零式のデメリット効果で攻撃は出来なくなり、効果も発動出来ない。

 

「そして、『フォトン・サテライト』を召喚。フォトン・サテライトの効果、自分のフォトンモンスターを一体選択し、選択したモンスターとこのカードのレベルは合計したレベルとなる。フォトン・サテライトはレベル1、銀河眼の光子竜はレベル8、よって2体のレベルはそれぞれ9となる!」

 

小さな人工衛星が現れ、銀河眼の光子竜に光を当てて二体のレベルを合わせる。

 

「銀河眼の光子竜皇じゃない?遊馬、何を召喚する気……?」

 

レティシアは銀河眼の光子竜を出したのならば、銀河究極龍の銀河眼の光子竜皇を出すのかと思ったが、遊馬の目的は全くの別だった。

 

「行くぜ、アストラル!」

 

「やれやれ……分かった、君の好きにすればいい」

 

アストラルは遊馬の目的を察すると自身からカードを取り出すと遊馬に渡し、そのカードを掲げる。

 

「俺はレベル9となった銀河眼の光子竜とフォトン・サテライトでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

銀河眼の光子竜とフォトン・サテライトが光となって地面ではなく天に登っていき、光の爆発が起きる。

 

「星雲の王者にして機構の覇者よ、日輪を覆え!」

 

空に『09』の刻印が浮かび、遊馬は堂々とその名を叫んだ。

 

「現れよ、『No.9 天蓋星(てんがいせい)ダイソン・スフィア』!!」

 

マシュたちは新たなナンバーズに何が来るのかと期待するが、周りを見渡してもそれらしいモンスターがいなかった。

 

すると。

 

ゴォオオオオオオオ……!!!

 

まだ日が明るいうちなのに地上が暗くなり、不思議な轟音が鳴り響いて雷雲が出てきたのかとマシュ達が空を見上げると……そこには目を疑うものがあった。

 

「「「な、何あれ!!??」」」

 

「「「何だあれは!!??」」」

 

ネロを含むサーヴァントたちは空に現れた謎の物体に驚愕し、マシュは首を大きく傾げて呟いた。

 

「宇宙ステーション……?」

 

それはまるで空や太陽を覆い尽くすように巨大な建造物……花びらのような形をした宇宙ステーションのようなものだった。

 

以前マシュが興味本位で宇宙関連の本を読んだときに見た、まだ仮説の域である恒星のエネルギーを効率よく利用するための宇宙空間建造物……ようするにとんでもなく巨大な宇宙ステーション、『ダイソン球』を思い出した。

 

そして、その宇宙ステーションにはナンバーズの証である『09』の刻印がしっかりと刻まれており、それがナンバーズだとマシュたちは思い知らされた。

 

そのナンバーズの登場に遊馬は大きな笑い声を上げながら説明した。

 

「ふははは!これこそデュエルモンスターズ史上最大の大きさを誇るモンスター……太陽よりも大きい、超巨大宇宙衛星兵器!!ダイソン・スフィアだ!!!」

 

「「「大きすぎる!!??」」」

 

もはやこれがモンスターと呼んでいいのだろうかと思うほどの巨大過ぎる存在にマシュたちは頭を悩ませるのだった。

 

「よっしゃあ!地上のスペリオル・ドーラに天空のダイソン・スフィアで連合軍本部に乗り込むぜ!!」

 

「「「お、おー……」」」

 

ハイテンションな遊馬に引っ張られてマシュたちは再びスペリオル・ドーラに乗り込み、連合帝国首都へ向かう。

 

この時、マシュ達は遊馬は基本的に常識人だが下手に刺激させると他人の想像を超えるとんでも無いことをやらかすと悟ったのだった。

 

「な、なんだこの子供は……?これほどの大きな力を操るマスターなんて聞いたこともないぞ……それにあの精霊も……なんて危うい存在なんだ……」

 

エルメロイII世は遊馬とアストラルが聖杯戦争において余りにも異例すぎる存在であることに戦慄した。

 

子供の年相応の幼さに反し、戦いに堂々と向かう度胸、大切な何かを守る不屈の精神……世界を救ったと言っていたが、一体どれほどのものをその目に映して来たのだろうか。

 

エルメロイII世にとって最も大切な存在が真っ先に気に入りそうなその少年が進む道の行く末をこの目で見て見たくなり、サーヴァントになって悪くないなと思いながら煙草を咥える。

 

 

 

.




ウェイバー君ことエルメロイII世が捕虜となりました。
セイバーことアルトリアのぶっちゃけた姿にはそりゃあ驚くことでしょう。
滅んだ国を救いたい、過去を変えたい→シロウを嫁に!美味しいご飯を毎日モグモグ!
うん、これは酷い(笑)

そして……ラストには皆さんお待ちかねのデュエルモンスターズ最大のビッグモンスター、ダイソン・スフィア登場(爆)

ついやりたくなっちゃいました♪

天空のダイソン・スフィアに地上のスペリオル・ドーラが手を組めば二大巨大兵器、夢の最強の布陣です!

そろそろ第2章もクライマックスに入ります。

次回も大暴れします!!

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