Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

61 / 195
気付けばこの作品も一周年です。
これも皆さんの応援のお陰です、ありがとうございます。
これからも頑張っていきます!

さて、今回からFate/Accel Zero Order編のスタートです。
Fate/Zeroは悲劇が多いので遊馬くん達に救ってもらいましょう!


Accel Zero Order
ナンバーズ59 十年前の冬木へ!数多の悲劇を打ち破れ!


オガワハイムの事件が解決したその直後に新たな特異点が現れた。

 

それはカルデア最初のレイシフト先である冬木市だった。

 

オルガマリー達は急いでコフィンの再点検やレイシフト先を調べ、その間に遊馬達は食堂で食事を取っていた。

 

「ムシャムシャムシャ……ガツガツガツ!!」

 

遊馬は時間が無いのを含め、急いで小鳥が作ったデュエル飯とエミヤが作ったおかずを食べていた。

 

「よく食うなぁ……」

 

新たにカルデアのサーヴァントとして共に戦う式は遊馬の食べっぷりにおかずをつまみながら呆然としていた。

 

「へへっ、まだ成長期だからな!それに腹が減ったら戦はできないからな!まだまだ食えるぜ!小鳥、おかわり!」

 

「はーい!」

 

小鳥はもはや慣れた手つきでデュエル飯をどんどん作って遊馬の前に置く。

 

「可愛い子じゃないか。ガールフレンドって奴か……やるじゃないか、マスター」

 

「式さん、今何か言いましたか?」

 

「いや、何も……」

 

式の呟いた言葉にマシュの目がギラリと輝き、式は余計なことを言ってしまったと後悔して目線を逸らした。

 

(どうやらマスターはうちの旦那以上の誑しみたいだな。しかも無自覚とは将来が恐ろしい……ま、オレには関係ないから色々楽しませてもらうか)

 

遊馬が天然の人誑しであることを見抜き、これから起きるであろう修羅場を楽しもうと思った。

 

そこにオルガマリーからD・ゲイザーに連絡が入り、食事が終わったら管制室に来てくれと連絡が来た。

 

遊馬、アストラル、マシュ、フォウは管制室に向かい、オルガマリーから早速説明を受ける。

 

「今回の特異点は私達がレイシフトをした冬木市の十年前よ」

 

「十年前?」

 

何故十年前の冬木市なのか?

 

そう疑問に思うとそこに一人のサーヴァントが入ってくる。

 

「大変だ、マスター」

 

それはアルトリアの反転した存在、アルトリア・オルタだった。

 

「オルタ?どうしたんだ?」

 

「青い私が何処にもいない」

 

「えっ!?アルトリアが!?」

 

「試しにシロウにご飯の時間だと呼んでもらったが現れない。シロウのご飯が大好きなあいつが現れないのは有り得ない」

 

アルトリアが消えている……その事実に驚く中、更なる事態が起きていた。

 

「た、大変です!遊馬君!」

 

「遊馬、ジルが……ジルが消えた!」

 

ジャンヌとレティシアが管制室に突撃し、ジルが消えたと伝えた。

 

「ジルまで!?また特異点に召喚されたってことか!」

 

アルトリアとジルが新たな特異点に召喚された。

 

その事実に驚くと煙草の煙を吐きながら一人の男が入室する。

 

「話は聞かせてもらった……十年前の冬木市でアーサー王とジルが召喚されたようだな」

 

「ウェイバー先生!」

 

「ロード・エルメロイII世だ!」

 

それは諸葛孔明の霊基が宿った擬似サーヴァント、エルメロイII世だった。

 

普段自室で引きこもっているエルメロイII世が出てきたのには理由があった。

 

それは特異点である十年前の冬木市、それに大きな関わりがあったからだ。

 

人類史が焼却されてしまった後、カルデアスにおける観測に様々な可能性が入り乱れている。

 

エルメロイII世がいた人類史ではカルデアスは無かった可能性があり、そしてその十年前の冬木市では何と聖杯戦争が行われていた。

 

こちらの世界では2004年の冬木市で最初の聖杯戦争が行われたが、エルメロイII世のいた世界の冬木市では計5回も聖杯戦争が行われており、今回の冬木市では4回目……第四次聖杯戦争が行われていたのだ。

 

何故5回も聖杯戦争が行われたのか、それは聖杯が一度も具現化せず、しかも第三次聖杯戦争以降、とある事故のせいで聖杯が汚染されて万能の願望機からどんな願いも悪意のある願いとなって世界を滅ぼす大量殺戮装置になってしまったのだ。

 

エルメロイII世は実際にその汚れた聖杯を解体して冬木の聖杯戦争を終わらせたらしく、その知識は豊富だった。

 

「じゃあ、聖杯を完成させずになんとか処理しなくちゃいけねえな。ウェイバー先生、力を貸してくれるか?」

 

「ロード・エルメロイII世だ!全く……第四次聖杯戦争は私にとっても少なからず因縁のある出来事だ。それが今まさに行われようとしているんだ。当然行くさ」

 

「サンキュー!先生!」

 

エルメロイII世の知識という大きなアドバンテージを得て冬木の特異点に向かうこととなる。

 

すると……。

 

「マスター!!」

 

突然、メドゥーサは血相を変えた表情で会議室に入って遊馬の元へ走った。

 

「メドゥーサ、どうしたんだ!?」

 

「あの、今回の特異点に、私も連れて行ってください!お願いです!!」

 

メドゥーサは遊馬の肩を掴んで必死に頼み込んだ。

 

その様子に遊馬は様子がおかしい、十年前の冬木市に何かあるのかと察知する。

 

「特異点に……冬木市に何かあるのか?」

 

「サクラを……サクラを助けたいんです!!」

 

「サクラ……?メドゥーサの大切な人なのか?」

 

「私の元マスターで、妹同然の大切な人です。実はまだ十にも満たない幼い時から……拷問に近い魔術の調練を受けていたんです」

 

メドゥーサの告白に遊馬達は衝撃を受けた。

 

「ご、拷問だと!?メドゥーサ、どういう事だ!?」

 

「それは私も一緒に説明しよう……」

 

「エミヤ!」

 

険しい表情を浮かべて入って来たのはエミヤでメドゥーサと共に『サクラ』と呼ばれる人間に何が起きたのか説明する。

 

サクラ……間桐桜はエミヤが生前に家族同然の存在として一緒にいた大切な少女だ。

 

しかし、桜は幼少期に間桐家に養子に出されたが、間桐家当主の間桐臓硯は桜の素質に合わない魔術修行や体質改変の為に無数の不気味な蟲を使った肉体と精神に大きな苦痛を与える調練を行なった。

 

それはもはや拷問に近いもので、更には義理の兄から虐待を受けていたのだ。

 

しかも間桐臓硯は既に体を人から蟲に置き換えた化け物で、魂も心も腐り果てた外道の存在である。

 

その驚愕の事実に遊馬達は衝撃を受けた。

 

そして、誰よりも怒りに震えていたのは遊馬だった。

 

ゴォン!!!

 

「ふざけるな……」

 

遊馬はテーブルが凹むほど拳で強く殴りつけ、体から赤いカオスの光が漏れ出していた。

 

「何でそんな事が出来るんだ……魔術師って何なんだよ!!」

 

「オルガマリーよ、一つ聞く……魔術師は何のために魔術を学ぶ?魔術師は何をしようとしているのだ?」

 

アストラルも冷静を保ちながら内心は遊馬と同じように怒りに震えていた。

 

オルガマリーは今まで遊馬達に魔術や魔術師についての説明を行なっていなかった。

 

簡単な説明だけでその実態を意図的に説明しなかった。

 

「分かったわ……説明する。全ての魔術師がそうとは限らないけど、そのほとんどの目的は『根源』に至るためなのよ」

 

「「根源……?」」

 

根源。

 

それは全ての始まりであり、全ての終わりであり、全てがあるとされる場所。

 

あらゆるものの原因、始まりであるが故に、その終わりまでも内包する。

 

根源に到達することは全ての事象に関する知識を得ることなのだ。

 

「それって、ヌメロン・コードと同じじゃねえか……」

 

世界の運命、過去・現在・未来を変えることができる宇宙創造の力を秘めた神のカード、ヌメロン・コードは確かに根源とほぼ同じものだった。

 

「それだけの為に魔術師たちは……まさか、人の道に外れたことも平気でするというのか!?」

 

「……ええ。魔術師は人間性に関して一般的な価値観からかけ離れた人が多いの。一般人の命を平気で実験材料にする奴もいるわ……」

 

今まで知らなかった魔術師の実態に遊馬とアストラルは怒りに燃え上がる。

 

「そんな下らない、自分勝手な事のために平気で人の命を奪う奴らを俺は許さない!!」

 

「ああ……そのような外道を許すわけにはいかない!!」

 

遊馬とアストラルの中にある正義感が刺激される中、オルガマリーはマシュをチラッと見ると唇を噛み締めて胸を強く押さえた。

 

「……マスター、一つ付け加えておくが、魔術師にもまともな奴がいる」

 

エミヤの追加説明に遊馬は目を丸くした。

 

「本当か……?」

 

「ああ。例えば、私の師でもあるそいつは魔術師としてはとても優秀なのだが、どうにもうっかりさんでな。それに、お人好しで非道になれない……そういう女だよ」

 

「そうか……魔術師にもそういう奴がいるんだな……」

 

「しかし、魔術師は基本的に性格破綻していると思っていいだろう……遊馬、対峙することになったら警戒を高めよう」

 

「そうだな……おっと、話が逸れちまったけど、メドゥーサ!桜ちゃんを助けよう!協力するぜ!!」

 

「必ず救おう、君の大切な人を!」

 

桜救出に全面協力すると遊馬とアストラルはメドゥーサに誓い、メドゥーサは感謝のあまり頭を深く下げた。

 

「っ!マスター、アストラル、ありがとうございます!!」

 

「ついでに桜ちゃんに酷いことをした蟲ジジイと、桜ちゃんをそんな地獄に突き出した父親もぶっ飛ばす!!」

 

遊馬の右手が紅く輝き、強く握りしめて高く掲げた。

 

この時、この場にいた魔術師や魔術使いの者たちは全員思った。

 

(((この二人を本気で怒らせたら、外道な魔術師や時計塔が全て滅ぼされそう……)))

 

遊馬とアストラル、異世界の英雄を本気で怒らせたらそれが現実になりそうで考えるだけでぞくっと体が震えるのだった。

 

その後、ウェイバーは自分が知っている第四次聖杯戦争の知識を大まかに伝えてそれをもとに、聖杯を完成させずに出来るだけ犠牲者を出さないための要点をまとめた。

 

・冬木の聖杯を完成させないためにサーヴァントを一人も脱落させない。

 

・マスターたちに協力を求めるがほぼ全員が非協力的な者たちなので、マスターの意識を奪って令呪を奪うなり、サーヴァントを拘束するなどの対策をとる。

 

・第四次聖杯戦争で危険で一般人に多大な被害を出す存在であるキャスターのジルとそのマスターをいち早く拘束する。

 

・第四次聖杯戦争の中でもジルとは別のベクトルで特に危険な存在……アサシンのマスターである言峰綺礼をたとえ過剰戦力を使っても撃退して拘束しなければならない。

 

・聖杯完成阻止には関係ないが、間桐桜を救出する。

 

・サーヴァントを一人も脱落させない状態で魔術を無効化することができるメディアの宝具『破戒すべき全ての符』を使用して聖杯を解体する。

 

「これはここにいる我々……いや、カルデアにいる多くのサーヴァントの力を借りなければ成し遂げることは出来ない」

 

「ああ!やってやろうぜ、ウェイバー先生!」

 

「多数のサーヴァントを同時に出撃させての作戦か。これは今後の作戦や戦略に役に立ちそうだ」

 

今後、遊馬が中心に進むだけでなく複数の部隊を編成して同時に出撃させて作戦行動をすることもあり得る。

 

今回の特異点はそんな戦略と戦術の強化にもうってつけだった。

 

特異点突入の作戦開始まで遊馬たちは急いで準備を整える。

 

特に忙しかったのはダ・ヴィンチちゃんで前々からコツコツと作っていた通信端末の遊馬の持つD・ゲイザーの色違いの最終調整を行い、複数個を遊馬に渡した。

 

これで別行動をするサーヴァントにD・ゲイザーを渡すことで遠くに離れても連絡が可能になった。

 

遊馬とアストラルはウェイバーの情報を元に事態の解決策となるカードを探して片っ端からデッキケースにしまう。

 

「……遊馬」

 

「んー?」

 

「冷静に考えたが、今回の特異点はウェイバー達が歩んできた世界の過去ではない。それに、例え特異点で救える命を救ったとしても未来が変わるわけがない……」

 

この世界はウェイバー達が歩んできた世界とは別の可能性があり、仮にこの特異点を無事に解決しても未来が変わるわけではない。

 

言わば虚ろな泡沫な夢のようなものである。

 

「分かってるさ。この特異点を解決しても未来が変わるわけじゃない。幻みたいなものみたいだけど、目の前に救える命があるなら俺は救いたい。それに、メドゥーサとエミヤのあんな顔を見たらさ……」

 

「メドゥーサの必死さが伝わり、エミヤも辛い表情を浮かべていたことから、かなり薄幸な少女なのだろう……」

 

「俺たちは人類と世界を救うために戦ってる。そんな中、大切な仲間が大切に想っている少女が地獄の中にいる。一人の少女を救い出せない奴に人理なんて救えねえよ」

 

「ふっ……それもそうだな。必ず救おう、間桐桜を。そして、起こりうる第四次聖杯戦争の悲劇を喰い止めよう」

 

「やり遂げようぜ、アストラル!」

 

二人はハイタッチを交わし、カードを選び終わると遊馬はデュエルディスク、D・ゲイザー、デッキケース、原初の火が納められたソードホルダー、ジェットローラーを装着する。

 

そして……ドレイクから譲り受けたフリントロック・ピストルをダ・ヴィンチちゃんに頼んで作ってもらったホルスターに入れてをベルトに新たに装着する。

 

準備が完了し、アストラルと共に管制室に向かうとマシュとエルメロイII世、そしてたくさんのサーヴァントが既に待っていた。

 

「行こうぜ、みんな」

 

「はい!」

 

「ああ」

 

遊馬はマシュ達をフェイトナンバーズに入れ、アストラルを皇の鍵に入れ、フォウをフードに入れてコフィンの中に入る。

 

目標座標は1994年、日本の冬木市……第四次聖杯戦争の舞台へとレイシフトする。

 

無事にレイシフトが完了し、遊馬が目を開くとそこには特異点『F』の時とは違う燃える前の夜の冬木市が広がった。

 

「ここが十年前の冬木市……みんな、頼む!」

 

デッキケースが開くと中からマシュとウェイバー、そしてたくさんのサーヴァントが現れる。

 

「じゃあ、打ち合わせ通り……チームAのジャンヌ達はジルとそのマスターの拘束!」

 

「はい!」

 

「あの馬鹿を捕まえて吊るし上げてやるわ」

 

「うん、任せて!」

 

「子供を殺める者は絶対に許さない」

 

ジルとそのマスターを拘束する為、ジャンヌとレティシア、アストルフォとアタランテの四人が向かうこととなる。

 

「ジャンヌ、レティシア!」

 

遊馬はジャンヌとレティシアにそれぞれD・ゲイザーを渡し、二人は展開して左眼に装着する。

 

ルーラーのサーヴァント探知スキルとエルメロイII世の事前情報を元にジルが魔術工房を構えていると思われる場所へ向かう。

 

「チームBはえっと……外道神父?とそのサーヴァントの捕獲!」

 

「おうよ!覚悟しろよ、言峰ぇ……行くぜ、レオニダス!嬢ちゃん達!!」

 

「いざ、戦場へ!!」

 

「うむ!遊馬よ、任務が完了したら褒美を頼むぞ!」

 

「私たちの歌でみんなを魅了してあげるわ!」

 

通称・外道神父と言われている第四次聖杯戦争で最も警戒すべき男、言峰綺礼を拘束する為に言峰綺礼に何故か個人的な恨み?を持つクー・フーリン、そしてそのサーヴァントであるアサシンを拘束する為にレオニダスとネロとエリザベートが向かうこととなる。

 

「ネロ、エリザベート!」

 

遊馬はマイクも兼用したD・ゲイザーを二人に渡し、二人とも左眼に装着すると言峰綺礼がいると思われるところへ向かい早速行動を開始した。

 

二つのチームがそれぞれ作戦行動を開始し、遊馬達も行動を開始する。

 

「さて、時間もない。すぐに行くぞ」

 

エルメロイII世は遊馬達を連れて第四次聖杯戦争の最初の戦いの舞台へ案内する。

 

「……サクラ」

 

メドゥーサは一刻も早く地獄にいる桜を助けたい気持ちでいっぱいだったが、桜を助ける為にはまず桜と関係があると思われる第四次聖杯戦争のマスターの一人と接触しなければならない。

 

「メドゥーサ、辛いが今は我慢しろ。サーヴァント達との最初の戦闘が終わり、桜の関係者のマスターと接触したらすぐに間桐邸に突入だ……」

 

エミヤはメドゥーサを落ち着かせる為に肩に手を置いて静かに諭した。

 

「すいません、シロウ……ありがとう」

 

「気にするな。私も同じ気持ちだ……」

 

桜を大切に想う者同士、互いに支えあうように言葉を交わす。

 

遊馬、マシュ、アストラル、エルメロイII世、エミヤ、メドゥーサの六人は第四次聖杯戦争の始まりを告げた戦いの舞台へ向かった。

 

 

 




遊馬くん達による桜ちゃんを救い隊結成されました(笑)
メドゥーサの願いが叶い、蟲ジジイに死亡フラグが立ちました。
あと、あの優雅貴族にも色々フラグが……子供の守護者、アタランテ姐さんがいるので……。
((((;゚Д゚)))))))

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。