色々やらかした感がまたありますが楽しんでくれれば幸いです。
第二特異点と本能寺の戦いを終えた遊馬とアストラルの新たなカルデアの一日。
午前7時・起床。
朝寝坊が多かった遊馬だが規則正しい生活に体が順応して一人でも起きられるようになり、目を覚ましてベッドから起き上がるといつもと違う風景が広がっていた。
「何してんだよお前ら……」
「むむーむっ!?」
「むぐむぐむぐーっ!?」
毎晩懲りずに遊馬に夜這いをかけようとしている清姫に加えて先日召喚したばかりのネロも一緒に鎖で縛られて動けなくなっていた。
「……アストラル」
「ああ……」
遊馬のすぐ後に目覚めたアストラルは二人をジト目で見つめながらセットしてある恒例のデモンズ・チェーンを外すと二人が抗議して来た。
「アストラルさん!いい加減に旦那様と私の関係を認めてください!」
「ダメだ、清姫。君はまだ遊馬の嫁に認められるほどの合格ラインには遥かに届いていない」
「話には聞いていたがお主は娘を嫁に出したくない父親か!?ユウマは余の夫であるのだぞ!夜這いをしても良いではないか!」
「それは君が勝手に決めたことだ、私には関係ない」
英霊と精霊の争いが始まり、遊馬は頭痛を覚えながらベッドから降りる。
「二人共、着替えるから部屋から出てくれないか?」
「あ、よろしければお着替えをお手伝いします」
「ユウマの裸は眼福だぞ!」
「うん、いいから出てけ。令呪を使うぞ?」
遊馬は令呪をチラつかせながら二人を有無を言わせずに部屋から出て行かせ、大きなため息をつく。
「これから毎日あれが続くのか……」
「遊馬、負けるな……」
アストラルは気を落とす遊馬の肩をポンと手を置いた。
☆
午前7時15分・朝食。
着替えて部屋を出た遊馬は清姫とネロ、そして途中で合流したマシュとフォウと一緒に食堂へ向かう。
食堂に入るとそこには信じられない光景が広がった。
「いらっしゃいませ。マスター、マシュ、アストラル、清姫、ネロ」
「いらっしゃいませ、ご主人様。今日のおすすめメニューはタマモキャットの特製オムライスだ」
食堂の入り口に立っていたのはメイド服に身を包んだアルトリアとアルトリア・オルタだった。
「「「「「はいっ!??」」」」」
「フォウッ!?」
世界にその名を轟かせる伝説の騎士王がメイドをやっている事に遊馬達は驚きを隠せなかった。
「騎士王様、あんたら何してるの!!?」
あまりにも異様な光景に遊馬は反射的にツッコミを入れた。
「シ、シロウのお手伝いです。サーヴァントも増えて来ましたし、ただ毎日食べるだけではいけないと思いまして……」
「メディアに頼んで作ってもらった。あの魔女、可愛い服を作るのが得意だからな」
アルトリアは少し恥ずかしながら言い、アルトリア・オルタは堂々と言った。
メディアにそんな特技がある事に驚きだが、アルトリア二人のメイド姿はとても似合っていた。
アルトリアはイメージカラーでもある青を基調とした清楚な雰囲気のメイド服。
対するアルトリア・オルタはイメージカラーの黒を基調としたゴスロリ風のメイド服。
二人のメイド姿のクオリティは高く、仮に本場のメイドカフェにいれば盛況間違い無いだろう。
調理場には料理長のエミヤを筆頭に小鳥とマルタ、そして新しく担当になったブーディカとタマモキャット。
そしてホールにはアルトリアとアルトリア・オルタが担当した事で、サーヴァントがかなり増えて来たがエミヤの負担がかなり減った。
「あの二人……本当にあの騎士王アーサー・ペンドラゴンなのか?」
「あんな姿を見たら円卓の騎士たちが発狂しそうだな」
「そ、そうですね……騎士王様がホールの手伝いをするなんて想像つきませんからね……」
せっせとオーダーを取ったり料理を運んでいる二人のアルトリアの姿を見て遊馬達は苦笑を浮かべた。
余談ではあるが本日のおすすめメニューのタマモキャットのオムライスは絶品だった。
☆
午前8時・勉強会。
朝食の後の勉強会は遊馬だけでなく小鳥も参加する事になった。
少しずつ勉強が上達して来た遊馬と元々真面目な小鳥の生徒二人に教師のマシュとオルガマリーも嬉しく思うのだった。
サーヴァントが増えてきたところでアストラルはある特別授業を設けることを提案した。
それは歴史の授業でサーヴァント本人から直接話を聞くことである。
歴史の本を読むのもいいが、史実が本当に起きたことなのか定かではなく特に第二特異点ではネロが実は女性という驚愕の事実が判明した事で遊馬が歴史の本を信じられなくなった事態に陥っている。
そこでサーヴァント本人からその当時の歴史や文化を学ぶことをアストラルは思いついたのだ。
そして、今回の特別講師は……。
「それではこのボク、シャルルマーニュ十二勇士の一人、アストルフォが先生を務めるよー!」
イングランド王の息子、アストルフォが特別講師を務める。
日本人である遊馬と小鳥にとってシャルルマーニュ伝説は全くといっていいほど馴染み無いのでそれを学んでいく。
シャルルマーニュ伝説を学んでいくと遊馬はある事に気づく。
「あれ……?なあ、アストルフォ」
「ん?なぁに?マスター」
「お前……男なのか?」
「うんそうだよ?」
遊馬の問いにあっさり答えたアストルフォに小鳥達はピシッと石のように固まる。
「えっ?えっ?えっ?ア、アストルフォさんが男……!??」
「で、でも、アストルフォさんが女装しているのは友人のローランさんの狂乱を沈めるためでは……?」
「ま、まさかね……そ、そうよ!アストルフォは実は女の子だったのよ!アーサー王が女性だったし……」
アストルフォが男だという事に信じられない小鳥達は実は女だということを言い聞かせる。
遊馬は本当にアストルフォが男なのか確かめるために行動に移す。
「アストルフォ、ちょっといいか?」
「うん、いいよー」
遊馬はアストラルとアストルフォを連れて部屋を出た。
数分後、遊馬達が戻ると……。
「アストルフォは紛れもない男だ……間違いない」
「ああ……それは私が証明する」
「いやー、流石にちょっと恥ずかしかったかな?あはははは!」
アストルフォが男……それを確かめる方法は一つしかない。
それは同じ男である遊馬にしかできない事だった。
その驚愕の事実に小鳥達は衝撃を受けてその場でうなだれた。
「可愛い顔、高い声、ピンク髪、三つ編み、細い体……羨ましすぎる」
「あまり気にしてませんでしたがこれは大きな敗北感を感じざるをえません……」
「どうして男なのに私より可愛いのよ……顔だけじゃなくて性格も男受けするし、何なの?何なのよこの不公平は……」
もはや神から授けられたと言っても過言ではないその体に敗北感を与えられた小鳥達。
そんな小鳥達を見てアストルフォは首を傾げた。
「あれ?みんなどうしたの?」
「アストルフォ……今回は……」
「全て君の所為だな……」
「ええっ!!?」
遊馬とアストラルの宣告にアストルフォはガビーン!とショックを受けるのだった。
☆
午後0時・昼食。
勉強会を終えた遊馬達は午後の鍛錬のためにしっかり昼食を食べる。
ちなみにアルトリアとアルトリア・オルタのメイドとしての働く姿がかなり板についており、メイド服を制作したメディアは大興奮しながらカメラを構えて激写していた。
☆
午後1時・鍛錬。
トレーニングルームで午後の鍛錬が始まり、遊馬はいつものように自主練をしようとしたら……。
「むっ!マスターよ!」
「ん?レオニダス、どうしたんだ?」
スパルタの王、レオニダスが遊馬に話しかけてきた。
「失礼ですが、服を脱いでいただけませんか?」
「は?服?」
「おっと失礼、マスターの筋肉を見たいのです」
「筋肉を?」
「もしよろしければ、私が考えたトレーニングメニューでマスターの筋肉を増量して差し上げましょう!」
「おっ、マジで!?分かった!」
見事な筋肉を見せながらマッスルポーズを決めるレオニダスの言葉は説得力があり、遊馬は上着とTシャツを脱いでレオニダスに上半身の筋肉を見せるとレオニダスは目を輝かせた。
「おおっ!何と見事な筋肉!しなやかで強靭な筋肉……十三歳でこれなら私の考えたトレーニングで筋肉は3倍、いや、5倍に!」
「マジか!?頼むぜレオニダス!」
「承知!ところで、マスターよ。以前何か訓練でもされたのですか?」
「訓練?別にこれと言ったことは何もしてないけど……」
「しかし、その筋肉は素晴らしい……幼い頃から何か鍛えてたのでは?」
「鍛えたって……そう言えば昔から父ちゃんに連れられて色々な場所に向かったからな……」
「色々な場所?それはどう言ったところに?」
「俺の父ちゃんは冒険家だからな。そんな中一番キツかったのは崖登りだったなぁ」
「崖登り?ほう、中々やりますな」
「でも命綱無しは辛かったなぁ……」
「命綱無し!??」
命綱無しの崖登りを僅か十歳程度の少年が行うという事にレオニダスも驚いた。
「崖登りの後、高度数千メートルの山の上でキャンプしたな。父ちゃんは悩み事があった俺と男同士の話をするために連れて行ってくれたんだ」
楽しそうに話しをする遊馬に近くで模擬戦をしているサーヴァント達はその話を聞いて耳を疑った。
十歳の少年と父親が男同士の話をするために命懸けの崖登りをするとはどれだけスパルタなのだと……。
幸い遊馬は父親を嫌っておらず、むしろ誇らしげに話しているので親子関係が良好なことである。
「す、素晴らしい!何と強い絆で結ばれた親子なのでしょう!でしたら、このレオニダス、マスターの為に理想的な肉体作りをお手伝いしましょう!」
「おっしゃあ!頼むぜ、レオニダス!」
レオニダスは遊馬の肉体作り専門のトレーナーとなり、過酷なトレーニングが始まるが遊馬はいつものかっとビングでそれを乗り越えることとなるのだった。
☆
午後3時・剣術修行。
レオニダスのトレーニングが終わると遊馬の護身術の一つとして双剣の剣術修行が始まる。
いつもは同じ双剣使いのエミヤが指導していたが、エミヤの代わりに新たな先生が担当する。
「やあ、マスター。君の二刀流を私、宮本武蔵が鍛えてあげるよ」
「おおっ!?武蔵が俺の二刀流の先生!?最高だぜ!!」
エミヤの懇願で日本を代表する最強の二刀流剣士である宮本武蔵が先生となり、遊馬のテンションも自然に上がる。
「あー、その前に……マスターにお願いがあるんだけど……」
「お願い?何だ?」
珍しいなと思う遊馬に対し、武蔵は照れ臭そうにしながらそのお願いを口にする。
「その……私のこと、『姉上』って呼んでくれないかなぁ……?」
「……は?」
「い、いや!嫌なら別に今まで通り名前でいいからね!あはははは!」
「武蔵って、もしかして弟が欲しかったのか?」
遊馬の無垢な表情をした質問に武蔵は流れを掴んだと確信して頷きながら答える。
「そ、そうなんだよ!私、一緒に剣術修行ができる弟が欲しかったんだよ。だから弟がずっと欲しいなと思ってて……」
「そういうことなら良いぜ。俺姉ちゃんがいるし」
「ほ、本当に!?」
キラキラと目を輝かせる武蔵に遊馬は笑みを浮かべて応える。
「おう!もちろんだぜ、姉上!!」
「…………ゴハァッ!!」
突然武蔵は幸せそうな満面の笑みを浮かべながら鼻血と吐血を同時に行うという沖田の吐血よりも酷いことして倒れた。
武蔵は大剣豪であるが実は美少年が好きなのである。
遊馬はアストルフォのような美少年ではないが、母に似た顔の優しい雰囲気や弟キャラであることが武蔵の心にヒットしてしまったのだった。
「あ、姉上っ!?大丈夫か!??」
「だ、大丈夫……ちょっとじゃなくて、かなり嬉しすぎただけだから。さあ、早速剣術修行を始めようか!」
「お、おう……」
武蔵は鼻血と吐血を拭いて何事もなかったかのようにスッと立ち上がり、大刀と小刀を構える。
遊馬も両手にホープ剣を作り出して構え、早速二刀流の修行が始まった。
剣術の修行が始まると武蔵は先程のおかしな血まみれの姿が嘘のように真剣となり、遊馬にとって有意義な修行となった。
ちなみに……この後、カルデアの女性サーヴァント、特に遊馬から見て年上系の女性サーヴァント達が挙って遊馬に『姉』と呼ばれたい要望が多発した。
数多くの聖杯戦争のマスターの中でも遊馬はかなり幼いので母性本能がくすぐられた多くの女性サーヴァントが遊馬に姉と呼ばれたく要望するのだった。
遊馬は武蔵のように弟が欲しかったのか、もしくは自分に生前の頃に一緒にいた弟を重ねているのかと思い込み、それを断らずに快く了承していった。
マルタは姉御、マリーは姉様、沖田は姉さん……などと、姉と呼ばれたい女性サーヴァントが遊馬にそう呼ぶよう頼んだ。
そして……その中で特に一番酷かったのはジャンヌだった。
ジャンヌはお姉さんになりたい願望が特に強く、物凄く恥ずかしがりながら遊馬に姉と呼んで欲しいとお願いした。
「ゆ、遊馬君!私、実は弟も欲しかったんです!だから、姉と呼んでくれませんか!?」
「おう!良いぜ、ジャンヌお姉ちゃん!」
遊馬的にジャンヌはお姉ちゃんという呼び方がしっくり来たのでそう呼んだ。
しかし……その瞬間、ジャンヌの中で硬く守られた城壁のような『何か』が一気に崩壊してしまった。
「ああっ、主よ、申し訳ありません……何かに……何かに目覚めそうになってしまいます!!」
ジャンヌは頭を抱えながら自分の信じる主に必死に謝罪するのだった。
歴史上でかなり有名なフランスの聖女の残念すぎる姿に妹(仮)のレティシアは呆れ果てた。
「ダメだ、あのバカ姉……早く何とかしないと本格的にショタコンになるわ……歴史上一番有名な聖女様がショタコンだなんて笑えないわ」
レティシアはジャンヌの姿をコピーしたのも同然なので肉体的には遊馬より年上だが精神年齢的には生まれてからまだ一ヶ月程度しか経っておらず、ある意味遊馬よりも年下でもあるので対象には入らなかった。
ショタコン聖女に敵対し、嫉妬していた自分がバカバカしく思えて仕方がなかった。
「ねぇアストラル……大丈夫なの?このカルデアの女サーヴァント達……」
「……色々な意味でダメかもしれないな……」
女性サーヴァントのショタコン増殖にレティシアとアストラルは色々な意味で危機感を覚えるのだった。
そんな異様な光景を見たエミヤは額に手を当ててため息を吐いた。
「……姉と呼ばれたい為に女性達が集まるか……何だか物凄いデジャヴを感じるのは何故だ……?」
エミヤの脳裏には記憶が磨耗しているが二人の『姉』の姿が鮮明に思い出されるのであった。
☆
午後5時・相談。
修行を終えた遊馬はダ・ヴィンチちゃんの工房に向かい、相談をした。
相談の内容は第二特異点のローマで苦労した馬術だった。
持ち前の運動神経で何とか乗れたが下半身が疲れてしまい今後ももしかしたら移動に馬に乗る機会が出てくるかもしれない。
そこで遊馬はダ・ヴィンチちゃんに何か移動用の発明をお願いした。
「移動用の発明ね……そうだね、今3つ程アイデアが浮かんだからすぐに作ってあげよう」
「本当か!?ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん!」
「君には飛行船やD・パッドを見せてくれたからね。これぐらいお安い御用だよ」
ダ・ヴィンチちゃんは遊馬の移動用の発明を始めた。
何が出来るのか心待ちにしながら遊馬はダ・ヴィンチちゃんの工房を出た。
☆
午後6時・夕食。
夕食時はカルデアで一番賑やかな時間となり、食堂では大賑わいで楽しく夕食を食べていた。
そして、夕食時のピークが過ぎるとメイドとして食堂の手伝いをしていたアルトリアとアルトリア・オルタは元の服に戻るとエミヤの料理に舌鼓を打っていた。
一日中働いた後の食事は格別でいつも以上に食べてしまうのだった。
☆
午後7時・自由時間。
食堂で夕食を食べた後、レティシアと小鳥が互いにデュエルディスクを構えて対峙していた。
「それじゃあ、小鳥。相手を頼むわ」
レティシアの左手首には黒いデュエルディスク、左目には黒いD・ゲイザーが装着されていた。
これはダ・ヴィンチちゃんが遊馬のデュエルディスクとD・ゲイザーを解析して作った完全完璧にコピーしたものであり、流石は天才ダ・ヴィンチである。
「はい!レティシアさん、こちらこそお願いします」
小鳥もデュエルディスクとD・ゲイザーを装着してレティシアのデュエルの相手をする。
デュエルを覚えて来たレティシアは早速デッキを作ってデュエルディスクでの初デュエルである。
「私のターン、ドロー!私はアレキサンドライトドラゴンを……召喚!」
レティシアは別名宝石ドラゴンと呼ばれる美しい宝石の体を持つ通常モンスターの一体であるアレキサンドライトの鱗を持つ美しいドラゴン、アレキサンドライトドラゴンを召喚する。
デュエルディスクのカードに描かれたモンスターを立体映像で出現させるソリッドヴィジョンシステムとD・ゲイザーのモンスターとのバトルなどの臨場感を増幅させるARシステムにより立体的にモンスターを感じる。
「凄い……本当にカードに描かれたモンスターを召喚出来た。私がやった竜召喚とはまた違う感じね」
レティシアが竜の魔女としてかつて行った竜召喚とは違うカードに描かれたモンスターを召喚する行為に不思議な感動を得る。
そんなデュエルの風景を見て興味を持つもの達も自然に現れる。
「これは面白い!未来皇、是非とも僕にもやらせてくれ!」
「はいはーい!ボクもボクも!ねぇねぇ、良いでしょ?マスター!」
「おう!良いぜ、俺が教えてやるぜ!」
それはアレキサンダーとアストルフォだった。
遊馬は椅子に座ってレティシアと小鳥のデュエルを見ていたが、そこにアレキサンダーとアストルフォが通りがかってデュエルに目をキラキラと輝かせていた。
デュエルモンスターズは元々はテーブルなどで行うカードゲームだったがソリッドヴィジョンシステムが開発され、技術の進歩と共にデュエルディスクによるデュエルが発展され、ある意味未来の優れたカードゲームでもある。
すると、一人の通りがかりがその光景に不機嫌な表情を浮かべながらテーブルに置いてあるD・パッドを見て興味深そうに見つめる。
「ん?ウェイバー先生、これに興味あるのか?」
「ロード・エルメロイII世だ!」
それは諸葛孔明ことエルメロイII世だった。
遊馬がウェイバー先生と呼ぶのはエルメロイII世が呼びにくいことと、魔術の先生ということもあってウェイバー先生と呼んでいる。
「まぁいい。これはお前の世界のものだと聞いたが……これが、今あの二人の手首に付いているものになるのか?」
「ああ!D・パッドは俺たちの世界の人間なら誰でも持ってるぜ。これがデュエルディスクに変形出来るし、色々な事が出来るからな!」
「デュエルモンスターズは元々はゲーム……何だよな?」
「そうだぜ。あ、もしかして……ウェイバー先生はゲームが好きなのか?」
「う、うむ……ゲームは趣味だ。特に日本のゲームは好きだ」
「そっか。じゃあ、デュエルモンスターズをやらないか?結構奥が深いし、デュエルディスクを使えばカードに描かれたモンスターを召喚出来るし」
「そうか……なら少しだけ……」
エルメロイII世は遊馬の勧めであまり馴染みがないカードゲームに手を伸ばす。
遊馬の『デュエルをしたらみんな仲間』という信条が少しずつカルデアのサーヴァント達にも影響を与えているのだった。
☆
午後9時・トークタイム。
遊馬はまだ絆があまり結ばれていないサーヴァントと話をするのだが……。
「それでね、それでね、『宗一郎様』は本当に素敵な男性なのよ!」
「そ、そうすか……」
偶然廊下で会ったメディアと話をすることになり、メディアはかつて参加した聖杯戦争のマスターで……しかもまさかの夫である葛木宗一郎の話をこれでもかと遊馬にしていた。
マスターとサーヴァントの関係は基本的にその名の通り主従の関係であるが、まさか夫婦関係というものがあることに遊馬とアストラルは驚いていた。
「メディアは本当にその人の事が大好きなんだな」
宗一郎の事を熱く語るメディアに対しての遊馬の感想だった。
「そうね……もう会うことは出来ないけど、あの人の思いは私の中に刻まれているわ」
「そっか……マスターとサーヴァントの関係も色々あるんだな」
「それは本当に色々よ?性格や相性もあるからね。それより……とっととあなたも好意を寄せているサーヴァントを早く嫁に貰ったら?」
「……おいっ!?どうしてそんな話になるんだよ!??」
突然のメディアの爆弾発言に遊馬は一瞬思考が停止してからツッコミを入れた。
「だってマスターはいつまで経ってもあなたに明確な好意を寄せているサーヴァントにはっきり答えを出さないじゃない。だったら全員娶って結婚しちゃえば?まあ、ハーレムで下手したらギスギスした修羅場がもれなく待ち受けるけどね♪」
メディアは自分に被害がないことから遊馬とそれを囲む恋する乙女サーヴァント達の修羅場を楽しそうに見ているのだった。
「あんた性格悪いな!?」
「ははは!何とでもいいなさいな!」
メディアはカルデアでマスターという楽しいおもちゃを眺めながら、面白おかしく自分の好きなように過ごすのだった……。
☆
午後11時・就寝。
長い一日が終わり、シャワーを浴びて後は寝るだけだが……。
「「……はぁ」」
遊馬とアストラルは脱衣所の中に二つの気配があることに気づき、遊馬はスッと右手を掲げる。
「……令呪を持って命ずる。清姫とネロ、今すぐに俺の部屋から出て自分たちの部屋で大人しく寝てろ!!」
令呪の一画が静かに消えた次の瞬間、脱衣所の中に隠れていた清姫とネロは令呪の力によって強制的に動かされて遊馬の部屋から出て行く。
「旦那さまぁあああああっ!!後生です!後生ですから!!」
「ユウマのいけず!そしてアストラルよ、貴様だけユウマの裸を見られるとは許さないぞぉおおおおおっ!!」
清姫とネロの悲痛な叫び声が木霊し、遊馬は本日数度目のため息をつく。
「これも毎日続くかな……?」
「心配するな、遊馬。君は私が守る」
「ありがとうよ、アストラル……」
遊馬とアストラルは日々接近する愛の強い英霊達の相手に神経を使うことになるのだった。
そして明日の朝もまた同じ風景が繰り返されるのだった……。
.
女性サーヴァント、ショタコン増加中(笑)
遊馬って可愛い弟キャラなのでありかなと思ってやらかしました。
基本聖杯戦争のマスターって高校生以上が多いので13歳の遊馬は幼さが抜けてないので女性サーヴァントからしたら母性本能がくすぐられると思いましてこんなことになりました(笑)
そしてネロちゃまが清姫と同じ変態に……。
うん、これは仕方ないですね!
次回は第一次正妻戦争開幕です。
誰が遊馬の嫁に相応しいか小鳥たちが勝負します!