Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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アタランテ姐さんの登場です!
やっと彼女を出せました!
アポクリファを見てから出すのを楽しみにしていたので!


ナンバーズ49 集まる真実の欠片

アルゴー船から撤退した黄金の鹿号は態勢を整えるために全速力で走らせる。

 

海賊達が慌ただしく働く中、メディアは再会した最愛の夫……葛木宗一郎の治療を行っていた。

 

「大丈夫ですか?宗一郎様……」

 

「心配ない……ところで、あの娘は幼い頃のお前と聞いたが、本当なのか?」

 

「え、えぇ……お恥ずかしながら、あれは私が生きていた頃の幼き日の姿ですわ……あの小娘、よくも宗一郎様を……しかし、宗一郎様。何故あの時、小娘ごとイアソンを攻撃しなかったのですか?」

 

「……出来るわけがなかろう。例え敵でも、幼き日のお前を攻撃する事など……私には出来ない……」

 

「宗一郎様……」

 

宗一郎はメディアの事を愛しており、自分の全てを捧げても構わないと思うほど大切にしている。

 

それ故に敵であろうとも別の存在であろうともメディアの幼き姿のメディア・リリィが相手では攻撃することができなかった。

 

「はっはっは!惚れた女には刃を向けられないか!なるほど、宗一郎殿の最大の弱点が一番身近にあったということか?良かったな、魔女よ」

 

小次郎はメディアと宗一郎の夫婦仲睦まじい光景に笑いながら茶々を入れた。

 

「だ、黙りなさい、佐々木!!はっ倒すわよ!!」

 

「小次郎、あまりメディアを弄るなよ」

 

そこにドレイクの手伝いを終えた遊馬とアストラルとマシュがやって来た。

 

「おや、マスター。いやはや、この恋する乙女な魔女を弄るのが拙者の楽しみでな。ついついやってしまうのだよ」

 

「佐々木ぃっ!!そこに直りなさい!!強烈な魔術を打ち込むわよ!!!」

 

「おっと、あまり怒るととシワが増えるぞ?はっはっは!!」

 

小次郎は軽くブチギレるメディアを弄って満足するとその場からササっと離れるのだった。

 

メディアは弄られた怒りから魔力が溢れ出すが、宗一郎がすぐそばにいるので慌てて心を落ち着かせた。

 

「あはは、小次郎の奴……さてと、葛木先生。改めてこんにちわ。俺は九十九遊馬。さっきも言ったけど、メディアのマスターをやってる。こっちの二人は俺の相棒の……」

 

「私はアストラル。アストラル世界と呼ばれる異世界から来た」

 

「初めまして、私はマシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントです」

 

改めて遊馬は自己紹介をし、アストラルとマシュも続いて自己紹介をすると宗一郎も軽く会釈をして挨拶をする。

 

「葛木宗一郎。穂群原学園で教師をしている……正直今何が起きているのか理解出来ていない」

 

「そうか……今から俺たちがちゃんと説明する。落ち着いて聞いてくれ」

 

「うむ……」

 

遊馬達はカルデアや人理修復の事など今起きている事を説明した。

 

宗一郎は頭の中で一つ一つを整理しながら理解して言ったが、本人の性質か性格なのか分からないがあまりピンと来ていなかった。

 

「……正直、人類の未来を救うという私個人ではあまり大きすぎる案件に掴みきれない……」

 

「そりゃあそうだよな。それで、葛木先生はどうしたいんだ?」

 

「……出来る事なら、叶うのならば、メディアの側にいたい……それは可能か?」

 

「宗一郎様……!」

 

「もちろん!二人は夫婦だもんな。この世界の戦いが終わったら先生をカルデアの施設に連れて行くぜ。その施設からは外に出られないけど……」

 

「構わない。メディアが側にいるならそれでいい」

 

「オッケー!それじゃあ、よろしくな。葛木先生!」

 

「うむ、よろしく頼む……九十九」

 

遊馬と宗一郎は固い握手を交わした。

 

一方、カルデアでは突然現れた宗一郎について調べていた。

 

マシュのデミ・サーヴァントやエルメロイII世の諸葛孔明が依代にした特殊なサーヴァントとは異なり、サーヴァントでは無かったが仮初めの肉体を有していた。

 

何故英霊でもない存在である宗一郎が召喚されたのか不明だが、現状分かっているのは宗一郎がメディアと不可視の絆で結ばれており、似た存在ではアンとメアリーのように二人で一騎のサーヴァントのような扱いとなっていることだった。

 

それはメディアの宗一郎に会いたいという願いか、遊馬が無意識に起こした奇跡かどうか分からないことだらけだった。

 

しかし、愛する夫と再会しただけでなくしばらくの間、一緒にいることが確定したメディアはカルデアで見たことがないほど幸せそうに笑顔をして笑っているのだった。

 

「あのメディアがあんなに幸せそうに笑うなんて……羨ましい!ダーリン、お願い!私をギュッと抱きしめて!そして耳元で愛を囁いて!!」

 

「ぬいぐるみに無茶言うなぁ!!」

 

度重なる不幸が重なり、更には裏切りの魔女と呼ばれたメディアが再婚した旦那の宗一郎と羨むほどの幸せそうな表情にアルテミスは軽く嫉妬してオリオンに愛のハグを欲しいと願ったが、ぬいぐるみのオリオンには不可能だった。

 

「……ところで遊馬」

 

アストラルはまるで何か言いにくそうなことを勇気を出すように遊馬に話を切り出した。

 

「何だ?アストラル」

 

「君はいつまでその格好でいるつもりだ?」

 

「えっ?……おわっ!?まだタキシードのまま!?」

 

戦闘中だったことも含め、色々忙しかったので遊馬が白タキシード姿の事を誰もツッコミを入れていなかった。

 

「ネロ!いい加減俺の元の格好に戻せよ!」

 

遊馬の白タキシード姿はネロの力によって変身させられており、まだその解除をしていなかった。

 

「む?良いではないか、ユウマよ。似合っておるぞ?なあ、マシュよ!」

 

「そ、そうですね、とっても似合っていますよ」

 

「よし!とっととこの特異点を片付けたらカルデアで結婚式を開こうではないか!!」

 

ネロの衝撃的な宣言に遊馬とマシュは驚愕する。

 

「何で!?どうして!?そうなるんだ!?」

 

「そうですよ!ネロさんだけずるいですよ!!」

 

「勘違いするではない、マシュよ!そなたもウェディングドレスを着るのだ!」

 

「……ええっ!?どういうことですか!?」

 

「マシュだけではない!カルデアにいるコトリ!ジャンヌ!レティシア!清姫もだ!遊馬を中心にハーレムを築くのだ!!そうすればユウマに恋する者、皆が幸せになれる!!」

 

実はネロは黒髭とのファーストコンタクトの時に黒髭が言っていた『ハーレム』の言葉に思いついたのだ。

 

遊馬に好意を寄せる女性は多い、しかも今後も増える可能性が高い。

 

どうせなら遊馬を中心にハーレムを築いて皆で幸せになろうとネロは考えたのだ。

 

「ハ、ハーレム!?それって重婚、一夫多妻じゃねえか!?でもダメだ!そんなの俺の国じゃ認められてないんだ!!」

 

遊馬の住む国・日本では重婚・一夫多妻が認められていない。

 

現代の世界ではほとんどの国で重婚・一夫多妻が認められておらず、限られた国でしか認められていない。

 

「言うたであろう?ユウマの住む異世界で新しいローマ帝国をユウマと築くと!その国でなら法律は皇帝である余が作る!一夫多妻なんて余裕だぞ!」

 

「いくらなんでも無茶苦茶すぎるだろ!?」

 

遊馬はネロの思い描く未来に頭を悩ませた。

 

そんな様子を見てアストラルはため息をついて呟いた。

 

「異世界観察結果その2……ネロは遊馬の女性関係の大きな着火剤になる……何と恐ろしいことだ……」

 

アストラルはネロの行動力や発想力に感服し、その評価を改めるのだった。

 

ひとまず遊馬はこのままだと動き辛いのでネロに頼み込んで元の服装に戻してもらった。

 

すると、新しい無人島を発見してそこに船を止めようとしたその時だった。

 

「伏せろ!何かが飛んでくる!!」

 

何かが飛来するのを確認したエミヤは大声で注意喚起をし、遊馬達が伏せたその直後。

 

ヒュン!グサッ!

 

「ひゃぅ!?」

 

「ダーリンの頭に矢が!?大当たり!」

 

オリオンの眉間に矢が突き刺さり、敵襲かと思い戦闘態勢を取ろうとしたが……。

 

「遊馬、その矢に何かが括り付けてあるぞ」

 

「あ、本当だ。これは矢文?って、オリオン大丈夫か?」

 

矢には手紙と思われる紙が括り付けられており、遅れたが眉間に矢が刺さってアワアワしているオリオンを心配する。

 

「めっちゃ痛ぇわボケェ!と、とにかく抜かなくては!このっ、このっ……あ、今気づいたけど、俺って自分の頭に手が届かないわ!?抜いてくれ!ほら、早く!」

 

「わ、わかった。アルテミス、頑張る!せーの、ぐーりぐーり!」

 

「痛い痛い痛い!一気に引き抜けよ!何でもったいぶるんだよ!」

 

「あ、私、頼られたことってあまりないから嬉しくって……つい」

 

「眉間に矢が刺さってるのに痛いで済むのかよ……」

 

「ぬいぐるみの体が人間としての仮初めの肉体よりも不思議な耐久力を与えているのだろうか……?」

 

普通サーヴァントでも額に矢が当たれば即死は免れないが、オリオンはぬいぐるみの肉体となっているためか妙にタフな耐久力を持っている。

 

アルテミスはオリオンの眉間から矢を抜くと括り付けられていた紙を外して早速中に書かれた文章を見た瞬間、アルテミスは笑顔になった。

 

「どれどれ……あ!」

 

「アルテミス、どうしたんだ?」

 

「うふふ、知り合いだったわ。相変わらず堅苦しいわね。やっぱり愛を知らない純潔少女だからかしら」

 

「ま、待ってください、アルテミス様。その純潔少女ってまさか……!」

 

メディアはアルテミスが語る知り合いの純潔少女に心当たりがあった。

 

「ええ、そうね。あなたも面識はあるわよね。この娘はーー」

 

それはアルテミスとメディアの共通する知り合いでギリシャ神話で有名な英霊の一人であった。

 

 

遊馬達は無人島に上陸すると矢文を放った者を探しに森の中に入る。

 

周囲を警戒しながら森の中を進んでいくと……。

 

「待て!」

 

凛とした声が森の中から響くように聞こえる。

 

「矢文を寄越したのは、アンタかい!?」

 

「その通りだ……汝らはアルゴノーツを敵とするものか!?それとも既にあきらめ、屈した者か!?」

 

「諦めるもんか!諦めてるなら、ヘクトールのおっさんを倒してねえよ!!」

 

「もう、いい加減に姿を見せたら?相変わらず真面目な子ね、あなたは!」

 

メディアが大声で呼ぶと森から響くその声の主は同様の声を響かせた。

 

「っ!?その声はまさか!?」

 

「心配しなくてもいいわよ、私達はイアソン達を倒すためにここに来たのだから……出て来なさい、アタランテ!!」

 

メディアに呼ばれて森の中から現れたのはフランスの特異点で出会った猫のような耳と尻尾が生えた獣人のような女性だった。

 

アタランテ。

 

ギリシャ神話最高の狩人であり、その技術は超一流にして神域の弓術の使い手。

 

かつてアルゴノーツのメンバーとしてメディアと共に冒険したこともある。

 

「お前……本当にメディア、なのか?」

 

「ええ、久しぶりね。アタランテ。アルゴー船の冒険以来かしら」

 

「そうだな……いや、だがイアソンの隣に……」

 

「あれは昔の私、ここにいるのは……裏切りの魔女と呼ばれるようになった大人の私よ」

 

「そうだったか……それにしても、随分顔色がいいな。もしかして、イアソンを殴り飛ばしたのか?」

 

「そうね、でもそれは私の旦那様がやってくれたわ♪」

 

「だ、旦那様だと……?」

 

きょとんと呆然とするアタランテにメディアは宗一郎の腕に抱きついてイチャイチャしながら紹介した。

 

「ええ!紹介するわ、私の最愛の旦那様……宗一郎様よ!宗一郎様、紹介します。彼女はアタランテ、私の古き友ですわ」

 

「メディアの友か……私は葛木宗一郎。妻が世話になった」

 

イアソンと性格が正反対の真面目で誠実そうな男性である宗一郎にアタランテは顔を引きつらせた。

 

「あ、ああ……よろしく。メディア、とても誠実そうな人でよかったな……」

 

「そうよ!宗一郎様は最高の旦那様よ!かっこよくて渋くて、私を愛してくれてるの!」

 

「そ、そうか……」

 

メディアが昔とはかなり違う……と言うか、もはや別人の領域のキャラで宗一郎と幸せそうにいる姿に戸惑っていた。

 

「ふふふ、アタランテ。愛は偉大なのよ♪」

 

そんなアタランテにアルテミスは優しく語りかけた。

 

「…………え???」

 

アタランテはアルテミスを見て固まった。

 

「はぁい♪お久しぶりね、アタランテ。あなたとは赤ちゃんの時に拾った時以来ね」

 

「…………アルテミス様?」

 

「ええ、そうよ」

 

「いやいや、冗談だろう。アルテミス様は狩猟と純潔の女神であり、間違えてもサーヴァントとして召喚されることはないはずだ」

 

「ねえ、ダーリン?アタランテが信じてくれないの。別にいいじゃない。純潔の女神が愛に生きたって。ねえ?」

 

「はっはっは。ノーコメント、ノーコメントです!」

 

今だに信じられないアタランテにアストラルが何故アルテミスが召喚されたのか説明した。

 

「アタランテ、補足説明させてもらうがアルテミスはこのぬいぐるみ……恋人のオリオンが心配で自身の神霊としてのランクダウンによる代理英霊召喚でこの世界に召喚された。彼女は間違いなく赤子の時の君を救った恩人だ」

 

アタランテはアルカディアの王女として生まれたが、男児を望んでいた父親は森に捨ててしまった。

 

それを哀れに思ったアルテミスが救い、聖獣である雌熊に託して育ててもらったのだ。

 

「……え?本当?」

 

「本当よ、アタランテ。愛に生きる狩猟の女神、それがこの私ーーアルテミス、よ。うふっ」

 

「……(くらっ)」

 

アタランテは信仰して敬っていたアルテミスがまさかこんな恋愛脳(スイーツ)な女神だとは思いも寄らずに立ちくらみをしてしまう。

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫だ。大海の聖杯戦争で、私の精神も少しは鍛えられた……い、今さら自分が信仰していた女神が恋愛脳系だからって頽れたりしない……!!」

 

「分かるぜ、あんたの気持ち……」

 

「確かお前はフランスの時の……」

 

「イメージを押し付けるのはよくないけど、最低限のイメージがぶっ壊れるって……辛いよな……」

 

「分かってくれるか、私の気持ちが……!!」

 

「ああ!分かるぜ!」

 

遊馬とアタランテは英霊や神霊のイメージとは違いすぎる姿に驚愕や落胆し、そこに共感してガシッと握手を交わした。

 

「改めて名を語ろう。我が名はアタランテ。純潔の狩人だ」

 

「俺は遊馬!九十九遊馬だ!」

 

「ユウマか……ところで、ユウマは歳はいくつだ?」

 

「歳?十三だけど?」

 

遊馬の年齢を聞いてアタランテは目を見開いて驚いた。

 

「じゅ、十三だと!!?まだ子供じゃないか!?」

 

「うん、まぁみんなに比べたら子供だけどな」

 

「いけない……」

 

「ん?」

 

「お前のような子供がーー」

 

「待ちなさい、アタランテ」

 

「むぐっ!?」

 

メディアはアタランテの口を押さえてこれから言おうとしていた言葉を塞いだ。

 

「あなたの言いたいことは予想できるけど、今言うことじゃないわ。それは後にしなさい。私達にはやるべきことや話すべきことがあるんじゃない?」

 

アタランテが何を言おうとしたのか友であるメディアにはよく分かっており、今やらなければならないことを考えさせた。

 

アタランテは自分の口を塞いだメディアの手を退けて静かに頷いた。

 

「……分かった。すまない、メディア」

 

「別にいいわよ」

 

メディアはポンポンとアタランテの肩を叩くとアストルフォがジークフリートと共に元気良く挨拶してきた。

 

「やっほー!久しぶりだね、『赤のアーチャー』!」

 

「久方ぶり……と言っておこうか」

 

「っ!?お、お前達は『黒のライダー』に『黒のセイバー』!??」

 

アストルフォとジークフリートの登場にアタランテは困惑した。

 

「いやー、あの時は敵同士だったけど今度は味方みたいでよかったよかった!」

 

「君は素晴らしい弓の使い手だ。共に戦えることを誇りに思う……」

 

どうやらどこかの聖杯戦争で戦ったらしく、特にアタランテは気まずい表情を浮かべていた。

 

「あ、あぁ……そうだな……こほん……では、少し遅れたが紹介したいサーヴァントがいる。『契約の箱』を持つサーヴァント。要するに、アルゴノーツが求める男だ。出てこい!」

 

「全く、忘れられたのかと思ったよ」

 

森の奥から出て来たのは杖を持った緑髪の青年だった。

 

「この海域において、最初に召喚されたサーヴァント……ダビデだ」

 

「ダビデって、あのイスラエルの王!?」

 

「神の子、イエス・キリストの祖か……!」

 

ダビデ。

 

旧約聖書に登場するイスラエルの王で巨人ゴリアテをたった一人で倒したと言われている。

 

ダビデはこの特異点において重要なキーアイテム……契約の箱について説明した。

 

契約の箱はダビデの宝具であり、モーゼから授かった十戒が刻まれた石版を収めた木箱であるが、この箱に触れさせれば相手が死ぬ効果を持つ。

 

本人曰く宝具としては三流で霊体化することができず、ダビデと共に現物として召喚されるのだ。

 

仮にダビデが倒されて消滅されても誰かが所有していれば残り続ける。

 

イアソンが契約の箱を狙っているとアタランテから聞かされて、遊馬達のように正しく召喚されたもの達が現れるのを待っていたのだ。

 

しかしここで一つ大きな疑問が出てくる。

 

遊馬とネロはヘクトールからイアソンの目的が契約の箱にエウリュアレを生贄に捧げると聞いていた。

 

契約の箱は王であるダビデが神に捧げた聖遺物であり、イアソンの望む王の資格でも何でも無いのだ。

 

仮に神霊であるエウリュアレが契約の箱に生贄に捧げれば、それに伴い世界が『死ぬ』。

 

特に不安定な世界であるこの特異点が消え去ってしまうのだ。

 

「もしかして、イアソンは誰かに踊らされているのかも……」

 

「踊らされている?」

 

「ご存知だと思うけど、イアソンは生前の様々な境遇から王になりたかった……だからこそ契約の箱にエウリュアレを捧げれば王になれると……そう『誰か』が入れ知恵したのかもしれないわ」

 

イアソンのことを一番理解しているメディアはそう推測する。

 

「契約の箱か……アストラル、ヌメロン・コードとどっちがヤバイかな?」

 

「ふむ……神から授かれた石板が収められた箱……世界が消滅する力も秘めているから比べるのも難しいな」

 

「何だい?そのヌメロン・コードは?」

 

「ん?ああ。過去・現在・未来……世界のあらゆる運命を決めることができる神のカードだ」

 

ダビデの質問にあっさり答えた遊馬にヌメロン・コードのことを始めた者達は衝撃を受けた。

 

「……な、何だと!?そんなカードは聞いたこともないぞ!?」

 

「当たり前だよ、多分俺の世界にしかないものだからな」

 

遊馬とアストラルはヌメロン・コードの事やそれを賭けた戦いについて簡潔に話し、ただの子供のマスターではないと思ったがとんでもない英雄であることにこの特異点の世界で出会った者達は驚いた。

 

「ヌメロン・コード、か……もしそれがあれば……」

 

そんな中、アタランテはヌメロン・コードの話を誰よりも真剣に聞いて何かを考える仕草をしていた。

 

「あ、そうだ。あの幼いメディアは契約の箱の知ってるのかな……?」

 

「それは分からないわ。でも……」

 

「でも?」

 

「私が言うのも何だけど、あの幼い私……なんか変なのよね……なんて言うか、何かに諦めていると言うか……」

 

メディア・リリィに対して違和感を覚えるメディアの言葉に遊馬は脳裏にあの光景が浮かんだ。

 

それはこの特異点に来る前に見たメディア・リリィが強大な闇に敗れ去る夢の光景……。

 

遊馬は隠しておかないほうがいいと思い、正直に話し始める。

 

「みんな、聞いてくれ。実はーー」

 

遊馬の口から語られた夢の内容を話すと、その内容に驚いた。

 

まだその時は会ったこともないメディア・リリィが夢に出て来るのは普通ならありえないからだ。

 

「マスター……まさかあなた、『予知夢』が見えるの?」

 

人が寝ている時に見る夢には古来から何かしらの意味があり、神のお告げや未来が見えるなどの不思議な力があると言われている。

 

「わからねえ……でも、不思議な夢は今まで何回も見たことがあるんだ」

 

遊馬は過去数回、アストラルとの出会いや新たな戦いなどそれを予兆する不思議な夢を何度も見てきたのだ。

 

「異世界の英雄であるマスターが見たなら何か意味があるのかも……でも、私の過去にそんな闇と戦った記憶はないわ。もしかしたら、あの小娘に何かあったのかも……」

 

メディア・リリィに更なる謎が深まり、まだ謎を解明するためのピースが不足している。

 

アストラルはエウリュアレを守り、契約の箱を奪われないためにまず考えなければならないことに向けて話を変える。

 

「今は幼いメディアの事は一先ず置いておこう。我々が考えなければならないのはヘラクレスをどうするかだ。ヘラクレスを倒さない限り我々の勝利はない」

 

ヘラクレスこそ遊馬達にとってこの世界における最大の壁とも言っても過言ではない。

 

「それならご心配ありません。ここにヘラクレスの十二の命の大半を奪ったサーヴァントがいますから。ですよね?アルトリア、エミヤ」

 

「ええ、お任せください」

 

「ヘラクレスは私達に任せたまえ」

 

メドゥーサはアルトリアとエミヤに視線を向けると頼もしく二人は頷いた。

 

「しかし、ヘラクレスは何とかなるにしても、一つ気になる点があります」

 

アルトリアはヘラクレスと戦闘し、戦った時の感想や直感で違和感を覚えていた。

 

「気になる点?」

 

「彼はバーサーカークラスの狂化スキルで理性は失ってますが、私とシロウが出て来たときに僅かながら驚いていました。あの様子だと少なくとも、ヘラクレスは私達とかつて戦った聖杯戦争の時の出会った記憶が残っている可能性があります。それに、彼はあちらが欲しているエウリュアレを奪うどころか何故か殺しそうな勢いでした……もしかしたら、ヘラクレスは契約の箱にエウリュアレを捧げたらこの世界が崩壊すると分かっているのでは無いでしょうか?」

 

「なるほど……私達があの聖杯戦争で戦った時と何か違和感を感じると思ったらそう言うことか……」

 

ヘラクレスは契約の箱にエウリュアレを捧げないようにイアソンの命令を無視してエウリュアレを殺そうとしているかもしれない……つまり本当の意味では敵では無いことに遊馬は何かヘラクレスを助けることができないから悩み始める。

 

「……ヘラクレスを何とかできないかな……」

 

「一応手はあるわよ」

 

メディアは懐から歪な形をした不思議な短剣を取り出した。

 

「何だその剣?随分変な形をしてるけど……」

 

「私の宝具、『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』。あらゆる魔術を初期化することが出来る最強の対魔術宝具よ」

 

「マジで!?」

 

それは裏切りの魔女と呼ばれるメディアの伝説が具現化した宝具である。

 

「こいつがあればマスターとサーヴァントの契約を打ち消すことが出来るわ。これでヘラクレスとイアソンの契約を切れればいいけど……あのバーサーカーのヘラクレス相手にこれを突き刺す隙は無いと思うわ。それに……」

 

「それに?」

 

「仮にヘラクレスの契約を消したとしても、なんだかんだでイアソンとは友の関係だったからね……もしかしたら、あくまで可能性だけどヘラクレスはイアソンを裏切らないかもしれないわ……」

 

「それじゃあ、倒すしか無いってことか……」

 

「それなら私とシロウに任せてください。私の約束された勝利の剣とシロウの切り札で必ずヘラクレスの十二の命を奪ってみせましょう」

 

「ふっ……大役だが、何度もヘラクレスと刃を交えている我々が適任だろう」

 

アルトリアとエミヤはヘラクレスを倒すことに意気込むが、遊馬は目を閉じて静かに考えるとある決意をする。

 

「……アルトリア、エミヤ、みんな。頼みがある」

 

それは誰もが驚く内容であり、特にアタランテが激昂して止めるように必死に説得したが遊馬の決意は変わらなかった。

 

そして、遊馬がこの場で唯一言うことを聞く存在であろうアストラルが止めてくれると期待したが……。

 

「……分かった、遊馬。私も覚悟を決めよう。共に行くぞ!」

 

「アストラル……!そう言ってくれると信じてたぜ!!」

 

アストラルも遊馬の意向に賛成して二人はハイタッチを交わす。

 

遊馬とアストラルの意見が合致した時にはもはや誰も止めることは出来ない。

 

「はぁ……仕方ないわね。こうなったマスターは止められそうに無いから、やるしか無いわね。アステリオス、手伝いなさい」

 

「ぼく……?」

 

「あなた、宝具で島全体を覆うほどの結界を作れるでしょ?そこに私がこの島を神殿にして、最低でも明日の明朝まであいつらが来れないようにしてやるわ」

 

メディアにはキャスターとしてのスキル、陣地形成があり、魔術師として自らに有利な陣地『工房』を作る能力。

 

陣地形成のスキルはAランクでメディアにかかれば『工房』を上回る『神殿』レベルの陣地が作成可能である。

 

そこにアステリオスの宝具、『万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)』を島の地下に生成し、一定範囲内の侵入及び脱出を阻害する結界の効果を利用してイアソン達が島には入れないようにする。

 

「あのヘラクレスが相手ですもの。今日は準備と休養を取らなければならないわ。それから、そこにいるカルデアのオカンは食事の用意をよろしくね」

 

「誰がオカンだ!?」

 

そう言いながらもエミヤはエプロンと調理器具を無意識に投影するあたりがカルデアのおかんの異名に箔をつけているのだった。

 

「……メディアよ」

 

「何でしょう?宗一郎様」

 

「私は何も手伝えないが……お前を見守ろう。頑張れ」

 

宗一郎に応援された瞬間、リミットが外れたかのようにメディアの魔力が爆発した。

 

杖を構えたメディアは満面の笑みで頷いた。

 

「はい!見ていてください、宗一郎様!!」

 

この時、メディアの陣地形成のスキルのランクが愛の力によってAから上のランクに跳ね上がるのだった。

 

「古き友と敬愛する女神が恋愛脳系に……どうしてこうなった……?」

 

純潔の狩人であるアタランテは友と女神が凄まじい恋愛脳に卒倒しかけるのだった。

 

そして、アステリオスが万古不易の迷宮を発動して島全体に結界を覆うとメディアはすぐさま島を自らの魔術工房……神殿に作り変えてイアソン達が侵入できないようにするのだった。

 

遊馬達は明日の壮絶な戦いに向けて島で英気を養うのだった。

 

その夜、皆が寝静まった頃……遊馬は明日の戦いに興奮して目が覚めてしまい、森を出て砂浜に向かった。

 

砂浜を歩いていると近くにあった岩の上に一人の女性が座っていた。

 

「あれ?アタランテ?」

 

「ユウマか……」

 

一度は敵対し、戦った遊馬とアタランテ……二人の対話が始まるのだった。

 

 

 

.




次回は遊馬とアタランテの対話です!
子供の守護者であるアタランテと遊馬先生の対話は前から書きたかったので楽しみです!
ちなみにこちらのアタランテはアポクリファの記憶ありです。
アルテミスだけでなく再婚したメディアの恋愛脳には心労が倍増しそうですね(笑)
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