Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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これにて第三特異点、オケアノス編は完結です。
相変わらずの遊馬先生のカウンセリングが行われます(笑)


ナンバーズ53 第三特異点終結!絶望を斬り裂く希望の光!

ギリシャ神話の大英雄・ヘラクレスを倒したZEXALとエミヤ。

 

十二の命を散らし、静かに消滅するヘラクレスは口を開く。

 

「見事だ……」

 

「えっ……!?」

 

「ヘラクレスが喋った……?」

 

ヘラクレスは狂化で話すことが出来ないはずが、消滅の間近で理性を取り戻した。

 

「異世界の勇者よ……貴様が操るその魔物、我ら英霊に匹敵する力を持つ。しかし、貴様と魔物……まだその力を隠しているな?」

 

「……ああ、そうだぜ」

 

「我々とホープにはまだ上の次元の進化が残している……」

 

力を隠している?

 

その事実にマシュ達は驚愕した。

 

サーヴァントとして上位クラスに入るヘラクレスと同等以上に戦うZEXALとホープレイ、それだけでも十分凄まじいのにまだ大きな力を隠していることに言葉を失うほど驚愕した。

 

「末恐ろしいな……これが異世界を救った勇者の持つ力か。貴様が成し遂げた偉業は我の成し遂げてきたこと以上のものだろうな。素晴らしい二人だ」

 

「大英雄のヘラクレスに褒められるなんて嬉しいぜ」

 

「そうだな……」

 

ヘラクレスに褒められ、素直に嬉しく思うZEXAL。

 

すると今度はヘラクレスを討ったもう一人の英雄へと視線を向ける。

 

「そして、我を討ち取ったもう一人の英雄、衛宮士郎よ」

 

「ヘラクレス、貴様……やはり記憶が……」

 

「覚えている。この肩に『お嬢様』を乗せ、冬木の地を駆けた事。貴様とセイバーと命を削った戦いを繰り広げたことを……」

 

ヘラクレスにはアルトリアやエミヤが経験した聖杯戦争の記憶を同じく持っていた。

 

ヘラクレスはイアソンのサーヴァントでありながらこの世界の身を案じていた。

 

「私は……この世界を守る最善の手と思ってエウリュアレ嬢の命を狙った。しかし、貴様らはその命を守るために全力で我と戦い抜き、勝利を掴んだ」

 

「エウリュアレは俺たちが必ず守り抜く。だから、後は俺たちに任せてくれ!」

 

「イアソンの野望を打ち砕き、必ず聖杯を手に入れてこの時代の特異点を修正する!」

 

ZEXALの中にいる遊馬とアストラルから伝わる確固たる決意にヘラクレスは満足そうな表情をして頷いた。

 

「ZEXALよ……人類と世界の命運をその小さな背に背負う誇り高き勇者よ。貴公と戦えた事、誇りに思う。後の事、任せたぞ」

 

「「ああ!!」」

 

「最後に一つ……イアソンと幼き日のメディア王女を救ってくれ……」

 

「ヘラクレス……分かった!」

 

ヘラクレスの最後の願いを聞き入れたZEXALの中の遊馬は強く頷いて拳をヘラクレスに向けた。

 

心強いその姿にヘラクレスは満足し、ゆっくりと目を閉じて消滅した。

 

ヘラクレスのフェイトナンバーズが静かに荒野に落ち、ZEXALはそれを回収する。

 

「マスター、固有結界を解除するぞ」

 

「ああ。そしたら、全員でアルゴー船に突撃だ!!」

 

エミヤは無限の剣製を解除すると、元の青い海と空が目の前に広がる。

 

無限の剣製を解除した瞬間、エミヤは力が抜けたように倒れる。

 

「シロウ!」

 

疲労の表情を浮かべ、倒れるエミヤをアルトリアが受け止めた。

 

「すまない……魔力を使いすぎたようだ……」

 

「無理もありません、あれだけの力を使えば倒れるのも仕方ありません。後はマスターたちに任せて、あなたは休んでください」

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

エミヤは目を閉じ、アルトリアは微笑みながらシロウをお姫様抱っこで抱き上げた。

 

「お疲れ様です、シロウ」

 

アルトリアはエミヤを愛おしそうに額を合わせながら黄金の鹿号まで運んだ。

 

ZEXALは一足先にアンリミテッド・ライオ・ホープレイの肩に乗り、アルゴー船に向かって飛翔する。

 

マシュ達は黄金の鹿号や黒髭の女王アンの復讐号に乗ってアルゴー船に向かう。

 

アンリミテッド・ライオ・ホープレイでアルゴー船の上空まで飛び、ZEXALはアルゴー船に飛び乗るとイアソンとメディア・リリィはその存在に驚いた。

 

「なっ!?な、何者だ貴様は!?」

 

「この気配……まさか、敵側のマスターと精霊!??」

 

「「我は絆と希望の英雄、ZEXAL!ヘラクレスは俺/私たちが倒した!!」」

 

「う、嘘だ!ヘラクレスが負けるはずがない!」

 

「こいつを見てもか?」

 

「来い、ホープレイ!」

 

ZEXALが呼ぶと上空から大剣と雷神猛虎剣と風神雲龍剣を仕舞ったアンリミテッド・ライオ・ホープレイが腕を組んで威風堂々と降りてきた。

 

そのヘラクレス以上の力の波動を放ち、神をも打ち倒すその姿に戦う力を持たないイアソンは震え上がった。

 

「ばば、馬鹿な……こんな事、ありえない!」

 

「イアソン様、どうなさいますか?降伏は不可能、撤退も不可能、私は治癒と防御しか能のない魔術師。さあ、いかがいたしましょう?」

 

「うるさい、黙れッ!妻なら妻らしく、夫の身を守ることを考えろ!」

 

いや、普通逆じゃね?夫が妻を守るもんだろうと、ZEXALの中の遊馬はそう言いたかったがグッと押し黙った。

 

「ええ。もちろん考えています、マスター。だってそれがサーヴァントですものね」

 

「っ……なんだその顔は。なんだってまだ笑っている!お前、この状況がわかっていないのか……!?」

 

「あー、イアソン。夫婦喧嘩をしている時に悪いんだけどさ、エウリュアレを契約の箱に捧げるとこの世界が滅びるって知ってるのか?」

 

遊馬はイアソンに契約の箱について知っているのかと尋ねるとイアソンは衝撃を受けたように表情が固まった。

 

「ーーなんだと?そんな馬鹿な!?あれは私に無限の力を与えてくれるもののはずだ!」

 

「嘘じゃねえよ。契約の箱を持つサーヴァント、ダビデから直接聞いたんだ。何ならもうすぐここに来るダビデから聞いてみるか?だいたい、そんなデタラメな情報は誰から聞いたんだ?」

 

「……メディア?今の話は……嘘だよな?神霊を契約の箱に捧げれば無限の力が与えられるのだろう?だって、あの御方はそう言って……」

 

「「……あの御方?」」

 

ZEXALはイアソンの言う『あの御方』に今は亡きレフと同様の存在がいるのかと推測する。

 

すると今度はメディア・リリィが衝撃的な発言をする。

 

「はい、嘘ではありません。だって、時代が死ねば世界が滅ぶ。世界が滅ぶということは、敵が存在しなくなる。ほらーー無敵でしょう?」

 

いとも簡単にあっさりと恐ろしいことを言うメディア・リリィに言われた本人のイアソンだけでなくZEXALやアルゴー船に近づいたマシュ達も驚く。

 

「お、お前。お前たち、俺に、嘘をついたのか?それじゃあ何の意味もない!俺は今度こそ理想の国を作るんだ!誰もが俺を敬い!誰もが満ち足りて、争いのない、本当の理想郷を!これはそのための試練じゃなかったのか!?俺に与えられた、二度目のチャンスじゃなかったのか!?」

 

「……それは叶わない夢なのです、イアソン様。だってアナタなかさ為し得ない。アナタは理想の王にはなれない。人々の平和を願う心が本物でも、それを動かす魂が絶望的に捻れている。アナタは、アナタが望む形で夢を叶えてはいけないのです。本当に欲しかったものを手にした途端、自分の手で壊してしまう運命を思い知るだけだから」

 

メディア・リリィは成長したメディアと同じくイアソンの事を熟知しており、決して理想の王になれないと同じ答えを出した。

 

「なに……何を言う、魔女め!鄙びた神殿にこもっていただけの女に何が分かる!王の子として生まれながら叔父にその座を奪われ、ケンタウロスの馬蔵なんぞに押し込まれた!その屈辱に甘んじながら才気を養い、アルゴー船を組み上げ、英霊たちをまとめ上げた!この俺のどこが!どこに!王の資格がないと言うのだ!?俺は自分の国を取り戻したかっただけだ!自分だけの国が欲しかっただけだ!それの何が悪いと言うのだ、この裏切り者がーー!」

 

結果、二人のメディアに否定されたイアソンは癇癪を起こしたように自分の気持ちの全てを吐き出した。

 

イアソンは本当に王になりたかったのだと必死さが伝わるが、メディア・リリィは淡い笑みを浮かべて静かに近づく。

 

「……残念です。私は召喚されて以来、ずっと本当のことしか言っていませんでした。私は裏切られる前の王女メディア。外に連れ出してくれた人を盲目的に信じる魔女。だから彼の王に選ばれてしまったアナタを、こうしてお守りしてきました。全て本当です、全て真実です……多少の誤解は、あったかもしれまさんけど。例えば、今しがた守ると言ったでしょう?どうやって守るかと言うとーー」

 

そして、メディア・リリィはイアソンの胸に手を突っ込んだ。

 

「えっ?」

 

「こうやって、です」

 

イアソンの体から聖杯を無理矢理取り出し、メディア・リリィの持つ願いを叶え始めた。

 

「なっ!おま、お前!?やめろ!何する!ひっ、やだっ、からだ、とけるっ……!!」

 

イアソンの美男子の姿が歪みだし、まるで火で炙った人形のように溶け出した。

 

「何をしているんだ!!?」

 

「メディア!止めろおっ!!」

 

ZEXALやサーヴァント達がメディア・リリィを止めようとしたが、イアソンの体から無数の衝撃波が放たれ、近づくことができなかった。

 

そして、メディア・リリィの強い願いが聖杯を使って何かの召喚の呪文を唱えた。

 

「聖杯よ。我が願望を叶える究極の器よ。顕現せよ。牢記せよ。これに至るは七十二柱の魔神なり」

 

「が、ぎ、が、あ、ぎいいいいいいいいいいいいい!!」

 

イアソンの体が完全に崩れ、闇の波動が解き放たれた。

 

「戦う力を与えましょう。抗う力を与えましょう。共に、滅びるために戦いましょう。さあ、序列三十。海魔フォルネウス。その力を以て、アナタの旅を終わらせなさい」

 

そして、現れたのは……第二特異点でレフが変化した無数の目が集まった大きな柱のモンスターと全く同じ姿の存在だった。

 

「フォルネウス!?フラウロスに続くソロモン七十二柱の魔物だと!??」

 

アストラルはレフのフラウロスに続いてフォルネウスが召喚されたことに驚愕した。

 

そして、イアソンがフォルネウスの依代にされたことにメディアは口を押さえて震えていた。

 

「なんてことを……」

 

メディアはイアソンの事を憎んでいたが、まさか幼き日の自分が魔神の依代にしてしまうとは思いもよらなかった。

 

「……止めなければ」

 

自分の過去の存在とはいえ自分自身には間違いない。

 

メディアはメディア・リリィの暴走を止めるために魔力砲撃を放ち、フォルネウスを攻撃する。

 

メディアの攻撃にサーヴァント達も攻撃を開始し、ZEXALもデッキからカードをドローする。

 

「「俺/私のターン、ドロー!モンスターをセットし、アンリミテッド・ライオ・ホープレイで攻撃!」」

 

アンリミテッド・ライオ・ホープレイは大剣と雷神猛虎剣と風神雲龍剣を構えてフォルネウスに向かって突撃する。

 

しかし、フォルネウスの体から無数の小さな魔物が現れ、アンリミテッド・ライオ・ホープレイの行動を止められてしまった。

 

そして、裏守備でセットされていたモンスターが攻撃され、表側にリバースされると不気味な顔が中に宿る壺のモンスターだった。

 

「「メタモルポットのリバース効果!このカードがリバースした場合、手札を全て捨ててデッキからカードを5枚ドローする!」」

 

それはデッキから一気にカードを5枚ドローすることが出来る貴重なドロー効果を持つメタモルポットであり、ZEXALの手が金色に輝く。

 

「「クインタプル・シャイニング・ドロー!」」

 

シャイニング・ドローで手札に加えた5枚のカード、それはこの海が広がる世界で最も適した2枚のナンバーズを召喚する。

 

「「俺/私のターン、ドロー!『セイバー・シャーク』を召喚!更に手札から『サイレント・アングラー』を特殊召喚!セイバー・シャークの効果、フィールドの魚族モンスターを選択し、レベルを一つ上げるか下がることが出来る!この効果を二度使い、魚族のセイバー・シャークとサイレント・アングラーを共にレベル4から5にする!」」

 

海から飛び出すように現れたセイバー・シャークとサイレント・アングラーのレベルが5となり、ZEXALは右腕を高く上げて叫ぶ。

 

「「水属性レベル5のセイバー・シャークとサイレント・アングラーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」」

 

セイバー・シャークとサイレント・アングラーが光となって再び海の中に潜り、光の爆発を発生させる。

 

「行くぜ、シャーク!」

 

「君の大いなる海の力と共に!」

 

「「現れろ!No.73!カオスに落ちた聖なる滴よ、その力を示し、混沌を浄化せよ!」」

 

海が大きく震え、真っ二つに割れると海底から海を司る巨神が姿を現した。

 

「「『激瀧神(げきろうしん)アビス・スプラッシュ』!!!」」

 

それはバリアン七皇の記憶に関する世界各地の七つの遺跡に眠るナンバーズの一枚で凌牙の真の記憶を呼び覚ますモンスターである。

 

「えっ!?嘘!?父上!??」

 

「いえ、オリオン、あれはポセイドンではありませんよ。少し似ていますが……」

 

アビス・スプラッシュの姿にギリシャ神話の海神・ポセイドンだと実の子であるオリオンは見間違えてしまい、メドゥーサは違うと否定した。

 

事実、アビス・スプラッシュは海の神でもあるので同じ海神であるポセイドンと見間違えても無理はない。

 

「「アビス・スプラッシュで攻撃!ファイナル・フォール!!」」

 

アビス・スプラッシュの持つ鉾を掲げ、海を操るとそのまま大きな津波を発生させてフォルネウスが作り出した魔物を一掃するように押し潰して海の藻屑と化した。

 

諦めずに次々と新たな手を打ち、フォルネウスに立ち向かうZEXALにメディア・リリィは静かに問う。

 

「……どうしてですか?」

 

「ん?何がだ!?」

 

「どうして、あなたたちは抗うのですか?」

 

「決まってるだろう!人類と世界の未来を救うためだ!」

 

「私たちのこの手に全ての未来がかかっている!」

 

「諦めないのですか……?」

 

「諦めているのは、お前の方じゃないか!!」

 

メディア・リリィの問いに対し、ZEXALは指差しながら指摘する。

 

「な、何の話をしているのですか……?」

 

「俺はお前が何かに敗れる夢を見た……その何かは分からないけど、とてつもない大きな闇の力を感じた。お前はそれに敗れて絶望したんじゃないか?だから、イアソンを嗾けて一緒に世界ごと消えようとしたんじゃないのか?」

 

「っ!それは……あなたが彼と対峙してないからそう言えるのです……」

 

メディア・リリィはその時のことを思い出すように体が震えていた。

 

それほどメディア・リリィにとって強大な敵だったと感じ取ったがZEXALだが、ZEXALも似たような経験を何度もして来た。

 

だからこそ、断言して言えることがある。

 

「俺たちはメディアと戦ったそれを直接見た事ないから何とも言えない。だけどな、そんな俺たちにも断言できることはある!!」

 

「例え敵があまりにも恐ろしく、強大で、私たちに絶望的な状況を作り出そうとも、その中にある1%にも満たない奇跡と希望……それが私たちに勝利をもたらして来た!」

 

「絶望に叩き落とされても、俺たちは何度だって諦めずに立ち上がる!それが俺たちの世界と人類の未来を救うために示して来た答えだ!」

 

絶望を与える敵が現れても希望という名の光をその手に掴んできた。

 

ZEXALはその言葉を叫ぶようにメディア・リリィに言い放つ。

 

「「それが俺/私の、かっとビングだ!!!」」

 

希望の光を司るZEXALの体から眩い聖なる光が溢れる。

 

「かっと、ビング……?」

 

その光を浴びたメディア・リリィはその言葉を呟いた。

 

「「俺/私のターン、ドロー!相手フィールドにモンスターが2体以上いる時、『パンサー・シャーク』をリリース無しで召喚!更にパンサー・シャークがフィールドに存在する場合、手札から『イーグル・シャーク』を特殊召喚出来る!」」

 

海から二頭一対の黄色と赤色の二頭の鮫、パンサー・シャークとイーグル・シャークが現れる。

 

そして、レベル5である2体の水属性モンスターを使い、アビス・スプラッシュと対をなすナンバーズを呼び出す。

 

「「水属性レベル5のパンサー・シャークとイーグル・シャークでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」」

 

パンサー・シャークとイーグル・シャークが光となって海底に吸い込まれて光の爆発が起きる。

 

「兄貴のシャークに続いて妹のイモシャも一緒に……行くぜ、璃緒!」

 

「神代兄妹の力を今ここに集結させる!」

 

ZEXALの左右に強い絆で結ばれた双子の兄妹、凌牙と璃緒の二人の幻影が現れる。

 

二人は微笑みかけながらポンとZEXALの肩に手を乗せて静かに消えた。

 

「「現れろ、No.94!氷の心纏し霊界の巫女、澄明なる魂を現せ!」」

 

海が氷河のように一気に凍り出し、大きなヒビが割れると中からアビス・スプラッシュと同じ大きさの巨人が姿を現わす。

 

「「『極氷姫(きょくひょうき)クリスタル・ゼロ』!!」」

 

それは氷のドレスを身に纏った怪しくも美しい麗しの美女だった。

 

「うひょー!?でっかいけど素敵な美女キター!?」

 

「い、いやいや、確かに美しいが流石に大きすぎやしないか……?」

 

黒髭はクリスタル・ゼロの美しさに一目惚れしたが、ダビデはあまりの大きさに顔が引きつっていた。

 

「「このターンで決める!アビス・スプラッシュの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、アビス・スプラッシュの攻撃力を二倍にする!!」」

 

アビス・スプラッシュはオーバーレイ・ユニットを鉾に取り込むと、自身の力を二倍に高めた。

 

「「続いてクリスタル・ゼロの効果!オーバーレイ・ユニットを使い、フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分にする!クリスタル・ゼロのオーバーレイ・ユニットを二つ使い、フォルネウスの攻撃力を四分の一にする!クリスタル・イレイザー!!」」

 

クリスタル・ゼロは二つのオーバーレイ・ユニットを剣に取り込ませて波動を放つと、フォルネウスの攻撃力を半分の更に半分、四分の一まで低下してしまった。

 

「「最後に希望皇ホープレイの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、ホープレイの攻撃力を500ポイントアップする!オーバーレイ・チャージ!!」」

 

ホープレイの三つのオーバーレイ・ユニットを大剣に取り込むと、ホープレイの装甲が純白に輝き、攻撃力が更に1500ポイントアップする。

 

「「そして、オーバーレイ・ユニット一つにつき、相手モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる!!」」

 

クリスタル・ゼロの効果で四分の一まで下がり、そこにホープレイの効果で一気にフォルネウスの攻撃力が下がった。

 

それにより、フォルネウスの攻撃力がほぼゼロにまで下がってしまった。

 

「そんな、海魔フォルネウスの力が……!?」

 

フォルネウスは攻撃力がほぼゼロになったことで力を失ったようにヘナヘナになってしまった。

 

「アビス・スプラッシュの攻撃!ファイナル・フォール!」

 

「続け、クリスタル・ゼロ!!!」

 

アビス・スプラッシュが津波を発生させ、クリスタル・ゼロは全てを凍らせる吹雪を起こしてフォルネウスの周囲にいる全ての魔物を破壊した。

 

残るはフォルネウス一体だけとなり、ZEXALは最後のトドメの一撃を命ずる。

 

「「これで終わりだ!アンリミテッド・ライオ・ホープレイで攻撃!!」」

 

アンリミテッド・ライオ・ホープレイの真紅の瞳が輝き、両腕を左右に開くと装備されていた五体のゼアルウェポンが解除されてホープレイの周囲を軽やかに舞う。

 

第三と第四の腕で天に向かって構えた大剣に五体のゼアルウェポンが光となって取り込まれる。

 

「「魔神を斬り裂け!絶望の闇を希望の光に変えろ!!」」

 

ホープレイとゼアルウェポンの全ての力を大剣に込め、大剣の刀身の大きさが何倍にも膨れ上がる。

 

天地を斬り裂くかの如き巨大な大剣と化し、ホープレイは空高く飛んで第三と第四の腕を使って限界まで振り上げる。

 

「「ホープ剣・ファイナル・カオス・スラッシュ!!!」」

 

振り下ろした大剣がファルネウスを一刀両断で真っ二つで叩き切った。

 

ファルネウスは断末魔の叫びを上げる事なく消滅し、依代にされたイアソンが元の姿で現れた。

 

イアソンは消滅間近で息絶え絶えにしながらメディア・リリィを睨みつけた。

 

「メディア……メディア!!」

 

イアソンはまだフォルネウスの力が僅かに残っていたのか、手の中から触手を作り出して伸ばし、メディア・リリィの首を絞めた。

 

「あっ、がっ、かはっ……」

 

「殺してやる……お前だけは、この俺の手で……!!」

 

消滅する前にイアソンは自分の手でメディア・リリィを殺そうとした。

 

そんなメディア・リリィは抵抗もせずに大人しくイアソンの手で殺されることを望んだのか杖を手放して目を閉じた。

 

次の瞬間。

 

ザンッ!!!

 

触手が細切れに斬り裂かれ、解放されたメディア・リリィはその場に座り込みながら目を開けるとそこには……。

 

「あ、あなた……どうして……?」

 

「無事か?メディア」

 

それは両手に雷神猛虎剣と風神雲龍剣を顕現させたZEXALだった。

 

ZEXALはゼアルウェポンをホープだけでなく自らの武器として顕現させることが出来る。

 

雷神猛虎剣と風神雲龍剣で触手を斬り裂き、ZEXALはイアソンを静かに見つめると、イアソンは恐怖で体が震えながら触手を伸ばす。

 

「く、来るな来るなぁっ!」

 

ZEXALは見事な二刀流剣術で雷神猛虎剣と風神雲龍剣を振るい、触手を斬り裂きながらイアソンに近づく。

 

イアソンは後ろに下がり、アルゴー船の船の端に引っかかって海に落ちそうになる。

 

「うっ、うわぁあああああっ!?」

 

ガシッ!

 

間一髪のところで海に落ちそうになったイアソンをZEXALは腕を掴んだ。

 

「大丈夫か?」

 

「別にお前を斬るつもりなんて無いぜ」

 

ZEXALはイアソンを一気に引き上げた。

 

そして、ZEXALは遊馬とアストラルに分かれ、ファルネウスの力を完全に消えて消滅間近で息絶え絶えのイアソンを遊馬が支える。

 

「イアソン、俺さ……お前の事すげえ奴だと思うぜ」

 

「何……?」

 

敵だったはずの遊馬から突然賞賛され、戸惑うイアソン。

 

「最初はメディアを裏切った最低の夫だということしか頭になかったけど、お前のギリシャ神話の物語を見て見方が変わったぜ」

 

昨夜、イアソンの物語をD・パッドで閲覧して遊馬はイアソンの見る印象が変わった。

 

「王座を追われて、アルゴノーツを組織して大冒険を繰り広げて必死に王になろうと努力した。何度もどん底に叩き落とされても立ち上がって前に進もうとしていた」

 

「だが、私は王になれなかった……私はイオルコスの王の子、王になるべき存在だったのに……」

 

「……イアソン、俺には小さい頃から大きな夢があったんだ。デュエルチャンピオン……簡単に言えばこいつを使った戦いの世界王者だよ。でもそんなのなれっこないってみんなからバカにされて来た。応援してくれたのは父ちゃんと幼馴染の小鳥だけだった」

 

遊馬はデュエルディスクとデッキを見せながら説明した。

 

デュエルチャンピオンになろうと幼い頃から努力してきたが、努力が空回りしたり、自分の実力やカードの弱さなどもあり、夢に向かって一歩を踏み出すことができなかった。

 

「だけど、異世界からアストラルが俺のところに来てから全てが変わった。俺は沢山の試練を乗り越えて夢だったデュエルチャンピオンになれたんだ」

 

「それは……その精霊の力が強力だっただけじゃないのか……?」

 

「イアソンよ、それは違う」

 

アストラルはイアソンの言葉を否定して静かに語る。

 

「確かに全てのきっかけは私だ。私のアドバイスや力添えもあるが、遊馬はどれだけ絶望に立たされても何度も立ち上がって全力で立ち向かって来た。そうやって未来を切り開いて来たんだ」

 

「イアソン、人間は誰でも一人で生きることは出来ないんだよ。俺にはアストラルと小鳥……大切な友達、仲間、家族、師匠……沢山の人達のおかげで夢を叶えることができたんだ」

 

「何が言いたいんだ……?」

 

「分からないのか?お前は側にいてくれる人を大切にしなくちゃいけなかったんだ」

 

遊馬は後ろを振り返り、杖を握りしめながら立っているメディア・リリィに目線を向けた。

 

「人と人との繋がり、目に見えないけど絆はとっても強い。だけど、同時にとっても脆いものなんだ。強く結ばれた絆は大きな力を発揮するけど、一度壊れた絆は直すことは難しいんだ……」

 

遊馬は戦いの中で大切な人達の絆の大切さやその有り難さを知っていった。

 

しかし、敵の策略により遊馬とアストラルとの絆が一度壊れかけしまった時、深き闇に呑み込まれてしまった。

 

「お前はメディアとの絆を蔑ろにした。その所為で全てを失った」

 

故郷を追われたイアソンはコリントスという国で王に娘・グライアとの婚姻を持ちかけられ、イアソンは迷いもなくメディアと2人の子供を捨て、グライアと結婚することを決める。

 

泣き縋るメディアにイアソンは今までの悲劇を全てメディアを所為にし、更に愛していないと切り捨てた。

 

そして、裏切られたメディアは魔女と呼ばれ、コリントスの全てを滅ぼしてしまった。

 

「お前は知るべきだった、理解するべきだったんだ。絆の大切さを、自分の強さと弱さを。そして……自分の側にいてくれたメディアの事を……」

 

遊馬の言葉はイアソンの心に深く突き刺さった。

 

イアソンは目を閉じて生前の行いを思い出す。

 

走馬灯のように脳裏に次々と流れていく記憶。

 

あの時こうしていれば、ああしていればと後悔が溢れてくる。

 

「全く……君はお節介にもほどがある。私に説法するなんてな……」

 

「俺はそんなつもりは……」

 

「だが、もう遅い……何もかも遅いんだ……私は一度死に、この世界でも王になれない……あとは消えるだけだ」

 

「なあ、イアソン。そんなに未練があるなら、俺たちの世界に来るか?」

 

「君の、世界……?」

 

「ああ。俺は異世界から来たんだけど、そこで世界を冒険したらどうか?人生に迷っているなら、見聞を広めれば何か答えが見つかるかもしれないぜ?その時は俺も冒険に同行するからさ」

 

遊馬はイアソンと一緒に冒険をしてみたくなった。

 

イアソンは船を操る航海技術は超一流と謳われており、イアソンの力があれば世界一周も七つの海も航海も可能である。

 

「異世界か……それも面白そうだ」

 

「じゃあ……」

 

「だけど、遠慮しておくよ」

 

「えっ!?」

 

イアソンは静かに立ち上がり、遊馬から離れるように下がった。

 

「敗者は静かに消えるだけだ……君の隣に私は似合わない……」

 

「お、おい!イアソン!」

 

「さらばだ、異世界の勇者……」

 

イアソンはアルゴー船を背中から飛び降りると光の粒子となって消滅していった。

 

フェイトナンバーズが海に落ちる寸前にアストラルが回収する。

 

「イアソン……」

 

「マスター、あなたの所為じゃないわ……」

 

メディアは遊馬の隣に降り立ち、遊馬を慰めるように頭を撫でた。

 

「メディア。だけど……」

 

「イアソンにとって、マスターは眩しすぎたのよ……あなたは太陽のように光り輝いているから……」

 

遊馬の心は太陽のように輝いており、他人を照らすことが出来る。

 

しかし、イアソンにとって遊馬は眩しすぎたのだ。

 

遊馬は自分の手を強く握りしめ、悔しさに耐えると次にメディア・リリィに視線を向けて話しかける。

 

「メディア、お前に何があったんだ?お前を倒した『アレ』は何だったんだ?」

 

「……それを口にする自由を私は剥奪されています。魔術師として私は彼に敗北していますから」

 

メディア・リリィの言葉にメディアは耳を疑った。

 

「ちょっと待ちなさい。サーヴァントとしてではなく、魔術師としてのあなたが負けた……!?成長した私より力が劣るとはいえ、神代の魔術師が負けるなんて……」

 

サーヴァントでは生前よりも力が抑えられているが、メディア・リリィは魔術師としての力が100パーセントの状態で戦っていた。

 

神代の魔術師であるメディアは相当強力な魔術を使うことが出来るが、そのメディア・リリィが対峙した相手はそれ以上の存在ということだ。

 

メディア・リリィは遊馬に忠告と助言を与える。

 

「ええ。どうか覚悟を決めておきなさい、遠い時代の、最新にして最後の魔術師たち。アナタたちでは彼には敵わない。魔術師では、あの方には絶対に及ばないのです。だから……星を集めなさい。いくつもの輝く星を」

 

「星……英霊、サーヴァントの事か?」

 

「どんな人間の欲望にも、どんな人々の獣性にも負けない、嵐の中でさえ消えない、宙を照らす輝く星を……」

 

それは遊馬がこの先、様々な特異点で出会うサーヴァント達と絆を結び、強大な敵に立ち向かうための輝く星を集めるという事である。

 

「じゃあ、その星の一つにあんたもなってくれるか?」

 

遊馬はその星の内の一つを集めるためにメディア・リリィを誘う。

 

「私を、ですか……?敵としてアナタ達に刃を向けた私を……?」

 

「お前は負けて絶望したんだよな?だったら、メディア。俺がお前の希望の光になる」

 

「あなたが……私の希望の光に……?」

 

「俺は、いや……俺達は必ずそいつに勝つ!勝って人類と世界の未来をこの手に取り戻す!」

 

「自信があるのですか、本当に出来るのですか?アナタ方に……」

 

「出来るさ!俺達には無限の可能性がある。今までだって絶望的な状況を何度も潜り抜けてきた。例えどんな絶望が襲い掛かってこようとも、俺達は必ず立ち上がって前に進む。だから、もう二度とお前に絶望なんかさせない。約束だ!」

 

遊馬はメディア・リリィに手を差し伸べて満面の笑みを浮かべる。

 

「私は……裏切られるのは嫌です。だから、裏切らないでくださいね……」

 

「俺は絶対に仲間を裏切らない。だけど、もしも万が一に俺が裏切ることがあったら、俺を容赦なく魔神にしてもいいぜ」

 

裏切ったら自分を化け物にしても構わないと誓い、メディア・リリィは遊馬のその言葉を信じて手を伸ばした。

 

「成長した私が共に戦う理由が少しだけ、分かった気がします……」

 

メディア・リリィは遊馬の手を取り、二人は契約を交わしてフェイトナンバーズを生み出す。

 

その直後にメディア・リリィは最後に笑みを浮かべながら消滅し、聖杯を残して行った。

 

こうして……この世界の特異点の戦いが終わりを迎えるのだった。

 

新たな謎を抱えながら遊馬達はこの世界に別れを告げる時が来た。

 

 

 

.




イアソン綺麗すぎましたかね?
一応ベクターの最後の時をオマージュしてみたんですが。
メディア・リリィさんは遊馬先生に攻略されました(笑)
年齢も近いし良いかなと思いまして。
ヤンデレにサイコパス・・・・・・遊馬先生も大変です。

次回はエピローグと空の境界イベントの開幕です!
あの式さんをどう表現するか難しいんですよね。
あの人、ツンツンして素直じゃないから天真爛漫な遊馬と色々起こりそう(笑)

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