Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回は三分の一がシリアスで残る三分の二がギャグになっています。
ギャグは色々とキャラ崩壊が酷いので注意です。


ナンバーズ57 闇に蠢く地獄の影

闇に囚われたブーディカとの絆を取り戻し、遊馬達は他のサーヴァント達を探すために他の部屋を次々と突撃する。

 

エリザベート、呂布、レオニダスの三人を見つける。

 

しかし、やはり性格がおかしくなっているのでマシュが盾で抑えている間に遊馬が鉄拳聖裁を叩きつけて撃沈させてその間にフェイトナンバーズに入れてカルデアに送った。

 

「マルタの姉御の修行のお陰で何とか撃沈出来たぜ!」

 

「遊馬……一応聞くが、お前は人間だよな?」

 

式は遊馬の右手が光り輝き、それがサーヴァントにダメージを与えていることに疑問を持って思わずそう尋ねてしまった。

 

「当たり前だろ?俺はただの人間だぜ?」

 

「そうか……」

 

ニッコリと笑ってそう答える遊馬に式は聞くのも馬鹿らしくなって考えるのをやめた。

 

部屋を出て次の部屋に向かおうとしたその時、遊馬とアストラルと式は同時に何かに気づいた。

 

「っ!みんな、外に出るぞ!」

 

「えっ?ゆ、遊馬君!?」

 

「マシュ、外から奇妙な気配を感じるんだ」

 

「今まで感じたことない不気味な殺気だ……気を引き締めろ」

 

遊馬達は急いでオガワハイムから出て外に飛び出すと、突然周囲が真っ暗に染まっていく。

 

夜空の月と星、街の街頭などの明かりを遮り、遊馬達を強大な闇が覆っていく。

 

「何だこの闇は!?何も見えないぜ!」

 

その時、闇の中から雑音のような不気味な声が響き渡る。

 

「光を持つ者達よ、オレはお前達に憤怒を抱いている」

 

「……サ、サーヴァント!?でも……見えない……見えません、遊馬君!サーヴァントの残留霊基であるシャドウサーヴァントとも違います!それにサーヴァントの七つのクラス、どれにも該当しません!」

 

マシュは闇の中にいるサーヴァントが七つのクラスに当てはまらない規格外の存在であると察知する。

 

七つのクラス以外にあるサーヴァントのエクストラクラス、それは遊馬達は一つしか知らない。

 

「じゃあお前はルーラーなのか!?」

 

ジャンヌとレティシアと同じ裁定者のサーヴァントかと思ったが、闇の中のサーヴァントはその推測にさらなる憤怒を露わにする。

 

「調停はオレから最も遠い言葉だ。その推測、挑戦と解釈した」

 

「どんな解釈だよ!?間違ってるならお前のクラスを教えやがれ!」

 

「断る。わざわざクラスを教えるサーヴァントがいるわけ無いだろう。そんな事より、貴様達は何だ?死霊どもを殺して回るなど、非常識にも程がある。彼らは生ある時は報われず、無念から死を迎える事も叶わず、安寧を捨て、無を選んだ敗北者。生に見捨てられ、死から置いていかれたもの。そう、名前もなく姿もない怪物ども。彼岸にすら行き場のない魂に、安息を。地獄が彼らを拒否するのなら、『新しい地獄を作る』。この塔は怨嗟に満ちねばならん」

 

「新しい地獄……!?」

 

「塔……?」

 

遊馬はオガワハイムにいる怪物達のために新しい地獄を作り出そうとしている事に、アストラルは塔という単語に疑問を抱く。

 

「それが我が信仰にして存在意義。光よーーオレの仕事の、邪魔をするな」

 

「断る!!!」

 

遊馬は闇の中のサーヴァントの言葉を即答で断った。

 

「俺たちは人類と世界の未来を守るために戦っている!そして、囚われた仲間を救い出すためにここにいるんだ!だから、俺たちは前に進む!!」

 

仲間を必ず取り戻す、その強い意志が遊馬の中で光となって輝き、遊馬の体から光が溢れ出す。

 

「行くぜ、アストラル!」

 

「ああ!」

 

「「現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!」」

 

遊馬とアストラルはすぐさま希望皇ホープをエクシーズ召喚をして呼び出し、その体から放出される光で闇を打ち払った。

 

しかし、その直後に周囲に無数のゴーストが出現した。

 

「フォウ、フォウ、フォーーーーウ!」

 

「な、何だこいつらは!?」

 

「フォウさんがかつてないほど興奮しています!あのゴーストはただのゴーストではないようです!」

 

「今までの相手とは違う!あれからは憎しみなどの負の集合体のようなものだ!」

 

今までとは次元の違う相手に緊張感が増す遊馬達……その時。

 

「心配しないで、みんな。私が全部斬ってあげる」

 

優しく柔らかい声が響き、遊馬達が振り向くとそこには驚くべき人物がいた。

 

「本物のガイアの怪物が相手なら仕方ないけれど、相手はアラヤの怪物の劣化品。相手が死に狂った末の幽霊なら、こっちも死に物狂いで戦えばいいだけの話ですもの」

 

「式さん?え、え!?」

 

「両儀式……?」

 

マシュとアストラルが驚くのも無理はなかった。

 

何故ならそこにいたのは式であって式ではないような人だからだ。

 

「はじめまして、マシュさん、アストラルさん。こんばんは、遊馬君」

 

それは昨夜……遊馬が見た夢の中で出てきた式にそっくりの綺麗な着物姿の女性だった。

 

女性は式が持っていたナイフの代わりに日本刀を持っており、鞘から抜いて構えていた。

 

「あんた、もしかして夢の……」

 

「そうよ。極力出てこないつもりだったけど、相手が相手だから出てきちゃった。少しの間だけど、あなたに力を貸すわ」

 

「よく分かんねえけど、戦ってくれるならありがたいぜ!一緒に行くぜ!式!」

 

「ええ!」

 

「ゆ、遊馬君!?今の式さんに他に言うことがあるのでは!?」

 

「まるで人格が入れ替わったかのようなこの雰囲気……一体これは……!?」

 

「話は後だ!」

 

「さあ、軽くやっつけてしまいましょう。ここに地獄を作ると言っていたけれど、それは閻魔の管轄です。恨み言だけの蓄音機なんて地獄の鬼も願い下げ、見果てぬ夢ごと、両儀の狭間に消えなさい」

 

「行け、希望皇ホープ!!亡霊たちを斬り裂け!!!」

 

式と希望皇ホープは同時に地を駆け、亡霊を斬り裂いていく。

 

式は両眼に妖しく輝く直死の魔眼で亡霊の死の線を見ながら刀で一撃必殺の元、問答無用に斬り伏せる。

 

希望皇ホープは自身の属性でもある光の力を宿したホープ剣で亡霊を浄化するように斬り倒していく。

 

まるで舞うように亡霊を斬るその美しい姿に遊馬とマシュとアストラルは心を奪われるのだった。

 

そして、見事に全ての亡霊を倒し、マシュは喜びの声を上げる。

 

「敵ゴースト、消滅しました!やりました、ありがとうございます、式さ……ん?」

 

「あいたた……木の根っこにつまずいて転ぶなんて、何やってんだオレ……」

 

先程まで綺麗な着物姿だった式が藍色の着物に革ジャン姿になっていた。

 

「ん?なんだ、オレが馬鹿やってるうちに片付けたのか。お疲れさん、遊馬、マシュ」

 

「……マシュ、アストラル。集合」

 

遊馬はマシュとアストラルを呼んで式から少し離れて話を聞かれないように小声でひそひそ話をする。

 

「二人共、もしかしたら式は多重人格かもしれない」

 

「え!?た、たしかに……そう考えれば先程の姿も……」

 

「何か深い事情がありそうだから、あちらから話してくれるまでは我々はあまり深く追求しない方が良いだろう。二人共、その方向で行こう」

 

今まで見た多種多様のサーヴァントを見て、多重人格のサーヴァントがいてもおかしくないのでそう納得した。

 

三人はうんうんと頷いて話を簡潔にまとめると、隠れていたフォウが何かを見つけた。

 

「フォウ、フォーウ!」

 

「お。なんだよフォウ、お前も褒めて欲しいのか?……ってなんだそれ。鍵じゃないか」

 

それはどこかに隠されていた鍵のようで何かに使えるかもしれない。

 

オガワハイムのどこかに繋がる鍵かもしれないのでそれを大事に保管し、引き続きサーヴァントを探すためにオガワハイムの探索を再開した。

 

 

部屋の捜索も半分以上が終わり、サーヴァントの気配が集まる部屋に突入するとそこには……。

 

「ふう。やっと来たね、待ちくたびれたよ。君たちはシルバーソーサー?それともオセロピザ。ま、どっちでもいいや。いつも通り、ブツを置いて出て行ってね。命だけは取らないであげるから」

 

「何してんだよ、メアリー……」

 

出迎えたのはメアリーだったが、部屋の惨状を見てあきれ果ててしまった。

 

キッチンを埋めるレーションの空容器、ジェンガのように積み上げられたヒザの段ボール……掃除が全くされてない汚部屋となっていた。

 

そして、その部屋のデスクにパソコンが置かれており、そこにはメアリーの他に二人の人物がいた。

 

「あら。通販のお兄さんではありませんのね。ではチェンジで」

 

「うほぉっ♪マシュマロちゃんに謎の和服美女!?これは嬉しいサプライズでござるな!」

 

それはメアリーの相方のアンと最恐最悪の海賊の黒髭だった。

 

「……お前たちは一体何してるんだよ?」

 

遊馬のその言葉がマシュたちにとって、この場で最も言いたかった言葉だった。

 

「デュフフ……アンちゃんとメアリーちゃんは拙者が教えたインターネットにドハマりしたのでござる!その結果、通販でグッズを買ってピザを取り寄せては配達員を落としてお金を巻き上げるというダメ人間となったのでござる!!」

 

「ええっ……?」

 

黒髭のオタクの影響が最悪の形でアンとメアリーに侵食されてしまい、遊馬は口をあんぐりと開けて呆然としてしまった。

 

「アンさん!メアリーさん!お二人とも、海賊の矜持はどうしたんですか!?財宝を探すのが楽しい、聖杯に求めるものは宝ではなく宝の地図と微笑んだお二人はどこに行ったんです!」

 

「それはネットの海に捨てちゃったというか……」

 

「これがとても便利で……深淵で……刺激的で……あと楽で……」

 

「「気がついたら、こんな生活になっていたのさ!でもいいよね、私たち海賊なんだし!」」

 

ダメ人間と化したアンとメアリーは最悪にも開き直ってしまい、比翼連理の女海賊としてのプライドが完全に崩壊していた。

 

そんな二人を見た遊馬はゆらりと黒髭に静かに近づいた。

 

「……黒髭」

 

「むっ?何ですかな、マスター?良かったらマスターも一緒にネトゲなんかーー」

 

遊馬は黒髭の側に寄り、黒髭は一緒にネットゲームをしようと勧めたとその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懺悔の用意は出来ているか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒髭への断罪が始まる。

 

「へっ?な、何を……グピャア!?」

 

黒髭が唖然としたその直後、遊馬は右手で黒髭の頭を掴んでイスから引きずり出す。

 

「え?マ、マスター……?」

 

「ど、どうしたの……?」

 

突然の暴挙に思わずアンとメアリーはパソコンから目線を遊馬に向ける。

 

遊馬はいわゆるプロレスのアイアンクローと呼ばれる技で黒髭の頭を掴み、レオニダスのトレーニングによって鍛えている手の握力で握りしめる。

 

「ノォオオオオオオオオオオオ!??あ、頭が、拙者の頭が割れるぅううううううっ!?!?」

 

ミシミシと黒髭の頭がひび割れるような音を鳴らしながら遊馬は黒髭を持ち上げる。

 

「黒髭……お前さぁ、何やってるんだよ……?」

 

「な、何とは……?」

 

「なぁに……俺が憧れている女海賊のアンとメアリーをパソコン中毒の引きこもりにしているんだよ!!?」

 

「いや、その……お二人ともっとお近づきになれる方法が無いかなと思って、試しにインターネットを勧めたら、これが二人に見事ドハマりで……」

 

「その所為で誇り高き女海賊がダメ人間になっちまったじゃねえか!!どうしてくれるんだ!!!」

 

ミシミシミシ……!!

 

遊馬は更に指に力を込めて黒髭の頭を締め上げる。

 

遊馬は憧れの英霊をダメ人間にされたことへの怒りがこみ上げ、マスターとして黒髭への制裁を下す。

 

「ギャアアアアアア!?痛い痛い痛いっ!?マスター、ストップ!ヘルプミー!!本当に拙者の頭が割れちゃうでござるよぉおおおおおおおおっ!??」

 

まるで悪魔が蹂躙するようなその姿に間近にいたアンとメアリーはガタガタと震え上がっていた。

 

「マ、マスター……恐すぎですわ……」

 

「普段温厚な人ほど怒ると恐いって本当だね……」

 

そして、扉の近くで比較的安全なところにいるアストラル達は口を開けて唖然としていた。

 

「あれは間違いなく明里の血だな……」

 

アストラルは遠い目をして遊馬の姉の明里を思い出した。

 

明里は遊馬の母親代わりとして厳しくしていたが、不機嫌だったりして怒り狂うと鬼のように恐ろしく、遊馬の最大の恐怖といっても過言ではない。

 

そんな遊馬が明里を彷彿とさせるその恐ろしい姿にアストラルはやはり姉弟だなと思った。

 

「……おい、マシュ。サーヴァントは確か神秘が無いとダメージを与えられないんだよな?」

 

「はい。その、はずです……」

 

「右手の光の力を使ってないのにアイアンクローで頭蓋骨がひび割れるほどのダメージを普通は与えられないよな?」

 

「そのはず、なんですが……」

 

魔力も込められてないただの物理攻撃で黒髭を追い詰めていることにマシュと式は疑問しか思い浮かばなかった。

 

「黒髭……お前、大人しく帰るか?」

 

鬼の形相から笑みを浮かべた遊馬に黒髭はガクガクと震えながら即答する。

 

「は、はいぃいいいっ!帰るでござる帰るでござる!!だから助けてください!!」

 

「じゃあ、カルデアに送るぜ」

 

遊馬は黒髭のフェイトナンバーズを取り出して黒髭を取り込んでカルデアに送る。

 

黒髭を送り、次に遊馬が顔を向けた先はもちろんアンとメアリーだった。

 

「「ヒイッ!?」」

 

情けないことに今のアンとメアリーは伝説の女海賊としての誇りを置いてきてしまい、遊馬を恐れて二人で抱きしめあって震えていた。

 

静かに近づく遊馬……アンとメアリーは黒髭と同じようにアイアンクローをされるのかと目を閉じたその直後。

 

パチッ!パチッ!

 

「いたっ!?」

 

「あたっ!?」

 

アンとメアリーの額に軽い痛みが走り、二人は額を抑えて目を開くとそこには呆れた表情を浮かべた遊馬が右手の中指を親指で抑えたデコピンの態勢を取っていた。

 

「全く……いい大人で俺みたいなガキじゃ無いんだから、あまり心配させるなよな?」

 

「あうっ!?」

 

「ふにゃ!?」

 

遊馬は二人にもう一度デコピンを喰らわせてポンポンと頭を撫でる。

 

「ほら、ここにあるものは全部カルデアに送ってやるからさっさと帰ろうぜ?」

 

「え?パソコンも……良いんですの?」

 

「あんなに黒髭に怒ってたのに……」

 

「別にパソコンやインターネットを悪いとは言ってねえよ。俺の姉ちゃんはこいつで仕事をして俺を養ってくれていたからな」

 

明里は自分の部屋に複数のモニターが設置されたパソコンを操作して情報を集めてそこから新聞を毎日作っていた。

 

遊馬はアンとメアリーの新しい趣味を否定はせずにパソコンの電源を落として周辺機器を片付ける。

 

「でも、やるならほどほどにしておけよ?二人は俺の憧れる偉大な海賊だからさ」

 

苦笑いを浮かべる遊馬にアンとメアリーは胸が苦しくなった。

 

こんなにも自分達を慕って憧れてくれるマスターに申し訳ない気持ちになり、頭を下げて謝罪した。

 

「すみませんでした、マスター……」

 

「ごめん、マスター……迷惑と心配をかけて……」

 

「もういいって。ほら、二人はカルデアに帰ってドクターから検査を受けてくれ。ここのものはちびノブ達に運んでもらうから」

 

「はい」

 

「うん」

 

アンとメアリーのフェイトナンバーズを取り出し、二人を一緒に入れてカルデアに送る。

 

カルデアからちびノブ達を派遣してもらい、部屋の片付けと三人が集めたモノをまとめてカルデアに送ってもらった。

 

そして、ちびノブ達に感謝をしてその部屋を後にした。

 

 

部屋を片付けて次の部屋に入るとそこには行方不明となったサーヴァントの中で特に強い力を持つ存在、クー・フーリンがいた。

 

クー・フーリンはランサーではなくキャスターの姿でいて遊馬は呆れ顔で話しかける。

 

「それで、クー・フーリンの兄貴。お前はここで何してるんだ?」

 

「おう、マスターに嬢ちゃんにアストラル、それに……初めて見る着物の嬢ちゃんも座れよ。ご所望のゲームはなんだ?」

 

「……遊馬、ここは……」

 

「ああ、そうみたいだな。クー・フーリン、賭博はご法度だぞ」

 

「と、賭博!?」

 

遊馬とアストラルはクー・フーリンがいるこの部屋が違法賭博で使われていることにすぐに気づいた。

 

実際に二人は見たことはないが、遊馬達の世界ではデュエルモンスターズを使った違法賭博が裏の世界で行われている。

 

悲しいことに勝負事には必ず賭博という裏の世界が関わるものである。

 

「深夜になるとゾンビが集まってうるさい、裸に剥かれたゾンビが泣いて出てくる苦情はこれだな……ま、典型的なマンション賭博だな。問答無用で逮捕案件だ」

 

「クー・フーリン……こんな馬鹿げたカジノなんかやめて、カルデアに帰ろうぜ?」

 

「おいおい、せっかく稼いでるのにそれはないだろ?もっと稼ぎたいぜ!せっかくキャスタークラスにもなれるから、この杖持ってるとダイス操作が楽で楽で……」

 

「イカサマをした違法ギャンブルじゃないですか!?色々台無しですよ!!」

 

「……どうしたら帰ってくれるんだよ?」

 

「ここはカジノだぜ?一つ賭けで決めようぜ?」

 

「賭け?」

 

「おう。マスターが勝ったら大人しくカルデアに帰るぜ」

 

「もし俺が負けたら?」

 

「そうだな……その時は……マシュの嬢ちゃんの体に触れさせてもらおうかな♪」

 

「アストラル、ホープレイVかヴォルカザウルスを召喚してクー・フーリンを焼き尽くそう」

 

「承知した」

 

遊馬とアストラルはクー・フーリンの馬鹿らしいセクハラ発言に息のあったコンビネーションでモンスター爆殺能力を持つホープレイVかヴォルカザウルスを呼び出そうとした。

 

「ちょっ!?冗談が過ぎるぞ、マスター!?」

 

流石のクー・フーリンもホープレイVとヴォルカザウルスの恐ろしさをよく知っているので冷や汗を流した。

 

「全く、いい加減にしろよな……お前さ、かつて愛した人たちに申し訳ないと思わないのか?」

 

相変わらずの女好きのクー・フーリンに蔑むような目で睨みつける遊馬の子供の視線がクー・フーリンの心に突き刺さる。

 

「うぐっ、う、うるせえ!だからいい体つきの女がいるとついやっちまうんだよ!おっ?そこにいる嬢ちゃんもなかなか良い体をしてるね!胸はマシュの嬢ちゃんには劣るが、スラッとしてて……」

 

次の瞬間、式は無言でクー・フーリンに近づいてナイフを振り下ろす。

 

「のわぁっ!?危ねぇっ!?」

 

「おい、遊馬。こいつを斬らせろ、つーか殺させろ」

 

式は直死の魔眼を発動して殺す気満々でクー・フーリンを睨みつける。

 

「式、とりあえず落ち着こう。一応こんな奴でも大切な仲間だから」

 

「あー、尻は良さそうだけどやっぱり胸がなぁ……」

 

ブチッ!

 

「うるせえ!胸は娘を身ごもった時に勝手にでかくなったわ!そんなことより、てめえなんかがオレの体が触れるな!オレに触れていい男はオレの旦那だけだ!!」

 

ブチ切れた式の衝撃的な発言に遊馬とマシュは驚愕した。

 

「えっ!?し、式さん、娘さんがいらっしゃったんですか!?」

 

「それに、旦那さんとも仲が良さそうだな……意外だぜ」

 

失礼だが式は結婚しないタイプの女性だと思っていたので結婚してしかも娘がいるとは予想外すぎた。

 

「う、うるせぇ……オレが結婚して子供産んじゃ悪いかよ……」

 

発言して恥ずかしくなり、顔を赤く染めた式の意外な一面が見れて遊馬達はほっこりと心が温かくなった。

 

「ゴホン……ともかく、マスターだって女の体とかそういうの興味あるよな?なっ?なっ?」

 

遊馬は十三歳の思春期の男子。

 

女性の体に興味を持って当然であり、クー・フーリンも同意を求めたが……。

 

「……考えたことない」

 

「な、何ぃっ!??」

 

「いやー、俺は馬鹿でデュエルチャンピオンを目指したり、色んなことにチャレンジをしていたからさ。女の子のそういうの、考えたことなかったぜ」

 

「おう、マジかよ……よし、今度男どもを集めて色々話し合おうか」

 

クー・フーリンは今後の遊馬の成長も考えて真面目にカルデアにいる男性陣を集めて女について語り合おうと心に誓った。

 

「そういうのは良いから……分かった、クー・フーリンの望み通りにカジノらしくゲームで勝負だ。だけど、ゲームは俺が決める」

 

遊馬はデュエルディスクからデッキを外し、シャッフルしてテーブルに置く。

 

「おいおい、流石にデュエルモンスターズの世界チャンピオンが相手だと、素人の俺じゃ相手にすらならないぜ?」

 

「心配するな、デュエルじゃない。ルールは簡単。お互いにデッキからカードを一枚引いて攻撃力が高いモンスターを引いた方が勝ち。ただし、デッキには魔法と罠が入っているから、それを引いたらデッキの一番下においてモンスターを引くまでそれを続ける」

 

「ははっ、なるほど。こりゃあ、俺の魔術のイカサマも出来ない一発勝負ってことか!」

 

「そういう事。先攻か後攻はそっちで決めて良いぜ」

 

「それなら、先攻行かせてもらうぜ!ドロー!ふはははは!来たぜ、攻撃力2000の『ゴゴゴジャイアント』だ!!」

 

クー・フーリンが引いたカードは遊馬のデッキの中でも高い攻撃力を持つゴゴゴジャイアント。

 

「マズイです……遊馬くんのデッキはエクシーズ召喚専用に構築されたデッキですから攻撃力が低いモンスターがほとんどです……」

 

「心配するな、マシュ。行くぜ……」

 

遊馬は静かに右手を挙げると金色に輝き出す。

 

「え?ちょっ、マスター?その右手の輝きはもしかして……」

 

クー・フーリンは顔を真っ青にし、遊馬は金色に輝いた右手でデッキトップに触れる。

 

「最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!」

 

「おぃいいいいいっ!??」

 

「シャイニング・ドロー!!」

 

遊馬はシャイニング・ドローでデッキトップを操作し、引いたカードを見て笑みを浮かべる。

 

「来たぜ、俺が引いたのは攻撃力3000!『銀河眼の光子竜』!俺の勝ちだ!!」

 

銀河眼の光子竜は遊馬のデッキにあるモンスターで最高の攻撃力を持つ。

 

しかし遊馬がシャイニング・ドローで銀河眼の光子竜をドローしたことにクー・フーリンは納得できないでいた。

 

「何が俺の勝ちだ!?俺よりも酷いイカサマしてるじゃねえか!?」

 

「イカサマ?何を言うんだ?シャイニング・ドローは最強デュエリストだけが使える最強のスキルだ!イカサマじゃない!」

 

「こんな勝負認められるか!!次は俺がゲームを決めてーー」

 

「見苦しいぞ、クー・フーリン」

 

遊馬のデッキケースが開くと中からエミヤが現れた。

 

「げっ、弓兵!?」

 

「エミヤ!」

 

「エミヤ先輩!」

 

「クー・フーリン、一度受けた勝負に負けたからと言って駄々をこねるとは何と情けない。大人しくカルデアに帰れ。さもないと……」

 

エミヤの左手にはお盆があり、フランス料理でメインディッシュに被せる釣鐘型の蓋、クロッシュに覆われた料理を見せる。

 

「そ、それは!?」

 

クー・フーリンはその料理を見た瞬間、絶望を間近に見たような表情を浮かべた。

 

「そうさ、貴様もよく知っている最恐のマーボー……『外道マーボー』だ」

 

それは四川料理の一つで有名な中華料理でもあり、ひき肉と赤唐辛子と花椒豆板醤などを炒め、鶏がらスープを加えて、豆腐を煮た料理である。

 

しかし……エミヤが出した外道マーボーは血のように真っ赤で少し離れた遊馬達もそこから漂う辛味の香りが鼻に突き刺さっていた。

 

「げ、外道マーボー……?エミヤ、まさか毒でも入ってるのか?」

 

「まさか、私は料理にそんなことはしない。基本的な食材は普通のマーボーと同じくラー油と唐辛子だ」

 

「それをどう調理したら、こんな地獄の釜みたいな感じになってるんだよ……」

 

美味しそうに見えるが、何故か恐ろしく禍々しいオーラが見えてしまい、食べたら絶対に無事では済まないと直感で訴えていた。

 

「これはラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んで合体事故をしたあげく……『オレ外道マーボー今後トモヨロシク』と主張しているみたいだろう?ちなみにこれはあまりの辛さにとても常人が食える代物ではない。さあ、マシュ。君がクー・フーリンに渡すんだ。そうすれば全てが終わる」

 

「え?でもエミヤ先輩、ただ辛いだけではサーヴァントにはダメージは与えられないのでは……」

 

「心配するな、私を信じろ」

 

「は、はい!分かりました、エミヤ先輩を信じます!」

 

マシュはエミヤを信じて外道マーボーが乗ったお盆を受け取り、クー・フーリンに近づく。

 

「ま、待て!嬢ちゃん、それだけは勘弁してくれ!さっきのは無しにするから、それだけは!!?」

 

クー・フーリンは逃げようとしたが、出入り口は既に式が立っていており、窓から逃げようにもエミヤが黒弓を構えているので逃げ場が完全に絶たれている。

 

「はい、クー・フーリンさん。残さず全部食べてくださいね♪」

 

マシュは満面の笑みを浮かべてクー・フーリンに外道マーボーを差し出した。

 

「ち、ちくしょぉおおおおおおおっ!!!」

 

クー・フーリンは器に添えられた蓮華を取り、嫌がる意思に反して一心不乱に外道マーボーを食べ始めた。

 

クー・フーリンをはじめとするケルト神話の戦士が各々の戒めを行う習慣で、誓約を破った戦士には呪いがかかったという。

 

クー・フーリンの場合はその名の由来でもある『生涯犬は食べない』の他に『詩人の言葉に逆らわない』がある。

 

そして……『自分より身分の低いものからの食事の誘いを断らない』と言うものがある。

 

エミヤはこれを利用してクー・フーリンよりも身分が低いと仮定したマシュに外道マーボーを渡してクー・フーリンに食べさせるよう仕向けたのだ。

 

外道マーボーを食べているクー・フーリンの唇は辛さで晴れ上がり、顔どころか体中から異常なまでの大量の汗が流れている。

 

「辛ぇ……でも美味ぇ……!!」

 

外道マーボーは唯々辛いだけではなく、しっかり旨味も存在する。

 

その旨味を見出すのに、異常な辛さと格闘しなければならない……という負の連鎖が続くよくわからない料理なのである。

 

そして、クー・フーリンの生死をかけた外道マーボーとの戦いが終わりを告げる。

 

「ご、ごちそうさん……ゴハァッ!?」

 

クー・フーリンは外道マーボーを食べ終えた瞬間に意識を失い、白目を剥きながらその場に倒れた。

 

「ランサーが死んだ!」

 

「こ、このひとでなしー!」

 

「いえいえ、ただ意識を失っているだけです!信じられませんけど!」

 

「これは見事に意識を失っているな……」

 

「辛さで意識が飛ぶってどんだけだよ……」

 

毒でもないひたすら辛いものを食べて戦闘不能になるという阿呆らしい光景にアストラルと式は唖然とした。

 

先ほどの遊馬の黒髭へのアイアンクローと同じく本来ならサーヴァントは神秘が無いとダメージを与えられない。

 

しかし、特別な食材を使っているわけでも無いただ辛いだけの外道マーボーで歴戦のランサーであるクー・フーリンがあっさりと戦闘不能になってしまったことにサーヴァントに対してまた色々な疑問が浮かぶのであった。

 

「さて、マスター。私はクー・フーリンの面白いところも見れたので満足だ。意識を失っているうちにカルデアに連れて帰ろう」

 

「あ、ああ。あとはよろしくな」

 

遊馬はエミヤとクー・フーリンのフェイトナンバーズを取り出して二人を入れてカルデアに送る。

 

「これでほとんどのサーヴァントがカルデアに帰ったな。後は……」

 

「後は二人、ノッブと沖田だ」

 

「あぁ、あの二人ですか……」

 

サーヴァント達の中で何処かズレていると言うか別次元の何かと言われているノッブと沖田が残りと聞いてマシュはため息を吐く。

 

「なんかあの二人が何かやらかしそうですね……」

 

「だからと言って放っておくわけにはいかないからな」

 

「残る部屋は少ない。もう一踏ん張りだ」

 

「やれやれ。この阿呆らしい戦いも、もうすぐ終わりだな」

 

遊馬達がノッブと沖田を探しに部屋を出ようとしたその時。

 

「甘ぁい!やっぱり体が熱くなった後の冷たいものは最高ですね!」

 

「わしの部屋はめちゃくちゃ暑くなってしまったからの。早くなんとかならんかの〜」

 

廊下から聞き覚えのある声が響く。

 

「この声は!?」

 

急いで部屋から出るとそこにいたのは。

 

「あれ?遊馬くんじゃないですか!」

 

「おぉ、マスター。お主達も来たのか?」

 

探そうと思っていた沖田とノッブだった。

 

しかし、何故かアイスクリームを食べながら歩いていた。

 

「姉上!ノッブ!大丈夫だったか!?」

 

「もしかして探しに来てくれたんですか?」

 

「うむ!ご苦労!褒美に下のコンビニで買ったアイスじゃ!」

 

「ア、アイス?何で?」

 

「いやー、それがのぉ。わしの部屋が炎上した本能寺みたいなよく分からん異界と化してしまっての……いるだけでめちゃくちゃ熱いのじゃよ」

 

「それなので下のコンビニでアイスを買って来たんです。遊馬君は何を食べますか?」

 

「えっと……食べ終えたらカルデアに帰ってくれるか?みんな心配しているから……」

 

「はい、もちろんです。こちらからカルデアに向かう方法が見つからなかったので」

 

「これでやっとあの熱苦しい部屋から解放されるの〜。マシュと……あー、そこの女もアイス食うか?」

 

「え?えっと……」

 

「ストロベリーはあるか?」

 

式はアイスと聞いて食いつくようにノッブに一瞬で近づいた。

 

「あ、あるぞ……?」

 

「くれ」

 

「は、はい……」

 

そして、ストロベリーアイスを受け取ると好物なのか思い入れのあるものなのかわからないが、ストロベリーアイスをスプーンですくって黙々と食べ始める。

 

遊馬とマシュもアイスを受け取って一緒に食べると、この中で唯一食事ができないアストラルは天井を見上げながら口を開く。

 

「遊馬、アイスを食べて一休みしたら屋上に行ってみよう」

 

「屋上?」

 

「この上から不気味な気配を感じる。もしかしたら先ほど出会った謎の影がそこにいるかもしれない……」

 

森で出会った正体不明の不気味なサーヴァント……今回の事件の元凶かもしれないその存在が屋上にいるかもしれないとアストラルは推理する。

 

「なるほどな……そいつを何とかしない限りまたカルデアのサーヴァントが囚われるかもしれないからな。よし……気合いを入れていくか!」

 

遊馬は気合いを入れ直し、アイスを食べてゆっくりと休息を取る。

 

 

 

.




黒髭に関してはあいつが全て悪いですね(笑)
クー・フーリンにはあの外道マーボーをいつか喰わせようと思っていたのでそれが叶いました。
シャイニングドローは最強デュエリストのスキルだから仕方ないよね!(笑)

そして次回はいよいよ、空の境界編最終回です!
それが終わったらすぐにZero編のスタートです!

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