Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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何とか書き終えることができました。
聖杯問答の話はアルトリアが可哀想でしたが、ここでははっちゃけているのでまとも?な答えを出しています。
そして、遊馬の未来皇としての答えを出します。
もしも違和感があったらすぐに指摘してください、すぐに訂正します。


ナンバーズ65 聖杯問答

対談が終わり、お昼を終えると遊馬達は一足先にアインツベルン城に到着していた。

 

今夜の酒宴にイスカンダルは盗んだワイン樽しか持ってこないと思われるのでアルトリアはエミヤに酒のツマミに豪華な料理を用意して欲しいと頼んだ。

 

間桐邸で食べたエミヤの料理を気に入ったアイリスフィールがアインツベルンの財産を使って冬木から大量の食材を買いこんだ。

 

「エミヤ、美味しい料理をお願いね♪」

 

「シロウ!お願いします!」

 

「私たちを満足させてくれ!!」

 

アイリスフィール、アルトリア、オルタの三人は目を輝かせてエミヤを見つめていた。

 

「仕方ない……姫様達の為に腕を振るおう……!」

 

エミヤは調理器具を投影し、その身に宿る生前から蓄えて来た無限のレシピを躍らせる。

 

遊馬達はエミヤが料理をしている間は暇なのでテーブルや椅子、皿などの食器の準備を手伝った。

 

そして、夕暮れ時になり、遊馬はカルデアから送られてきた新品の私服に着替える。

 

「せっかくだから服装もちゃんとしないとな」

 

「まあいつもの服だが小鳥が新品を持ってきて良かったな」

 

「ああ!」

 

「ところで、遊馬君はその服に何か思い入れがあるんですか?」

 

小鳥が持ってきた遊馬の私服は同じものでマシュはそれを気になった。

 

物によっては傷んでいるものや穴を塞いでいるものもあった。

 

「思い入れって言うか、この服は小さい頃から着ているのと同じデザインで気に入ってるのもあるけど、デュエルカーニバルやバリアンとの戦いやドン・サウザンドの時にも着ていたから俺にとっては戦いに向かう大切な服なんだ」

 

「そうだったんですか?」

 

「ああ。だからこれを着ると気合いが入るんだよ」

 

「確かに今夜は気合いを入れないとですね……」

 

今夜の酒宴に参加するのは征服王イスカンダルと騎士王アルトリア、そして最強の英霊・アーチャー。

 

気合いを入れないとプレッシャーに押し潰されるかもしれない。

 

「マシュ、酒宴の時……一緒にいてくれるか?」

 

「えっ?い、良いんですか?その、私で……ここは王や皇帝のブーディカさんやネロさんとかが一緒の方が……」

 

「良いんだよそんなことを気にしなくても。俺にとって一番信頼して側にいると安心できるサーヴァントはマシュなんだからさ」

 

遊馬が最初に契約を交わし、それからずっと一緒に戦って来たサーヴァントはマシュである。

 

そのマシュは遊馬にとってはアストラルと同じくらい大切な相棒となっていた。

 

遊馬からのその言葉にマシュは心がとても温かくなった。

 

「遊馬君……はい!!」

 

マシュは満面の笑みを浮かべて頷いた。

 

 

その夜、城の中庭に遊馬とアストラルとマシュ、アルトリアとアイリスフィールが待っている。

 

城の中にはエルメロイII世を初めとする多くのサーヴァントがいつでも遊馬達を守れるように待機している。

 

美しい月が優しく照らし、静かな時間が流れ、その時が来た。

 

雷鳴が轟き、戦車に乗ったイスカンダルとウェイバーが降り立つ。

 

「ほう!酒宴のために色々用意してくれたようだな!」

 

テーブルと椅子、テーブルに乗る食器などを見てイスカンダルは感心したように何度も頷いた。

 

イスカンダルの服装が初めてあった時の姿ではなく、何故かよく分からないゲームかアニメのタイトルのTシャツを着たラフな私服姿なのはツッコミを入れたかったが、遊馬達はグッと我慢した。

 

イスカンダルは冬木のとある店から盗んだワイン樽を担ぐとエミヤが静かに近づく。

 

「イスカンダルよ、そのワイン樽を寄越せ」

 

「何?これは余が持って来たものだぞ?」

 

「黙れ、盗人が。ワインはこちらで良いものを用意した。だからそのワインは元あった場所に返す」

 

「イスカンダル。王ともあろう者が己のため、そして家族のために必死に働いている民の物を勝手に盗むのは果たして王であるのか?いいから早く渡しなさい」

 

エミヤとアルトリアの凄まじい威圧感と正論、そして遊馬達のジト目に流石のイスカンダルもこれはマズイと仕方なくワイン樽を渡す。

 

「し、仕方ない……そこまで言われたのなら渡すしかないな……」

 

「やれやれ……」

 

エミヤがワイン樽を城の中に運び、イスカンダルとウェイバーが席に座ると、突然強烈なオーラが中庭に現れた。

 

霊体化を解除して静かに現れたのは金色の鎧に身を包み、金髪と赤い瞳を持つ英霊だった。

 

「我を置いて勝手に宴を始めるつもりか?雑種」

 

その一言からでも分かる、まさに天上天下唯我独尊と言う言葉が相応しい存在。

 

最古にして最強の英霊と謳われる時臣が召喚したサーヴァント。

 

その名も、英雄王ギルガメッシュ。

 

その凄まじいオーラに遊馬とアストラルは一瞬、ドン・サウザンドを脳裏に浮かんだが既に覚悟を決めている二人は堂々としながら名乗る。

 

「……あんたが、英雄王ギルガメッシュか。俺は九十九遊馬だ!」

 

「我が名はアストラル!偉大なる英雄であるあなたに会えたことを光栄に思う!」

 

「我の名前を口にするとは恐れ知らずだな、雑種よ。だが、その精霊に免じて許してやろう」

 

ギルガメッシュはアストラルの言葉でなんとか気分を害さずにそのまま椅子に座った。

 

遊馬達も椅子に座るとエミヤが作った料理をワゴンに乗せて持ってくるとテーブルに並べるとイスカンダルは目を輝かせた。

 

「おお!何という旨そうな料理だ!」

 

「すげぇ……誰が作ったんだ?」

 

「私だ。口に合うか分からないがな」

 

エミヤが作ったと聞き、イスカンダルとウェイバーが驚く中、ギルガメッシュは行儀悪くフォークで並べられた料理の一つを刺して口に入れた。

 

ギルガメッシュはもしも自分の口に合わなければ即刻エミヤを抹殺しようと思ったが、料理を口に入れた瞬間、目を見開いた。

 

「こ、これは……!?何ということだ……」

 

「如何かな?英雄王」

 

「フッ……この場に自信を持って出す度胸があるな。まさか、この我にこの言葉を言わせるとはな……美味いぞ、雑種よ。褒めてつかわそう」

 

エミヤの料理はギルガメッシュの舌をも唸らせるほどだった。

 

「当然です、シロウの料理は最高ですからね!」

 

まるで自分のことのように喜ぶアルトリアは胸を張って自信満々に答え、いつの間にかモキュモキュと料理を食べていた。

 

「ははははっ!良い、実に良いぞ!この美味なる料理には最高の酒が合う。見よ、これが王の酒というものだ!」

 

気分が良くなったギルガメッシュは手の上を金色に輝かせると、空間が歪んで中から金の酒器を取り出した。

 

その酒器の中には神代の酒が入っており、それを奪い合うために戦争が起きたほどの美酒であり、アルトリアとイスカンダル、そして……料理を作ったエミヤにも特別に振る舞った。

 

エミヤは少々複雑な表情をしながら飲んでいたが。

 

酒が飲めない遊馬達はエミヤが用意したジュースを飲み、エミヤの料理を感動しながら食べる。

 

しばらくすると、イスカンダルはこの酒宴の最大の目的を語り出す。

 

「さて、美味い酒と肴で身も心も満たしたところで、話そうではないか……聖杯は相応しき者の手に渡る運命にあると言う。英霊同士、お互いの格を競おうではないか。言わばこれは、聖杯戦争ならぬ『聖杯問答』。誰が聖杯の王に相応しい器か」

 

「戯れはそこまでにしておけ。酒も剣も我が宝物庫には至高の財しかあり得ない。これで王としての格付けは決まったようなものであろう?」

 

「ふん、アーチャーよ。貴様の極上の酒は、まさしく、至宝の杯に相応しいが、生憎聖杯と酒器は違う。まず貴様がどれほどの大望を聖杯に託すのか、それを聞かせてもらわねば始まらん」

 

「仕切るな雑種。第一、聖杯を奪い合う前提からして、理を外しているのだぞ。そもそもにおいて、あれは我の所有物だ。世界の宝物は一つ残らずその起源を我が蔵に遡る」

 

「じゃあ、貴様。昔、聖杯を持っていたことがあるのか?どんなもんか正体も知っていると?」

 

「知らぬ、雑種の尺度で測るでない。我の財の総量は、とうに我の認識を超えている。だが宝であると言う時点で我が財宝であることは明白だ。それを勝手に持ち出そうなどと、盗人猛々しいにも程があるぞ」

 

ギルガメッシュの聖杯戦争に参加する理由を聞いた遊馬は自分の胸に手を置く。

 

(うーん、聖杯はここにあるんだけどね……)

 

ドレイクがポセイドンをしばいて手に入れたオリジナルの聖杯が今は遊馬の胸の中に宿っており、アストラルとマシュはそっと耳打ちをする。

 

(遊馬、黙っておいた方が賢明だぞ)

 

(そうですね……遊馬君、聖杯は最後の切り札として黙っておくべきです)

 

(オッケー)

 

下手に混乱させるわけにもいかないので遊馬の中に聖杯があるのを黙っておく。

 

「つまり、ギルガメッシュ王はこの世の全ての財が自分のものだから他人に奪われるのは嫌って訳か。じゃあ、イスカンダルは何が目的なんだ?」

 

遊馬がイスカンダルに聖杯に託す願いを聞くと、イスカンダルは少し恥ずかしそうに答えた。

 

「受肉だ」

 

「受肉?」

 

「はぁ!?お、お前!望みは世界征服だったーーぐへぁっ!?」

 

ウェイバーがイスカンダルに駆け寄った瞬間にイスカンダルのデコピンが炸裂し、ウェイバーは宙を飛んで倒れた。

 

あれは痛いと思いながらイスカンダルの話を聞いていく。

 

「馬鹿者、たかが杯なんぞに世界を取らせてどうする。征服は己自身に託す夢。聖杯に託すのはあくまでも……そのための第一歩だ」

 

「なるほどね、聖杯で受肉してもう一度生を受けて、この世界でイスカンダルとしての新たな人生を歩みだすって事か?」

 

「そうだ!その通りだ、分かってるじゃないか、坊主!!」

 

「遊馬だ。まあ、俺もサーヴァントの一人を受肉させたからよく分かるぜ」

 

自分のサーヴァントを受肉させたと聞き、イスカンダルは聞き捨てならぬ表情で驚いた。

 

「何ぃっ!?お前のサーヴァントを受肉させただと!?」

 

「ん?ああ。レティシアって言う女の子のサーヴァントなんだけど、生まれが特殊で英霊の座に戻ることができない存在だったんだ。レティシアは虚ろな存在だけど、生きたいと強く願ったんだ。そこで俺とアストラルの力で受肉させてその存在を確立させたんだ。あとはこっちのいざこざが終わったら、俺のうちに連れてって一緒に暮らすんだ」

 

聖杯によってもう一人のジャンヌとして生み出されたレティシアは遊馬の言葉を聞いて生きたいと願った。

 

今では遊馬達と心を通わせて人間らしくなり、サーヴァントであると同時に人間として生きる決意をした。

 

「そうかそうか、なあ坊主。是非とも後でそのレティシアに話を聞かせてもらえないか?受肉した感想とかを聞きたい」

 

「まあ話ぐらいなら大丈夫だと思うぜ」

 

「よし!いい話を聞けた。さあ、次は騎士王、お前だ!お前は聖杯に何を望む?」

 

ギルガメッシュ、イスカンダルに続いて今度はアルトリアが語る番である。

 

「私は、滅びた故郷の救済、王の選定のやり直し……と言うのが前の願いでした」

 

「前だと?今は違うというのか?」

 

「はい。私は過去を変えることをやめました。願いはありますが、聖杯で叶えられるものでは無いので……」

 

「ふっ、聖杯では叶わぬ願いか……それはどんな願いを所望なのだ?ほら、言うてみよ」

 

ギルガメッシュが試すように聞くとアルトリアは酒を飲み、息を静かに吐いて語る。

 

「まず一つ……シロウを世界から奪い取り、永遠に一緒にいることです」

 

「シロウ?それはこの肴を作った先ほどの赤いサーヴァントか?」

 

「世界から奪い取るだと……?」

 

永遠に一緒にいるはともかく、世界から奪い取るという言葉にイスカンダルとギルガメッシュは不審に思う。

 

「彼はとある事情で世界に縛られています。詳しくは話せませんが、私は彼を解放して一緒にいたいのです……」

 

「ほぅ……あやつはお前と同じ時代の英霊か?いや、違うな……こんな美味い飯をその時代で作れるはずがないな、そもそも何者なのだ?」

 

「そこは私個人のプライベートなのでお話できませんが、彼は私の大切な人です」

 

世界にその名を馳せる騎士王アーサー・ペンドラゴンではなく一人の少女としての大切な願い。

 

その願いにギルガメッシュは杯を置くと腹を抱えた。

 

「ぷっ……ふはははははっ!何を願うかと思えば男を手に入れたいなど、それでは王ではなくただの恋する乙女ではないか!これは傑作だな!!」

 

アルトリアが騎士王ではなく、その辺にいるただの恋する乙女のような願いにギルガメッシュは大笑いをする。

 

アルトリアの願いを馬鹿にしたギルガメッシュに遊馬とマシュは怒りを募らせて思わず立ち上がろうとしたがアストラルが静かに静止した。

 

ギルガメッシュの態度にアルトリアは苛立つことなく、静かにもう一つの願いを言う。

 

「もう一つは……円卓の騎士のみんなともう一度ちゃんと向き合って話がしたい……それだけです……」

 

アルトリアの二つの願い、ギルガメッシュは大笑いをしているがイスカンダルは静かに尋ねる。

 

「……騎士王よ。お前さんや国を破滅に追い込んだ元凶である息子と妻を寝取った配下の騎士、そいつらとも話すつもりか?」

 

「……ええ。私は逃げずに過去を向き合います。全ては私がいけないのですから。その二人とは特に決着をつけなければなりません。もしもの時には……」

 

「再び刃を交えるつもりか?」

 

「いいえ、剣ではなく拳で語り合います。こう見えても腕っ節はかなりありますからね」

 

拳を構えて無垢な笑みを浮かべるアルトリアにイスカンダルは楽しそうに大笑いをした。

 

「ふははははっ!いやー、王としての願いではなく一人の少女としての願いを語るとは思わなかったが、前を向いてしっかりと歩むその心意気は気に入った!」

 

「ありがとうございます。ただ、シロウへの願いに関しては私一人では難しいので同盟者を募っていますが……」

 

エミヤを世界から奪い取る、それがどういう意味なのかは遊馬達にはまだ理解できてないが、アルトリアの同盟者の一人が己の反転した存在であるアルトリア・オルタだとすぐに気付いた。

 

反転した存在でもエミヤを大切に思う気持ちは同じなので同盟者として共に戦うのだろう。

 

「さて、征服王。次はもう一人の『皇』から話を聞いたらどうですか?」

 

「何?ここにもう一人王がいるのか?」

 

「未来皇……そこにいる少年ですよ」

 

アルトリアはイスカンダルに次に遊馬に語ってもらうことを勧めた。

 

「未来皇だと……?中々の名を持つようだな。では問おう!お前は聖杯に何を願う!?」

 

「俺?俺は聖杯にかける願いなんて無えよ」

 

聖杯にかける願いはないと即答する遊馬にイスカンダルは拍子抜けした。

 

「無いだと?子どものくせに願いが無いのか?」

 

「願いは自分の手で叶えるから意味があるんだろ?それに、俺の願いは……アストラルと出会った事で全て叶ったんだ」

 

「その精霊が叶えたのか?」

 

イスカンダルの言葉にアストラルは首を左右に振って応えた。

 

「それは違う。私は遊馬の願いに間接的に関わっただけで直接叶えたのは遊馬自身の力だ」

 

「……アストラルと出会った事で俺は大きく一歩前に踏み出すことができた。父ちゃんとの約束だったデュエルチャンピオンになれて、沢山の大切な仲間、友達、そしてライバルが出来た。聖杯じゃなくて自分自身の手で掴んだからこそ願いは意味のあるものなんだ」

 

遊馬の夢や願いは大きなものから小さなものまでたくさんあった。

 

応援してくれる人もいれば、その夢や願いを馬鹿にして否定する人も大勢いた。

 

しかし、それを自分自身が歩んで来た道と信念……全ては遊馬の信じる『道』があったからこそ叶えられた。

 

「願いは勇気を持って踏み出し、どんなピンチでも諦めずに最後までチャレンジすれば、きっと叶えられる!それが、父ちゃんから教わった俺のかっとビング!!俺の信じる道だ!!!」

 

幼き日の父からの約束を胸に長い年月をかけて悩み、苦しみながら遊馬自身が築き上げてきた『かっとビング』と言う名の光り輝く道。

 

それは三人の偉大なる王道に劣らない素晴らしい道である。

 

「己の願いを全て自分の手で掴み取ったからこそ、聖杯の力を無用とするか……うむ、何と立派な心意気よ!敵ながら気に入ったぞ、坊主!」

 

イスカンダルは遊馬の幼いながらも立派な心意気に感銘を受けた。

 

そして、そんな遊馬達が聖杯戦争に介入して聖杯完成を阻止する理由を尋ねる。

 

「ではこの聖杯戦争に介入した目的は何だ?」

 

ようやく遊馬達が語る本題に入る時が来た。

 

この第四次聖杯戦争の残る二騎のサーヴァントであるイスカンダルとギルガメッシュに話すことができる。

 

「俺たちの目的……それは、人類と世界の未来を取り戻す。その一つとして、この聖杯戦争の聖杯完成を阻止する事だ」

 

「人類と世界の未来を取り戻すだと?」

 

「そ、それってどう言う事だよ!?」

 

「ふん……」

 

「それじゃあ、こっからは俺たちの本題だ。俺たち……カルデアの任務、グランドオーダーを!」

 

遊馬は未来から来た事、人理継続保障機関・カルデアの目的、そして……人類と世界の未来を取り戻す最初で最後の任務、グランドオーダー……その全てを話した。

 

「まさか……未来が、人類の全てが消滅していたなんて……それじゃあ、爺ちゃんも婆ちゃんも……」

 

ウェイバーは頭を抱えて大切な家族同然の存在である祖父と祖母の事を想い、涙を浮かべて苦悩していた。

 

狼狽えているウェイバーに対し、イスカンダルは何も出来なかった。

 

イスカンダルにとってもウェイバーの祖父と祖母は大切な人であるので先ほどのようにデコピンなど出来なかった。

 

「征服する世界が滅びてしまうのか……それはちと困るな」

 

「それから、この冬木にある聖杯は前回の第三次聖杯戦争の時に汚染されて世界を滅ぼす大量殺戮装置になっちまったんだ。例えば、イスカンダルが受肉を望んだ時は受肉したイスカンダル自身が世界を滅ぼす災厄の存在になっちまうんだ!」

 

「な、何と……!?ぬぉお……それは困ったな……」

 

征服する世界が滅び、更には受肉するための聖杯が汚染されて使い物にならないと知り、イスカンダルは額に手を置いて困り果てた。

 

すると、ギルガメッシュはニヤリと笑みを浮かべて遊馬に話しかけた。

 

「雑種よ、我が力を貸してやっても構わぬぞ?」

 

「本当か?」

 

「だが、条件が一つある。貴様の持つ光の剣士……その力を寄越せ」

 

ギルガメッシュはこの世界に召喚されて最も欲しいものを見つけた。

 

それはこの世界で聖杯戦争に介入し、サーヴァント同士の戦いを止めて来た光の剣士……それは十中八九あれしかなかった。

 

「それって……まさか、希望皇ホープの事か!?」

 

「そうだ!そして、その剣士は確かNo.39と言っていたな?もしかして他にもあるのか?」

 

「ああ……ナンバーズは1から100まである……」

 

「1から100までのカードか……良い、実に良い!雑種よ、その100枚のカードを全て我に献上しろ。そうすれば我の力を貸してやっても構わぬぞ!!」

 

あらゆる財をその手に納めて来たギルガメッシュだが、ナンバーズは見たこともない未知なる力を秘めたカード。

 

ギルガメッシュは遠目から初めて希望皇ホープの姿を見た時からそのカードを欲しいと思った。

 

収集癖のあるギルガメッシュが是非とも手に入れたいと思うのも当然でナンバーズを全て捧げればは力を貸しても構わぬと言うが、遊馬はギリっと睨みつけて叫ぶ。

 

「ふざけるな、絶対に嫌だ!!!」

 

「ほぅ、この我の最大限の譲歩を断ると言うのか……?」

 

ギルガメッシュはピクッと顔を引きつく。

 

遊馬は椅子から立ち上がり、アストラルを守るように腕を横に出す。

 

「ナンバーズはアストラルの大切な記憶の欠片だ!それに、ナンバーズ1枚1枚にはそれを手にしたものたちの心や願い、そして俺たちの長い戦いの記憶が刻まれているんだ!!」

 

ナンバーズはただの強大な力を持つカードではない。

 

アストラルの記憶の欠片であると同時に遊馬とアストラル……そして数多くのライバルや敵と熱く厳しい戦って来た戦いの記憶の象徴でもある。

 

「ギルガメッシュ!あんたがどれだけ偉い王様だろうとも、誰かの大切な記憶を奪う権利なんか絶対にない!!」

 

遊馬がナンバーズを……アストラルを絶対に守ろうとする強い意志にアストラルはフッと笑みを浮かべて遊馬の隣に立つ。

 

「ギルガメッシュ王よ、あなたにナンバーズを渡すわけにはいかない。ナンバーズは『私と遊馬のモノ』だ。そしてこの力は未来を斬り開く為にある……それをあなたのような人に渡すわけにはいかない!!」

 

「俺たちの邪魔をするって言うなら……ここであんたを止める!!」

 

遊馬とアストラルの挑戦的な態度にギルガメッシュは怒りに震える。

 

「雑種共が……この我を愚弄するか!!我のモノにならないのなら、奪うまでだ!!!」

 

「上等だ!!行くぜ、アストラル!!!」

 

「ああ!!」

 

遊馬はバク転をしてその場から大きく下がり、D・パッドとD・ゲイザーを懐から取り出して上に投げ飛ばす。

 

「デュエルディスク、セット!」

 

D・パッドをデュエルディスクに変形させて左手首に装着する。

 

「D・ゲイザー、セット!」

 

D・ゲイザーを展開して左眼に装着する。

 

デッキからカードを5枚ドローして手札にする。

 

「遊馬君……!」

 

「マシュ、俺たちの後ろに来てくれ!」

 

「はい!」

 

マシュは急いで走って遊馬の後ろに立つ。

 

「下がるぞ、ウェイバー!」

 

「お、おう!ぐえっ!?」

 

イスカンダルはワイン樽を持ち、ウェイバーの首根っこを掴んで後ろに下がる。

 

「アイリスフィール、私の後ろに!」

 

「え、ええ……」

 

アルトリアはアイリスフィールの手を取り、エミヤ達がいる方へ向かった。

 

「行くぜ、俺のターン!」

 

遊馬が右手を握りしめて掲げると真紅に輝き、カオスの強い光が放たれる。

 

「な、何だあれは!?」

 

「あの力、魔力ではなさそうだな。何をするか楽しみだな!」

 

突然右手に輝く真紅のカオスの光にウェイバーは驚き、イスカンダルは興味深く見つめる。

 

「ほぅ……」

 

ギルガメッシュは目を細めて余裕の表情でその力を見つめる。

 

遊馬とアストラルの両側に七人の皇、バリアン七皇の幻影が現れる。

 

「行くぜ!ナッシュ!メラグ!ドルベ!ベクター!アリト!ギラグ!ミザエル!人類最古の英霊、英雄王ギルガメッシュにバリアン七皇の力を見せてやろうぜ!!!」

 

そして、ドローをする遊馬と七皇の七つの幻影が一つに重なり、声を揃えて叫んだ。

 

「バリアンズ・カオス・ドロー!!!」

 

必然のドローにて遊馬が望んだカードを引き、そのカードを発動させる。

 

「来たぜ、みんな!俺はドローしたこのカード、『RUM - 七皇の剣』を発動!!このカードは通常ドローをした時に発動する事が出来る!エクストラデッキ、または墓地から『オーバーハンドレッド・ナンバーズ』を特殊召喚して、そのモンスターをカオス化させる!」

 

バリアン七皇の切り札である七皇の剣を発動し、七体のオーバーハンドレッド・ナンバーズの中でも最強にして最大クラスのモンスターを呼び出す。

 

「行くぜ、ミザエル!お前の力を貸してくれ!!」

 

ゴォオオオオオオオ……!!

 

突如、空間が震え、遠い宇宙の果てから誕生した強大なる光が飛来する。

 

「宇宙を貫く雄叫びよ!遥かなる時を遡り、銀河の源より蘇れ!」

 

遊馬の前に渦巻きのような空間の亀裂が浮かぶと中から巨大な菱型の物体が現れた。

 

「顕現せよ、そして我を勝利へと導け!」

 

菱型の物体がまるでロボットのように変形すると体全体が鋭利な刃のような形をした赤黒いドラゴンが顕現した。

 

「『No.107 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)』!!!」

 

光を司る銀河眼の光子竜と対をなす時を司るドラゴン。

 

それは遊馬とアストラルが数少ない勝利を挙げることが出来なかった存在である最強のドラゴンの一角でもある。

 

「そして、銀河眼の時空竜でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」

 

七皇の剣の効果により銀河眼の時空竜が赤い光に包まれながら天に昇る。

 

異空間にて銀河眼の時空竜は最強の存在へと進化する。

 

「逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星!顕現せよ!!」

 

銀河の光が夜空に輝くと、過去を遡り、現在を支配する時を司る究極の存在が姿を現わす。

 

「『CNo.107 超銀河眼の(ネオ・ギャラクシーアイズ・)時空龍(タキオン・ドラゴン)』!!!」

 

『グォアアアアアアアッ!!!』

 

巨大な菱形の物体が変形し、現れたのは三つの長い首を持ち、巨大でずっしりとした胴体と大きく長い翼と尾を持つ金色の龍。

 

それはカイトの『銀河眼の光子竜』……否、アストラル世界の力を得た真の姿である『銀河眼の光子竜皇』と月面にて最強のドラゴン決戦を繰り広げたドラゴンである。

 

「これは……!?」

 

世界最古の英雄であるギルガメッシュでも見たことがない未知なるドラゴンに目を見開くほど驚いた。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!さあ、行くぜ、英雄王!!」

 

「我々は必ず、あなたに勝つ!!」

 

遊馬とアストラルは考えうる限りの最強の布陣で世界最古にして最強の英霊に挑む。

 

 

 




遂に出ました、超銀河眼の時空龍!
これが私が考えに考え抜いたギルガメッシュ攻略の最強の切り札です!
次回は超銀河眼の時空龍VSギルガメッシュです。
最強の金ピカはどっちだ!?(笑)

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