Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回は遂にあのサーヴァントの登場です。
ここから物語は大きく動き出します。


ナンバーズ63 因果の暗殺者

遊馬達は聖杯の器である存在、アルトリアのマスター・アイリスフィールが謎のサーヴァントが狙われている連絡を受け、遊馬達は苦渋の決断で街中で皇の鍵の飛行船を使用した。

 

皇の鍵の飛行船で冬木の西側にある広大な森林、『アインツベルンの森』へ向かった。

 

飛行船を使えばあっという間に到着するので遊馬はその間にモンスターを展開する。

 

そして、森の中で光が激しく散り、遊馬達は急いで飛行船から出ると同時に遊馬はエクシーズ召喚をする。

 

「現れよ!『No.39 希望皇ホープ』!」

 

地上に降りて森の中で輝く光の元へ走るとそこにはアルトリアとオルタが謎の黒い影と戦っていた。

 

あまりにも早い高速移動で動きながら英霊とは思えない銃とナイフを使った攻撃でアルトリアとオルタを追い詰める。

 

「希望皇ホープの効果!ムーン・バリア!!」

 

希望皇ホープはオーバーレイ・ユニットを一つ取り込み、アルトリアとオルタの前に出て翼を半月に展開して謎のサーヴァントの攻撃を防いだ。

 

「何……!?」

 

「希望皇ホープ!」

 

「来てくれましたか、マスター!」

 

「悪い、遅れた!!」

 

「あのサーヴァントは一体……!?」

 

「銃とナイフを使うサーヴァントなんて……」

 

「あの姿からはアサシンクラスだと推測出来るが、あんなサーヴァントは第四次聖杯戦争にはいなかったぞ!」

 

エルメロイII世は経験してきた第四次聖杯戦争では存在していなかった謎のサーヴァントに困惑していた。

 

「この聖杯戦争を荒らす存在か……邪魔するなら、容赦しない」

 

アサシンは遊馬に狙いを定めた。

 

「遊馬!」

 

「分かってる!」

 

「さぁ、ついてこれるか?」

 

アサシンは宝具を展開した瞬間、遊馬は手札からカードを墓地に捨てる。

 

「手札から『クリフォトン』を捨てて効果発動!」

 

「『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』!!」

 

高速移動で目にも留まらぬスピードで遊馬の背後に回り込み、銃を構える。

 

「終わりだ……」

 

アサシンが引き金を引き、遊馬に銃弾が撃ち込まれようとしたその時。

 

「それはどうかな?」

 

遊馬は不敵な笑みを浮かべると放たれた銃弾が消滅した。

 

「何!?」

 

「遊馬君!!」

 

あまりのスピードに反応が遅れたマシュは盾を振るい、呆然としたアサシンをぶっ飛ばした。

 

「ぐあっ!?」

 

アサシンは盾の直撃を受けてぶっ飛ばされ、何が起きたのか理解出来なかった。

 

「何をした……?この弾丸を喰らえば確実にダメージを受けるはず……」

 

「こいつのお陰さ!」

 

『クリクリ〜!』

 

遊馬がデュエルディスクを構えると墓地から藍色の丸く可愛らしいぬいぐるみみたいなモンスターが現れる。

 

「クリフォトンの効果!このカードを手札から墓地へ送り、2000のライフポイントを払って発動できる!このターン自分が受ける全てのダメージは0になる!」

 

「何だその力は……魔術では無いのか?」

 

「似た力だ!俺のターン、ドロー!希望皇ホープで攻撃!」

 

希望皇ホープはホープ剣を引き抜いてアサシンに向かって攻撃する。

 

「くっ!?」

 

アサシンは高速移動で動いて希望皇ホープの攻撃を回避し、アルトリアとオルタは希望皇ホープに続いて聖剣を振るい、追撃する。

 

「あなたの目的は何だ!?」

 

「何故、アイリスフィールを狙う!」

 

「聖杯を破壊する……その為に、召喚された!!」

 

アサシンのその一言にアルトリアとオルタは強い意志を込めた瞳で睨みつけて二つの聖剣を輝かせる。

 

「そんな事は、絶対にさせない!!」

 

「アイリスフィールを……今度こそ守る!!」

 

守ることが出来なかったアルトリアにとって大切な姫……その姫を今度こそ守る為に決意を込めた聖剣を二人同時に振り下ろす。

 

「「約束された勝利の剣!!!」」

 

「っ!?」

 

光と闇の聖なる濁流がアサシンに襲いかかる。

 

濁流がアサシンを呑み込む寸前、謎の金色の光が放たれ、それがアサシンを守る盾となって膨大な光の濁流を防いだ。

 

アサシンは濁流に呑まれる寸前に高速移動でギリギリ回避するがあまりの風圧に顔を隠していたフードが外れる。

 

そして、その隠れていた素顔を見た瞬間、アルトリアとオルタの目は見開き、同時に呟く。

 

「「キリ、ツグ……?」」

 

それは冷たい目をした褐色の肌と白髪を持つ男性でどこかエミヤによく似ていた。

 

「馬鹿な、あの男は……!?」

 

エルメロイII世もその男を知っており、アルトリアと同じく困惑した様子だった。

 

「っ……!」

 

アサシンは慌ててフードを被るが、アルトリアとオルタは声を荒げた。

 

「キリツグ!あなた……何故こんな事を!?」

 

「答えろ……答えろ、キリツグ!!」

 

怒りを込めた瞳で睨みつけ、再び聖剣を輝かせる。

 

その時、天から雷が轟いた。

 

「この雷は!??」

 

その雷にエルメロイII世は嬉しさと困惑が入り混じった複雑な声をあげた。

 

そして、緋色のマントをたなびかせ、高らかに威風堂々と声をあげた。

 

「三方、武器を収めよ。王の御前である!」

 

それは二匹の勇猛な牛が牽引する戦車に乗る髭面の勇ましい巨漢だった。

 

「な、何だぁ!?」

 

「ライダークラスのサーヴァントか……」

 

「凄いオーラです……」

 

その巨漢のオーラに圧倒されながら呆然としていると……。

 

「我が名は征服王イスカンダル!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した!!」

 

そう名乗りを上げたライダー……イスカンダルに遊馬たちは驚愕した。

 

「征服王イスカンダルだと!?あれ?と言うことは……」

 

イスカンダル、彼には幾つも名があり、その名を持つサーヴァントがカルデアにいる。

 

「……すまない、イスカンダル王よ。失礼だが貴殿の少年時代の昔の名はアレキサンダーで間違いないだろうか?」

 

「ほう!精霊も我が名を知っていたか!その通り、余の昔の名はアレキサンダーで間違い無いぞ!」

 

((えぇええええええっ!??))

 

(な、何だと……!?)

 

筋肉ムキムキの髭面の男性がカルデアにいる美少年のアレキサンダーの未来の姿だと知り、遊馬とマシュは叫ぶのを堪えて心の中で驚愕した。

 

(いやいやいや、どうして、ああなった!?)

 

(アレキサンダーさんに一体何があったんですか!?)

 

(あまりにも変わりすぎている……面影すらないじゃ無いか)

 

遊馬とマシュだけでなくアストラルも同じ気持ちだった。

 

「何を考えてやがりますかっ!このバカはーーって!?」

 

すると、イスカンダルの戦車の荷台に乗った気の弱そうな恐らくマスターと思われる少年が、イスカンダルのデコピンを食らい、派手な音が鳴った。

 

エルメロイII世は何故か額をさすって痛そうな表情を浮かべていた。

 

「ほう、貴様がこの聖杯戦争をかき乱している謎のマスターか!」

 

「俺は九十九遊馬だ!訳あってこの聖杯戦争に介入させてもらってる!」

 

「気に食わん……と思ったが、なかなか良い面構えでは無いか!ウェイバーよ、お前より年下なのに堂々としてるではないか!」

 

「う、うるさい!勝手に比べるな!」

 

「「「ウェイバー……???」」」

 

遊馬達の視線が一気にエルメロイII世に向かった。

 

その時、全ての方程式の答えが解けた。

 

エルメロイII世は第四次聖杯戦争の関係者。

 

第二特異点のエルメロイII世はアレキサンダーと一緒に行動を共にしていた。

 

そして、エルメロイII世の本名はウェイバー。

 

「「「ああ……なるほど」」」

 

「うるさい、黙れ、静かにしろ」

 

エルメロイII世は顔を赤く染めながら顔を背けると、イスカンダルは遊馬を見て強く頷いた。

 

「よし、気に入った!小僧、ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか?」

 

「……はぁ?」

 

いきなり何を言いだすんだと遊馬は首を傾げるとイスカンダルは大笑いをしながら交渉をする。

 

「さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する愉悦を共に分かち合う所存でおる!」

 

「いやいやいや。征服なんて興味ねえよ。自分の願いは自分の手で何とかしなくちゃいけねえし、そもそも俺自身の願いはとっくに叶ってるから」

 

遊馬は征服も興味はなく、誰かに仕えるつもりは無い、そもそも願いは叶っているのでイスカンダルの交渉など最初から無意味である。

 

「こりゃー交渉決裂かぁ。勿体ないなぁ。残念だなぁ……いや、まぁ、『ものは試し』と言うではないか……」

 

「やかましい」

 

未練タラタラなイスカンダルに遊馬は一声で斬りふせる。

 

「……はっ!?しまった、マスター!キリツグに逃げられました!」

 

「あっ!?いつの間に……」

 

イスカンダルが現れて隙が出来たのを狙ったのかアサシンがいつの間にか消えていた。

 

恐らくは次々と現れるサーヴァントに無勢では分が悪いと判断して撤退したのだろう。

 

「ああもう!あんたのせいでアサシンに逃げられちまったじゃねえか!!」

 

「いい加減にしてください!イスカンダル!あなたは何しに来たんですか!?邪魔しに来たのならここで叩き斬りますよ!?」

 

遊馬とアルトリアの怒号が飛び交い、その迫力にイスカンダルも少したじろいだ。

 

「そ、それはすまなかったな……実はそこのセイバーの城で酒宴を催そうと思ってな。誘いに来たわけだ」

 

「しゅえん?」

 

「酒盛り、宴という意味だ。しかしイスカンダル王よ、何故そんな事を?」

 

「なーに、王同士、問答を持ってお互いの格を競い合おうと思ってな!アーチャーも呼んでおる、では明日の夜に頼むぞ!」

 

イスカンダルは言いたい事を言い終えると手綱を持って牛を操り、戦車を動かす。

 

「お、おいっ!?」

 

遊馬の制止も効かずにイスカンダルはマスターの少年と共に何処かへ飛んで行ってしまった。

 

「自由すぎる奴だな……」

 

「そうですね……」

 

「どうやらかなり苦労したようだな、ウェイバーよ」

 

「ロード・エルメロイII世だ……」

 

エルメロイII世はいつもの訂正を言いながら目頭を押さえていた。

 

それは大切な人に会いたいと思っていた人の感極まった表情をしており、遊馬達はその思いを汲んでそっとしておいた。

 

遊馬達はアルトリアの元に向かうと二人は大きなため息を吐いていた。

 

「あぁ……アーチャーも来てしまうのですね……」

 

「最悪だ……あの金ピカ王め……」

 

アルトリアとオルタは第四次聖杯戦争で召喚されたアーチャーに苦手意識を持っているようで、話題を変えるために謎のアサシンについて尋ねた。

 

「アルトリア、オルタ。ところであのアサシンのことを知っているのか?」

 

「アルトリアさん、彼が誰なのかご存じなのですか?」

 

「これも因果という奴なのか……シロウには酷な事だ……」

 

「オルタ、あいつはエミヤの知り合いなのか?」

 

アルトリアとオルタは頭を抱え、どうしたら良いのかと悩む。

 

「知り合いとごろの話では無いぞ……」

 

「彼はキリツグ……名はエミヤキリツグです。彼はシロウの……シロウのたった一人の家族で父親なのです」

 

アルトリアから語られた衝撃的な事実に遊馬達は驚愕した。

 

「エミヤの父ちゃん!?」

 

「エミヤ先輩のお父さんがサーヴァントなのですか!?」

 

「ところで、そのエミヤの父が狙っていたアイリスフィールというマスターは?」

 

「近くで隠れています。アイリスフィール!もう大丈夫です!出て来てください!」

 

アルトリアが呼ぶと森の奥から一人の女性が出て来た。

 

それは白い防寒着に身を包んだ綺麗な白い髪に赤い瞳を持つまるでお姫様のような美しい女性だった。

 

「セイバー、彼は誰なの……?」

 

アイリスフィールは遊馬達を警戒していた。

 

「ご心配なく、アイリスフィール。彼らは私たちの味方、信頼における方々です」

 

「本当に……?彼らが、私を解放してくれるの……?」

 

「ええ、本当です。あなたの聖杯の器としての運命を解放してくれます」

 

「聖杯の器の運命……?」

 

アルトリアの言葉に遊馬達は引っかかった。

 

「アイリスフィール、またあのサーヴァントが襲ってくるかもしれません。ここでなく別の場所に移動しましょう。マスター、マトウ邸にお邪魔してもよろしいですか?」

 

「間桐邸に?ああ、良いぜ。歓迎するぜ、えっと……」

 

遊馬はアイリスフィールを見ると、アイリスフィールは軽く睨みつけて問う。

 

「あなた、本当に聖杯を要らないの?聖杯を完成させないために戦っているってセイバーから聞いたけど……」

 

「おう。聖杯を完成させないために俺たちはここにいるんだ。あんたが聖杯とどんな関係か分からないけど、アルトリアが大切に想っている人なら俺たちが必ず守る!」

 

笑みを浮かべて自分の胸を叩く遊馬のその眼が嘘をついてないとアイリスフィールは分かると、アイリスフィールも頷いて笑みを浮かべた。

 

「……分かったわ、あなた達を信じるわ。早速、あなた達の拠点に連れてってくれる?」

 

「オッケー!それじゃあ、行こうぜ!あ、それから俺は九十九遊馬!遊馬が名前だぜ!」

 

「ユウマね、私はアイリスフィールよ。アイリでも良いわ」

 

「おう!よろしくな、アイリさん!」

 

遊馬達はアイリスフィールを守る為にアルトリアとオルタと共に間桐邸に向かった。

 

間桐邸では桜と凛は既に眠っており、絆を取り戻した姉妹は仲良く二人並んでベッドで眠っていた。

 

遊馬達の帰宅にエミヤが出迎えるとアイリスフィールの姿に目を見開いて驚愕した。

 

「イリヤ……?」

 

「えっ?」

 

「あ、いや、何でもない……ミス・アイリスフィール、ようこそ間桐邸へ。よろしければ紅茶とお菓子はどうですか?」

 

「サーヴァントがお茶を淹れるの?でも、私を満足出来るかしら?」

 

「満足出来なかったらお茶を私にかけてもらっても構わないですよ」

 

「あらあら?随分強気ね、それじゃあ案内してもらえるかしら?」

 

「喜んで」

 

アイリスフィールは手を差し出すとエミヤはまるで執事のように慣れた手つきでその手を取り、優雅に客間へ案内した。

 

エミヤはアイリスフィールを客間へ案内すると、昼間作っていたスコーンとジャムを出し、そして紅茶を見事な手際で淹れた。

 

まるでその姿は一流の執事でアイリスフィールは紅茶を飲み、スコーンを食べると驚くように声を上げた。

 

「美味しい……!こんなに美味しい紅茶とスコーンは初めてだわ!」

 

「喜んでもらえて光栄だ。よろしければ、あなたにピッタリの話し相手を連れて来ましょうか?」

 

「私にピッタリ?ええ、頼むわ」

 

「では、少々お待ちを」

 

エミヤは数分部屋を出て誰かを呼んでくると……。

 

「ご機嫌よう、私はフランス王妃のマリー・アントワネットですわ」

 

「ええっ!?あ、あのマリー・アントワネット王妃!?」

 

「はい。よろしければ私があなたの話し相手になりますわ」

 

「まぁ、素敵……!」

 

アイリスフィールはマリーと二人で優雅なお茶会を始め、役目を終えたエミヤは静かに客間を後にした。

 

一方、遊馬達は別室で謎のアサシンについて話し合っていた。

 

「彼……エミヤキリツグは本来ならこの時代の人間です。魔術師殺しと呼ばれる傭兵のような魔術使いで銃器やナイフを使った殺しのプロです。そして……私が経験した第四次聖杯戦争での私のマスターです」

 

「アルトリアの元マスターだって!?」

 

「ええ。私は彼は第四次聖杯戦争で聖杯を勝ち取るために非道な手を使って多くの敵を屠って来ました……正直、私は彼を嫌っていました。彼も私を嫌ってましたが」

 

「なんで、そのキリツグさんはそこまでして聖杯を手に入れようとしたんだ?」

 

「……世界の恒久的平和。それがキリツグの願いでした」

 

「世界の恒久的平和か……昔、なんかあったんかな?」

 

「そこまでは分かりません。しかし、願いを叶えようとしてもキリツグは聖杯が穢れていることを知り、私に聖杯を破壊するように命令したんです。しかし、聖杯を破壊しても結果的に冬木に大災害が起きてしまい、大勢の人が亡くなってしまいました」

 

「……その大災害でたった一人、生き残りがいた。それが……」

 

オルタがその生き残りの名前を口にしようとした時、扉が開いて静かに入室した。

 

「私だ」

 

「シロウ……」

 

「エミヤ……」

 

エミヤは暗い表情をしながら壁に寄りかかる。

 

静かに目を閉じて遠い昔の記憶を蘇らせながら語る。

 

「私は大災害が起きる前の家族との記憶は無い。あるのは大災害の地獄のような風景だけだ。そして、切嗣……爺さんが俺を助け、養子にして私を息子として育ててくれた。一緒に過ごせた時間は僅かだが、爺さんは俺にとって大切な家族だ。何故爺さんがサーヴァントになったのか分からない……爺さんが何故、よりにもよって彼女を襲ったのか……」

 

「……キリツグとアイリさんはどんな関係なんだ?」

 

「……この世界では違いますが、キリツグとアイリスフィールは夫婦なのです」

 

「はぁ!?夫婦だって!?」

 

「ええ。キリツグとアイリスフィールは夫婦で娘が一人いました。少なくとも二人は愛し合ってたはずです……」

 

「……何故、キリツグはアイリスフィールを殺そうとしているのか……彼は何を考えているのか……」

 

「分からない……爺さんは何か意味があって行動をしていると思われるが……」

 

アルトリア達は何故切嗣がアイリスフィールの命を狙っているのか分からず困惑している。

 

すると遊馬は腕を組んで考えていると、ある事に気づく。

 

「……あれ?って事は、世界は違うけどアイリさんはエミヤの母ちゃんって事になるのか?」

 

エミヤはアイリスフィールが母と言われて戸惑いの表情を見せた。

 

「い、いや、確かにそうだったが、私は生前に彼女に会ったことがない……二人の娘である姉さんとは暮らしたことがあるが……」

 

母という存在に慣れていないのかエミヤの態度に遊馬は首を傾げてキョトンとしながら言う。

 

「でも、母ちゃんには変わりねえんだろ?恥ずかしがる事はねえじゃん。例え、エミヤが会ったことが無くても、世界が違くても、家族なら守ってやるべきなんじゃねえか?」

 

「……マスターならそうするか?別世界で例え自分を知らない存在である家族を守るのか?」

 

「当たり前じゃん!例えその人達が俺を知らなくても、俺にとっては大切な人だ。その人達が命を狙われているなら全力で守る!」

 

遊馬の言葉にエミヤは目を閉じて考え込む。

 

この世界はエミヤが生きた過去では無い、幻のような世界。

 

しかし、この世界には、もしも何かが変わっていたら自分の義母になっていたかもしれない女性がいる。

 

関係無いかもしれない、だがエミヤの脳裏には忘れられない笑顔が浮かんでいた。

 

『シロウ!』

 

雪の妖精のように可愛らしい少女……そして、その面影はアイリスフィールとほぼ同じで重なってしまう。

 

「……そうだな、ここで『母さん』を守り抜かなければ姉さんに怒られてしまうな。そして、母さんを狙っている爺さんを姉さんの代わりに叩き直さないとな」

 

「その意気だぜ!エミヤ!」

 

「ああ、かっとビングだな。マスター」

 

「おう!かっとビングだ、エミヤ!」

 

平行世界の母であるアイリスフィールを守る為の決意を固めたエミヤは窓際に立ち、夜空を見上げて月を見つめる。

 

「爺さん……あんたに母さんを、家族を殺させない……必ず、止める!!」

 

「ええ、止めましょう……シロウ」

 

「アイリスフィールを守るぞ、シロウ」

 

アルトリアとオルタもエミヤと同じく決意を固めて共に月を見つめる。

 

「聖杯の器、アイリスフィールか……」

 

そして、エルメロイII世は煙草を吸いながらこの世界の相違点である存在を呟き、考えるのだった。

 

 

 




アサシンの弾丸はメチャクチャやばいシロモノでしたが、クリフォトンの効果で何とか回避しました。
全てのダメージがゼロなら何とかなるかと思って。

次回は書けたら聖杯問答の始まりまで書きたいですね。
その前に遊馬と凛ちゃんと桜ちゃんの話を書きたいですね。

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