いやー、女神様とぬいぐるみの夫婦漫才は面白いので書いてて楽しかったです。
黒髭海賊団との戦闘によって黄金の鹿号は船体にダメージを受けてまともに航海ができなくなってしまった。
黒髭の追撃を逃れるためにかなり離れた無人島に希望皇ホープで運んでもらった。
幸い島には大量の樹木が自生しており、それを木材に加工して破損した船の修復材に使えることが出来る。
しかし、森には魔物が大量に住んでおり、遊馬達は安全を確保するために一掃する。
無人島を探索しながら先ほど戦った黒髭について情報を整理していく。
カルデアで戦闘中の魔力の波動を計測していた際、黒髭が乗っていた船が一番大きく、黒髭が発動した宝具の可能性が非常に高かった。
しかし、計測中に船の魔力値が下がっていたのだ。
それは遊馬達のコンビネーションにより敵サーヴァントの一人、エイリークを倒した時だった。
そこから考えられる結論は黒髭の宝具、『
つまり、サーヴァントを乗せれば乗せるほど強くなる特殊な効果を持つ宝具であり、黒髭がエウリュアレを狙っていたのはサーヴァントであり女神であるその力を求めていたからである。
最も、黒髭本人の趣味がほとんどだと思われるが……。
「なるほどね、じゃあ先に黒髭の部下のサーヴァントをぶっ倒すか、あわよくばこっちの仲間に引き込めば行けるってことだよな?」
「仲間に引き込むか、君らしいな……むっ?」
「どうした、アストラル?」
「遊馬……サーヴァントの気配がする」
「マジか!?仕方ない、こっちから出向いてやるか!」
遊馬は味方か敵かわからないが会わないことには何も始まらないのでサーヴァントの気配がする方向へ向かった。
すると途中でこの世界の歪みによって出現したワイバーンが現れ、それを倒していくとマシュは竜種であるワイバーンの鱗を使って黄金の鹿号を強化することを思いついた。
鱗の加工は難しいが怪力を持つアステリオスならそれが可能なので彼に任せ、鱗の素材集めをしながらサーヴァントを探しに向かう。
生い茂る森の奥へ進むと段々と気配が強くなり、警戒しながら進んでいくと……。
「あ〜れ〜!」
何かが森の奥から飛んできて遊馬はそれを見事キャッチすると……。
「なんだこれ?クマのぬいぐるみか?」
それは小さな棍棒を持った服を着たクマのようなぬいぐるみだった。
「遊馬!それからサーヴァントの気配がする!すぐに捨てるんだ!」
「何!?」
アストラルの警告に遊馬はすぐにクマのぬいぐるみを捨ててデュエルディスクを構える。
「どわっ!?何するんだテメェ!って、なんで精霊が人間といるんだ!?どんな関係!?」
クマのぬいぐるみは低い声で喋り出し、遊馬達はとても驚いた。
「ぬいぐるみが喋った!?」
「いや、ぬいぐるみじゃないからね?ぬいぐるみっぽいけど、それは認めるけど」
「貴様は敵か?味方か?敵なら……」
アストラルはぬいぐるみを睨みつける。
「フッ、それはこっちの台詞だな……すいません、味方だと思います。危害を加える気は毛頭ありません」
「腰低すぎだろお前」
あっさり涙目になってひれ伏すぬいぐるみに遊馬はツッコミを入れる。
「あーーーーー!!」
そこに、森の奥から真っ白な髪をしたメドゥーサよりもかなり際どい衣装を身に纏い、大きな弓を持った美女が現れた。
「待て、こいつらは敵じゃない……ぷぎゅる?!」
「また浮気したの、ダーリン!?」
美女はクマのぬいぐるみを掴んで衝撃的な発言をし、遊馬達は更に驚いた。
「ダ、ダーリンって、ぬいぐるみとあの人が結婚してんの!??」
「一体どう言う関係なんだ……?」
「私と!言うものが!ありながら!もう我慢の限界です!さあ、お仕置きの時間よ!」
「え、この状況で真っ先に殴られるの俺なの!?ちょ、待って、待って、誤解、誤解よ!胸とか足とかガン見したのは確かだけど!ごめんなさ……ぷぎゅる!」
美女はクマのぬいぐるみにお仕置きと言う名の制裁を加えるために何度も殴り、完全に蚊帳の外の遊馬とマシュは恐る恐る話しかける。
「おーい、ちょっとそこのお二人さーん」
「あ、あの……」
「なに!?男女の問題に口を挟まないで!民事の事案よ、民事の!」
「遊馬君、どうしましょう……私、こんなに途方に暮れるの初めてです。あ、いえ。さっきの黒何とかと会った時も途方に暮れました。暮れっぱなしです。今回の時代は、全体的にネジが緩んでいると今気づきました!」
「とりあえず……あの人のぬいぐるみへのお仕置きが終わるまで待ってるか」
「そうですね、待ちましょう」
遊馬達は美女のぬいぐるみへのお仕置きが終わるまでしばし待ち、落ち着いた頃に美女は遊馬が人間であることにようやく気付いた。
「ん?あれ、貴方、人間?マスターなの?」
「ああ。俺は九十九遊馬、遊馬って呼んでくれ。そして、隣にいる精霊は相棒の……」
「アストラルだ」
「精霊……?そこにいるサーヴァント達はともかく、どうして精霊が人間の子供と一緒にいるの?」
美女はアストラルが遊馬と一緒に行動していることに大きな疑問を持っていた。
「私と遊馬は一心同体で共に戦う……言わば運命共同体のような存在だ。遊馬は私にとって一番大切な人だからだ」
「一心同体……運命共同体……まあ、素敵ね!人間と精霊……種族は違えど、二人はそれほど強い繋がりで結ばれているのね!」
美女はアストラルの答えが自分好みだったのか、満足したように頷いた。
「こっちの色ボケは放置しておいて、ユウマか……やっとまともなサーヴァント達と出会えたな。さて、と。今回の召喚は聖杯戦争なんだよな。俺たちは敵か味方か?胸のおっきな娘さんは独身?」
「さりげなく質問を混ぜちゃダメ!」
「はぁ……俺たちはーー」
夫婦漫才をするぬいぐるみと美女に対し、遊馬は頭痛を覚えながら人類と世界の未来を守る戦いをしていることを話し始めた。
「……なるほどねえ。おおまかな事情はわかったよ」
「ふーん、じゃあこの世界って永遠?えたーなる?」
「……仮にこの時代はそうであってもいえ、外枠がなくなれば消滅すると思われます。そうなってしまえば、我々の敗北であり、人類史の終焉です」
「……ちぇー」
「お前、この世界で永遠に暮らしたいとかそういうことを考えていただろう」
「やだ、私の思っていることを言い当てるなんて、相思相愛っぽい……素敵……」
「永遠の世界で生きるくらいなら地獄で死んだほうが何ぼかマシだ」
遊馬達はこのクマのぬいぐるみと美女の関係が分からなかった。
側から見ればぬいぐるみに語りかけているちょっと痛い女性にしか見えなかった。
「それで……二人は俺たちに協力してくれるのか?」
「ん〜む。ねえ、どうするダーリン?」
「どうするも何もなぁ、人類史が滅ぶ時点で協力する以外の選択肢があるか、バカ!」
「バカじゃないもん!女神様だもん!」
「……え?女神様……??」
美女のその発言に遊馬達は耳を疑った。
確かに美女の服装やその身から溢れる力の波動で人間から英霊となった存在とは別の言わばメドゥーサ達のような存在だとは思っていたが、まさか女神だとは予想外過ぎた。
「ええい、駄女神めが……!ぺちぺちぺちぺちぺちぺちっ!」
「あう、DVだっ!DV事案って言うんだよね、これ!」
「……夫婦喧嘩なら後にしてくれないか?それで、君たちは何者なんだ?」
頭にひどい頭痛を覚えたアストラルはこめかみを抑えながら美女とクマのぬいぐるみに何者か尋ねた。
「え?アルテミスだけど?」
「…………何、だと!??」
「はぁ!?」
「アルテミスって言えばオリンポス十二神の一柱で月の女神じゃないか!?」
遊馬達はその美女の真名に衝撃を受けて驚愕した。
アルテミス。
ギリシャ神話で名高いオリンポス十二神の一柱で狩猟や純潔、そして月を司る女神である。
「あれ?そのアルテミスがダーリンと呼ぶこのクマはもしかして……」
そして、純潔の女神であるアルテミスが愛した男性は神話の中ではたった一人しかいない。
「こっちは私の恋人、オリオンよ」
「やっぱり……」
オリオンは海神ポセイドンの息子で名高い狩人であり、アルテミスと恋に落ちたと言われている。
しかし、アルテミスの双子の弟の太陽神アポロンの策略で誤ってアルテミスがオリオンを殺めてしまったと言う悲しい物語がギリシャ神話で語られている。
「ダーリンが召喚されるって聞いて、不安になったから私が変わってあげることにしたの!」
サーヴァントの召喚には色々な制限などが起きてしまうが、今回の場合は神霊のランクダウンによる代理英霊召喚によってかなり特殊なケースであるが、アルテミスがサーヴァントとしての役割を果たし、本来召喚されるはずのオリオンはクマのぬいぐるみになってしまった。
「オリオンです。聖杯戦争に召喚されたら、ヘンな生き物になってしまいました……ヘンな生き物に……ヘンな……」
「やべぇ、なんか泣けてくる……」
「これは哀れとしか言葉が見つからない……」
オリオンは逞しく、背が高い美少年と言われていたが何故かクマのぬいぐるみとなってしまい、遊馬とアストラルは思わず涙を誘ってしまった。
「あ、ちなみに俺は限りなく役立たずなので。彼女に超依存しなければ生きていけないので」
「うふふ。もっと依存してくれていいのよ、ダーリン」
「自立したいなァ……」
オリオンは大きな溜息を吐き、アルテミスは人形のオリオンを軽く抱きしめている。
そんな二人を見て遊馬は呟いた。
「これも……一つの夫婦の形なのかなぁ……?」
「遊馬、これはかなり特殊な例だ。そこは気にしないほうがいい」
「そうだな……ところで、アストラル」
「何だ?」
「俺さ……エリファスが真面目な神様でマジで良かったと思う……」
アストラル世界の守護神、エリファスはアストラル世界の為にランクアップをひたすら目指していて一言で言えば頑固で真面目な男であった。
しかし、未来を信じた遊馬のデュエルによって考えが変わり、遊馬とアストラルを見守る存在となったのだ。
「そうか……確かに彼女を見たらな……」
純潔の女神なのに愛に忠実なアルテミスにエリファスがアストラル世界の神で本当に良かったと思う遊馬とアストラルだった。
「あら……?じぃーっ……」
「ん?どうかしたか?」
アルテミスは何かに気づくと遊馬をジッと見つめだした。
「おいおい何やってるんだよお前。はっ!?ま、まさかこんな小さな子供に欲情したのか!?よっしゃあ、これで心置きなく麗しい女性の皆さんに話しかけられるぜ!!」
「そんなわけないでしょう!?私は永遠にダーリン一筋よ!」
オリオンのアホな台詞にアルテミスはすぐさま制裁を加える。
「ぷぎゅる!?じゃ、じゃあなんで見つめていたんだよ!?」
「この子から私とよく似た月の力を感じたからよ!」
「はぁ?月の力?おいおい、魔術師でも、ましてや神霊の類でもない普通の人間のガキが月の力を持ってるわけないだろ?」
「月の力……?あっ、もしかしてこれのことか?」
遊馬はデッキケースを開き、一枚のカードをアルテミスに見せた。
遊馬が見せたのは美しくも勇ましい銀河の輝きを秘めた眼を持つ究極の龍、『No.62 銀河眼の光子竜皇』のカードだった。
「何よこのドラゴン……こんなドラゴンは見たこと無いわ」
「おいおい、カードからとんでもない魔力が込められているじゃないか。まさか、この小さなカードの中にこいつが宿っているのか?どう言うことだよ?」
「どう言うことって、こいつは月で生まれたモンスターだからな……何なら間近で見せてやろうか?これからワイバーンを倒さなきゃならないし」
「ワイバーンなら近くに竜の巣があるぜ」
「よし、じゃあ案内してくれ、オリオン」
「おう、とりあえずよろしく頼むぜ、マスター」
「よろしくね♪」
オリオンとアルテミスは遊馬と契約を結び、二人で一枚のフェイトナンバーズが生まれた。
オリオンの案内でこの島で一番ワイバーンが多くいる竜の巣である荒野へ向かった。
その時、アストルフォは何かを思い出したように遊馬に駆け寄った。
「ねえねえ、マスター!ワイバーンがたくさんいるならあいつを呼ぼうよ!」
「あいつ?」
「うん!最強の竜殺し、ジークフリート!」
「ジークフリートか……確かにあいつならいけるかもな。よし、カルデア管制室!ジークフリートを頼むぜ!」
カルデアにすぐに連絡し、数分後にはカードケースから灰色の光が飛び出してジークフリートが現れた。
「マスター……我が剣で勝利を捧げよう」
「頼むぜ、ジークフリート!」
「ジークフリート!君の竜殺しの力、見せてもらうよ!」
「アストルフォ……ああ、見ていてくれ」
ジークフリートは無邪気に笑うアストルフォに笑みを浮かべると、竜の巣から沢山のワイバーンたちが次々と現れた。
ワイバーンの一体が急降下して遊馬に襲いかかり、遊馬は急いでデッキからカードをドローしてその内の一枚をデュエルディスクに置く。
「相手モンスターの直接攻撃の時、手札から『護封剣の剣士』を特殊召喚出来る!」
敵の攻撃を封じる光の護封剣を操る青い鎧を着た戦士が現れ、ワイバーンの突撃を受け止める。
「更に、このカードの守備力がそのモンスターの攻撃力より高い場合、そのモンスターを破壊する!」
兜の奥の瞳が輝き、ワイバーンを一瞬で切り倒した。
その隙に遊馬はカードをドローする。
「俺のターン、ドロー!よし、これなら!ジークフリート、頼むぜ!」
「承知!」
ジークフリートをフェイトナンバーズに入れ、遊馬はすぐさまジークフリートを召喚する手はずを整える。
「行くぜ、カイト!ミザエル!これが銀河眼の新たな力!『
遊馬が召喚したのは銀河眼の光子竜が幼い姿となった可愛らしい小さなドラゴンだった。
「あれはもしかして……銀河眼の光子竜の幼体!?」
銀河眼を何度も間近で見てきたマシュはその小さなドラゴンに驚いた。
銀河眼の雲篭は銀河眼の名を持つドラゴンを導き、力を与える。
「銀河眼の雲篭の効果!このカードをリリースし、このカード以外の手札・墓地からギャラクシーアイズモンスターを特殊召喚する!銀河眼の雲篭をリリースし、手札から特殊召喚!!」
銀河眼の雲篭の体が無数の光の粒子となり、空に登ると遊馬の手に宝石が埋め込まれた赤い十字架の剣が現れる。
十字架を空に向かって投げ飛ばすと銀河の星々の輝きが集まり、銀河の輝きをその眼と身に宿した美しきドラゴンが姿を現わす。
「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ、『銀河眼の光子竜』!!」
『グォアアアアアッ!!』
咆哮を轟かせながら現れた銀河眼の光子竜にその姿を初めて見るドレイクとエウリュアレ達は驚きを隠せなかった。
「はっはは……まるで宝石のように美しいじゃないか……」
「な、何よあれ!?あんなドラゴン見たことないわよ!?」
「うっ、すごい……」
「マジかよ……あんなのギリシャの英雄達でもそう簡単に勝てないぞ……」
「凄い……あのドラゴンから星の力が溢れている……!?」
銀河眼の光子竜に特にギリシャ神話のサーヴァント達はこれほど強く、そして美しいドラゴンを見たことないので見惚れると同時に大きな畏れを抱いた。
「俺はレベル8のドラゴン族の銀河眼の光子竜とレベル8の戦士族の護封剣の剣士でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」
銀河眼の光子竜と護封剣の剣士が光となって地面に吸い込まれる。
「魔竜の力を受け継ぎし英雄よ、黄昏の剣を手に数多の竜を討て!!」
ドラゴンと戦士の力が一つに合わさり、最強の竜殺しを呼び出す。
「現れよ、『FNo.92 魔竜剣士 ジークフリート』!!」
光の中から現れたのはジークフリートが最凶のナンバーズと謳われた黒と紫の龍、『No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon』を模した鎧を纏った姿である。
そして、ジークフリートの胸の辺りにある心臓のような模様とこの場にいる全てのドラゴンと光のラインで繋がっている。
「ジークフリートの攻撃力・守備力は相手のフィールド・墓地のドラゴン族・海竜族・恐竜族・幻竜族のモンスターの数×500ポイントアップする!って、さっき倒したワイバーンを含めると……全部で何体になるんだ?」
アストラル全体を見通し、ワイバーンの数を一瞬で数えた。
「護封剣の剣士で倒したワイバーンが1体、現在いるワイバーンは29体。合計30体だ」
「30体……えっと、ジークフリートの元の攻撃力は2900だから、攻撃力上昇値を加えると……」
「2900+500×30……合計攻撃力は17900ポイントだ」
アストラルは瞬時に攻撃力の合計を計算し、そのあまりの攻撃力の高さに遊馬は頭が一瞬真っ白になった。
通常のデュエルでモンスター1体の効果でここまでの高い攻撃力は出すことはなかなかできない。
竜種の敵が多いことがジークフリートの力を高めているのだ。
「……おいっ!?なんかとんでもない攻撃力になってないか!?これだと伝説の竜破壊の剣士とガチでやり合えるだろ!?」
「そうだな。流石は伝説の竜殺し、ジークフリートだ。遊馬、ジークフリートの効果でワイバーンを一掃するんだ!」
「おう!ジークフリートの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、このターンジークフリートは相手フィールド上のドラゴン族・海竜族・恐竜族・幻竜族のモンスターの効果を無効にし、そのモンスター全てに攻撃することができる!!」
ジークフリートは聖剣と魔剣の二つの属性を持つ黄昏の剣、バルムンクにオーバーレイ・ユニットを取り込み、その刃から光り輝く黄昏の剣気が迸る。
「「ジークフリートで全てのワイバーンを攻撃!!」
「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。魔竜の力を持って全てを撃ち落とす……『
一瞬だけジークフリートの背後にHeart-eartH Dragonの幻影が現れ、バルムンクを全力で振り下ろした。
バルムンクから黄昏の輝きが無数の剣撃となり、全てのワイバーンに追尾するように解き放たれた。
数秒にも満たない短い時間であっという間にワイバーンを全て撃ち落とした。
しかし、その直後にワイバーンの親玉である一回りも二回りも巨大なドラゴンが姿を現した。
ドラゴンが炎を吐き、ジークフリートに攻撃するがその身に傷一つ付いていない。
「護封剣の剣士をエクシーズ召喚の素材となったモンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されないぜ!俺のターン、ドロー!魔法カード、『死者蘇生』!墓地からモンスターを特殊召喚する!蘇れ、銀河眼の光子竜!更にガガガマジシャンを召喚!」
死者蘇生で先程ジークフリートの効果を使用する際に墓地に送ったオーバーレイ・ユニットだった銀河眼の光子竜を蘇生させ、その隣にガガガマジシャンが並び立つ。
「ガガガマジシャンの効果!レベルを4から8に変更する!アルテミス!見せてやるぜ、俺たちの世界の月で生まれた最強のドラゴンの姿を!!」
遊馬が掲げたそのカードから光が溢れ、月の女神であるアルテミスと同じ月の波動が鼓動を広げる。
「レベル8の銀河眼の光子竜とガガガマジシャンでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!銀河究極龍、No.62!!」
銀河眼の光子竜とガガガマジシャンが光となって空に登り、光の爆発が起こると空中に『62』の数字が浮かぶ。
遊馬の前に十字の剣が現れ、柄を握ると遊馬の体が青色に輝き、見事なバク転から高く飛び上がって剣を投げ飛ばし、地面に突き刺さった剣が周囲に向けて閃光を放つ。
異次元に向かった銀河眼の光子竜の体がひび割れて弾け飛び、宇宙に眠る数多のドラゴン達の輝きが一斉に集まる。
「宇宙にさまよう光と闇!その狭間に眠りし、哀しきドラゴンたちよ、その力を集わせ、真実の扉を開け!!」
そして、新たな装甲と翼を得て銀河眼の光子竜が究極の姿へと進化する。
「『銀河眼の光子竜皇』!!!」
銀河眼の光子竜が月面にてカイトが未来に希望を託したことで進化し、究極の力を手にした最強の姿である。
「おおっ……さっきのドラゴンが更に進化するなんて……」
「何よこの魔力……私たちとは比べ物にならないじゃない……」
「あっ、あぁ……す、すごい……」
「本当に召喚しやがった……あいつ本当に人間かよ……」
「嘘ぉ……本当に私と同じ月の力を感じるわ……」
銀河眼の光子竜皇の体から溢れる光の粒子、そこからアルテミスと同じ月の魔力が含まれていた。
ジークフリートは隣に立つ銀河眼の光子竜皇を見てフッと笑みを浮かべる。
「まさかファヴニールを倒した竜皇とこうして並び立つとはな……」
フランスの特異点でジャンヌ・オルタ……後のレティシアの憎しみの象徴である邪竜・ファヴニールを倒した銀河眼の光子竜皇。
奇しくも同じ強大な力を持つ邪竜を倒した最強の竜殺しと銀河究極龍がこうして同じ戦場に並び立ったのだった。
「これで決めるぜ、ジークフリートと銀河眼の光子竜皇で攻撃!」
銀河眼の光子竜皇はオーバーレイ・ユニットを一つ喰らい、自身の体から強烈な星の光を放っていく。
「銀河眼の光子竜皇の効果!バトルのダメージ計算時、フィールドのモンスターエクシーズのランク×200ポイントアップする!銀河眼の光子竜皇とジークフリートのランクは共に8、合計ランクは16。よって攻撃力の合計は7200となる!!」
ジークフリートに劣るが、銀河眼の光子竜皇は高ランクのモンスターエクシーズの存在によって攻撃力はかなり高まる。
銀河眼の光子竜皇は口に光を溜め、ジークフリートはバルムンクを構えて黄昏の光を輝かせる。
「「エタニティ・フォトン・ストリーム!!!」」
「幻想大剣・天魔失墜!!!」
銀河の輝きを秘めた竜の咆哮と竜殺しの最強の黄昏の剣気が解き放たれ、二つの光がドラゴンを呑み込み、天から堕ちるように倒れた。
「よっしゃあ!勝ったぜ!」
「これで終わりだな、遊馬」
「見事だ、マスター」
遊馬はガッツポーズを掲げ、アストラルは銀河眼の光子竜皇を戻し、ジークフリートはフェイトナンバーズを解除して元の姿に戻る。
「凄い凄い!さっすがは、最強の竜殺しのジークフリートだ!」
アストルフォは嬉しそうにジークフリートの腕に抱きついてピョンピョンと飛んだ。
「よーし、ワイバーンを倒したところで素材を加工しようか!アステリオス、頼んだよ!」
「うん、わかった……」
ドレイクはアステリオスを連れて倒したワイバーンとドラゴンの素材を取って加工に向かう。
マシュ達も手伝いに向かい、残ったエウリュアレとオリオンとアルテミスは遊馬の背中を見つめた。
「何なのよ、あの子は……」
「あいつ実は神なんじゃねえか?それか俺と同じく神の血を受け継いでいるとか?」
「むぅ……でもあの子から神の力は感じられないよ?」
ただの子供ではないと思っていたが、神すら驚く強大な力を持つドラゴンを難なく操る遊馬にエウリュアレ達は疑惑を深めるのだった。
その後、遊馬達はワイバーンとドラゴンから素材を取り出して持ち帰り、黄金の鹿号の修理と強化の工事を始めるのだった。
.
遊馬は一体何者なんだ……?
そんな疑問がエウリュアレたちに広がります。
確かに神すら驚くモンスターを自由自在に操る遊馬を間近で見たら驚きますよね。
銀河眼の光子竜皇なんて月で生まれたとんでもないモンスターですし。
今回のジークフリートのフェイトナンバーズの効果はこちらです。
FNo.92 魔竜剣士 ジークフリート
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/戦士族/攻2900/守2500
ドラゴン族レベル8モンスター+戦士族レベル8モンスター1体ずつ
このカードの攻撃力・守備力は相手のフィールド・墓地のドラゴン族・海竜族・恐竜族・幻竜族のモンスターの数×500ポイントアップする。
エクシーズ素材を1つ取り除いて1ターンに1回ずつ発動出来る。
①このターン、相手フィールド上のドラゴン族・海竜族・恐竜族・幻竜族のモンスターの効果を無効にし、そのモンスター全てに攻撃することができる。
②このターンのエンドフェイズ時まで、このカード以外の効果を受けず、戦闘で破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。
初のランク8のフェイトナンバーズでジークフリートの能力が元々高いのでそれに比例してこちらもかなり強くしました。
バスター・ブレイダーを超えちゃいましたね(笑)
次回は黒髭との再戦になります。
アンとメアリーをどうするか悩みどころです。
別に操られてもいないし、個人的に好きなキャラなので遊馬先生にここは一つかっとビングでなんとかしてもらいます!