やっぱりZero関係の小説だと桜ちゃんを何としてでも救出したいですよね。
十年前の冬木市にやって来た遊馬達はエルメロイII世の案内でコンテナが積み上げられた場所である倉庫街へ来た。
深夜で静寂が広がるはずだが、激しい剣戟の音が響いていた。
「既に始まっていたか!マスター、いつでも攻撃を中断させるモンスターの準備をしておけ!」
「おう!俺のターン、ドロー!ゴブリンドバーグを召喚!効果で手札からガンバラナイトを特殊召喚してこのカードを守備表示にする!更にカードを一枚セット!」
遊馬はレベル4のモンスターを二体並べていつでもエクシーズ召喚が出来るように準備する。
「それから、エミヤとメドゥーサはバーサーカーのマスターを探せ!この近くにいるはずだ!奴は急拵えのマスターで体をまともに動かせない!」
「承知した。では見つけ次第、マスターに連絡する」
「そちらも頑張ってください」
エミヤとメドゥーサはバーサーカーのマスターを探しに一旦遊馬達の元から離れる。
そして、遊馬達が激しい剣戟の音がする方へ向かうとそこには……。
「「アルトリア!」」
「アルトリアさん!」
そこにはカルデアから消失していたアルトリアがおり、サーヴァントと戦闘をしていた。
それは右目の下に泣き黒子のある美男子で二刀流ならぬ二本の槍で戦う二槍流の戦士、ランサークラスのサーヴァントだった。
「マシュ!」
「はい!」
遊馬はマシュのフェイトナンバーズを出すとマシュが粒子となって入り、遊馬はすぐさまエクシーズ召喚をする。
「レベル4のゴブリンドバーグとガンバラナイトでオーバーレイ!心優しき乙女よ、神秘の盾をその手に未来を守る最後の希望となれ!エクシーズ召喚!現れよ、『FNo.0 人理の守り人 マシュ』!!」
ゴブリンドバーグとガンバラナイトが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きると未来皇ホープのプロテクターを装着し、身体能力が向上したマシュが高いジャンプをしてアルトリアの元へ飛ぶ。
「アルトリアさん!」
「はっ!?マシュ!来てくれたのですね!」
約束された勝利の剣を振るいながらチラッと見たアルトリアは幸いにもカルデアの記憶を持っており、マシュが来たことに笑みを浮かべた。
「マシュの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手の攻撃を無効にしてバトルを終了させる!」
マシュは自分の周りを舞うオーバーレイ・ユニットを盾に取り込んでアルトリアとランサーの間に入り、金色に輝く盾を構える。
「フルムーン・バリア!!!」
満月を模した金色のバリアが展開され、攻撃しようとしたランサーが遠くに弾かれる。
「ば、馬鹿な!?私の槍が効かないだと!?」
ランサーの持つ槍は魔を打ち消す力を持っており、それをマシュの防御を打ち破れなかったことに驚きを隠せなかった。
そして、エルメロイII世は不敵の笑みを浮かべながらランサーに向かって話しかける。
「落ち着かれよフィオナ騎士団の一番槍。我々はアーチボルト陣営の敵ではない」
「なっ!?私の真名を……」
「ふむ、どうやら只者ではないようだな。なぜランサーのマスターが私だと気付いた?」
すると何処からか男性の声が響き、どうやら魔術迷彩と呼ばれる姿を消す術で近くにいるようだった。
「ケイネス卿、我々は御身の支援にはせ参じた者です」
エルメロイII世は近くにいるランサーのマスター・ケイネスが興味を持つように交渉を始めた。
自分がケイネスの姪の名代という事を切っ掛けに明日の夜に対談の場を設けることを提案した。
エルメロイII世の礼を弁えた対応にケイネスは悪い気を起こさずに魔術迷彩を解いて姿を現した。
「私は逃げも隠れもしない。何を企んでいるのか、聞き出すのが愉しみだよ」
現れたのは優雅ながらも堂々とした雰囲気を漂わせる男性でエルメロイII世とその後ろにいた遊馬とアストラルを見る。
「ほぅ……」
ケイネスは遊馬を最初はただの子供かと思ったが、右手の甲に刻まれた令呪と隣に精霊であるアストラルが見えた事で魔術師とは違う別の存在と断定し、考えを改めた。
「では、今夜は失礼する」
ケイネスはランサーを引き連れて倉庫街から静かに立ち去った。
「よろしいのですか?マスター」
「逸るなランサー。確かに怪しい連中ではあるが、ここまで得体が知れぬとなると様子見が得策だ。私と交渉した男とお前の攻撃を止めた少女……あれはサーヴァントだ」
「た、確かにサーヴァントの気配を感じられましたが、あの二人は我らと何かが違うような……」
「そうだ。普通のサーヴァントとは何かが違う。しかも、その二人とあそこにいた奇抜な髪をした少年と契約している。魔術師とは思えぬ出で立ち、そして隣にいる精霊。あそこまで美しい姿をした精霊は初めて見た。精霊が人間に取り憑くことはまずありえない。きっと、何かが起ころうとしている」
天才魔術師であるケイネスは僅かな時間で遊馬達の違和感を感じて冷静に分析し、この聖杯戦争の本来の参加者ではないと確信した。
そして、詳しい話を聞くためにエルメロイII世の交渉に乗ったのだ。
ケイネスは少々不安な心境で自分たちの拠点へと戻っていった。
ランサーが立ち去り、アルトリアはため息を吐いて遊馬達に駆け寄る。
「助かりました、あのランサーは厄介でしたので」
「アルトリア、俺たちは……」
「分かっています。私もこの第四次聖杯戦争の経験者です。これから起きる悲劇を食い止めるために全力を尽くします。ただ……」
「ただ?」
「実は一つ、私が経験した第四次聖杯戦争と大きな違いがありまして。それはーー」
アルトリアがかつての第四次聖杯戦争と違う点を口にしようとしたその時だった。
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!」
怨念が入り混じったような雄叫びが響き、遊馬達はすぐに戦闘態勢を取る。
そして、遊馬達の前に現れたのは漆黒の鎧に全身を包み込んだ騎士だった。
「ランスロット……」
「第一特異点でレティシアが召喚したバーサーカー!?」
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」
それは第一特異点でレティシアが召喚したサーヴァントのバーサーカー……円卓の騎士の一人、ランスロットだった。
ランスロットは剣を構えて走りだし、一直線にアルトリアに向かって剣を振るう。
「くっ、ランスロット!」
ランスロットは円卓の騎士最強と謳われ、その凄まじい剣技でアルトリアを攻める。
しかし、アルトリアは第四次聖杯戦争の結末を『知っている』ので、ランスロットをここで倒すことは出来ないと分かっており、攻めに転じずに守りに徹していた。
「やれやれ、情けないぞ。青いの」
すると、遊馬のデッキケースが開くと中から黒い光が飛び出してアルトリアを攻めるランスロットを吹き飛ばした。
「オルタ!?」
それはアルトリアの反転した存在、アルトリア・オルタだった。
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!??」
ランスロットもまさか自分が仕えていた偉大なる王が突然二人に増えたことにバーサーカークラスで狂化スキルを与えられても驚きを隠せなかった。
「オ、オルタ!?どうしてあなたが!?」
「無様な姿をしたダメスロットを叩き直しに来た」
「わかりました。とりあえず、ランスロットを抑えましょう」
「それから……マシュ!お前も一緒だ。この三人ならランスロットを完封できる」
「は、はい!分かりました!」
突然のオーダーにマシュは戸惑ったが、自分が力になれるならばとアルトリアとアルトリア・オルタの横に並び立ち、一緒にランスロットに立ち向かう。
元々同じ存在であるアルトリアとアルトリア・オルタは即興とは思えない見事なコンビネーションでランスロットを攻める。
マシュも盾を振るって攻撃に参加し、三人がかりで攻められて大きな隙が出来た時に遊馬はマシュの効果を使う。
「マシュ!」
「はい!」
「フルムーン・バリア!!」
マシュはオーバーレイ・ユニットを盾に取り込み、満月のバリアを張ってランスロットをそのまま強く後方へと弾き飛ばす。
「はあっ!!!」
そして、マシュは地を蹴り、よろけたランスロットの頭に思いっきり盾を叩き込んだ。
歴戦の騎士であるランスロットに大きな一撃を与えたことにマシュは自分が強くなっていることに内心喜んでいた。
しかし、その直後にランスロットは剣を手放して静かにマシュを見つめて呟いた。
「Gala……had……?」
「え?」
ランスロットはマシュの攻撃に何かに気づいたのかそう呟いた。
アルトリア・オルタはそんなランスロットの様子を見て今しかないと遊馬に向かって大きく叫んだ。
「よし……マスター、今だ!」
「罠カード!『デモンズ・チェーン』!!」
初めからセットしていたデモンズ・チェーンを発動し、ランスロットが抵抗する間もなく全ての力を封じる鎖で縛られてしまった。
「ランスロット……あなたとの決着はまた別の機会にします」
アルトリアはランスロットとの生前の決着をつけたいのを我慢し、今やるべきことを行うために遊馬と話し合う。
「マスター、これからの予定は?」
「今から桜ちゃんを助けに行く。その後は二手に分かれたチームの連絡次第だ」
「サクラを……分かりました。サクラは私にとっても大切な人です。私は召喚してくれたマスターを守らなければなりません。サクラを必ず助けてください」
「ああ、任せてくれ」
「……マスター、悪いが青いのとしばらく一緒に行動させてもらう」
アルトリア・オルタの突然の申し出に遊馬達だけでなくアルトリアも驚いた。
「こいつ一人より私も一緒にいれば『アイリスフィール』を守りやすい。そうだろ?」
「……ええ、そうですね。あなたの力が借りられるなら心強いです。それに、アイリスフィールは私達にとって大切な方ですから」
どうやらアイリスフィールという人物がアルトリアを召喚したマスターらしく、そのマスターを守るためにアルトリア・オルタも一緒に行動を共にすると決めたのだ。
「分かった。そういう事なら、問題ないぜ。いつでも連絡が取れるようにD・ゲイザーを持っててくれ」
通信用の最後の二つのD・ゲイザーをアルトリアとアルトリア・オルタに渡し、二人はそれを持って近くに隠れているアイリスフィールの元へ向かった。
それからすぐにエミヤとメドゥーサからランスロットのマスターを発見した連絡があり、急いで向かうことにした。
ランスロットをデモンズ・チェーンで縛られたまま連れて行こうとし、暴れるかと思ったが、マシュがデモンズ・チェーンの鎖を持って引っ張ると何故かランスロットは大人しくマシュの後を付いていった。
倉庫街の近くにランスロットのマスターが壁を背にして苦しそうに座っていた。
体調が悪そうで顔の左半分が歪んでいる男性……それこそがランスロットのマスター、間桐雁夜だった。
「バー、サーカー……くっ!」
バーサーカーを捕縛され、雁夜は令呪を使ってこの場を切り抜けようとしたがそれよりも早く遊馬が駆け寄った。
「あんたが間桐雁夜さんだな!?」
「そ、そうだが……君は……?」
「俺は九十九遊馬。詳しいことは後で話す!それよりも早く行くぞ!」
「い、行くって……?」
「決まってるだろ!桜ちゃんを地獄から救い出すんだ!」
桜を救うと聞いて雁夜は驚愕し、目を見開きながら尋ねた。
「な、何でだ!?何で君が桜ちゃんを……」
「ここにいる二人のサーヴァント……エミヤとメドゥーサは桜ちゃんを大切に想っているんだ!二人に頼まれた、桜を救いたいと……だから助けに行くんだ!!」
遊馬の背後にエミヤとメドゥーサが現れ、突然の事態に酷く困惑していた。
「え、あっ、えっ……?」
「間桐雁夜よ。急なことで動揺しているのは分かるが、我々は一刻も早く桜を地獄から救い出す……君はどうしたいんだ?」
アストラルにそう問われ、雁夜は動揺しながらも胸を押さえながら必死に考えた。
これは自分を陥れる罠かもしれない。
しかし、本当に敵ならランスロットを捕らえている時点ですぐにでも令呪を奪うなりして自分を殺してもおかしくはない。
そして何より、遊馬の言葉から桜を救いたいと言う強い気持ちが心に響いていた。
雁夜の答えは決まった。
「頼む……桜ちゃんを救う為に、力を貸してくれ……」
「おっし!それじゃあ、間桐邸に突撃だ!!ダ・ヴィンチちゃん、ストリームバイクを頼む!」
『了解、安全運転でね!』
遊馬はカルデアからSSバイクのストリームバイクを転送してもらい、予備のヘルメットを雁夜に渡す。
「えっ?えっ?バ、バイクって運転は……」
「俺が運転する!雁夜さんは後ろに乗って掴まってくれ!」
ストリームバイクに跨り、キーを回してエンジンをかける。
「き、君が!?いや、君はまだ子供だろ!?」
「心配するな、バイクの運転は問題なくできる!」
「ええっ!?」
「マシュと先生はフェイトナンバーズへ!エミヤとメドゥーサとランスロットは霊体化して付いてきてくれ!」
遊馬はマシュとエルメロイII世をフェイトナンバーズに入れてデッキケースにしまい、ランスロットのデモンズ・チェーンを解除して動けるようにし、雁夜はオロオロしながら遊馬の後ろに乗る。
「で、出来ればゆっくりで……」
「飛ばすぜ!!!」
「ちょっ、うぉおおおおおおっ!??」
遊馬はストリームバイクをハイスピードで走らせて雁夜は遊馬の体に掴まり、エミヤとメドゥーサとランスロットは護衛の為に霊体化して一緒に走り、アストラルは遊馬の上空を飛んで行く。
☆
約十数分の時間をかけ、遊馬達は大きく立派な洋館である間桐邸に到着した。
「遊馬、作戦通りにあのカードをセットするんだ!」
「おう!俺のターン、ドロー!よし、これで揃った!現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!更にカードをセット!」
遊馬はすぐさま希望皇ホープをエクシーズ召喚してカードを一枚伏せた。
デッキケースから待機していたマシュとエルメロイII世が現れ、最後に霊体化していたエミヤとメドゥーサとランスロットが現れる。
「行くぞ!」
「マスター、私とメドゥーサで先陣を切る!マシュとエルメロイはマスター達の守りを頼む!」
「行きますよ、シロウ!」
「ああ!!」
エミヤは干将・莫耶を投影して両手に構え、メドゥーサは鎖付き短剣を取り出して間桐邸に突入する。
やはり二人はこの家の構造を把握しているのか、一直線に桜がいると思われる蟲蔵へ突入した。
そこには想像を絶する光景が広がっていた。
無数に広がる不気味な蟲……その中心には鎖に繋がれた裸の幼き少女、間桐桜に群がっていた。
そして、その近くには深い皺が刻まれた小さな老人がいた。
その老人こそ諸悪の根源、間桐臓硯だった。
「何じゃ、貴様らは……桜は魔術の調練の途中だ。それとも、貴様らがわしの蟲たちの餌になるのか?」
この世のものと思えない地獄のような光景に遊馬達の怒りが爆発した。
「行け!!エミヤ!!!メドゥーサ!!!」
メドゥーサは眼帯を外し、魔力を大量に使って石化の魔眼を発動する。
「キュベレイ!!!」
石化の魔眼により蟲と臓硯に重圧をかけて動けなくした。
「ぐおっ!?ま、まさか……魔眼だと!??」
「桜を、返してもらうぞ!!!」
エミヤとメドゥーサは床を蹴り、一気に桜の元へ飛んで干将・莫耶と短剣を振るい、桜に群がっていた蟲を切り裂いた。
「サクラ!!」
そして、桜を縛っていた鎖を破壊するとメドゥーサは桜を抱き寄せ、そのまま遊馬達の元へと下がる。
「桜ちゃん!!」
雁夜は桜の頭を撫でると桜は目を開き、虚ろな目で雁夜を見る。
「おじ、さん……?」
そして、雁夜の次に映ったメドゥーサ達を見て桜は初めて見る人たちに疑問を抱く。
「あなた、たち……だぁれ……?」
「俺たちか?俺たちは正義の……いや、違うな」
遊馬がデュエルディスクを構えると希望皇ホープが現れ、桜に向かって堂々と宣言する。
「俺たちは、君の……桜ちゃんの味方だ!!!」
「わたし、の……?」
桜の虚ろな目には見た事ない人たちの後ろ姿が映っていた。
しかしその後ろ姿は今の桜には幼い子供達が夢見る弱き人を助け、悪を倒す存在……『
「何が桜の味方じゃ……桜はわしの、間桐のものだ!誰にも渡さんぞ!!」
臓硯は更なる無数の蟲達を呼び出して桜を奪い返し、遊馬達を喰らうために放った。
しかし、それよりも早く遊馬はデッキケースから取り出した光り輝くカードを希望皇ホープの上に重ねる。
「「希望皇ホープ、シャイニング・エクシーズ・チェンジ!!!」」
希望皇ホープから金色の聖なる光が放たれ、その光に蟲たちはビクッと恐れるように止まってしまい、動かなくなってしまった。
「な、何じゃ!?この光は!?」
「「宇宙の秩序乱されし時、混沌を照らす一筋の希望が降臨する!見参!SNo39!!」」
金色の光が希望皇ホープを包み込むとその体が変化し、新たな装甲と八つの翼と両刃の大剣を携えた希望皇が降臨する。
「「『希望皇ホープONE』!!!」」
「ぐぁあああっ……な、何じゃ、何なのだこの光は……!?」
希望皇ホープONEの聖なる光は臓硯と蟲たちを苦しめた。
臓硯と蟲は太陽の光が苦手で、闇を払う聖なる光を放つ希望皇ホープONEの光は弱点になりうる。
「「希望皇ホープONEの効果!オーバーレイ・ユニットを三つを使い、ライフポイントを10ポイントになるように払って発動!相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、ゲームから除外する!破壊したモンスターの数×300ポイントのダメージを与える!パンドラーズ・フォース!!」」
希望皇ホープONEは三つのオーバーレイ・ユニットを胸の水晶に取り込み、遊馬のライフポイントを得て闇を払う聖なる光を解き放つ。
数多の蟲たちは希望皇ホープONEの光で一瞬で灰となり、更にそのダメージが臓硯を襲う。
「ば、馬鹿な……こんな事が……だが、わしは死なぬぞ……!!」
生に執着して人を捨てた臓硯にはこの場を生き残れる切り札があった。
しかし、その切り札を打ち砕くカードは既に遊馬のフィールドにセットされていた。
「いいや、間桐臓硯。あんたは既に負けている」
「な、何じゃと!?」
「罠カード!『力の集約』!!」
この罠カードこそ、臓硯を倒し、桜を地獄から救い出す希望のカード。
「フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する!フィールド上に存在する全ての装備カードを選択したモンスターに装備する!俺が選ぶのは希望皇ホープONE!!」
力の集約のカードが希望皇ホープONEの中に取り込まれると、この場にいた二人の人間に変化が起きた。
「がぁっ!?くっ、あがっ!?な、何だ!?」
すると、雁夜が苦しみ出して膝をつくと身体中から大量の蟲が現れて引き寄せられるように希望皇ホープONEにまとわりつく。
「あっ、くぅっ……」
そして、少し苦しそうにした桜の胸から光が漏れだすとその中から親指大の蟲が現れた。
「そ、それは!わしの核!?」
「こいつがあんたの核とも言える蟲なんだってな……話には聞いていたが、血が繋がってないとはいえ、自分の孫娘の心臓に埋め込むなんて最低だぜ……」
臓硯は自分の命とも言える核の蟲を桜の心臓に埋め込んでいた。
これがある限り、桜の心臓に宿っていたことで臓硯は不死身で桜に親しいもの達は手出しはできないはずだった。
核の蟲は雁夜の中にいた蟲と同じように希望皇ホープONEにまとわりつく。
遊馬が発動した力の集約で桜の心臓に宿っていた核と雁夜の体を蝕む蟲を装備カード扱いにして全て取り出し、希望皇ホープONEに装備させたのだ。
「だがそれはもう終わりだ。あなたの命に終わりの時が来たんだ……」
「や、やめろ!わしはまだ、まだ生きたいのじゃ!!」
「命が限りあるものだからこそ美しいんだ。限りあるものだからこそ、生命は必死に生きて行くんだ。それなのに、他者を平気で喰らい、傷つけてきたあんたは許されない罪を犯し続けた!!」
「その通りだ。覚悟するんだな、間桐臓硯。力の集約のもう一つの効果……対象モンスターである希望皇ホープONEに対象が正しくない装備カードは破壊する……よって、この蟲たちは破壊される」
希望皇ホープONEは背中のホープ剣を引き抜いて構え、臓硯の核と蟲を自分の前に持って行ってホープ剣を大きく振り上げる。
臓硯の核と蟲は人間にしか宿すことが出来ない。
希望皇ホープONEは当然人間ではなく高次元の存在であるアストラルの分身、力の集約の効果で臓硯の核と蟲は破壊される。
「ヤメロ!!ヤメロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「「ホープ剣・シャイニング・スラッシュ」」
希望皇ホープONEは目にも留まらぬ速さのスピードで臓硯の核と蟲を細切れに斬り裂いた。
「ア、ア、アァ……」
臓硯は核を失い、その蟲の体が砂となって消滅した。
数百年……生に執着して生きてきた妖怪の最期だった。
「てんし、さま……?」
金色と白銀に光り輝き、威風堂々と立つ希望皇ホープONEのその姿に桜はそう呟いた。
暗闇の中に輝くその神々しく美しい姿は天使に見えるだろう。
「終わったよ、桜ちゃん」
「これで君は地獄から解放された」
遊馬とアストラルは桜を安心させるように振り向いて微笑む。
「俺は九十九遊馬だ、よろしくな」
「私はアストラルだ」
「ゆうま……?あすとらる……?」
自分を地獄から救ってくれた人……その名前を呟きながら、色々なものから解放されて安心したのか桜はメドゥーサの胸の中で静かに眠りについた。
慌ただしい戦闘と交渉、そして一人の薄幸の少女を地獄から救い出した冬木の最初の夜が終わるのだった。
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桜ちゃん救出成功!
これにはエミヤとメドゥーサも喜んでるでしょう。
特にメドゥーサは舞い上がってますね。
今回、桜ちゃんを救った罠カードはアテムさんがバクラ戦で使った、力の集約ですが蟲ジジイの核を装備カード扱いにして破壊しました。
遊戯王の相手モンスターの装備カードになれる寄生虫パラサイドを見て思いつきました。
これなら問題なく蟲ジジイを倒せるんじゃないかなと思って決めました。
次回は書けたら優雅貴族の家にカチコミします。