次回のために少し短めです。
相変わらず遊馬のガチャ運は最強です(笑)
ローマと日本の特異点を解決した翌朝、遊馬はいつもより少し遅めに起きた。
目が覚めると皇の鍵からアストラルが出てきて遊馬は私服に着替え、自室を出て食堂に向かうとマシュと合流する。
「おはようございます、遊馬君、アストラルさん」
「おはよう、マシュ」
「おはよう。君も寝坊かな?」
「は、はい。色々あり過ぎて疲れちゃったので」
「ははは、仕方ねえよ。連続で休む暇もなく特異点二つも巡ったからな。寝坊してもバチは当たらないさ」
「そうですね。さあ、朝食を食べたらサーヴァント召喚ですね」
「ああ。楽しみだぜ!」
「フォウフォーウ!」
「あ!フォウ!お前、日本の特異点では逃げやがって、お仕置きだー!」
「フォ、フォウー!?」
遊馬はマシュの肩に乗っていたフォウを見つけるなり両手でガッチリと確保し、十本の指を駆使してくすぐりをする。
数分間のくすぐりでフォウは悶えてピクピク震えており、マシュは苦笑を浮かべながら両手で持ち上げていた。
サーヴァント召喚の前にまずは腹ごしらえをするため、朝食を食べに食堂に入ると……。
「「「……えっ!??」」」
異様な光景に目を疑ってしまった。
モキュモキュモキュモキュ。
「あ、おはようございます。マスター、マシュ、アストラル」
「む?おはよう、マスター、マシュ、アストラル」
それは美味しそうにエミヤ特製の朝食を食べているアルトリアとアルトリア・オルタの二人だった。
「ちょっ!?な、なんでアルトリア・オルタがいるんだよ!?」
「お二人は同一人物のはずでは……!?」
「何故こんなことに……エミヤ!何があった!?」
アストラルは厨房から二人のアルトリアのための追加の料理を持ってきたエミヤを呼ぶ。
心なしかエミヤの表情に疲れが見えていた。
「ああ……おはよう。マスター、マシュ、アストラル……いや、実はな。君たちが特異点に行っている間にアルトリアにハンバーガーとプリンを満足するまで食べさせてあげたのだが……」
「もぐもぐ……ごくん。本来なら青いほうの中に戻るはずだったのだが、何故か二人に別れてしまったのだ」
「はあ!?そんなことがあり得るのかよ!?」
「アルトリアとアルトリア・オルタは言うなれば光と闇、コインの裏表みたいな関係だ。それが二人に分かれて存在している……まさか、カルデアの特殊な環境がそれを可能にしたのか?」
アストラルは顎に手を添えて冷静に推理するが、サーヴァントという存在が摩訶不思議過ぎて明確な答えが見つけることができない。
アルトリア・オルタは立ち上がると遊馬の前で立つ。
「まあ、色々思うところはあるが私はこうして存在している。よろしく頼むぞ、マスター」
「そ、そうだな。よろしく頼むぜ、アルトリア!」
「オルタと呼べ。アルトリアだけだと青王と混乱してしまう」
「分かった!オルタ!」
「うむ」
アルトリア・オルタは遊馬と握手をするとサーヴァントの契約を交わし、フェイトナンバーズが誕生する。
そして、真名とイラストと効果とステータスが判明し、イラストにはアルトリアのフェイトナンバーズと左右が逆の漆黒に染まった約束された勝利の剣を構える姿が描かれていた。
真名は『FNo.39 漆黒の騎士王 アルトリア・オルタ』。
「これが私のフェイトナンバーズか。いい絵だ。よし、気分がいいうちに朝食をもっと食べよう。シロウ、もっと飯を寄越せ!」
「シロウ!私もおかわりです!」
「分かったから落ち着いて食べなさい……」
エミヤは二人の大きな子供を持つお母さんのような心境でため息をつきながらテーブルに新しい料理を置く。
ただでさえアルトリア一人に苦労しているエミヤに更にもう一人のアルトリアが追加され、遊馬達は思った。
「エミヤ……過労死しないよな?」
「サーヴァントなので過労死は無いと思いますが……」
「エミヤの精神的ダメージがかなり大きそうだな……胃に穴が開かなければいいが……」
後で何からの形でエミヤを労ろうと思った遊馬達だった。
しかし、この時のエミヤはまだ知らなかった。
アルトリアにはオルタ以外にも様々な可能性を持つ全く別の存在であるアルトリアが何人もおり、全員がエミヤに好意を持つことになるとは……。
☆
朝食を食べ終えた遊馬達はサーヴァント召喚の儀式を見たいと小鳥が頼んできたので一緒に向かうことにした。
「ノブノブー!」
「お、ちびノブ!頑張ってるな!」
ちびノブたちは先ほどレイシフトから帰って来たのか大量の食材をせっせと運んでいた。
カルデアで働くことになったちびノブたちは予想以上の働きを見せて職員たちは大助かりだった。
荷物運びから食料確保まで疲れを知らないちびノブたちはもはやカルデアには無くてならない存在となり、みんなからとても感謝されている。
特に暴食の化身と言っても過言ではないアルトリアにアルトリア・オルタが加わってしまったので食料の大量確保にエミヤは軽く涙を流して感謝するほどだった。
「頑張れよ、ちびノブ!」
「ノッブー!」
ちびノブと別れて召喚ルームに到着する直前、遊馬は忘れ物に気づいてすぐに自室に戻った。
「こいつを忘れるわけにはいかないよな……」
「もしも忘れたらネロが英霊の座から無理やり来そうだな……」
「ネロならやりかねないから笑えねぇ冗談だよ」
それはネロから譲り受けた真紅の剣、『原初の火』。
原初の火をソードラックから持ち上げて肩に担ぎ、急いで召喚ルームへ向かう。
召喚ルームでは既にサーヴァント召喚の準備ができており、遊馬はデッキケースからローマと日本の特異点で手に入れたフェイトナンバーズを取り出して召喚サークルに並べる。
そして、原初の火をフェイトナンバーズの隣に置く。
「遊馬君、どうぞ」
「おう。サンキュー、マシュ」
マシュから聖晶石を貰い、額に持っていって願いを込めながら砕く。
「さあ、行くぜ!かっとビングだ!」
砕いた聖晶石を振りまくと三度目のサーヴァント召喚が始まり、爆発的な魔力が集束する。
英霊召喚システムとカルデアの電力が唸りを上げて眩い光を放ち、光の中から次々とサーヴァントが召喚される。
「ユウマ、約束通りにちゃんと召喚してくれたね」
最初に召喚されたのはブーディカだった。
ブーディカのフェイトナンバーズは既に判明しており、『FNo.83 勝利と愛の女王 ブーディカ』である。
「ふはははは!マスターよ!さあ、圧制者を蹴散らそうぞ!」
ブーディカの次に召喚されたのはスパルタクスだった。
スパルタクスのフェイトナンバーズは無数の傷を受けて血を流しながらも堂々と剣を掲げる姿が描かれており、真名は『FNo.54 反乱の剣闘士 スパルタクス』。
「あら?ふふふ、本当に召喚してくれたのね?さあ、メドゥーサに会いに行きましょう」
スパルタクスの次に召喚されたのはステンノ。
ステンノのフェイトナンバーズはローマの神の島を背景に砂浜を可愛らしく歩いている姿が描かれており、真名は『FNo.44 微笑の女神 ステンノ』。
「あははははは!タマモキャット、参上なのだ!」
ステンノの次に召喚されたのはタマモキャット。
タマモキャットのフェイトナンバーズはメイド喫茶で忙しそうに動きながらも楽しそうにしている姿が描かれており、真名は『FNo.29 狂愛の守護獣 タマモキャット』。
「たいして役には立てないけど。君の力になれるよう頑張るよ」
タマモキャットの次に召喚されたのは荊軻。
荊軻のフェイトナンバーズは短剣の匕首を構え、その周りを巻物の地図が舞う姿が描かれており、真名は『FNo.41 不還の暗殺者 荊軻』。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」
荊軻の次に召喚されたのは呂布。
呂布のフェイトナンバーズは方天画戟を構え、愛馬である赤兎馬を乗り、戦場をかける姿が描かれており、真名は『FNo.80 暴星武神 呂布』。
「スパルタ王、レオニダス!ここに推参!!」
呂布の次はレオニダス。
レオニダスのフェイトナンバーズは槍と盾を構え、三百人の戦友と共に歩く姿が描かれており、真名は『FNo.58 炎門の守護者 レオニダス一世』。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」
レオニダスの次はダレイオス三世。
ダレイオス三世のフェイトナンバーズは巨大な像に跨り、不死の兵士を引き連れる姿が描かれており、真名は『FNo.20 戦象闘王 ダレイオス三世』。
「本当に私を召喚するとはな……恐れ入ったよ」
ダレイオス三世の次は諸葛孔明こと、エルメロイII世。
エルメロイII世のフェイトナンバーズは不機嫌そうに煙草を咥え、無数の本に囲まれている姿が描かれており、真名は『FNo.78 陣形軍師 諸葛孔明』。
「やあ、未来皇。今度は味方として君に力を貸すよ」
エルメロイII世の次はアレキサンダー。
アレキサンダーのフェイトナンバーズは愛馬のブケファラスを跨り、輝かしい光をバックにして剣を構えた姿が描かれており、真名は『FNo.89 少年覇王 アレキサンダー』。
「ネロは……ネロはいるかぁあああああっ!!」
アレキサンダーの次はカリギュラ。
カリギュラのフェイトナンバーズは巨大な月に狂った様子が描かれており、真名は『FNo.87 月狂の皇帝 カリギュラ』。
「敵味方問わず召喚するとは本当に面白い男だ!!」
カリギュラの次はカエサル。
カエサルのフェイトナンバーズは黄金の剣を掲げている姿が描かれており、真名は『FNo.56 金色の皇帝 カエサル』。
「私はローマだ!そして、そなたもローマだ!!」
カエサルの次はロムルス。
ロムルスのフェイトナンバーズは光り輝く都市を背景に勇ましい立ち姿が描かれており、真名は『FNo.6 建国神祖 ロムルス』。
「……私を倒した相手に召喚されるなんて……」
ロムルスの次はアルテラ。
アルテラのフェイトナンバーズは滅びた都市を背後に軍神の剣を構えた姿が描かれており、真名は『FNo.69 軍神王 アルテラ』。
「ふははははっ!第六天魔王、織田信長……降臨じゃ!!」
「新選組一番隊組長、沖田総司!見参!遊馬くん、約束通りにあなたの力になりに来ました!!」
アルテラの次に織田信長と沖田総司が同時に召喚された。
全てのフェイトナンバーズを媒体に十六人のサーヴァントが召喚された。
そして、最後の媒体である原初の火……それが宙に浮くと眩い光が放たれた。
その光は原初の火を抱きしめ、光が静かに消えながらゆっくり遊馬に近づいて来た。
「やっと……やっと、余を召喚してくれたな。ユウマ」
「ネロ……?」
目の前に現れたのは純白の花嫁を連想させる衣装を纏ったネロだった。
それは赤のイメージが強かったネロだったが美しいその純白の衣装はネロの可憐な雰囲気を更に高めていた。
ネロは原初の火を媒体にサーヴァントとして無事にカルデアには召喚されたのだった。
「ユウマ!!!」
「おうっ!?」
ネロは涙を浮かべながら遊馬に抱きついた。
遊馬はバランスを崩しそうになりながらもネロをしっかりと受け止めた。
「遅いぞ、馬鹿者……どれだけ余を待たせておるのだ……」
ネロは強く強く……遊馬を愛おしく抱きしめた。
「ご、ごめん……待たせちゃったみたいだな……」
涙を流すネロに対し遊馬は頭と背中を優しく撫でた。
第二特異点でのローマの命運をかけた戦いから別れてからネロは遊馬と再会する時を夢見ていた。
そして、死後に英霊の座に呼ばれ、サーヴァントとして召喚されるのをずっと待っていたのだ。
そんな二人を見てアストラルは目を閉じて皇の鍵の中に入り、マシュと小鳥は今回は譲ってあげようと思い、召喚したサーヴァント達を連れてカルデアを案内しようとしたが……。
「うぉおおおおお!ネロ!ネロォオオオオオッ!!」
ネロが大好きで仕方ない叔父のカリギュラが暴走して突撃しようとしていた。
しかし……。
「こんな時に邪魔しない!!あんたは眠ってなさい!!!」
「グボァッ!?」
ブーディカ渾身の拳骨でカリギュラの顔面が練り込むぐらいに強く打ち込み、一撃で意識を奪って撃沈させた。
「全く……ネロは気に入らないけど、ユウマに会った時のあんな嬉しそうな涙を見たらね……」
色々思うところがあるのか複雑な表情を見せたブーディカは気絶したカリギュラの首根っこを掴んで引きずる。
バーサーカークラスのサーヴァントを宝具やスキルを使わずに拳骨一撃で撃沈させたその恐るべきパワーにマシュ達は軽く引きながら一緒に召喚ルームを出た。
しばらくしてネロは泣き止むと遊馬は笑みを浮かべネロの手を握る。
「行こうぜ、ネロ。サーヴァント達の歓迎会を企画しているんだ」
「おお!余たちの歓迎会か!」
「ああ!食堂でエミヤ達がご馳走を用意してくれてるんだ。たくさん食べて、みんなと仲良くなろうぜ!」
「うむ!」
遊馬はネロを連れて召喚ルームから出て食堂へ向かった。
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ネロは嫁王ことネロ・ブライドで召喚されました。
フェイトナンバーズについては次回か後に判明します。
次回は遊馬とネロの話を中心に書こうと思います。