Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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ZEXALを知っている方ならもうタイトルでバレバレですね(笑)


ナンバーズ68 復活の黒霧

深夜……いよいよこの特異点の戦いも大詰めとなり、遊馬たちは大聖杯に向かう。

 

遊馬とアストラルとマシュ達のカルデア陣営と共に行くのはアイリスフィールとキリツグ、雁夜とランスロット、時臣、ケイネスとディルムッド、そして、桜と凛である。

 

百貌のハサンは冬木市に何か異常がないか監視のために散り、ギルガメッシュは間桐邸にて眠らされている。

 

ソラウは葵と共に間桐邸を離れて安全な場所に避難している。

 

遊馬達はカルデアから呼んだサーヴァントを何人か帰還してもらい、出来るだけ人数を絞ったがそれでもかなりの大所帯になりながら冬木市で有名な寺である柳洞寺に向かった。

 

柳洞寺に向かうにつれ、メディアは懐かしそうに語り出した。

 

「懐かしいわ……私、宗一郎様と柳洞寺に住んでいたのよ」

 

「そうなのか?でもギリシャ神話の魔女が寺に住むって意外だな」

 

「でも柳洞寺はいい霊脈があるからキャスタークラスの私にとっては最高の拠点だったのよ」

 

「へぇー」

 

「難点といえば小姑がちょっとうるさかったけど……」

 

「小姑?」

 

「まあ、あれよりはマシだけど……」

 

「ああ、あれはな……」

 

メディアと遊馬の目線の先にはとても戦闘前とは思えない光景が広がっていた。

 

「シロウ、この道も懐かしいですね……」

 

「夜の道はやはり昔を思い出すな……」

 

「あ、あぁ……」

 

アルトリアとオルタはメディアのように懐かしみながらエミヤと仲良く話しをしていた。

 

ちなみにアルトリアとオルタはそれぞれエミヤの腕に抱きつきながら満面の笑みで一緒に歩いており、エミヤは苦笑を浮かべながら二人の足を踏まないように気をつけながら歩いている。

 

そして、その光景を全身から殺気がダダ漏れのキリツグが銃とナイフを持ってプルプルと震えながら睨みつけていた。

 

「おのれ、ダブルセイバー共め……よくもシロウとイチャイチャしやがって……士郎よ、一般人ならともかく、よりにもよってどうしてセイバーなんかと……」

 

どうやらキリツグはエミヤが騎士王であるアルトリア達とお付き合い(?)していることが許せないらしい。

 

もっともエミヤも既に英霊なので一般人と付き合うなど無理なのだがキリツグはそこに全く気がついていない。

 

「セイバーめ、まさかシロウが僕の息子だと知って当て付けのために……!?いや、流石に誇り高き騎士王がそんなことを……だが昔の色恋沙汰が酷かった円卓の騎士のいざこざで性格が歪んでも……!!」

 

勝手な被害妄想を膨らませるキリツグに対し、これ以上関係がごちゃごちゃしない前に止めに入った方が良いのではないかと思ったその時、キリツグの側に一人の女性が近づいた。

 

「ダメよ、そんなことを言っては。少しは彼らを信じたら?」

 

「ア、アイリ……」

 

それはアイリスフィールで本来なら暗殺者とターゲットという関係でありながらアイリスフィールは臆せずにキリツグの隣に立った。

 

いくら狙われる心配がなくなったとはいえ突然の行動にキリツグも動揺を隠せなかった。

 

「セイバー、彼のことを自慢げに話していたわよ。私に大切なことを気付かせてくれた。私の心を満たしてくれた、私に人を愛することを教えてくれたって……セイバーは彼の事を本気なの。認めてあげたら?」

 

「だ、だが騎士王は戦うしかできない……シロウの嫁になるなら家事は──」

 

「シロウ君、家事が上手でしょう?料理もお菓子も美味しいし、まるで執事みたいに有能だし、寧ろシロウ君がお嫁さんじゃない?」

 

「うぐっ……た、確かにそうだが……」

 

「セイバーは騎士王、アーサー王で強いのは当然だからお嫁さんのシロウ君を守るお婿さんの役目を担っているし……ほら、バッチリじゃない!最近は専業主夫もあるみたいだから別に変じゃないわよ」

 

「セイバーの強さは認める……だが、だが……!!」

 

「ふふふ、あなた……恐いと思ったら意外と親バカなのね。ねぇ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

「何だ……?」

 

「……イリヤって、どんな女の子?」

 

「っ!?そ、それは……」

 

イリヤ。

 

それはエミヤの義理の姉でこの特異点では別世界のキリツグとアイリスフィールの娘である。

 

この特異点では生まれていないまだ見ぬ娘……エミヤとキリツグの対話の時に断片的に聞かされたその存在をアイリスフィールはどうしても知りたかった。

 

「……どうしても知りたいのか?」

 

「ええ、知りたいわ。こんな私でも人と同じように娘を持つ事ができるなんて夢のようだから……」

 

「……分かった」

 

キリツグは諦めたのかのようにため息をつき、夜空の星を見上げながら覚悟を決める。

 

どうせ断ってもアイリスフィールはしつこく聞いてくるだろう、それならばとキリツグは目を閉じてその瞼に映る愛娘を語る。

 

「イリヤは君にそっくりな可愛い女の子だ。アインツベルンの森で雪の中、元気よく遊んでいたよ。親としての贔屓目かもしれないけど、雪の妖精のような本当に可愛い女の子だったよ……」

 

「そう……叶うのなら会って見たいわね……」

 

「……僕もだよ」

 

いつしか二人の間にわだかまりが無くなり、まるで夫婦のような穏やかな空気が流れていた。

 

この二人が直接結婚しているわけではないが、ある意味では時空を超えた再会とも言えなくない光景だった。

 

しばらくのんびりとしながら歩いていると、桜と凛が遊馬の両側に立ちながら話しかける。

 

「遊馬お兄ちゃん、ハートランドってどんなところ?」

 

「ハートランド?」

 

「そう!この冬木市とは全然違うんでしょう?せっかくだから教えてよ、遊馬お兄様!」

 

異世界から遊馬がどんなところから来たのか、桜と凛はどうしても聞きたかった。

 

遊馬は腕を組み、夜空を見上げながら話し始める。

 

「そうだな、ハートランドはこの冬木市とは全然違うところだ。まずは──……」

 

この冬木市とは全く違う近未来的な街である遊馬の故郷、ハートランドについて話した。

 

この世界にはどこにもない未知なる世界……その話に桜と凛は興味津々で聞くのだった。

 

話をしていくうちに柳洞寺に到着し、大聖杯のある円蔵山へ入山した。

 

そして、大聖杯のある洞窟に近づくとアストラルは飛来するサーヴァントの気配を察知した。

 

「……遊馬、サーヴァントだ。この気配は……」

 

「来たのか?」

 

雷鳴を轟かせながら現れたのは赤い戦闘装束に身を包んだイスカンダルだった。

 

「おおう、良し良し。まだ間に合ったようだな」

 

「まさかまだ聖杯戦争を継続するつもりか?大聖杯が呪詛に満ちたものだと言ったではないか。アレは貴方がたが求めていた願望機などではない!いい加減、騙されていたと気付け!」

 

エルメロイII世が声を荒げながらイスカンダルに向けるが、イスカンダルはケロっとした様子だった。

 

「うん?いやそんな事はどうでも良いのだ」

 

「いいのかよ!?」

 

すっかり自分のサーヴァントを制御できていないウェイバーのツッコミが響く。

 

「ああ。余はただ貴様らの勝ち逃げを阻みに来ただけのことさ」

 

「勝ち逃げって、これはそんな話じゃねえぞ!」

 

「世界を救うために全てを背負った勇者よ。余は貴様らの力と余の力をぶつけたい、ただそれだけだ!」

 

「戦いたいだけかよ……」

 

「遊馬、相手は偉大なる征服王だ。そう簡単に通してもらえないぞ」

 

「分かってるって……あ!」

 

イスカンダルをどう抑えようか悩むが、遊馬はすぐにいい方法を思いついた。

 

すぐにD・ゲイザーでカルデアに連絡し、その鍵となるサーヴァントを呼び出してもらい、フェイトナンバーズに入れてデッキケースに送ってもらった。

 

「イスカンダル!悪いけど、あんたに構っている暇はない……だけど!!」

 

デッキケースが開き、そのカードを取り出して前に突き出す。

 

「あんたに相応しい最高の相手を用意させてもらった!!」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎──ッッ!!」

 

そのカードが黒く輝くと中から飛び出したのは不気味な翡翠の炎を纏いながら二振りの斧を携えた漆黒の巨人──ダレイオス三世である。

 

「何っ!?ダレイオス、貴様なのか!?」

 

ダレイオスはイスカンダルをその目に写すとニヤリと笑みを浮かべて息を思いっきり吸い込んだ。

 

「イスカンダルゥゥッッ──ッ!!!」

 

それは夜の闇に轟く歓喜の咆哮だった。

 

遊馬は耳を抑えてダレイオスの隣に立ち、マスターとして命令を出す。

 

「ダレイオスのおっさん、俺たちは今からこの奥の大聖杯に向かわなきゃならない。だから……それを邪魔するイスカンダルを全力で止めてくれ。行けるよな?だって、イスカンダルの再戦はおっさんの願いだからな!」

 

ダレイオスが聖杯にかける願いはイスカンダルとの再戦。

 

以前遊馬がトレーニングルームでダレイオスがそう言っていたのを思い出してここに呼んだのだ。

 

イスカンダルを止めるため、そして……ダレイオスの願いを叶えるため。

 

ダレイオスは見下ろす形で遊馬を見ると再びニヤリと笑みを浮かべた。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎──!」

 

バーサーカークラスの影響で言語をほとんど話せないので、何を言っているのか分からないが、少なくとも遊馬への感謝の気持ちが込められていた。

 

「マスターの俺は側にはいないけど、代わりにこいつを残しておく!」

 

遊馬は右手の令呪を輝かせてダレイオスに向ける。

 

「令呪によって命ずる!ダレイオス、イスカンダルに絶対に負けるな!お前の全ての力を解き放ってぶつかって必ず戻って来い!!」

 

令呪によってダレイオスに膨大な魔力が宿り、万全な状態で戦えるようになった。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎──!!!」

 

ダレイオスは再び咆哮を轟かせてイスカンダルを挑発する。

 

すると、イスカンダルは先程までとは違い、遊馬たちに向けられた意識を全てダレイオスに向けた。

 

「ふははは……ふはははははっ!!こいつはとんだどんでん返しだ!!まさか余の相手が万夫不当の巨王!アケメネス最後の将たるダレイオス三世!!お主を倒すのは──やはり、この征服王イスカンダルでなくてはな!!!」

 

イスカンダルも宿命のライバルとも言えるダレイオスの登場に喜びを隠せずにいた。

 

「すまないな、ウェイバーよ!余のこの聖杯戦争最後の相手はあやつになる!」

 

「あれがダレイオス三世……ああもう、仕方ないな!ライダー、お前は言ったら聞かない奴だからな……分かったよ、最後までお前に付き合ってやるよ!!」

 

ウェイバーは色々諦めて吹っ切れたのか、マスターとしてイスカンダルと共にダレイオス三世に挑む決意を固めた。

 

「ふははは!それでこそ、余を呼んだマスターだ!行くぞ、ダレイオス王!我が生涯最大なりし好敵手!!存分に暴れようではないか!!!」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎──ッッ!!!」

 

「おっさん、後は頼んだぜ!」

 

「あなたの武運を祈る!」

 

遊馬とアストラルはダレイオスに後を任せてマシュ達と共に大聖杯に向かう。

 

そして、その直後……ダレイオスとイスカンダルとウェイバーの姿が消え、壮大な戦いを繰り広げるための戦場へと舞台を変え、熱闘を繰り広げるのだった。

 

 

遊馬たちはかつて特異点Fでアルトリアと戦った大聖杯へ到着した。

 

大聖杯から放たれる魔力が明らかに邪悪で呪われたものへと変質していた。

 

これではどのような願いも捻じ曲げられ、この世界を破滅するほどの力を秘めていた。

 

大聖杯の汚染は紛れもない事実にアイリスフィール達、第四次聖杯戦争の参加者のマスターたちは動揺を隠しきれずにいた。

 

「さて、私の出番ね」

 

大聖杯解体の切り札……メディアは魔術を打ち消す力を持つ宝具、破戒すべき全ての符を取り出す。

 

「アーチャー、念の為にあなたも投影しておきなさい。可能でしょう?」

 

「ああ、任せろ」

 

エミヤは破戒すべき全ての符を投影してそれを持つ。

 

破戒すべき全ての符を大聖杯に突き刺して大聖杯を破戒して打ち消せればこの特異点が無事に解決する。

 

メディアはゆっくりと歩き、アルトリア達が宝具を構えて周囲を警戒しながらその時を待つ。

 

そして、大聖杯に落ちないギリギリの距離まで近づき、メディアは破戒すべき全ての符を逆手に構えて振り上げる。

 

「行くわよ、破戒すべき──」

 

破戒すべき全ての符を大聖杯に突き刺そうとした……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうはさせないぜ、その力は俺のモノだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、不気味な声が洞窟の中に響き渡り、全員の緊張感が一気に増した。

 

そして、その声の直後に異変が起きた。

 

「ぐぁあああああっ!??」

 

「アストラル!?」

 

アストラルが胸を押さえて苦しみ出し、胸から漆黒の闇が間欠泉のように勢いよく噴き出した。

 

メディアは杖を呼び出してから宙を飛んで大聖杯から離れ、大聖杯の前に漆黒の闇が集まった。

 

漆黒の闇は大聖杯から膨大な魔力を吸収し、人の形を成してその姿を現した。

 

「久しぶりだな……アストラル!遊馬!」

 

「馬鹿な……!?貴様はあの時に消滅したはず……!?」

 

「てめぇ、どうして……!?」

 

アストラルと遊馬は現れた闇に驚愕していた。

 

「黒い、アストラルさん!?」

 

それは青白く輝くアストラルがまるで漆黒に染まったような姿をしており、神秘的で清らかな姿をするアストラルとは真逆で邪悪なイメージを持つ姿だった。

 

「『No.96』……まさか貴様が蘇るとはな!」

 

アストラルは息を整えながら立ち上がり、怒りを込めた瞳で『No.96』を見つめた。

 

No.96。

 

それはアストラルの記憶の欠片であるナンバーズの一片でありながら強大な邪悪な存在である。

 

遊馬とアストラルと何度も戦い、最後には完全に消滅したはずだったが……。

 

「この時を、この時をずっと待っていた……!少しずつ魔力と言う名のエネルギーを吸収して蓄え、俺が復活するこの時をな!!」

 

No.96はニヤリと笑みを浮かべながら大聖杯からどんどん魔力を吸収して失われた力を取り戻すかのようにどんどん邪悪な力の波動が広がっていく。

 

「アストラル!遊馬!今度こそお前達を倒し、この俺が神となる!!現れろ、我が分身!『ブラック・ミスト』!!」

 

No.96が自身の右手から取り出したカードを掲げると、左手から膨大な闇が溢れて霧状に散布される。

 

闇の霧が収束して固まり、大きな黒い骸骨のような形となり、目から火のようなオーラを灯され、両手両足と尾を生やし、化け物の姿となって現れた。

 

これがナンバーズの中でも特に闇を象徴する邪悪なる闇の化身、ブラック・ミスト。

 

そのブラック・ミストを前にし、アストラルと遊馬はそれぞれデュエルディスクを構えて堂々と立ち向かう。

 

「No.96!今度こそ貴様を倒す!」

 

「もう二度と、アストラルとあんな悲しすぎる別れ方をしてたまるか!!」

 

二人にとってNo.96とは大きな因縁があり、今度こそ決着をつけるために今まで培った力を解き放つ。

 

 

 




と言うわけで登場しました、ブラック・ミストことNo.96!
名前が相変わらずめんどいな(笑)
蟲ジジィの代わりに敵をどうするか悩んでいた時に思いつきました。
一応言いますが、デュエルはやりません。
もうすでに決着は付いてますし、仮に勝ってもまた道連れしそうなので。
まあ遊馬くんらしい決着をつけますが。

イスカンダルはダレイオスのおっさんと戦わせます。
個人的にコラボCMのイメージが強いのでぶつけてみました。

次回はNo.96との決着になると思います。

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