Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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昨日新しいナンバーズ1、No.41泥睡魔獣バグースカが判明しましたがまさかのスキドレ内蔵で笑いました。
ナンバーズコレクターとして新しいナンバーズが来るのは幸福の極みで他にも収録を期待してます。
コンプリートまで残り17枚……期待してますよ、KONAMIさん。


ナンバーズ3 闇の眷属との戦い

遊馬とマシュは骸骨の敵と交戦し、何とか全滅させてその場を乗り切れた。

 

遊馬はガガガマジシャンに続き、遊馬のデッキの特攻隊長でもあるゴゴゴゴーレムを召喚してその強靭な腕で粉砕した。

 

マシュも不慣れながら盾を振り回して骸骨を倒し、戦闘が終了するとマシュは遊馬に無事を確かめる。

 

「遊馬君、大丈夫ですか?」

 

「ああ!それにしてもあのモンスターは何なんだ?」

 

「わかりません、あれが特異点の原因……のようなもの、と言っても差し違えはないような、あるような」

 

「情報がないからなぁ……」

 

情報が足りなすぎて困ったその時、遊馬のポケットから電子音が鳴った。

 

「何だこれ?」

 

それは見たことない機械の腕輪で遊馬はとりあえず腕輪の光っているボタンを押すと光が放たれて宙にホログラムが映った。

 

『ああ、やっと繋がった!もしもし、こちらカルデア管制室だ、聞こえるかい?』

 

ホログラムに映ったのはロマニだった。

 

その腕輪は通信機で部屋でロマニと話していた時にもしもの時のためにと貰っていたものを遊馬はすっかり忘れていた。

 

「ロマニ先生!」

 

「ドクター!」

 

『マシュ、マシュなのかい?それに、遊馬君!?僕は待避しろと言ったじゃないか!』

 

「こちらAチーム、マシュ・キリエライトです。特異点『F』にシフト完了しました。同伴者は九十九遊馬君一名で心身共に問題ありません」

 

『遊馬君が!?それと、マシュ……君、その姿はどういうコトなんだい!?ハレンチすぎる!ボクはそんな子に育てた覚えはないぞ!?』

 

ロマンの反応にお父さんか!?と思わずツッコミたくなった遊馬だがそこはグッとこらえて飲み込んだ。

 

「違います。遊馬君を守るために私は『デミ・サーヴァント』として変身したんです」

 

「デミ・サーヴァント?」

 

「今回の特異点Fの調査と解決のためにカルデアで事前にサーヴァントを用意していました。そのサーヴァントも先ほどの爆破でマスターを失い、消滅する運命にありましたが、彼は私に契約を持ちかけて英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりにこの特異点の原因を排除して欲しいと……」

 

『英霊と人間の融合……デミ・サーヴァント。カルデアの六つ目の実験だ……』

 

「英霊と人間の融合……?」

 

遊馬はマシュとロマンの話を聞いて皇の鍵を握りながら脳裏に一人の精霊の姿と二つの力が一つとなった金色の英雄の姿が思い浮かんだ。

 

マシュは英霊の力を託されたものの、英霊の名を知らないので能力や宝具の力も分からずじまいだった。

 

するとカルデア側の電力が安定がまだなのか通信が乱れてしまい、 2キロ先の霊脈と呼ばれる場所へ向かうようにとロマンの指示を受けたその直後に通信が途絶してしまった。

 

「れいみゃ……何だ?」

 

「霊脈の事です。そこへ行けば、今よりは通信がしやすくなるでしょう。とにかく今は、ドクターとの連絡手段を確保するのが第一かと」

 

「分かった、行こう。今はとにかく情報が必要だな」

 

「はい」

 

「キュー!フォウー!」

 

「うわっ!?」

 

今さっきまで隠れていたフォウが再び遊馬の頭に飛び乗って自分もいると主張するように鳴く。

 

「どうやらフォウさんも一緒にレイシフトしてしまったようですね」

 

「みたいだな。フォウ、危ないから俺のフードの中に入ってな」

 

「キャーウ!」

 

フォウは遊馬の言う通り上着のフードの中に入り、遊馬はデュエルディスクを構えてマシュと向き合う。

 

「よし!それじゃあ、その霊脈に向けて行こうぜ!」

 

「はい、遊馬君」

 

「ガガガマジシャン、ゴゴゴゴーレム、護衛頼むぜ!」

 

『ガガガッ!』

 

『ゴゴゴーッ!』

 

遊馬とマシュは霊脈のある場所に向かって走り出した。

 

 

「何なの、何なのコイツら!? なんだって私ばっかりこんな目に逢わなくちゃいけないの!?もうイヤ、来て、助けてよレフ! いつだって貴方だけが助けてくれたじゃない!」

 

カルデアの所長……オルガマリーは叫び、今にも泣きそうな勢いで骸骨の群れから逃げ回っていた。

 

突然この世界に巻き込まれて訳がわからないまま逃げ、助けを呼んでも誰も助けてはくれない。

 

そして、骸骨の剣は無情にもオルガマリーへと降りかかる。

 

その時だった。

 

「行っけー!ガガガマジシャン!」

 

『ガガガッ!』

 

骸骨の体が魔力弾を受けてバラバラに吹き飛んだ。

 

そしてオルガマリーの前に現れたのは小さな背中とそれに仕える二つの影だった。

 

「あ……」

 

「所長、無事みたいだな!」

 

それは突然現れた小さな子供、幼過ぎて自ら追い出した子供……九十九遊馬だった。

 

「貴方どうして…… ?」

 

「話は後だ!まずはこいつらを片付ける!頼むぜ、ガガガマジシャン!ゴゴゴゴーレム!」

 

遊馬は側にいる不良風の魔術師と丸みを帯びたゴーレムに指示を出して骸骨を攻撃させる。

 

二体のモンスターに続いてオルガマリーの頭上を飛び越え、骸骨たちの前に降り立った一人の見慣れた少女。

 

「マシュ……!?」

 

「オルガマリー所長、ご無事で何よりです」

 

マシュは盾を武器に骸骨たちを次々に蹴散らしていった。

 

それはオルガマリーの知る彼女の姿ではなく、勇猛に戦う一人の戦士だった。

 

遊馬のモンスターたちとマシュによって骸骨たちは反撃をすることもなく全て消滅させられてしまった。

 

突然の事態にオルガマリーは目を点とさせている。

 

「……どういう事?」

 

「所長。信じがたい事だと思いますが、私はサーヴァントとの融合、デミ・サーヴァントになってしまいました」

 

「あ…… わ、わかってるわよ、そんなこと! サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァント。見れば直ぐにわかるわ!」

 

「いや、忘れていた感じに聞こえてるけど?」

 

「うるさいわね!それより、何であなたがいるのよ!何故この子が貴方のマスターに!?サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけ!まさか、あなたマシュを無理矢理……」

 

「え?マスター?マシュを無理矢理って何のことだ?」

 

オルガマリーは訝しげな目で遊馬を強く睨んだが何のことかわからず遊馬は頭に疑問符を浮かべる。

 

「所長……遊馬君がそんなことをするわけありません。まだ十三歳の男の子です、邪推しすぎです。経緯を説明します……」

 

マシュはオルガマリーに現時点の状況を説明した。

 

その際に、マシュはデミ・サーヴァントになった際、一緒に巻き込まれた遊馬をマスターとして選び、契約を結んだことを話した。

 

「よくわかんねえけど、マスターって何の話だよ?」

 

「……その手の甲に刻まれた令呪がサーヴァントと契約した何よりの証拠よ!全く、なんであなたみたいな子供が……」

 

「令呪……?って、何だよこの刺青は!?やっべー!こんなの姉ちゃんとばあちゃんに見られたら怒られるー!!?」

 

オルガマリーに言われ右手の甲を見てみると赤い謎の刻印が刻まれていた。

 

遊馬は刺青と勘違いしてこんなのを家族に見られたら雷どころか大噴火並みのお叱りを受けると混乱してしまう。

 

「落ち着いてください、遊馬君。それは刺青ではありません。三回使用すると消えます」

 

「え?消えるの?」

 

令呪は契約したサーヴァントへの絶対命令権で三回まで使用できる。

 

ある程度の命令やサーヴァントに魔法に近い奇跡の力を使ったり、サーヴァントの力を高めるブーストスキルなどにも使用できる。

 

「そうなんだ!じゃあこれは大切に使わないとな!」

 

「それにしても、遊馬君の令呪は不思議な形をしてますね。そのペンダントの形をしてますし」

 

遊馬の右手の甲に刻まれた令呪は大きな『X』に似た紋章に皇の鍵が重なった形となっており、いかにも遊馬らしい令呪だった。

 

一通り話が終わるとオルガマリーは霊脈のある場所でベースキャンプを作ることを指示し、マシュの盾を触媒にして召喚サークルを設置した。

 

すると、周囲の空間がカルデアにあった召喚実験場と同じ電脳空間に似たものへと変化した。

 

『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったぞ!』

 

腕輪を使い、先ほどよりも安定してロマニと連絡を取ることができた。

 

「はあ!?何であなたが仕切っているの、ロマニ!レフは!?レフはどこ!?レフを出しなさい!」

 

『うひゃああっ!? しょ、所長、生きていらしたんですか!?あの爆発の中で!?しかも無傷!?どんだけ!?』

 

「どういう意味ですかっ!いいからレフはどこ!? 医療セクションのトップがなぜその席にいるの!?」

 

オルガマリーはロマニが映っていることに腹を立ててレフを出すように言ったが、ロマニは現在生き残ったカルデアの正規スタッフは二十人にも満たないことや作戦指揮を任されているのは人間がロマニしかいないことを告げた。

 

そして、レフも死亡していることにオルガマリーを更に絶望に追いやる。

 

オルガマリーは顔を青白くさせ、ロマニに詰め寄る。

 

「ちょっと待ちなさい! 二十人にも満たないって…… それじゃあマスター適正者たちはどうなったのよ!」

 

『…… 47人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何名かは助ける事ができても、全員は……』

 

「ふざけないで!すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、死なせないのが最優先よ!」

 

『ああ!そうか、コフィンにはその機能がありました!至急手配します!」

 

ロマニは慌てて生き残っている数少ないスタッフたちに所長の命令を伝え、マスターたちの冷凍保存を始める。

 

「……驚きました。凍結保存を本人の許可なく行う事は犯罪行為に当たりますが」

 

「死んでさえいなければ後でいくらでも弁明できる!47人の命を私一人で背負いきれるわけないじゃない……!」

 

オルガマリーの声は微かに震えていた。どれだけ威厳を保とうとしていても彼女はまだ人の上にたてるほどの器を持ち合わせていない。

 

その後、オルガマリーとロマニな今後の対応策を話し合い、オルガマリーは遊馬とマシュと共に特異点の調査を行うこととした。

 

遊馬は何故この地が特異点になったのか疑問に思うとオルガマリーはこの冬木の地ではかつて『聖杯戦争』と呼ばれる戦いが行われていたことを話した。

 

聖杯とは所有者の願いを叶える万能の力、あらゆる魔術の根底にあるとされる魔法の釜、その起動のために七騎の英霊を召喚した。

 

そして、七人のマスターがサーヴァントと共に殺し合い、最後に残った者が聖杯を手にするという戦いだ。

 

カルデアの英霊召喚システム・フェイトはそれを元に作られたのだ。

 

「聖杯……英霊……英霊の座……聖杯戦争か……」

 

「遊馬君?」

 

遊馬はこの世界の重要なキーワードを聞いて妙な親近感を抱き、呟いていた。

 

「似ているな……ヌメロン・コードとアストラル世界とバリアン世界、それにバリアン七皇との戦いに……」

 

「ヌメロン、コード……?何ですかそれは?」

 

マシュにとって意味が分からない単語にきょとんとし、遊馬は慌てて話をそらした。

 

「い、いや!何でもない何でもない!あはははは!」

 

「???」

 

マシュは疑問符を浮かべて可愛らしく首を傾げる。

 

遊馬が口にした『ヌメロン・コード』……それは願望器である聖杯以上の力を秘めたとんでもないカードと言うことを今のマシュたちが知る由もなかったのだ。

 

「なあ、所長。俺も話すことがあるんだけど……」

 

遊馬はオルガマリーとロマニにマシュに話したように自分が異世界から来たと説明した。

 

最初はもちろん信じてもらえなかったが、遊馬は展開しているデュエルディスクとそれによって出現しているモンスターを見てロマニは別世界の技術によって作られたものだと納得してくれたが、オルガマリーだけはまだ納得出来ていないところがあった。

 

「あなたが異世界から来たのは認めます……信じたくないけど。でも、どうして平然としていられるの!?」

 

「え?」

 

「こんな状況なのよ!こんな事になって何故そんな風に平然といられるの!?私だって、不安でいっぱいなのに……あなたはまだ十三歳でしょ!?」

 

十三歳にしては落ち着きがありすぎる遊馬にオルガマリーが睨みつけるように聞くと、遊馬は暗い表情を浮かべながら口を開く。

 

「俺……少し前に世界滅亡の危機に立ち向かったからな」

 

「えっ……?」

 

「はっ……!?」

 

『なっ……!?』

 

世界滅亡の危機……それはカルデアと同じように遊馬が人類滅亡の危機に立ち向かったことにマシュたちは驚愕した。

 

「信じられないかもしれないけど、俺は相棒と幼馴染、そして頼れるたくさんの仲間と一緒に世界を滅ぼそうとした邪悪な神と運命を捻じ曲げられて操られた七人の皇と戦ったんだ。いっぱい戦って、傷ついて、そして失って来たからさ……」

 

遊馬は仲間たちから世界と未来を救うための最後の希望として想いを託され、心が折れそうになりながらも、今は遠く離れた相棒と共に何度も立ち上がって戦い続けた。

 

「所長、何かを背負う重圧は俺にも分かるよ。俺はカルデアの人間じゃないから、一緒には背負えないけど……俺が必ず守るからさ、頑張ろうぜ!」

 

遊馬の無垢な優しい笑顔にオルガマリーは目を見開いた。

 

この絶望的な状況で恐怖もなくそんな台詞を言えるのはそれ相応の経験をして来たことを意味する。

 

こんな小さな子供が頑張っているのに大人である自分が頼りない姿をこれ以上見せるわけにはいかないとオルガマリーも自分を奮い立たせた。

 

「まさか……子供に励まされるとはね。分かったわよ、やってやろうじゃない!このまま黙ってるなんてできないわ!」

 

「その意気だぜ、所長!かっとビングだ!」

 

遊馬のお陰で所長も元気を取り戻し、早速調査に乗り出そうとしたその時だった。

 

「はっ!?来る!」

 

「これは……サーヴァントの気配です!」

 

遊馬とマシュは邪悪な力……サーヴァントの気配に気づいてすぐに戦闘態勢に入った。

 

オルガマリーはすぐに物陰に隠れると、遊馬とマシュの前に一つの影が現れた。

 

それはスレンダーな体型の髪の長く、両目を布で覆った女性で手には短剣と鎖が繋がれた武器を持っていた。

 

「まだ生き残りがいましたか……今すぐに眠らせてあげましょう、永遠に」

 

「遊馬君に手出しはさせません!」

 

マシュは盾を構えてサーヴァントに攻撃を仕掛ける。

 

「今までの敵とは違う、それなら俺はレベル4のガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!!」

 

ガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムが光となって絡み合いながら地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「何だ……!?」

 

サーヴァントは何が起きているのか驚くと、光の爆発から同じレベルのモンスターを重ねる事で誕生する異次元の力を持つモンスターが現れる。

 

「二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れよ、ランク4、ガガガガンマン!」

 

光の爆発から現れたのは西部劇を思わせる格好をしたガンマンでその体を回るかのように茶色の球体が二つ浮いていた。

 

その球体はエクシーズ召喚する際に素材となったガガガマジシャンとゴゴゴゴーレムの魂そのものでモンスターエクシーズであるガガガガンマンの力の源でもある。

 

見たことない異次元の召喚法に驚愕するライダー。

 

「何だ、この召喚獣は……?」

 

「これが俺の力だ!マシュ、交代だ!」

 

「は、はい!」

 

「ガガガガンマンの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、ガガガガンマンが攻撃する時に攻撃力を1000ポイントアップして相手の攻撃力を500ポイントダウンさせる!」

 

ガガガガンマンのオーバーレイ・ユニットを一つ自分の体に取り込み、ホルスターに納められた二丁拳銃を構えて連射する。

 

サーヴァントはとっさに回避するが、弾丸が体に掠ると力が僅かに抜けて行く。

 

「力が……抜ける……!?」

 

「今だ!ガガガガンマン!」

 

『ガガガーッ!』

 

「くっ、舐めるな!!」

 

サーヴァントは目を覆っていた布を外して不気味な赤い光を放つとガガガガンマンの体がピタリと止まり、一瞬で石になってしまった。

 

「ガガガガンマンが石に!?」

 

「石化の魔眼……まさか!マズイです、遊馬君!そのサーヴァントはギリシャ神話のメドゥーサです!」

 

「メドゥーサだと!?」

 

それはギリシャ神話の有名な怪物で神の呪いで化け物となってしまった女神である。

 

「そのままお前達も石になれ!!」

 

メドゥーサは遊馬とマシュも石にしようとして石化の魔眼を輝かせ、まともに魔眼を見てしまった遊馬とマシュは石化を覚悟したが……。

 

「くっ!?あ、あれ!?」

 

「石に……なってない……?」

 

何故か遊馬とマシュは石になっておらず、体に変化が起きていなかった。

 

「馬鹿な……私の魔眼が効いていない!?」

 

強力な石化の魔眼が二人に効かないことに驚きを隠せないメドゥーサだった。

 

石化の魔眼は魔力の耐性があれば石にならずにすむが、それは魔力の耐性の能力が高くなければならない。

 

つまり、遊馬とマシュは石化の魔眼が効かないほどの高度な対魔力の能力を持っている事となる。

 

マシュは融合した謎の英霊の力で対魔力の能力が備わっていたが、遊馬は英霊の力も無ければ魔術を使えない。

 

しかし、遊馬のその身に宿る大いなる前世の魂と数々の戦いによって築き上げてきた希望の光が対魔力に近い能力を発現していた。

 

もはや石化の魔眼が効かないとメドゥーサは悟ると次の標的を初めに石化したガガガガンマンに定めて短剣を振り下ろして破壊した。

 

「しまった、ガガガガンマン!?ぐあっ!?」

 

ガガガガンマンが破壊され、その衝撃が遊馬にも与えられてその場から吹き飛ばされてしまう。

 

どうやら召喚したモンスターが相手に破壊されると遊馬に大きなダメージが受けるというシステムになっているようで痛みが体全身に走る。

 

「遊馬君!」

 

「魔眼は効きませんが、未熟なマスターを潰すことは簡単、終わりです……諦めなさい」

 

「諦めるかよ……」

 

遊馬は駆け寄ったマシュの肩を借りて起き上がり、闘志を宿した瞳でメデューサを見つめる。

 

「こんなところで、諦めるかよ……」

 

マシュから離れ、デッキトップに指を添える。

 

「俺はマシュを、所長を……みんなを守る。だから、倒れてたまるかよ!かっとビングだ、俺!!ドロー!!」

 

ドローしたカードを見てニヤリと笑みを浮かべるとそのままデュエルディスクに置いて召喚する。

 

「俺はゴゴゴジャイアントを召喚!効果で墓地からゴゴゴゴーレムを復活!」

 

岩から作られた巨人、ゴゴゴジャイアントは墓地に眠るゴゴゴゴーレムを復活させて共に守りの態勢に入る。

 

「そして、レベル4のゴゴゴジャイアントとゴゴゴゴーレムでオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い、ガガガザムライ!!」

 

二体のゴゴゴモンスターがエクシーズ召喚され、現れたのは二振りの刀を持つ侍の姿をしたガガガガンマンに続く二体目のモンスターエクシーズだ。

 

「また新しい召喚獣……その程度の力で私を倒せると思いますか?」

 

「まだだ!俺は装備魔法、ガガガリベンジを発動!墓地のガガガモンスターを復活させる、甦れ!ガガガガンマン!!」

 

紫色の魔法陣が地面に浮かび、中から先ほど破壊されたガガガガンマンが出てきて復活した。

 

「破壊した召喚獣が蘇った?数で押し切るつもりのようですが、無駄ですよ」

 

「違うぜ。見せてやるぜ、メドゥーサ!俺の力を!」

 

遊馬の体から眩い金色の光が輝き出した。

 

それは闇を照らす希望の光……未来をその手に掴む遊馬の輝きだった。

 

遊馬の手には一枚のカードが指で挟まれており、そのカードに反応するかのようにマシュの右手の甲が疼いた。

 

「な、何……?」

 

まるで共鳴するかのようにマシュの右手の甲に数字の『00』に似た形の翡翠色に輝く刻印が現れた。

 

「この刻印は……?」

 

マシュはその刻印を左手で抑えながら遊馬を見つめた。

 

そして、遊馬は指に挟んだそのカードを召喚するために二体のガガガのモンスターエクシーズの力を借りる。

 

「力を借りるぜ、ガガガガンマン、ガガガザムライ!俺は二体のモンスターエクシーズでオーバーレイ!!」

 

『『ガガガッ!!』』

 

二体のガガガモンスターエクシーズは黒と茶の光となって地面に現れた黒い穴に吸い込まれ、強烈な光が爆発した。

 

「今こそ現れろ、FNo.0!」

 

遊馬は指に挟んだカードをデュエルディスクに置き、右腕を天高く掲げた。

 

「天馬、今ここに解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る。これが俺の、天地開闢!俺の未来!かっとビングだ!俺!」

 

遥かなる次元の果てから美しい双翼を羽ばたかせ、未来を切り開く二振りの剣を携え、遊馬の前に降臨した。

 

「『未来皇ホープ』!!!」

 

『ホォープッ!!!』

 

無限の可能性、無限の未来を象徴する遊馬が作り出したモンスターエクシーズ。

 

その名は未来皇ホープ。

 

「未来皇ホープ……」

 

「な、何よこれ……?」

 

未来皇ホープの出現に見惚れるマシュだが、隠れて見ていたオルガマリーは困惑していた。

 

何故なら未来皇ホープには今まで遊馬が召喚してきたモンスターとは大きく異なり、魔力とは異なる不可思議な力が宿っていると感じられたからだ。

 

「天馬、ですって……?」

 

天馬という単語にメドゥーサは耳を疑った。

 

ギリシャ神話の女神であるメドゥーサは天馬……ペガサスと強い繋がりがあるのだがそれはさて置き、メドゥーサは遊馬が召喚した未来皇ホープに身震いをする。

 

今まで多くの神々や怪物、そして英雄と対峙してきたが、未来皇ホープはそれらとは異なる大きな力を秘めているのを感じた。

 

あれは危険だ、そう直感したメドゥーサはすぐさま破壊するために鎖を投げて攻撃する。

 

「迎え撃て!ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!!」

 

未来皇ホープは腰に携えた二振りの剣を構えてメドゥーサの鎖をかわしてそのまま剣でメドゥーサの体を斬り裂く……とマシュとオルガマリーは思ったが、剣で斬ったはずのメドゥーサの体には傷一つついてなかった。

 

すると次の瞬間、メドゥーサが膝をつきその身に宿っていた闇が薄れていった。

 

「くっ……私は、一体何を……?」

 

「遊馬君、何をしたんですか?」

 

「未来皇ホープは攻撃力が0。つまり、相手にダメージは与えられない。その代わり、バトルした相手を一時的に俺のコントロールに置くことが出来るんだ」

 

「そ、それって洗脳ってこと!?」

 

「微妙に違うけどな……メドゥーサ、話せるか?」

 

正気を取り戻したメドゥーサは遊馬に急いで話した。

 

「少年……時間がないから要点だけ話します。セイバーを倒しなさい」

 

「セイバー?」

 

「セイバーを倒せば全てが終わる……ぐぁあああっ!?」

 

再びメドゥーサに闇が襲いかかり、意識がおかしくなっていく。

 

「メドゥーサ!?」

 

「少年……私を倒しなさい、早く!!」

 

「メドゥーサ……」

 

遊馬はメドゥーサが操られている、本当はこんなことをしたくないと感じた。

 

助けられないことに拳を強く握りしめて唇を噛み締めるとオルガマリーとマシュから喝が入る。

 

「何をしているのよ!そいつを倒さないとみんな守れないのよ!?」

 

「遊馬君!メドゥーサを解放するには倒すしかありません!」

 

オルガマリーとマシュの言葉を受け、遊馬は拳を強く握りしめて覚悟を決めた。

 

未来皇ホープには攻撃力はゼロで単体ではメドゥーサを倒すことはできない。

 

しかし、メドゥーサを倒すための勝利の方程式は既に完成されており、その鍵は遊馬の手札に存在していた。

 

「俺はカードを一枚伏せる……」

 

遊馬は静かに手札にあるカードを一枚伏せた。

 

そして再び闇を纏って暴走し、メドゥーサは未来皇ホープに攻撃を仕掛けてきた。

 

遊馬はメドゥーサの囚われた闇を打ち砕くためにそれに相応しいカードを発動した。

 

「罠カード、『聖なる鎧 -ミラーメール-』!発動!!」

 

オープンされた赤い枠のカード・罠カードから現れたのは鏡で作られた光り輝く美しい鎧だった。

 

その鎧を光となって未来皇ホープの体に取り込まれた。

 

未来皇ホープの姿が銀色に輝き、その身に纏う鎧が鏡のように変化してメドゥーサの姿を映し出した。

 

「っ!?鏡の鎧!!?」

 

「ミラーメールの効果で、未来皇ホープの攻撃力は攻撃してきたメドゥーサと同じとなる」

 

本来なら攻撃力が0の未来皇ホープに鏡に映ったメドゥーサと同じと攻撃力を得る。

 

剣を構えた未来皇ホープは空高く飛翔してから急降下してメドゥーサに斬りかかる。

 

「ホープ剣・ミラー・スラッシュ!!」

 

未来皇ホープの斬撃がメドゥーサの鎖ごと斬り裂き、メドゥーサはあまりの衝撃に吹き飛ばされて地面に転げ落ちた。

 

奇しくも神話の時代に神の呪いで怪物となり、鏡の盾を使って退治した勇者ペルセウスと同じようにメドゥーサは鏡の鎧を使った遊馬に倒されたのだった。

 

「メデューサ!」

 

遊馬は倒れたメドゥーサの元へ駆け寄った。

 

「遊馬君!危ないです!」

 

マシュも慌てて後を追い、いつでもメドゥーサに攻撃できるように盾を構える。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

遊馬は倒れているメドゥーサを起こした。

 

メドゥーサの闇は完全に祓われ、正気を取り戻すと遊馬に厳しい言葉を送る。

 

「まさか敵だった私に情けをかけるなんて……甘いですよ、少年」

 

「そんなことはどうでもいい!メドゥーサ、あんたは本当はこんなことしたくないんだよな!そうだよな!?」

 

「……ええ、そうです。私はセイバーに倒されてから謎の力に操られて暴れていた。でも、これで消えることが出来る……」

 

するとメドゥーサの体が光の粒子となって消滅していく。

 

「お、おい!?メドゥーサ!」

 

「少年……あなたの名前は?」

 

「遊馬、九十九遊馬だ!!」

 

「ユウマ……よく聞きなさい、あなたの戦いは始まったばかり。これから想像を超える災難や恐怖が降りかかる。それでもあなたは戦えますか?」

 

「ああ……戦うさ」

 

幼いながらも決意の篭った目でそう宣言する遊馬にメドゥーサはまるで自分の息子を見守る母のように微笑んだ。

 

「そうですか……もし、また会うことになったらその時はゆっくり話をしましょう、ユウマ」

 

メドゥーサは満足そうな表情を浮かべ、遊馬とマシュに見守られながら光の粒子となって消滅した。

 

そして、メドゥーサが消滅した跡に一つのものが残っていた。

 

「これは……モンスターエクシーズのカード……?」

 

それはメドゥーサが残したモンスターエクシーズのカード。

 

しかしそのカードにはモンスターの絵が無く真っ白で、名前も効果も書かれていない……正体不明の白紙のカードだった。

 

どうしてメドゥーサが消滅した後にこのカードが残ったのか?

 

理由が不明なまま遊馬はそのカードをデッキケースにしまい、メドゥーサの言葉を胸に刻みながら顔を上げた。

 

「行こうぜ、マシュ、所長」

 

「はい……」

 

「ええ……」

 

遊馬たちはひとまず安全な場所に向かおうとしたその時だった。

 

「はっはっは!サーヴァント相手に見た事ねぇ魔物と魔術を使って果敢に攻めるたぁ、見応えのあるマスターじゃねえか!」

 

「っ!?誰だ!?」

 

遊馬たちが振り向き、未来皇ホープが剣を構えた先には青いローブを身に纏い、長い杖を持った魔法使いの姿をした男性がいた。

 

ただの人間ではない、サーヴァントだとすぐに察した遊馬とマシュは戦闘態勢に入ろうとしたが、この直後に驚くべき言葉を口にする。

 

「気に入ったぜ、坊主。俺はキャスターだ。お前、俺のマスターになってくれよ」

 

「えっ!?」

 

それは奇跡的にメドゥーサのように操られておらずにこの冬木で影から暗躍していたサーヴァントだった。

 

そして、突然のキャスターの申し出に困惑する遊馬だった。

 

 

 

.

 




メドゥーサとの戦いで未来皇ホープを出そうと思ったのはやはり遊馬と未来皇ホープには天馬の要素があるので是非とも戦わせたいなと思いました。
ミラーメールはメドゥーサとの戦いで丁度いいトラップだったので採用しました。
メドゥーサが残したカードは後にその意味が判明しますのでお楽しみに。
次回はキャスターとの契約とアーチャーとバトルを書ければいいなと思います。

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