今回は私個人的に好きなサーヴァントのアンとメアリーの登場です!
破損した黄金の鹿号を大量の木材で修復し、ワイバーンとドラゴンの鱗で強化工事を行う。
アステリオスの怪力で鱗を加工し、原初の火を自ら鍛えた芸術家でもあるネロが現場監督となり、黄金の鹿号をより美しく、より強固にしていく。
出港前にすぐに戦うであろう黒髭海賊団との対決に向けて作戦会議を行う。
海の上では天候が変わらない限り何も障害はなく、見つかればたちまち黒髭の船の砲弾が放たれてしまう。
そこで考えたのは先に黒髭の船に乗り込んで暴れ、黒髭たちを引きつけてその間にドレイク達が黄金の鹿号で乗り込む……という作戦である。
「だったら僕の出番だね。僕のヒポグリフで空から一気に近づいて乗り込めるよ!」
マシュ達をフェイトナンバーズに入れ、アストルフォが操るヒポグリフで後ろに遊馬が乗り、そのまま空から黒髭の船に奇襲で乗り込む……次は人選である。
「敵サーヴァントは気配を感じただけで黒髭を含めて4人……こちらの布陣はマシュ、ネロ、アストルフォ、メドゥーサ、ステンノ、エウリュアレ、アステリオス、オリオンとアルテミス、ジークフリート……シールダー1人、セイバー2人、アーチャー2人、ライダー2人、バーサーカー1人、アサシン1人か……」
オリオンはアルテミスが代わりに戦うので実質1人扱いとし、ランサー以外のサーヴァントがそこそこ揃っていた。
他のサーヴァントをカルデアから呼ぶことも考えたが、あまり呼びすぎで人数が多くなるとただでさえ狭い船での戦闘になるので今回はこのメンバーで行くことにした。
「黒髭の目的であるエウリュアレを守るためにメドゥーサとステンノとアステリオスは船に残るとして、残るは遊馬と共に敵地に乗り込もう」
黒髭の船に乗り込むのはマシュ、ネロ、アストルフォ、オリオンとアルテミス、ジークフリートの5人に決まった。
「だが敵はサーヴァントだけではない、黒髭の部下の海賊達がいる」
「あ、それなら私に任せてくれる?雑魚を倒しながらアーチャークラスの名に恥じない援護射撃をするわ」
「俺は……俺は……」
「さーて、オリオン、あんたに頼みたいことがあるんだけどさぁ」
「ワーオ、何だか嫌な予感でワクワクしてきたぞぅ……」
ドレイクは何かを策が思いついたのか笑みを浮かべてグッドサインを向けてオリオンを見つめるが、オリオンは嫌な予感しかしなかった。
「あとは俺とアストラルでモンスターを召喚して戦力を更に高めるか」
「それで行こう。ドレイクよ、船は頼むぞ」
「お、おう!まま、任せてくれ!」
ドレイクはまだアストラルに慣れておらずガタガタと震えながら頷いた。
「よし!今度こそ黒髭を止めるぜ。カルデア海賊団……出撃だ!!」
「黄金の鹿号、出航!!!」
黒髭との決着をつけるため……遊馬達は最後の戦いに向かう。
☆
一方、黒髭達は船の上でのんびりと航海をしていた。
黒髭の側には三人のサーヴァントがおり、黒髭のオタクっぷりに飽き飽きしていると……。
「ん?あれは何でござるか?鳥……?」
空から海鳥か渡り鳥のようなものが飛来してくるのかと目を凝らすが、だんだんその影が大きくなっていく。
そして、海賊船の船員達を吹き飛ばしながら大きな影が降り立った。
「な、何でござるか!?」
「空からダイナミックで邪魔するぜ!!」
「こんにちわー、おじさーん!」
それは黄金の鹿号からグリフォンに乗って作戦通り先行した遊馬とアストルフォだった。
「げぇっ!?主人公体質の小僧!?それにアストルフォきゅん!?」
遊馬が来たことに黒髭は嫌悪感を露わにしたが、その直後にアストルフォが見えたので嬉しそうに目がキラキラと輝く。
「みんな、行くぜ!」
遊馬がデッキケースを開くと中から4枚のフェイトナンバーズが出てきてサーヴァントが姿を現わす。
「行きます!」
「いざ、参る!」
「どうもー、オリオンでーす!」
「いきなり真名を言うなこのバカ!」
「行くぞ……!!」
マシュとネロ、そしてアルテミスの登場に黒髭は感動の涙を流していた。
「マシュマロちゃんにネロちゃん!そして天使がいる……」
「黒髭、ここでてめぇを倒させてもらうぜ!」
「おのれ小僧!しかし、のこのこやってきたのも運の尽き!野郎ども、やっちまえ!そして、我が黒髭海賊団が誇るサーヴァントの皆さん、お願いします!」
船から続々と部下の海賊達が出てきて戦闘が始まり、遊馬達の戦力を分散させるために一気に押し寄せる。
すると、遊馬の前に二人のサーヴァントが現れる。
「お待ちになって、坊や」
「僕たちが相手になるよ」
遊馬の前に現れたのは長身で抜群なスタイルの美女と顔に大きな傷がある小柄で男装をした麗人だった。
美女には海賊のシンボルである髑髏の装飾がついた服を着ており、どうやら海賊のようである。
「サーヴァント二人掛かりで遊馬を狙いに来たか……」
「正確には私たちは二人で一組のサーヴァントですけどね」
「黒髭の命令で君を抑えに来た……君は女性に優しそうだから僕たちに手荒な真似をしないと睨んでね」
「ちっ、あのおっさんめんどくさい事を……あっ!?」
そして遊馬は『二人組』と『女性』、そして『海賊』のキーワードでサーヴァントの正体がわかってしまった。
「もしかして……あんた達は伝説の女海賊、アンとメアリーなのか!?」
「あら?わかってしまいましたか?その通り、私はアン・ボニーですわ」
「僕はメアリー・リード……よく分かったね」
アン・ボニー&メアリー・リード。
大海賊時代に存在した二人一組の伝説の女海賊である。
「怨みはありませんけど、あの船長に命令されましたからね」
「君を止めさせてもらうよ……」
「すげぇ……」
「「え?」」
「すげぇ、すげぇ!!伝説の女海賊、アンとメアリーに会えるなんて最高だぜ!!」
遊馬は目を輝かせながらはしゃぎ、アンとメアリーはまさかの反応にたじろいでしまう。
黒髭があまりにも残念だったので、逆にアンとメアリーが想像以上にカッコよかったので更に遊馬は興奮した。
「え、えっと……あ、ありがとうございます……」
「その……うん、ありがとう……」
敵とはいえ自分たちに憧れを抱いている純粋無垢な子供の眼差しにアンとメアリーは心苦しくなってしまう。
「遊馬君、今行きます!」
マシュはシールダーとして遊馬の元に行こうとしたが……。
「マシュ、俺は大丈夫だ!この二人は俺が、いや……俺とアストラルでやらせてくれ!」
「ふっ、君ならそう言うと思っていたよ」
「伝説の女海賊……しかも最高のコンビと言われた二人……燃えないわけがないぜ!!」
イメージ通りというかイメージ以上のアンとメアリーに遊馬のやる気が燃え上がってくる。
「わ、私たちを憧れていることには感謝しますが、ここは戦場!子供とはいえ容赦はしませんわ!」
「僕たちのコンビネーションを見せてあげるよ……!」
「最強のコンビネーションなら俺たちだって負けないぜ!行くぜ、アストラル!」
「当然だ。一心同体の私たちが負けるわけにはいかない!」
遊馬はデュエルディスクを構えるとアストラルもデュエルディスクを左手首に出現させ、遊馬のデッキを投影してセットする。
一方、マシュ達は黒髭ともう一人のサーヴァントと対峙していた。
そのもう一人のサーヴァントは槍を持つ緑色を基調とした衣装を纏ったランサーと思われる男性のサーヴァントだった。
「それで、オジサンは誰の相手をすればいいのかなぁ?」
飄々としているがただならぬ雰囲気を漂わせるランサーに対し、ジークフリートとアストルフォが前に出る。
「俺が相手をしよう……」
「おっと、僕も一緒だよ。黒のセイバーとライダーコンビの復活だね!」
アストルフォは馬上槍のトラップ・オブ・アルガリアを構える。
「ああ、そうだな……」
ジークフリートは何かを思い出したのか一瞬だけ笑みを浮かべるとすぐに真剣な表情となり、バルムンクを構える。
「へぇー、なかなか面白い二人じゃないか……オジサン燃えるねぇ!」
ランサーは槍を構えてジークフリートとアストルフォに向かって床を蹴る。
そして、黒髭はマシュとネロが対応する。
「黒髭、私たちが相手をします」
「光栄に思うがいい!」
「うひょおおおおっ!マシュマロちゃんとネロちゃんがお相手するとは感激ですぞ!もし勝ったら僕ちんの側においてーー」
「ごめんなさい、私は遊馬くんのこと……」
「残念だが余は既に我がマスターにして夫の遊馬の妻だからな!!」
「チクショォオオオオオウ!!またしてもあの小僧か!!おのれハーレム系主人公め!!」
マシュは遊馬に好意、そしてネロが遊馬の自称妻の発言に対して黒髭は血の涙を流して絶叫し、遊馬への恨みを募らすのだった。
「ハ、ハーレム……?」
「ふむ、ハーレムか……しかし、それを考えるのはあとだ。行くぞ、マシュ!」
「は、はい!」
ネロは原初の火を構え、マシュは盾を構えてネロのフォローに入る。
遊馬とアストラルはデッキからカードを5枚ドローし、二人同時にモンスターを展開する。
「俺のターン、ドロー!『セイバー・シャーク』を召喚!自分フィールドに水属性モンスターが存在する時、手札から『サイレント・アングラー』を特殊召喚出来る!」
「私のターン、ドロー!『ゴゴゴゴーレム』を召喚!自分フィールドにレベル4のモンスターが召喚された時、手札から『カゲトカゲ』を特殊召喚できる!」
遊馬とアストラルは背中合わせでモンスターを一気にフィールドに揃えてエクシーズ召喚の準備を整えた。
「俺は水属性レベル4のセイバー・シャークとサイレント・アングラーでオーバーレイ!」
「私はレベル4のゴゴゴゴーレムとカゲトカゲでオーバーレイ!」
「「エクシーズ召喚!!」」
それぞれのモンスターが光となって海の中へと潜り、二つの光の爆発が起きる。
「眠りし大地と海の力が紡がれし時、新たな命の光が噴出する!」
「我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!」
遊馬は海が織りなす大いなる生命の力を秘めた希望の鮫、アストラルは希望を司る皇を呼び出す。
「目覚めよ、『No.37 希望織竜スパイダー・シャーク』!!」
「光の使者、『No.39 希望皇ホープ』!!」
海から現れたのはシャーク・ドレイク・バイスと細部がよく似た蜘蛛の姿を象った巨大な白い鮫と希望皇ホープ。
「あの精霊も魔物を出せるの!?」
「あの子だけじゃないなんて……ますます油断できないね。アン、一気に決めよう!僕から行く!」
メアリーは大航海時代に中南米で使われていた鉈をサーベルを手本にして作られた片手剣のカトラスで遊馬に斬りかかる。
キィン!!
遊馬はソードホルダーから原初の火を抜いてカトラスを受け止める。
「へぇ……面白い形をしているけど、いい剣だね」
「とあるローマ皇帝が作った剣だよ!!」
遊馬はメアリーを弾き返し、戦場での剣戟が始まる。
片や伝説の女海賊で数多の敵を斬り伏せてきたメアリー。
そして、カルデアにて二刀流剣術の達人から指導を受け、多くの武術の達人から相手をしてもらって武術の実力が上達している遊馬。
その若さ溢れる波の勢いにメアリーが徐々に追い詰められる。
このままだとやられると思ったメアリーは一旦下がるとアンとアイコンタクトを交わして二人の宝具を発動させる。
「行きますわよ、メアリー!」
「行くよ、アン!」
「「
それは二人が捕縛する寸前まで無数の兵士を相手に戦い抜いた逸話から生まれた宝具である。
「遊馬!」
「分かってる!希望織竜スパイダー・シャークの効果!相手の攻撃宣言時、オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手フィールドのモンスター全ての攻撃力がターン終了時まで1000ポイントダウンする!!」
スパイダー・シャークがオーバーレイ・ユニットを喰らうとその純白の体から光の波動を放つ。
光の波動を受けたメアリーとアンは全身の力が一気に抜ける様にガクッと倒れそうになる。
「くっ!?ぼ、僕たちの力が……!?」
「まさか、能力のランクダウン!?」
「でも、このまま行くよ!」
メアリーは遊馬に突撃し、先ほどよりも速く、そして強烈なカトラスの斬撃が放たれる。
軽くて振りが速いカトラスに遊馬は原初の火では対応できなくなり、メアリーはその隙を逃さずに一気に攻め立てる。
「もらった!」
ガキィン!!
「っと!危ねえ危ねえ!」
遊馬が左手から出現させたホープ剣でギリギリのところでカトラスを受け止めた。
「っ!?二本目の剣!?」
「あいにく俺は最強の二刀流剣士の姉上から、指導してもらってるんだよ!」
遊馬の剣術の真骨頂であるホープ剣と原初の火の二刀流によって今度は逆にメアリーが攻められる。
「さ、捌き切れない……!」
スパイダー・シャークの効果による一時的なランクダウンに加え、鉈程度の大きさしかないカトラスでは大剣と剣の二刀流を捌くことができなくなる。
「メアリー、下がって!」
「……アン!あとはお願い!」
メアリーが下がると次にアンが構えたマスケット銃が遊馬を狙う。
「それでは狙い撃ちますわよ!シュート!!」
アンが持つマスケット銃で遊馬を狙い撃ち、弾丸が放たれる。
敵ではあるが、遊馬が子供であることと自分たちに憧れを抱いていると言う点を含めた最大限の情を込めて足を掠るように撃って動けなくするようにした。
しかし、遊馬にはアンとメアリーが互いを支えて戦うように強い絆で結ばれた相棒がいる。
「希望皇ホープの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手の攻撃を無効にする!!ムーンバリア!!」
遊馬の前に希望皇ホープが空から降り立ち、背中の翼で半月を描くように展開してアンの弾丸を受け止めて消滅させる。
「なっ!?」
「私がいることを忘れていたようだな。行け、遊馬!」
「おうっ!俺のターン、ドロー!希望織竜スパイダー・シャークで攻撃だ!スパイダー・トルネード!!」
スパイダー・シャークは海から海水を取り込んで力を貯めると口から竜巻を放つ。
竜巻は船内で吹き荒れ、敵の動きを防ぐつもりで命令したのだが……。
「うわぁっ!?」
運悪く竜巻の一番近くにいたメアリーが空高く吹き飛ばされてしまった。
「メアリー!!?」
「しまった!?」
メアリーは船から投げ出され、そのまま海に向かって真っ逆さまに落ちて行く。
アンは手を伸ばそうとしたがあまりにも距離が離れていてどうする事が出来なかった。
すると遊馬は反射的にデュエルディスクとD・ゲイザーを投げ捨てて大声で叫んだ。
「ジェットローラー!フルドライブ!!」
次の瞬間、ジェットローラーから派手なエンジン音が鳴り響いて膨大な熱が発生し、ローラーが今までにないほどの高速回転をして走り出した。
ジェットローラー・フルドライブとはエンジンを強制的に最大限まで動かして瞬間的に限界を超えたスピードを出すシステムである。
遊馬はジェットローラーで助走をつけて一気に船から飛び出した。
「かっとビングだ、俺!!!」
「えっ!?」
「遊馬!?」
アンとアストラルが驚く中、遊馬は一直線に落下するメアリーの元へ飛んだ。
遊馬はメアリーの手を掴むとそのまま抱き寄せて自分の背中を海に向けた。
「えっ……?」
メアリーが呆然とする中、遊馬とメアリーはそのまま海へと落ちてしまい、大きな水柱を上げた。
「メアリー!!!」
「遊馬!!くっ!?」
アストラルはすぐにスパイダー・シャークに二人の救援を向かわせようとしたが、スパイダー・シャークの手はシャーク・ドレイク・バイスの様に鋭い刃の様な爪を持っており、二人が大怪我をする恐れがある。
瞬時にアストラルは自身の体から別のナンバーズを取り出してデッキからカードをドローする。
「私のターン、ドロー!ゴゴゴジャイアントを召喚!効果で墓地からゴゴゴゴーレムを特殊召喚!レベル4のゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」
ゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムは光となって海に飛び込み、そのまま海の奥深くへと潜り込んだ。
「あなた、何をしたの……!?」
「私と君の相棒たちを助けるためだ。浮上せよ!!」
ゴォオオオオオオオオオッ!!!
突如、海が大きく震えるほどの振動と轟音が鳴り響き、海底から大きな黒い影が浮上していく。
「『No.50 ブラック・コーン号』!!」
バシャアアアアン!!!
そして、海から現れたのは帆に『50』の刻印が描かれ、船体が黒いトウモロコシを縦に半分に割った様な形をした船だった。
「う、海から船が!?あっ!?」
船の上には海水に濡れて目を閉じて倒れている遊馬とその上に乗って同じく目を閉じているメアリーの姿があった。
「メアリー!」
「アン・ボニー、ホープの手に乗れ!二人の元に行くぞ!」
「っ!は、はい!」
アンは手を差し出すホープに乗り、そのままアストラルと共にブラック・コーン号に乗る。
アンは急いでメアリーの元に行き、倒れているメアリーを抱き上げて必死に名前を呼ぶ。
「メアリー!メアリー!!」
「んぅ……あれ?アン……?」
「メアリー、良かった!気がついたのね!」
メアリーが目を覚まし、アンは安心するとその直後に遊馬が目を冷ます。
「……あれ……?船の上……?」
「ここはブラック・コーン号の中だ、遊馬」
「アストラル……そうか、ブラック・コーン号をエクシーズ召喚して海から助けてくれたのか。サンキュー、アストラル」
「全く君は……あまり心配をかけさせないでくれ。こういう時、人は寿命が縮むと言うものだな……」
「悪い悪い、本当にごめんな。でも……アストラル、お前寿命あるのか?」
「……そういえば無かったな」
「おいっ!寿命無いんじゃん!」
アストラルは数千年前にアストラル世界で生まれ、ドン・サウザンドとの戦いで遊馬と出会うまでに一度眠りについており、更には高エネルギーの精神体による生命体なので寿命と言うものは存在しない。
遊馬とアストラルの話に助けられたメアリーは恐る恐る話に割り込む。
「ねぇ、君……」
「ん?」
「どうして、僕を助けたの……?」
「どうしてって、危ないと思ったから助けただけだぜ?」
それがどうした?と言わんばかりの表情で首をかしげる遊馬にメアリーは目を見開いた。
「敵なのに……?それに、僕が水面に打たない様に庇ってくれて……」
「敵とかそんなの考えても無かったぜ。ま、確かに背中はすげぇ痛いけどな。何せ派手に水面に打ち付けちゃったからな。あははははっ!」
「君は馬鹿なのか……?」
「うむ、遊馬は大馬鹿ものだ」
メアリーの発言にアストラルは同意の頷きをする。
「アストラル、てめぇ!?お前まで俺を馬鹿と言うのか!?」
「敵味方関係なく助けられる命があるならどんな危険なところでも全力で無茶をする君は英霊でも驚く大馬鹿ものだ。遊馬の馬は馬鹿じゃないかと最近思い始めている」
「ひ、酷えよ!?俺はただ自分の気持ちに正直に動いているだけなのに!」
「だから、君はもう少し考えてから行動したまえ。せっかく勉強も出来てきたというのに……」
「そ、それとこれとは話は別だろ!?」
まるで仲の良い兄弟のように話す二人にメアリーはなんだか可笑しくなり、口元を必死に抑えた。
「ぷっ、ははっ……あはははははっ!」
「メ、メアリー?」
しかし、抑えきれずに大笑いをしてしまい、無愛想だったメアリーの表情に笑顔が出てきた。
「アン、こんなに面白い子供は初めてだよ。とても気に入った。これ以上……この子に武器は向けられない。降伏するよ」
「そうですね……私の大切なメアリーを助けてくれた可愛い恩人さんに銃は向けられませんわ。私も降伏します」
メアリーはカトラスを床に置くとメアリーも自分も同意してマスケット銃を取り出して床に置く。
「本当か?じゃあさ、俺と契約して仲間になってくれるか!?」
「私たちが属している組織、カルデアで共に戦ってくれるなら福利厚生と衣食住……いや、サーヴァントなら衣は必要ないな。とにかく、それらが充実している」
「ねえ、坊や。一つ約束してくれるかしら?」
「僕たちは海賊だ。束縛されるのは嫌いだ……」
「海賊は自由な存在だからな。別にそこまで悪いことをしなければ遊ぶなり寝るなり、冒険するなり好きにしてくれていいぜ?ただ、敵と戦う時に仲間として力を貸してくれ。あっ、あと……これは個人的だけど、二人の冒険譚を聞かせてくれ!!」
二人の自由を尊重し、尚且つ遊馬のマスターとしての責任と子供らしさが表れた願いにアンとメアリーは納得したように頷いた。
「分かりましたわ。新たなマスター、いえ。小さな船長にこの力を託しますわ!」
「これからよろしくね……マスター」
「おう!それじゃあ、俺と握手してくれ。そうすれば契約出来るぜ!」
アンとメアリーは頷き、遊馬の手を握る。
すると二人の体が光となって一枚のフェイトナンバーズとなる。
「二人で一枚か……二人揃って初めて使えるフェイトナンバーズか」
「面白いな。よし、二人とも出てきてくれ」
フェイトナンバーズからアンとメアリーが出てきて黒髭との契約が切れて遊馬との間にマスターとサーヴァントの契約のパスが繋がった。
「よし!アストラル、ブラック・コーン号を黒髭の船に!」
「分かった。行け、ブラック・コーン号!」
ブラック・コーン号は静かに発進し、黒髭の船に向かう。
一方、マシュとネロが戦っている黒髭は自身の宝具がパワーダウンしたことに気づいた。
「はっ!?ま、まさかアンちゃんとメアリーちゃんが!?」
黒髭はアンとメアリーが倒され、消滅したことで宝具の力がパワーダウンしたと思ったが、その直後に見たことない船が接近していた。
「な、何でござるかあの船は!?」
「あの帆の刻印はまさか……ナンバーズ!?」
「おーい、みんなー!」
遊馬はブラック・コーン号からマシュ達に向けて手を振りながら呼ぶ。
その隣にアンとメアリーがいることに驚きを隠せなかった。
「な、何で二人がその小僧と!?ま、まさか!?」
「ごめんなさい、船長。いいえ、元船長。私たち、この子のサーヴァントになりましたの」
「短い間だけ世話になった……それだけは感謝しておくよ」
「黒髭のおっさん!アンとメアリーは俺たち、カルデア海賊団が貰ったぜ!!」
「まさか本当に敵サーヴァントを仲間にして黒髭の宝具の力を弱めるなんて……」
マシュは遊馬の言った通りに敵サーヴァントであるアンとメアリーを仲間にしたことに苦笑を浮かべた。
「イヤァアアアアアッ!?そ、そんな、我が黒髭海賊団の可憐なる二つの花があの小僧に奪われた!?」
黒髭はアンとメアリーを遊馬に奪われたことに大きなショックを受けるが……。
「ハッ!?ま、まさかこれが寝取り……NTRでござるか!??あんな小さな小僧にアンちゃんとメアリーちゃんを……ああっ、拙者のまた新たな扉が開いちゃうでござる!!」
黒髭の意味不明な発言に遊馬達は一気にテンションが下がり、気味が悪い以前に大丈夫か?と逆に心配をしてしまう。
「……意味が全く分かんねぇけど、あいつ大丈夫か?」
「精神科医を勧めて、カウンセリングさせたほうが良いのではないか……?」
「彼はその、生前に色々ありましたし……」
「そこだけは同情するけどね……」
四人は黒髭の発言に頭痛を起こし、こめかみを抑えた。
アンとメアリーを遊馬達……カルデア海賊団に引き入れ、形成は一気に逆転した。
黒髭が内心焦る中……その隙を密かに狙う者が静かに近づくのだった。
.
相変わらず遊馬くんのかっとビングは最強無敵ですね(笑)
と言うわけでアンとメアリーを仲間にしちゃいました♪
メアリーは既に遊馬とフラグを立ててます……羨ましいぜ。
そして、次回は黒髭との決着ですが遊馬くんらしい決着をつけさせたいと思います。