Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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※注意!注意!!注意!!!
今回の話はキャラ崩壊が今までで一番特に酷いです。
ギャグとイチャラブが混ざり、自分でもおかしなテンションで書いてしまったと少し後悔しています。
それから読む際は苦いコーヒーを用意することをお勧めします。
私は書いた後見直したら無性にコーヒーが飲みたくなりました(笑)


ナンバーズ38 第一次正妻戦争開幕!!!

次の特異点が判明するまで遊馬とサーヴァント達は一時の平和な日常を過ごしていた。

 

しかし、カルデアで今後の任務に支障が起きるかもしれない事態が起きている。

 

それは……カルデアの最後のマスター、遊馬とそれを囲む恋する乙女達の関係である。

 

遊馬は異世界にて人類と三つの世界の命運をかけた戦いで見事に勝ち抜き、世界を救った勇者である。

 

しかし、遊馬の美徳というか困った性質と言うべきか、遊馬は天然の人誑しである。

 

遊馬は信念を曲げることないその真っ直ぐな心は敵であった者ですら自然に惹きつけることが出来る上に立つ人間にとって必要なスキルの一つを持っている。

 

ただ、その人誑しに女誑しも含まれており、それが大変な事態を引き起こしている。

 

カルデア内に人間や英霊関係無しに遊馬に恋している乙女達が増えているのだ。

 

一人目は観月小鳥。

 

遊馬の幼馴染で遊馬とアストラルの長きに渡る戦いをずっと側で見守り続けてきた。

 

失い、傷つく事が多かった戦いの中、遊馬とアストラルが最後まで諦めずに戦い続けてきたのも小鳥の存在があったお陰でもある。

 

そんな小鳥を遊馬は大切に想っており、小鳥も遊馬のために危険を犯してまで世界を超えてカルデアまで来た。

 

カルデア内にて遊馬のお嫁さん候補筆頭と言われている。

 

二人目はマシュ。

 

遊馬のもう一人の相棒であり初めて契約したサーヴァントで数々の奇跡を起こした。

 

最初マシュは遊馬を弟のように想っていたが、一緒に時を重ね、共に戦う内に徐々にその心に恋心を宿している。

 

三人目は清姫。

 

遊馬を清姫の前世の恋人である安珍であると思い込んでおり、その愛が強すぎて世間でいうヤンデレのストーカーとなっていた。

 

遊馬に想いを寄せる女性サーヴァントの中で一番危ない存在である。

 

四人目はジャンヌ。

 

聖女として特定の男性に好意を寄せてはいけないと思っていたが、自分を聖女ではなく一人の少女として、仲間として扱ってくれてどんな災厄からも必ず守ると誓った遊馬の姿に惹かれていった。

 

更には遊馬に『ジャンヌお姉ちゃん』と呼ばれて目覚めてはいけないショタコンの道に走り出してしまった残念聖女である。

 

五人目はレティシア。

 

竜の魔女としてフランスを復讐し、人間全てを滅ぼそうとしていたが敵であった遊馬と何度も言葉を交わし、憎しみの象徴であるファヴニールを真正面から受け止め、打ち砕いた。

 

そして、暴走するジルから救い出され、虚ろな存在だったレティシアに居場所と名前を与えた遊馬に惚れないわけがない。

 

ちなみに同じく遊馬に救われたジルはジャンヌとレティシアを神に裁かれないように是非とも遊馬に嫁に貰って連れて欲しいと願っている。

 

六人目はネロ。

 

特異点でのローマの戦いで仲間として守ると誓った遊馬に好意を寄せ、別れの時にはキスとプロポーズをしたネロ。

 

それから死ぬ時まで遊馬を想い続けたネロは花嫁姿で召喚された。

 

遊馬への想いが強すぎるネロはある意味清姫と同等かそれ以上に行動力がある。

 

余談だがネロを愛してやまないカリギュラが遊馬の命を密かに狙っているのだった。

 

そんな遊馬と六人の恋する乙女達の修羅場に一つの決着をつけるべく、カルデアであるイベントが開催された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより、マスター遊馬の嫁は一体誰だ!?」

 

「『第一次正妻戦争』……開幕ですわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖杯戦争ならぬ正妻戦争……それは遊馬の嫁を決めるためのイベントであり、エリザベートとマリーがマイクを持って堂々と宣言した。

 

「司会は私、みんなのアイドル!最強無敵のエリザベート!」

 

「そして、フランス王妃のマリー・アントワネットがお送りしますわ」

 

「ちょっと待てぇえええええっ!??」

 

突如始まった謎のイベントに遊馬の悲痛な叫びが食堂に響き渡る。

 

午後の鍛錬と剣術修行が終わって疲れた体に栄養を補給するため、美味しい夕食を食べようと思った矢先にエリザベートとマリーに拉致され、体をロープで縛られて食堂の椅子に座らされた。

 

「何だよ正妻戦争って!?エリザベート、マリー姉様、どういう事だ!?」

 

サーヴァントの中では比較的友人関係として親しいエリザベートと先日から姉様と呼ぶようになったマリーが突然起こした謎のイベントに遊馬は大混乱だった。

 

「どういう事って、マスターがいつまで経ってもハッキリと正妻を決めないから……」

 

「せっかくなので、誰が一番マスターのお嫁さんに相応しいか一度勝負をしたらどうかと勧めたんですわ」

 

「な、何だよそれ!?くっ、アストラル!助けてくれ!!」

 

遊馬は自分の最大の理解者であるアストラルに助けを求め、皇の鍵が輝くとアストラルが現れる。

 

「遊馬……大人しくこのイベントに大人しく参加するんだ」

 

「何でぇっ!??」

 

「遊馬。君は無茶ばかりするし、将来が少し不安だ。そこで君が必ず帰って来られるような場所を作ってくれる伴侶が必要だと思った。簡単に言えば早く嫁を作って私を安心させてくれ」

 

「お前は自分の息子の婚期を心配する親か!??」

 

「さあ、司会者達よ!早速始めてくれ!」

 

「聞けよ!?」

 

遊馬の発言を見事にスルーされてしまった

 

ちなみに遊馬に味方をしてくれる人間やサーヴァントは誰もおらず、特に危険がないので遠くの席から食事をしながら楽しんでおり、酷い者達は夕食のデザートを賭けて誰が正妻戦争の勝者になるか賭け事をし始める始末だった。

 

早速第一次正妻戦争の内容が発表される。

 

「それでは、第一次正妻戦争のお題を発表します!」

 

「そのお題は……」

 

何処からともなくドラムロールが鳴り響き、エリザベートとマリーは同時に発表する。

 

「「料理です!」」

 

「りょ、料理?」

 

「これはとある某騎士王様からのお話ですが……」

 

「それ、アルトリアだよな?」

 

「えっと……『私は嫁に出会った当初から沢山の美味しいご飯をご馳走してくれました。あまりにも美味しくはしたないと思いながらもお代わりをたくさんしてしまいました。今思えばあの時から私の心は嫁に向いていました。やはり異性の心を掴むのは胃袋も重要な要素であると認識しています』……だそうです!」

 

エリザベートがメモを取り出して読み上げるが某騎士王……バレバレだがアルトリアのエミヤに惚れた要因を聞かされた遊馬は苦笑いを浮かべる。

 

「腹ペコ王の全ての原因はある意味エミヤの所為だったのか……」

 

「と言うわけで今回の正妻戦争の参加者六人にマスターの大好物であるデュエル飯を作ってもらいました!!」

 

「えっ!?」

 

そこに厨房から六人の少女がそれぞれが作ったデュエル飯を持って出てきた。

 

「こ、小鳥!?それに、マシュ、清姫、ジャンヌお姉ちゃん、レティシア、ネロ!??」

 

出てきたのは今回の正妻戦争の参加者、小鳥、マシュ、清姫、ジャンヌ、レティシア、ネロの六人だった。

 

しかし、遊馬が大好きなデュエル飯は握り拳よりも大きな丸い塩おにぎりであるが、六つのデュエル飯はどれも独特のアレンジした調理がされていた。

 

「えー、今回はカルデアのオカンことカルデア食堂の総料理長のエミヤさんの提案で特別ルールを設けました!」

 

「それではエミヤさん、説明をどうぞ!」

 

そこに後から続いてエミヤが登場し、咳払いをしてルール説明をする。

 

「だからオカンはやめろ……コホン。今回はマスターの大好物であるデュエル飯もとい、おにぎりを参加者達に作ってもらった。しかしいつもマスターが食べている塩味のおにぎりでは審査のしようが無いので、参加者それぞれがマスターを想い、自分の好みを込めたオリジナルのおにぎりを作ってもらった!ちなみに料理が苦手や初めての者もいるので、公平を考えて私が指導させてもらった」

 

よくみると六つのおにぎりは大きな丸型だがどれも見た目の色などが違っており、美味しそうな香りが漂っていた。

 

エミヤが指導しているので味の保証はされている。

 

「この六つのおにぎりを全て食し、どれが一番美味しかったのか最終的に決めてもらい、それがこの正妻戦争の勝利者となる!」

 

「えっと……つまり、俺が一番美味いと思ったおにぎりを選べばいいの?」

 

「なるほど、遊馬は食事が大好きだ。そこで一番の好物であるデュエル飯を誰が遊馬好みのを作れるかと言う勝負だな?」

 

「そう言うことだ。さあ、マスター。実食だ!」

 

「お、おう……」

 

「待った!その前に一つ良いかな?」

 

アストラルは遊馬が実食する前にあるお願いをする。

 

「すまないがその実食、私も参加しても良いかな?」

 

「「「…………はい???」」」

 

突然のお願いに小鳥達だけでなくこの場にいた全員が唖然とした。

 

アストラルは精霊で遊馬以外が触れようとしてもその体に触れることはできない。

 

そもそもアストラルには人間やサーヴァントと違い肉体というものが存在しないため、食事をすることが出来ない。

 

「あの……別に構わないけど、アストラルはどうやって食べるの?」

 

小鳥の言う通りどうやって食事をするのだと疑問が出るとアストラルは手を掲げた。

 

「こうするのだ!私は私自身と遊馬でオーバーレイ・ネットワークを再構築!!」

 

「はぁっ!?どわぁあっ!?」

 

遊馬とアストラルが赤と青の光となって絡み合い一つに重なり、奇跡の姿へと変身する。

 

「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!」」

 

それは特異点の戦いの最終局面で度々見せた遊馬とアストラルが一つに合体した希望の英雄、ZEXALである。

 

「「「…………えぇえええええっ!??」」」

 

まさかのZEXALの合体に小鳥達は驚愕の絶叫を響かせた。

 

「ZEXALになることで人間の体を持つ遊馬と私の魂が一体化する。そうすれば私と遊馬の五感全て感覚も共有できる。つまり、食事の感覚も余すことなく共有できるのだ!」

 

「あっ!そう言えばWDCの決勝戦でZEXALは私のデュエル飯を食べていたけど、あの時にアストラルも食べていたのね!」

 

「そうだ……あの時、初めて食事をした時、デュエルは絶望的な状況だったが体の底から再び闘志が湧き上がって来た。あれが生きると言う実感を初めて感じたのだ!!」

 

食事という生まれて初めての経験がアストラルに生きるという実感を与えた。

 

沸き起こる生きる力がそれが絶望的なデュエルを乗り越えるための新たなシャイニングドローを生み出すことが出来たのだ。

 

「冷静的な判断ができるアストラルがいるなら審査はより公平に出来そうだな……ではマスター……いや、ZEXAL。実食を頼む」

 

「おう!いただきます!」

 

「いただきます」

 

ZEXALは手を合わせて食材と作ってくれた小鳥達に感謝しながらデュエル飯を食べる。

 

食べる順番はあらかじめ小鳥達がくじ引きをして決まっており、まずは清姫の焼きおにぎりだった。

 

見事な狐色の焼き色に味噌が塗られており、ザクザクした食感が食欲を掻き立てる。

 

「これが食感というものか……この歯で噛む音が楽しいのか!」

 

「美味えな!焼きおにぎりは作るのが難しいんだよなぁ!」

 

「ありがとうございます!これは私の炎で焼きましたの。上手に焼けて良かったですわ」

 

「「……え?」」

 

ZEXALは清姫の言葉に固まった。

 

清姫は生前に安珍を自らの炎で焼き殺した経歴がある……その炎で焼いた焼きおにぎりは色々と重いものが込められていた。

 

美味しく特に体に悪影響は無さそうなのでZEXALは苦笑いを浮かべながら食べた。

 

次はマシュのおにぎりは見た目が可愛らしいものだった。

 

「これってフォウのキャラ弁?」

 

「そうです。フォウさんを海苔で表現してみました」

 

「フォウ〜!」

 

それは丸いおにぎりにカットされた海苔を使ってカルデアのマスコットキャラでもあるフォウを表現した。

 

いわゆるキャラ弁でフォウおにぎりはあまりにも上手で食べるのも勿体無いと思うぐらいでZEXALは一気に食べた。

 

「ん?あ、これ海苔の佃煮だ!」

 

おにぎりの中には優しい味の海苔の佃煮が具材として入っていた。

 

「遊馬くんと同じ日本人のエミヤさんから教わって作ってみました。海苔の佃煮は日本人の多くが好んで食べるというので……」

 

「これは美味いな。エミヤに和食のメニューに追加してもらおうっと!」

 

遊馬は懐かしい日本の味を楽しみながら一気におにぎりを食べた。次はレティシアで少し無骨な形だが大きめのおにぎりで中に何か具材が入っているようだった。

 

ZEXALは何が入っているのかワクワクしながら食べる。

 

「もぐもぐ……ん!?何だこれ!?美味え肉だ!」

 

「口の中に広がるこの旨味……最高だ!」

 

おにぎりの中身は大きな肉の塊が入っており、食べたことのない旨味と肉汁が口の中に広がる。

 

美味しいのは美味しいのだが、食べたことのない肉に遊馬は疑問に思う。

 

「レティシア、これ何の肉だ?牛でも豚でも鳥でもないし……羊や山羊も違うな……」

 

食感や味など一般的に食べられる肉とはまるで違うのでレティシアに何の肉が尋ねた。

 

すると……。

 

「えっと……それは……」

 

何故かレティシアは言いづらそうに声が詰まった。

 

「それは?」

 

「ワ……」

 

「ワ?」

 

「ワイバーンの肉よ……」

 

「「……はぁ!??」」

 

レティシアが気まずそうに言った衝撃の事実にZEXALは驚愕した。

 

「ワ、ワイバーンの肉って何だよ!?どっから調達したんだよ!?」

 

「ちびノブよ。ちびノブが食料調達でレイシフトした先で偶然現れたワイバーンを狩って持ってきたのよ。大丈夫、毒とかないしちゃんと食べれるから。それに……騎士王様達がステーキ食べてるし」

 

「「えっ???」」

 

食堂の一角にはアルトリアとアルトリア・オルタが縦だか横だか全く分からない巨大で美味しそうな肉汁を出すステーキをモキュモキュと食べていた。

 

「あれ……ワイバーンのステーキか」

 

「しかもかなり大きい……アルトリア達が食べて問題ないなら大丈夫だろう……」

 

第一特異点でアルトリアがワイバーンを食べたそうにしていたのである意味望みが一つ叶ったようなものだった。

 

ワイバーンの肉というインパクトのあるおにぎりの次はジャンヌだった。

 

ジャンヌのおにぎりは米の白色はなく代わりにクリーム色に輝いていた。

 

「この香り……チーズか?」

 

「はい!私は農家の出なのでチーズを使ってみました!米は水でなく牛乳で炊いてみました!」

 

ジャンヌは実は農家の出なので米に牛乳とチーズが合うことを思いつき、エミヤの指導のもと、米を牛乳で炊いてからチーズと混ぜたチーズおにぎりを作った。

 

「へぇ、面白いな!味も独創的で美味いし、やっぱ乳製品は美味い!」

 

「チーズの酸味と米と牛乳の甘みが程よいバランスを出しているな」

 

エミヤの指導のお陰でもあるが、チーズおにぎりはある意味リゾットの味に近いので美味しく食べることができた。

 

変わり種のおにぎりが続々と登場していき、ここで更なる変わり種のおにぎりをネロが出した。

 

「さあ、ユウマよ!余のデュエル飯を食すのじゃ!」

 

「ん……?すげぇ甘い香りがするな。林檎……?」

 

「覚えておるか?ローマの街で林檎を食べた時の事を……」

 

「勿論だぜ。あの時の林檎の味は覚えてるぜ」

 

「だから、今回は林檎を使った甘いおにぎりを作ってみたぞ!」

 

米はデンプンが豊富で人間の唾液と結合すると糖質となって甘みが出てくる。

 

米を使ったデザートもたくさんあるので相性は悪くない。

 

今回ネロは林檎を砂糖など使って甘く煮て、それをご飯と混ぜ合わせておにぎりを作ったのだ。

 

「まるでデュエル飯じゃない全く別の料理を食べている気分だぜ。でも、程よい甘さが最高だぜ!」

 

「流石はネロだ。主食である米をデザート感覚にする観点には驚かされる」

 

「当然だ!余はローマ皇帝であるからな!」

 

いつものように自信満々にポーズを決めると……いよいよ最後は小鳥の番である。

 

小鳥の作ったおにぎりは他の参加者に比べるとインパクトの無い、いつもの丸いデュエル飯だった。

 

「それじゃあ、これが最後だな……改めて、いただきます!」

 

「いただきます!」

 

「はい、どうぞ」

 

ZEXALは手を合わせて改めて挨拶をすると小鳥は笑顔で返した。

 

今日最後の食事となるデュエル飯にかぶりつくとその中身に驚いた。

 

「これ……鳥の唐揚げと卵焼き?」

 

大きめのデュエル飯に一口サイズの鳥の唐揚げと卵焼きが一緒に入っており、おにぎりと鳥の唐揚げと卵焼きは正にお弁当の定番メニューでもある。

 

「うん。お春おばあちゃんに教えてもらった特製唐揚げと卵焼きよ」

 

「ばあちゃんの……?」

 

遊馬にデュエル飯を作っていたのは祖母のお春だった。

 

母の未来が行方不明となり、遊馬の毎日のご飯とお弁当であるデュエル飯を作っていたのはお春……遊馬はお春のデュエル飯が一番の大好物で元気の源だった。

 

やがて小鳥もお春の代わりにデュエル飯を作るようになり、頻繁に九十九家に出入りするようになってお春から料理を教わっていたのだ。

 

お春のデュエル飯や料理は遊馬にとって故郷であるハートランドを思い出すおふくろの味でもあり、まだ帰ることが出来ないハートランドを思い出しながら更にデュエル飯にかぶりつく。

 

「やべぇ……美味い、美味すぎるぜ……」

 

おふくろの味が遊馬の記憶を刺激し、懐かしさや寂しさが溢れ出し、両目から大量の涙を流しながら一気にデュエル飯を平らげた。

 

「これがおふくろの味というものか……とても心に染みる。ハートランドでの遊馬やみんなとの思い出が鮮明に蘇ってくる……」

 

アストラルも小鳥のデュエル飯でハートランドでの懐かしい日々が蘇っていく。

 

六人の参加者全員のデュエル飯を全て食し、ZEXALは遊馬とアストラルの二人に分かれる。

 

「……遊馬、決まったな?」

 

「ああ。もちろん、決まったぜ」

 

遊馬とアストラルの答えは既に決まり、いよいよ正妻戦争の勝利者が決まる。

 

「さあ、お二人の実食が終わり、審査発表に入ります!」

 

「マスター、一番美味しかったのはどなたの料理かしら?」

 

エリザベートとマリーから答えを問われ、遊馬は息を吐いてゆっくり口を開く。

 

「みんなのデュエル飯、どれも美味かった。ごちそうさまでした。それで、今回一番美味いのは正直決められなかった……」

 

それはどれが一番美味いか選べないというある意味最悪の答えだった。

 

その答えに食堂はざわめく。

 

「だけど……」

 

遊馬の言葉はそこで終わりではなかった。

 

「これが正妻戦争って言うなら、これから先……ずっとその人の料理を食べていきたいって意味もあるよな?だったらその答えは決まった……」

 

遊馬は席から立ち、ゆっくり一人の少女の元へ歩いた。

 

そして、その少女の前で静かに告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺がこの先、死ぬまで食べていたいのは……小鳥、お前のデュエル飯だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊馬が選んだ答え……それは小鳥のデュエル飯だった。

 

「遊馬……!!」

 

小鳥は遊馬が選んでくれたことに嬉しさがこみ上げ、涙が溢れそうになった。

 

「遂に決着!第一次正妻戦争の勝者は観月小鳥!!」

 

「これはマスターの正妻に向けて大きく一歩リードですわ!おめでとうございます!!」

 

エリザベートとマリーが高らかに小鳥の勝利を宣言し、食堂が拍手喝采で沸き起こった。

 

なかなかの接戦だったが、最後の遊馬とアストラルの記憶を刺激するデュエル飯が勝敗を分けたのだ。

 

「それでは、勝者の小鳥さんには豪華商品を贈呈します!!」

 

「嬉しすぎて気絶しないでくださいね♪」

 

正妻戦争には勝者が必ず喜ぶ豪華商品が贈呈される事となり、エリザベートとマリーはニヤニヤしながらその豪華商品を発表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「勝者の小鳥さんにはマスター遊馬からの熱いラブラブキッスをプレゼント!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、食堂は呆然の沈黙に包まれた。

 

そして……。

 

「「「えぇえええええーっ!??」」」

 

「「「何ぃいいいいいっ!??」」」

 

「「「キャアアアアアアッ!?」」」

 

「「「オォオオオオオオッ!!」

 

食堂に驚愕や興奮などの絶叫が轟いた。

 

「ま、待ってください!幾ら何でもそれは……」

 

「狡いですわ!旦那様からなんて羨ましすぎます!」

 

「そ、そうです!そんなハレンチな豪華商品は認められません!」

 

「ふざけないでよ!そんなの聞いてないわよ!?」

 

「ユウマからキスなんてそれこそ嬉しすぎて昇天してしまうぐらいではないか!」

 

マシュ達は予想外の豪華商品に断固反対するが、アストラルはそれよりも早く手を打つ。

 

遊馬のデッキケースを開き、五枚のフェイトナンバーズを取り出す。

 

「邪魔をさせない。フェイトナンバーズに入ってもらう!」

 

アストラルの手が輝くとマシュ達が粒子となってフェイトナンバーズの中に封印された。

 

フェイトナンバーズの中にいるマシュ達はカードから出ようと必死に暴れており、アストラルの手の中で跳ねていた。

 

「さあ!遊馬よ、今のうちに!!」

 

「えっ!?ちょっ、アストラル!??」

 

「さあさあ、マスター!」

 

「お早くお早く♪」

 

エリザベートとマリーは遊馬を無理矢理立ち上がらせて固まる小鳥の前まで連れて行く。

 

小鳥は顔を真っ赤にして俯き、遊馬も小鳥を前にして顔を真っ赤にする。

 

「ゆ、遊馬……」

 

「良いのかよ、その……」

 

「バカ……本当に鈍感なんだから……」

 

小鳥は今まで伝えられなかった思いを言葉に乗せて全て打ち明ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きじゃなかったら……あなたとアストラルの危険な戦いをずっと見守ってないわよ……好きじゃなかったら、あなたにデュエル飯を作ってないわよ……好きじゃなかったら、危険を顧みず世界を越えたりしないわよ……」

 

「小鳥……」

 

「私は……私は……遊馬が、大好きー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は自分の全てをさらけ出すように大声で遊馬に大好きと告白した。

 

いつも側にいてくれた小鳥から告白されて顔を真っ赤にする遊馬。

 

小鳥は静かに目を閉じると遊馬は意を決し、小鳥の頬に手を添えて自分の顔を近づける。

 

「んっ……」

 

「んくぅ……」

 

そして、遊馬は自分の唇と小鳥の唇を優しく重ねてキスをする。

 

既に何度もネロからキスを奪われている遊馬は複雑は心境だがキスのやり方は知っており、遊馬は角度を変えながら小鳥に何度もキスをする。

 

一分弱で二人は唇を離すが、その一分弱が何時間にも感じられるキスとなった。

 

「えへへ……しちゃったね、キス」

 

「お、おう……そうだな……」

 

「不思議だね……小さい頃からずっといる幼馴染とこんな事をするなんて……」

 

「お、俺だって考えたことなかったぜ……」

 

「でも、凄く嬉しかった……」

 

「そ、そうか……」

 

十三歳の少年少女の初々しい恋模様にエリザベートとマリー達は微笑ましく見守っていた。

 

「いやー、初々しくて逆にこっちが恥ずかしくなっちゃったわね」

 

「うふふ、良いですわね。可愛らしい二人の慣れないこの初々しさは胸がキュンとなりますわ!」

 

「ふっ……良かったな、小鳥」

 

アストラルは満足そうに頷くが……手元にある五枚のフェイトナンバーズが震えだす。

 

「何だ?うおっ!??」

 

フェイトナンバーズから五つの光が飛び出すと、何とマシュ達がフェイトナンバーズ状態で現れるのだった。

 

フェイトナンバーズは遊馬がデュエルディスクを通してエクシーズ召喚しなければならないのだが、それを無視してマシュ達はフェイトナンバーズ化して戦闘態勢に入っていたのだ。

 

まだ一度も召喚してないネロはマシュと同じ未来皇ホープのプロテクターを装着し、原初の火を担いでいた。

 

全員からとてつもない魔力が放出されており、遊馬は直感しなくてもやばいと思って急いで小鳥の手を握って食堂から出る。

 

「に、逃げるぞ、小鳥!」

 

「え?あ、きゃっ!?」

 

「逃がしませんよ、遊馬君、小鳥さん……」

 

「逃げるなんて許しませんよ、旦那様……」

 

「あはははは……こんな気持ちは初めてですね……」

 

「ユウマ……取り敢えず一発全力で殴らせて……」

 

「ユウマよ……浮気は大罪だぞ……?」

 

遊馬と小鳥の後を目のハイライトがなくなっているマシュ達が追いかける。

 

「ねえ、マリー……あれ、ヤバくない?」

 

「ええ、危険ですわね……」

 

エリザベートとマリーだけでなくこの場にいたサーヴァント達とカルデアの職員達は同時に思った。

 

このままだと遊馬と小鳥の身が危ない……と。

 

裁定者のサーヴァントであり比較的まともなジャンヌですら完全に暴走しており、バーサーカークラスの清姫もいつも以上に狂化属性が上がっている。

 

「皆の者!行くわよ!!」

 

「マスターと小鳥さんを助けましょう!!」

 

戦闘能力が高いサーヴァントを中心に急いで遊馬達の後を追い、暴走するマシュ達を止めに向かうのだった。

 

「今回は小鳥が勝利したがまだまだ油断ならないな……小鳥、これからも頑張るんだぞ」

 

実はアストラルは遊馬のお嫁さんは小鳥が相応しいと思っており、今回の結果に満足していた。

 

しかし、アストラルは今後も遊馬に思いを寄せる女性が増えると確信し、再び正妻戦争が起きるのを危惧した。

 

そして……後に第二次、第三次と続々と正妻戦争が起きるのはそう遠くない未来である。

 

 

 

.




小鳥ちゃん大勝利!
小鳥ちゃんのデュエル飯をずっと食べていたいと遊馬はデュエルカーニバルのゲームで言っていたのでほぼ公式ですよね?
よくよく考えるとヒロインといい関係の主人公って遊馬がダントツですよね?
正妻戦争はまだ始まったばかりですが、どうなるかまだ未定です。
次回は通常運転で第三特異点前の準備回です。
ダ・ヴィンチちゃんの移動用メカのお披露目です。

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