Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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空の境界編のシリアスパートです。
遊馬の光で彼女を救えるのか!?
今回は時間がなくて大変でしたがなんとか書けました。


ナンバーズ56 憎悪の闇を照らす未来の光

遊馬達は謎のサーヴァント・両儀式の道案内でカルデアのサーヴァント達がいると思われる謎のマンション、オガワハイムに突入した。

 

オガワハイムは死を蒐集しようとしたとある魔術師が作り出した建物。

 

あらゆる『死に方』を求めて飾った展覧会と称され、このマンションの元住人が死んでゾンビとして徘徊していた。

 

アストラルがサーヴァントの気配を辿りながら遊馬達は静かに進む。

 

「ちっ……何だよこのマンション……何でこんなもんを作ったんだよ……」

 

遊馬はこのマンションを作った魔術師に対して強い怒りを抱いた。

 

「オレも詳しくは知らないが、奴は死を……人という存在を知ろうとしていた。そして、こいつを使って『何か』を手に入れようとしていた」

 

「何だよ、その何かって……」

 

「知るか。だが安心しろ、その魔術師はもうこの世にはいない。オレが『殺した』」

 

「……そうか」

 

「両儀式よ。その魔術師が今回の主犯の可能性は無いか?」

 

「……無いと思う。あいつと戦ったが、サーヴァントを引き寄せる力は無いはずだ」

 

「では誰がみんなを……」

 

アストラルはこのマンションを作った魔術師が今回の事件の主犯かと考えたがまだ情報が少なすぎる。

 

「なぁ、式。ここのゾンビのみんな……ちゃんと成仏してるのかな……」

 

「さぁな。流石にこの眼で魂を見ることはできないからな」

 

「……分かった」

 

遊馬は背中にある原初の火をソードホルダーから引き抜いて持つ。

 

「アストラル、マシュ……悪い。一緒に背負ってもらうことになるけど、良いか?」

 

「当たり前だ。私は君と一心同体。君の罪も一緒に背負おう」

 

「私もです。遊馬君と共にどこまでも行きます」

 

遊馬は原初の火を構え、マシュは盾を構え、アストラルは左手首にデュエルディスクを展開する。

 

「悪いな……理不尽な死を迎え、尚動き続ける亡者達。俺たちの大切なものを取り戻すために、そこを押し通らせてもらう!!」

 

遊馬達は廊下を駆け抜け、徘徊して襲いかかるゾンビ達を倒して先に進む。

 

その姿を見て式はナイフでゾンビを斬り裂きながら驚いた。

 

「相当な場数を潜ってきたみたいだな……覚悟がガキのものとはまるで違う」

 

十三歳の少年とは思えないその強き覚悟に式は思わずニヤリと笑みを浮かべた。

 

「面白い……もっとお前という存在を見せてくれよ」

 

式は九十九遊馬という存在に興味を抱いていくのだった。

 

 

遊馬達はゾンビ達を退き、シラミ潰しに部屋を開けて中を確認して行く。

 

中には知らないサーヴァントが何故か住み着いており、この不気味なマンションの影響なのか……何処か性格がおかしくなっていた。

 

それはノッブの異変の時に召喚された謎のサーヴァント達が性格がおかしくなっていたのと似た状況になっていた。

 

「行くぜ……アストラル!マシュ!」

 

「ああ!!」

 

「はいっ!」

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊馬はアストラルとマシュと共にサーヴァント達を倒して行く。

 

希望皇ホープを始めとするナンバーズにマシュのフェイトナンバーズを駆使してサーヴァント達を倒していく。

 

「なんだこれは……」

 

式は遊馬の繰り出すモンスター達を見て今までにないほど困惑した。

 

今まで直死の魔眼で多くのものを見てきたが、どれも例外はなく死の線を見てきた。

 

しかし、モンスターたちには死の線が存在していなかった。

 

何故死の線が無いのか式には理解できなかったが……そもそもモンスターは生きているのか?

 

モンスターはここには存在しないものなのか?

 

そんな考えを巡らせるが答えは一向に見つからない。

 

「考えても仕方ないか……」

 

式は頭を振って考えるのをやめて遊馬たちの後を追う。

 

「遊馬、次はこの部屋だ!」

 

「おっしゃあ!どんどん行くぜ!お邪魔しまーす!!」

 

遊馬は次の部屋を勢いよく開けて中に入るとそこには……。

 

「や。こんばんは、遊馬、マシュ、アストラル。私の部屋にようこそ」

 

「ブーディカ……?」

 

部屋には行方不明だったブーディカがおり、今まで見た部屋とは違い、とても綺麗だった。

 

「もしかして迎えに来てくれたの?それはありがとう。でも、もう、ダメだよ、呼び鈴も押さずに入ってくるなんて。そこはちゃんと叱っておくからね、お姉さんとして」

 

ブーディカはいつものように大人の女性として、お姉さん代わりとして遊馬達を叱るのだった。

 

「え?あ、その……ごめんなさい……」

 

「遊馬くん、良かったです!ブーディカさんは変質していません!いつもの、頼りになって、優しくて、それで、抱きしめられるとほわっとするブーディカさんでした!」

 

マシュはブーディカの性格が変わっておらず、いつものように優しい姿でとても喜んだ。

 

「え?なに、やだなあマシュったら。私、そんなにハグばっかりするハグ魔だった?」

 

「いやいや、少なくともマシュに会う度にハグしているじゃん」

 

「私の知る限り、マシュがカルデアにいる時は一日一回、必ずハグをしているな」

 

マシュにこれでもかと沢山ハグをする自覚がないブーディカに遊馬とアストラルが冷静にツッコミを入れた。

 

「そ、そうかな?まあいいや。ちょうどシチューを作ってたところなんだ。みんな食べて行って」

 

「おう!それじゃあ、シチューを食ったらカルデアに帰ろうぜ。みんな心配しているからさ」

 

「ええ!なんならブーディカさんを送るため、一旦帰還してーー」

 

無事にブーディカをカルデアに帰せると思ったその時だった。

 

「ーー帰る?何を言っているの?」

 

ブーディカの口から予想外の言葉が発せられ、今さっきまでの優しい雰囲気が一変した。

 

「っ!アストラル……」

 

「ああ。気をつけろ、遊馬……」

 

遊馬とアストラルはブーディカの豹変にいち早く気づいてマシュと式と一緒に後ろに下がる。

 

すると、ブーディカの姿が光に包まれると今までと違う姿へと変わっていた。

 

赤い髪が綺麗に伸びてその頭には王を象徴する王冠が被っており、更にはマントを羽織って盾が左手に装着されていた。

 

「ブーディカの姿がめちゃくちゃ変わってる!?髪が伸びてるし、服装も違う!?」

 

「もしかしてあれはブーディカの全盛期の姿なのでは……?」

 

「勝利の女王……ブーディカさん……」

 

ブーディカの姿がおそらく全盛期の姿へと変わり、そんなブーディカの体から漆黒の闇が漂っていた。

 

「ふざけた事を言わないで。帰る、ですって?私は帰らない。私に帰る場所なんてない。だってーー全部、お前達が奪ったんだ!あの人の親族は私達だけだった。王には、私と娘しかいなかった!だから私は後を継いだのにーー女には相続権がないと言ってーーお前達が!ローマ(お前達)が、私から奪ったんだ!!」

 

それは……ブーディカの心に抱いた深い闇だった。

 

ローマ帝国はブーディカが治めていたブリタニアの全てを奪い、ブーディカと娘二人にあまりにも酷い仕打ちをしたのだ。

 

それによりブーディカはローマへの深い憎悪を抱いており、オガワハイムに囚われた影響で一人の『復讐者』へと成り代わっていた。

 

ブーディカの事を知らない式は何のことだと疑問に思うがそんなことは関係ないとナイフを構える。

 

「相当あの女の闇は深そうだな……何があったか知らないが、斬るしかないな」

 

式は自分がブーディカの相手になろうと遊馬達の前に出ようとしたその時だった。

 

「待て、式」

 

遊馬はホープ剣を作り出して式を遮った。

 

「何のつもりだ?」

 

「悪いけど、ブーディカは俺がやる」

 

「良いのかよ。あいつはお前の仲間で、しかもかなりの手練れだ。お前が太刀打ちできるのか?」

 

「俺はブーディカを斬るつもりはない。ただ、約束したからさ」

 

「約束?」

 

「ああ。ブーディカに再び復讐の心が芽生えたら俺が止めるってね。だから……俺が止める」

 

右手に原初の火、左手にホープ剣を持って静かに前に出る。

 

原初の火を見た瞬間、ブーディカの憎しみの込もった瞳が更に鋭くなる。

 

「それはネロの剣……許さない……ローマを、ネロを……絶対に許せない!!!」

 

ブーディカは遊馬の持つ原初の火が元々ネロの所有していた剣だということもあり、更に憎悪と闇がこみ上げる。

 

「私は忘れていた。人類史を守る、なんて大義名分で誤魔化していた。この怒りを。憎しみを。この復讐をーー!」

 

「ブーディカ、今こそ約束を果たす……俺が必ず、あんたを止める!」

 

「邪魔するな……私の邪魔をするものは誰だろうと許さない。勝利の女王の名の下に、その首を晒すがいい……!」

 

ブーディカはカルデアのサーヴァントではなく、かつてローマ帝国を震撼させた勝利の女王として遊馬に襲いかかる。

 

「はぁっ……ふっ!」

 

遊馬はブーディカの怒気に圧倒されないように冷静で心を強く持ちながら二本の形の異なる剣を振るい、ブーディカの剣を受け止める。

 

ブーディカはアルトリアの約束された勝利の剣と細部が似ている片手剣の『約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディカ)』で荒々しい剣を振るう。

 

そんなブーディカの剣を見て式は呟いた。

 

「あの女……相当な数の人を殺しているな」

 

「式、さん……?」

 

「分かるのか……?」

 

「ああ。あの怒り狂った剣は復讐で全てを斬りふせる……そんな風に感じ取れる。おい、もしもの時は俺が相手をする。お前達はあいつを守る準備だけしておけ」

 

式はナイフを持っていつでも前に出られるようにする。

 

しかし、いつまで経ってもブーディカは遊馬に傷一つ付けることができなかった。

 

遊馬は見事な二刀流でブーディカの剣を受け止め、更には受け流していた。

 

「それにしても……あいつ、扱いが難しい二刀流をよくもあそこまで使えるな」

 

「当たり前だ。遊馬は日本最強の二刀流剣豪、宮本武蔵から指導を受けているからな」

 

「っ!?宮本武蔵だと!?カルデアにはそんなビックネームなサーヴァントがいるのか!?」

 

式は日本人なら誰もが知っている二刀流の大剣豪、宮本武蔵がカルデアにいてしかも遊馬が武蔵直々に二刀流を教わっていることに驚愕した。

 

遊馬はブーディカを攻撃せず、ひたすら守りに徹底していた。

 

しかし、いつまでも守っていたのではブーディカの怒涛の攻めに必ず負けてしまう。

 

何かブーディカを取り戻すための方法がないかと必死に頭の中で考え続ける。

 

「これで終わらせる!『約束されざる勝利の剣』!!」

 

ブーディカが約束されざる勝利の剣を輝かせると、刃から魔力塊が放たれて次々と連射していく。

 

「ヤベッ!?」

 

遊馬は必死に魔力塊を斬り落としていくが、間に合わず全身にまるで無数のボールを叩きつけられたように魔力塊が襲い掛かった。

 

「くっ……」

 

「これで終わりだ!!」

 

「遊馬くん!」

 

「遊馬!」

 

「くっ、させるか!!」

 

マシュとアストラルと式が剣を振り下ろしたブーディカを止めるために駆けたーーその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めよ、ブーディカ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊馬の目の前に赤い影が現れ、ブーディカの剣をその身に受けた。

 

その影を見て遊馬は目を見開いて驚愕した。

 

「ネ、ネロ……?」

 

それはカルデアにいるはずのネロだった。

 

ネロは真正面からブーディカの剣をその身に受け、肩から腹部にかけて大きく斬られて大量の血を流す。

 

そして、斬られて全身の力を失ったネロはそのまま後ろに倒れこんで遊馬が受け止める。

 

「お、おいっ!?ネロ!ネロ!!?」

 

「ネロ……?なんで、あんたがここに……?」

 

ブーディカも宿敵であるネロが突然現れて自ら斬られたことに驚いてそのまま呆然としてしまった。

 

ネロはブーディカの豹変に居ても立っても居られず、みんなの制止を振り切って現れたのだ。

 

ネロは致命傷の傷を負いながらもギリギリ意識を保ち、ブーディカに話しかける。

 

「ブーディカよ……もう止めるのだ。余の首をくれてやる……だから、ユウマたちを傷つけるな……」

 

「ネロ、お前、何を言ってるんだ!?」

 

「余が……余が不甲斐ないばかりにブーディカ達を傷つけてしまった……」

 

ブーディカ達の全てを奪った者たちは皇帝であるネロの意思ではなく、その領土を納めていた者たちによる独断で行われていた。

 

それはローマ帝国が強大で更には伝統的な支配体制の所為でこのような悲劇が起きてしまった。

 

そして、ネロは反乱の鎮圧後にその真実を知り、激怒して彼らの行いを容赦なく処断した。

 

仮にネロとブーディカが生前にあっていれば悲劇が起こらなかったかもしれないのだ。

 

「それに……我が愛しの夫のユウマと、友のマシュが心から慕っているブーディカのそんな姿をこれ以上見せたくないのだ……」

 

ネロは立ち上がって両腕を大きく開いて全てを受け入れるように目を閉じる。

 

「さあ、余の首をその剣で斬るがいい!そしたら、必ずユウマ達の元に戻ってくるのだぞ!」

 

「あ、あっ……あぁあああああああああっ!!!」

 

己の死を覚悟したネロにブーディカは剣の柄が壊れるほど強く握りしめ、首を斬り落とすために振り下ろした。

 

ガキィン!!

 

「っ!?お前……」

 

ネロの首を斬り落とそうとしたブーディカの剣を原初の火とホープ剣で受け止めたのは遊馬だった。

 

「もうたくさんだ……」

 

遊馬はブーディカの剣を弾き返してそう呟く。

 

「誰かが誰かを憎み、争い傷つける……いい加減にしろよ。そんな事をしても誰も幸せにならない。必ず誰かが傷つき、誰かが不幸になる……」

 

遊馬の瞳から涙が溢れ、今までの戦いで経験してきた思いを吐き出す。

 

「それが、俺の大切な仲間なら尚更それは嫌だ!もうブーディカにこれ以上、ネロを憎ませない、傷つきさせない!俺のこの手で、ブーディカを取り戻す!!」

 

「邪魔するな!ネロの首を寄越せ!!」

 

ブーディカは剣を振り下ろすが、遊馬はホープ剣と原初の火で受け止めて剣を床に押さえつける。

 

そして、ブーディカの間合いに入って胸倉を掴んで頭を振り上げる。

 

「少しは頭を……冷やせ!!」

 

ゴチィン!!

 

遊馬はブーディカの額に強烈な頭突きをかましてその衝撃で二人は同時にふらつく。

 

「っ、小癪な……」

 

「へへっ、どうだ……頭の血が抜けて少しは落ち着いたかよ?」

 

強い頭突きの衝撃で遊馬とブーディカの額から血が流れる。

 

「アストラル!今のうちにネロの傷を治してくれ!」

 

「あ、ああ!」

 

アストラルは回復系のカードを使用して傷ついたネロを癒していく。

 

「何でこんな回りくどい事をする……お前の魔物を使えば楽に戦えるはずなのに……」

 

遊馬のフィールドには希望皇ホープがいるが、今は希望皇ホープの姿は見えない。

 

それは遊馬が下がらせているからであり、ブーディカはそれを疑問に思う。

 

「バーカ、大切な仲間に向かって本気で刃を向ける訳がないだろ。これは俺の大切な仲間を取り戻す戦いなんだからさ」

 

「だから、私はもう……」

 

「ブーディカに居場所が無いんだったら俺が居場所になる」

 

「えっ……?」

 

闇に囚われたブーディカは遊馬の言葉に呆然とした。

 

遊馬は涙と血を拭い、強い意志を秘めた瞳でブーディカを見つめる。

 

自分を真剣に真っ直ぐ見つめる遊馬の瞳にブーディカはたじろいでしまう。

 

「ブーディカの心にまだ闇が潜んでいるなら、俺がブーディカの闇を照らす光になる!必ず、俺が守ってやる!!」

 

「ひ、必要ない……私にはもう大切なものは何もない……!」

 

「俺にとって、仲間は家族同然の存在だからな。それに……俺さ、強がってるけど家族にすげえ会いたいんだ。アストラルと小鳥がいるけど、やっぱり父ちゃんと母ちゃん、姉ちゃんと婆ちゃん……みんなと一緒にいたい、抱き締めてもらいたいって思ってる」

 

遊馬はこれまで特異点で数多の戦いを繰り広げて来たがそれでもまだ十三歳の少年である。

 

両親が行方不明となり、親に甘えたい年頃でもある遊馬が突然異世界で壮大な戦いに巻き込まれている。

 

どんなに強がっていても不安になるのは仕方のない事である。

 

「だけど、ブーディカのお陰でその寂しさがいつも埋まってるんだ。ブーディカといると心が温かくなって、すげえ安心するんだ。迷惑かもしれないけど、ブーディカは俺にとってもう一人の母ちゃんみたいな大切な人なんだ!!」

 

遊馬はブーディカを母のように想っていた。

 

母性溢れるブーディカの優しい雰囲気が遊馬の母、未来にそっくりだったからである。

 

しかしブーディカを慕っていたのは遊馬だけではなかった。

 

「私もです!」

 

「マシュ……」

 

マシュは遊馬の隣に立ってブーディカを見つめる。

 

自分の胸元を握りしめてブーディカへの気持ちを全て話す。

 

「私には両親と呼べる存在はいません。親しい人はドクターだけしかいませんでした。だから、初めてでした……ブーディカさんに抱き締められて、心が温かくなって嬉しかったんです。もしも、私に一緒にいてくれるお母さんがいたらこんな気持ちなのかなと思っています……」

 

「マシュ……あなた……」

 

「私は、ブーディカさんが大好きです!だから、お願いです!私たちの元に戻って来てください!!」

 

遊馬とマシュの光のように温かい言葉……それはブーディカの心を優しく照らしていた。

 

「遊馬……マシュ……ぐっ、あっ、あぁああああああっ!??」

 

しかし、ブーディカに宿る闇が再び精神を侵食して復讐者へと引き戻していく。

 

「ブーディカ!?」

 

「ブーディカさん!!」

 

「オガワハイムの闇がブーディカに侵食している……ハッ!!」

 

このままではブーディカの心が壊れてしまう、そう危惧したアストラルは頭をフル回転させて打開策を見つける。

 

「そうか!遊馬、すぐにこのフィールドを無効にするんだ!!」

 

「フィールドを!?」

 

「オガワハイムは死を蒐集する為に作られた。人を死へと促す為に、人の心を負へと促す力が働いているとしたら!」

 

「そうか!それなら、あのカードをドローするしかない!!」

 

遊馬は原初の火とホープ剣を床に突き刺してデュエルディスクを構え、希望皇ホープが現れると同時に右手を掲げる。

 

「このドローに……全てを賭ける!!」

 

遊馬の右手から眩い聖なる光が輝き、その光に誰もが一瞬目を瞑ってしまう。

 

「この光は……まさか!?」

 

「ちっ、何だよこの光は……」

 

マシュはこの光の正体に気付き、式は突然遊馬の右手が輝くことに困惑する。

 

遊馬の右手の輝き、それは……希望を引き寄せ、未来をその手に掴む光である。

 

「行くぜ、ブーディカ!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!シャイニング・ドロー!!」

 

遊馬はデッキトップを輝かせ、思いっきり力強くカードをドローして天に掲げる。

 

それは遊馬とアストラルの融合体・ZEXALが使える究極の力、シャイニング・ドローだった。

 

「来たぜ、俺は『RUM(ランクアップマジック) - ヌメロン・フォース』を発動!」

 

「ヌメロン、フォース!?」

 

それは遊馬が使用するマシュ達も見たことない新たなランクアップマジックで、そのイラストには過去・現在・未来の運命を決める神のカード……ヌメロン・コードが描かれていた。

 

「このカードは自分フィールド上のモンスターエクシーズ1体を選択して発動!選んだモンスターと同じ種族でランクが1つ高い『CNo.』と名のついたモンスターエクシーズ1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねて、エクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する!俺はランク4の希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

希望皇ホープが光に包まれ、光の爆発が起きると同時に赤黒い『39』の刻印が輝き、数多のパーツが現れる。

 

「現れろ、CNo.39!希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!」

 

数多のパーツが希望皇ホープに装着され、勝利をその手に掴む希望皇が降臨する。

 

「『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!」

 

『ホォオオオオオオープ!!!』

 

希望皇ホープレイ・ヴィクトリーの召喚にブーディカは目を見開く。

 

「希望皇、ホープレイ・ヴィクトリー……」

 

ブーディカは自分の名前が受け継がれている希望皇ホープに自ら信仰している女神・アンドラスタをこの目で見ているような気持ちになっていた。

 

そして遊馬はブーディカを取り戻すためにヌメロン・フォースのもう一つの効果を使う。

 

「ヌメロン・フォースの更なる効果!ヌメロン・フォースの効果で特殊召喚したモンスター以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を全て無効にする!俺はオガワハイムの力を無効化する!!」

 

希望皇ホープレイ・ヴィクトリーの体から青い光の波動が解き放たれ、全ての力を零に戻すようにオガワハイムの邪悪なる闇の力を全て無効にする。

 

「消え去れ、人の心を蝕むオガワハイムの邪悪なる闇よ!!」

 

人とサーヴァントを狂わせるオガワハイムの闇を全て消し去り、そしてその闇に囚われていたブーディカに潜む闇も消滅する。

 

闇から解放されたブーディカはその場に座り込み、正気に戻って自分がしてきたことを深く悔んだ。

 

「……ああ……私……何を……そっか……恥ずかしいところ、見せちゃったな……ユウマとマシュに……いっぱい迷惑をかけて……それに、ネロも……」

 

「……何言ってるんだよ。迷惑かけたぐらいが何だって言うんだ」

 

「私は遊馬やマシュ、それにネロを……ごめんなさい……」

 

ブーディカは仲間であるはずの遊馬達をこの手で傷つけてしまったことを深く自分を責める。

 

そんなブーディカに遊馬はポンと頭に手を乗せて笑みを浮かべる。

 

「仲間は迷惑をかけてなんぼだろ?俺だって、沢山みんなに迷惑かけちまってるからさ。それに……俺は仲間のことを家族同然のように大切に思ってるからさ、迷惑ぐらいなんてことないさ!」

 

「その通りだ!元はと言えば、余がもっとしっかりしていれば……すまない、ブーディカ……」

 

ネロはブーディカに謝罪をしたが、謝罪されてブーディカはどう返したらいいかわからなかった。

 

「ネロ……」

 

「……なぁ、ブーディカ。誰でも心のなかじゃ、良い心と悪い心が戦ってるんだ。でも、そっから逃げ出さなきゃ、きっとどんな事だってやり直せる。誰とだって、分かり合えるんだ」

 

それは遊馬がかつてアストラル世界でエリファスと対決した時に言った言葉だった。

 

やり直せる、誰とでも分かり合える……それは遊馬が目指す理想の未来でもある。

 

「良い心と悪い心……ねえ、遊馬。私……ネロと、分かり合える事ができるのかな……?」

 

ブーディカは気まずそうにネロを見る。

 

そんなブーディカに遊馬は諭すように答えた。

 

「ブーディカ、あくまで俺の目線だけどネロは悪い奴じゃない。ただ、ブーディカの事を考えると、色々不幸が重なっちまったんだと思う。だから、時間はあるんだから、逃げ出さずにしっかりと向き合って、二人でゆっくり話していけば良いと思うんだ」

 

「ねぇ、遊馬……君って本当に十三歳?娘達もこんなに大人びてなかったよ?」

 

遊馬と同じ年頃の娘を持っていたブーディカは思わずそう尋ねてしまった。

 

親子ほどの年の差があるブーディカですらそう思ってしまうほど遊馬が大人びて、そして輝いて見えてしまうのだった。

 

遊馬はそう言われて苦笑を浮かべながら手を差し伸べる。

 

「ブーディカ。今度こそ、帰ろうぜ」

 

「帰りましょう、ブーディカさん。小鳥さんが心配しています。それに、約束したじゃないですか。ブリタニア料理を教えてくれるって」

 

「ブーディカよ、戻ろうではないか……やはり、ブーディカがいないと物足りないからな……」

 

傷がようやく塞がって回復したネロは原初の火を杖代わりにして立ち上がるが、まだ回復し切っていないのでフラついてしまう。

 

倒れかけたネロをブーディカが受け止めた。

 

「……すまぬ」

 

「いいよ……」

 

まだぎこちなさが二人にあるが、遊馬のお陰で少しずつだが距離が縮まっていた。

 

「帰ろっか……カルデアに……」

 

「うむ……」

 

「遊馬、お願い」

 

「ああ」

 

遊馬はブーディカとネロのフェイトナンバーズを出して二人を粒子化させてデッキケースに入れてカルデアに送る。

 

『OK、大丈夫よ。ブーディカとネロは無事に帰ってきたわ。今、ブーディカに異常が無いかロマニとダ・ヴィンチに頼んで検査してもらうから後は任せて』

 

「サンキュー、所長」

 

ブーディカとネロをカルデアにいるオルガマリー達に任せ、遊馬は床に突き刺した原初の火とホープ剣を引き抜く。

 

「何とか、約束を果たせたかな……」

 

「無茶しすぎだ、バカ」

 

ポカン。

 

「痛っ!?」

 

式は無茶をする遊馬の頭を拳骨で軽く殴った。

 

「ったく……一休みしたら次行くぞ」

 

「はーい」

 

「はぁ……ガキのお守りは大変だな。まあ、未那はまだマシな方か……」

 

式は大切な誰かを思い出しながら髪をかき、床に座り込んで休むのだった。

 

 

一方、カルデアの医務室ではブーディカとネロがベッドで休んでいた。

 

治療も検査も無事に終わり、後は休むだけなので二人はベッドで休んでいた。

 

暇なので二人は適当な話をしていると、マスターである遊馬の話となった。

 

「ネロ……」

 

「何だ?」

 

「遊馬って、本当に凄いマスターだよね……」

 

「当たり前だ。余が認め、夫にする男だぞ?」

 

「そうだったね。ねぇ、ネロ……あのさ……」

 

「ん?」

 

ブーディカは毛布で顔を隠しながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私が……遊馬を、その……本気になっちゃったら、どうしたらいいかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブーディカが恥ずかしそうに告白した。

 

「そんなの自分の好きにーー何?今何と?」

 

ネロは自分の耳を疑い、バッとブーディカの方を向く。

 

ブーディカは顔を毛布で隠していたが、見えていた顔の一部が真っ赤に染まっており、それに気付いたネロは顔を真っ青にした。

 

「ま、待て、ブーディカ……お主、正気か……?答えよ、ブーディカ!ブーディカァアアアアアアア!!?」

 

ネロは頭を抱えながらブーディカの心境の変化に絶叫するのだった。

 

遊馬のお陰で二人が分かり合える日も近いのかもしれない。

 

 

 




遂にブーディカさんも遊馬先生によって攻略されました(笑)

すいません、ブーディカ姉さんが本当に好きなのでやっちまいました!
でも悔いはありません!

本来ならネロとの対話は最終章に行われますが、ここでは早めに行われます。
遊馬先生の「誰でも心のなかじゃ、良い心と悪い心が戦ってるんだ。でも、そっから逃げ出さなきゃ、きっとどんな事だってやり直せる。誰とだって、分かり合えるんだ」……これは遊戯王ZEXALの名言ですね。

ここのブーディカとネロは遊馬先生のお陰でいつか分かり合えると思います。
というかそれ以前に恋のライバルになりそうですが(笑)

次回は残りのサーヴァント捜索になります。
多分ギャグになると思いますのでよろしくお願いします。

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